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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20231115BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20231115BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20231115BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231115BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L25/08 Z
H01L23/12 501W
H05K1/18 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020011131
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118277
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】築山 慧至
(72)【発明者】
【氏名】高久 悟
(72)【発明者】
【氏名】菅生 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 彩那
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-128169(JP,A)
【文献】特開2011-071486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 25/07
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面上方に設けられ、分子量が異なる複数種類の樹脂とフィラーとを含み、前記基板とその一部が直接接触する1層と、
前記第1層の上方に設けられ、前記第1層と直接接触する第1半導体チップと、
前記基板と前記第1層との間の少なくとも一部の第1領域に設けられ、複数種類の前記樹脂のうち分子量が他の種類の前記樹脂よりも小さい少なくとも1種類の前記樹脂、および、前記第1層よりも低濃度の前記フィラーを含む第2層と、
前記第1層と前記第2層と前記基板とを覆い、前記基板および前記第1層と直接接触する第3層と、を備える、半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の第1面上方に設けられ、分子量が異なる複数種類の樹脂とフィラーとを含む第1層と、
前記第1層の上方に設けられる第1半導体チップと、
前記基板と前記第1層との間の少なくとも一部の第1領域に設けられ、複数種類の前記樹脂のうち分子量が他の種類の前記樹脂よりも小さい少なくとも1種類の前記樹脂、および、前記第1層よりも低濃度の前記フィラーを含む第2層と、を備え、
前記第2層は、前記基板の凹部と前記第1層との間の第2領域に設けられる、半導体装置。
【請求項3】
前記基板と前記第1層との間に設けられる第2半導体チップと、
前記基板と前記第2半導体チップとを電気的に接続するワイヤと、をさらに備え、
前記第2層は、前記ワイヤと該ワイヤ下方の前記基板、前記第1層および前記第2半導体チップの少なくとも1つとの間の第3領域に設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
分子量が異なる複数種類の前記樹脂のうち、分子量の最大値に対する最小値の比率が所定値以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1層は、アクリルゴムおよびポリイミドの少なくとも1つと、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも1つと、を含み、
前記第2層は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも1つを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
基板の第1面に分子量が異なる複数の樹脂とフィラーとを含む第1層を設け、
前記第1層を介して、前記第1面に対向するように第1半導体チップの第2面を前記第1面上に設け、
前記第1層の加圧により、前記基板と前記第1層との間の第1隙間内に、複数種類の前記樹脂のうち分子量が他の種類の前記樹脂よりも小さい少なくとも1種類の前記樹脂、および、前記第1層よりも低濃度の前記フィラーを含む第2層を形成する、ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1層はフィルムである、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1層は液体である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のパッケージング工程において、DAF(Die Attach Film)を用いて半導体チップを積層する方法が知られている。一般に、配線基板表面にDAFを充填させるように、プロセスの条件が設定される。
【0003】
しかし、配線基板とDAFとの間の隙間を完全に埋めることは難しく、パッケージ内に空洞が発生する場合がある。この空洞内の水分(水蒸気)は、例えば、実装リフローおよび吸湿リフロー信頼性試験等において、高温により膨張する。従って、空洞が大きい場合、空洞内が高圧になり、パッケージが破損してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-238634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱処理時の破損を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体装置は、基板と、第1接着層と、第1半導体チップと、第2接着層と、を備える。第1接着層は、基板の第1面上方に設けられ、分子量が異なる複数種類の樹脂とフィラーとを含む。第1半導体チップは、第1接着層の上方に設けられる。第2接着層は、基板と第1接着層との間の少なくとも一部の第1領域に設けられ、複数種類の樹脂のうち分子量が他の種類の樹脂よりも小さい少なくとも1種類の樹脂、および、第1接着層よりも低濃度のフィラーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による半導体装置の構成を示す断面図。
図2】第1実施形態による接着層の拡大図。
図3】第1実施形態による半導体装置の製造方法を示すフロー図。
図4】マウント初期における製造途中の半導体装置の一例を示す断面図。
図5】マウント中からキュア後までにおける製造途中の半導体装置の一例を示す断面図。
図6】第2実施形態による半導体装置の構成を示す断面図。
図7】第2実施形態による半導体装置の製造方法を示すフロー図。
図8】マウント初期における製造途中の半導体装置の一例を示す断面図。
図9】マウント中からキュア後までにおける製造途中の半導体装置の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、半導体基板の上下方向は、半導体素子が設けられる面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による半導体装置1の構成を示す断面図である。半導体装置1は、配線基板11と、接着層21と、半導体チップCH1と、ワイヤW1と、接着層22と、樹脂23と、金属バンプBと、を備える。
【0010】
尚、図1に示す例では、半導体チップCH1は、接着層21を介して縦方向に2段に積層されている。縦方向は、配線基板11の基板上面F1に対して略垂直方向である。しかし、半導体チップCH1の積層数は、2段に限られず、任意に変更されてもよい。
【0011】
配線基板11は、配線111と、樹脂層112、113と、を有する。配線基板11は、例えば、プリント基板等の基板である。尚、配線基板11は、ワイヤW1を介して半導体チップCH1と接続可能であればよく、基板の種類は限定されない。配線基板11は、例えば、シリコン基板等であってもよい。
【0012】
配線111は、配線基板11の基板上面F1上の電極パッド(図示せず)と、配線基板11の基板下面上の金属バンプBとを電気的に接続する。配線111には、例えば、銅またはタングステン等の導電性金属が用いられる。配線111は、積層された複数の配線層L1~L3を有する。配線層L1~L3は、層間の樹脂層によって絶縁されている。また、配線層L1~L3は、例えば、ビアホール等により、一部において電気的に接続されていてもよい。
【0013】
樹脂層112には、例えば、ソルダーレジスト等の絶縁材料が用いられる。樹脂層113は、補強部113aを含み、樹脂層112よりも強度および剛性が高い。樹脂層113は、例えば、プリプレグである。補強部113aは、例えば、ガラスクロス等の繊維状補強材である。
【0014】
また、配線基板11には、凹部114が設けられている。尚、凹部114の詳細については、図2を参照して、後で説明する。
【0015】
接着層21は、配線基板11の基板上面F1上方に設けられる。また、接着層21は、分子量が異なる複数種類の樹脂とフィラーとを含む。接着層21は、例えば、フィルム状の樹脂(DAF(Die Attach Film))である。また、フィラーは、例えば、シリカフィラーである。
【0016】
また、より詳細には、接着層21は、アクリルゴムおよびポリイミドの少なくとも1つと、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも1つと、を含む。アクリルゴムおよびポリイミドの分子量は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の分子量よりも大きい。アクリルゴムの分子量は、例えば、40万~100万である。ポリイミドの分子量は、例えば、5万~30万、より好ましくは、7万~20万である。エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の分子量は、例えば、1000~3000である。また、接着層21の配合比率は、例えば、未硬化状態における流動性および弾性率等の所望の特性が得られるように、設定される。接着層21の配合比率は、例えば、フィラーが約50重量%、アクリルゴムが約10重量%~約25重量%、エポキシ樹脂が約5重量%~約20重量%、フェノール樹脂が約5重量%~約20重量%である。尚、アクリルゴムの一部がポリイミドであってもよい。
【0017】
半導体チップCH1は、接着層21の上方に設けられる。より詳細には、半導体チップCH1は、接着層21によって、配線基板11上および他の半導体チップCH1上に接着されている。半導体チップCH1の積層数は、例えば、1段~16段の範囲でよい。また、半導体チップCH1は、図1に示すように、階段状にずらされて積層されている。これにより、半導体チップCH1の電極パッド(図示せず)上に他の半導体チップCH1が重複することを抑制し、ワイヤW1が各半導体チップCH1の電極パッドに接続可能とする。半導体チップCH1は、例えば、それぞれ同一構成を有するメモリチップでよい。メモリチップは、例えば、NANDチップである。半導体チップCH1の積層数は、必要なメモリ容量に応じて設定される。
【0018】
ワイヤW1は、配線基板11と半導体チップCH1とを電気的に接続する。ワイヤW1には、例えば、金等の導電性金属が用いられる。尚、ワイヤW1には、例えば、銀または銅等が用いられてもよい。
【0019】
接着層22は、配線基板11と接着層21との間の少なくとも一部の領域に設けられる。より詳細には、図1に示すように、接着層22は、配線基板11の凹部114と接着層21との間の領域に設けられる。後で説明するように、接着層22は、配線基板11と接着層21との間の隙間(空洞)を埋めるように形成される。空洞は、吸湿リフローおよび実装リフロー等の高温処理により高圧になる。従って、空洞を埋める(小さくする)ことにより、熱処理時における圧力によるパッケージの破損を抑制することができる。接着層22は、製造途中において接着層21から染み出て、接着層21から分離している。尚、接着層22の形成の詳細については、図3図5を参照して、後で説明する。
【0020】
図2は、第1実施形態による接着層22の拡大図である。図2は、図1の点線枠Dの拡大図でもある。また、図2では、補強部113aは省略されている。
【0021】
凹部114は、例えば、エッチバック開口である。エッチバック開口は、めっきにより配線111が設けられる場合に、余分なリード線を断線または除去するための開口部である。エッチバック開口は、深い凹部になりやすく、接着層21との間で大きな隙間が発生しやすい。
【0022】
接着層21の一部は、凹部114において下方に延びている。また、接着層21と接着層22との境界の形状は、下に凸である。これは、半導体チップCH1を配線基板11に接着する際に、上方からの圧力により、接着層21が押しつけられるためである。従って、接着層22の最大高さは、基板上面F1の樹脂層112の高さ以下である。また、接着層22の最大高さは、凹部114の開口縁の高さ以下でもある。
【0023】
また、接着層22は、複数種類の樹脂のうち分子量が他の種類の樹脂よりも小さい少なくとも1種類の樹脂、および、接着層21よりも低濃度のフィラーを含む。すなわち、接着層21内に含まれる樹脂のうち、分子量が小さい樹脂の一部が接着層22として分離する。尚、「低濃度のフィラー」は、接着層22にフィラーが存在しない(0重量%)場合も含む。
【0024】
また、より詳細には、接着層22は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも1つを含む。すなわち、接着層22には、分子量が小さい樹脂が含まれるのに対し、アクリルゴムおよびポリイミドのように分子量が大きい樹脂は含まれない。従って、アクリルゴムおよびポリイミドの少なくとも1つは、接着層21内に残る。また、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂は、アクリルゴムよりも加水分解されづらい。従って、接着層22にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂が含まれることにより、例えば、配線111中の金属のマイグレーションによる樹脂の絶縁性能の劣化を抑制することができる。また、高温高湿バイアス試験での評価を向上させることができる。
【0025】
図1に示すように、樹脂23は、半導体チップCH1、接着層21およびワイヤW1を基板上面F1上において封止する。これにより、樹脂23は、外部からの衝撃や外気から半導体チップCH1、接着層21およびワイヤW1を保護する。樹脂23には、例えば、エポキシ樹脂等が用いられる。また、樹脂23は、フィラーを含む。
【0026】
金属バンプBは、基板上面F1とは反対側の配線基板11の基板下面に設けられており、配線層L3の一部に接続されている。金属バンプBは、半導体装置1を外部の実装基板(図示せず)等に電気的に接続するために設けられている。金属バンプBには、例えば、はんだ等の導電性金属が用いられる。この場合、金属バンプBは、例えば、はんだボールである。
【0027】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。尚、以下では、ウェハ工程の後の組立工程について説明する。
【0028】
図3は、第1実施形態による半導体装置1の製造方法を示すフロー図である。尚、以下では、接着層21は、DAFと呼ばれる場合もある。
【0029】
まず、ウェハ表面(上面)に保護テープを貼り付ける(S10)。次に、ウェハの厚さが所望の厚さになるように、ウェハの裏面(下面)を研磨する(S20)。次に、ウェハ下面にDAF付きダイシングテープを貼り付け、保護テープを剥離する(S30)。次に、ブレードによりウェハを個々の半導体チップCH1に切断する(S40)。すなわち、配線基板11の基板上面F1に対向するように、半導体チップCH1(ウェハ)のチップ下面F2(ウェハ下面)に分子量が異なる複数の樹脂とフィラーとを含む接着層21を設ける。
【0030】
次に、半導体チップCH1を配線基板11上に接着させる(マウント)(S50)。すなわち、接着層21を介して、半導体チップCH1を基板上面F1上に設ける。マウント時の条件として、例えば、温度が約70℃~約150℃であり、圧力が約0.1MPa~約0.5MPa、より好ましくは、約0.2MPa~約0.4MPaである。尚、DAFは、例えば、約70℃~約150℃において弾性率が大きく減少し、柔らかくなる。次に、DAFの硬化(キュア)とアウトガスの排出とを行う(S60)。すなわち、接着層21の加圧により、配線基板11と接着層21との間の隙間内に、接着層22を形成する。キュア時の条件として、例えば、温度が約100℃~約200℃であり、圧力が約0.5MPa以上、より好ましくは、約0.9MPa以上である。圧力が高いほど接着層21の充填性が向上するため、圧力は高いことがより好ましい。また、キュア時の条件として、処理時間が約30分~約2時間である。
【0031】
また、より詳細には、配線基板11への半導体チップCH1の設置、および、接着層21の硬化処理の少なくとも1つにより、接着層22を形成する。すなわち、マウント時およびキュア時のいずれによっても、接着層21への加圧によって接着層22が形成され得る。尚、マウント時よりもキュア時の方が、より高い圧力が印加されるため、接着層22が形成されやすい場合がある。尚、マウントからキュアまでの接着層22の詳細については、図4および図5を参照して、後で説明する。
【0032】
次に、半導体チップCH1上の電極と配線基板11とをワイヤW1により接続させる(S70)。まだ全ての半導体チップCH1をマウントしていない場合(S80のNO)、再びステップS50~S70が実行される。尚、2回目以降のステップS50では、半導体チップCH1を、既にマウントした他の半導体チップCH1上に接着させる。従って、必要なチップ数の半導体チップCH1が配線基板11上に積層される。全ての半導体チップCH1をマウントした場合(S80のYES)、金型内に配線基板11を配置して樹脂23を充填し、金属バンプBを配線基板11の基板下面の電極に搭載する(S90)。
【0033】
図4は、マウント初期における製造途中の半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。図5は、マウント中からキュア後までにおける製造途中の半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。
【0034】
図4に示すように、マウント初期では、凹部114内に隙間24が存在する。これは、凹部114内を接着層21で完全に充填することが難しいためである。図4および図5に示すように、マウント中またはキュア中において、接着層21の加圧により、配線基板11の凹部114と接着層21との間の隙間24内に、接着層22を形成する。マウント中およびキュア中の熱により、分子量が小さい樹脂(例えば、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂)の流動性が高くなっている。分子量が小さい樹脂は、圧力により接着層21から染み出て、接着層22として分離する。また、凹部114がエッチバック開口である場合、隙間24の面積は、例えば、約100μm角~約200μm角である。尚、隙間24の形状は、数100μm×約5mm等、いずれの形状であってもよい。また、隙間24の深さは、例えば、約10μmである。
【0035】
また、分子量が異なる複数種類の樹脂のうち、分子量の最大値に対する最小値の比率が所定値以下であることが好ましい。所定値は、例えば、10分の1以下、より好ましくは、1000分の1~100分の1である。接着層21内の樹脂の分子量の差が大きいほど、分子量が小さい樹脂は、接着層21から染み出して分離しやすい。例えば、アクリルゴムは、分子量が大きく、また、連なった分子形状による分子同士の絡み合いが強いため、フィルム状を維持している。従って、アクリルゴムの各分子は移動しづらい。例えば、エポキシ樹脂は、アクリルゴムよりも分子量が小さく、アクリルゴムの網目状の分子の隙間を通り抜けやすい。従って、エポキシ樹脂は、圧力によって接着層21から分離することができる。また、フィラーの粒径は、例えば、数μm程度と大きい。さらに、フィラーは、シランカップリング等により、接着層21内の樹脂と強く結合している。従って、フィラーは、アクリルゴムの網目状の分子に引っかかりやすく、分子の隙間を通り抜けづらい。
【0036】
また、分離する樹脂の分子量が小さいほど、配線基板11の表面をより埋めやすくすることができる。
【0037】
以上のように、第1実施形態によれば、接着層21は、分子量が異なる複数種類の樹脂とフィラーとを含む。また、接着層22は、配線基板11と接着層21との間の少なくとも一部の領域に設けられ、複数種類の樹脂のうち分子量が小さい少なくとも1種類の樹脂、および、接着層21よりも低濃度のフィラーを含む。
【0038】
通常、マウント時およびキュア時において、配線基板11表面に接着層21を充填させるように、プロセスの条件が設定される。しかし、配線基板11と接着層21との間の隙間を完全に埋めることは難しく、パッケージ内に空洞が発生する場合がある。この空洞内の水分(水蒸気)は、例えば、実装リフローや吸湿リフロー信頼性試験等において、高温により膨張する。実装リフローは、例えば、約260℃以上の高温により金属バンプBを溶かし、半導体装置1と実装基板とを電気的に接続するための熱処理である。また、吸湿リフロー信頼性試験は、意図的にパッケージに水分を含ませた状態での熱処理を行う信頼性試験である。従って、空洞が大きい場合、空洞内が高圧になり、高圧の水蒸気の爆発によりパッケージが破損する可能性がある。尚、パッケージの破損は、例えば、樹脂23と半導体チップCH1との剥離、および、樹脂23におけるクラック発生等も含む。
【0039】
第1実施形態では、分子量が小さい樹脂を分離させて空洞内に接着層21を形成することにより、空洞を小さくし、または、空洞を埋めることができる。この結果、熱処理時のパッケージの破損を抑制することができ、また、信頼性を向上させることができる。尚、樹脂の分離により生じる接着層21内の空洞の影響は小さい。
【0040】
また、第1実施形態では、マウント時およびキュア時の少なくともいずれかによって隙間24が埋まる。従って、プロセス数を増加させることなく、かつ、隙間24を埋める(小さくする)ことができる。また、接着層22の最大高さは、基板上面F1の樹脂層112の高さ以下である。
【0041】
尚、接着層21内の樹脂の一部は、カルボキシル基およびエポキシ基等の反応性官能基を有していてもよい。すなわち、反応性官能基が予め付与されたアクリルゴムを含む接着層21が用いられてもよい。これにより、アクリルゴムの架橋反応が進みやすくなり、接着層21内の樹脂の分子量の差が大きくなる。この結果、接着層22が接着層21から分離しやすくなり、隙間24をより埋める(より小さくする)ことができる。
【0042】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態による半導体装置1の構成を示す断面図である。第2実施形態は、半導体チップCH2が設けられる点で、第1実施形態と異なる。
【0043】
半導体装置1は、半導体チップCH2と、ワイヤW2と、をさらに備える。
【0044】
半導体チップCH2は、配線基板11と接着層21との間に設けられる。半導体チップCH2は、半導体チップCH1の下に設けられており、接着層21で被覆されている。半導体チップCH2は、例えば、コントローラチップである。この場合、半導体チップCH2は、半導体チップCH1の動作を制御する。
【0045】
ワイヤW2は、配線基板11と半導体チップCH2とを電気的に接続する。配線基板11は、ワイヤW2と接続するボンディングパッド115をさらに備える。従って、より詳細には、ワイヤW2は、ボンディングパッド115と半導体チップCH2とを電気的に接続する。また、ワイヤW2の上方に、接着層21が設けられる。ワイヤW2には、例えば、金等の導電性金属が用いられる。尚、ワイヤW2には、例えば、銀または銅等が用いられてもよい。
【0046】
接着層21は、ワイヤW2が抵抗になるため、ワイヤW2の下方には入りづらい。従って、ワイヤW2の下方には、凹部114と同様に、大きな隙間が発生しやすい。尚、接着層21の一部は、ワイヤW2の下方に存在していてもよい。これは、例えば、図8の紙面垂直方向に複数設けられるワイヤW2の端のアーチから接着層21の一部が入り込む可能性があるためである。尚、入り込む一部の接着層21の位置は、図8に示す例に限られず、ワイヤW2と該ワイヤW2下方の配線基板11および半導体チップCH2の少なくとも1つとの間のいずれの位置であってもよい。
【0047】
接着層22は、ワイヤW2と該ワイヤW2下方の配線基板11、接着層21および半導体チップCH2の少なくとも1つとの間の領域に設けられる。後で説明するように、接着層22は、ワイヤW2下方の隙間を埋めるように形成される。従って、接着層22の最大高さは、ワイヤW2の高さ以下である。
【0048】
第2実施形態による半導体装置1のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。尚、図6に示す例では、第1実施形態における図1と同様に、凹部114および凹部114内の接着層22が示されている。しかし、第2実施形態は、凹部114が設けられる場合に限られない。
【0049】
図7は、第2実施形態による半導体装置1の製造方法を示すフロー図である。尚、ステップS10~S40は、第1実施形態における図3のフロー図と同様である。
【0050】
ステップS40の後、半導体チップCH2を配線基板11上に設置する(S41)。半導体チップCH2は、例えば、接着層(図示せず)により配線基板11上に接着される。次に、配線基板11と半導体チップCH2とをワイヤW2により接続させる(S42)。すなわち、半導体チップCH1を基板上面F1上に設ける前に、基板上面F1上に半導体チップCH2を設け、配線基板11と半導体チップCH2とをワイヤW2により電気的に接続させる。その後、ステップS50が実行される。
【0051】
ステップS50~S90は、第1実施形態における図3のフロー図と同様である。尚、ステップS41、S42は、図7に示す順番に限られない。例えば、ステップS41、S42は、ステップS10~S40と並行して実行されてもよい。
【0052】
図8は、マウント初期における製造途中の半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。図9は、マウント中からキュア後までにおける製造途中の半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。
【0053】
図8に示すように、マウント初期では、ワイヤW2の下方に隙間25が存在する。図8および図9に示すように、マウント中またはキュア中において、接着層21の加圧により、ワイヤW2と該ワイヤW2下方の配線基板11、接着層21および半導体チップCH2の少なくとも1つとの間の隙間25内に、接着層22を形成する。
【0054】
第2実施形態による半導体装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
他の実施形態について
なお、第1、第2実施形態において接着層21にフィルムではなく、液状またはペースト状の接着層21を使用することができる。このときの製造方法は、まず、液状またはペースト状の接着層21を配線基板11の基板上面F1上方にポッティング、スクリーン印刷、インクジェット等種々の手法により塗布する。その後、接着層21を介して配線基板11に半導体チップCH1をマウントし、キュアをする。すなわち、基板上面F1に接着層21を設け、接着層21を介して、基板上面F1に対向するように半導体チップCH1のチップ下面F2を基板上面F1上に設ける。このように液状またはペースト状の接着層21を使用しても隙間24、25に接着層22を分離させることが可能であり、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体装置、CH1 半導体チップ、CH2 半導体チップ、W2 ワイヤ、11 配線基板、114 凹部、21 接着層、22 接着層、24 隙間、25 隙間、F1 基板上面、F2 チップ下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9