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特許7385485無線通信ユニット及びそれを用いた無線ネットワークシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】無線通信ユニット及びそれを用いた無線ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20231115BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20231115BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20231115BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20231115BHJP
   H04W 28/08 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W16/26
H04W88/14
H04W76/10
H04W28/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020014128
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021121071
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】新井 国充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】江川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】前田 智志
(72)【発明者】
【氏名】勝又 貞行
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137666(JP,A)
【文献】特開2018-137663(JP,A)
【文献】特開2017-103694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0141561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体上に搭載可能に構成され、無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対し第一ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に対し第二ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされ、
前記EPC機能部は、前記第一外部無線通信ユニットと前記第二外部無線通信ユニットとに共用化される同一の外部無線通信ユニットをバックホール構築先無線通信ユニットとして、前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかに対し、前記中継無線通信部に対しては前記バックホール構築先無線通信ユニットの無線基地局部との間に前記第一ユニット間無線ベアラを、前記無線基地局部に対しては前記バックホール構築先無線通信ユニットの中継無線通信部との間に前記第二ユニット間無線ベアラを構築するために、前記バックホール構築先無線通信ユニットとの間にそれら第一ユニット間無線ベアラ及び第二ユニット間無線ベアラからなる無線バックホールを構築する制御指令を行なう無線バックホール構築制御指令部が設けられていることを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項2】
前記無線バックホール構築制御指令部は、前記第二ユニット間無線ベアラにより前記無線基地局部が前記外部無線通信ユニットの中継無線通信部と接続中の状態において、前記中継無線通信部に対し無線バックホール構築制御指令を行なうものであり、
前記中継無線通信部は、前記無線バックホール構築の前記制御指令を受けるに伴い前記第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対しアタッチ要求することにより前記第一ユニット間無線ベアラを構築する請求項1記載の無線通信ユニット。
【請求項3】
前記無線バックホール構築制御指令部は、前記第一ユニット間無線ベアラにより前記中継無線通信部が前記第一外部無線通信ユニットの無線基地局部と接続中の状態において、前記無線基地局部に対し無線バックホール構築制御指令を行なうものであり、
前記無線基地局部は、前記無線バックホール構築の前記制御指令を受けるに伴いバックホール構築要求を前記第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に送信するとともに、前記第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部から該バックホール構築要求への応答としてのアタッチ要求を受け付けることにより前記第二ユニット間無線ベアラを構築する請求項1又は請求項2に記載の無線通信ユニット。
【請求項4】
前記EPC機能部と外部ネットワークとの間のIPパケットの送受信を中継するルータが設けられ、
前記無線バックホール構築制御指令部は、前記ルータに前記外部ネットワークとして公共ネットワークが接続されることを必要条件として、前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかに対し前記無線バックホール構築の前記制御指令を行なうものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無線通信ユニット。
【請求項5】
前記EPC機能部は、前記第一外部無線通信ユニットの無線基地局部又は前記第二外部無線通信ユニットの無線基地局部に対する前記移動端末の接続数の情報を取得する端末接続数取得部を有し、前記無線バックホール構築制御指令部は、前記接続数が予め定められた閾値を超えることを必要条件として、前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかに対し前記無線バックホール構築の前記制御指令を行なうものである請求項4記載の無線通信ユニット。
【請求項6】
移動体上に搭載可能に構成され、無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、前記移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、前記EPC機能部に有線接続されるとともに、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対し第一ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に対し第二ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされ、前記EPC機能部は、前記第一外部無線通信ユニットと前記第二外部無線通信ユニットとに共用化される同一の外部無線通信ユニットをバックホール構築先無線通信ユニットとして、前記中継無線通信部及び前記無線基地局部の少なくともいずれかに対し、前記中継無線通信部に対しては前記バックホール構築先無線通信ユニットの無線基地局部との間に前記第一ユニット間無線ベアラを、前記無線基地局部に対しては前記バックホール構築先無線通信ユニットの中継無線通信部との間に前記第二ユニット間無線ベアラを構築するために、前記バックホール構築先無線通信ユニットとの間にそれら第一ユニット間無線ベアラ及び第二ユニット間無線ベアラからなる無線バックホールを構築する制御指令を行なう無線バックホール構築制御指令部が設けられている無線通信ユニットの対を含み、
前記無線通信ユニットの対の一方の中継無線通信部と他方の無線基地局部とが前記第一ユニット間無線ベアラにより接続され、前記無線通信ユニットの対の一方の無線基地局部と他方の中継無線通信部とが前記第二ユニット間無線ベアラにより接続されることにより、それら対をなす前記無線通信ユニットの間に前記無線バックホールが構築されてなることを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項7】
前記無線通信ユニットの対の少なくとも一方に、前記EPC機能部と外部ネットワークとの間のIPパケットの送受信を中継するルータが設けられ、該ルータに前記外部ネットワークとして公共ネットワークが接続されてなる請求項6記載の無線ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットに関するものであり、複数ユニット間の連携動作を容易に実現でき、広域エリアのカバーリング対応にも好適に使用可能な無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、3GPP仕様に基づく高速通信規格(例えば、LTE(Long Term Evolution))あるいはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)の無線通信ネットワークにおいては、無線通信アクセス網を収容するEPC(Evolved Packet Core)をエリア内に構築することが必須であり、移動端末が接続する無線基地局は該EPCを介してIPパケットの送受信制御を受ける。一方、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットPCなどの移動端末の普及に伴い、海上や過疎地域、あるいは災害等により通信機能が喪失した地域など、EPCや無線基地局がインフラ的に整備されていない地域(以下、「無線非整備地域」と称する)においても、移動端末を利用したいという要望が高まっている。
【0003】
こうした要望に応えるべく、例えば特許文献1には、無線基地局とEPC機能部とを一体化した複合型の無線通信ユニットが提案されている。このような無線通信ユニットを上記のような無線非整備地域に設置することで、該ユニットに含まれる無線基地局部により小規模ながら通信可能エリアが構築され、ユニット内のEPC機能部が通信制御を行なう形で、前記無線基地局部に接続する複数の移動端末間で無線通信を行なうことが可能となる。しかし、無線通信ユニット1台でカバーできるセルは狭く、また、通信容量も限られている。この場合、無線非整備地域内に無線通信ユニットを複数台配置することも考えられるが、ユニット間での通信連携が考慮されておらず、異なる複合装置に接続された移動端末同士の通信ができない、という欠点がある。また、移動端末の接続台数が増えたり、動画データなどの大容量データの送受信がなされたりした場合など、エリア内の通信トラフィックが過剰となった場合は輻輳などの問題を生じやすい問題がある。
【0004】
そこで、特許文献2~7には、複数の無線通信ユニットを連携させ、移動端末からの通信トラフィックを各無線通信ユニットに分散して転送処理する構成が開示されている。具体的には、特許文献5の図6に、移動端末との通信をオフロードさせるための無線通信ユニット同士の連携経路として、衛星装置を経由する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016- 12841号公報
【文献】特開2018-137661号公報
【文献】特開2018-137662号公報
【文献】特開2018-137663号公報
【文献】特開2018-137664号公報
【文献】特開2018-137665号公報
【文献】特開2018-137666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2~7においては、複数の無線通信ユニットが相互接続されている様子が図示されている(例えば、特許文献2の図1等)。上述した衛星装置を経由したオフロード形態を除くと、この接続がいかなる実体にて構成されたかにつき、具体的な開示は文献中にてなされていない。しかし、仮に無線通信ユニット間が有線接続されていると考えた場合、無線非整備地域内の相応に広いセル内に無線通信ユニットを分散配置しようとすれば、装置間を接続する通信ケーブルが非常に長くなる。その結果、信号品質及び通信容量の低下を招き、これを防止するための中継装置が必要となるなど、接続インフラ構築のためのコストが高騰する問題がある。さらに、列車や自動車、船舶など、無線通信ユニットが移動体に搭載される用途にあっては、各無線通信ユニットをケーブル接続することは物理的に不可能である。
【0007】
また、仮に無線通信ユニット同士も無線接続されていると考えても、それら無線通信ユニット間の相互接続形態についての具体的な検討はされていない。特に、いくつかの無線通信ユニットに対し、インターネット等にアクセスしようとする移動端末の接続数が増大し、特定の無線通信ユニットとの間で通信トラフィックが混雑した場合の輻輳対策等については、何ら技術的な提案がなされていない状況である。
【0008】
本発明の課題は、複数の無線通信ユニットを簡便な構造により無線連携させることが可能であり、ひいては複数ユニット間の連携動作を容易に実現できるとともに、特定の無線通信ユニットとの間の通信トラフィックが混雑した場合においても輻輳等の問題を生じにくくすることができる無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の無線通信ユニットは、移動体上に搭載可能に構成され、無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対し第一ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に対し第二ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされ、EPC機能部は、第一外部無線通信ユニットと第二外部無線通信ユニットとに共用化される同一の外部無線通信ユニットをバックホール構築先無線通信ユニットとして、中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかに対し、中継無線通信部に対してはバックホール構築先無線通信ユニットの無線基地局部との間に第一ユニット間無線ベアラを、無線基地局部に対してはバックホール構築先無線通信ユニットの中継無線通信部との間に第二ユニット間無線ベアラを構築するために、バックホール構築先無線通信ユニットとの間にそれら第一ユニット間無線ベアラ及び第二ユニット間無線ベアラからなる無線バックホールを構築する制御指令を行なう無線バックホール構築制御指令部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の無線ネットワークシステムは、移動体上に搭載可能に構成され、無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末用無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対し第一ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に対し第二ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされ、EPC機能部は、第一外部無線通信ユニットと第二外部無線通信ユニットとに共用化される同一の外部無線通信ユニットをバックホール構築先無線通信ユニットとして、中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかに対し、中継無線通信部に対してはバックホール構築先無線通信ユニットの無線基地局部との間に第一ユニット間無線ベアラを、無線基地局部に対してはバックホール構築先無線通信ユニットの中継無線通信部との間に第二ユニット間無線ベアラを構築するために、バックホール構築先無線通信ユニットとの間にそれら第一ユニット間無線ベアラ及び第二ユニット間無線ベアラからなる無線バックホールを構築する制御指令を行なう無線バックホール構築制御指令部が設けられている無線通信ユニットの対を含み、無線通信ユニットの対の一方の中継無線通信部と他方の無線基地局部とが第一ユニット間無線ベアラにより接続され、無線通信ユニットの対の一方の無線基地局部と他方の中継無線通信部とが第二ユニット間無線ベアラにより接続されることにより、それら対をなす無線通信ユニットの間に無線バックホールが構築されてなることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の無線通信ユニット(及び無線ネットワークシステム)において、無線バックホール構築制御指令部は、第二ユニット間無線ベアラにより無線基地局部が第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部と接続中の状態において、中継無線通信部に対し無線バックホール構築制御指令を行なうものであり、中継無線通信部は、無線バックホール構築の制御指令を受けるに伴い第一外部無線通信ユニットの無線基地局部に対しアタッチ要求することにより第一ユニット間無線ベアラを構築するものとして構成できる。また、無線バックホール構築制御指令部は、第一ユニット間無線ベアラにより中継無線通信部が第一外部無線通信ユニットの無線基地局部と接続中の状態において、無線基地局部に対し無線バックホール構築制御指令を行なうものであり、無線基地局部は、無線バックホール構築の制御指令を受けるに伴いバックホール構築要求を第二外部無線通信ユニットの中継無線通信部に送信するとともに、二外部無線通信ユニットの中継無線通信部から該バックホール構築要求への応答としてのアタッチ要求を受け付けることにより第二ユニット間無線ベアラを構築するものとして構成することができる。
【0012】
また、上記本発明の無線通信ユニット(及び無線ネットワークシステム)において、EPC機能部と外部ネットワークとの間のIPパケットの送受信を中継するルータを設けることができる。無線バックホール構築制御指令部は、ルータに外部ネットワークとして公共ネットワークが接続されることを必要条件として、中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかに対し無線バックホール構築の制御指令を行なうものとすることができる。この場合、EPC機能部は、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部又は第二外部無線通信ユニットの無線基地局部に対する移動端末の接続数の情報を取得する端末接続数取得部を有するものとして構成でき、無線バックホール構築制御指令部は、接続数が予め定められた閾値を超えることを必要条件として、中継無線通信部及び無線基地局部の少なくともいずれかに対し無線バックホール構築の制御指令を行なうものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線通信ユニット及び無線通信ネットワークシステムにおいては、上流側の別の無線通信ユニットである上流ユニット(上流無線基地局部)と第一ユニット間無線ベアラを介して接続可能な中継無線通信部が設けられる。また、無線基地局部は、下流側の別の無線通信ユニットである下流ユニット(第二外部中継無線通信部)と第二ユニット間無線ベアラを介して接続可能とされる。その結果、複数の無線通信ユニットをユニット間無線ベアラにより接続することが可能となり、複数台の無線通信ユニットにより、より広いエリアをカバーする無線ネットワークシステムを容易に構築できる。そして、EPC機能部には、外部無線通信ユニットの一つをバックホール構築先無線通信ユニットとして、自身の中継無線通信部とバックホール構築先無線通信ユニットの無線基地局部との間に第一ユニット間無線ベアラを、自身の無線基地局部とバックホール構築先無線通信ユニットの中継無線通信部との間に第二ユニット間無線ベアラを構築することで、自身を含めた2つの無線通信ユニットの間を相互接続するユニット間無線ベアラの数を冗長化して無線バックホールを構築するための無線バックホール構築制御指令部を設けた。その結果、構築される無線通信ネットワークシステムにおいては、無線通信ユニットの対の一方の中継無線通信部と他方の無線基地局部とが第一ユニット間無線ベアラにより接続され、無線通信ユニットの対の一方の無線基地局部と他方の中継無線通信部とが第二ユニット間無線ベアラにより接続されることにより、それら対をなす無線通信ユニットの間に無線バックホールが構築され、それら無線通信ユニットの対の間の通信トラフィックが混雑した場合においても輻輳等の問題を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を示す模式図。
図2図1の無線通信ユニット対の電気的構成の概略を示すブロック図。
図3】本発明の無線通信ユニットの電気的構成の一例を示すブロック図。
図4】UE(移動端末)の電気的構成の一例を示すブロック図。
図5】IPパケットの概念図。
図6】3GPPのコントロールプレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
図7】3GPPのユーザプレーンのプロトコルスタックを概念的に示す図。
図8】3GPPの下りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
図9】同じく上りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
図10】周波数バンドチャネル、及びリソースブロックの関係を示す概念図。
図11図3の無線通信ユニットをユニット間無線ベアラにより複数カスケード接続して構築される無線ネットワークシステムの一例を模式的に示す図。
図12】無線通信ユニットの中継無線通信部の、上流側の別の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
図13】UE(移動端末)の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
図14】バックホール構築先無線通信ユニットとの間に第一ユニット間無線ベアラが先に確立されている場合の、無線バックホール構築手順の一例を示す通信フロー図。
図15図14のフローに従う無線バックホール構築手順の説明図。
図16図15に続く説明図。
図17】バックホール構築先無線通信ユニットとの間に第二ユニット間無線ベアラが先に確立されている場合の、無線バックホール構築手順の一例を示す通信フロー図。
図18図17のフローに従う無線バックホール構築手順の説明図。
図19図18に続く説明図。
図20】バックホール構築先無線通信ユニットへの移動端末の接続数が閾値を超えた場合に無線バックホールを構築するようにした処理手順の説明図。
図21】1つの無線通信ユニットに無線基地局部を複数設ける場合の無線通信ユニット対の変形例を示すブロック図。
図22図21の無線通信ユニット対を用いた無線通信ネットワークシステムにおいて無線バックホールを構築した様子を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を一実施形態として示す模式図である。無線通信ユニット対は本発明の一実施形態である同一構成の無線通信ユニット1(A),1(B)を有し(以下、無線通信ユニット対1(A),1(B)ともいう)、それぞれ3GPPで規定された方式(本実施形態では、LTEとするが、WiMAXなど他の方式であってもよい)の通信プロトコルスタックに従い、UE(移動端末)5との間で無線通信を行なうものとして構成されている。
【0016】
無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれ移動体である大型船舶WS(A),WS(B)に設置され、後に詳述するユニット間無線ベアラ55により無線接続されている。各無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれUE(移動端末)5が接続可能となるセル50(A),50(B)を形成する。また、大型船舶WS(A),WS(B)(例えば漁業母船、タンカーなど)の周囲では小船舶FB(例えば、漁船、タグボートなど)が操業をおこなっており、セル50(A)又はセル50(B)内の小船舶FBの乗員がUE5を携行している。それらUE5は、それぞれ最も近い無線通信ユニット1(A),1(B)に対し端末用無線ベアラ57により無線接続されている。なお、UE5は大型船舶WS(A),WS(B)の乗員が携行するものであってもよい。また、無線通信ユニット1(A),1(B)の設置先は船舶以外の移動体(車両など)であってもよいし、例えば陸上の所望の設置先に固定配置してもよい。
【0017】
図2は、無線通信ユニット1(A),1(B)の機能ブロック構成を示すものである。無線通信ユニット1(A),1(B)は電気的にはいずれも同一の構成を有する。そして、本明細書において複数の無線通信ユニット及びその構成要素を互いに区別して示す場合は、対応する構成要素に同一の番号を付与しつつ、該番号に続く形で括弧付きの大文字アルファベットを付与して示す。一方、無線通信ユニット間の区別を行なわずに各構成要素を示す場合は、括弧付きの大文字アルファベットを省略する場合がある。以下、無線通信ユニット1(A)側の符号を主体的に用いて説明するが、必要に応じて無線通信ユニット1(B)側についても、対応する符号を援用しつつ説明する。
【0018】
無線通信ユニット1(A)は、UE(移動端末)5が端末用無線ベアラ57を介して接続可能な無線基地局部4(A)(eNodeB(evolved NodeB))と、無線基地局部4(A)に有線接続され、該無線基地局部4(A)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部3(A)とを有する。また、該EPC機能部3(A)には、上流側の無線通信ユニット1(B)の無線基地局部4(B)(上流無線基地局部)に対し上流側のユニット間無線ベアラ55(P)(上流ユニット間無線ベアラ)を介して接続可能な中継無線通信部9(A)が有線接続されている。
【0019】
一方、無線通信ユニット1(B)は、同様の無線基地局部4(B)と、無線基地局部4(B)に有線接続され、該無線基地局部4(B)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC機能部3(B)と、EPC機能部3(B)に有線接続される中継無線通信部9(B)を備える。該中継無線通信部9(B)は、無線通信ユニット1(B)の上流側にさらに別の無線通信ユニットが配置されていれば、その無線通信ユニットの無線基地局部に対しユニット間無線ベアラを介して接続可能である(図11参照)。また、無線基地局部4(B)は、下流側の無線通信ユニット1(A)(下流ユニット)の中継無線通信部9(A)(下流中継無線通信部)に対し、下流側のユニット間無線ベアラ55(下流ユニット間無線ベアラ)を介して接続可能とされている。つまり、ユニット間無線ベアラ55は、無線通信ユニット1(A)から見たときは上流ユニット間無線ベアラとなり、無線通信ユニット1(B)から見たときは下流ユニット間無線ベアラとなる。
【0020】
次に、いずれの無線通信ユニット1(A),1(B)(以下、総称する場合は無線通信ユニット1という)においても、EPC機能部3は、コントロールプレーン側のゲートウェイとなるMME(Mobility Management Entity)2、ユーザプレーン側のゲートウェイとなるS-GW(Serving Gateway)6、EPC機能部3、及び該EPC機能部3の上流側ネットワーク要素(ここで、ルータ8(後述)及び中継無線通信部9)の結節点に位置し、上流側ネットワーク要素側(つまり、上流ユニット側)に向けたIPアドレス管理を行なうP-GW(PDN (Packet Data Network) Gateway)7を有する。また、無線基地局部4には複数のUE5が端末用無線ベアラ57を介して無線接続される。
【0021】
コントロールプレーン側において無線基地局部(eNodeB)4は、S1-MMEインターフェースを介してMME2に接続される。また、ユーザプレーン側において無線基地局部4は、S1-Uインターフェースを介してS-GW6に接続される。また、S-GW6はS5インターフェースを介してP-GW7と接続される。
【0022】
図3は、無線通信ユニット1の電気的構成を示すブロック図である。EPC機能部3はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU301、プログラム実行領域となるRAM302、マスクROM303(恒久的に書換えが不要なマイコンハードウェア周辺制御用等のファームウェアを格納している;以下、同様)及びそれらを相互に接続するバス306等からなる。また、バス306にはフラッシュメモリ305が接続され、ここにEPC用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア305aと、前記LTEプロトコルスタックをプラットフォームとして、図2のMME2、S-GW6及びP-GW7の各機能を仮想的に実現するMMEエンティティ305b、S-GWエンティティ305c及びP-GWエンティティ305dの各プログラムがインストールされている。さらに、フラッシュメモリ305には、無線バックホール構築制御指令部の機能を実現するための無線バックホール構築制御指令プログラム305rも格納されている。
【0023】
また、バス306には上流側通信インターフェース304A及び下流側通信インターフェース304Bが接続されている。P-GW用のIPパケットの入出力ポートは上流側通信インターフェース304Aに、S-GW用のIPパケットの入出力ポートは下流側通信インターフェース304Bにそれぞれ確保される。なお、上記の構成では、図2のMME2、S-GW6及びP-GW7をコンピュータハードウェア上での仮想機能ブロックとして構成しているが、各々独立したハードウェアロジックにより構成してもよい。
【0024】
無線基地局部4はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU401、プログラム実行領域となるRAM402、マスクROM403及びそれらを相互に接続するバス406等からなる。バス406にはフラッシュメモリ405が接続され、ここに無線基地局用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア405aが格納されている。また、バス406には端末用無線ベアラの構築によりUEと無線接続するための無線通信部412と、通信インターフェース404が接続されている。通信インターフェース404はEPC機能部3の下流側通信インターフェース304Bと有線の通信バス31により接続されている。
【0025】
また、中継無線通信部もマイコンハードウェアを主体に構成され、同一の電気的構成を有している。よって、その一方で代表させて説明する(以下、両中継無線通信部を総称して中継無線通信部9ともいう)。中継無線通信部9は、CPU901、プログラム実行領域となるRAM902、マスクROM903及びそれらを相互に接続するバス906等からなる。バス906にはフラッシュメモリ905が接続され、ここに中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア905aが格納されている。また、バス906にはユニット間無線ベアラの構築により上流無線基地局部と無線接続するための無線通信部912と、通信インターフェース904が接続されている。通信インターフェース904はEPC機能部3の上流側通信インターフェース304Aと有線の通信バス30により接続されている中継無線通信部9において、通信ファームウェア905aに組み込まれている中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックは、後述するUE(移動端末)用のプロトコルスタックと同一のものが使用される。換言すれば、中継無線通信部9の上流無線基地局部への接続手順は、UE(移動端末)の接続手順であるアタッチシーケンスと方式的には同一である。
【0026】
また、通信バス30には、EPC機能部3と外部ネットワーク60との間のIPパケットの送受信を中継するルータ8が接続されている(すなわち、EPC機能部3と中継無線通信部9との間にルータ8が設けられている)。外部ネットワーク60は、例えば公共ネットワークであり、具体的にはインターネットである。
【0027】
次に、無線通信ユニット1は、着脱式の二次電池モジュール21(例えば、リチウムイオン二次電池モジュールやニッケル水素二次電池モジュールなど)と、無線基地局部4、EPC機能部3、ルータ8及び中継無線通信部9の各機能回路ブロックと、二次電池モジュール21からの入力電圧を各機能回路ブロックの駆動電圧に変換して出力する電源回路部22とが可搬型筐体23に一体的に組付けられた構造を有する。これにより、無線通信ユニット1は、二次電池モジュール21から駆動電源電圧を自律的に調達でき、商用交流などの外部電源電圧が使用不能な設置場所(例えば海上など)においても問題なく使用可能である。可搬型筐体23は金属ないし強化型樹脂製の箱型であり、図3に示す例では、搬送ないし移動の便宜を図るため、可搬型筐体23の底部にキャスター24Cを、同じく背面に手押し用の取手24を設けている。
【0028】
放電により二次電池モジュール21の出力電圧が下がった場合は、可搬型筐体23から二次電池モジュール21を取り外し、例えば図示しない商用交流電源や自家発電装置に接続された専用の充電器に装着して充電することが可能である。また、電源回路部22は、上記商用交流や移動体に設けられた集中電源部などの外部電源電圧も受電できるようになっており、上記駆動電源電圧に変換出力が可能である。さらに、当該外部電源電圧により二次電池モジュール21の充電を実行できるように構成することもできる。例えば電源回路部22が商用交流等から受電している状態で、停電により該受電が途絶えた場合は二次電池モジュール21からの受電に切り替えることで、無線通信ユニット1の動作が継続可能となるように構成することもできる。
【0029】
次に、図4は、UE(移動端末)5の電気的構成の一例を示すブロック図である。UE5はマイコン100を処理主体として備えたスマートフォンとして構成されている。マイコン100は、CPU101、プログラム実行領域となるRAM102、ROM103、入出力部104及びそれらを相互に接続するバス106等からなる。また、バス106にはフラッシュメモリ105が接続され、ここにUE5の動作環境を構築するためのOS(図示せず)と、端末アプリ105b等がインストールされている。
【0030】
また、入出力部104にはグラフィックコントローラ1091を介してモニタ109が接続されている。モニタ109には入力部をなすタッチパネル110が重ね合わされ、モニタ109に表示形成される種々のソフト操作部(ボタンやアイコンなど:図13図17参照)と協働して、UE5の動作制御に必要な種々の情報入力がなされるようになっている。タッチパネル110はタッチパネルコントローラ1101を介して入出力部104に接続されている。入出力部104には静止画ないし動画を撮影するためのカメラ111が接続されている。さらに、バス106には無線通信部112が接続されている。UE5は該無線通信部112にて、図2の無線通信ユニット1の無線基地局部4と端末用無線ベアラ57を介して無線接続される。
【0031】
図5は、UE5と無線通信ユニット1との間のデータ伝送に使用するIPパケットの構造を示す模式図である。IPパケット1300はIPヘッダ1301とペイロード1302とからなり、IPヘッダ1301にはPDU識別番号、データの送信元アドレス1301a、送信先アドレス1301bなどが書き込まれる。
【0032】
図6及び図7は、LTEシステムにおける無線プロトコルスタックを示し、図6はユーザプレーンのプロトコルスタックを、図7はコントロールプレーンのプロトコルスタックを示している。該無線プロトコルスタックは、OSI参照モデルのレイヤ1~レイヤ3に区分されており、レイヤ1はPHY(物理)層である。レイヤ2は、MAC(Medium Access Control:メディアアクセス制御)層、RLC(Radio Link Control:無線リンク制御)層、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol:パケットデータ暗号化)層を含む。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control:無線リソース制御)層及びNAS(Non-Access Stratum:非アクセス)層を含む。
【0033】
各層の役割は以下の通りである。
・PHY層:符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行なう。UE5及び中継無線通信部9のPHY層と無線基地局部(eNodeB)4のPHY層との間では、物理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・MAC層:データの優先制御、HARQによる再送制御処理、及びランダムアクセス手順等を行なう。UE5及び中継無線通信部9のMAC層と無線基地局部4のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。無線基地局部4のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE5への割当リソースブロックを決定するスケジューラを含む。
【0034】
・RLC層:MAC層及びPHY層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE5のRLC層と無線基地局部4のRLC層との間では、論理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・PDCP層:PDUのヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行なう。
・RRC層:制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE5のRRC層と無線基地局部4のRRC層との間では、各種設定のためのメッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE5のRRCと無線基地局部4のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE5はRRCコネクティッドモードとなり、そうでない場合はRRCアイドルモードとなる。
【0035】
以上の層はコントロールプレーン及びユーザプレーンの双方にて使用される。一方、コントロールプレーンのみ、UE5、中継無線通信部9及びMME2には、RRC層よりさらに上位にセッション管理及びモビリティ管理等を行なうNAS層が設けられる。また、無線基地局部4のEPC機能部3側とのユーザデータ伝送インターフェースには、GTP-U(GPRS(General Packet Radio Service)Tunneling Protocol for User Plane)層が設けられている。GTP-U層は、接続先のUE5ないし中継無線通信部9の識別や、使用する無線ベアラの識別を行なうためのものである。
【0036】
次に、図8は、LTEシステムにおける下りリンクのチャネルマッピングを示す。ここでは、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル)は、データの送信のための個別論理チャネルである。DTCHは、トランスポートチャネルであるDLSCH(Downlink Shared Channel:下りシェアドチャネル)にマッピングされる。
【0037】
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):UE5とネットワークとの間の個別制御情報を送信するための論理チャネルである。DCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4とRRC接続を有する場合に用いられる。DCCHは、DLSCHにマッピングされる。
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9と無線基地局部4との間の送信制御情報のための論理チャネルである。CCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4との間でRRC接続を有していない場合に用いられる。CCCHは、DLSCHにマッピングされる。
【0038】
・BCCH(Broadcast Control Channel:放送制御チャネル):システム情報配信のための論理チャネルである。BCCHは、トランスポートチャネルであるBCH(Broadcast Channel、放送チャネル)又はDLSCHにマッピングされる。
・PCCH(Paging Control Channel:ページング制御チャネル):ページング情報、及びシステム情報変更を通知するための論理チャネルである。PCCHは、トランスポートチャネルであるPCH(Paging Channel:ページングチャネル)にマッピングされる。
【0039】
また、トランスポートチャネルと物理チャネルとの間のマッピング関係は以下の通りである。
・DLSCH及びPCH:PDSCH(Physical Downlink Shared Channel:物理下りシェアドチャネル)にマッピングされる。DLSCHは、HARQ、リンクアダプテーション、及び動的リソース割当をサポートする。
・BCH:PBCH(Physical Broadcast Channel:物理ブロードキャストチャネル)にマッピングされる。
【0040】
次に、図9は、LTEシステムにおける上りリンクのチャネルマッピングを示す。図8と同様に、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
【0041】
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3との間の制御情報を送信するために使用される論理チャネルであり、EPC機能部3と無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)接続を有していないUE5によって使用される。
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):1対1(point-to-point)の双方向の論理チャネルであり、UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3と間で個別の制御情報を送信するために利用するチャネルである。専用制御チャネルDCCHは、RRC接続を有しているUE5によって使用される。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル):1対1の双方向論理チャネルであり、特定のUE又は中継無線通信部専用のチャネルであって、ユーザ情報の転送のために利用される。
【0042】
・ULSCH(Uplink Shared Channel:上りリンク共用チャネル):HARQ)、動的適応無線リンク制御、間欠送信(DTX:Discontinuous Transmission)がサポートされるトランスポートチャネルである。
・RACH(Random Access Channel:ランダムアクセスチャネル):制限された制御情報が送信されるトランスポートチャネルである。
【0043】
・PUCCH(Physical Uplink Control Channel:物理上りリンク制御チャネル):下りリンクデータに対する応答情報(ACK(Acknowledge)/NACK(Negative acknowledge))、下りリンクの無線品質情報(CQI)、および、上りリンクデータの送信要求(スケジューリングリクエスト:Scheduling Request:SR)を無線基地局部4に通知するために使用される物理チャネルである。
・PUSCH(Physical Uplink Shared Channel:物理上りリンク共用チャネル):上りリンクデータを送信するために使用される物理チャネルである。
・PRACH(Physical Random Access Channel:物理ランダムアクセスチャネル):主にUE5から無線基地局部4への送信タイミング情報(送信タイミングコマンド)を取得するためのランダムアクセスプリアンブル送信に使用される物理チャネルである。ランダムアクセスプリアンブル送信はランダムアクセス手順の中で行なわれる。
【0044】
図9に示すように、上りリンクでは、次のようにトランスポートチャネルと物理チャネルのマッピングが行われる。上りリンク共用チャネルULSCHは、物理上りリンク共用チャネルPUSCHにマッピングされる。ランダムアクセスチャネルRACHは、物理ランダムアクセスチャネルPRACHにマッピングされる。物理上りリンク制御チャネルPUCCHは、物理チャネル単独で使用される。また、共通制御チャネルCCCH、専用制御チャネルDCCH、専用トラフィックチャネルDTCHは、上りリンク共用チャネルULSCHにマッピングされる。
【0045】
次に、LTEシステムの下りリンクにおいては、UE5及び中継無線通信部9は無線基地局部4に対してOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing、直交周波数分割多重)アクセス(OFDMA)により無線接続する。OFDMA方式は、周波数分割多重と時間分割多重とを複合させた二次元の多重化アクセス方式として特徴づけられる。具体的には、直交する周波数軸と時間軸のサブキャリアを分割してUE5に割り振り、各サブキャリアの信号がゼロ(0点)になるように、周波数軸上で直交するサブキャリアを分割する。サブキャリアを分割して周波数軸上に割り当てることにより、あるサブキャリアがフェージングの影響を受けても影響のない別のサブキャリアを選択することができるので、ユーザは無線環境に応じてより良好なサブキャリアを使用でき、無線品質を維持できる利点が生ずる。
【0046】
そして、OFDMA方式においては、周波数軸と時間軸とが張る仮想平面上で定義されるリソースブロック(Resource Block:以下、RBともいう)が無線リソースとして採用される。RBは図10に示すように、上記平面を180kHz/0.5msecでマトリックスに区切ったブロックとして定義され、各ブロックは周波数軸上では15kHz間隔で隣接する12個のサブキャリアを、時間軸上ではフレームの1スロット分(7シンボル)を含む。このRBは時間軸上で隣接する2つ(1msec)を1組としてUE5及び中継無線通信部9に割り当てられる。他方、LTEシステムの上りリンクにおいても、SC-FDM(Single Career Frequency-Division Multiplexing)アクセス(SC-FDMA)が採用される点を除き、同様の概念のリソースブロックが無線リソースとして用いられる。OFDMAでは1つのリソースブロックが周波数軸上で12のサブキャリア(帯域幅:15kHz)に分割されるのに対し、SC-FDMAはサブキャリアへの分割がなされないシングルキャリア方式である。
【0047】
例えば下りリンクへのリソースブロックの割当については、通常のLTEプロトコルにおいて次のような手順にて決定されている。UE5及び中継無線通信部9は、定められた周波数単位ごとに、eNodeB4より送信されるCQI参照信号を受信し、下りチャネルの受信品質を示す指示子であるCQIを測定してCQI情報を作成する。CQI情報は、測定により得られる受信品質を変調方式毎に符号化率と周波数利用効率の2つのパラメータにて表したもので、上りリンクの制御チャネル(前述のPUCCH)を用いてUE5からeNodeB4にCQIインデクスを用いて報告される。
【0048】
eNodeB4は、複数のUE5又は中継無線通信部9から通知されたCQI情報を基に、個々のUE5又は中継無線通信部9との無線ベアラに割り当てる。各UE5及び中継無線通信部9のCQI情報の内容に応じて受信信号レベルの高い周波数ブロックを各々のUE5及び中継無線通信部9に対して最適に割当てを行うことにより、UE5及び中継無線通信部9のダイバーシチ効果(マルチユーザダイバーシチ)を得ることができ、ユーザスループットおよびセル当りのスループットを向上できる。
【0049】
図11は、上記の構成の無線通信ユニット1を採用した場合の、無線ネットワークシステムの構成例を示すものである。該無線ネットワークシステムにおいて無線通信ユニット群1(A)~1(D)は、互いに隣接する無線通信ユニット対(1(A)と1(B)、1(B)と1(C)、1(C)と1(D))の基地局セル(50(A)と50(B)、50(B)と50(C)、50(C)と50(D))が一部重なる位置関係で、ユニット間無線ベアラ55(A),55(B),55(C)によりカスケード接続されている。該構成により、無線通信ユニット1同士の接続トポロジーが極めて簡略化されていることが容易に把握できる。この場合、例えば無線通信ユニット対1(A),1(B)の一方に接続されたUE5(A)(移動端末)と他方に接続されたUE5(B)(移動端末)とが、無線通信ユニット対1(A),1(B)及び該無線通信ユニット対1(A),1(B)を接続するユニット間無線ベアラ55(A)を介してIPパケットの送受信を行なうことができる。無線通信ユニット群1(A)~1(D)は、例えば全てが前述の船舶や車両などの移動体上に搭載されていてもよいし、一部のもののみを移動体上に搭載し、残余のものを建物内などに固定設置するようにしてもよい。
【0050】
また、図11においては、ユニット間無線ベアラ55(A),55(B),55(C)によりカスケード接続された無線通信ユニットが3以上(図11では、4つ)となっている。この場合、無線通信ユニット群1(A)~1(D)の1つの無線通信ユニットをなす第一の無線通信ユニット1(A)に接続されたUE(移動端末)5(A)と、無線通信ユニット群1(A)~1(D)において第一の無線通信ユニット1(A)に対し1以上の中間の無線通信ユニット1(B),1(C)を隔てて配置される第二の無線通信ユニット1(C),1(D)に接続されたUE(移動端末)5(C),5(D)とが、第一の無線通信ユニット1(A)、中間の無線通信ユニット1(B),1(C)及び第二の無線通信ユニット1(C),1(D)と、それら無線通信ユニット1(A)~1(D)を接続するユニット間無線ベアラ55(A),55(B),55(C)とを介してIPパケットを送受信できるようになっている。このように、カスケード接続される無線通信ユニットの数を容易に増やすことができ、より広大なエリアにてUE5同士の無線通信によるIPパケットの送受信が可能となる。
【0051】
3GPP仕様の無線通信方式においては、該3GPPに規定された複数の周波数バンドのいずれが割り当てられる。この割り当てられる周波数バンドは、通信方式によって相違し、例えばLTEバンドとしてはバンド1、3、6、8、11、18、19、21、26、28、41及び42が使用されている。いずれのバンドも、予め定められた帯域幅の複数の周波数チャネルに分割され、EPC機能部3は、図2のユニット間無線ベアラ55及び端末用無線ベアラ57を、予め定められた周波数チャネルを選択して構築することとなる。すなわち、下流ユニット間チャネル、上流ユニット間チャネル及び端末側チャネルは、各々3GPPに規定される複数のバンドのいずれかに属する周波数チャネルとして設定される。
【0052】
本実施形態において、EPC機能部3は、(下流)ユニット間無線ベアラ55の設定周波数チャネルを、予め定められた特定の1つの周波数チャネルである(下流)ユニット間チャネルに固定設定する。また、端末用無線ベアラ57の設定周波数チャネルである端末側チャネルについては、(下流)ユニット間チャネルと同一の周波数チャネルに設定される。つまり、EPC機能部3は、直下の無線基地局部4に対し、下流側の無線通信ユニット1の中継無線通信部9と移動端末5に対し同一の周波数チャネルを設定する。
【0053】
次に、図11において、無線通信ユニット1(A)のセル50(A)、無線通信ユニット1(B)のセル50(B)及び無線通信ユニット1(C)のセル50(C)とは互いに重なりを生じている。この場合、例えば無線通信ユニット1(B)から見て上流及び下流の無線通信ユニット1(A),1(C)を接続するユニット間無線ベアラ55(A),(B)のユニット間チャネルは、これを互いに異なる周波数チャネルに設定することで、ユニット間無線ベアラ55(A),(B)の構築に際して、これに関与する、互いに一部重なる複数のセル50(A)~50(C)の間で電波干渉を効果的に防止することができる。
【0054】
より具体的には、無線通信ユニット1(A)~1(D)の各EPC機能部3は、(上流)ユニット間無線ベアラが構築される際に、下流ユニット間チャネルを、上流ユニット間無線ベアラに対して設定される上流ユニット間チャネルと異なる周波数チャネルに設定する一方、端末用チャネル群については、下流ユニット間チャネル及び上流ユニット間チャネルとのいずれとも異なる周波数チャネル群として設定している。例えば、無線通信ユニット1(B)に着目してみた場合、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は、上流ユニット間無線ベアラ55(B)に対して設定される上流ユニット間チャネルを例えばCH2に設定する。一方、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は、該無線通信ユニット1(A)から見た上流ユニット間無線ベアラ55(A)(無線通信ユニット1(B)から見れば下流ユニット間無線ベアラである)に対して設定される上流ユニット間チャネル(無線通信ユニット1(B)から見れば下流ユニット間チャネルである)を、上記CH2と相違するCH1に設定するのである。このとき、下流ユニット間チャネルCH1と上流ユニット間チャネルCH2とを同一バンド内の互いに異なる周波数チャネルとして設定することで、ユニット間無線ベアラを構築するための無線基地局部4及び中継無線通信部9のハードウェアを、単一バンド仕様にて簡便に構成できる利点が生ずる。また、端末側チャネルについては、上記同一バンドに属する周波数チャネルのうち、下流ユニット間チャネルと同一のチャネルに設定される。
【0055】
また、本実施形態では、上記の同一バンドとして、3GPPに規定されたバンド28が採用されている。バンド28は、地上波アナログテレビ放送の停波にともない空きを生じたVHF帯に設定されている(700MHz帯)。バンド28は低周波数帯のため通信速度が幾分遅い関係上、都市部など端末加入者の多いエリア等での採用が積極的に進められておらず、電波リソースの利用状況がそれほどひっ迫していないためスムーズな接続が期待できる。また、低周波数帯であるということは、電波の遠方到達性に優れ、1つの無線通信ユニットがカバーできるエリア(セル)の拡大を図ることができる。また、地下や障害物があっても繋がりやすい特性を有し、例えば海上や鉱山などで本発明の無線ネットワークシステムを構築する上でも好適であるといえる。
【0056】
以下、中継無線通信部9とUE5のアタッチシーケンスの流れについて、図12及び図13を用いて説明する。図12は中継無線通信部9のアタッチシーケンスを示す。TS1では中継無線通信部9から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。中継無線通信部9は、eNodeB4から定期的に出力される報知信号を受信することにより、eNodeB4のセル内(つまり、圏内)に入ったことを認識でき、アタッチ要求をeNodeB4に向けて出力する。このとき、要求元に無線通信ユニットのIPアドレスを送信する。MME2はこれを受け、TS2にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS3にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS4にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。
【0057】
MME2は、TS5にて要求元ユニットが下流ユニット間無線ベアラに使用中のチャネル番号を取得し、TS6で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に対し、設定チャネル番号(取得したチャネルに対する隣接チャネルの番号)とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS7にて設定するべき無線ベアラ(ユニット間無線ベアラ)の設定チャネル番号を含むMIB(Master Information Block)を中継無線通信部9に送信する。TS8にて中継無線通信部9はユニット間チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に固定設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS9にて無線基地局部4はセッション開始要求(アタッチ受入れ)を中継無線通信部9に通知する。TS10にて中継無線通信部9はユニット間無線ベアラを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS11にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。
【0058】
一方、図13はUE5(移動端末)のアタッチシーケンスを示す。TS11’ではUE5から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。このとき、要求元に無線通信ユニットのIPアドレスを送信する。MME2はこれを受け、TS12にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS13にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS14にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。MME2は、図13の処理に従い、端末用無線ベアラ群として使用可能な設定チャネル番号を決定する。そして、TS16で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に決定した設定チャネル番号とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS17にて設定するべき無線ベアラ(ユニット間無線ベアラ)の設定チャネル番号を含むMIB(Master Information Block)をUE5に送信する。この設定チャネル番号は、無線基地局部4に接続している他の無線通信ユニットの中継無線通信部が存在する場合は、その中継無線通信部9と同一のチャネル番号が使用される。
【0059】
TS18にてUE5は端末側チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS19にて無線基地局部4はセッション開始要求(アタッチ受入れ)をUE5に通知する。TS20にてUE5は端末用無線ベアラを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS21にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。上記のように、UE5のアタッチシーケンスと中継無線通信部9のアタッチシーケンスとは、周波数チャネル設定の内容を除き、基本的に同一の手順に従い実行されている。
【0060】
次に、図11の無線通信ユニット1(A)~1(D)はいずれもルータ8を内蔵しており、例えば衛星通信回線61等により外部ネットワーク60(例えばグローバル公共ネットワーク(インターネット))と接続可能である。該構成により、本発明の無線ネットワークシステム外のネットワークを送信先とするIPパケットの転送も可能である。
【0061】
そして図2に示すように、本発明においては、任意の無線通信ユニット1(A)と無線通信ユニット1(B)とからなる無線通信ユニット対間において、同時に構築する無線通信ベアラの数を2つ(55(P),55(S))に冗長化することができ、これら2つのユニット間無線ベアラ55(P),55(S)が無線バックホールを形成する。以下、無線通信ユニット1(A)からみて無線通信ユニット1(B)がバックホール構築先無線通信ユニットとなる場合を例にとり説明する。この場合、無線通信ユニット1(A)の中継無線通信部9(A)が無線通信ユニット1(B)の無線基地局部4(B)との間に構築する無線通信ベアラを第一ユニット間無線ベアラ55(P)とし、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)の中継無線通信部9(B)が無線通信ユニット1(A)の無線基地局部4(A)との間に構築する無線通信ベアラを第二ユニット間無線ベアラ55(S)とする。そして、無線通信ユニット1(A)の中継無線通信部9(A)に接続する無線通信ユニット(上流ユニット)が第一外部無線通信ユニットであり、同じく無線基地局部4(A)に接続する無線通信ユニット(下流ユニット)が第二外部無線通信ユニットであるが、無線バックホールが構築される図2の状態においては、第一外部無線通信ユニット及び第二外部無線通信ユニットはいずれも無線通信ユニット1(B)であって実体が同一である。
【0062】
第一ユニット間無線ベアラ55(P)と第二ユニット間無線ベアラ55(S)とは、各々図12によりすでに説明済みのアタッチシーケンスにより、中継無線通信部9(A)が無線基地局部4(B)に、中継無線通信部9(B)が無線基地局部4(A)にそれぞれアタッチすることにより構築される。そして、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3(A)は、中継無線通信部9(A)及び無線基地局部4(A)の少なくともいずれかに対し、中継無線通信部9(A)に対してはバックホール構築先無線通信ユニット(無線通信ユニット)1(B)の無線基地局部4(B)との間に第一ユニット間無線ベアラ55(P)を、無線基地局部4(A)に対しては同じく中継無線通信部9(B)との間に第二ユニット間無線ベアラ55(S)を構築させることにより、バックホール構築先無線通信ユニット(無線通信ユニット)1(B)との間にそれら第一ユニット間無線ベアラ55(P)及び第二ユニット間無線ベアラ55(S)からなる無線バックホールを構築する制御指令を行なう。この処理は、前述の無線バックホール構築制御指令プログラム305rが担う。
【0063】
ここで、EPC機能部3が、中継無線通信部9(A)及び無線基地局部4(A)の「少なくともいずれか」に対し、無線バックホールを構築する制御指令を行なうことの技術的意義は、次の3つの場合を包含している。
(1)中継無線通信部9(A)と無線基地局部4(B)の間に第一ユニット間無線ベアラ55(P)がすでに構築済みの場合において、中継無線通信部9(B)と無線基地局部4(A)との間に、第二ユニット間無線ベアラ55(S)を新たに構築させ、無線バックホールを形成する。この場合は、無線バックホールを構築する制御指令が無線基地局部4(A)に向けて出力される。なお、バックホール構築先無線通信ユニットとなる無線通信ユニット1(B)は、中継無線通信部9(A)に単独でつながっている状態では第一外部無線通信ユニット(上流ユニット)に相当する。
(2)中継無線通信部9(B)と無線基地局部4(A)の間に第二ユニット間無線ベアラ55(S)がすでに構築済みの場合において、中継無線通信部9(A)と無線基地局部4(B)との間に、第一ユニット間無線ベアラ55(P)を新たに構築させ、無線バックホールを形成する。この場合は、無線バックホールを構築する制御指令が中継無線通信部9(A)に向けて出力される。なお、バックホール構築先無線通信ユニットとなる無線通信ユニット1(B)は、無線基地局部4(A)に単独でつながっている状態では第二外部無線通信ユニットに相当する。
(3)中継無線通信部9(A)と無線基地局部4(B)の間にユニット間無線ベアラが全く形成していない場合において、第一ユニット間無線ベアラ55(P)及び第二ユニット間無線ベアラ55(S)を順次構築して無線バックホールを形成する。この場合は、無線バックホールを構築する制御指令が中継無線通信部9(A)と無線基地局部4(A)との双方に向けて出力される。
【0064】
まず、(1)の場合についての処理の流れを、図14の通信フロー図及び図15図16の説明図により説明する。LA1では、無線通信ユニット1(A)が無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)に対し、無線通信ユニット1(A)がアタッチ要求を送信し、無線通信ユニット1(B)がこれを受け入れることにより、LA2にて図12のアタッチシーケンスが実行され、第一ユニット間無線ベアラ55(P)が特定の周波数チャネル(例えばCH1)を用いて構築される(図15上)。
【0065】
続いて、無線通信ユニット1(A)がルータ8(図3)にて外部ネットワーク60(本実施形態では、インターネット(公共ネットワーク)である)に接続した場合(図15下)、無線通信ユニット1(A)の無線基地局部4(A)に接続中の移動端末5は、それぞれ無線通信ユニット1(A)を介して外部ネットワーク60への接続が可能となる。一方、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)の無線基地局部4(B)に接続中の移動端末5は、無線通信ユニット1(B)→第一ユニット間無線ベアラ55(P)→無線通信ユニット1(A)の経路にて外部ネットワーク60へのアクセスが可能となる。無線通信ユニット1(B)に接続する複数の移動端末5が一斉にインターネット(外部ネットワーク60)にアクセスした場合、そのアクセスによりやり取りされる情報は全て第一ユニット間無線ベアラ55(P)を通過することになり、第一ユニット間無線ベアラ55(P)の通信トラフィックが過度に増大した場合は輻輳などの問題を生ずる。
【0066】
そこで、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3(A)は、図14のLA3においてルータ8を介したインターネット接続(例えば、通信衛星回線などを経由した接続となる)が確立されているか否かを確認する。接続されていなければLA3にてインターネット接続の有無を監視する処理を継続する。他方、図15下のごとくインターネット接続が確立された場合はLA4に進み、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)に向けて無線バックホール構築要求を通知する(図16上)。無線通信ユニット1(B)はこれを受け、LA5にて無線通信ユニット1(A)に対しアタッチ要求する(図16中)。そして、LA6では、図12のアタッチシーケンスが実行され、第二ユニット間無線ベアラ55(S)が、第一ユニット間無線ベアラ55(P)と異なる周波数チャネル(例えばCH2)を用いて構築される(図16下)。
【0067】
第一ユニット間無線ベアラ55(P)と第二ユニット間無線ベアラ55(S)とはリンクアグリゲーションを形成し、第一ユニット間無線ベアラ55(P)が単独で形成されていた場合(図15上)と比較して、2つの周波数チャネルCH1、CH2により通信帯域幅が2倍に拡大された無線バックホールとなる。これにより、無線通信ユニット1(B)でのインターネットアクセス増大に伴う無線通信ユニット1(A)との間の通信トラフィック混雑に伴う輻輳等の問題を効果的に解消できる。
【0068】
次に、(2)の場合についての処理の流れを、図17の通信フロー図及び図18図19の説明図により説明する。LA51では、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)が無線通信ユニット1(A)に対しアタッチ要求を送信し、無線通信ユニット1(A)がこれを受け入れることにより、LA52にて図12のアタッチシーケンスが実行され、第二ユニット間無線ベアラ55(S)が特定の周波数チャネル(例えばCH2)を用いて構築される(図18上)。
【0069】
続いて、無線通信ユニット1(A)では、図17のLA53においてルータ8を介したインターネット接続が確立されているか否かを確認する。接続されていなければLA53にてインターネット接続の有無を監視する処理を継続する。他方、図18下のごとくインターネット接続が確立された場合はLA54に進み、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)に対しアタッチ要求する(図19上)。そして、LA55では、図12のアタッチシーケンスが実行され、第一ユニット間無線ベアラ55(P)が、第二ユニット間無線ベアラ55(S)と異なる周波数チャネル(例えばCH1)を用いて構築される(図19下)。この場合も、図16下と全く同様に無線バックホールが形成され、同様の効果が達成される。
【0070】
最後に、上記の(3)の場合は、無線通信ユニット1(A)にて先にインターネット接続が確立されており、無線通信ユニット1(B)との間のユニット間無線ベアラはその時点では構築されていない。よって、無線通信ユニット1(B)が無線通信ユニット1(A)に対して相対的に接近し、相互にアタッチ可能な距離に到達したとき(すなわち、それぞれのセルに重なりを生じたとき)において、無線通信ユニット1(A)と無線通信ユニット1(B)のいずれか一方から他方のアタッチ要求が出され、図12のアタッチシーケンスにより、第一ユニット間無線ベアラ55(P)及び第二ユニット間無線ベアラ55(S)のいずれかがまず構築される。
【0071】
続いて、無線通信ユニット1(A)では、その時点でインターネットに接続中であり、この状態で無線通信ユニット1(B)に自身がアタッチして第一ユニット間無線ベアラ55(P)が構築された場合は、図14のLA4以下の処理と全く同じ手順にて第二ユニット間無線ベアラ55(S)が構築され、無線バックホールが形成される。他方、無線通信ユニット1(B)からのアタッチを受けて第二ユニット間無線ベアラ55(S)が構築された場合は、図17のLA54以下の処理と全く同じ手順にて第一ユニット間無線ベアラ55(P)が構築され、無線バックホールが形成される。
【0072】
なお、上記いずれの場合においても、無線バックホールの形成に際しては無線通信ユニット1(A)においてインターネットとの接続が確立されることが必要条件となっている。そして、インターネットとの接続確立が確認された場合、無線バックホール形成のための処理が直ちに実行されていた(つまり、インターネット接続確立が無線バックホール形成のための必要十分条件となっている)。しかし、インターネット接続確立は無線バックホールの形成の必要条件にとどめ、無線通信ユニット1(B)(バックホール構築先無線通信ユニット)の無線基地局部4(B)(上記(1)の場合は第一外部無線通信ユニットの無線基地局部であり、(2)の場合は第二外部無線通信ユニットの無線基地局部となる)に接続中の移動端末5の数が閾値を超えることをさらに別の必要条件として定めることも可能である。この場合、ユニット間無線ベアラのトラフィック混雑が予想される場合にのみ無線バックホール形成を行なわれることとなる。
【0073】
このとき、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3(A)は、第一外部無線通信ユニットの無線基地局部又は第二外部無線通信ユニットの無線基地局部に対する移動端末の接続数の情報を取得する端末接続数取得部を備えたものとしておく。具体的には、無線通信ユニット1(A)がインターネットに接続した際に、先に構築済みのユニット間無線ベアラを利用して無線通信ユニット1(B)から現在接続中の移動端末の接続数を取得する。そして、図20上に示すように、その接続数が予め定められた閾値を超えていれば、図20下に示すように、上記したものと同様の手順に従い無線バックホールを形成するようにすればよい。これにより、無線通信ユニット1(B)の端末接続数が閾値より少ない間は、無線通信ユニット1(A)との間に構築されるユニット間無線ベアラの数は1つのみに維持され、無線通信ユニット1(A)又は無線通信ユニット1(B)が他の無線通信ユニットと接続する余地が留保される。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図21に示す無線通信ユニット1’(A),1’(B)においては、ユニット間無線ベアラ55(P),55(S)を独立して構築可能な複数の無線基地局部4(AX),4(AY)及び4(BX),4(BY)を設けている。図21の状態では、無線通信ユニット1’(A)の無線基地局部4(AY)と無線通信ユニット1’(B)の中継無線通信部9(B)との間に第一ユニット間無線ベアラ55(P)が、無線通信ユニット1’(B)の無線基地局部4(BX)と無線通信ユニット1’(A)の中継無線通信部9(A)との間に第二ユニット間無線ベアラ55(S)が構築され、無線バックホールが形成されている。この場合、無線通信ユニット1’(A)の無線基地局部4(AX)と、無線通信ユニット1’(B)の無線基地局部4(BY)は、それぞれ他の無線通信ユニットとの間に別のユニット間無線ベアラを構築可能である。図22は、無線通信ユニット1’(B)の無線基地局部4(BY)が、別の無線通信ユニット1’(C)の中継無線通信部9(C)と、無線バックホールに関与しないユニット間無線ベアラ55(P)(CH3)により接続されている例を示すものである。
【0075】
また、無線バックホールの形成は、上記実施形態にて無線通信ユニット1(A)のインターネット接続を必要条件として実行されていたが、インターネット接続を必要条件としない構成、例えば図3において無線通信ユニット1(A)のルータ8にデータサーバ(例えば映像サーバ:図示せず)が接続され、この映像サーバへの無線通信ユニット1(B)からのアクセスが集中する場合などにおいても、上記と同様の無線バックホールの形成は有効である。この場合、例えば映像サーバからのデータ配信期間が予め定められている場合、映像サーバへのアクセスが集中する上記データ配信期間に合わせて無線バックホールを形成するように処理することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1(A),1(B) 無線通信ユニット
WS(A),WS(B) 大型船舶
2 MME
3 EPC機能部
301 CPU
302 RAM
303 マスクROM
304A 上流側通信インターフェース
304B 下流側通信インターフェース
305 フラッシュメモリ
305a 通信ファームウェア
305b MMEエンティティ
305c S-GWエンティティ
305d P-GWエンティティ
305r 無線バックホール構築制御指令プログラム
306 バス
21 二次電池モジュール
22 電源回路部
23 可搬型筐体
30,31 通信バス
4 無線基地局部
401 CPU
402 RAM
403 マスクROM
404 通信インターフェース
405 フラッシュメモリ
405a 通信ファームウェア
406 バス
412 無線通信部
5 UE(移動端末)
6 S-GW
7 P-GW
8 ルータ
9 中継無線通信部
901 CPU
902 RAM
903 マスクROM
905 フラッシュメモリ
905a 通信ファームウェア
906 バス
912 無線通信部
50(A),50(B) セル
55(P),55(S) ユニット間無線ベアラ
57 端末用無線ベアラ
図1
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