(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】スイッチング電源の制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/155 K
(21)【出願番号】P 2020024534
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 直人
(72)【発明者】
【氏名】朝長 幸拓
(72)【発明者】
【氏名】大塚 茂樹
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043195(JP,A)
【文献】特開2010-154706(JP,A)
【文献】特開2013-243875(JP,A)
【文献】特開2006-254577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0019218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーストモードで動作可能なスイッチング電源の制御回路であって、
前記スイッチング電源は、
入力電圧が入力される入力端子と、
出力電圧が出力される出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との接続経路上に配置されているインダクタであって、一端が前記出力端子に接続されている、前記インダクタと、
前記インダクタと前記出力端子との接続経路と接地電位部位との間に配置されている第1コンデンサと、
を備えており、
前記制御回路は、
前記入力端子と前記接地電位部位との間に直列接続されているハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチであって、
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの接続ノードに前記インダクタの他端が接続されている、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチと、
前記ハイサイドスイッチを駆動するハイサイド駆動信号の生成を指示するバースト信号を生成するバースト信号生成部であって、
前記バースト信号は、出力電圧を分圧した帰還電圧が設定電圧まで低下することに応じて生成される、前記バースト信号生成部と、
前記バースト信号によって前記ハイサイド駆動信号の生成
の指示
が開始されたことに応じて、前記ハイサイド駆動信号の第1レベルから第2レベルへの最初の遷移を行う第1信号生成部であって、
前記ハイサイド駆動信号が第1レベルのときに前記ハイサイドスイッチがオフ状態にな
り前記ローサイドスイッチがオン状態になるとともに、前記ハイサイド駆動信号が第2レベルのときに前記ハイサイドスイッチがオン状態にな
り前記ローサイドスイッチがオフ状態になる、前記第1信号生成部と、
入力電圧に比例した充電電流で充電される
第2コンデンサを備える第2信号生成部であって、
前記ハイサイド駆動信号が前記第2レベルに遷移
することに応じて前記第2コンデンサの充電を開始し、
前記ハイサイド駆動信号が前記第2レベルの期間中に前記第2コンデンサを充電し、
前記
第2コンデンサの充電電圧が前記設定電圧まで上昇することに応じて、
前記第2コンデンサを放電するとともに、前記ハイサイド駆動信号の前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を行う、前記第2信号生成部と、
前記ローサイドスイッチに流れる電流値が、予め定められた電流下限値まで減少した特定タイミングを検知する電流検知部と、
前記バースト信号によって前記ハイサイド駆動信号の生成が指示されている場合に、前記電流検知部によって前記特定タイミングが検知されたことに応じて、前記ハイサイド駆動信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの2回目以降の遷移を行う第3信号生成部と、
を備える、スイッチング電源の制御回路。
【請求項2】
前記バースト信号生成部は、前記ハイサイド駆動信号の生成を指示する前記バースト信号が生成された後に、前記帰還電圧が前記設定電圧から予め定められたヒステリシス電圧だけ増加したことに応じて、前記バースト信号の生成を終了する、請求項1に記載のスイッチング電源の制御回路。
【請求項3】
前記ヒステリシス電圧の変更およ
び前記電流下限値の変更の少なくとも一方によって、前記バースト信号の生成期間および生成周期の調整が可能である、請求項2に記載のスイッチング電源の制御回路。
【請求項4】
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチの上下短絡を防止するデットタイム回路部をさらに備える、請求項1~3の何れか1項に記載のスイッチング電源の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーストモードで動作可能なスイッチング電源の制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているバーストモード制御型のスイッチング電源では、インダクタの「ピーク電流」および「ボトム電流」を検出し、電源の電気的状態に応じて、そのしきい値を調節する機構を有する。これにより、バースト動作時のスイッチング周波数の調節を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスイッチング電源では、バースト期間中のオンパルス幅は、インダクタ値および入力電圧値に依存する。そのため、例えば、電圧変動範囲が広範囲に渡る電源(例:車載高圧電池セル)に特許文献1の技術を適用した場合は、入力電圧の変動によってオンパルス幅が変動するため、バースト期間中のスイッチング周波数変動が発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するスイッチング電源の制御回路は、負荷状態に依存してスイッチをオフ状態する期間を有するバーストモードで動作可能なスイッチング電源の制御回路である。制御回路は、ハイサイドスイッチを駆動するハイサイド駆動信号の生成期間を指示するバースト信号を生成するバースト信号生成部を備える。 バースト信号は、出力電圧が設定電圧に追従するようにヒステリシス幅を有する比較器を用いて生成される。制御回路は、入力電圧および出力電圧に応じて、ハイサイド駆動信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部を備える。制御回路は、ローサイドスイッチに流れる電流値が、予め定められた電流下限値まで減少した特定タイミングを検知する電流検知部を備える。制御回路は、バースト信号によって指示されたハイサイド駆動信号の生成期間中に、電流検知部によって特定タイミングが検知されたことに応じて、パルス幅制御部で制御されたパルス幅を有するハイサイド駆動信号を生成する駆動制御部を備える。
【0006】
ハイサイド駆動信号の生成期間中(すなわちバースト期間中)に、入力電圧および出力電圧に応じて、ハイサイド駆動信号のパルス幅を制御する。入力電圧の変動に応じてハイサイド駆動信号のパルス幅を制御することができるため、バースト期間中のスイッチング周波数を一定にすることが可能となる。入力電圧変動に依存せず、バースト期間におけるスイッチング周波数を固定化することが可能となる。
【0007】
パルス幅制御部は、パルス幅を入力電圧に反比例するように制御してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
バースト信号生成部によるヒステリシス幅の変更および電流検知部による電流下限値の変更の少なくとも一方によって、バースト信号の生成期間および生成周期の調整が可能であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
駆動制御部は、バースト信号のレベル遷移によってハイサイド駆動信号の生成期間の開始が指示されたことに応じて、ハイサイド駆動信号の1つ目のパルス信号を生成してもよい。駆動制御部は、電流検知部によって特定タイミングが検知されたことに応じて、ハイサイド駆動信号の2つ目以降のパルス信号を生成してもよい。
【0010】
制御回路は、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチの上下短絡を防止するデットタイム回路部をさらに備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】バースト信号生成部10の動作を説明する波形図である。
【
図3】パルス幅制御部20、電流検知部30、駆動制御部40の動作を説明する波形図である。
【
図4】入力電圧V
iが変動した場合におけるハイサイド駆動信号VgHの波形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(スイッチング電源の構成)
図1に、本実施例に係るスイッチング電源1のブロック図を示す。スイッチング電源1は、変換効率を重視した間欠スイッチング制御(バーストモード制御)を行なう、非絶縁の同期整流型の降圧DC-DCコンバータである。
スイッチング電源1は、制御IC2、抵抗R
on、入力コンデンサC
sおよび出力コンデンサC
o、インダクタL、入力端子IT、出力端子OTを備える。抵抗R
on、入力コンデンサC
s、出力コンデンサC
o、インダクタLは、外付け部品である。入力端子ITには、入力電圧V
iが入力される。出力端子OTからは、設定電圧(第1基準電圧V
REF1)に追従した出力電圧V
oが出力される。
【0013】
制御IC2は、バースト信号生成部10、パルス幅制御部20、電流検知部30、駆動制御部40、ハイサイドスイッチQH、ローサイドスイッチQLを備える。バースト信号生成部10は、バースト信号Burstを生成する部位である。バースト信号Burstは、後述するハイサイド駆動信号VgHおよびローサイド駆動信号VgLの生成期間を指示する信号である。バースト信号生成部10は、ヒステリシス比較器11、抵抗R1およびR2を備える。出力電圧Voは、抵抗R1およびR2で形成された抵抗分圧部に入力される。抵抗分圧部からは、出力電圧Voに比例した帰還電圧VFBが出力され、ヒステリシス比較器11の反転入力端子に入力される。ヒステリシス比較器11の第1の非反転入力端子には第1基準電圧VREF1が入力され、第2の非反転入力端子にはヒステリシス電圧VHYSが入力される。ヒステリシス比較器11からはバースト信号Burstが出力され、駆動制御部40へ入力される。
【0014】
パルス幅制御部20は、入力電圧Viおよび出力電圧Voに応じて、ハイサイド駆動信号VgHのパルス幅を制御する部位である。パルス幅制御部20は、カレントミラ回路21、スイッチ22、コンデンサCを備えている。カレントミラ回路21の入力端子は、抵抗Ronを介して入力端子ITに接続されている。カレントミラ回路21は、充電電流Icapを出力する定電流源として機能する。カレントミラ回路21の出力端子と接地電位部位との接続経路間には、コンデンサCおよびスイッチ22が並列接続されている。コンデンサCから出力される充電電圧Vcapは、駆動制御部40の比較器41に入力される。
【0015】
電流検知部30は、ローサイドスイッチQLに流れる電流ILが、予め定められた電流下限値IREFまで減少した特定タイミングを検知する部位である。電流検知部30は、比較器31を備えている。比較器31の非反転入力端子には電流ILが入力され、反転入力端子には第2基準電圧VREF2が入力される。第2基準電圧VREF2は、電流下限値IREFに対応した電圧である。換言すると、第2基準電圧VREF2は、電流下限値IREFを規定する電圧である。比較器31からは、特定タイミングを検知したことを報知する電流検知信号Idetが出力され、駆動制御部40へ入力される。
【0016】
駆動制御部40は、バースト信号Burstによって指示された生成期間中に、電流検知部30によって特定タイミングが検知されたことに応じて、パルス幅制御部20で制御されたパルス幅を有するハイサイド駆動信号VgHを生成する部位である。駆動制御部40は、比較器41、機能ブロック42および43、アンド回路44、オア回路47および48、フリップフロップFF1およびFF2、ヒステリシス電圧設定部45、第2基準電圧設定部46、不図示のデットタイム回路部、を備える。機能ブロック42および43には、バースト信号Burstが入力される。機能ブロック42は、バースト信号Burstの立下りエッジに応じてハイレベルのパルス信号をトリガ出力する。機能ブロック43は、バースト信号Burstの立上りエッジに応じてハイレベルのパルス信号をトリガ出力する。アンド回路44には、バースト信号Burstおよび電流検知信号Idetが入力される。アンド回路44は、バースト信号Burstがハイレベルの期間中は電流検知信号Idetを通過させ、バースト信号Burstがローレベルの期間中は電流検知信号Idetを無視する。オア回路47の入力端子には、機能ブロック43およびアンド回路44の出力端子が接続されている。オア回路47の出力端子は、フリップフロップFF1のセット端子Sに接続されている。比較器41の反転入力端子には第1基準電圧VREF1が入力され、非反転入力端子には充電電圧Vcapが入力される。オア回路48には、比較器41から出力されるリセット信号Resおよび機能ブロック42から出力されるトリガ出力信号が入力される。オア回路48の出力端子は、フリップフロップFF1のリセット端子Rに接続されている。機能ブロック42およびオア回路48によって、バーストオフ時に強制的にフリップフロップFF1をリセットすることができる。フリップフロップFF1の出力端子Qからはハイサイド駆動信号VgHが出力され、ハイサイドスイッチQHのゲート端子に入力される。フリップフロップFF1の反転出力端子QBからは反転ハイサイド駆動信号VgHBが出力され、スイッチ22のベース端子およびフリップフロップFF2のセット端子Sに入力される。フリップフロップFF2のリセット端子Rには電流検知信号Idetが入力される。フリップフロップFF2の出力端子Qからはローサイド駆動信号VgLが出力され、ローサイドスイッチQLのゲート端子に入力される。
【0017】
ハイサイドスイッチQHおよびローサイドスイッチQLは、入力端子ITと接地電位部位との間に直列接続されている。インダクタLの一端は、ハイサイドスイッチQHとローサイドスイッチQLとの接続ノードに接続されている。インダクタLの他端は、出力端子OT、バースト信号生成部10の抵抗R1、および出力コンデンサCoの一端に接続される。出力コンデンサCoの他端は、接地電位部位に接続される。
【0018】
ヒステリシス電圧設定部45は、任意の値に設定されたヒステリシス電圧VHYSを出力する回路である。ヒステリシス電圧VHYSは、帰還電圧VFBのヒステリシス電圧幅(出力電圧Voのリプルに対応する概念)を規定する電圧である。出力されたヒステリシス電圧VHYSは、ヒステリシス比較器11に入力される。第2基準電圧設定部46は、任意の値に設定された第2基準電圧VREF2を出力する回路である。出力された第2基準電圧VREF2は、比較器31に入力される。
【0019】
また不図示のデットタイム回路部は、ハイサイドスイッチQHとローサイドスイッチQLとの上下短絡を防止する回路である。デットタイム回路部は一般的な回路構成でよいため、詳細な説明は省略する。
【0020】
(バースト信号生成部10の動作)
図2の波形図を用いて、バースト信号生成部10の動作を説明する。時刻t1においてヒステリシス比較器11は、入力電圧V
iの抵抗分圧比である帰還電圧V
FBが第1基準電圧V
REF1まで低下したことを検知する。これにより、バースト信号Burstがハイレベル(オン状態)に遷移し、スイッチング動作を開始する(矢印Y1)。
【0021】
時刻t2においてヒステリシス比較器11は、帰還電圧VFBがヒステリシス電圧分であるヒステリシス電圧VHYSだけ増加したことを検知する。これによりバースト信号Burstがローレベル(オフ状態)に遷移し、スイッチング動作が停止する(矢印Y2)。すなわちバースト信号Burstは、ヒステリシス電圧VHYSで決定されるヒステリシス幅だけ帰還電圧VFBが増加するまで、ハイレベル(オン状態)を継続する。バースト信号Burstがハイレベルである期間がバースト期間BTである。バースト期間BT中は、ハイサイド駆動信号VgHが集中的に生成される。また、バースト開始から次バースト開始までの時間が、バースト周期BPである。
【0022】
後述するように、本明細書のスイッチング電源1では、バースト期間BTおよびバースト周期BPを、出力電流値に依存せずに一定値に保持することができる。また、ヒステリシス電圧VHYSの値(すなわちヒステリシス幅)と、電流下限値IREF(すなわち第2基準電圧VREF2)と、の2値を調整することで、バースト期間BTおよびバースト周期BPを調整することができる。
【0023】
(パルス幅制御部20、電流検知部30、駆動制御部40の動作)
図3の波形図を用いて、パルス幅制御部20、電流検知部30、駆動制御部40の動作を説明する。第1に、バースト信号Burstのレベル遷移によってパルス生成期間の開始が指示された1つ目のパルス信号(時刻t11~t12を参照)の生成動作を説明する。
【0024】
時刻t11におけるバースト信号Burstの立上りエッジに応じて、機能ブロック43からハイレベルのパルス信号が出力され、セット端子Sに入力される。フリップフロップFF1は、ハイサイド駆動信号VgHをハイレベルに遷移させるとともに、反転ハイサイド駆動信号VgHBをローレベルに遷移させる(矢印Y11)。ハイサイド駆動信号VgHがハイレベルであるパルスオン時間Ton中は、ハイサイドスイッチQHがオン状態となる。よって、ハイサイドスイッチQHおよびインダクタLを流れる電流ILが上昇する(矢印Y12)。
【0025】
時刻t11において反転ハイサイド駆動信号VgHBがローレベルに遷移することに応じて、パルス幅制御部20のスイッチ22がオン状態からオフ状態へ遷移する。これによりパルス幅制御部20では、カレントミラ回路21による定電流源が動作を開始し、コンデンサCへの充電が開始される(矢印Y13)。
【0026】
時刻t12においてコンデンサCの充電電圧Vcapが第1基準電圧VREF1(出力電圧Voに比例)まで上昇すると、比較器41からハイレベルのリセット信号Resが出力される(矢印Y14)。これによりフリップフロップFF1はリセットされ、ハイサイド駆動信号VgHがローレベルに遷移するとともに、反転ハイサイド駆動信号VgHBがハイレベルに遷移する(矢印Y15)。
またフリップフロップFF2は、反転ハイサイド駆動信号VgHBの立上りエッジによりセットされ、ローサイド駆動信号VgLがハイレベルに遷移する(矢印Y16)。ローサイド駆動信号VgLがハイレベルであるパルスオフ時間Toff中は、ローサイドスイッチQLがオン状態となる。よってローサイドスイッチQLを流れる電流ILが下降する(矢印Y17)。
【0027】
第2に、2つ目以降のパルス信号(時刻t13以降を参照)の生成動作を説明する。時刻t13において電流ILが電流下限値IREFまで下降すると、電流検知部30の比較器31からハイレベルの電流検知信号Idetが出力される(矢印Y18)。これによりフリップフロップFF1はセットされ、ハイサイド駆動信号VgHをハイレベルに遷移させるとともに、反転ハイサイド駆動信号VgHBをローレベルに遷移させる(矢印Y19)。またフリップフロップFF2は、電流検知信号Idetによりリセットされ、ローサイド駆動信号VgLをローレベルに遷移させる(矢印Y19)。
【0028】
時刻t14において充電電圧Vcapが第1基準電圧VREF1まで上昇すると、比較器41からハイレベルのリセット信号Resが出力され(矢印Y20)、ハイサイド駆動信号VgHがローレベルに遷移する(矢印Y21)。以降の動作は、繰り返しであるため、説明を省略する。
【0029】
以上より、駆動制御部40は、ハイサイド駆動信号VgHの1つ目の立上りエッジと、2つ目以降の立上りエッジとを、異なる制御で生成していることが分かる。具体的には、1つ目の立上りエッジは、バースト信号Burstによってバースト期間BTの開始が指示されたことに応じて生成する(矢印Y11)。また、2つ目以降の立上りエッジは、電流検知部30によって特定タイミングが検知され、ハイレベルの電流検知信号Idetが入力されたことに応じて生成する(矢印Y19)。
【0030】
(バースト期間中のスイッチング周波数の一定化)
バースト期間中のスイッチング周波数の一定化について説明する。上述したように、ハイサイド駆動信号VgHのパルスオン時間Tonは、コンデンサCの充電電圧Vcapが第1基準電圧VREF1まで充電する時間で決定される。コンデンサCの充電電流Icapは、入力電圧Vi、抵抗Ronの抵抗値、カレントミラ回路21の電流増幅率gm、で決定される。充電電流Icapの大きさは、入力電圧Viに比例する。また第1基準電圧VREF1は、出力電圧Voに比例する。したがって、充電電流Icapにより、充電電圧Vcapが第1基準電圧VREF1に到達するまでに要する充電時間(すなわちパルスオン時間Ton)は、下式(1)で表せる。
Ton=Vo/Vi×gm×Ron×C ・・・式(1)
式(1)において、「gm」はカレントミラ回路21の電流増幅率、「Ron」は抵抗Ronの抵抗値、「C」はコンデンサCの容量値である。すると、連続モードの降圧電源の入出力の特性式に基づき、パルスオン時間Tonは「時比率D×スイッチング周期Ts」で表せる。すなわち、入出力電圧に応じてパルスオン時間Tonを制御することにより、バースト期間中のスイッチング周期Tsを一定にすることができることが分かる。
【0031】
式(1)における「gm×Ron×C」の項は、全て回路設計により設定可能なパラメータである。よって各パラメータを適切に設定することにより、所望のスイッチング周期Tsおよびスイッチング周波数fs(=1/Ts)を得ることができる。なお、実際には、外付けの抵抗Ronの抵抗値の設定により、スイッチング周波数fsを調整可能である。
【0032】
図4に、入力電圧V
iが変動した場合におけるハイサイド駆動信号VgHの波形例を示す。
図4(A)は、入力電圧V
iが相対的に高い場合である。
図4(B)は、入力電圧V
iが相対的に低い場合である。入力電圧V
iが高い場合および低い場合においても、スイッチング周期T
sは一定であることが分かる。また、入力電圧V
iが高い方がパルスオン時間T
onが小さいことから、パルスオン時間T
onが入力電圧V
iに反比例するように制御されていることが分かる。
【0033】
(効果)
従来のバーストモード制御同期整流型の降圧DC-DCコンバータでは、バースト期間中のオンパルス幅は、入力電圧およびインダクタ値に依存していた。すると、電圧変動範囲が広範囲に渡る電源(例:車載高圧電池セル)に従来技術を適用した場合は、入力電圧の変動によってオンパルス幅が変動するため、「バースト期間中のスイッチング周波数変動」が発生してしまう。また、インダクタのばらつきや劣化によっても、「バースト期間中のスイッチング周波数変動」が発生してしまう。そこで本明細書の技術では、バースト期間中に、入力電圧Viおよび出力電圧Voに応じて、ハイサイド駆動信号VgHのパルスオン時間Tonを制御している。すなわち、入力電圧Viに反比例するようにパルスオン時間Ton(すなわちパルス幅)を制御する。「パルスオン時間Ton=時比率D×スイッチング周期Ts=(出力電圧Vo/入力電圧Vi)×Ts」の関係があるため、パルスオン時間Tonが入力電圧Viに反比例することにより、バースト期間中のスイッチング周波数fs(=1/Ts)を一定にすることができる。また、本明細書の技術では、パルスオン時間Tonをインダクタ値によらずに制御することができる(式(1)参照)。インダクタのばらつきや劣化に影響を受けずに、スイッチング周波数fsを固定化することが可能となる。
【0034】
従来は、入力電圧変動に応じてバースト期間中のスイッチング周波数が変動してしまうため、ノイズピークの周波数に差異が生じてしまう。従ってノイズフィルタの設計では、フィルタ回路の部品バラツキに加え、スイッチング周波数変動分も考慮する必要がある。冗長な設計が必要なため、ノイズフィルタ体格が増加してしまう。一方、本明細書の技術では、バースト期間中のスイッチング周波数fsを固定化できるため、ノイズピーク成分の周波数変動が抑制できる。ノイズフィルタ回路は、自身の部品バラツキのみを考慮すればよくなる。冗長設計が不要になるため、ノイズフィルタ回路の体格増加を抑制できる。また、スイッチンクノイズに起因する伝導ノイズ(EMI)の抑制を効果的に行うことが可能となる。以上より、本明細書の技術は、入力電圧の変動が比較的広範囲に及ぶ電源アプリケーション(例:回生・力行による電池充電状況(SOC)に応じて動作電圧が比較的広範囲に及ぶ車載高圧電池を供給源とする電源アプリケーション)において、非常に有効である。
【0035】
従来は、(1)ヒステリシス電圧VHYSおよび(2)電流下限値IREFに、(3)電流ILの電流上限値を加えた3つの制御値を用いることで、バースト期間BTおよびバースト周期BPを調整していた。一方、本明細書の技術では、(1)ヒステリシス電圧VHYSおよび(2)電流下限値IREFの2つの制御値を調整することで、バースト期間BTのスイッチング周波数fsを一定にしたまま、バースト期間BTおよびバースト周期BPを調整することができる。これにより、電源の効率およびノイズ性能の最適化を図ることが可能となる。また従来技術に比して、制御値を少なくできるため、回路を簡易化することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0037】
図1のスイッチング電源1の回路構成は一例であり、種々の変更が可能である。例えば、ハイサイドスイッチQ
HおよびローサイドスイッチQ
Lは、制御IC2に内蔵されていなくてもよく、外付け部品であってもよい。
【0038】
制御IC2は、制御回路の一例である。第1基準電圧VREF1は、設定電圧の一例である。バースト期間BTは、ハイサイド駆動信号の生成期間の一例である。バースト周期BPは、ハイサイド駆動信号の生成周期の一例である。
【符号の説明】
【0039】
1:スイッチング電源 2:制御IC 10:バースト信号生成部 11:ヒステリシス比較器 20:パルス幅制御部 21:カレントミラ回路 30:電流検知部 40:駆動制御部 41:比較器 FF1およびFF2:フリップフロップ Idet:電流検知信号 IREF:電流下限値 Res:リセット信号 VgH:ハイサイド駆動信号 VgL:ローサイド駆動信号 VREF1:第1基準電圧 VREF2:第2基準電圧 QH:ハイサイドスイッチ QL:ローサイドスイッチ