IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特許-無線通信システム及び通信制御装置 図1
  • 特許-無線通信システム及び通信制御装置 図2
  • 特許-無線通信システム及び通信制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】無線通信システム及び通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/24 20090101AFI20231115BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20231115BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20231115BHJP
【FI】
H04W16/24
H04W64/00 130
H04W64/00 160
H04W4/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020031149
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021136564
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亨
(72)【発明者】
【氏名】堂坂 淳也
(72)【発明者】
【氏名】芥川 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 誠
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 弘征
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119549(JP,A)
【文献】特開平08-111661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0358882(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03557915(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が移動する所定経路に沿って配置された複数の基地局と、1以上の基地局で形成されるゾーン単位で前記移動局との通信が行われるよう制御する通信制御装置とを備えた無線通信システムにおいて、
前記通信制御装置は、前記移動局が所在するゾーンの基地局を通じて前記移動局から取得するポーリング情報に基づいて、前記移動局がどの基地局の無線通信エリア内に存するかを示す位置情報及び前記移動局の進行方向を特定し、前記移動局の位置情報及び進行方向の特定結果に基づいて、前記移動局との通信を行う通信ゾーンに前記移動局の進入先のゾーンを追加するか否かを判定し、
前記通信制御装置は更に、各ゾーンの境界にある境界基地局の1つ手前の準境界基地局に対応付けて、前記境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、前記通信ゾーンから前記隣接ゾーンを削除する条件となる前記移動局の進行方向を定めた第1規定方向とを予め記憶しておき、前記移動局が前記準境界基地局の無線通信エリア内を前記第1規定方向と同じ進行方向に進行していることを検出したことに応じて、前記通信ゾーンから前記隣接ゾーンを削除すると判定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記通信制御装置は、各ゾーンの境界にある前記境界基地局に対応付けて、前記隣接ゾーンと、前記通信ゾーンに前記隣接ゾーンを追加する要件となる前記移動局の進行方向を定めた第規定方向とを予め記憶しておき、前記移動局が前記境界基地局の無線通信エリア内を前記第規定方向と同じ進行方向に進行していることを検出したことに応じて、前記通信ゾーンに前記隣接ゾーンを追加すると判定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項に記載の無線通信システムにおいて、
前記所定経路が分岐を有し且つ分岐先がそれぞれ異なるゾーンの場合、前記通信制御装置は、前記境界基地局に対する前記隣接ゾーン及び前記第規定方向を分岐先毎に予め記憶しておき、前記ポーリング情報に基づいて前記移動局が向かう分岐先を特定し、その分岐先に対する前記隣接ゾーン及び前記第規定方向を参照して、前記通信ゾーンにどちらの隣接ゾーンを追加するかを判定することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
移動局が移動する所定経路に沿って配置された複数の基地局と接続され、1以上の基地局で形成されるゾーン単位で前記移動局との通信が行われるように制御する通信制御装置において、
前記移動局が所在するゾーンの基地局を通じて前記移動局から取得するポーリング情報に基づいて、前記移動局がどの基地局の無線通信エリア内に存するかを示す位置情報及び前記移動局の進行方向を特定し、前記移動局の位置情報及び進行方向の特定結果に基づいて、前記移動局との通信を行う通信ゾーンに前記移動局の進入先のゾーンを追加するか否かを判定し、
更に、各ゾーンの境界にある境界基地局の1つ手前の準境界基地局に対応付けて、前記境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、前記通信ゾーンから前記隣接ゾーンを削除する条件となる前記移動局の進行方向を定めた第1規定方向とを予め記憶しておき、前記移動局が前記準境界基地局の無線通信エリア内を前記第1規定方向と同じ進行方向に進行していることを検出したことに応じて、前記通信ゾーンから前記隣接ゾーンを削除すると判定することを特徴とする通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の経路上を移動する移動局と、その経路に沿って配置された複数の基地局とを備えた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車無線システムは、列車に搭載された移動局(いわゆる「車上局」)との通信のために、列車が走行する線路に沿って複数の基地局が配置されている。距離が長い路線では、始発駅から終着駅までの無線区間を複数のゾーンに分割して管理し、移動局との通信(例えば、通話)をゾーン単位で行うことが一般的である。つまり、移動局が存するゾーン内の全ての基地局が、移動局に対する同一内容の下り信号を一斉に送信する仕組みとなっている。
【0003】
移動している移動局との通話を行う場合、移動局がゾーンをまたいで移動することがあるが、このような場合にも通話を維持する必要がある。ゾーンをまたいで通話を継続するための機能として、自動ゾーン拡大と呼ばれる機能がある。自動ゾーン拡大とは、移動局がゾーンの境界を移動する直前で、進入先のゾーンでも下り信号の一斉送信を自動的に開始させる機能、つまり、移動局の通信ゾーンを現在のゾーンだけでなく進入先のゾーンまで自動的に拡大する機能である。自動ゾーン拡大は、一例として、進入先のゾーンの基地局で、移動局から発せられる上り送信の電界が検出された際に実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-77034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自動ゾーン拡大の方式では、通信ゾーンの拡大タイミングが遅いため、通信ゾーンを広げる前に移動局が進入先のゾーンに移動してしまい、通話が切れてしまう可能性がある。また、進入先のゾーンの基地局で移動局からの上り送信の電界を検出できない場合には、通信ゾーンの拡大を実施することがそもそもできない。更に、在来線においては路線がY字に分岐することがあり、通信ゾーンを分岐先のどちらのゾーンに拡大するかの判断も必要である。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情を鑑みて為されたものであり、移動局がゾーンをまたいで移動する場合でも、移動局との通信を安定的に継続することが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、移動局が移動する所定経路に沿って配置された複数の基地局と、1以上の基地局で形成されるゾーン単位で移動局との通信が行われるよう制御する通信制御装置とを備えた無線通信システムにおいて、通信制御装置は、移動局が所在するゾーンの基地局を通じて移動局から取得するポーリング情報に基づいて、移動局がどの基地局の無線通信エリア内に存するかを示す位置情報及び移動局の進行方向を特定し、移動局の位置情報及び進行方向の特定結果に基づいて、移動局との通信を行う通信ゾーンに移動局の進入先のゾーンを追加するか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、移動局の通信ゾーンを、移動先が進入先のゾーンに進入するよりも前のタイミングで拡大できるようになる。したがって、移動局がゾーンをまたいで移動する場合でも、移動局との通信を安定的に継続することが可能となる。
【0009】
ここで、一構成例として、通信制御装置は、各ゾーンの境界にある境界基地局に対応付けて、境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、通信ゾーンに隣接ゾーンを追加する要件となる移動局の進行方向を定めた第1規定方向とを予め記憶しておき、移動局が境界基地局の無線通信エリア内を第1規定方向と同じ進行方向に進行していることを検出したことに応じて、通信ゾーンに隣接ゾーンを追加すると判定するように構成してもよい。
【0010】
また、一構成例として、所定経路が分岐を有し且つ分岐先がそれぞれ異なるゾーンの場合、通信制御装置は、境界基地局に対する隣接ゾーン及び第1規定方向を分岐先毎に予め記憶しておき、ポーリング情報に基づいて移動局が向かう分岐先を特定し、その分岐先に対する隣接ゾーン及び第1規定方向を参照して、通信ゾーンにどちらの隣接ゾーンを追加するかを判定するように構成してもよい。
【0011】
また、一構成例として、通信制御装置は、各ゾーンの境界にある境界基地局の1つ手前の準境界基地局に対応付けて、境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、通信ゾーンから隣接ゾーンを削除する条件となる移動局の進行方向を定めた第2規定方向とを予め記憶しておき、移動局が準境界基地局の無線通信エリア内を第2規定方向と同じ進行方向に進行していることを検出したことに応じて、通信ゾーンから隣接ゾーンを削除すると判定するように構成してもよい。
【0012】
また、一構成例として、通信制御装置が、移動局の呼出を行う際に、移動局の行先に基づいて、通信ゾーンの制御タイミングを決定するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動局がゾーンをまたいで移動する場合でも、移動局との通信を安定的に継続することが可能な無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概要を示す図である。
図2】ゾーン配置及び通信ゾーンの拡大・縮小について説明する図である。
図3】通信ゾーンの拡大・縮小の判定に使用されるシステム情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概要を示してある。図1に例示する無線通信システムは、線路上を走行する列車との通信を行うための列車無線システムであり、中央制御装置10(本発明に係る通信制御装置の一例)と、複数の基地局装置20と、移動局装置30とを備えている。基地局装置20は、列車が走行する線路に沿った無線区間をカバーすべく、ある程度の間隔を置いて複数台が設置される。図1では、3台の基地局装置20が設置されている。
【0016】
本例の列車無線システムは、図2に示すように、列車が走行する線路に沿った無線区間を複数のゾーンに分割して管理し、移動局装置30との通信(例えば、通話)をゾーン単位で行うように構成されている。1つのゾーンは、1つ以上の基地局装置20により形成される。図2の例では、M駅行の路線Mが、路線Mの下り側の区間にあるBS1-1,BS1-2,BS1-3の3つの基地局により形成されたゾーン1と、路線Mの上り側の区間にあるBS2-1,BS2-2,BS2-3の3つの基地局により形成されたゾーン2とに分割されている。また、路線Mの途中からT駅行にも分岐しており、このY分岐の先にある路線Tには、BS3-1,BS3-2,BS3-3の3つの基地局によりゾーン3が形成されている。
【0017】
移動局装置30に対する通信は、基本的に、移動局装置30が所在するゾーン内の全ての基地局装置20から、移動局装置30に対する同一内容の下り信号を一斉に送信することで実現される。以下では、移動局装置30との通信対象となるゾーンを「通信ゾーン」という。通信ゾーンは、通常、通信開始時の移動局装置30が在圏するゾーンとなるが、通信中の移動局装置30がゾーンをまたがって移動する場合には、移動局装置30の移動に伴って通信ゾーンを切り替える必要がある。
【0018】
本例では、移動局装置30がゾーンをまたがって移動する場合にも通信を安定的に継続できるように、移動局装置30の通信ゾーンを自動的に拡大する機能を備えている。また、通信用のチャネルを有効に活用するために、進入先のゾーンへ移動局装置30が移動した後に通信ゾーンを自動的に縮小する機能を備えている。以下、これら機能について具体的に説明する。
【0019】
中央制御装置10は、移動局装置30に対するポーリングを定期的に実施し、移動局装置30が所在するゾーンの基地局装置20を通じて取得したポーリング情報に基づいて、移動局装置30の位置情報、進行方向、行先情報などを特定する。これらの情報は、通信ゾーンの拡大・縮小の要否を判定するために使用される。
【0020】
移動局装置30の位置情報は、移動局装置30がどの基地局装置20の無線通信エリア内に存するかを示す情報(基地局単位で在圏位置を示す情報)である。移動局装置30の位置情報は、例えば、ポーリング情報を中継した基地局装置20を識別する基地局番号により特定することができる。
【0021】
移動局装置30の進行方向(すなわち、列車の進行方向)は、例えば、列車側から移動局装置30に入力され、ポーリング情報に格納して中央制御装置10に送信される。なお、列車の運転士が運転台のキーを入れ替えて折り返し運転を行う場合には、移動局装置30の進行方向が逆方向に変化することになる。
【0022】
移動局装置30の行先情報は、例えば、ポーリング情報に格納して送信された運行番号に基づいて、中央制御装置10が運行管理テーブル(別途用意)を参照することにより特定することができる。運行番号は、移動局装置30に予め設定されていてもよく、列車側から移動局装置30に入力されてもよい。運行管理テーブルは、中央制御装置10が保持してもよく、中央制御装置10がアクセス可能な他の装置に保持されてもよい。
【0023】
なお、上記で説明した方法は一例であり、他の方法で移動局装置30の位置情報、進行方向、行先情報などを特定しても構わない。例えば、ポーリング情報を中継した基地局装置20の推移(変化)に基づいて、移動局装置30の進行方向を判定してもよい。また、例えば、移動局装置30を識別する車上局番号と運行番号との対応テーブルを用意しておき、ポーリング情報に付された車上局番号を運行番号に変換し、行先情報の特定に用いるようにしてもよい。
【0024】
中央制御装置10は、移動局装置30から取得したポーリング情報に基づいて、移動局装置30の位置情報を常時監視し、移動局装置30との通信中(例えば、通話中)に変化があった場合に、通信ゾーンの拡大/縮小の要否に関する判定処理を行う。判定処理には、図3に示すようなシステム情報が用いられる。このシステム情報は、中央制御装置10の内部メモリ、または中央制御装置10がアクセス可能な外部メモリに予め記憶されている。
【0025】
図3のシステム情報では、「路線」毎に、「判定対象基地局」と「判定条件」を対応付けてある。「判定対象基地局」は、通信ゾーンの拡大または縮小に関する判定対象の基地局であり、通信ゾーンを拡大するケースについては各ゾーンの境界にある境界基地局が設定され、通信ゾーンの縮小をケースについては境界基地局の1つ手前(ゾーン中心寄り)の準境界基地局が設定される。
【0026】
「判定条件」は、「隣接ゾーン」、「規定方向」、「拡大/縮小」の項目を有する。「隣接ゾーン」は、通信ゾーンに対して追加または削除を行う対象のゾーンであり、境界基地局に隣接するゾーンが設定される。「規定方向」は、通信ゾーンに隣接ゾーンを追加または削除する要件となる進行方向を規定するものであり、“上り”または“下り”が設定される。「拡大/縮小」は、通信ゾーンに対する隣接ゾーンの処理内容を規定するものであり、“拡大”(追加)または“縮小”(削除)が設定される。
【0027】
例えば、路線Mに含まれるゾーン1の境界基地局(BS1-3)については、移動局装置30がBS1-3の無線通信エリア内を上り方向に進行していることを検出したことに応じて、隣接ゾーンであるゾーン2を通信ゾーンに追加するゾーン拡大を行うことが設定されている。なお、移動局装置30がBS1-3のエリア内を上り方向に進行していることは、移動局装置30がBS1-3のエリア内に上り方向に進入したタイミングで検出されるだけでなく、移動局装置30がBS1-3のエリア内で上り方向に折り返し運転を開始したタイミングでも検出されることになる。また、路線Mに含まれるゾーン2の準境界基地局(BS2-3)については、移動局装置30がBS2-2の無線通信エリア内を下り方向で進行していることを検出したことに応じて、隣接ゾーンであるゾーン1を通信ゾーンから削除するゾーン縮小を行うことが設定されている。
【0028】
この場合、路線Mを上り方向に移動する移動局装置30の通信ゾーンは、BS1-1及びBS1-2のエリア内ではゾーン1のみだが、BS1-3のエリア内に進入した際にゾーン2が追加され、その後、BS2-1を通過してBS2-2のエリア内に進入した際にゾーン1が削除されることになる。つまり、中央制御装置10は、移動局装置30から得たポーリング情報と図3のシステム情報に基づいて、路線Mを上り方向に移動する移動局装置30の通信ゾーンを、BS1-1及びBS1-2のエリア内ではゾーン1のみ、BS1-3及びBS2-1のエリア内ではゾーン1とゾーン2、BS2-2及びBS2-3のエリア内ではゾーン2のみ、というように変化させる制御を行う。
【0029】
同様に、路線Mの途中から路線Tに分岐して移動する移動局装置30の通信ゾーンは、BS1-1及びBS1-2のエリア内ではゾーン1のみだが、BS1-3のエリア内に進入した際にゾーン3が追加され、その後、BS3-1を通過してBS3-2のエリア内に進入した際にゾーン1が削除されることになる。つまり、中央制御装置10は、移動局装置30から得たポーリング情報と図3のシステム情報に基づいて、路線Tを上り方向に移動する移動局装置30の通信ゾーンを、BS1-1及びBS1-2のエリア内ではゾーン1のみ、BS1-3及びBS3-1のエリア内ではゾーン1とゾーン3、BS3-2及びBS3-3のエリア内ではゾーン3のみ、というように変化させる制御を行う。
【0030】
ここで、移動局装置30の通信ゾーンを拡大/縮小するタイミング(判定対象基地局)は、移動局装置30を搭載した列車の行先(路線及び進行方向)から一意に特定することができる。そこで、本例の中央制御装置10は、指令卓(不図示)から通信相手となる移動局装置30の呼出を行う際に、移動局装置30の行先情報(図3)のシステム情報に基づいて、移動局装置30の通信ゾーンを拡大または縮小するタイミングを決定しておく構成となっている。なお、このような構成に代えて、移動局装置30の位置情報または進行方向が変化する毎にシステム情報(図3)を参照し、通信ゾーンの拡大/縮小の要否を判定するように構成してもよい。
【0031】
なお、上記では、移動局装置30が路線Mまたは路線Tを上り方向に移動する場合を例に説明したが、途中で折り返し運転する場合にも本システムは対応している。つまり、例えば、路線Mを下り方向に移動していた移動局装置30が、ゾーン1の境界基地局であるBS1-3のエリア内で折り返した場合(上り方向に方向転換した場合)にも、移動局装置30がBS1-3の無線通信エリア内を上り方向に進行していることが検出されるので、ゾーン2を通信ゾーンに追加するゾーン拡大を行うことができる。
【0032】
以上のように、本例の列車無線システムでは、中央制御装置10が、移動局装置30が所在するゾーンの基地局装置20を通じて移動局装置30から取得するポーリング情報に基づいて、移動局装置30がどの基地局装置20の無線通信エリア内に存するかを示す位置情報及び移動局装置30の進行方向を特定し、移動局装置30の位置情報及び進行方向の特定結果に基づいて、移動局装置30との通信を行う通信ゾーンに移動局装置30の進入先のゾーンを追加するか否かを判定する構成となっている。
【0033】
このような構成によれば、移動局装置30が次のゾーンに進入するより前のタイミングで進入先のゾーンを通信ゾーンに追加するので、余裕を持って早めに通信ゾーンを拡大することができる。したがって、移動局装置30がゾーンをまたいで移動する場合でも、移動局装置30との通信を安定的に継続することが可能となる。
【0034】
また、本例の中央制御装置10は、各ゾーンの境界にある境界基地局に対応付けて、境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、通信ゾーンに隣接ゾーンを追加する要件となる移動局の進行方向の規定とを予め記憶しておき、移動局装置30が境界基地局の無線通信エリア内を規定の方向に進行していることを検出したことに応じて、通信ゾーンに隣接ゾーンを追加する構成となっている。これにより、移動局装置30がゾーンを移動する前の段階で、確実に通信ゾーンの拡大を行うことができる。
【0035】
また、本例の中央制御装置10は、所定経路が分岐を有し且つ分岐先がそれぞれ異なるゾーンの場合を考慮して、境界基地局に対する隣接ゾーン及び進行方向の規定を分岐先毎に予め記憶しておき、ポーリング情報に基づいて移動局が向かう分岐先を特定し、その分岐先に対する隣接ゾーン及び進行方向の規定を参照して、通信ゾーンにどちらの隣接ゾーンを追加するかを判定する構成となっている。これにより、移動局装置30の進行する経路が途中で分岐する場合にも、適切な方向に通信ゾーンの拡大を行うことができる。
【0036】
また、本例の中央制御装置10は、各ゾーンの境界にある境界基地局の1つ手前の準境界基地局に対応付けて、境界基地局に隣接する隣接ゾーンと、通信ゾーンから隣接ゾーンを削除する条件となる移動局の進行方向の規定とを予め記憶しておき、移動局装置30が準境界基地局の無線通信エリア内を規定の方向に進行していることを検出したことに応じて、通信ゾーンから隣接ゾーンを削除する構成となっている。これにより、移動局装置30がゾーンの移動を完了したことが確実となった段階で、通信ゾーンの縮小を行うことができる。
【0037】
また、本例の中央制御装置10は、通信先の移動局装置30の呼出を行う際に、移動局装置30の行先情報に基づいて、通信ゾーンの制御タイミング(拡大/縮小のタイミング)を決定する構成となっている。これにより、通信ゾーンの制御タイミングを事前に想定できるので、余裕を持って通信ゾーンの拡大/縮小を実施できるようになる。
【0038】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。例えば、上記のような列車無線システムの他に、高速道路を走行する車両との通信を行うシステムにも発明を適用することができる。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、所定の経路上を移動する移動局と、その経路に沿って配置された複数の基地局とを備えた無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10:中央制御装置、 20:基地局装置、 30:移動局装置
図1
図2
図3