知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】液式鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/655 20210101AFI20231115BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20231115BHJP
H01M 50/392 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20231115BHJP
【ＦＩ】
H01M50/655
H01M10/12 Z
H01M50/392
H01M50/15 101
【請求項の数】
5
(21)【出願番号】P 2020036685
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021140918
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田井中 亮
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開２０１８－１９５５０８（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開平１１－４０１３７（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１５－２１６０８５（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２００９－１７６６００（ＪＰ，Ａ）
【文献】実開昭６１－４９９７６（ＪＰ，Ｕ）
【文献】特開２００４－１０３２５２（ＪＰ，Ａ）
【文献】中国実用新案第２０６８３４２４９（ＣＮ，Ｕ）
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ｈ０１Ｍ１０／００－１０／０４
１０／０６－１０／３４
５０／００－５０／１９８
５０／３０－５０／３９２
５０／６０－５０／７７
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル室を備えた電槽と、前記セル室に電解液とともに収納されている極板群と、前記電槽の上面を封止している蓋であって、上板の前記セル室の上方となる位置に形成された前記電解液の注入口を有し、前記注入口は、前記上板を貫通する貫通穴および前記貫通穴に連続して前記セル室側に延びるスリーブを有し、前記スリーブに雌ねじが形成されている蓋と、
前記注入口を塞ぐ栓であって、前記雌ねじに螺合する雄ねじを備えた筒体部、前記筒体部の軸方向一端を塞ぐ板状の頭部、および前記頭部の板面を貫通する排気孔を有し、前記雄ねじと前記雌ねじを螺合させて前記蓋に装着されている栓と、
を備え、
前記蓋の前記スリーブは、前記セル室側の端面から前記上板側に延びる第一のスリットを有し、
前記栓の前記筒体部は、前記頭部の反対側の端面から前記頭部側に延びる第二のスリットを有し、
前記第一のスリットおよび前記第二のスリットが前記スリーブおよび前記筒体部の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する液式鉛蓄電池。
【請求項2】
前記第一のスリットの長さは前記第二のスリットの長さよりも長い請求項１記載の液式鉛蓄電池。
【請求項3】
前記第二のスリットの幅は前記第一のスリットの幅よりも狭い請求項１または２記載の液式鉛蓄電池。
【請求項4】
前記第一のスリットの長さは前記スリーブの長さの５／６以下である請求項１～３のいずれか一項に記載の液式鉛蓄電池。
【請求項5】
前記第二のスリットの長さは前記筒体部の長さの１／２以下である請求項１～４のいずれか一項に記載の液式鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液式鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池には液式のものと制御弁式のものがあり、液式鉛蓄電池は、セル室を備えた電槽と、セル室に電解液とともに収納されている極板群と、を備え、その極板群は、交互に配置された正極板および負極板と、正極板および負極板との間に配置されたセパレータと、からなる積層体を有する。
液式鉛蓄電池の電槽の上面は蓋で封止されている。この蓋は、上板のセル室の上方となる位置に形成された電解液の注入口（液口）を有し、注入口は、上板を貫通する貫通穴およびこの貫通穴に連続してセル室側に延びるスリーブを有し、スリーブに雌ねじが形成されている。この注入口は栓（液口栓）で塞がれている。この栓は、雌ねじに螺合する雄ねじを備えた筒体部、筒体部の軸方向一端を塞ぐ板状の頭部、および頭部の板面を貫通する排気孔を有し、この栓は、雄ねじと雌ねじを螺合させて蓋に装着されている。
液式鉛蓄電池の電槽の上面は蓋で封止されている。この蓋は、上板のセル室の上方となる位置に形成された電解液の注入口（液口）を有し、注入口は、上板を貫通する貫通穴およびこの貫通穴に連続してセル室側に延びるスリーブを有し、スリーブに雌ねじが形成されている。この注入口は栓（液口栓）で塞がれている。この栓は、雌ねじに螺合する雄ねじを備えた筒体部、筒体部の軸方向一端を塞ぐ板状の頭部、および頭部の板面を貫通する排気孔を有し、この栓は、雄ねじと雌ねじを螺合させて蓋に装着されている。
【0003】
また、蓋のスリーブには、セル室側の端面から上板側に延びるスリットが形成されている。さらに、栓の筒体部にも、頭部の反対側の端面から頭部側に延びるスリットが形成されている。電槽における電解液の液面は、液口のスリーブおよび液口栓の筒体部の下端よりも下側に設定されている。
上述のように、液式鉛蓄電池では、液口栓に排気孔を設けることで、電槽内外の圧力が等しくなるようにしている。また、液口のスリーブと液口栓の筒体部の両方にスリットを設けることで、設定された液面より上側に移動した電解液が、設定された液面以下の位置に還流できるようにしている。
上述のように、液式鉛蓄電池では、液口栓に排気孔を設けることで、電槽内外の圧力が等しくなるようにしている。また、液口のスリーブと液口栓の筒体部の両方にスリットを設けることで、設定された液面より上側に移動した電解液が、設定された液面以下の位置に還流できるようにしている。
【0004】
電解液に使用される希硫酸の密度は、一般的に、満充電時で１．２８０（ｇ／ｃｍ3）程度であり、凝固点は－７０℃と低い。一方で、アイドリングストップ（ＩＳＳ）車用電池はガッシングがおき難く、電解液の成層化が生じやすい。成層化が生じると、上層部に存在する電解液は、ほぼ水に近い比重となり、凝固点もそれに伴い高くなる。上層部に存在する電解液は、走行時の揺れ等により、液口栓のスリットから液口栓内に浸入する。また、気温の低い日などは、結露した水が排気孔から液口栓へ浸入したりもする。
【0005】
液口栓内に浸入した比重の低い電解液および水は、重力に従いスリットを通して流れ落ちるが、張力によりスリットの対向する二面に架け渡されてスリットを塞ぐことがある。その状態で凍結すると、液口栓の排気孔が塞がり、空気の経路が遮断され、電槽内外で気圧差が生じる。この状態で凍結した氷が融解すると、電解液が排気孔から噴出したり、これに伴い周囲のシステムを硫酸で汚染したり、その電池を取替える時などに手に付着して薬傷を引き起こしたりする可能性もある。
【0006】
特許文献１には、液栓本体の頂板部に支持された筒部が防爆フィルタを貫通して防爆フィルタの下面に開口され、筒部内に形成されている孔は液栓本体内の圧力の上昇で破れる隔壁で閉塞されている液式鉛蓄電池が記載されている。これによれば、防爆フィルタの目詰まりによる内圧上昇は防止できるが、液口栓内に浸入した比重の低い電解液および水が、張力によりスリットの対向する二面に架け渡されてスリットを塞ぐことを防止することはできない。
【0007】
特許文献２には、振動時の溢液性能（電解液が液口から溢れにくくなる性能）は液口栓の筒部のスリットの幅に大きく依存しており、高い溢液性能を確保する観点から、このスリットの幅を５ｍｍ未満にすることが好ましく、３ｍｍ以下にすることがより好ましいと記載されている。また、筒状ウェル（液口のスリーブ）のスリットの幅については、より高度な溢液性能を得る観点から８ｍｍ以下が好ましいと記載されている。さらに、特許文献２の図４では、電槽の蓋に液口栓が取り付けられた状態で、液口栓の筒部のスリットと筒状ウェル（液口のスリーブ）のスリットがずれた状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開２００３－２１７５４５号公報
【文献】特開２０１８－１９５５０８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、液口栓内に浸入した比重の低い電解液および水が、張力によりスリットの対向する二面に架け渡されてスリットを塞ぐことが防止できる液式鉛蓄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、下記の構成(a)～(e)を備えた液式鉛蓄電池を提供する。
(a)セル室を備えた電槽と、セル室に電解液とともに収納されている極板群と、電槽の上面を封止している蓋であって、上板のセル室の上方となる位置に形成された電解液の注入口を有し、注入口は、上板を貫通する貫通穴および貫通穴に連続してセル室側に延びるスリーブを有し、このスリーブに雌ねじが形成されている蓋と、を備える。
(b)注入口を塞ぐ栓であって、蓋のスリーブの雌ねじに螺合する雄ねじを備えた筒体部、筒体部の軸方向一端を塞ぐ板状の頭部、および頭部の板面を貫通する排気孔を有し、筒体部の雄ねじとスリーブの雌ねじを螺合させて蓋に装着されている栓と、を備える。
(c)蓋のスリーブは、セル室側の端面から上板側に延びる第一のスリットを有する。
(d)栓の筒体部は、頭部の反対側の端面から頭部側に延びる第二のスリットを有する。
(e)第一のスリットおよび第二のスリットが、スリーブおよび筒体部の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する。
(a)セル室を備えた電槽と、セル室に電解液とともに収納されている極板群と、電槽の上面を封止している蓋であって、上板のセル室の上方となる位置に形成された電解液の注入口を有し、注入口は、上板を貫通する貫通穴および貫通穴に連続してセル室側に延びるスリーブを有し、このスリーブに雌ねじが形成されている蓋と、を備える。
(b)注入口を塞ぐ栓であって、蓋のスリーブの雌ねじに螺合する雄ねじを備えた筒体部、筒体部の軸方向一端を塞ぐ板状の頭部、および頭部の板面を貫通する排気孔を有し、筒体部の雄ねじとスリーブの雌ねじを螺合させて蓋に装着されている栓と、を備える。
(c)蓋のスリーブは、セル室側の端面から上板側に延びる第一のスリットを有する。
(d)栓の筒体部は、頭部の反対側の端面から頭部側に延びる第二のスリットを有する。
(e)第一のスリットおよび第二のスリットが、スリーブおよび筒体部の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液口栓内に浸入した比重の低い電解液および水が張力によりスリットの対向する二面に架け渡されてスリットを塞ぐことを防止可能な液式鉛蓄電池が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の液式鉛蓄電池を説明する図であって、電槽から蓋を外した状態を示している。
【図2】実施形態の液式鉛蓄電池を構成する蓋の電槽に向ける面を示す図である。
【図3】実施形態の液式鉛蓄電池が有する注入口を塞ぐ栓を示す正面図である。
【図4】蓋が有する一つの注液口に栓（防沫栓は省略）が装着された状態を、蓋の内面の側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
図１に示すように、この実施形態の液式鉛蓄電池１０は、電槽１と蓋２と六個の極板群３を備える。電槽１の形状は直方体であり、電槽１は、底面をなす長方形の一対の長辺上に形成された一対の第一の壁１１と、一対の短辺上に形成された一対の第二の壁１２を有する。電槽１の内部は、第二の壁１２と平行な五枚の隔壁１３により、六個のセル室４に区画されている。図１に示すように、セル室４の配列方向をＸ方向、これに垂直な方向をＹ方向とする。六個のセル室４には、それぞれ一個の極板群３が配置されている。また、液式鉛蓄電池１０はセル室４毎に一個の液口栓５を備える。
図１に示すように、この実施形態の液式鉛蓄電池１０は、電槽１と蓋２と六個の極板群３を備える。電槽１の形状は直方体であり、電槽１は、底面をなす長方形の一対の長辺上に形成された一対の第一の壁１１と、一対の短辺上に形成された一対の第二の壁１２を有する。電槽１の内部は、第二の壁１２と平行な五枚の隔壁１３により、六個のセル室４に区画されている。図１に示すように、セル室４の配列方向をＸ方向、これに垂直な方向をＹ方向とする。六個のセル室４には、それぞれ一個の極板群３が配置されている。また、液式鉛蓄電池１０はセル室４毎に一個の液口栓５を備える。
【0014】
各極板群３は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、正極板と負極板との間に配置されたセパレータと、からなる積層体３１を有する。
正極板は、格子状基板と格子状基板から上側に突出する耳部とを有する集電体の格子状基板に、正極合剤（正極活物質を含む合剤）が保持されたものである。負極板は、格子状基板と格子状基板から上側に突出する耳部とを有する集電体の格子状基板に、負極合剤（負極活物質を含む合剤）が保持されたものである。複数枚の正極板および負極板は、セパレータを介して交互に配置されている。積層体を構成する負極板の枚数は正極板の枚数よりも一枚多くても良いし、同じでも良い。
正極板は、格子状基板と格子状基板から上側に突出する耳部とを有する集電体の格子状基板に、正極合剤（正極活物質を含む合剤）が保持されたものである。負極板は、格子状基板と格子状基板から上側に突出する耳部とを有する集電体の格子状基板に、負極合剤（負極活物質を含む合剤）が保持されたものである。複数枚の正極板および負極板は、セパレータを介して交互に配置されている。積層体を構成する負極板の枚数は正極板の枚数よりも一枚多くても良いし、同じでも良い。
【0015】
負極板は袋状セパレータ内に収納されている。そして、負極板が入った袋状セパレータと正極板とを交互に重ねることで、正極板と負極板との間にセパレータが配置された状態となっている。なお、正極板を袋状セパレータ内に収納して、負極板と交互に重ねてもよい。
また、各極板群３は、積層体の正極板および負極板をそれぞれ幅方向の別の位置で連結する正極ストラップ３２および負極ストラップ３３と、正極ストラップ３２および負極ストラップ３３からそれぞれ立ち上がる正極中間極柱３２１および負極中間極柱３３１を有する。正極ストラップおよび負極ストラップは、正極板および負極板の耳部をそれぞれ連結している。
また、各極板群３は、積層体の正極板および負極板をそれぞれ幅方向の別の位置で連結する正極ストラップ３２および負極ストラップ３３と、正極ストラップ３２および負極ストラップ３３からそれぞれ立ち上がる正極中間極柱３２１および負極中間極柱３３１を有する。正極ストラップおよび負極ストラップは、正極板および負極板の耳部をそれぞれ連結している。
【0016】
セル配列方向の両端のセル室４に配置された正極ストラップおよび負極ストラップには、それぞれ小片部を介して外部端子となる正極極柱３５および負極極柱３６が形成されている。また、一方のセル室４の正極中間極柱３２１と他方のセル室４内の負極中間極柱３３１とが、隔壁１３に形成された貫通孔内を埋める金属部で接続されている。
図２に示すように、蓋２は、電槽１の隔壁１３に対応する五枚の仕切り板２３と、長方形の上板２４を有する。上板２４は六個の貫通孔２４１を有する。六個の貫通孔２４ａは、上板２４の五枚の仕切り板２３で区切られた各位置に形成されている。
図２に示すように、蓋２は、電槽１の隔壁１３に対応する五枚の仕切り板２３と、長方形の上板２４を有する。上板２４は六個の貫通孔２４１を有する。六個の貫通孔２４ａは、上板２４の五枚の仕切り板２３で区切られた各位置に形成されている。
【0017】
上板２４の内面（電槽１と対向させる面）には、貫通孔２４１に連続するスリーブ２５が形成されている。貫通孔２４１とスリーブ２５が注液口（電解液の注入口）２６を構成する。注液口２６は液口栓５で塞がれる。スリーブ２５は二本のスリット（第一のスリット）２５ａと雌ねじ部２５ｂを有する。二本のスリット２５ａは、互いに１８０°となる位置に形成され、Ｘ方向に沿って対向している。スリーブ２５の外周部にフランジ２７が形成されている。また、蓋２は、電槽１に対する位置決め用のガイドリブ６と、正極極柱および負極極柱を通すスリーブ７を有する。
【0018】
図３に示すように、液口栓５は、筒体部５１と、その軸方向一端に形成された頭部５２を有する。筒体部５１の頭部５２側の外周に雄ねじ部５３が形成されている。筒体部５１の頭部５２とは反対側の端部に、スリット（第二のスリット）５１ａが形成されている。頭部５２は、大径部５２１と小径部５２２とからなり、板面を貫通する排気孔５２ａを有する。なお、筒体部５１の中には、別部品である防沫栓が配置されている。
液口栓５の筒体部５１のスリット５１ａは、液口栓５の正面図（図３）における形状（正面形状）が長方形である。なお、蓋２のスリーブ２５の二本のスリット２５ａも、スリーブ２５の正面図における形状（正面形状）が長方形である。
液口栓５の筒体部５１のスリット５１ａは、液口栓５の正面図（図３）における形状（正面形状）が長方形である。なお、蓋２のスリーブ２５の二本のスリット２５ａも、スリーブ２５の正面図における形状（正面形状）が長方形である。
【0019】
図５に示すように、上板２４の貫通孔２４１とスリーブ２５の上端面２５１により、液口栓５の頭部５２の外縁部が収まる凹部が形成されている。スリーブ２５のスリット２５ａは、下端面（セル室４側の端面）２５２から上板２４側に延びており、フランジ２７に近い位置まで深く形成されている。雌ねじ部２５ｂはスリーブ２５の内周面の基端部にのみ形成されている。
図５の右半分と図４は、注液口２６が液口栓５で塞がれた状態を示しているが、防沫栓は省略されている。これらの図に示すように、この状態で、注液口２６のスリット２５ａと液口栓５のスリット５１ａが、スリーブ２５および筒体部５１の径方向に沿った側面視で重なっている。
図５の右半分と図４は、注液口２６が液口栓５で塞がれた状態を示しているが、防沫栓は省略されている。これらの図に示すように、この状態で、注液口２６のスリット２５ａと液口栓５のスリット５１ａが、スリーブ２５および筒体部５１の径方向に沿った側面視で重なっている。
【0020】
図５に示すように、蓋２のスリーブ２５のスリット（第一のスリット）２５ａの長さＬ１は、スリーブ２５の長さＬ１１の５／６以下である（Ｌ１／Ｌ１１≦５／６）。液口栓５の筒体部５１のスリット（第二のスリット）５１ａの長さＬ２は、筒体部５１の長さＬ２１の１／２以下である（Ｌ２／Ｌ２１≦１／２）。また、スリーブ２５のスリット（第一のスリット）２５ａの長さＬ１は、筒体部５１のスリット（第二のスリット）５１ａの長さＬ２よりも長い（Ｌ１＞Ｌ２）。
【0021】
液式鉛蓄電池１０は、例えば以下の方法で製造できる。
先ず、公知の方法で作製された化成前の極板群３を、電槽１の各セル室４に配置した後、抵抗溶接を行って金属部を形成する。次に、電槽１の上面と蓋２の下面を熱で溶かして、熱溶着により電槽１に蓋２を固定する。なお、蓋２を電槽１に載せる際に、電槽１の隔壁１３、第一の壁１１、および第二の壁１２の上端面は、蓋２のガイドリブ６に案内されて、スムーズに蓋２の仕切り板２３、第一の壁２１、および第二の壁２２の下端面と当接する。その結果、セル室４の上側に蓋２による上部空間が形成される。
先ず、公知の方法で作製された化成前の極板群３を、電槽１の各セル室４に配置した後、抵抗溶接を行って金属部を形成する。次に、電槽１の上面と蓋２の下面を熱で溶かして、熱溶着により電槽１に蓋２を固定する。なお、蓋２を電槽１に載せる際に、電槽１の隔壁１３、第一の壁１１、および第二の壁１２の上端面は、蓋２のガイドリブ６に案内されて、スムーズに蓋２の仕切り板２３、第一の壁２１、および第二の壁２２の下端面と当接する。その結果、セル室４の上側に蓋２による上部空間が形成される。
【0022】
次に、各注液口２６から各セル室４内に電解液を注入する。次に、注液口２６に液口栓５の筒体部５１を入れて、液口栓５の雄ねじ部５３をスリーブ２５の雌ねじ部２５ｂに螺合することで、各注液口２６を液口栓５で塞ぐ。
なお、注液口２６のスリット２５ａおよび液口栓５のスリット５１ａの径方向での位置は、設定された締めつけトルクで注液口２６に液口栓５を取り付けた際に、注液口２６のスリット２５ａと液口栓５のスリット５１ａが、スリーブ２５および筒体部５１の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する状態となる（理想的には図４に示す状態となる）ように設計する。
なお、注液口２６のスリット２５ａおよび液口栓５のスリット５１ａの径方向での位置は、設定された締めつけトルクで注液口２６に液口栓５を取り付けた際に、注液口２６のスリット２５ａと液口栓５のスリット５１ａが、スリーブ２５および筒体部５１の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する状態となる（理想的には図４に示す状態となる）ように設計する。
【0023】
注液口２６のスリット２５ａの幅Ｓ１、液口栓５のスリット５１ａの幅Ｓ２、および注液口２６のスリーブ２５と液口栓５の筒体部５１との距離Ｋが小さいほど（例えば、注液口２６および液口栓５が共にポリプロピレン製の場合、いずれも３ｍｍ以下の場合）、「設定された液面より上側に移動した電解液が、注液口２６のスリット２５ａから液口栓５のスリット５１ａに浸入して、排気孔５２ａから電解液が溢れることを抑制する作用」は大きくなるが、「液口栓内に浸入した比重の低い電解液および水が、張力によりスリットの対向する二面に架け渡されてスリットを塞ぐ現象」が生じやすくなる。
【0024】
そして、上述の作用を最大限に得るために幅Ｓ１、幅Ｓ２、および距離Ｋを小さくした場合でも、実施形態の液式鉛蓄電池１０は、注液口２６のスリット２５ａと液口栓５のスリット５１ａが、スリーブ２５および筒体部５１の径方向に沿った側面視で重なる部分を有する状態となっているため、上記現象を防止することができる。
また、「Ｌ１／Ｌ１１≦５／６」であること、「Ｌ２／Ｌ２１≦１／２」であること、Ｌ１＞Ｌ２であることは、いずれも「設定された液面より上側に移動した電解液を設定された液面以下の位置に還流させる作用」を大きくできる構成であるため、少なくともいずれかの構成を有することが好ましい。そして、これらの構成を全て有する実施形態の液式鉛蓄電池１０は、「設定された液面より上側に移動した電解液を設定された液面以下の位置に還流させる作用」も大きいものとなる。
また、「Ｌ１／Ｌ１１≦５／６」であること、「Ｌ２／Ｌ２１≦１／２」であること、Ｌ１＞Ｌ２であることは、いずれも「設定された液面より上側に移動した電解液を設定された液面以下の位置に還流させる作用」を大きくできる構成であるため、少なくともいずれかの構成を有することが好ましい。そして、これらの構成を全て有する実施形態の液式鉛蓄電池１０は、「設定された液面より上側に移動した電解液を設定された液面以下の位置に還流させる作用」も大きいものとなる。
【0025】
なお、第二のスリット５１ａの幅Ｓ２が第一のスリット２５ａの幅Ｓ１よりも狭いと、「設定された液面より上側に移動した電解液が、注液口２６のスリット２５ａから液口栓５のスリット５１ａに浸入して、排気孔５２ａから電解液が溢れることを抑制する作用」を大きくできるため好ましい。
また、第一のスリット２５ａおよび第二のスリット５１ａの正面形状は、いずれも長方形以外の形状（例えば、半長円形、末広がり状、凸字形）であってもよい。
また、第一のスリット２５ａおよび第二のスリット５１ａの正面形状は、いずれも長方形以外の形状（例えば、半長円形、末広がり状、凸字形）であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
１０ 液式鉛蓄電池
１ 電槽
１１ 電槽の第一の壁
１２ 電槽の第二の壁
１３ 隔壁
２ 蓋
２１ 蓋の第一の壁
２２ 蓋の第二の壁
２３ 仕切り板
２４ 蓋の上板
２４１ 上板の貫通孔
２５ スリーブ
２５ａ 注液口のスリット（第一のスリット）
２５１ スリーブの上端面（上板側の端面）
２５２ スリーブの下端面（セル室側の端面）
２６ 注液口（電解液の注入口）
２７ フランジ
３ 極板群
４ セル室
４１ セル室
４２ セル室
５ 液口栓（注入口を塞ぐ栓）
５１ 筒体部
５１ａ 液口栓のスリット（第二のスリット）
５２ 頭部
５２ａ 排気孔
５３ 雄ねじ部
６ ガイドリブ
Ｌ１ 第一のスリットの長さ
Ｌ２ 第二のスリットの長さ
Ｌ１１ スリーブの長さ
Ｌ２１ 筒体部の長さ
１ 電槽
１１ 電槽の第一の壁
１２ 電槽の第二の壁
１３ 隔壁
２ 蓋
２１ 蓋の第一の壁
２２ 蓋の第二の壁
２３ 仕切り板
２４ 蓋の上板
２４１ 上板の貫通孔
２５ スリーブ
２５ａ 注液口のスリット（第一のスリット）
２５１ スリーブの上端面（上板側の端面）
２５２ スリーブの下端面（セル室側の端面）
２６ 注液口（電解液の注入口）
２７ フランジ
３ 極板群
４ セル室
４１ セル室
４２ セル室
５ 液口栓（注入口を塞ぐ栓）
５１ 筒体部
５１ａ 液口栓のスリット（第二のスリット）
５２ 頭部
５２ａ 排気孔
５３ 雄ねじ部
６ ガイドリブ
Ｌ１ 第一のスリットの長さ
Ｌ２ 第二のスリットの長さ
Ｌ１１ スリーブの長さ
Ｌ２１ 筒体部の長さ
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】