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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】扉体および建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231115BHJP
   E06B 3/76 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020060472
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156146
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 涼
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】長 晃司
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002640(JP,A)
【文献】特表2014-514409(JP,A)
【文献】特表2013-513680(JP,A)
【文献】特開2018-053457(JP,A)
【文献】特開2015-178714(JP,A)
【文献】特開2019-108669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B3/76
E06B5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材の第1表面材と金属材の第2表面材とによって挟まれた断熱材と、
前記断熱材の下部に設けられる下骨と、
を備える扉体であって、
前記下骨は樹脂材で形成され、下方に開口するコ字形状であり、
前記断熱材は、難燃性および熱融解性を有し、
前記下骨の開口には下方に開口するコ字形状部分を含むガイド用エッジ材が設けられ、
前記ガイド用エッジ材における前記第1表面材に近い側の第1エッジ材側壁と、前記下骨における前記第1表面材に近い側の第1下骨側壁との間には第1空洞が形成されていることを特徴とする扉体。
【請求項2】
前記第1表面材は前記第1下骨側壁を覆い、
前記ガイド用エッジ材は前記第1表面材に対して非固定であることを特徴とする請求項に記載の扉体。
【請求項3】
前記ガイド用エッジ材における前記第2表面材に近い側の第2エッジ材側壁と、前記下骨における前記第2表面材に近い側の第2下骨側壁との間には第2空洞が形成されており、
前記第1空洞の見込み方向幅は、前記第2空洞の見込み方向幅より広いことを特徴とする請求項1または2に記載の扉体。
【請求項4】
前記断熱材の左右に設けられる一対の縦骨を備え、
前記ガイド用エッジ材は、一対の前記縦骨に対してそれぞれ固定され、前記断熱材に対して非固定であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の扉体。
【請求項5】
前記ガイド用エッジ材は、下端から突出して前記第1空洞を塞ぐ樹脂片を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の扉体。
【請求項6】
前記断熱材の左右に設けられる一対の縦骨を備え、
一対の前記縦骨の下部には、それぞれ内側に突出する突出片がそれぞれ設けられ、
前記下骨の両端には、それぞれ前記突出片が挿入される挿入部が設けられ、
前記下骨は、前記挿入部に前記突出片が挿入されることによって支持されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の扉体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の扉体と、前記扉体をスライド可能に支持する枠体とを備え、
前記扉体は、前記第1表面材が室内側面を構成し、前記第2表面材が室外側面を構成するように前記枠体に組み立てられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材と、断熱材の下部に設けられる下骨とを備える扉体、および該扉体を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の扉体は防火性能を有することが望ましい。扉体を備える建具としては、例えば特許文献1に記載されているような引戸式が挙げられる。引戸式の建具にはスライド可能な扉体が設けられている。特許文献1に記載の扉体では、室内側下端と室外側下端とに熱膨張性部材を設けている。このような構成では火災などの高温時に熱膨張性部材が膨張して扉体と下枠との隙間を塞いで遮炎することができ、防火性能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6236285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、扉体に熱膨張性部材を取り付けるとそれだけ部品点数が増えて複雑化およびコスト上昇の要因となり、しかも扉体への取り付けには手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で防火性能を確保することのできる扉体および該扉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる扉体は、金属材の第1表面材と金属材の第2表面材とによって挟まれた断熱材と、前記断熱材の下部に設けられる下骨と、を備える扉体であって、前記下骨は樹脂材で形成され、前記断熱材は、難燃性および熱融解性を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様にかかる建具は、前記扉体と、前記扉体をスライド可能に支持する枠体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる扉体および建具では、扉体の下骨は樹脂材であることから高温に晒されたときには融解または消失する。また、下骨の上方に設けられた断熱材は、難燃性および熱融解性を有することから下方に排出されて隙間を塞ぎ、遮炎効果が得られる。したがって、扉体は、少なくとも下端部と下枠との間では防火のための専用部材を設けない簡易な構成で防火性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る扉体および建具を室外側から見た正面図である。
図2図1におけるII~II線視による縦断面図である。
図3】枠体の戸先側縦枠および扉体の戸先側縦端部の横断面図である。
図4】扉体の下端部および下枠の一部拡大縦断面図である。
図5】扉体の組立工程の様子を示す図であり、(a)は上骨、下骨および一対の縦骨を組み立てる様子を示す模式正面図であり、(b)は組み立てられた上骨、下骨および一対の縦骨に対してさらにガイド用エッジ材を装着する様子を示す模式正面図である。
図6】高温に晒された状態における扉体の下端部および下枠の一部拡大縦断面図である。
図7】高温に晒された状態における扉体の模式正面図である。
図8】高温に晒されてガイド用エッジ材が落下した状態における扉体の下端部および下枠の一部拡大縦断面図である。
図9】変形例にかかる扉体の下端部および下枠の一部拡大縦断面図である。
図10】高温に晒された状態における変形例にかかる扉体の下端部および下枠の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる扉体および建具の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る扉体10および建具12を室外側から見た正面図である。
【0011】
図1に示すように、建具12は片引戸式であり、扉体10と、枠体14とを有する。建具12は、扉体10が図1の左右方向にスライドすることにより、壁に設けられた矩形開口を開閉する。図1における左半分の仮想線16で示す領域は、壁の一部であってもよいし、嵌め殺しのパネルであってもよい。また、仮想線16で示す領域は扉体10と対をなす扉体であってもよい。つまり建具12は引き違い戸であってもよい。この場合の引き違い戸は3枚以上の構成でもよい。扉体10は引戸式の建具12に適用されるものに限らず、例えば一般的な玄関ドアであってもよい。
【0012】
枠体14は、上枠14a、下枠14b、戸先側縦枠14c、および戸尻側縦枠14dを有する。上枠14aの略右半分、下枠14b、戸先側縦枠14c、および戸尻側縦枠14dは矩形枠を形成し、壁に設けられた矩形開口を囲う。上枠14aの左半分は、戸尻側縦枠14dの位置より左側に突出しており、その突出長さは扉体10の横幅にほぼ等しい。なお、本実施形態の下枠14bは戸先側縦枠14cと戸尻側縦枠14dとの間を接続しており、戸尻側縦枠14dよりも左側には突出していないが、上枠14aと同様に左側に突出していてもよい。扉体10には戸先側縦端部10cの近傍にハンドル18が設けられている。ハンドル18は、扉体10の室内側および室外側に設けられている。
【0013】
本出願において、見込み方向とは建具12の室内外方向、(図中に矢印Zで示す。図1では紙面の垂直方向)をいう。見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な戸先側縦枠14c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠14a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。また、室内方向を図中で矢印Z1で示し、室外方向を図中で矢印Z2で示す。
【0014】
図2は、図1におけるII~II線視による縦断面図である。図3は、枠体14の戸先側縦枠14cおよび扉体10の戸先側縦端部10cの横断面図である。
【0015】
まず、枠体14について説明する。
図2および図3に示すように、枠体14の上枠14aは、第1枠材14aa、第2枠材14ab、第3枠材14ac、第4枠材14adおよび第5枠材14aeによって構成されている。上枠14aには下方に開口する空間部14agが形成されている。空間部14agの下部には扉体10の上端部10aが入り込んでいる。
【0016】
空間部14agには断面略L字のレール20が設けられている。レール20は上枠14aの長尺方向ほぼ全長にわたって延在している。レール20の先端部のガイド突起は回転自在の吊ローラ22をガイドする。扉体10は、上端部10aが吊ローラ22に対して連結部材24によって連結されている。吊ローラ22および連結部材24は上端部10aの長尺方向に沿って複数設けられている。空間部14agの下端で室内側面からは上端部10aに向かってタイト材28が突出している。タイト材28および後述するタイト材38,56,58は気密材である。空間部14agの下端で室外側面からは、上端部10aに向かってブラシ30が突出している。
【0017】
枠体14の下枠14bは、第1枠材14baおよび第2枠材14bbによって構成されている。第1枠材14baは下枠14bの下端を構成しており、扉体10よりも下方に位置しており室外から室内に亘って延在している。第2枠材14bbは扉体10の下端部10bよりも室内側に位置している。第2枠材14bbの上部には靴ずり32が嵌め込まれている。第1枠材14baにおける扉体10の下方部分には回転自在のガイドローラ34が設けられている。ガイドローラ34は、下枠14bから立設する支柱34aに設けられている。第2枠材14bbの室外側端部には樹脂材の引き寄せ片36が設けられている。第1枠材14baにおける中央よりも室外側部分には上面にプレート37が設けられている。第2枠材14bbの室外側面からは、下端部10bに向かってタイト材38が突出している。第2枠材14bbの室外側面は、第1枠材14baの上面から立設した壁を形成し、外部の雨水が室内に浸入することを防ぐ。このように、扉体10を備える建具12では、室内側は雨水浸入防止手段が設けられている。ガイドローラ34は後述のコ字形状部分42dに嵌まり込み、扉体10のガイドを行う。扉体10は、吊ローラ22およびガイドローラ34によってX方向(図2の紙面垂直方向)に沿ってスライド可能となっている。ガイドローラ34が設けられる支柱34aは、扉体10の全開時に戸先側縦端部10cが位置する近傍に1つ設けられる(図1参照)。
【0018】
戸先側縦枠14cは、第1枠材14ca、第2枠材14cbおよび第3枠材14ccによって構成されている。第1枠材14ca、第2枠材14cbは、例えばアルミニウム合金等の金属材料の押し出し型材である。第3枠材14ccは例えば樹脂材である。第1枠材14caは戸先側縦枠14cの戸先側端を構成しており、扉体10よりも戸先側に位置しており室外から室内に亘って延在している。第2枠材14cbは扉体10の戸先側縦端部10cよりも室内側に位置している。第3枠材14ccは、第1枠材14caと第2枠材14cbとによって挟持されている。戸先側縦枠14cは、扉体10が閉じた時に該扉体10の戸先部を収容する縦溝部48を備える。縦溝部48の室外側面にはタイト材56が設けられている。縦溝部48の室内側面には2本のタイト材58が設けられている。タイト材56、58は扉体10との隙間をふさぐ。
【0019】
次に、扉体10について説明する。
扉体10では、後述する上骨10ab、下骨40よび一対の縦骨10caで囲まれた領域に板形状の断熱材10eが設けられている。換言すれば、扉体10は、断熱材10eの上端部10aに設けられる上骨10abと、下端部10bに設けられる下骨40と、戸先側縦端部10cおよび戸尻側端部10dに設けられる縦骨10caとを備える。断熱材10eは室内側の面と室外側の面との間を断熱する。上骨10abおよび縦骨10caは、例えばスチール等の金属板である。下骨40は樹脂材である。断熱材10eは、難燃性(不燃性を含む)および熱融解性を有し、例えばEPS(Expanded Polystyrene)に難燃剤を添加したものである。断熱材10eは充填剤によって形成してもよい。難燃剤としては、例えば臭素化ブタジエンスチレン共重合体が挙げられる。断熱材10eは必ずしも板形状でなくてもよいが、板形状とすることで組立性が向上する。
【0020】
扉体10の室外側面には室外側表面材(第2表面材)10fが設けられ、室内側面には室内側表面材(第1表面材)10gが設けられており、フラッシュ構造となっている。室外側表面材10fおよび室内側表面材10gは、上骨10ab、下骨40、一対の縦骨10caおよび断熱材10eの室外側および室内側の全面を覆っている。つまり、断熱材10eは、室外側表面材10fと室内側表面材10gとによって挟まれている。表面材10f,10gはデザイン上の美観を得るだけでなく、骨材との接着により扉体10の強度を向上させている。
【0021】
ただし、本実施形態の扉体10における室外側表面材10fは、少なくとも断熱材10eの室外側の面を覆うものとし、設計またはデザインなどの条件によっては上骨10ab、下骨40および縦骨10caの室外側面の全面または一部が露呈していてもよいものとする。同様に、室内側表面材10gは、少なくとも断熱材10eの室内側の面を覆うものとし、条件によっては上骨10ab、下骨40および縦骨10caの室内側面の全面または一部が露呈していてもよいものとする。室外側表面材10fおよび室内側表面材10gは、例えば薄いスチール等の金属板である。扉体10は、室内側表面材10gが室内側面を構成し、室外側表面材10fが室外側面を構成するように枠体14に組み立てられている。
【0022】
扉体10の戸先側縦端部10cには、戸尻方向に開口したコ字状の縦骨10caと、該縦骨10caの室外側面を覆うフレーム10cbと、室内側面を覆うフレーム10ccと、戸先側縦端部を形成するエッジ材10cdとが設けられている。フレーム10cb、フレーム10ccは、例えば樹脂材である。エッジ材10cdは、例えばアルミニウム合金等の金属材の押し出し型材である。
【0023】
エッジ材10cdと縦骨10caとの間には隙間が確保されている。なお、図3では扉体10に関して戸先側縦端部10cについて示しているが、戸尻側縦端部10dについても概ね同様の構成である。戸尻側縦端部10dは戸先側縦端部10cと同様の縦骨10caを有する(図5参照)。戸尻側縦端部10dと戸尻側縦枠14dとは、例えば召し合わせの位置にある。
【0024】
扉体10の上端部10aには下向きに開口したコ字状の上骨10abと、該上骨10abの外周面を覆うフレーム10aaとが設けられている。フレーム10aaは、例えば樹脂材である。上記のとおり、上端部10aは吊ローラ22に対して連結部材24を介して連結されている。
【0025】
図4は、扉体10の下端部10bおよび下枠14bの一部拡大縦断面図である。
図4に示すように、扉体10の下端部10bには、下骨40と、ガイド用エッジ材42とが設けられている。上記のとおり下骨40は樹脂材である。ガイド用エッジ材42は、例えばアルミニウム合金等の金属材の押し出し型材である。
【0026】
下骨40は、天板40a、室外側壁(第2下骨側壁)40bおよび室内側壁(第1下骨側壁)40cを有し、下向きに開口するコ字形状である。天板40aは断熱材10eの下部に配置されている。天板40aと断熱材10eとの見込み寸法は等しい。天板40aの下面からは一対の突出片40aaが突出している。一対の突出片40aaはL字形状であり、先端屈曲部が対向する向きになっている。突出片40aaによって形成される一対の窪み部の間は後述する突出片49が差し込まれる挿入部40abとして用いられる。一対の突出片40aaにより、天板40aとガイド用エッジ材42との間には隙間10baが確保されている。なお、ガイド用エッジ材42と断熱材10eとの間は隙間10baおよび天板40aが設けられていることから、ガイド用エッジ材42と断熱材10eとは非固定である。
【0027】
室外側壁40bは室外側表面材10fで覆われている。室外側壁40bの下端は室内側に向けて僅かに屈曲した屈曲部40baを有する。室外側表面材10fの下端は屈曲部40baに略沿って屈曲した屈曲部10faを有する。
【0028】
室内側壁40cおよび室内側表面材10gは、室外側壁40bおよび室外側表面材10fと対称構造である。すなわち、室内側壁40cは屈曲部40caを有し、室内側表面材10gは屈曲部10gaを有する。室外側壁40bと室外側表面材10fとの間、および室内側壁40cと室内側表面材10gとの間は、例えば接着剤で固定されている。室外側壁40bは室外側表面材10fに接し、室内側壁40cは室内側表面材10gに接しているが、下骨40は樹脂材であることから、いわゆる熱橋とならず室内外の断熱性が高い。
【0029】
ガイド用エッジ材42は、天板42a、室外側壁(第2エッジ材測壁)42bおよび室内側壁(第1エッジ材側壁)42cを有し、下向きに開口するコ字形状部分42dを形成している。コ字形状部分42dにはガイドローラ34が下方から嵌まり込む。
【0030】
ガイド用エッジ材42の室外側壁42bと下骨40の室外側壁40bとの間には空洞(第2空洞)10bbが形成されている。ガイド用エッジ材42の室内側壁42cと下骨40の室内側壁40cとの間には空洞(第1空洞)10bcが形成されている。空洞10bbと空洞10bcとの間は上記の突出片40aaによって仕切られている。空洞10bcの見込み方向幅W1は、空洞10bbの見込み方向幅W2より広い。
【0031】
室外側壁42bの下端は室外側に向けて屈曲した屈曲部42baを有する。屈曲部42baは空洞10bbを塞いでいる。屈曲部42baの上面には室外側表面材10fの屈曲部10faが当接するが、屈曲部42baと屈曲部10faとの間に接着剤はなく固定されていない。すなわち、ガイド用エッジ材42と室外側表面材10fとは非固定である。
【0032】
室内側壁42cの下端は室内側に向けて屈曲した屈曲部42caを有する。屈曲部42caは空洞10bbを塞いでいる。屈曲部42caの上面には室内側表面材10gの屈曲部10gaが当接するが、屈曲部42caと屈曲部10gaとの間に接着剤はなく固定されていない。すなわち、ガイド用エッジ材42と室内側表面材10gとは非固定である。
【0033】
コ字形状部分42dにはガイドローラ34が挿入されることから、室外側壁42bおよび室内側壁42cはガイドローラ34に応じた十分な高さを有している。したがって室外側壁42bは高さおよび長尺方向寸法に応じたやや広い面積を有するが、室外側表面材10fとの間には樹脂の室外側壁40bおよび空洞10bbが介在していることから室外との断熱性が確保される。特に空洞10bbは空気層であることから断熱効果が高い。
【0034】
同様に、室内側壁42cは高さおよび長尺方向寸法に応じたやや広い面積を有するが、室内側表面材10gとの間には樹脂の室内側壁40cおよび空洞10bcが介在していることから室内との断熱性が確保される。特に空洞10bcは空気層であることから断熱効果が高い。また、天板40aと天板42aとの間は突出片40aaにより隙間10baが確保されていることから、断熱性が確保される。扉体10の下面と第1枠材14baとの間には下端隙間44が設けられている。
【0035】
図5は、扉体10の組立工程の様子を示す図であり、(a)は上骨10ab、下骨40および一対の縦骨10caを組み立てる様子を示す模式正面図であり、(b)は組み立てられた上骨10ab、下骨40および一対の縦骨10caに対してさらにガイド用エッジ材42を装着する様子を示す模式正面図である。
【0036】
図5(a)に示すように、扉体10の組立工程では、まず上骨10ab、下骨40および一対の縦骨10caを組み立てる。上骨10abと左右一対の縦骨10caとはリベット46によって固定する。また、左右一対の縦骨10caの下部には、それぞれ内側に突出する突出片49がそれぞれ設けられる。突出片49は、例えば金属板を正面視でL字形状に屈曲したものである。突出片49の短辺部は縦骨10caの見込み面にリベット46で固定されており、長辺部は縦骨10caの図示しない孔を通って内側に突出している。
【0037】
図5(b)および図4に示すように、突出片49は下骨40の挿入部40abに差し込まれる。上記のとおり、挿入部40abは一対の突出片40aaによって形成される一対の窪み部の間の領域である。このように、下骨40は、縦骨10caに対して突出片49が左右両側から差し込まれることによって固定される。このような下骨40の固定方法では骨材の仮組み立てを簡易に行うことができる。また、突出片49は板状(図4参照)であることから、下骨40との接触面積が広く、応力が分散されて下骨40の損壊を一層防止できる。なお図4に示すように、突出片49は空洞10bb,10bcの上方部をほとんど塞ぐことがない位置に設けられている。
【0038】
この後、下方からガイド用エッジ材42を下骨40のコ字状開口部分に差し入れ、ネジ50を縦骨10caの両側方から図示しない孔を通してガイド用エッジ材42の所定の被螺合部に螺合させ、ガイド用エッジ材42を固定する。ネジ50は金属材であるが、設計条件によっては樹脂材を用いてもよい。さらにこの後、断熱材10e、室外側表面材10f、室内側表面材10g等を装着する。
【0039】
次に、このように構成される扉体10の作用について説明する。
図6は、高温に晒された状態における扉体10の下端部10bおよび下枠14bの一部拡大縦断面図である。建具12が火災等によって高温に晒されると、下骨40は樹脂材であることから融解または消失する。また、断熱材10eは熱融解性を有することから融解し、下骨40が融解または消失した箇所から下方に流れ出る。
【0040】
また、室外側表面材10fは金属材であることから高温でも消失せず、しかも少なくとも断熱材10eの室外側を覆っていることから、断熱材10eのうち室外側にある部分は融解すると室外側表面材10fに案内されて矢印A2で示すように、室外側の空洞10bbに流れ出る。同様に、室内側表面材10gは金属材であることから高温でも消失せず、しかも少なくとも断熱材10eの室内側を覆っていることから、断熱材10eのうち室内側にある部分は融解すると室内側表面材10gに案内されて矢印A1で示すように、室内側の空洞10bcに流れ出る。断熱材10eが融解して室外側の空洞10bbに流れ出る部分を符号10eaで示し、室内側の空洞10bcに流れ出る部分を符号10ebで示す。
【0041】
室外側表面材10fはガイド用エッジ材42の屈曲部42baと非固定であり、しかも加熱を受けて変形することから室外側に反り返り、扉体10の室外側下端部に隙間52aが形成される。そして融解した断熱材10eaは隙間52aから排出されて第1枠材14baの上面に溜まる。
【0042】
室内側表面材10gはガイド用エッジ材42の屈曲部42caと非固定であり、しかも加熱を受けて変形することから室内側に反り返り、扉体10の室内側下端部に隙間52bが形成される。なお、引き寄せ片36およびタイト材38は、高温に晒された場合に融解または消失していることから、室内側表面材10gが室内側に反り返ることを阻害することがない。そして融解した断熱材10ebは隙間52bから排出されて第1枠材14baの上面に溜まる。図示を省略するが、室内側の屈曲部40caには融解した断熱材10ebの排出を促進するために鉛直方向に貫通する孔や切り欠きが形成されていてもよい。
【0043】
なお、室外側壁40bおよび室内側壁40cが融解または消失している場合、室外側表面材10fおよび室内側表面材10gは加熱による変形だけではなく、融解した断熱材10ea,10ebから受ける圧力によっても変形して反り返り、隙間52a,52bを広くすることができる。
【0044】
第1枠材14baの上面に排出された融解した断熱材10ea,10ebは適度な粘性があり、相当量がその場に堆積して下端隙間44の室外側部分および室内側部分の両方を塞ぐ。また、断熱材10ea,10ebは難燃性であることから、扉体10の見込み方向の両面で遮炎作用があり、防火性能が得られる。
【0045】
また、空洞10bcの幅W1は、空洞10bbの幅W2より広いことから、融解した断熱材10ebは融解した断熱材10eaよりも多く流れ出る。融解した断熱材10ebが流れ出る隙間52bの室内側近傍には第2枠材14bbが設けられていることから該第2枠材14bbが壁となり、少なくとも室内側に流れ出てしまうことが防止され、下端隙間44を塞ぎやすい。
【0046】
図7は、高温に晒された状態における扉体10の模式正面図である。図7に示すように、ガイド用エッジ材42の両側部はネジ50によって縦骨10caに固定されているが、と断熱材10eとは非固定である。ガイド用エッジ材42は両端部以外が非拘束状態であり、熱を受けることにより中央部は下向きに反り返り中央隙間54が形成される。したがって、融解した断熱材10ea,10ebは中央隙間54からも排出される。つまり、融解した断熱材10ea,10ebは上記の隙間52a,52bからだけでなく中央隙間54から排出が促進され、下端隙間44を塞ぎやすくなる。なお、ネジ50が金属材である場合には図7のようにガイド用エッジ材42の両側部は縦骨10caに固定されたままであるが、ネジ50が樹脂材である場合には融解または消失し、ガイド用エッジ材42は図8のように下方に落下し得る。
【0047】
図8は、高温に晒されてガイド用エッジ材42が落下した状態における扉体10の下端部10bおよび下枠14bの一部拡大縦断面図である。上記のとおりネジ50が樹脂材である場合には、建具12が高温に晒されるとネジ50は融解または消失し、図8に示すようにガイド用エッジ材42が落下し、屈曲部42ba,42caが第1枠材14baの上面に当接する。そうすると、室内側の空洞10bcを通って排出される融解した断熱材10ebは、室内側が第2枠材14bbで仕切られるとともに室外側が室内側壁42cで仕切られた領域に入り込んで、その領域から漏出することなく十分な量が溜まる。したがって、下端隙間44を一層確実に塞ぐことができ、防火性能が向上する。
【0048】
上述したように、扉体10の下骨40は樹脂材であることから高温に晒されたときには融解または消失する。また、下骨40の上方に設けられた断熱材10eは、難燃性および熱融解性を有することから下方に排出されて下端隙間44を塞ぎ、遮炎効果が得られる。したがって、扉体10は、少なくとも下端部10bと下枠14bとの間では熱膨張性部材などの防火専用部材を設けなくとも防火性能が得られる。また、熱膨張性部材などの防火性能確保のための専用部品が省略されることで部品点数およびその取り付け工数の削減になる。ただし、設計条件によっては下端部10bと下枠14bとの間に熱膨張性部材を併設してもよい。これにより一層の防火性能向上を図ることができる。
【0049】
ガイド用エッジ材42の基本形態は、天板42a、室外側壁42b、室内側壁42cおよび屈曲部42ba,42caとからなる簡易構成である。また、各構成部材は、防火のための特殊形状としたり、専用加工などが不要であって廉価に製造可能である。さらに、扉体10の下骨40は樹脂材であることから断熱性が向上する。
【0050】
次に、変形例にかかる扉体10Aについて説明する。扉体10Aにおいて上記の扉体10同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9は、変形例にかかる扉体10Aの下端部10bおよび下枠14bの一部拡大縦断面図である。扉体10Aに設けられるガイド用エッジ材42Aは上記のガイド用エッジ材42に代わるものである。上記のガイド用エッジ材42の室内側の屈曲部42ca(図4参照)は、ガイド用エッジ材42Aでは樹脂材の樹脂片60で置き替えられている。樹脂片60のうち室内側に突出している部分は上記の屈曲部42caと同形状であり、空洞10bcを塞ぐ。樹脂片60の基部はガイド用エッジ材42Aの室内側壁42cにおける下部の収納溝42cbに収納および固定されている。この場合、ガイド用エッジ材42Aは天板42a、室外側壁42bおよび屈曲部42baは金属材であって伝熱性があるが、樹脂片60は樹脂材のため断熱性がある。つまり、扉体10Aの下端部10bでは、室外側と室内側との間で金属材がつながっていないため、いわゆる熱橋とならず断熱性が一層向上する。
【0051】
図10は、高温に晒された状態における変形例にかかる扉体10Aの下端部10bおよび下枠14bの一部拡大縦断面図である。図10に示すように、建具12が火災等によって高温に晒されると、下骨40だけでなく樹脂片60(図10では仮想線で示す)も融解または消失し、隙間52bが広く確保される。そうすると、融解した断熱材10ebは、仮に室内側表面材10gが反り返っていない場合でも樹脂片60が存在しなくなって形成された隙間52bを通って下方に排出され、防火性能が得られる。
【0052】
本発明の一態様にかかる扉体は、金属材の第1表面材と金属材の第2表面材とによって挟まれた断熱材と、前記断熱材の下部に設けられる下骨と、を備える扉体であって、前記下骨は樹脂材で形成され、前記断熱材は、難燃性および熱融解性を有することを特徴とする。
このような扉体では、扉体の下骨は樹脂材であることから高温に晒されたときには融解または消失する。また、下骨の上方に設けられた断熱材は、難燃性および熱融解性を有することから下方に排出されて隙間を塞ぎ、遮炎効果が得られる。したがって、扉体は、少なくとも下端部と下枠との間では防火のための専用部材を設けない簡易な構成で防火性能を確保することができる。
【0053】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記下骨は下方に開口するコ字形状であり、前記下骨の開口には下方に開口するコ字形状部分を含むガイド用エッジ材が設けられ、前記ガイド用エッジ材における前記第1表面材に近い側の第1エッジ材側壁と、前記下骨における前記第1表面材に近い側の第1下骨側壁との間には第1空洞が形成されていることを特徴とする。
このような第1空洞が形成されていると、融解した断熱材が下方部に排出されやすい。
【0054】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記第1表面材は前記第1下骨側壁を覆い、前記ガイド用エッジ材は前記第1表面材に対して非固定であることを特徴とする。
このように、ガイド用エッジ材と第1表面材とが非固定であると、第1表面材が熱により反り返って隙間が形成され、融解した断熱材が下方部に排出されやすい。
【0055】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記ガイド用エッジ材における前記第2表面材に近い側の第2エッジ材側壁と、前記下骨における前記第2表面材に近い側の第2下骨側壁との間には第2空洞が形成されており、前記第1空洞の見込み方向幅は、前記第2空洞の見込み方向幅より広いことを特徴とする。
このような第2空洞が形成されていると、溶解した断熱材が下端隙間の室外側部分および室内側部分の両方を塞ぐことから防火性能が向上する。また、第1空洞の見込み方向幅が、第2空洞の見込み方向幅より広いことにより、融解した断熱材は第2空洞より第1空洞に多く排出され、下端隙間の一部を重点的に塞ぐことができる。
【0056】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記断熱材の左右に設けられる一対の縦骨を備え、前記ガイド用エッジ材は、一対の前記縦骨に対してそれぞれ固定され、前記断熱材に対して非固定であることを特徴とする。
これにより、ガイド用エッジ材は両端部以外が非拘束となり、熱を受けることにより中央部は下向きに反り返り中央隙間が形成され、融解した断熱材を排出しやすい。
【0057】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記ガイド用エッジ材は、下端から突出して前記第1空洞を塞ぐ樹脂片を有することを特徴とする。
このような樹脂片は熱によって消失または融解して隙間を形成し、融解した断熱材を排出しやすい。
【0058】
本発明の一態様にかかる扉体は、前記断熱材の左右に設けられる一対の縦骨を備え、一対の前記縦骨の下部には、それぞれ内側に突出する突出片がそれぞれ設けられ、前記下骨の両端には、それぞれ前記突出片が挿入される挿入部が設けられ、前記下骨は、前記挿入部に前記突出片が挿入されることによって支持されていることを特徴とする。
このような下骨の固定方法では骨材の仮組み立てを簡易に行うことができる。
【0059】
本発明の一態様にかかる建具は、前記扉体と、前記扉体をスライド可能に支持する枠体とを備え、前記扉体は、前記第1表面材が室内側面を構成し、前記第2表面材が室外側面を構成するように前記枠体に組み立てられているたことを特徴とする。
このような建具では、簡易な構成で防火性能を確保することができる。また、扉体下部と枠体下部との間には下端隙間が設けられるが、一般的にその室内側には雨水浸入を防止する手段が設けられる。したがって、第1空洞から排出された断熱材は少なくとも室内側に流れることが抑止され、堆積しやすく下端隙間を塞ぎやすい。
【0060】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10,10A 扉体、10ab 上骨、10b 下端部、10bb 空洞、10bc 空洞、10c 戸先側縦端部、10ca 縦骨、10d 戸尻側縦端部、10e 断熱材、10ea,10eb 融解した断熱材、10f 室外側表面材(第2表面材)、10g 室内側表面材(第1表面材)、12 建具、14 枠体、14a 上枠、14b 下枠、14c 戸先側縦枠、14d 戸尻側縦枠、34 ガイドローラ、40 下骨、40a 天板、40ab 挿入部、40b 室外側壁(第2下骨側壁)、40c 室内側壁(第1下骨側壁)、42 ガイド用エッジ材、42a 天板、42b 室外側壁(第2エッジ材側壁)、42c 室内側壁(第1エッジ材側壁)、42d コ字形状部分、44 下端隙間、49 突出片、52a,52b 隙間、54 中央隙間、60 樹脂片
図1
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