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  • 特許-排気ガス浄化用プラズマリアクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用プラズマリアクタ
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/01 20060101AFI20231115BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231115BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F01N3/01
F01N3/08 C
B01D53/92 280
B01D53/92 ZAB
B01D53/92 320
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020060493
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156275
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】松田 千尋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】服部 洋一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 潤哉
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01
F01N 3/08
B01D 53/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが一方から他方に流れるケーシング内に、表裏の平面を有すると共に電極を設けた多数枚の放電パネルが放電ギャップを介して積層状に並列配置されており、
前記各放電パネルには、排気ガスの流れ方向に向かって後端の部位に、排気ガスを前記放電ギャップに誘い込むガイド面を形成している排気ガス浄化用プラズマリアクタであって、
前記ガイド面は、前記放電パネルにおける表裏両面のうち一方の面の後端を他方の面の後端よりも排気ガスの流れ方向の前方側にずらすことによって形成されており、前記ガイド面の後端と前記他方の面の後端とが同じ前後位置に揃っている、
排気ガス浄化用プラズマリアクタ。
【請求項2】
前記ガイド面は、前記放電パネルの表裏両面と平行な面とこれと直交した面とからなるL形に形成されている、
請求項1に記載した排気ガス浄化用プラズマリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用等のエンジンに付設して排気ガスからPM(粒子状物質)を除去することに使用するプラズマリアクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気ガスには、CO、HC、NOxと並んでPM(Particulate Matter:粒子状物質)が含まれている。このPMはディーゼルエンジンにおいて多く発生しており、そこで、ディーゼルエンジンではPMの除去手段としてDPFが使用されているが、PMを燃焼させるための燃料噴射制御を要する点や、DPF内に堆積したPMやアッシュ(燃料中の硫黄成分による未燃灰分)による圧損増大等、課題が多い。
【0003】
他方、ガソリンエンジンはディーゼルエンジンに比べてPMの発生量は少ないため、排気ガスの浄化手段として従来は、CO、HC、NOxを対象にした三元触媒が使用されてきたが、PMの規制が強化されて個数管理(PN)に移行するに至り、ガソリンエンジンにおいてもGPFを採用するなどPMの除去は重要な課題として浮上している。しかし、GPFもDPFと同様の問題が懸念される。
【0004】
そこで、DPFやGPFに代わるPMの除去手段が要請されているのであるが、このPM除去手段としてプラズマリアクタが注目されている。プラズマリアクタは、ケーシング内に、多数枚の放電パネルが放電ギャップを介して並列配置されたもので、隣り合った放電パネルの電極に高電圧を印加して放電ギャップにプラズマを発生させることにより、放電ギャップを流れる排気ガスに含まれているPMを酸化して(燃焼させて)無害化している(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1において、放電パネルは四角板の形態を成しており、排気ガスの流れ方向の上流側に向いた後端面(すなわち排気ガスが最初に当たる面)は、排気ガスの流れと直交した平坦面になっている。従って、放電パネルのうち排気ガスが当たる部位は角張っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-3604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、プラズマリアクタに要請される機能の一つに、排気ガスの流れのスムース性が挙げられる。自動車用エンジンでは、回転数はアイドリング回転域から高速走行回転域まで広範囲に亙っていることから、プラズマリアクタを通過する排気ガスの流速も広い範囲で変化するため、排気ガスが高速で流れても放電ギャップにスムースに導かれることが必要である。殊に、プラズマリアクタにおいて放電ギャップの間隔は放電を許容するために広げることはできないため、放電を許容しつつ排気ガスのスムースな流れを実現する必要がある。
【0008】
しかるに、特許文献1を初めとして従来の放電パネルは、排気ガスの流れ方向の上流側に向いた後端部が角張っているため、特にエンジンが高速回転域に至って排気ガスの流速が速くなると、放電ギャップへの排気ガスのスムースな流入が阻害されることが懸念される。
【0009】
そして、プラズマリアクタ内での排気ガスのスムースな流れが阻害されると、これがネックになってエンジンの回転が制約を受けて、エンジンを高速回転させることができなくなってしまいかねない。この点については、放電パネルの枚数を多くして放電ギャップの断面積の総和を増大させることにより、高速で流れる排気ガスを多数の放電ギャップに分散させて流速を低下させることが考えられるが、これではプラズマリアクタが大型化してコストが嵩むと共に重量増大による燃費悪化という別の問題が発生する。
【0010】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の排気ガス用プラズマリアクタは、
「排気ガスが一方から他方に流れるケーシング内に、表裏の平面を有すると共に電極を設けた多数枚の放電パネルが放電ギャップを介して積層状に並列配置されており、
前記各放電パネルには、排気ガスの流れ方向に向かって後端の部位に、排気ガスを前記放電ギャップに誘い込むガイド面を形成している」
という構成において、
「前記ガイド面は、前記放電パネルにおける表裏両面のうち一方の面の後端を他方の面の後端よりも排気ガスの流れ方向の前方側にずらすことによって形成されており、前記ガイド面の後端と前記他方の面の後端とが同じ前後位置に揃っている
という特徴を備えている。
【0012】
この場合、ガイド面の態様は様々であり、請求項2では、前記ガイド面は、前記放電パネルの表裏両面と平行な面とこれと直交した面とからなるL形に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、放電ギャップへの排気ガスの流れ込みがガイド面によって誘い込まれるため、排気ガスが高速で流れていても、圧損を抑制した状態で放電ギャップにスムースに誘い込むことができる。これにより、プラズマリアクタを大型化することなく排気ガスを高速で通過させて、エンジンの高速回転に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1(A)はプラズマリアクタの概略縦断側面図、(B)は第1参考例の部分拡大図である。
図2】第2参考例の要部の縦断側面図である。
図3】第実施形態の要部の縦断側面図である
図4】第実施形態の要部の縦断側面図である
図5】第3参考例を示す図で、(A)は製造途中での中間品の縦断側面図、(B)は製造後の縦断側面図である。
図6】第実施形態を示す図で、(A)は製造途中での中間品の縦断側面図、(B)は製造後の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態(及び参考例)を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用エンジンの付属品として使用されている。
【0016】
(1).第1実施形態
まず、図1に示す基本構造と第1参考例を説明する。図1のうち(A)ではプラズマリアクタ1の全体を表示している。このプラズマリアクタ1は、自動車のエンジンから排出される排ガスからPMを除去するために排気管2の中途部に介挿されており、例えば、触媒式浄化装置の下流側に配置されている。
【0017】
プラズマリアクタ1は、フロントコーン部3a及びリアコーン部3bを備えたケーシング(ハウジング)3と、ケーシング3のストレート部3cに配置された多数枚の負極放電パネル4及び正極放電パネル5の群とを備えている。負極放電パネル4及び正極放電パネル5は、排気ガスの流れ方向に直交した横方向に長い長方形の形態であり、負極放電パネル4と正極放電パネル5とが放電ギャップ(排気ガス通過空間)6を介して交互に並列配置されている。
【0018】
ケーシング3はステンレス鋼板等の金属板で作られており、排気ガスの流れ方向から見て四角形になっている。従って、コーン部3a,3bは、角錐状の形態になっている。
【0019】
図1(B)に示すように、放電パネル4,5は、誘電体製の基板7に電極8,9を埋設した構造になっている。基板7は例えばアルミナ等のセラミック製である一方、電極8,9はタングステン等の電気抵抗が小さい金属膜から成っており、基板7の長手方向に長い帯状の形態を成している。なお、基板7は、製造段階では表層と裏層との積層構造になっており、一方の層に電極8,9を印刷してから重ね合わせて焼成することにより、内部に電極8,9が埋設された1枚板製品と成している。
【0020】
基板7は、既述のとおり、排気ガスの流れ方向と直交した横方向に長いため、排気ガスの流れ方向である縦方向は幅方向になっている。そして、放電パネル4,5において、横方向に向いた端面は短手側面になっているが、各負極放電パネル4のマイナス電極8は基板7の短手一側面に露出させてこれに負極用側面電極を導通させている一方、正極放電パネル5のプラス電極9は基板7の短手他側面に露出させてこれに正極用側面電極を導通させており、負極用側面電極と正極用側面電極とを電源に接続している。
【0021】
放電ギャップ6は、例えば隣り合った放電パネル4,5の短手側部にスペーサを介在させることによって間隔が規定されている。本実施形態では、電極8,9はその全体が基板7の内部に埋設されているが、排気ガスの流れ方向の下流端を基板7の先端面に露出させたり、排気ガスの流れ方向の上流端を基板7の後端面に露出させたりしてもよい。
【0022】
図1(B)に明示するように、各放電パネル4,5において排気ガスの流れ方向の上流側に向いた後端部10に、参考ガイド面として、縦断側面視で湾曲した円弧面11を形成している。このように円弧面11を形成することにより、排気ガスが高速でケーシング3に流入しても、排気ガスを放電ギャップ6にスムースにガイドして通過させることができる。従って、エンジンの高速回転を許容しつつPMを除去できる。実際に本願発明者たちが実験したところ、圧損を20%以上低減させることができた。従って、高速回転するエンジンにも対応できる。
【0023】
(2).他の参考例・実施形態
次に、図2以下に示す他の参考例と実施形態を説明する。図2では、参考例として、各放電パネル4,5の後端部10に、ガイド面として傾斜した一対の傾斜面12を形成することにより、放電パネル4,5の後端部10を全体として断面三角形(山形)に形成している
【0024】
図2参考例では一対の傾斜面12を対称に(合掌状に)形成したが、図3に示す第実施形態では、ガイド面を傾斜した1つの傾斜面12に形成している。従って、傾斜面12は、放電パネル4,5における一方の面(下面)の後端を他方の面(上面)の後端よりも排気ガスの流れ方向の前方側にずらすことによって形成されており、傾斜面12の後端と他方の面(上面)の後端とが同じ前後位置に揃っている。この実施形態でも、排気ガスは放電ギャップ6に誘い込まれるため、排気ガスの流れをスムース化できる。
【0025】
図4に示す第実施形態では、各放電パネル4,5の後端部10にL形の角形面13を形成することにより、排気ガスを放電ギャップ6に誘い込むガイド面と成している。この実施形態でも、排気ガスは放電ギャップ6に誘い込まれる。
【0026】
図5に示す第3参考例では、放電パネル4,5の後端部10を、一対の傾斜面12を有する台形状に形成している。そして、この放電パネル4,5は、既に触れたように、製造段階では、表層と裏層との中間材(粘土状の中間材)を用意して、一方の中間材に電極8,9を印刷してから重ね合わせて全体を焼成しているが、傾斜面12が形成された中間材を互いに繋がった状態に製造して、焼成してからブレークして製品化している。つまり、ブレーク溝を利用して傾斜面12を形成している。
【0027】
図6に示す第実施形態は第実施形態の変形例であり、図3のように1つの傾斜面12を備えている場合において、2つの中間材がV溝を介して繋がった状態に形成してから焼成しブレークしている。
【0028】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、各放電パネルの表面又は裏面に、HC等の有害ガスを補集する吸着層を設けることが可能である。また、図3のように片面のみに傾斜面12を形成する場合、ケーシングの中間高さ位置を挟んだ上下において傾斜方向を逆向きに変えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本願発明は、排気ガス用のプラズマリアクタに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 プラズマリアクタ
2 排気管
3 ケーシング
4 負極放電パネル
5 正極放電パネル
6 放電ギャップ(排気ガス通過空間)
7 基板
8,9 電極
10 後端
12 ガイド面の一例としての傾斜面
13 ガイド面の一例としての角形面(L形面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6