(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 25/06 20200101AFI20231115BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20231115BHJP
B62K 11/02 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B62J25/06
B62M7/02 N
B62K11/02
(21)【出願番号】P 2020064986
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 貴正
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-12787(JP,U)
【文献】実開昭61-10290(JP,U)
【文献】実開昭63-180488(JP,U)
【文献】特開平2-128973(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0001607(KR,U)
【文献】実開昭61-10292(JP,U)
【文献】実開昭61-117081(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 25/00,
B62K 11/00,
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、
前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、
前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向内側の位置で前記ボトムフレーム(19)に支持され、
前記パワーユニット(11)は、前記ボトムフレーム(19)の上方で車幅方向外側に膨出する膨出部(30b)を備え、
前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)と前記膨出部(30b)との間を通って車幅方向外側に延出することを特徴とする
鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(
19)の車幅方向の内側面(62c)に固定されることを特徴とする請求項
1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記パワーユニット(11)から延出する排気管(36)は、前記ボトムフレーム(19)の外側方を車両前後方向に延び、
前記ステップブラケット(70)は、前記排気管(36)と前記膨出部(30b)との間の空間(S3)を通って車幅方向外側に延出することを特徴とする請求項
1または2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記排気管(36)は、車両側面視で、前記ボトムフレーム(19)に重なることを特徴とする請求項
3記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記ステップ(41)は、前記ステップブラケット(70)の車幅方向外側の端部に支持され、
車両正面視で、前記排気管(36)は、前記ステップ(41)の先端部(41b)と車輪(2)の接地点(G)とを結ぶ仮想の直線(L)よりも車幅方向内側且つ上方に位置することを特徴とする請求項
3または
4記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、
前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、
前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向内側の位置で前記ボトムフレーム(19)に支持され、
前記ボトムフレーム(19)は、中空のフレーム本体(61)と、前記フレーム本体(61)に対し車幅方向に挿通され、前記フレーム本体(61)に固定される筒状部材(62)とを備え、
前記ステップブラケット(70)は、前記筒状部材(62)に車幅方向外側から挿通される締結具(64)によって、前記筒状部材(62)の車幅方向内側の端面(62c)に締結されることを特徴とする
鞍乗り型車両。
【請求項7】
パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、
前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、
前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向の内側面(62c)に固定され、
前記ステップブラケット(70)は、前記内側面(62c)に当接して前記内側面(62c)に締結される固定部(71)と、前記固定部(71)の上端部から前記ボトムフレーム(19)と前記パワーユニット(11)との間を通って車幅方向外側に延出するアーム部(72)とを備えることを特徴とする
鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記固定部(71)は、前記ボトムフレーム(19)及び前記固定部(71)に車幅方向外側から挿通される締結具(64)によって前記内側面(62c)に締結されることを特徴とする請求項
7記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを支持する車体フレームと、乗員用のステップを支持するステップブラケットとを備え、ステップブラケットが車体フレームの車幅方向の外側面に固定される鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の鞍乗り型車両では、ステップブラケットが車体フレームの車幅方向の外側面に固定されるため、ステップブラケットの車幅方向外側への張り出しが大きくなる。この場合、部品等を配置するスペースを、ステップブラケットの外側方に確保し難くなる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、鞍乗り型車両において、ステップブラケットを車幅方向にコンパクトに配置できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向内側の位置で前記ボトムフレーム(19)に支持され、前記パワーユニット(11)は、前記ボトムフレーム(19)の上方で車幅方向外側に膨出する膨出部(30b)を備え、前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)と前記膨出部(30b)との間を通って車幅方向外側に延出することを特徴とする。
【0006】
また、上述の構成において、前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向の内側面(62c)に固定されても良い。
【0007】
また、上述の構成において、前記パワーユニット(11)から延出する排気管(36)は、前記ボトムフレーム(19)の外側方を車両前後方向に延び、前記ステップブラケット(70)は、前記排気管(36)と前記膨出部(30b)との間の空間(S3)を通って車幅方向外側に延出しても良い。
【0008】
また、上述の構成において、前記排気管(36)は、車両側面視で、前記ボトムフレーム(19)に重なっても良い。
また、上述の構成において、前記ステップ(41)は、前記ステップブラケット(70)の車幅方向外側の端部に支持され、車両正面視で、前記排気管(36)は、前記ステップ(41)の先端部(41b)と車輪(2)の接地点(G)とを結ぶ仮想の直線(L)よりも車幅方向内側且つ上方に位置しても良い。
【0009】
鞍乗り型車両は、パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向内側の位置で前記ボトムフレーム(19)に支持され、前記ボトムフレーム(19)は、中空のフレーム本体(61)と、前記フレーム本体(61)に対し車幅方向に挿通され、前記フレーム本体(61)に固定される筒状部材(62)とを備え、前記ステップブラケット(70)は、前記筒状部材(62)に車幅方向外側から挿通される締結具(64)によって、前記筒状部材(62)の車幅方向内側の端面(62c)に締結されることを特徴とする。
鞍乗り型車両は、パワーユニット(11)を支持する車体フレーム(10)と、運転者用のステップ(41)を支持するステップブラケット(70)とを備え、前記ステップブラケット(70)が前記車体フレーム(10)に支持される鞍乗り型車両において、前記車体フレーム(10)は、前記パワーユニット(10)の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム(19)を備え、前記ステップブラケット(70)は、前記ボトムフレーム(19)の車幅方向の内側面(62c)に固定され、前記ステップブラケット(70)は、前記内側面(62c)に当接して前記内側面(62c)に締結される固定部(71)と、前記固定部(71)の上端部から前記ボトムフレーム(19)と前記パワーユニット(11)との間を通って車幅方向外側に延出するアーム部(72)とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上述の構成において、前記固定部(71)は、前記ボトムフレーム(19)及び前記固定部(71)に車幅方向外側から挿通される締結具(64)によって前記内側面(62c)に締結されても良い。
【発明の効果】
【0011】
鞍乗り型車両は、パワーユニットを支持する車体フレームと、乗員用のステップを支持するステップブラケットとを備え、ステップブラケットが車体フレームに支持され、ステップブラケットは、車体フレームの車幅方向内側の位置で車体フレームに支持される。
この構成によれば、ステップブラケットが車体フレームの車幅方向内側の位置で車体フレームに支持されるため、車幅方向外側へのステップブラケットの張り出しを小さくできる。このため、ステップブラケットを車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0012】
また、上述の構成において、車体フレームは、パワーユニットの下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレームを備え、ステップブラケットは、ボトムフレームの車幅方向内側の位置でボトムフレームに支持されても良い。
この構成によれば、パワーユニットの下方且つボトムフレームの車幅方向内側の空間を利用して、ステップブラケットを車幅方向にコンパクトに配置できる。
また、上述の構成において、ステップブラケットは、ボトムフレームの車幅方向の内側面に固定されても良い。
この構成によれば、ステップブラケットがボトムフレームの車幅方向の内側面に固定されるため、ボトムフレームの車幅方向の外側面の側へのステップブラケットの固定部の張り出しを小さくでき、ステップブラケットを車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0013】
さらに、上述の構成において、パワーユニットは、ボトムフレームの上方で車幅方向外側に膨出する膨出部を備え、ステップブラケットは、ボトムフレームと膨出部との間を通って車幅方向外側に延出しても良い。
この構成によれば、ボトムフレームとパワーユニットの膨出部との間の空間を利用して、ステップブラケットをボトムフレームの車幅方向内側から車幅方向外側に延ばすことができる。
また、上述の構成において、パワーユニットから延出する排気管は、ボトムフレームの外側方を車両前後方向に延び、ステップブラケットは、排気管と膨出部との間の空間を通って車幅方向外側に延出しても良い。
この構成によれば、ステップブラケットが、ボトムフレームの車幅方向内側の位置でボトムフレームに支持されるため、ボトムフレームの外側方を車両前後方向に延びる排気管を、車幅方向においてボトムフレーム側に寄せて配置でき、排気管を車幅方向にコンパクトに配置できる。また、排気管と膨出部との間の空間を利用して、ステップブラケットをボトムフレームの車幅方向内側から車幅方向外側に延ばすことができる。
【0014】
また、上述の構成において、排気管は、車両側面視で、ボトムフレームに重なっても良い。
この構成によれば、ステップブラケットを排気管によって車幅方向外側から隠すことができ、外観性が良い。
また、上述の構成において、ステップは、ステップブラケットの車幅方向外側の端部に支持され、車両正面視で、排気管は、ステップの先端部と車輪の接地点とを結ぶ仮想の直線よりも車幅方向内側且つ上方に位置しても良い。
この構成によれば、鞍乗り型車両が左右にバンクした状態において、排気管が接地し難くなり、鞍乗り型車両のバンク角を大きくできる。
【0015】
さらに、上述の構成において、ボトムフレームは、中空のフレーム本体と、フレーム本体に対し車幅方向に挿通され、フレーム本体に固定される筒状部材とを備え、ステップブラケットは、筒状部材に車幅方向外側から挿通される締結具によって、筒状部材の車幅方向内側の端面に締結されても良い。
この構成によれば、ボトムフレームを中空にして軽量にできるとともに、筒状部材によってステップブラケットを高い剛性で支持できる。また、締結具を車幅方向外側から筒状部材に挿通できるため、締結が容易である。
また、上述の構成において、ステップブラケットは、内側面に当接して内側面に締結される固定部と、固定部の上端部からボトムフレームとパワーユニットとの間を通って車幅方向外側に延出するアーム部とを備えても良い。
この構成によれば、ステップブラケットの固定部がボトムフレームの車幅方向の外側面の側に張り出すことを防止でき、ステップブラケットを車幅方向にコンパクトに設けることができる。また、アーム部によって、ステップブラケットをボトムフレームとパワーユニットとの間に通して車幅方向外側に延ばすことができる。
【0016】
また、上述の構成において、固定部は、ボトムフレーム及び固定部に車幅方向外側から挿通される締結具によって内側面に締結されても良い。
この構成によれば、固定部を車幅方向外側から締結でき、締結作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【
図3】右側のステップの周辺部の構造の右側面図である。
【
図4】右側のステップの周辺部の構造の右側面図である。
【
図5】右側のステップの周辺部の構造を下方から見た平面図である。
【
図6】右側のステップの周辺部の構造を下方から見た平面図である。
【
図9】自動二輪車の下部を前方から見た正面図である。
【
図10】センターフレームの周辺部を前側の側方側から見た斜視図である。
【
図11】エンジンハンガーにキャニスターが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図12】ブレーキ操作ペダルの周辺部の構造を示す右側面図である。
【
図13】タンデムステップブラケットの車幅方向の内側面側の構造を示す側面図である。
【
図16】メインフレームと左右のセンターフレームとの接続部を上方側から見た斜視図である。
【
図17】
図16から前後接続部材を除いた状態を示す斜視図である。
【
図19】自動二輪車の前部を前方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号RHは車体右方を示す。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車1の右側面図である。
自動二輪車1は、車体フレーム10にパワーユニットとしてのエンジン11が支持され、前輪2(車輪)を操舵可能に支持するフロントフォーク12が車体フレーム10の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム13が車体フレーム10の後部に設けられる車両である。
自動二輪車1は、乗員がシート14に跨るようにして着座する鞍乗り型車両である。シート14は、車体フレーム10の後部の上方に設けられる。
【0020】
図2は、車体フレーム10の左側面図である。
図1及び
図2を参照し、車体フレーム10は、車体フレーム10の前端に設けられるヘッドパイプ15と、ヘッドパイプ15から後下方に延びるメインフレーム16と、メインフレーム16の後端部から下方に延びる左右一対のセンターフレーム17と、ヘッドパイプ15においてメインフレーム16の下方から後下方に延びるダウンフレーム18と、ダウンフレーム18の下端部から左右一対で後方に延びてセンターフレーム17の下端部に接続されるボトムフレーム19とを備える。
【0021】
また、車体フレーム10は、左右のセンターフレーム17の上部から後方に延びる左右一対のシートフレーム20と、シートフレーム20の下方で左右のセンターフレーム17から後上方に延びてシートフレーム20の後部に接続される左右一対のサブフレーム21とを備える。
さらに、車体フレーム10は、メインフレーム16とダウンフレーム18の上部とを接続する前側ガセット22を備える。
【0022】
フロントフォーク12は、ヘッドパイプ15に挿通されるステアリングシャフト24を介し、車体フレーム10に回動自在に支持される。操舵用のハンドル25は、フロントフォーク12の上端部に取り付けられる。前輪2は、フロントフォーク12の下端部に設けられる車軸2aに支持される。
【0023】
スイングアーム13は、左右のセンターフレーム17に支持されるピボット軸26に軸支される。ピボット軸26は、車幅方向に水平に延びる。スイングアーム13は、前端部をピボット軸26に軸支され、ピボット軸26を中心に上下に揺動する。
後輪3は、スイングアーム13の後端部に設けられる車軸3aに支持される。
自動二輪車1は、スイングアーム13の後端部とシートフレーム20の後部との間に掛け渡されるリアサスペンション27を左右一対備える。
【0024】
エンジン11は、上下方向においてメインフレーム16とボトムフレーム19との間、車両前後方向においてダウンフレーム18とセンターフレーム17との間に配置され、車体フレーム10に固定される。ボトムフレーム19の前端部には、エンジン11の前部の下部を支持するエンジンハンガー部19aが設けられる。
エンジン11は、内燃機関である。エンジン11は、車幅方向(左右方向)に水平に延びるクランク軸29を支持するクランクケース30と、クランクケース30の前部の上部から上方に延びるシリンダー部31とを備える。
シリンダー部31は、クランクケース30側から順に、筒内をピストン(不図示)が往復運動するシリンダー31a、シリンダーヘッド31b、及びヘッドカバー31cを備える。
【0025】
クランクケース30の後部は、変速機33(
図7)を収容する変速機ケース部30aである。エンジン11の出力は、変速機33の出力軸と後輪3とを接続するチェーン32によって後輪3に伝達される。
【0026】
エンジン11の吸気装置は、エアクリーナーボックス34と、エアクリーナーボックス34に取り込まれる空気をエンジン11に供給するスロットルボディ35とを備える。スロットルボディ35は、シリンダーヘッド31bの後面の吸気ポートに接続される。
【0027】
エンジン11の排気管36は、シリンダーヘッド31bの前面の排気ポートから下方に引き出され、エンジン11の下方を通って後方に延びる。
排気管36の後端には、マフラー37が接続される。マフラー37は、後輪3に対し車幅方向の一側方(右側方)に配置され、車両側面視でスイングアーム13及び後輪3に車幅方向外側から重なる。
【0028】
燃料タンク38は、メインフレーム16の上方でヘッドパイプ15とシート14との間に配置される。燃料タンク38は、メインフレーム16に支持される。
燃料タンク38内の蒸発燃料を吸着するキャニスター39は、燃料タンク38の下方且つ変速機ケース部30aの上方でシリンダー部31の後方に配置される。
シート14は、運転者(乗員)用の前側シート14aと、同乗者用の後側シート14bとを一体に備える。
自動二輪車1は、シート14の下方で車体を外側方から覆うサイドカバー40を左右一対備える。右側のサイドカバー40は、エアクリーナーボックス34を外側方から覆う。
【0029】
前側シート14aの運転者が足を置く左右一対のステップ41は、センターフレーム17の下端部の前方でエンジン11の下方に配置される。
各センターフレーム17の下部の外側面には、センターフレーム17から後方に延びる左右一対のタンデムステップブラケット42が取り付けられる。後側シート14bの同乗者が足を置くタンデムステップ42aは、各タンデムステップブラケット42の後端部に取り付けられる。
【0030】
後輪3を制動するブレーキ装置45のブレーキ操作ペダル46は、車幅方向に延びるペダル軸47を介し右側のタンデムステップブラケット42に支持される。ブレーキ操作ペダル46は、ペダル軸47を中心に上下に揺動可能である。ブレーキ操作ペダル46は、ペダル軸47から右側のステップ41の下方を通って右側のステップ41の前方に延びる。
【0031】
ヘッドライト48は、ヘッドパイプ15の前方に配置される。ヘッドライト48は、フロントフォーク12に支持され、フロントフォーク12と一体に左右に揺動する。
フロントフェンダー49は、フロントフォーク12に支持される。リアフェンダー50は、車体フレーム10の後端部に支持される。
【0032】
図3及び
図4は、右側のステップ41の周辺部の構造の右側面図である。
図5及び
図6は、右側のステップ41の周辺部の構造を下方から見た平面図である。
図7は、
図3のVII-VII断面図である。ここで、
図4及び
図6では、排気管36が取り外された状態が示される。
図3~
図7を参照し、クランクケース30は、クランク軸29を支持するクランクケース本体51と、クランクケース本体51の左右の一方側(右側)の側面51aを覆うクランクケースカバー52とを備える。変速機ケース部30aは、クランクケース本体51の後部に設けられる。
【0033】
変速機33は、クランク軸29と平行に配置される変速機軸33aと、変速機軸33a上に設けられる変速歯車列33b(
図7)とを備える。変速機軸33aは、クランク軸29の後方で変速機ケース部30a内に配置される。
変速機軸33aの一端部には、クランク軸29と変速機33との間の回転の伝達を接続及び切断するクラッチ装置53が設けられる。
クラッチ装置53は、変速機軸33aの一端部上においてクランクケース本体51の外側方に配置され、クランクケースカバー52によって覆われる。
【0034】
クランクケースカバー52は、右側のボトムフレーム19に対し車幅方向外側に配置される。すなわち、クランクケースカバー52は、クランクケース30が右側のボトムフレーム19よりも車幅方向外側に膨出する部分である膨出部30bを構成する。膨出部30bは、右側のボトムフレーム19よりも上方に配置される。
右側のボトムフレーム19は、クランクケース本体51の下方を車両前後方向に延び、クランクケース本体51に下方から重なる。
【0035】
クランクケース本体51の下部には、エンジン11の潤滑用のオイルを貯留するオイルパン部51bが設けられる。
オイルパン部51bは、車両側面視においてクランクケースカバー52よりも下方に膨出する。オイルパン部51bは、車幅方向において、左右のボトムフレーム19の間に配置される。
【0036】
排気管36は、シリンダーヘッド31bの前面の排気ポートから下方に延びる上流側排気管部55と、上流側排気管部55の排気の流れの下流端に接続される触媒部56と、触媒部56の排気の流れの下流端に接続される下流側排気管部57とを備える。
触媒部56は、筒状の外筒56aと、外筒56a内に収納され、排気を浄化する触媒体56b(
図7)とを備える。触媒部56には、外筒56aを外側方及び上方から覆う排気管カバー58が取り付けられる。
【0037】
触媒部56は、外筒56aの軸線56cが車両前後方向を指向する向きで略水平に配置される。
触媒部56は、右側のボトムフレーム19の外側方に配置され、右側のボトムフレーム19に沿うように車両前後方向に延びる。触媒部56は、車両側面視で、ボトムフレーム19に車幅方向外側から重なる。
また、触媒部56は、クランクケースカバー52の下方に配置される。触媒部56は、クランクケースカバー52の下面に下方から重なる。すなわち、触媒部56は、クランクケース30の膨出部30bの下方に配置され、膨出部30bに下方から重なる。
触媒部56は、右側のステップ41及びブレーキ操作ペダル46に対し車幅方向内側に配置される。ブレーキ操作ペダル46は、膨出部30bの下方に配置され、車両側面視で触媒部56に車幅方向外側から重なる。
【0038】
上流側排気管部55の下流端は、クランクケースカバー52の下方で、触媒部56の外筒56aの上流端に接続される。
下流側排気管部57の上流端は、クランクケースカバー52の後下方で、触媒部56の外筒56aの下流端に接続される。マフラー37は、下流側排気管部57の下流端に接続される。
触媒部56の外筒56aの外径は、上流側排気管部55の外径及び下流側排気管部57の外径よりも大きい。すなわち、触媒部56は、排気管36の途中に設けられ、排気管36において触媒部56の上流側及び下流側の部分よりも大径の管部である。
【0039】
図3及び
図5を参照し、クランクケースカバー52は、右側のボトムフレーム19及び触媒部56よりも車幅方向外側に膨出する側方突出部52aを後部に備える。側方突出部52aは、クラッチ装置53を車幅方向外側及び周囲から覆うクラッチカバー部であり、車両側面視では、略円形である。側方突出部52aは、膨出部30bの一部である。
【0040】
自動二輪車1は、右側のステップ41を支持するステップブラケット70を備える。
ステップブラケット70は、右側のボトムフレーム19に設けられる取付部60に取り付けられる。ここでは、ステップブラケット70が右側のボトムフレーム19に取り付けられる構成を例に挙げて説明するが、左側のステップ41を支持するステップブラケットが、左側のボトムフレーム19に取り付けられても良い。
【0041】
図8は、
図7のVIII-VIII断面図であり、取付部60の断面を示す。
図8を参照し、ボトムフレーム19は、前後に延びるパイプ状の中空のフレーム本体61と、フレーム本体61に対し車幅方向に挿通される一対の筒状部材62と、フレーム本体61の車幅方向の外側面部61aに固定される受け部材63とを備える。フレーム本体61の前端部は、ダウンフレーム18の下端部に接続される。
取付部60は、一対の筒状部材62によって構成される。各筒状部材62には、ステップブラケット70を筒状部材62に締結する締結具64が挿通される。本実施の形態では、締結具64はボルトである。
【0042】
フレーム本体61は、フレーム本体61を車幅方向に貫通する支持孔61bを一対備える。支持孔61bは、車両前後方向(フレーム本体61の軸方向)に並べて一対設けられる。支持孔61bは、フレーム本体61の車幅方向の外側面部61a及び内側面部61cを貫通する。
筒状部材62は、支持孔61bに挿通され、支持孔61bに固定される。筒状部材62は、車両前後方向に並べて一対設けられる。
詳細には、筒状部材62は、外周部62aが支持孔61bに溶接等によって結合される。筒状部材62の内周部62bには、締結具64が挿通される。
【0043】
受け部材63は、フレーム本体61の外側面部61aに溶接等によって結合される板材である。
受け部材63は、筒状部材62の内周部62bと略同軸に設けられる孔63aを一対備える。孔63aの径は、筒状部材62の内周部62bの内径よりも大きく、筒状部材62の外周部62aの外径及び支持孔61bの内径よりも小さい。
支持孔61bに挿通された筒状部材62は、車幅方向内側から受け部材63の孔63aの周縁部に突き当たり、軸方向(車幅方向)に位置決めされる。
筒状部材62の車幅方向内側の端面62cは、フレーム本体61の内側面部61cに対し車幅方向内側に突出する。端面62cは、ボトムフレーム19の車幅方向の内側面である。
【0044】
図3~
図8を参照し、ステップブラケット70は、ボトムフレーム19の筒状部材62の車幅方向内側の端面62cに固定される固定部71と、固定部71の上端部から車幅方向外側に延出するアーム部72と、アーム部72の車幅方向外側の端部に設けられるステップ支持部73と、回動したステップ41を受けるステップ受け部74とを備える。
【0045】
ステップブラケット70の固定部71は、筒状部材62の端面62cに車幅方向内側から当接する板状部であり、前後に一対設けられる端面62cに跨って配置される。固定部71は、固定部71を車幅方向に貫通する固定孔71aを前後に一対備える。各固定孔71aは、筒状部材62の内周部62bと略同軸となるように配置される。固定孔71aは、雌ネジ孔であり、固定孔71aには、締結具64が締結される。
【0046】
締結具64は、取付部60に車幅方向外側から挿通され、ステップブラケット70の固定部71に締結される。
詳細には、各締結具64は、受け部材63の孔63a及び筒状部材62の内周部62bに車幅方向外側から挿通され、ステップブラケット70の固定部71の固定孔71aに締結される。これにより、ステップブラケット70の固定部71は、ボトムフレーム19の取付部60に車幅方向外側から挿通される締結具64によって、筒状部材62の車幅方向内側の端面62cに固定される。締結具64はボルトであり、このボルトの頭部64aは、受け部材63に当接する。
すなわち、ステップブラケット70の固定部71は、右側のボトムフレーム19に対し車幅方向内側の位置で右側のボトムフレーム19に支持される。
固定部71及び筒状部材62は、クランクケース本体51よりも下方、且つ、オイルパン部51bよりも後方に配置される。
【0047】
ステップブラケット70のアーム部72は、固定部71の上端部から、ボトムフレーム19とクランクケース30との間を通って、車幅方向外側且つ上方に延出する。
詳細には、
図7を参照し、アーム部72は、ボトムフレーム19とクランクケース本体51との間の空間S1、ボトムフレーム19と膨出部30b(クランクケースカバー52)との間の空間S2、及び、排気管36の触媒部56と膨出部30bとの間の空間S3を順に通って、固定部71から車幅方向外側に延びる。
アーム部72は、空間S3では、触媒部56と膨出部30bの側方突出部52aの後部との間の空間を通って車幅方向外側に延びる。
【0048】
ステップブラケット70のステップ支持部73は、アーム部72の先端部に設けられ、触媒部56及び膨出部30bよりも車幅方向外側に位置する。また、ステップ支持部73は、触媒部56よりも上方、且つ、膨出部30bよりも下方に位置する。さらに、ステップ支持部73は、センターフレーム17よりも前方、且つ、ブレーキ操作ペダル46の前端のペダル部46aよりも後方に位置する。
ステップ支持部73は、車両前後方向に延びるステップ支持軸73aを備える。
ステップ受け部74は、アーム部72においてステップ支持部73よりも車幅方向内側の部分から、上方に延出する。
【0049】
ステップ41は、ステップ支持部73から車幅方向外側に延びるブロック状である。ステップ41は、ステップ支持軸73aに連結される連結部41aを、車幅方向内側の端部に備える。ステップ41は、ステップ支持軸73aを中心に上下に揺動可能に支持される。上方に揺動したステップ41は、ステップ受け部74に当接し、揺動位置を規制される。
ステップ41は、クランクケース30の膨出部30bの側方突出部52aよりも車幅方向外側に位置する。このため、側方突出部52aが運転者の足の邪魔になり難く、運転者はステップ41に足を乗せ易い。また、ステップ41は、触媒部56よりも車幅方向外側に位置する。また、ステップ41は、触媒部56よりも上方、且つ、側方突出部52aよりも下方に位置する。さらに、ステップ41は、センターフレーム17よりも前方、且つ、ブレーキ操作ペダル46のペダル部46aよりも後方に位置する。
【0050】
図5及び
図8を参照し、ステップブラケット70は、固定部71が、ボトムフレーム19の車幅方向の内側面である端面62cに固定される。このため、固定部71の車幅方向外側への張り出しを小さくでき、固定部71を車幅方向にコンパクトに設けることができる。例えば、ステップブラケットの固定部を、ボトムフレーム19の外側面部61aに固定する場合、固定部がボトムフレーム19に対し車幅方向外側に張り出し、ボトムフレーム19の車幅方向外側の空間が狭くなる。
本実施の形態では、ステップブラケット70の固定部71がボトムフレーム19の車幅方向の内側面に固定されるため、ボトムフレーム19の車幅方向外側に空間を確保できる。このため、排気管36の触媒部56を車幅方向においてボトムフレーム19側に寄せて、より車幅方向内側に配置できる。
【0051】
図9は、自動二輪車1の下部を前方から見た正面図である。
図9には、自動二輪車1が右側にバンクして右側に旋回する場合における前輪2と路面との接地点Gと、ステップ41の先端部41bの下面とを結ぶ仮想の直線Lが示される。
触媒部56は、車幅方向内側のボトムフレーム19側に寄せて配置されており、仮想の直線Lよりも車幅方向内側且つ上方に位置する。このため、自動二輪車1がバンクした場合に、触媒部56と路面との間のクリアランスを確保でき、自動二輪車1のバンク角を大きく確保できる。触媒部56は、排気管36において最も下方に位置する部分である。
【0052】
図3及び
図4を参照し、触媒部56は、車両側面視で、ボトムフレーム19、ステップブラケット70のアーム部72に車幅方向外側から重なる。このため、ステップブラケット70の一部を触媒部56によって隠すことができ、外観性が良い。
【0053】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、自動二輪車1は、エンジン11を支持する車体フレーム10と、乗員用のステップ41を支持するステップブラケット70とを備え、ステップブラケット70が車体フレーム10に支持され、ステップブラケット70は、車体フレーム10の車幅方向内側の位置で車体フレーム10に支持される。
この構成によれば、ステップブラケット70が車体フレーム10の車幅方向内側の位置で車体フレーム10に支持されるため、車幅方向外側へのステップブラケット70の張り出しを小さくできる。このため、ステップブラケット70を車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0054】
また、車体フレーム10は、エンジン11の下方で車両前後方向に延出する左右一対のボトムフレーム19を備え、ステップブラケット70は、ボトムフレーム19の車幅方向内側の位置でボトムフレーム19に支持される。
この構成によれば、エンジン11の下方且つボトムフレーム19の車幅方向内側の空間を利用して、ステップブラケット70を車幅方向にコンパクトに配置できる。
また、ステップブラケット70は、ボトムフレーム19の車幅方向の内側面である端面62cに固定される。
この構成によれば、ステップブラケット70がボトムフレーム19の車幅方向の内側面に固定されるため、ボトムフレーム19の車幅方向の外側面の側へのステップブラケット70の固定部71の張り出しを小さくでき、ステップブラケット70を車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0055】
さらに、エンジン11は、ボトムフレーム19の上方で車幅方向外側に膨出する膨出部30bを備え、ステップブラケット70は、ボトムフレーム19と膨出部30bとの間を通って車幅方向外側に延出する。
この構成によれば、ボトムフレーム19とエンジン11の膨出部30bとの間の空間S2を利用して、ステップブラケット70をボトムフレーム19の車幅方向内側から車幅方向外側に延ばすことができる。
また、エンジン11から延出する排気管36は、ボトムフレーム19の外側方を車両前後方向に延び、ステップブラケット70は、排気管36と膨出部30bとの間の空間S3を通って車幅方向外側に延出する。
この構成によれば、ステップブラケット70が、ボトムフレーム19の車幅方向内側の位置でボトムフレーム19に支持されるため、ボトムフレーム19の外側方を車両前後方向に延びる排気管36を、車幅方向においてボトムフレーム19側に寄せて配置でき、排気管36を車幅方向にコンパクトに配置できる。また、排気管36と膨出部30bとの間の空間S3を利用して、ステップブラケット70をボトムフレーム19の車幅方向内側から車幅方向外側に延ばすことができる。
【0056】
また、排気管36は、車両側面視で、ボトムフレーム19に重なる。
この構成によれば、ステップブラケット70を排気管36によって車幅方向外側から隠すことができ、外観性が良い。
また、ステップ41は、ステップブラケット70の車幅方向外側の端部に支持され、車両正面視で、排気管36は、ステップ41の先端部41bと前輪2の接地点Gとを結ぶ仮想の直線Lよりも車幅方向内側且つ上方に位置する。
この構成によれば、自動二輪車1が左右にバンクした状態において、排気管36が接地し難くなり、自動二輪車1のバンク角を大きくできる。
【0057】
さらに、ボトムフレーム19は、中空のフレーム本体61と、フレーム本体61に対し車幅方向に挿通され、フレーム本体61に固定される筒状部材62とを備え、ステップブラケット70は、筒状部材62に車幅方向外側から挿通される締結具64によって、筒状部材62の車幅方向内側の端面62cに締結される。
この構成によれば、ボトムフレーム19を中空にして軽量にできるとともに、筒状部材62によってステップブラケット70を高い剛性で支持できる。また、締結具64を車幅方向外側から筒状部材62に挿通できるため、締結が容易である。
また、ステップブラケット70は、内側面である端面62cに当接して端面62cに締結される固定部71と、固定部71の上端部からボトムフレーム19とエンジン11との間を通って車幅方向外側に延出するアーム部72とを備える。
この構成によれば、ステップブラケット70の固定部71がボトムフレーム19の車幅方向の外側面の側に張り出すことを防止でき、ステップブラケット70を車幅方向にコンパクトに設けることができる。また、アーム部72によって、ステップブラケット70をボトムフレーム19とエンジン11との間に通して車幅方向外側に延ばすことができる。
【0058】
また、固定部71は、ボトムフレーム19及び固定部71に車幅方向外側から挿通される締結具64によって内側面である端面62cに締結される。
この構成によれば、固定部71を車幅方向外側から締結でき、締結作業が容易である。
【0059】
図10は、センターフレーム17の周辺部を前側の側方側から見た斜視図である。
センターフレーム17には、エンジン11の後部を支持するエンジンハンガー80が取り付けられる。
各センターフレーム17は、上下に延びるパイプ状のセンターフレーム本体部17aと、センターフレーム本体部17aの前縁から前方に延出する板状の延出部17bとを備える。
エンジンハンガー80は、左右一対の延出部17bの間に配置され、延出部17bに締結される。
エンジンハンガー80は、左右の延出部17bに車幅方向外側からそれぞれ挿通される左右一対の上側固定ボルト81と、上側固定ボルト81の下方で延出部17bに車幅方向外側から挿通される下側固定ボルト82とによって延出部17bに締結される。下側固定ボルト82は、左右の延出部17bを互いに連結する1本のボルトである。
【0060】
エンジンハンガー80は、第1分割体83と、第1分割体83とは別体で設けられる第2分割体84とを備える。第1分割体83及び第2分割体84は、延出部17bに固定された状態になると一体になる。
第1分割体83は、左右の一方の延出部17bの車幅方向の内側面に固定される一側ハンガー部材85と、一側ハンガー部材85の車幅方向の内側面から車幅方向に延びる筒状のカラー部材86と、カラー部材86から上方に延出するキャニスターステー87とを備える。一側ハンガー部材85、カラー部材86、及びキャニスターステー87は、溶接によって一体化されている。
第2分割体84は、左右の他方の延出部17bの車幅方向の内側面に固定される他側ハンガー部材88である。
【0061】
一側ハンガー部材85は、左右の一方の延出部17bに締結されるフレーム固定部85aと、フレーム固定部85aから延出部17bの前方に延びるハンガー部85bとを備える。
カラー部材86は、下側固定ボルト82と略同軸に配置される筒状部材である。
他側ハンガー部材88は、左右の他方の延出部17bに締結されるフレーム固定部88aと、フレーム固定部88aから延出部17bの前方に延びるハンガー部88bとを備える。
カラー部材86は、一側ハンガー部材85と他側ハンガー部材88との間に挟まれる。
エンジンハンガー80には、ハンガー部85bとハンガー部88bとを車幅方向に接続するエンジン固定ボルト89が設けられる。
エンジン11の後部は、ハンガー部85bとハンガー部88bとの間に挟まれ、エンジン固定ボルト89によってハンガー部85b及びハンガー部88bに締結される。
【0062】
エンジンハンガー80は、一側ハンガー部材85のフレーム固定部85aが一方の上側固定ボルト81によって左右の一方の延出部17bに固定される。
また、エンジンハンガー80は、他側ハンガー部材88のフレーム固定部88aが他方の上側固定ボルト81によって左右の他方の延出部17bに固定される。
さらに、エンジンハンガー80は、左右の延出部17bに挟まれた状態で、一側ハンガー部材85のフレーム固定部85a、カラー部材86、及び他側ハンガー部材88のフレーム固定部88aに下側固定ボルト82が挿通されることで、下側固定ボルト82によって延出部17bに固定される。カラー部材86は、下側固定ボルト82の締結の軸力を受けて、一側ハンガー部材85と他側ハンガー部材88との間の間隔を保つ。
【0063】
ここで、エンジンハンガー80の組み付け手順の一例を説明する。
まず、エンジン11が車体フレーム10の内側に配置される。次いで、第1分割体83が左右の一方の延出部17bにセットされ、続いて、第2分割体84が左右の他方の延出部17bにセットされる。
次に、上側固定ボルト81及び下側固定ボルト82によって、エンジンハンガー80は、センターフレーム17に締結される。
その後、エンジン固定ボルト89によって、エンジンハンガー80とエンジン11の後部とが接続される。
このように、エンジンハンガー80は、第1分割体83と第2分割体84とが個別に車体フレーム10にセットされることができるため、エンジンハンガー80の周囲のスペースが狭い場合であっても、容易にエンジンハンガー80を組み付けできる。
【0064】
図11は、エンジンハンガー80にキャニスター39が取り付けられた状態を示す斜視図である。
キャニスター39は、ハンガー部85b,88bの上方且つキャニスターステー87の前方に配置され、エンジンハンガー80に支持される。
エンジンハンガー80のキャニスターステー87の前面には、ブラケット90が締結され、キャニスター39は、ブラケット90を介しキャニスターステー87に支持される。
【0065】
円柱状のキャニスター39は、円柱形状の軸線が車幅方向に指向する向きで配置される。
ブラケット90は、前方に延出する上側係合部90aと、上側係合部90aの下方で前方に延出する下側係合部90bとを備える。
ブラケット90は、上側係合部90aがキャニスター39の上面部に係合し、下側係合部90bがキャニスター39の下面部に係合することで、キャニスター39を支持する。
【0066】
図12は、ブレーキ操作ペダル46の周辺部の構造を示す右側面図である。
図1及び
図12を参照し、後輪3用のブレーキ装置45は、ブレーキ操作ペダル46と、ブレーキ操作ペダル46の動作によって液圧を発生させるマスターシリンダー93と、マスターシリンダー93の液圧によって作動して後輪3を摩擦によって制動するブレーキ作動部94と、マスターシリンダー93とブレーキ作動部94とを接続するブレーキ配管95とを備える。
【0067】
ブレーキ操作ペダル46は、ペダル軸47に接続される筒状部46bと、筒状部46bから前方に延びる前側アーム46cと、前側アーム46cの前端部に設けられるペダル部46aと、筒状部46bから後方に延びる後側アーム46dとを備える。
【0068】
図13は、タンデムステップブラケット42の車幅方向の内側面側の構造を示す側面図である。
図14は、
図13のXIV-XIV断面図である。
図12~
図14を参照し、タンデムステップブラケット42は、タンデムステップブラケット42を車幅方向に貫通する軸支持孔42bを備え、ペダル軸47は、軸支持孔42bに回動自在に支持される。
【0069】
ブレーキ操作ペダル46は、筒状部46bに車幅方向外側から挿通されるペダル締結具96によって、ペダル軸47の車幅方向外側の端部47aに締結される。
ブレーキ操作ペダル46は、ペダル軸47の端部47aに設けられる凸部47bが筒状部46bの車幅方向の内側面に係合することで、ペダル軸47に対し回り止めされる。
【0070】
ペダル軸47の車幅方向内側の端部47cには、ブレーキ操作ペダル46と一体に回動する回動部材97が取り付けられる。回動部材97は、タンデムステップブラケット42に対し車幅方向内側に位置する。
回動部材97は、車幅方向内側から回動部材97に挿通される回動部材固定ボルト98によって、ペダル軸47の端部47cに締結される。回動部材固定ボルト98の頭部と回動部材97との間には、ワッシャー98aが介装される。
回動部材97は、ペダル軸47の車幅方向内側の端部47cに設けられる凸部47dが回動部材97に係合することで、ペダル軸47に対し回り止めされる。凸部47dは、ペダル軸47の軸方向視で略矩形である。
ブレーキ操作ペダル46、ペダル軸47、及び回動部材97は、一体に回動する。
【0071】
図13を参照し、マスターシリンダー93は、タンデムステップブラケット42の車幅方向の内側面に、締結具99によって締結される。
マスターシリンダー93のプッシュロッド93aの下端部は、ブレーキ操作ペダル46の後側アーム46dの後端部に接続される。
ブレーキ操作ペダル46のペダル部46aが下方に踏み込まれると、後側アーム46dが上方に回動し、プッシュロッド93aがマスターシリンダー93内に押し込まれる。プッシュロッド93aのマスターシリンダー93内への移動によって、ブレーキ作動部94を作動させる液圧が発生する。
【0072】
タンデムステップブラケット42の車幅方向の内側面において回動部材97の上方には、ブレーキランプスイッチ支持部42cと、リターンスプリング支持部42dとが設けられる。
ブレーキランプスイッチ支持部42cには、テールライト100(
図1)を点灯させるブレーキランプスイッチ101が支持される。ブレーキランプスイッチ101の下端部の接続部101aは、接続部材102を介して回動部材97に接続される。
リターンスプリング支持部42dには、リターンスプリング103の上端が接続される。
【0073】
回動部材97は、ペダル軸47に対し前方に延出するブレーキランプスイッチ接続部97a及びリターンスプリング接続部97bを備える。
接続部材102及びリターンスプリング103は、引張りコイルばねである。
接続部材102の上端は、ブレーキランプスイッチ101の接続部101aに接続され、接続部材102の下端は、回動部材97のブレーキランプスイッチ接続部97aに接続される。
リターンスプリング103の下端は、回動部材97のリターンスプリング接続部97bに接続される。
【0074】
運転者は、リターンスプリング103の付勢力に抗してペダル部46aを踏み込む。
運転者がブレーキ操作ペダル46の操作を解除すると、ブレーキ操作ペダル46は、リターンスプリング103の付勢力によって元の位置に戻る。
また、ブレーキ操作ペダル46が操作されると、回動部材97及び接続部材102を介してブレーキランプスイッチ101の接続部101aが下方に引っ張られ、テールライト100が点灯する。
【0075】
図15は、自動二輪車1の後部の左側面図である。
自動二輪車1の後部には、後輪3の上部を車幅方向外側から覆うガード部材110が設けられる。ガード部材110は、後輪3の左側方に配置される。ガード部材110は、リアフェンダー50の下方且つスイングアーム13の上方で、リアサスペンション27の後方に配置される。
ガード部材110は、後輪3の後部の上部を車幅方向外側から覆う側方ガード部111と、側方ガード部111の下部から車幅方向外側に延出する下側ガード部112とを備える。
【0076】
側方ガード部111は、車両側面視で枠状の枠状部113を備える。
枠状部113は、リアサスペンション27の後方で上下に延びる前側フレーム113aと、前側フレーム113aの下端から略水平に後方に延びる下側フレーム113bと、前側フレーム113aの上端から後下方に延びて下側フレーム113bの後端に接続される上側フレーム113cとを備える。
【0077】
前側フレーム113aは、車両側面視で、リアサスペンション27と略平行に設けられ、鉛直方向に対し前傾した姿勢で配置される。前側フレーム113aの上端部は、車両側面視で、後輪3の上端部に重なる。
下側フレーム113bは、車軸3aよりも上方に配置される。下側フレーム113bの後端部は、車両側面視で、後輪3の後面に重なる。
上側フレーム113cは、車両側面視で、上側フレーム113cの全長に亘り、後輪3の外周面の輪郭3bに沿う円弧状に形成される。これにより、上側フレーム113cが後輪3と一体的に見え、上側フレーム113cが目立たなくなるため、自動二輪車1の外観性が良い。
【0078】
また、側方ガード部111は、前側フレーム113aから略水平に後方に延びて上側フレーム113cに接続される棒状の前後接続部材114と、下側フレーム113bから上方に延びて上側フレーム113cに接続される棒状の上下接続部材115とを備える。
前後接続部材114は、上側フレーム113cと下側フレーム113bとの間で上下に並べて複数設けられる。
上下接続部材115は、上側フレーム113cを越えて上方に延出する上部固定部115aを備える。
上部固定部115aの上端部は、シートフレーム20の後端部に設けられるステー20aに締結される。車両側面視では、上下接続部材115は、シートフレーム20の後端部から後下方に延出する。
【0079】
車両側面視で、リアサスペンション27、前側フレーム113a、及び上下接続部材115は、略平行に設けられる。これにより、リアサスペンション27、前側フレーム113a、及び上下接続部材115に外観上の統一感が得られ、自動二輪車1の外観性が良い。
【0080】
側方ガード部111は、下側フレーム113bから下方に延びる下方延出部116を備える。下側ガード部112は、下方延出部116から車幅方向外側に延出する。
下側ガード部112は、側方ガード部111よりも前方に延出する前方延出部117を備える。前方延出部117の前端部は、タンデムステップブラケット42の後端部に締結される。
【0081】
図16は、メインフレーム16と左右のセンターフレーム17との接続部を上方側から見た斜視図である。
図16を参照し、左右のセンターフレーム17は、メインフレーム16の後端部16aの車幅方向の外側面にそれぞれ接続される。
車体フレーム10は、左右のセンターフレーム17の前端部を車幅方向に接続する左右接続部材120を備える。左右接続部材120は、メインフレーム16の後端部16aの後方に配置される。
また、車体フレーム10は、メインフレーム16の後端部16aと左右接続部材120とを前後に接続する前後接続部材121を備える。
【0082】
図17は、
図16から前後接続部材121を除いた状態を示す斜視図である。
図18は、
図16のXVIII-XVIII断面図である。
図16~
図18を参照し、メインフレーム16は、断面円形のパイプ状であり、メインフレーム16の後端面16bは、後方に開放している。
【0083】
左右接続部材120は、左右のセンターフレーム17の上面を車幅方向に接続する上壁部120aと、左右のセンターフレーム17の下面を車幅方向に接続する下壁部120bと、上壁部120aの後縁と下壁部120bの後縁とを上下に接続する後壁部120cとを備える。
後壁部120cには、後壁部120cを貫通する係合孔120dが車幅方向に複数設けられる。
下壁部120bの前縁部120eは、メインフレーム16の後端部16aの下面部に接続される。
上壁部120aの前縁部120fは、メインフレーム16の後端面16bの上部に対し後方に離間している。
【0084】
前後接続部材121は、メインフレーム16の後端部16aの上面部、左右接続部材120の上壁部120a、及び左右接続部材120の後壁部120cを上方から覆う板状部材である。前後接続部材121は、車体フレーム10に係合する。前後接続部材121は例えばゴム等のエラストマー、もしくは樹脂によって構成される。
前後接続部材121の前縁部には、メインフレーム16の後端部16aの上面部を上方から覆う上側接続部121aと、メインフレーム16の後端部16aの上面部をメインフレーム16の内側から覆う下側接続部121bとを備える。
前後接続部材121の前縁部には、上側接続部121aと下側接続部121bとの間で後方に凹む前縁係合部121cが形成される。前縁係合部121cは、メインフレーム16の後端面16bの上部に後方から係合し、後端面16bを覆う。これにより、メインフレーム16の後端面16bが上方に露出することが防止される。
【0085】
前後接続部材121の後端部には、前方に突出する突起121dが設けられる。突起121dは、左右接続部材120の後壁部120cの係合孔120dに係合する。これにより、前後接続部材121を車体フレーム10に対し良好に位置決めできる。
【0086】
図19は、自動二輪車1の前部を前方側から見た斜視図である。
フロントフォーク12は、ステアリングシャフト24と、ステアリングシャフト24の上端に固定されるトップブリッジ125と、ステアリングシャフト24の下端に固定されるボトムブリッジ126と、トップブリッジ125及びボトムブリッジ126に支持される左右一対のフォークチューブ127とを備える。
トップブリッジ125は、ヘッドパイプ15の上方でステアリングシャフト24から車幅方向に延び、左右のフォークチューブ127の上端部を連結する。
ボトムブリッジ126は、ヘッドパイプ15の下方でステアリングシャフト24から車幅方向に延び、左右のフォークチューブ127を連結する。
前輪2は、フォークチューブ127の下端部に支持される。
【0087】
ヘッドライト48は、ボトムブリッジ126に設けられるヘッドライトステー130に支持される。ヘッドライトステー130は、ボトムブリッジ126から前方に延びる左右一対の支持アーム131を備える。
各支持アーム131は、支持アーム131の基端部に前方から挿通される締結具132によってボトムブリッジ126の前面に締結される。
【0088】
ヘッドライト48の下面には、下方に突出する取付部48aが設けられる。
ヘッドライト48は、取付部48aを介し左右の支持アーム131に支持される。
詳細には、取付部48aは、左右の支持アーム131の間に挟まれ、支持アーム131及び取付部48aに車幅方向から挿通される複数のヘッドライト締結具133によって支持アーム131に締結される。
【0089】
ヘッドライトステー130の前端には、ライセンスプレート134を支持するライセンスプレートホルダー135が設けられる。
ライセンスプレートホルダー135は、左右の支持アーム131の前端を車幅方向に繋ぐ板状部材である。ライセンスプレートホルダー135は、左右の支持アーム131の前端よりも車幅方向外側に延出する。ライセンスプレート134は、ライセンスプレートホルダー135の前面に取り付けられる。
ライセンスプレート134及びライセンスプレートホルダー135は、ヘッドライト48の取付部48aを前方から覆う。
【0090】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、パワーユニットとして内燃機関であるエンジン11を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものでは無く、パワーユニットは、例えば、電動の鞍乗り型車両のモーターユニットであっても良い。
また、上記実施の形態では、鞍乗り型車両として自動二輪車1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備える3輪の車両及び4輪以上を備える鞍乗り型車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 前輪(車輪)
10 車体フレーム
11 エンジン(パワーユニット)
19 ボトムフレーム
30b 膨出部
36 排気管
41 ステップ
41b 先端部
61 フレーム本体
62 筒状部材
62c 端面(ボトムフレームの車幅方向の内側面)
64 締結具
70 ステップブラケット
71 固定部
72 アーム部
G 接地点
L 仮想の直線
S3 空間