IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社京三製作所の特許一覧

<>
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図1
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図2
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図3
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図4
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図5
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図6
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図7
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図8
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図9
  • 特許-保全装置、保全システム及び保全方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】保全装置、保全システム及び保全方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20231115BHJP
   B61L 1/18 20060101ALI20231115BHJP
   E01B 35/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B61L23/04
B61L1/18 F
E01B35/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068190
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165053
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】薗部 正和
(72)【発明者】
【氏名】佐野 実
(72)【発明者】
【氏名】菊野 孝博
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽平
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274832(JP,A)
【文献】特許第2516431(JP,B2)
【文献】特開平07-245629(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03150459(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/04
B61L 1/18
E01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道のレールの所定の観測点からパルス信号を送信する送信制御部と、
前記パルス信号の送信後に前記観測点に現れる観測信号を観測する観測部と、
前記観測信号の観測履歴と、今回受信した前記観測信号とを比較して、前記レール及び前記レールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出する検出部と、
前記観測点から見た上り方向又は下り方向の情報を含む前記電気機器それぞれの相対的な接続位置の情報を記憶する記憶部と、
を備え
前記観測信号には、前記電気機器が接続されている前記接続位置からの反射波が含まれ、
前記検出部は、
前記比較において今回受信した前記観測信号に含まれる前記反射波に信号レベルが低下したレベル低下反射波がある場合に、前記観測点から見てレール・道床間の漏れコンダクタンスの増加が発生した箇所より先の全ての前記接続位置での前記反射波が前記レベル低下反射波となる条件を満たすか否かを、前記記憶部の記憶内容を参照して判定することで、前記漏れコンダクタンスの増加の発生有無の判定および発生した箇所の絞り込みを行う漏れコンダクタンス発生箇所絞り込み手段、
を有する、
保全装置。
【請求項2】
前記検出部は、今回受信した反射波に対応する過去の反射波の有無を用いて前記検出を行う、
請求項に記載の保全装置。
【請求項3】
前記観測履歴には、前記パルス信号の送信と前記反射波の観測との間の時間間隔に関する情報が含まれ、
前記検出部は、今回送信したパルス信号と今回受信した反射波との間の時間間隔を用いて前記検出を行う、
請求項又はに記載の保全装置。
【請求項4】
前記観測履歴には、前記パルス信号の送信と前記反射波の観測との間の時間間隔に関する情報が含まれ、
前記検出部は、前記反射波の信号レベルと、今回受信した反射波に対応する過去の反射波の有無と、今回送信したパルス信号と今回受信した反射波との間の時間間隔と、を用いて、少なくとも異常の発生源を判定する、
請求項1に記載の保全装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記接続位置の情報を前記時間間隔と関連付けて記憶
前記検出部は、前記記憶部の記憶内容を参照して、異常の発生源を判定する、
請求項に記載の保全装置。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載の保全装置が前記レールに沿って複数配置され、且つ、隣り合う前記保全装置は前記観測部による観測範囲が一部重複するように前記観測点が定められた、
保全システム。
【請求項7】
鉄道のレールの所定の観測点からパルス信号を送信することと、
前記パルス信号の送信後に前記観測点に現れる観測信号を観測することと、
前記観測信号の観測履歴と、今回受信した前記観測信号とを比較して、前記レール及び前記レールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出することと、
前記観測点から見た上り方向又は下り方向の情報を含む前記電気機器それぞれの相対的な接続位置の情報を記憶部に記憶することと、
を含み、
前記観測信号には、前記電気機器が接続されている前記接続位置からの反射波が含まれ、
前記検出することは、
前記比較において今回受信した前記観測信号に含まれる前記反射波に信号レベルが低下したレベル低下反射波がある場合に、前記観測点から見てレール・道床間の漏れコンダクタンスの増加が発生した箇所より先の全ての前記接続位置での前記反射波が前記レベル低下反射波となる条件を満たすか否かを、前記記憶部の記憶内容を参照して判定することで、前記漏れコンダクタンスの増加の発生有無の判定および発生した箇所を絞り込むこと、
を含む、
保全方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール及びレールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検知する保全装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールに発生する異常の1つであるレール破断を検出する技術の一例として、レールにパルス信号を入射し、入射波と同相の反射波が観測された場合にレール破断を検出する技術が特許文献1に開示されている。この技術は、軌道回路を用いずに地上側でレール破断を検出する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-59688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軌道回路を設置する列車制御システムでは、軌道回路の不正落下を判別する必要がある。不正落下を生じさせる主要因としては、漏れコンダクタンスの増加やレール破断がある。また、レールには、軌道回路に係る装置のほか、インピーダンスボンド等の様々な電気機器が接続されるが、これらの電気機器に発生した異常も、軌道回路の不正落下の要因となり得る。軌道回路の不正落下の要因となり得る異常の検出対象は多岐に亘るが、設置や保守に要するコストを考えると、特定の異常の検出に特化するのではなく、レール及びレールに接続される電気機器の全体を検出対象としつつ、異常の発生源及びその内容を特定して検出する技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レール及びレールに接続された電気機器の異常を検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
鉄道のレールの所定の観測点からパルス信号を送信する送信制御部と、
前記パルス信号の送信後に前記観測点に現れる観測信号を観測する観測部と、
前記観測信号の観測履歴と、今回受信した前記観測信号とを比較して、前記レール及び前記レールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出する検出部と、
を備えた保全装置である。
【0007】
他の発明として、
鉄道のレールの所定の観測点からパルス信号を送信することと、
前記パルス信号の送信後に前記観測点に現れる観測信号を観測することと、
前記観測信号の観測履歴と、今回受信した前記観測信号とを比較して、前記レール及び前記レールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出することと、
を含む保全方法を構成してもよい。
【0008】
第1の発明等によれば、レール及びレールに接続された電気機器の何れかに異常が発生したことを検出することができる。つまり、レール及びレールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生した場合、観測信号に変化が生じ得る。このため、観測信号を、例えば、レール及びレールに接続されている電気機器が正常である状態での過去の観測信号の観測履歴と比較することで、レール及びレールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記観測信号には、前記電気機器が接続されている接続点からの反射波が含まれ、
前記検出部は、前記反射波の信号レベルを用いて前記検出を行う、
保全装置である。
【0010】
第2の発明によれば、レール及びレールに接続されている電気機器の何れに異常が発生したかを特定することができる。つまり、レールに送信されたパルス信号は、電気機器の接続点でその一部が反射し、反射されない信号はそのまま伝搬してゆく。レールに接続されている電気機器に異常が発生した場合、又は、観測点から電気機器の接続点までのレールに異常が発生した場合、当該電気機器の接続点からの反射信号に変化が生じ得る。例えば、絶縁境界に接続していない電気機器の異常として開放故障が発生した場合、観測点から見た当該電気機器の接続点の負荷インピーダンスがレールRの特性インピーダンスに相当する状態になることで、当該接続点での反射波の信号レベルが無くなる(観測されない)。なお、接続点より先に他の電気機器が接続されていれば、その電気機器の接続点からの反射波の信号レベルは増加する。また、異常として電気機器の短絡故障が発生した場合には、観測点から見た当該電気機器の接続点の負荷インピーダンスがゼロ相当になることで、当該接続点での反射波の信号レベルが定常状態より増加する。なお、接続点より先に他の電気機器が接続されていれば、その電気機器の接続点からの反射波は無くなる(観測されない)。また、異常としてレールの漏れコンダクタンスの増加が発生した場合には、観測点から見て当該異常の発生箇所の先に接続されている全ての電気機器の接続点からの反射波の信号レベルが低下する。このように、観測される反射波の信号レベルの変化から、異常が発生した電気機器或いはレール部分を特定することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、
前記検出部は、今回受信した反射波に対応する過去の反射波の有無を用いて前記検出を行う、
保全装置である。
【0012】
第3の発明によれば、異常としてレール破断を検出することができる。つまり、レール破断が生じた場合、パルス信号はレール破断の発生箇所で反射してその先に伝搬しないので、そのレール破断の発生箇所の先のレールに接続されている全ての電気機器の接続点からの反射波は観測されない。これにより、反射波の有無から、レール破断の発生及びその発生箇所を検出することができる。
【0013】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、
前記観測履歴には、前記パルス信号の送信と前記反射波の観測との間の時間間隔に関する情報が含まれ、
前記検出部は、今回送信したパルス信号と今回受信した反射波との間の時間間隔を用いて前記検出を行う、
保全装置である。
【0014】
第4の発明によれば、観測した反射波が、何れの電気機器の接続点からの反射波であるかを特定できる。これは、パルス信号を送信してから電気機器の接続点での反射波を観測するまでの時間間隔は、当該観測点から当該接続点までの距離に応じて決まるからである。また、観測した反射波のうち、観測履歴に含まれている過去の時間間隔にはない反射波を観測した場合、その反射波は、例えば、レール破断の発生箇所での反射波であると判定することができる。新たに反射波が生じたということは、レール破断が生じたと推定することができるからである。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、
前記観測信号には、前記電気機器が接続されている接続点からの反射波が含まれ、
前記観測履歴には、前記パルス信号の送信と前記反射波の観測との間の時間間隔に関する情報が含まれ、
前記検出部は、前記反射波の信号レベルと、今回受信した反射波に対応する過去の反射波の有無と、今回送信したパルス信号と今回受信した反射波との間の時間間隔と、を用いて、少なくとも異常の発生源を判定する、
保全装置である。
【0016】
第5の発明によれば、レール及びレールに接続されている電気機器の何れかに異常が発生したことを検出できるとともに、少なくとも、何れのレール部分或いは電気機器が異常の発生源であるのかを判定することができる。つまり、観測履歴に含まれる時間間隔から、観測した反射波が何れの電気機器の接続点からの反射波であるのかを特定できる。そして、反射波の信号レベルから、異常が発生した電気機器或いはレール部分を判定できる。また、電気機器の接続点からの反射波の有無から、レール破断の発生及び発生箇所を判定できる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、
前記観測点から見た上り方向又は下り方向の情報を含む前記電気機器それぞれの相対的な接続位置の情報を前記時間間隔と関連付けて記憶する記憶部を更に備え、
前記検出部は、前記記憶部の記憶内容を参照して、異常の発生源を判定する、
保全装置である。
【0018】
第6の発明によれば、異常の発生源を、観測点から見て上り方であるのか下り方であるのかを区別して判定することができる。つまり、観測点から見た上り方向又は下り方向の情報を含む電気機器それぞれの相対的な接続位置の情報を、パルス信号の送信と反射波の観測との間の時間間隔と関連付けて記憶していることから、観測した反射波が、上り方及び下り方の何れの方向のレールに接続されている電気機器の接続点からの反射波であるかを特定できるからである。
【0019】
第7の発明は、
第1~第6の何れかの発明の保全装置が前記レールに沿って複数配置され、且つ、隣り合う前記保全装置は前記観測部による観測範囲が一部重複するように前記観測点が定められた、
保全システムである。
【0020】
第7の発明によれば、広範囲の線路を対象として、第1~第6の何れかの発明を発揮する保全システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】保全システムの適用例。
図2】観測信号の一例。
図3】電気機器の異常が発生した場合の一例。
図4】漏れコンダクタンスの増加が発生した場合の一例。
図5】漏れコンダクタンスの増加が発生した場合の観測信号の一例。
図6】レール破断が発生した場合の観測信号の一例。
図7】保全装置の機能構成図。
図8】電気機器接続テーブルの一例。
図9】異常検出テーブルの一例。
図10】観測履歴データの一例。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0023】
[システム構成]
図1は、本実施形態の保全システムの適用例である。図1に示すように、本実施形態の保全システム1は、鉄道のレールR及びレールRに接続されている電気機器20の何れかに異常が発生したことを検出するためのシステムであり、レールRに沿って配置された複数の保全装置10を備えて構成される。
【0024】
保全装置10は、レールRとの接続点である観測点Pからパルス信号を送信し、パルス信号の送信後に観測点Pに現れる観測信号に基づいて、レールR及びレールRに接続された電気機器20の何れかでの異常発生を検出する。保全装置10は、異常を検出可能な範囲である観測範囲12が隣り合う保全装置10同士で一部重複するように配置されており、保全システム1全体として、レールR及びレールRに接続された電気機器20の何れかでの異常発生の検出を行うことができる。
【0025】
保全装置10の観測範囲12は、観測点Pを基準としてレールRに沿った範囲であり、保全装置10がレールRに送信するパルス信号のパルス幅や信号レベルに応じて定まる。つまり、レールRに送信されたパルス信号は伝搬距離に応じて減衰するが、後述のように、保全装置10はレールRにパルス信号を送信してその反射波を観測するので、観測される反射波の減衰の程度が反射波として判別可能な範囲に収まるような伝搬距離となるように観測範囲12が定められる。
【0026】
電気機器20は、レールRと接続されて電気回路を構成する機器であり、例えば、レールRとの間で信号電流を送受信する軌道回路の送受信機や、インピーダンスボンドである。軌道回路には各種あり、閉そく区間を単位とする信号制御用の軌道回路のほか、閉そく区間の両端に設けられてチェックイン・チェックアウト方式の列車検知に用いられる短小軌道回路、踏切の警報区間全体に設けられて区間内の列車を連続的に検知する軌道回路や踏切の警報開始点及び警報終止点に設けられる踏切制御子といった踏切制御用の軌道回路、信号制御用と比較して検知区間が長いバックアップ用の軌道回路、等がある。また、インピーダンスボンドには、有絶縁軌道回路の境界である絶縁箇所に設けられるインピーダンスボンドや、無絶縁軌道回路が設置された線路においてレール間の異常電圧抑止のために所定間隔で設けられる平衡用のインピーダンスボンド、帰線電流吸い上げ用のインピーダンスボンド、等がある。
【0027】
[異常発生の検出]
保全装置10による異常発生の検出方法を説明する。以下の説明の際に参照する図2図6は、図1を簡略化した図としている。つまり、図2図6では、左右2本のレールRをまとめて1本のレールRとして示している。また、1台の保全装置10に着目した図であり、不図示であるが、保全装置10から見て上り方向及び下り方向それぞれのレールRには、他の電気機器20や隣り合う他の保全装置10が接続されている。
【0028】
図2は、レールRに2台の電気機器20A,20Bが接続されている例を示している。上側に、レールRに接続されている保全装置10及び電気機器20A,20Bの位置関係を示し、下側に、保全装置10での観測信号を示している。観測信号は、横軸を時刻t、縦軸を信号レベルとして示している。図2の例では、2台の電気機器20A,20Bは、保全装置10から見て異なる方向(上り方向及び下り方向)に接続されている。
【0029】
保全装置10は、パルス信号を、レールRとの接続点である観測点PからレールRに送信する。レールRに送信されたパルス信号は、上り方向及び下り方向それぞれに向かってレールRを伝搬してゆき、その一部が電気機器20との接続点Q(Q1,Q2)で反射して再度観測点Pに到達する。接続点Qで反射されないパルス信号は、そのままレールRを伝搬してゆく。保全装置10は、パルス信号の送信後、観測点Pに現れる観測信号として、電気機器20の接続点Qからの反射波を含む観測信号を観測する。観測点Pから見て、電気機器20のインピーダンスがレールRの特性インピーダンスと並列に接続されており、電気機器20の接続点Qで必ず不整合となることから、レールRの特性インピーダンスと電気機器20のインピーダンスとによって決まる反射係数は負となり、電気機器20の接続点Qからの反射波は、パルス信号に対して逆相の信号となる。
【0030】
図2の例では、観測点Pから電気機器20Bの接続点Q2までの距離D2のほうが、電気機器20Aの接続点Q1までの距離D1より長い。従って、図2の下側に示すように、保全装置10が、時刻ts1において観測点Pからパルス信号を送信すると、先ず、時刻tr1において、電気機器20Aの接続点Q1からの反射波を観測し、続く時刻tr2において、電気機器20Bの接続点Q2からの反射波を観測する。観測点Pにおけるパルス信号の送信から反射波の観測までの時間間隔Δtは、観測点Pから電気機器20のレールRとの接続点Qまでの距離D(D1,D2)にほぼ比例する。時間間隔Δtは、観測点Pから接続点QまでのレールRの漏れコンダクタンスの変化に応じて変化し得る。従って、保全装置10は、観測点Pから電気機器20の接続点Qまでの距離Dが既知であれば、観測点Pで観測した反射波が何れの電気機器20の接続点での反射波であるかを特定できる。
【0031】
保全装置10が検出する異常は、レールRに接続された電気機器20の異常、及び、レールRの異常である。前者の電気機器20の異常には、電気機器20内部の開放故障或いは電気機器20とレールRとの間の配線の開放故障と、電気機器20内部の短絡故障或いは電気機器20とレールRとの間の配線の短絡故障とが含まれる。また、後者のレールRの異常には、レール・道床間の漏れコンダクタンスの増加と、レール破断とがある。発生した異常に応じて保全装置10の観測信号に変化が生じる。保全装置10は、異常が発生していない定常状態における観測信号と比較することで、異常の発生源及び発生した異常の内容を検出する。
【0032】
図3は、電気機器20の異常が発生した場合の例である。図3では、上側に、レールRに接続される保全装置10及び電気機器20Cの位置関係を示し、下側に、保全装置10での観測信号を示している。観測信号は、上から順に、電気機器20Cに開放故障が発生した場合の観測信号、電気機器20Cに短絡故障が発生した場合の観測信号、定常状態での観測信号、を示している。
【0033】
図3に示すように、電気機器20Cに異常が発生した場合、観測点Pにて観測される電気機器20Cの接続点Q3からの反射波の信号レベルに変化が生じる。つまり、電気機器20Cの開放故障が発生した場合、定常状態と比較して、反射波が無くなる(観測されない)。これは、保全装置10から見たときの電気機器20Cの接続点Q3での負荷インピーダンスが、定常状態での電気機器20Cに相当する負荷インピーダンスから、レールRの特性インピーダンスのみの状態になるからである。なお、パルス信号は、接続点Q3で反射されずにそのまま伝搬されてゆくので、接続点Q3より先に接続されている電気機器20の接続点Qからの反射波は、定常状態と比較して、接続点Q3で減衰しない分だけ増加する。
【0034】
また、電気機器20Cの短絡故障が発生した場合、パルス信号に対して反射係数が「-1」の逆相の反射波となり、定常状態より反射波の信号レベルは増加する。これは、短絡故障は、保全装置10から見たときの電気機器20Cのインピーダンスが無くなり、電気機器20Cの接続点Q3での負荷インピーダンスがゼロ相当となった状態に相当するからである。なお、電気機器20の短絡故障が発生した場合、パルス信号が電気機器20の接続点Q3より先に伝搬されないので、接続点Q3より先に接続されている電気機器20の接続点Qからの反射波は無くなる。
【0035】
このように、保全装置10は、観測した反射波の信号レベルを定常状態と比較することで、電気機器20の異常の発生を検出することができる。
【0036】
また、電気機器20の異常には、開放故障及び短絡故障以外の故障もあり得る。その場合には、故障の内容に応じて観測される反射波の信号レベルが変化し得ることから、当該電気機器の何らかの異常の発生の可能性を検出することができる。但し、反射波の信号レベルの低下は、後述のように、レールRの異常によっても生じ得るから、その場合には、複数の電気機器20それぞれの接続点Qからの反射波の信号レベルの変化から、異常の発生源及び異常の内容を推定して検出する。
【0037】
図4は、レールRの異常として漏れコンダクタンスの増加が発生した場合の例である。図4では、上側に、レールRに接続される保全装置10と電気機器20D,20Eの位置関係を示し、下側に、保全装置10での観測信号を示している。観測信号は、上から順に、観測点Pと電気機器20Dの接続点Q4との間でレール・道床間の漏れコンダクタンスの増加が発生した場合の観測信号、定常状態での観測信号、を示している。
【0038】
図4に示すように、観測点Pと電気機器20Dの接続点Q4との間のレールRにおいて漏れコンダクタンスの増加が発生した場合、観測点Pにて観測される電気機器20D,20Eの接続点Q4,Q5からの反射波の信号レベルが、定常状態に比較して低下する。これは、レールRにおける漏れコンダクタンスの増加とは、漏れ電流が増加している状態であり、つまり、レールRを伝搬するパルス信号のうち漏れ電流となる割合が増加しているからである。従って、保全装置10は、観測した反射波の信号レベルを定常状態と比較することで、レールRにおける漏れコンダクタンスの増加の発生を検出することができる。
【0039】
なお、観測点Pで観測される、電気機器20の接続点Qからの反射波の信号レベルは、当該電気機器20の異常によっても減少し得る。図4の例に示すように、観測点Pから見て漏れコンダクタンスの増加の発生箇所より先に複数の電気機器20が接続されている場合、これらの電気機器20それぞれの接続点Qからの反射波の信号レベルを比較することで、観測される反射波の信号レベルの低下が、レールRの漏れコンダクタンスの増加によるものか、電気機器20の異常であるのかを判別できる。つまり、電気機器20Dに発生した異常により当該電気機器20Dの接続点Q4での反射波の信号レベルが低下した場合、観測点Pから見て電気機器20Dの先に接続されている電気機器20Eの接続点Q5からの反射波の信号レベルは、レールRの漏れコンダクタンスの増加が発生した場合とは異なり殆ど変化しないからである。
【0040】
保全装置10の観測範囲12内のレールRには複数の電気機器20が接続されており、これらの電気機器20の接続点Qからの反射波の信号レベルから、漏れコンダクタンスの増加の発生箇所を絞り込むことができる。図5は、レールRの異常として漏れコンダクタンスの増加が発生した場合の他の例であり、レールRに3台の電気機器20F,20G,20Hが接続されている。図5では、上側に、レールRに接続される保全装置10と電気機器20F,20G,20Hの位置関係を示し、下側に、保全装置10での観測信号を示している。図5の例では、保全装置10から見て下り方向に1台の電気機器20Fが接続され、上り方向に2台の電気機器20G,20Hが接続されている。そして、上り方向の電気機器20G,20Hの接続点Q7,Q8の間のレールRに、漏れコンダクタンスの増加が発生している。
【0041】
保全装置10により観測点Pからレールに送信されたパルス信号は、上り方向及び下り方向それぞれに向かってレールを伝搬してゆき、漏れコンダクタンスの増加の発生箇所を通過することでその一部が漏れ電流となる。つまり、保全装置10から見て、漏れコンダクタンスの増加が発生した箇所よりも先の位置(遠い位置)からの反射波は全て信号レベルが低下する。図5の例では、電気機器20Hの接続点Q8での反射波の信号レベルが、定常状態と比較して低下する。一方、漏れコンダクタンスの増加の発生箇所とは反対方向の電気機器20Fの接続点Q6からの反射波、及び、漏れコンダクタンスの増加の発生箇所の手前となる電気機器20Gの接続点Q7からの反射波の信号レベルは、定常状態と比較して殆ど変化しない。従って、保全装置10は、観測した反射波の信号レベルを定常状態と比較することで、レールRにおける漏れコンダクタンスの増加の発生を検出することができるとともに、複数の電気機器20のうちの何れの電気機器20の接続点Qからの反射波の信号レベルが定常状態に比較して変化しているかによって、漏れコンダクタンスの増加の発生箇所を、隣り合う2つの接続点Qの間といった単位で絞り込むことができる。
【0042】
図6は、レールRの異常としてレール破断が発生した場合の例である。図6では、上側に、レールRに接続される保全装置10と電気機器20Iとの位置関係を示し、下側に、保全装置10での観測信号を示している。観測信号は、上から順に、観測点Pと電気機器20Iの接続点Q9との間にレール破断が発生した場合の観測信号、定常状態での観測信号、を示している。
【0043】
図6に示すように、観測点Pと電気機器20Iの接続点Q9との間のレールRに破断が発生した場合、観測点PからレールRに送信されたパルス信号はレール破断の発生箇所で反射し、その発生箇所の先には伝搬しない。従って、保全装置10では、電気機器20Iの接続点Q9での反射波が観測されず、新たに、レール破断の破断箇所での反射波が観測される。この反射波は、パルス信号と同相となる。パルス信号の送信からレール破断の発生箇所での反射波の観測までの時間間隔Δtは、観測点Pからレール破断の発生箇所までの距離に比例する。従って、保全装置10は、パルス信号の送信から反射波の観測までの時間間隔を定常状態と比較することで、レール破断の発生を検出することができるとともに、観測点Pからレール破断箇所までの距離を特定することができる。また、保全装置10から見てレール破断の発生箇所より先に接続されている電気機器20の接続点Qからの反射波は観測されないので、何れの電気機器20の接続点からの反射波が観測されないかによって、上り方向及び下り方向のどちらの方向のレールにレール破断が発生したかを特定することができる。なお、列車在線によるレール短絡の場合にもその短絡箇所からの反射波を観測するが、その場合の短絡箇所からの反射波はパルス信号と逆相となるので、レール破断と区別することができる。
【0044】
[保全装置の機能構成]
図7は、保全装置10の機能構成を示すブロック図である。図7によれば、保全装置10は、送信制御部102と、観測部104と、検出部106と、外部インターフェース部108と、記憶部200とを備える。
【0045】
送信制御部102は、レールRの所定の観測点Pから、所定の送信間隔でパルス信号を送信する。パルス波は、例えば、所定周波数の正弦波の信号や、この正弦波を自乗した信号、方形波の信号、三角波の信号を生成し、その波形の半周期分又は1周期分の信号波形を取り出すことで生成できる。勿論、パルス波はこれに限られない。また、パルス波の送信間隔は、当該保全装置10の観測範囲12の端部からの反射波の到達に要する時間間隔よりも十分に長い時間とする。
【0046】
観測部104は、送信制御部102によるパルス信号の送信後に観測点に現れる観測信号を観測する。
【0047】
検出部106は、観測部104により観測された観測信号の観測履歴と、今回受信した観測信号とを比較して、レールR及びレールRに接続されている電気機器20の何れかに異常が発生したことを検出する。検出部106は、観測信号に含まれる電気機器20が接続されている接続点Qからの反射波の信号レベルを用いて異常の発生の検出を行う。また、検出部106は、今回受信した反射波に対応する過去の反射波の有無を用いて異常の発生の検出を行う。観測履歴は、パルス信号の送信と反射波の観測との間の時間間隔に関する情報を含む。検出部106は、今回送信したパルス信号と今回受信した反射波との間の時間間隔を用いて異常の発生の検出を行う。また、検出部106は、異常の発生源を判定する。
【0048】
具体的には、検出部106は、送信制御部102によるパルス信号の送信から次のパルス信号の送信までの間に観測信号を受信することを1回分の観測として、1回の観測毎に、観測部104による観測信号に基づいて、観測範囲12内のレールR及びレールRに接続されている電気機器20の何れかに異常が発生したかを検出する。すなわち、1回の観測毎に、観測信号に含まれる反射波を判別し、観測範囲12内のレールRに接続されている電気機器20それぞれに対応する反射波を特定する。電気機器20と反射波との対応の特定は、電気機器接続テーブル202を参照し、パルス信号の送信から反射波の観測までの時間間隔Δtが一致するかに基づいて行う。
【0049】
図8は、電気機器接続テーブル202の一例である。図8によれば、電気機器接続テーブル202は、当該保全装置10の観測範囲12内のレールRに接続されている電気機器20それぞれについて、当該電気機器20を識別する機器IDに、レールRとの接続位置と、観測時間間隔とを対応付けて格納している。接続位置は、当該保全装置10との相対位置であり、当該保全装置10から見て上り方か下り方かを示す接続方向と、当該保全装置10の観測点Pからのレールに沿った距離Dとを含む。観測時間間隔は、観測点Pからのパルス信号の送信から当該電気機器20の接続点Qでの反射波の観測までの時間間隔である。この時間間隔は、観測点Pから接続点Qまでの距離Dと、レールR中のパルス信号や反射波の伝搬速度Vpとによって決まるが、伝搬速度VpはレールRの漏れコンダクタンスによって変化し得るため、例えば、漏れコンダクタンスが「0~0.01[S/km]」であるときに対応する「X1~X2」といった時間範囲で定めるとよい。図8では、具体的な数値を示さずに伏せ字として示している。
【0050】
検出部106は、判別した反射波のうち、何れの電気機器20にも対応付けられない、パルス信号と同相の反射波が有るならば、異常として“レール破断”の発生を検出する。そして、当該反射波をレール破断の発生箇所からの反射波とみなして、パルス信号の送信から当該反射波の観測までの時間間隔Δtに基づき、観測点Pからレール破断の発生箇所までの距離を算出する。そして、上り方向及び下り方向それぞれについて、算出したレール破断の発生箇所までの距離の位置より先に接続されている電気機器20それぞれの接続点Qからの反射波の有無を確認することで、レール破断の発生箇所が、当該保全装置10の観測点Pから見て下り方向及び上り方向のうちのどちらの方向であるかを判定して、レール破断の発生箇所を特定する(図6参照)。
【0051】
また、対応する反射波が有る電気機器20それぞれについて、対応する反射波の信号レベルを定常状態での信号レベルと比較することで、当該電気機器20に異常が発生したか否かを判定する。つまり、観測信号の観測履歴である観測履歴データ210を参照して、過去の反射波のうち異常無し(正常)と検出された反射波を定常状態での反射波として、今回観測した反射波の信号レベルと比較する。信号レベルが変化していないならば、当該電気機器20は“異常無し(正常)”と判定する。信号レベルが変化しているならば、異常検出テーブル204に従って、異常の発生源及び異常の内容を判定する。
【0052】
図9は、異常検出テーブル204の一例である。図9によれば、異常検出テーブル204は、レールR又は電気機器20に発生する異常それぞれについて、当該異常の発生源及び内容の組み合わせに、当該異常が発生した場合に観測される反射波の信号レベルの変化を対応付けて定めている。
【0053】
例えば、ある電気機器20の接続点Qからの反射波がなくなっている場合、当該電気機器20の開放故障と判定する。また、ある電気機器20の接続点Qからの反射波の信号レベルが増加している場合、1)当該電気機器20の短絡故障、2)開放故障及び短絡故障以外の故障であって、当該電気機器20のインピーダンスが低下し得るような故障、3)観測点Pから見て当該電気機器20の手前のレールの漏れコンダクタンスの減少、の何れかと判定する。この場合、更に、当該電気機器20の先に接続されている他の電気機器20の反射波の信号レベルを参照し、なくなっているならば、1)短絡故障、と判定し、殆ど変化していない又は増加しているならば、2)インピーダンスが低下し得るような故障、と判定し、全て減少しているならば、3)漏れコンダクタンスの減少、と判定する。また、ある電気機器20の接続点Qからの反射波の信号レベルが定常状態の信号レベルと比較して減少している場合、1)観測点Pから見て当該電気機器20の手前のレールの漏れコンダクタンスの増加、或いは、2)当該電気機器20の故障(開放故障及び短絡故障以外の故障であって、当該電気機器20のインピーダンスが増加し得るような故障)、と判定する。この場合、更に、当該電気機器20の先に接続されている他の電気機器20の反射波の信号レベルを参照し、全て減少しているならば、1)漏れコンダクタンスの増加と判定し、殆ど変化していないならば、2)当該電気機器20の故障と判定する。
【0054】
このように、検出部106は、観測範囲12内のレールRに接続されている複数の電気機器20の接続点Qそれぞれのからの反射波の信号レベルの組み合わせから、レールR又はレールRに接続されている電気機器20の何れにどのような異常が発生したかといった異常の発生源及び異常の内容を絞り込んで検出する。
【0055】
検出部106による検出結果は、観測履歴データ210に含めて記憶される。図10は、観測履歴データ210の一例である。図10によれば、観測履歴データ210は、1回の観測毎に生成され、当該観測を識別する観測ID212に対応付けて、送信制御部102によるパルス信号送信時刻214と、観測部104による観測信号波形データ216と、観測信号に含まれる反射波データ218と、異常の検出結果データ220とを格納している。反射波データ218及び検出結果データ220は、検出部106により算出されるデータである。反射波データ218は、観測信号に含まれる反射波それぞれについて、当該反射波を識別する反射波IDに対応付けて、パルス信号の送信から当該反射波の観測までの時間間隔と、信号レベルとを対応付けて格納している。検出結果データ220は、対応する反射波(反射波ID)及び電気機器(機器ID)の組み合わせ毎に、異常の検出結果を対応付けて格納している。この組み合わせには、対応する一方が無い組み合わせも含まれる。
【0056】
外部インターフェース部108は、例えば、所与の通信ネットワークを介して有線又は無線の通信を行う通信モジュール等の通信装置や、外部出力用のリレー等で実現され、他の保全装置10といった外部装置とデータの入出力を行う。
【0057】
記憶部200は、例えば、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現される。本実施形態では、記憶部200には、電気機器接続テーブル202と、異常検出テーブル204と、観測履歴データ210とが記憶される。
【0058】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、レールR及びレールRに接続された電気機器20の何れかに異常が発生したことを検出することができる。保全装置10は、観測点PからレールRにパルス信号を送信し、観測点Pに現れる観測信号を観測するが、レールR及びレールRに接続されている電気機器20の何れかに異常が発生した場合、観測信号に変化が生じ得る。このため、観測信号を、例えば、レールR及びレールRに接続されている電気機器20が正常である状態での過去の観測信号である観測履歴と比較することで、レールR及びレールRに接続されている電気機器20の何れかに異常が発生したことを検出できる。
【0059】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、保全装置10は、レールR及びレールRに接続された電気機器20の何れに異常が発生したのかの発生源、及び、発生した異常の内容を判定するが、発生源さえ分かればよく、異常内容まで報知する必要がない場合には、異常の発生源を判定するに留めることとしてもよい。また、観測信号である反射波の信号レベルが、定常状態に比較して閾値以上に変化した場合に、電気機器20の何れかに異常が発生したことを検出するようにしてもよいし、定常状態に比較して閾値以下であるが継続的に変化している場合は、電気機器異常の予兆として検知してもよい。例えば、信号レベルが継続的に低下していくことを、漏れコンダクタンス増加による不正落下の予兆と捉える事も可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…保全システム
10…保全装置
102…送信制御部
104…観測部
106…検出部
108…外部インターフェース部
200…記憶部
202…電気機器接続テーブル
204…異常検出テーブル
210…観測履歴データ
12…観測範囲
P…観測点
20…電気機器
Q…接続点
R…レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10