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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20231115BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20231115BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/215
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020079032
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021175312
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕次
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-101605(JP,A)
【文献】特開2001-313100(JP,A)
【文献】特開2000-340304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-5/26
11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを有するモータ本体部と、前記モータ本体部が収容されるモータケースと、前記モータケースに収容される検出機構と、前記検出機構から前記モータケースの外部に向かって引き出されるシールド線と、前記モータケースの内部への液体の浸入を防止するためのゴム製のブッシュとを備え、
前記シールド線は、コア線と、前記コア線を覆うシールド材と、前記シールド材を覆う絶縁被膜とを備え、
前記シールド線には、前記シールド材と前記絶縁被膜とが除去されて前記コア線が露出するコア線露出部と、前記シールド材および前記絶縁被膜に前記コア線が覆われるコア線被覆部とが形成され、
前記コア線露出部と前記コア線被覆部との境界部分には、前記コア線被覆部側の前記絶縁被膜の外周面上に前記シールド材が折り返されたシールド材折返し部が形成され、
前記コア線露出部は、前記モータケースの内部に配置され、
前記ブッシュは、前記モータケースに取り付けられ、
前記ブッシュには、前記シールド線が挿通される挿通穴が形成され、
前記挿通穴は、前記コア線被覆部が配置される小径内周面部と、前記シールド材折返し部が配置されるとともに前記小径内周面部よりも内径が大きい大径内周面部とを備え、
前記小径内周面部は、前記モータケースの外部側に配置されるとともに、前記大径内周面部は、前記モータケースの内部側に配置され、
前記大径内周面部と前記小径内周面部との境界部分には、前記シールド材折返し部が接触する段差面が形成され、
前記シールド材折返し部は、前記大径内周面部に接着固定されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記シールド材折返し部では、前記絶縁被膜の外周面上に折り返された前記シールド材が、前記コア線被覆部の周方向に捩じられていることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記挿通穴は、前記小径内周面部と前記大径内周面部とから構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記小径内周面部には、前記コア線被覆部が圧入されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記シールド材折返し部は、前記シールド材折返し部を前記大径内周面部に接着固定する接着剤で覆われていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記シールド材折返し部では、前記絶縁被膜の外周面上に折り返された前記シールド材の先端が前記モータケースの外部側を向いていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータケースの外部に引き出されるシールド線を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータおよびステータを有するモータ本体部と、モータ本体部が収容されるモータハウジングとを備えるモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータは、ロータの回転速度や回転位置を検出するためのエンコーダを備えている。エンコーダは、ロータに取り付けられるセンサ用磁石と、センサ用磁石に対向配置される感磁素子と、感磁素子が実装されるセンサ基板とを備えている。センサ基板には、センサ出力線が接続されている。センサ出力線は、たとえば、コア線と、コア線を覆うシールド材と、シールド材を覆う絶縁被膜とを備えるシールド線である。
【0003】
特許文献1に記載のモータでは、モータハウジングは、筒状ケースと、筒状ケースの反出力側に配置される第1軸受ホルダと、筒状ケースの出力側に配置される第2軸受ホルダとを備えている。第1軸受ホルダの反出力側には、エンコーダが収容されるエンコーダカバーが取り付けられている。エンコーダカバーには、切欠き部が形成されており、この切欠き部によって、エンコーダカバーと第1軸受ホルダとの間に隙間が形成されている。この隙間にはブッシュが挟み込まれている。センサ出力線は、ブッシュを通過するように引き回されており、ブッシュを通過したセンサ出力線は、モータの径方向の外側に引き出されている。
【0004】
特許文献1に記載のモータでは、第1軸受ホルダに、センサ出力線をモータハウジングの外部で固定するための配線固定部が形成されており、ブッシュを通過してエンコーダカバーの外部に引き出されたセンサ出力線は、配線固定部に固定されている。特許文献1に記載のモータでは、センサ出力線を配線固定部に固定することで、センサ出力線を引き抜く引抜き力がセンサ出力線に作用したときのセンサ出力線の引抜きを防止している。すなわち、特許文献1に記載のモータでは、センサ出力線を配線固定部に固定することで、センサ出力線に引抜き力が作用したときの、センサ出力線とセンサ基板との接続部分の破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-9570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のモータでは、モータハウジングの外部に配置される配線固定部にセンサ出力線が固定されており、センサ出力線の固定部分がモータの外観上に現れている。そのため、特許文献1に記載のモータの場合、モータの見栄えが悪くなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ロータおよびステータを有するモータ本体部と、モータ本体部が収容されるモータケースと、モータケースの外部に向かって引き出されるシールド線とを備えるモータにおいて、シールド線に引抜き力が作用したときのシールド線の引抜きを防止することが可能であっても、見栄えを良くすることが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、ロータおよびステータを有するモータ本体部と、モータ本体部が収容されるモータケースと、モータケースに収容される検出機構と、検出機構からモータケースの外部に向かって引き出されるシールド線と、モータケースの内部への液体の浸入を防止するためのゴム製のブッシュとを備え、シールド線は、コア線と、コア線を覆うシールド材と、シールド材を覆う絶縁被膜とを備え、シールド線には、シールド材と絶縁被膜とが除去されてコア線が露出するコア線露出部と、シールド材および絶縁被膜にコア線が覆われるコア線被覆部とが形成され、コア線露出部とコア線被覆部との境界部分には、コア線被覆部側の絶縁被膜の外周面上にシールド材が折り返されたシールド材折返し部が形成され、コア線露出部は、モータケースの内部に配置され、ブッシュは、モータケースに取り付けられ、ブッシュには、シールド線が挿通される挿通穴が形成され、挿通穴は、コア線被覆部が配置される小径内周面部と、シールド材折返し部が配置されるとともに小径内周面部よりも内径が大きい大径内周面部とを備え、小径内周面部は、モータケースの外部側に配置されるとともに、大径内周面部は、モータケースの内部側に配置され、大径内周面部と小径内周面部との境界部分には、シールド材折返し部が接触する段差面が形成され、シールド材折返し部は、大径内周面部に接着固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のモータでは、シールド線の、コア線露出部とコア線被覆部との境界部分に、コア線被覆部側の絶縁被膜の外周面上にシールド材が折り返されたシールド材折返し部が形成されている。また、本発明では、モータケースに取り付けられるブッシュの挿通穴は、コア線被覆部が配置される小径内周面部と、シールド材折返し部が配置される大径内周面部とを備えており、小径内周面部がモータケースの外部側に配置されるとともに、大径内周面部がモータケースの内部側に配置されている。さらに、本発明では、大径内周面部と小径内周面部との境界部分に、シールド材折返し部が接触する段差面が形成されており、シールド材折返し部は、大径内周面部に接着固定されている。
【0010】
そのため、本発明では、モータケースに取り付けられるブッシュの段差面と、シールド線のシールド材折返し部と、ブッシュの大径内周面部にシールド材折返し部を接着固定する接着剤とによって、シールド線に引抜き力が作用したときのシールド線の引抜きを防止することが可能になる。また、本発明では、小径内周面部がモータケースの外部側に配置されるとともに、大径内周面部がモータケースの内部側に配置されているため、シールド材折返し部の大径内周面部への接着部分がモータの外観上に現れない。したがって、本発明では、シールド線に引抜き力が作用したときのシールド線の引抜きを防止することが可能であっても、モータの見栄えを良くすることが可能になる。また、本発明では、シールド線のシールド材を利用してシールド線の引抜きを防止することが可能になるため、モータの構成を簡素化することが可能になる。
【0011】
さらに、本発明では、ブッシュの大径内周面部にシールド材折返し部が配置されるとともに接着固定されているため、外径が大きいシールド材折返し部の、モータケースの内部への突出量を抑制することが可能になる。したがって、本発明では、モータケースの内部において、シールド材折返し部の配置スペースを狭くしても、あるいは、シールド材折返し部の配置スペースを設けなくても、シールド材折返し部を配置することが可能になる。そのため、本発明では、モータケースの内部において、シールド材折返し部がモータの組立に与える影響を低減することが可能になり、その結果、モータの組立を容易に行うことが可能になる。また、本発明では、モータケースの内部に配置される構成部品に、シールド材折返し部が与える影響を低減することが可能になるため、モータの設計の自由度を高めることが可能になる。
【0012】
本発明において、シールド材折返し部では、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材が、コア線被覆部の周方向に捩じられていることが好ましい。このように構成すると、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材がコア線被覆部の周方向に捩じられていない場合と比較して、シールド材折返し部の外径を大きくすることが可能になる。したがって、シールド材折返し部の外径とコア線被覆部の外径との差を大きくして、ブッシュに形成される段差面とシールド材折返し部との接触面積を広げることが可能になる。その結果、シールド線に引抜き力が作用したときのシールド線の引抜きを効果的に防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、挿通穴は、小径内周面部と大径内周面部とから構成されている。この場合には、挿通穴の形状を簡素化することが可能になる。また、本発明において、たとえば、小径内周面部には、コア線被覆部が圧入されている。
【0014】
本発明において、シールド材折返し部は、シールド材折返し部を大径内周面部に接着固定する接着剤で覆われていることが好ましい。このように構成すると、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材を接着剤で覆うことが可能になるため、接着剤を用いて、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材の絶縁性を確保することが可能になる。
【0015】
本発明において、シールド材折返し部では、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材の先端がモータケースの外部側を向いていることが好ましい。すなわち、シールド材折返し部では、絶縁被膜の外周面上に折り返されたシールド材の先端がコア線露出部側を向いていないことが好ましい。このように構成すると、シールド材の先端とコア線との接触を防止することが可能になる。したがって、シールド材とコア線との絶縁性を確保しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、ロータおよびステータを有するモータ本体部と、モータ本体部が収容されるモータケースと、モータケースの外部に向かって引き出されるシールド線とを備えるモータにおいて、シールド線に引抜き力が作用したときのシールド線の引抜きを防止することが可能であっても、モータの見栄えを良くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかるモータの斜視図である。
図2図1に示すモータの断面図である。
図3図2に示すシールド線およびブッシュの構成を説明するための図である。
図4図1に示すシールド線およびカバー等の斜視図である。
図5図4に示すカバー、ブッシュおよびブッシュカバーの分解斜視図である。
図6図5に示すカバー、ブッシュおよびブッシュカバーを異なる方向から示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の斜視図である。図2は、図1に示すモータ1の断面図である。
【0020】
本形態のモータ1は、インナーロータ型のモータである。モータ1は、ロータ2およびステータ3を有するモータ本体部4と、モータ本体部4が収容されるモータケース5と、ロータ2の回転速度および回転位置を検出するための検出機構6とを備えている。また、モータ1は、モータ本体部4に電力を供給するための給電線7と、検出機構6に接続されるシールド線8とを備えている。
【0021】
ロータ2は、回転軸11と、回転軸11に固定される駆動用磁石12とを備えている。回転軸11の出力側の端部は、モータケース5の外部に突出している。ステータ3は、駆動用磁石12の外周側に配置されている。ステータ3は、ステータコア13と、インシュレータ14を介してステータコア13の突極に巻回される駆動用コイル15とを備えている。駆動用コイル15の端部は、インシュレータ14に固定される端子ピンに巻き付けられて固定されており、この端子ピンには、基板16が半田付けされて固定されている。給電線7の一端部は、基板16に半田付けされて固定されている。
【0022】
以下の説明では、回転軸11の軸方向(すなわち、ロータ2の軸方向、図1等のX方向)を「前後方向」とし、前後方向に直交する図1等のZ方向を「上下方向」とする。また、前後方向(回転軸11の軸方向)のうちの回転軸11の出力側(図1等のX1方向側)を「前」側とし、前後方向のうちの回転軸11の反出力側(図1等のX2方向側)を「後(後ろ)」側とし、上下方向の一方側である図1等のZ1方向側を「上」側とし、上下方向の他方側である図1等のZ2方向側を「下」側とする。
【0023】
検出機構6は、磁気式のロータリーエンコーダである。検出機構6は、検出用磁石20と、検出用磁石20の後ろ側に配置される平板状の基板21とを備えている。基板21は、基板21の厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。基板21の前面には、磁気抵抗素子およびホール素子が実装されている。検出用磁石20は、磁石ホルダ22に固定されている。磁石ホルダ22は、回転軸11の後端部に固定されている。基板21は、基板ホルダ23に固定されている。基板ホルダ23は、モータケース5を構成する後述の軸受ホルダ27に固定されている。
【0024】
モータケース5は、前後方向で開口する筒状のケース本体25と、ケース本体25の前端に固定される軸受ホルダ26と、ケース本体25の後端に固定される軸受ホルダ27と、給電線7と基板16との接続部分を覆うカバー28と、検出機構6を覆うカバー29とを備えている。軸受ホルダ26には、回転軸11を回転可能に支持する軸受30が取り付けられている。軸受ホルダ27には、回転軸11を回転可能に支持する軸受31が取り付けられている。
【0025】
カバー28は、ケース本体25の上面に固定されている。カバー28とケース本体25との間には、モータケース5の内部へ水等の液体が浸入するのを防止するためのゴム製のブッシュ32が取り付けられている。ブッシュ32には、給電線7が挿通される挿通穴32aが形成されている。給電線7は、挿通穴32aからモータケース5の外部に引き出されている。
【0026】
カバー29は、軸受ホルダ27の後面に固定されている。上述のように、カバー29は、検出機構6を覆っており、検出機構6は、モータケース5に収容されている。また、上述のように、シールド線8は、検出機構6に接続されている。具体的には、シールド線8の一端部がコネクタ33を介して基板21に接続されている。シールド線8は、検出機構6からモータケース5の外部に向かって引き出されている。具体的には、シールド線8は、カバー29の外部に向かって引き出されている。以下、シールド線8の構成およびシールド線8の引出し部分の構成を説明する。
【0027】
(シールド線の構成およびシールド線の引出し部分の構成)
図3は、図2に示すシールド線8およびブッシュ43の構成を説明するための図である。図4は、図1に示すシールド線8およびカバー29等の斜視図である。図5は、図4に示すカバー29、ブッシュ43およびブッシュカバー44の分解斜視図である。図6は、図5に示すカバー29、ブッシュ43およびブッシュカバー44を異なる方向から示す分解斜視図である。
【0028】
シールド線8は、コア線36と、コア線36を覆うシールド材37と、シールド材37を覆う絶縁被膜38とを備えている(図3参照)。本形態のシールド線8は、複数のコア線36を備えており、シールド材37は、複数のコア線36を覆っている。コア線36は、銅線等からなる芯線(導体線)と芯線を覆う絶縁被膜とによって構成されている。シールド材37は、網状に編まれた銅線等によって構成されている。シールド線8には、シールド材37と絶縁被膜38とが除去されてコア線36が露出するコア線露出部8aと、シールド材37および絶縁被膜38にコア線36が覆われるコア線被覆部8bとが形成されている。具体的には、シールド線8の両端部がコア線露出部8aとなっており、シールド線8の、コア線露出部8aを除いた部分がコア線被覆部8bとなっている。
【0029】
シールド線8の一端側(具体的には、シールド線8の、基板21に接続される側)の、コア線露出部8aとコア線被覆部8bとの境界部分には、コア線被覆部8b側の絶縁被膜38の外周面上にシールド材37が折り返されたシールド材折返し部8cが形成されている(図3参照)。シールド材折返し部8cでは、絶縁被膜38が除去されて外部に露出したシールド材37がコア線被覆部8b側に向かって1回折り返されており、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端は、コア線被覆部8b側を向いている。シールド材折返し部8cでは、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37が、コア線被覆部8bの周方向に捩じられている。シールド材折返し部8cの外径は、コア線被覆部8bの外径よりも大きくなっている。
【0030】
上述のように、シールド線8は、カバー29の外部に向かって引き出されている。カバー29は、樹脂で形成されている。カバー29は、後端に底部を有する底付きの略四角筒状に形成されている。カバー29は、カバー29の上面を構成する上壁部29aを備えている。カバー29には、モータケース5の内部への液体の浸入を防止するためのゴム製のブッシュ43が取り付けられている。すなわち、モータ1は、モータケース5の内部への液体の浸入を防止するためのゴム製のブッシュ43を備えており、ブッシュ43は、モータケース5に取り付けられている。
【0031】
カバー29には、ブッシュ43を保持するブッシュ保持部29bが形成されている。ブッシュ保持部29bは、上壁部29aに形成されている。すなわち、ブッシュ43は、モータケース5の側壁部(具体的には、カバー29の上側の側壁部)に取り付けられている。ブッシュ保持部29bには、ブッシュ43が配置される切欠き29cが形成されている。切欠き29cは、上壁部29aの前端から後ろ側に向かってU形状に切り欠かれている。また、ブッシュ保持部29bには、ブッシュ43を下側から支持する支持壁部29dが形成されている。支持壁部29dは、切欠き29cの下側に配置されている。
【0032】
支持壁部29dには、U形状の切欠き29eが形成されている。切欠き29eは、上壁部29aの前端から後ろ側に向かって切り欠かれている。切欠き29eの外形は、切欠き29cの外形よりも小さくなっており、図6に示すように、支持壁部29dの上面は、上下方向に直交する平面となっている。また、図5に示すように、支持壁部29dの下面も、上下方向に直交する平面となっている。
【0033】
ブッシュ43には、シールド線8が挿通される挿通穴43aが形成されている。挿通穴43aは、ブッシュ43を上下方向で貫通している。挿通穴43aは、コア線被覆部8bが配置される小径内周面部43bと、シールド材折返し部8cが配置されるとともに小径内周面部43bよりも内径の大きい大径内周面部43cとを備えている。本形態の挿通穴43aは、小径内周面部43bと大径内周面部43cとから構成されている。
【0034】
小径内周面部43bは、大径内周面部43cの上側に配置されている。すなわち、上壁部29aに形成されるブッシュ保持部29bに保持されるブッシュ43の小径内周面部43bは、モータケース5の外部側(具体的には、カバー29の外部側)に配置されるとともに、大径内周面部43cは、モータケース5の内部側(具体的には、カバー29の内部側)に配置されている。小径内周面部43bと大径内周面部43cとの境界部分には、段差面43dが形成されている。段差面43dは、上下方向に直交する円環状の平面である。また、段差面43dは、下側を向く平面である。
【0035】
上壁部29aの上面には、ブッシュカバー44が固定されている。ブッシュ43は、支持壁部29dとブッシュカバー44との間に挟まれた状態でブッシュ保持部29bに保持されている。ブッシュ43の前面とカバー29の前面とは、前後方向において、同じ位置に配置されている。ブッシュカバー44には、上下方向でブッシュカバー44を貫通する挿通穴44aが形成されている。
【0036】
シールド線8の一端部(具体的には、シールド線8の、基板21に接続される側の端部)を構成するコア線露出部8aは、カバー29の内部に配置されている。すなわち、コア線露出部8aは、モータケース5の内部に配置されている。シールド線8は、ブッシュ43の挿通穴43aおよびブッシュカバー44の挿通穴44aからカバー29の外部に引き出されている。シールド材折返し部8cは、ブッシュ43の大径内周面部43cに配置されている。本形態では、シールド材折返し部8cの全体が大径内周面部43cに配置されている。切欠き29eの中には、コア線露出部8aの一部分が配置されている。コア線被覆部8bの一部分は、ブッシュ43の小径内周面部43bに配置されている。コア線被覆部8bは、小径内周面部43bに圧入されている。
【0037】
シールド材折返し部8cは、段差面43dに接触している。また、シールド材折返し部8cは、大径内周面部43cに接着固定されている。すなわち、シールド材折返し部8cは、段差面43dに接触した状態で大径内周面部43cに接着固定されている。具体的には、シールド材折返し部8cの上端が段差面43dに接触した状態で、シールド材折返し部8cが大径内周面部43cに接着固定されている。図3に示すように、シールド材折返し部8cは、シールド材折返し部8cを大径内周面部43cに接着固定する接着剤39に覆われている。接着剤39は、シールド材折返し部8cの全体を覆っている。また、接着剤39は、大径内周面部43cに充填されている。
【0038】
上述のように、シールド材折返し部8cでは、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端がコア線被覆部8b側を向いているため、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端は、上側を向いている。すなわち、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端は、モータケース5の外部側(具体的には、カバー29の外部側)を向いている。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、シールド線8の、コア線露出部8aとコア線被覆部8bとの境界部分にシールド材折返し部8cが形成されている。また、本形態では、ブッシュ43の大径内周面部43cに配置されるシールド材折返し部8cは、ブッシュ43の段差面43dに接触した状態で接着剤39によって大径内周面部43cに接着固定されている。そのため、本形態では、段差面43dとシールド材折返し部8cと接着剤39とによって、シールド線8に引抜き力が作用したときのシールド線8の引抜きを防止することが可能になる。
【0040】
また、本形態では、小径内周面部43bがモータケース5の外部側に配置されるとともに、大径内周面部43cがモータケース5の内部側に配置されているため、シールド材折返し部8cの大径内周面部43cへの接着部分がモータ1の外観上に現れない。したがって、本形態では、シールド線8に引抜き力が作用したときのシールド線8の引抜きを防止することが可能であっても、モータ1の見栄えを良くすることが可能になる。また、本形態では、シールド線8のシールド材37を利用してシールド線8の引抜きを防止することが可能になるため、モータ1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、特許文献1に記載のモータのように軸受ホルダ27に配線固定部を形成する必要がないため、軸受ホルダ27の構成を簡素化することが可能になる。
【0041】
さらに、本形態では、ブッシュ43の大径内周面部43cにシールド材折返し部8cが配置されるとともに接着固定されているため、外径が大きいシールド材折返し部8cの、モータケース5の内部への突出量を抑制することが可能になる。特に本形態では、大径内周面部43cにシールド材折返し部8cの全体が配置されているため、シールド材折返し部8cは、モータケース5の内部に突出しない。
【0042】
したがって、本形態では、モータケース5の内部において、シールド材折返し部8cの配置スペースを設けなくても、シールド材折返し部8cを配置することが可能になる。そのため、本形態では、モータケース5の内部において、シールド材折返し部8cがモータ1の組立に与える影響を低減することが可能になり、その結果、モータ1の組立を容易に行うことが可能になる。また、本形態では、モータケース5の内部に配置される構成部品に、シールド材折返し部8cが与える影響を低減することが可能になるため、モータ1の設計の自由度を高めることが可能になる。
【0043】
本形態では、シールド材折返し部8cにおいて、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37がコア線被覆部8bの周方向に捩じられている。そのため、本形態では、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37がコア線被覆部8bの周方向に捩じられていない場合と比較して、シールド材折返し部8cの外径を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、シールド材折返し部8cの外径とコア線被覆部8bの外径との差を大きくして、ブッシュ43の段差面43dとシールド材折返し部8cとの接触面積を広げることが可能になる。その結果、本形態では、シールド線8に引抜き力が作用したときのシールド線8の引抜きを効果的に防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、シールド材折返し部8cは、接着剤39で覆われている。すなわち、本形態では、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37が接着剤39で覆われている。そのため、本形態では、接着剤39を用いて、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の絶縁性を確保することが可能になる。
【0045】
本形態では、シールド材折返し部8cにおいて絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端は、コア線被覆部8b側を向いており、コア線露出部8a側を向いていない。そのため、本形態では、シールド材37の先端とコア線36との接触を防止することが可能になる。したがって、本形態では、シールド材37とコア線36との絶縁性を確保しやすくなる。
【0046】
本形態では、ブッシュ43の大径内周面部43cに配置されるシールド材折返し部8cは、大径内周面部43cに接着固定されている。そのため、本形態では、ブッシュ43に対するシールド線8の回転を防止することが可能になる。
【0047】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0048】
上述した形態において、シールド材折返し部8cの一部分が大径内周面部43cからカバー29の内部側にはみ出していても良い。この場合であっても、モータケース5の内部において、シールド材折返し部8cの配置スペースを狭くしても、シールド材折返し部8cを配置することが可能になる。そのため、上述した形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0049】
上述した形態では、シールド材折返し部8cにおいて、絶縁被膜38が除去されて外部に露出したシールド材37がコア線被覆部8b側に向かって1回折り返されているが、シールド材折返し部8cにおいて、絶縁被膜38が除去されて外部に露出したシールド材37が複数回折り返されていても良い。この場合には、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37の先端がコア線露出部8a側を向いていても良い。また、シールド材折返し部8cにおいて、絶縁被膜38の外周面上に折り返されたシールド材37がコア線被覆部8bの周方向に捩じられていなくても良い。
【0050】
上述した形態において、コア線被覆部8bは、小径内周面部43bに圧入されていなくても良い。また、上述した形態において、検出機構6は、ロータリーエンコーダ以外の検出機構であっても良い。また、上述した形態では、モータ1は、インナーロータ型のモータであるが、本発明の構成が適用されるモータは、アウターロータ型のモータであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
4 モータ本体部
5 モータケース
6 検出機構
8 シールド線
8a コア線露出部
8b コア線被覆部
8c シールド材折返し部
36 コア線
37 シールド材
38 絶縁被膜
39 接着剤
43 ブッシュ
43a 挿通穴
43b 小径内周面部
43c 大径内周面部
43d 段差面
図1
図2
図3
図4
図5
図6