(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】取手用操作具
(51)【国際特許分類】
E05B 1/00 20060101AFI20231115BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E05B1/00 311M
E05B49/00 K
(21)【出願番号】P 2020098812
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊本 尚太
(72)【発明者】
【氏名】中谷 卓也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3227112(JP,U)
【文献】登録実用新案第3227330(JP,U)
【文献】登録実用新案第3227712(JP,U)
【文献】特開2017-137634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370401(US,A1)
【文献】特表2013-535591(JP,A)
【文献】特表2016-523597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、前記把持部から延在する操作基部と、前記操作基部から突出する係合部とを有し、前記係合部を介して操作対象となる取手に係合可能となる取手用操作具であって、
前記操作基部の先端部には、非接触認識タグを配設するためのタグ用凹部が設けられていることを特徴とする取手用操作具。
【請求項2】
前記タグ用凹部には、ドアハンドルに設けられたロック機構を施解錠するための非接触認識タグが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【請求項3】
前記タグ用凹部は、前記操作基部の表面からの内底面までの距離が非接触認識タグの板厚よりも大きな寸法に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【請求項4】
前記タグ用凹部は、前記操作基部において前記係合部との連結部を含む部分から先端側となる範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【請求項5】
前記把持部は、長円環状となるように形成され、前記把持部の長軸に沿った一方の端部から外周に向けて前記操作基部が突出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【請求項6】
前記操作基部は直線状を成し、前記把持部の長軸に対して傾斜するように延在していることを特徴とする請求項5に記載の取手用操作具。
【請求項7】
前記操作基部は、前記把持部の長軸からずれた位置に設けられ、
前記把持部の外周面から前記操作基部に至る連結部分には、湾曲状部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の取手用操作具。
【請求項8】
前記操作基部の先端部には、サムターン挿入用の係合溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【請求項9】
前記操作基部は、互いに平行となる2つの側面を有するように構成され、
前記タグ用凹部は、前記操作基部のそれぞれの側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の取手用操作具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアパネルに設けられたドアハンドル等の取手を操作するための操作具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、衛生上の観点からドアハンドルに直接触れることなくドアパネルを開閉することのできる取手用操作具が提供されている。この種の取手用操作具としては、例えば把持部及び係合部を備えたものがある。この取手用操作具では、係合部をドアハンドルに係合させた状態で操作力を加えることにより、ドアパネルとドア枠との間に設けられたラッチ機構を解除することができる。これにより、係合部を係合させた状態のまま把持部を介して引張り力を加えれば、直接ドアハンドルに触れることなくドアパネルを開くことが可能となる。従って、取手用操作具を用いた場合には、例えばドアハンドルを介した感染の懸念がなくなる等、衛生上の点で好ましいことになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドアには、玄関ドア等のように、防犯上の理由からロック機構を備えたものもある。この種のドアでは、ドアハンドルを引き操作する以前にロック機構を解錠しておく必要がある。ロック機構を解錠する操作としては、シリンダキー等の鍵の挿入操作によるものの他、非接触認識タグ、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)用のタグ(RFタグ)を用いたものも提供されている。すなわち、ドアハンドルに設けられた送受信部に対してRFタグを近接配置させれば、鍵を挿入することなく室外からロック機構の施解錠を行うことが可能となるものである。RFタグとしては、矩形状のカード型のみならず、シール状に構成されたものも提供されている。シール状のRFタグは、例えば、スマートフォン等の携行品に貼り付けることによって使用するものである。
【0005】
この種のロック機構を備えるドアによれば、直接ドアハンドルに触れることなくロック機構の解錠からドアパネルを開くまでの操作を行うことが可能となる。但し、ドアパネルを開く場合には、取手用操作具に加えて、RFタグが貼り付けられたスマートフォン等の携行品が必要となる。このため、例えば、片手での操作が難しい等、操作性を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、操作性の向上を図ることのできる取手用操作具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る取手用操作具は、把持部と、前記把持部から延在する操作基部と、前記操作基部から突出する係合部とを有し、前記係合部を介して操作対象となる取手に係合可能となる取手用操作具であって、前記操作基部の先端部には、非接触認識タグを配設するためのタグ用凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作基部の先端部に設けられたタグ用凹部にシール状に構成された非接触認識タグを貼り付ければ、非接触認識タグによる解錠操作の後、そのまま係合部をドアハンドルに係合させて操作力を加えることにより、直接ドアハンドルに触れることなくドアパネルを開くことが可能となる。従って、ドアパネルを開く際には、取手用操作具のみを用意すれば良く、片手での操作が可能となる等、操作性の点で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態である取手用操作具を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した取手用操作具が操作対象とするドアハンドルが設けられた玄関ドアを室外側から見た図である。
【
図5】
図4に示した玄関ドアに適用するドアパネルの戸先部分を示す要部拡大図である。
【
図6】
図1に示した取手用操作具の使用状態を例示する斜視図である。
【
図7】
図1に示した取手用操作具を適用したサムターンの操作例を示す斜視図である。
【
図8】
図1に示した取手用操作具を適用してドアパネルを開く際の操作例を示すもので、(a)は取手用操作具に貼り付けた非接触認識タグをドアハンドルの送受信部に近接配置させた状態の斜視図、(b)は取手用操作具の係合部をドアハンドルに係合させて引き操作している状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る取手用操作具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1~
図3は、本発明の実施の形態である取手用操作具を示したものである。ここで例示する取手用操作具1は特に、
図4及び
図5に示すように、外開きの玄関ドア100のドアパネル101に設けられたドアハンドル(取手)110A,110Bを操作する場合に好適となるように構成したものである。取手用操作具1の操作対象とするドアハンドル110A,110Bは、ハンドルグリップ111A,111Bの両端部にそれぞれ取付部112A,112Bを備えたもので、ハンドルグリップ111A,111Bが上下に延在する状態で、ドアパネル101の戸先部分において室外側となる表面及び室内側となる表面のそれぞれ設けてある。図には明示していないが、ハンドルグリップ111A,111Bは、取付部112A,112Bに対して移動可能に設けられたもので、それぞれ開き操作することでラッチボルト121を解除動作させることが可能である。ラッチボルト121は、ドアパネル101の戸先端面101aから常時突出するように付勢されたもので、ドアパネル101が閉じた状態においてはドア枠102の係合孔(図示せず)に係合することでドアパネル101を閉じた状態に維持するように機能する。この状態から取付部112A,112Bに対して上述のハンドルグリップ111A,111Bを開き操作すれば、付勢力に抗してラッチボルト121がドアパネル101の内部に没入し(ラッチボルト121の解除動作)、ラッチボルト121とドア枠102との係合状態が解除されることでドアパネル101を開くことが可能となる。外開きの玄関ドア100においては、室外側に配置されるドアハンドル(以下、区別する場合に外方ドアハンドル110Aという)のハンドルグリップ111Aを手前側に引く操作が開き操作となり、ドアパネル101を開くことができる。一方、室内側に配置されるドアハンドル(以下、区別する場合に内方ドアハンドル110Bという)の場合には、ハンドルグリップ111Bをドアパネル101に向けて押す操作が開き操作となり、ドアパネル101を開くことができる。図には明示していないが、外方ドアハンドル110Aのハンドルグリップ111Aは、手を掛けて引き操作し易いように、横断面においてドアパネル101に対向する内側面111Aaが湾曲凸状に形成してある。
【0011】
また、内方ドアハンドル110Bには、上下の取付部112Bにそれぞれサムターン113が設けてあり、外方ドアハンドル110Aには、ハンドルグリップ111Aに送受信部114が設けてある。これらサムターン113及び送受信部114は、ドアパネル101の戸先端面101aに対してロック機構(図示せず)のデッドボルト131を出没動作させるためのもの、換言すればロック機構の施解錠を行うものである。すなわち、デッドボルト131は、ドアパネル101の戸先端面101aから突出することでドア枠102のロック孔(図示せず)に噛み合った状態となり、ラッチボルト121が解除動作した場合にもドアパネル101を閉じた状態に維持するように機能する(ロック機構の施錠状態)。
【0012】
サムターン113は、取付部112Bに対して回転可能に取り付けたもので、90°回転することで、デッドボルト131の突出状態と没入状態とを切り替えることが可能である。図示の例では、薄板状を成すサムターン113が突出するように設けてあり、水平方向に沿った状態と上下方向に沿った状態とに切り替えることでデッドボルト131が出没動作するように構成してある。
【0013】
送受信部114は、図示せぬロックコントローラとの間において情報の送受信を行うインターフェースであり、ハンドルグリップ111Aの上方部において表面に露出するように配設してある。この送受信部114が設けられた外方ドアハンドル110Aでは、当該送受信部114にRFタグ(非接触認識タグ)が近接配置されると、ロックコントローラとの間で非接触で情報が送受信され、RFタグに格納された認証情報に基づいて認証処理が実施される。認証処理の結果、RFタグが正規のものであると判断されると、ロックコントローラを通じて図示せぬ電動アクチュエータが動作し、デッドボルト131の突出状態と没入状態とが切り替わることになる。RFタグとしては、矩形のカードに内蔵されたものと、
図1に示すように、円形のシール状に形成されたもの(以下、単にタグシール200という)とが予め用意されている。タグシール200と送受信部114との間において情報の送受信が可能となる範囲は、例えば1cm以内に設定されている。
【0014】
上記のように構成されたドアハンドル110A,110Bを主たる操作対象とした取手用操作具1は、
図1~
図3に示すように、把持部10、操作基部20、係合部30を有して構成してある。図示の例は、把持部10、操作基部20、係合部30をABS等の樹脂によって一体に成形したものである。
【0015】
把持部10は、操作者が指先で握る部分となるもので、長円の環状を成すように構成してある。本実施の形態では、長円の長軸10aに沿った内径が手指を2本挿入可能で、長円の短軸に沿った内径が手指を1本挿入可能となるようにそれぞれの寸法が設定してある。把持部10の軸方向に沿った板幅寸法a1と、把持部10の径方向に沿った板厚寸法a2とは、取手用操作具1が所望の強度を確保した上で、指先でしっかりと握ることができるように、ほぼ2:1の割合となっている。
【0016】
操作基部20は、断面がほぼ矩形で直線状に延在したロッド状を成すもので、把持部10の一方の端部外周面から外周に向けて延在している。より詳細に説明すると、操作基部20は、長円の長軸10aからずれた位置において把持部10の外周面に連結し、かつ長軸10aに対して傾斜するように延在している。図示の例では、長軸10aと操作基部20の延在軸20aとの成す角度αが約60°となっている。また、操作基部20において把持部10の軸方向に沿った板幅寸法a1は、把持部10とほぼ同じである。なお、以下においては便宜上、操作基部20において長円の軸方向に対して直交する2つの互いに平行となる面を側面20bと称し、
図2において上方に位置する面を上面20c、
図2において下方に位置する面を下面20dと称することとする。
【0017】
操作基部20の上面20cと把持部10の外周面との間には、湾曲状部40が形成してある。湾曲状部40は、把持部10の外周面から操作基部20の上面20cまでの間を滑らかに連続するように形成した湾曲状を成すものである。
【0018】
係合部30は、断面がほぼ矩形状を成すもので、操作基部20の先端部下面20dから直角方向に突出した後、突出端部が把持部10に向けて漸次近接するように湾曲した鉤状を成すものである。この係合部30は、外方ドアハンドル110Aのハンドルグリップ111Aに対して内側から係合可能となるように操作基部20からの突出寸法が設定され、さらに湾曲した先端部がハンドルグリップ111Aの湾曲した内側面111Aaに沿うように形成してある。また、操作基部20において係合部30と把持部10との間には、外方ドアハンドル110Aのハンドルグリップ111Aが挿入可能となる間隔50が確保してある。
【0019】
この取手用操作具1には、操作基部20の先端部に係合溝60及びタグ用凹部70が設けてある。係合溝60は、把持部10の軸方向に沿って延在し、かつ操作基部20の先端面及び2つの側面20bに開口するように形成した断面が略U字状の切欠である。係合溝60の幅及び深さは、内方ドアハンドル110Bのサムターン113を挿入することができるように構成してある。タグ用凹部70は、操作基部20の側面20bにおいて係合部30との連結部分となる部分に形成した円形の凹部であり、両側の側面20bにそれぞれ形成してある。タグ用凹部70の内径は、上述したタグシール200の外径よりも大きく、かつ操作基部20の側面20bからタグ用凹部70の内底面70aまでの距離は、タグシール200の板厚よりも大きな寸法に形成してある。
【0020】
上記のように構成した取手用操作具1は、例えば、
図6に示すように、把持部10の長円内部に人差し指及び中指を挿入するとともに、親指を湾曲状部40に添えることで親指と人差し指との間に把持部10の上方部を握った状態で使用するものである。このような状態で把持部10を握った場合には、把持部10に対して傾斜した操作基部20が親指と人差し指との間からほぼ水平となるように延在することになる。しかも、親指と人差し指との間には、断面が扁平状となっている把持部10が握られているとともに、親指の手前側には把持部10の湾曲した上端部が当接しているため、安定した姿勢で取手用操作具1を操作することが可能となる。従って、例えば、操作基部20の先端部をエレベータ等の押しボタンに押し当てれば、そのまま押し込むように操作力を付与したとしても、操作基部20が左右にぶれるような事態を招来するおそれがなく、押しボタンに直接触れることなくエレベータの操作を行うことが可能となる。
【0021】
同様に、上述した玄関ドア100の内方ハンドルに対しては、
図7に示すように、操作基部20の係合溝60にサムターン113を挿入し、さらにこの状態から取手用操作具1を回転させれば、サムターン113に直接触れることなくロック機構の施解錠操作を行うことが可能となる。この場合においても、把持部10を介して取手用操作具1を確実に握ることができるため、サムターン113を容易、かつ確実に回転させることができる。
【0022】
一方、上述した玄関ドア100の外方ドアハンドル110Aを操作する場合には、予めタグシール200を取手用操作具1のタグ用凹部70に貼り付けておけば良い。すなわち、ロック機構が施錠された玄関ドア100を開ける場合には、まず、
図8(a)に示すように、タグ用凹部70に貼り付けたタグシール200を外方ドアハンドル110Aの送受信部114に対して近接させると、ロック機構が解錠され、デッドボルト131が没入状態に切り替わる。その後、
図8(b)に示すように、外方ドアハンドル110Aのハンドルグリップ111Aに対して内側から係合部30を係合させ、そのまま取手用操作具1を引き操作すれば、ラッチボルト121が解除動作することになり、取手用操作具1さえ用意すれば、直接ドアハンドル110A,110Bに触れることなく室外側からドアパネル101を開くことが可能となる。この場合、上述の取手用操作具1によれば、操作基部20において係合部30との連結部分にタグシール200を貼り付けるようにしているため、ハンドルグリップ111A,111Bに係合部30を係合させた際にタグシール200が誤って送受信部114に近接配置されることがない。従って、解錠したロック機構が不用意に施錠される事態が招来される懸念がなく、ドアパネル101を確実に開くことができる。なお、この作用効果は、必ずしもタグ用凹部70が操作基部20において係合部30との連結部分に設けてある必要なく、係合部30との連結部分よりも先端側にタグ用凹部70が設けてあっても同様に奏することが可能である。
【0023】
さらに、取手用操作具1は、常時携行することになるものであるが、タグ用凹部70がタグシール200の板厚よりも大きな深さに形成してあるため、タグシール200の表面が操作基部20の表面よりも突出することがない。従って、取手用操作具1を携行した場合にRFタグに外力が加えられるおそれが少なくなり、RFタグが操作基部20から脱落したり、損傷する事態を防止することが可能となる。加えて、操作基部20の両側側面20bにタグ用凹部70が設けてあるため、玄関ドア100の左右勝手、あるいは操作者の利き手に応じてタグシール200を貼り付ける位置を変更することができ、あるいは2つのタグ用凹部70にそれぞれ貼り付けることで使用するタグシール200を選択することができ、無理な姿勢での操作が強いられる等の懸念がなく、操作性の点で有利となる。
【0024】
なお、上述した実施の形態では、外開きの玄関ドア100のドアパネル101に設けられたドアハンドル110A,110Bを操作する場合に好適となるように構成したものを例示しているが、その他の取手を操作する場合にも適用することが可能である。例えば引き戸に設けられたドアハンドルを操作するものであっても良いし、ドア以外の取手を操作するものであっても構わない。また必ずしもサムターンを挿入するための係合溝60が設けられている必要もない。
【0025】
また、上述した実施の形態では、樹脂によって成形した取手用操作具1を例示しているが、必ずしも樹脂である必要はなく、例えば金属によって成形しても良い。なお、上述した実施の形態で具体的に示した取手用操作具の形状は例示を目的とするものであり、これらに限定されない。例えば、把持部10として長円環状を成すものを例示しているが、長円である必要はなく、また環状である必要もない。把持部10の断面形状についても扁平状となっている必要はない。操作基部20としては、断面が矩形状のものを例示しているが、その他の断面形状であっても良い。操作基部20の延在方向については把持部10が長円の場合に長軸10aに対して傾斜させるようにしているが、長軸10aに沿って操作基部20が延在していても良いし、長軸10aに対して直交するように操作基部20が延在していても構わない。タグ用凹部70を設ける位置は、操作基部の側面である必要はなく上面や下面であっても良いし、操作基部の先端面であっても構わない。また、タグ用凹部が係合部との連結部分に設けてある必要なく、係合部との連結部分よりも先端側であっても良いし、基端側に設けても構わない。
【0026】
以上のように、本発明に係る取手用操作具は、把持部と、前記把持部から延在する操作基部と、前記操作基部から突出する係合部とを有し、前記係合部を介して操作対象となる取手に係合可能となる取手用操作具であって、前記操作基部の先端部には、非接触認識タグを配設するためのタグ用凹部が設けられていることを特徴としている。
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記タグ用凹部には、ドアハンドルに設けられたロック機構を施解錠するための非接触認識タグが配設されていることを特徴としている。
これらの発明によれば、操作基部の先端部に設けられたタグ用凹部にシール状に構成された非接触認識タグを貼り付ければ、非接触認識タグによる解錠操作の後、そのまま係合部をドアハンドルに係合させて操作力を加えることにより、直接ドアハンドルに触れることなくドアを開くことが可能となる。従って、ドアを開く際には、取手用操作具のみを用意すれば良く、片手での操作が可能となる等、操作性の点で有利となる。
【0027】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記タグ用凹部は、前記操作基部の表面からの内底面までの距離が非接触認識タグの板厚よりも大きな寸法に形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、タグ用凹部に配設された非接触認識タグの表面が操作基部の表面よりも突出することがない。従って、取手用操作具を携行した場合に非接触認識タグに外力が加えられるおそれが少なくなり、非接触認識タグが操作基部から脱落したり、損傷する事態を防止することが可能となる。
【0028】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記タグ用凹部は、前記操作基部において前記係合部との連結部を含む部分から先端側となる範囲に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、係合部をドアハンドルに係合させてドアを開き操作する際に非接触認識タグが不用意に送受信部に近接配置される事態を未然に防止することができる。これにより、不必要時に非接触認識タグがドアハンドルの送受信部に読み取られるおそれがなくなる。
【0029】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記把持部は、長円環状となるように形成され、前記把持部の長軸に沿った一方の端部から外周に向けて前記操作基部が突出するように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、長円環状の把持部に対しては複数本の指を挿入することができるため、安定した状態で把持部を把持することが可能となる。これにより係合部の係合操作や非接触認識タグの読取操作、あるいは操作基部の先端を介してエレベータ等のスイッチを押操作する際の操作を容易、かつ確実に実施することが可能となる。
【0030】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記操作基部は直線状を成し、前記把持部の長軸に対して傾斜するように延在していることを特徴としている。
この発明によれば、把持部を握って手を伸ばした際に操作基部の延在方向が自然と前方となるように構成することができ、操作性の向上を図ることが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記把持部は、径方向に沿った寸法が軸方向に沿った寸法よりも小さく構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、把持部の軸方向に沿った板幅方向に沿った寸法が大きくなるため、強度上有利となる一方、把持部の径方向に沿った板厚方向に沿った寸法が小さくなるため、把持部を握り易くなる。
【0032】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記操作基部は、前記把持部の長軸からずれた位置に設けられ、前記把持部の外周面から前記操作基部に至る連結部分には、湾曲状部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、把持部に人差し指や中指を挿入した状態で親指を湾曲状部に配置することでより安定性が増し、種々の操作がより一層容易、かつ確実となる。
【0033】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記操作基部の先端部には、サムターン挿入用の係合溝が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ドアハンドルのサムターンについても直接触れることなく操作を行うことが可能となる。
【0034】
また本発明は、上述した取手用操作具において、前記操作基部は、互いに平行となる2つの側面を有するように構成され、前記タグ用凹部は、前記操作基部のそれぞれの側面に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、非接触認識タグの貼り付け位置を変更することができ、利き腕やドアの左右勝手の影響を受けることなく良好な操作性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 取手用操作具、10 把持部、10a 長軸、20 操作基部、20a 延在軸、20b 側面、30 係合部、40 湾曲状部、60 係合溝、70 タグ用凹部、70a 内底面、110A 外方ドアハンドル、110B 内方ドアハンドル、113 サムターン、114 送受信部、200 タグシール、a1 板幅寸法、a2 板厚寸法、α 角度