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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】建具及び窓装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20231115BHJP
   E06B 1/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020104043
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195818
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 純
(72)【発明者】
【氏名】松下 岳史
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-169476(JP,A)
【文献】特開2015-124544(JP,A)
【文献】特開2017-075491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/14
E06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が被取付体の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠を備えた建具であって、
前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に水抜き孔が設けられるとともに、前記水抜き孔に対応する部分に排水弁が設けられ、
前記排水弁は、上面に連絡口を有するとともに、側面もしくは下面に排水口を有した中空状の弁本体と、前記弁本体の排水口を開閉する板状の弁体とを備えて構成され、前記連絡口が前記水抜き孔に合致した状態で前記弁本体を介して前記下枠基部の下面から下方に突出する状態で取り付けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記排水弁は、前記下枠基部においてもっとも室外に配置される部分よりも室内側に位置するように前記下枠基部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記下枠基部には、前記排水弁が設けられる下面を室外に延長するようにカバー板部が突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
躯体に支持された既設下枠と、
中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が前記既設下枠の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠と
を備えた窓装置であって、
前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に水抜き孔が設けられるとともに、前記水抜き孔に対応する部分に排水弁が設けられ、
前記排水弁は、上面に連絡口を有するとともに、側面もしくは下面に排水口を有した中空状の弁本体と、前記弁本体の排水口を開閉する板状の弁体とを備えて構成され、前記連絡口が前記水抜き孔に合致した状態で前記弁本体を介して前記下枠基部の下面から下方に突出する状態で取り付けられていることを特徴とする窓装置。
【請求項5】
前記躯体において前記排水弁の下方となる部分には、室外に向けて漸次下方となるように傾斜した水切り面が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の窓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具及び窓装置に関するもので、特に下枠に設けられる排水構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具の下枠には、上面に排水孔が設けられ、かつ室外に臨む見付け面(以下、前面という)の下方部に水抜き孔が設けられたものがある。これらの排水孔及び水抜き孔は、中空部を介して互いに連通したものである。水抜き孔には、逆止弁となる排水弁が設けられている。この種の建具では、雨水や結露水等の水が下枠の上面に到達すると、この水が排水孔を通じて中空部に排出され、さらに中空部に貯留された水が水抜き孔及び排水弁を通じて室外に排出されることになる。従って、下枠の上面に到達した水が室内側へ浸入する事態を防止することが可能となり、水密性の点で有利となる。
【0003】
ここで、台風や暴風雨等のように室外の圧力が高い状況下であっても排水弁からの排水を良好に行うには、排水孔と水抜き孔との水頭差を十分に確保することが好ましい。このため従来では、下枠の水抜き孔に連通するように水切り部材を追加するようにしたものも提供されている。すなわち、下枠の前面から室外に向けて突出した後、下方に向けて屈曲するように中空状の水切り部材を配設するとともに、水切り部材の下面に排水弁が装着された第2の水抜き孔を形成し、下枠の水抜き孔から排出した水をさらに水切り部材を経由して室外に排出するようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-148207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の建具では、水切り部材に設けた第2の水抜き孔が下枠の水抜き孔よりも下方に位置するため、水頭差を増大することが可能となり、室外が高圧状況下となった場合にも排水性を良好とすることができる。しかしながら、下枠の前面に水切り部材が追加された構成となるため、外観品質を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。しかも、水切り部材は、下枠の前面において全長にわたる部分から室外に突出した構成であるため、外力の影響を受け易く、下枠から脱落したり、損傷を来すといった問題を招来し、上述した高圧状況下での排水性が損なわれる懸念もある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、外観品質を損なう事態を防止し、かつ室外の圧力が高い状況下であっても十分な排水性を確保して水密性を維持することのできる建具及び窓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が被取付体の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠を備えた建具であって、前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に水抜き孔が設けられるとともに、前記水抜き孔に対応する部分に排水弁が設けられ、前記排水弁は、上面に連絡口を有するとともに、側面もしくは下面に排水口を有した中空状の弁本体と、前記弁本体の排水口を開閉する板状の弁体とを備えて構成され、前記連絡口が前記水抜き孔に合致した状態で前記弁本体を介して前記下枠基部の下面から下方に突出する状態で取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る窓装置は、躯体に支持された既設下枠と、中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が前記既設下枠の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠とを備えた窓装置であって、前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に水抜き孔が設けられるとともに、前記水抜き孔に対応する部分に排水弁が設けられ、前記排水弁は、上面に連絡口を有するとともに、側面もしくは下面に排水口を有した中空状の弁本体と、前記弁本体の排水口を開閉する板状の弁体とを備えて構成され、前記連絡口が前記水抜き孔に合致した状態で前記弁本体を介して前記下枠基部の下面から下方に突出する状態で取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下枠基部の下面に排水弁を設けているため、下枠基部の上面からの水頭差を確保することができ、室外の圧力が高い状況下であっても排水を良好に行うことが可能となる。しかも、下枠基部の下面に配設した排水弁は、外観品質を損なうおそれがなくなるばかりか、外力の影響も受け難くなる。この結果、下枠基部から脱落したり、損傷を来すおそれがなくなり、上述の排水性を確保して建具の水密性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明によれば、既設下枠が設けられた躯体に改装用として下枠を設ける場合においても、下枠基部の下面に排水弁を設けているため、下枠基部の上面からの水頭差を確保することができ、室外の圧力が高い状況下であっても排水を良好に行うことが可能となる。しかも、下枠基部の下面に配設した排水弁は、外観品質を損なうおそれがなくなるばかりか、外力の影響も受け難くなる。この結果、下枠基部から脱落したり、損傷を来すおそれがなくなり、上述の排水性を確保して建具の水密性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態である建具の縦断面図である。
図2図1に示した建具の横断面図である。
図3図1に示した建具の下枠を一部破断して示す斜視図である。
図4図1に示した建具の下枠を一部破断して示す斜視図である。
図5図1に示した建具の下枠を取り付ける際の手順を示したもので、既設下枠に対して下地材を取り付ける以前の状態を示す要部分解縦断面図である。
図6】下地材を取り付けた既設下枠に対して下枠を取り付ける直前の状態を示す要部分解縦断面図である。
図7】既設下枠に下枠を取り付けた状態を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具及び窓装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図4は、本発明の実施の形態である建具を示すものである。ここで例示する建具は、枠体10に対して室内側の内障子20A及び室外側の外障子20Bをそれぞれスライド可能に設けた引き違い窓と称されるものである。図示の例ではさらに、外障子20Bよりも室外側となる部分に網戸30を設けた建具を例示している。図からも明らかなように、本実施の形態では特にビル用建具の改装を目的とする建具であって、既設の枠体40を残した状態で躯体Bに新たな枠体10を取り付けることにより、改装前の枠体40とともに窓装置を構成する建具を例示している。なお、以下の説明においては便宜上、改装前の建具に関する構成に「既設」という用語を付与し、一方、新たに設ける改装用の建具に関する構成に「新設」という用語を付与し、両者を区別することとする。
【0013】
新設建具の新設枠体10は、新設上枠11、新設下枠12及び左右の新設縦枠13を四周枠組みすることによって構成したものである。これらの新設枠11,12,13は、アルミニウム合金等の金属、あるいは樹脂によって成形した押出形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。新設上枠11及び新設下枠12には、互いに対向する部分に新設内障子レール部11a,12a、新設外障子レール部11b,12b及び新設網戸レール部11c,12cが設けてある。これらの新設レール部11a,12a,11b,12b,11c,12cは、内障子20A、外障子20B及び網戸30のスライドをガイドするもので、新設上枠11及び新設下枠12の互いに対向する部分から内周側に突出し、それぞれが新設上枠11や新設下枠12の長手に沿って延在している。
【0014】
新設内障子20A及び新設外障子20Bは、それぞれ矩形状を成す面材21A,21Bの四周に新設上框22A,22B、新設下框23A,23B及び左右の新設縦框24A,25A,24B,25Bを装着することによって構成したものである。図示の例では、面材21A,21Bとして複層ガラスを適用している。これらの新設内障子20A及び新設外障子20Bは、互いにほぼ同じの外形寸法を有し、かつそれぞれの召し合わせとなる新設縦框24A,24Bを見込み方向に並設した場合に新設枠体10の開口を閉塞することのできる大きさに構成してある。新設網戸30は、矩形状の外形を有した網31の四周に新設網戸用上框32、新設網戸用下框33及び左右の新設網戸用縦框34を装着することによって構成したものである。
【0015】
ここで、見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。また本実施の形態では見付け方向という用語も用いる。見付け方向とは、新設上枠11等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。新設縦枠13等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0016】
一方、改装前に躯体Bに設置されていた既設建具は、図には示していないが、新設建具と同様、既設枠体40に対して室内側の既設内障子及び室外側の既設外障子をそれぞれスライド可能に設けた引き違い窓である。図示の例ではさらに、既設外障子よりも室外側となる部分に既設網戸が設けられていたものである。これらの既設内障子、既設外障子及び既設網戸は改装する際に不要となるため、既に取り外した状態が示してある。
【0017】
躯体Bに残した既設枠体40は、既設上枠41、既設下枠(被取付体)42及び左右の既設縦枠43を四周枠組みすることによって構成されたものである。これらの既設枠41,42,43は、アルミニウム合金等の金属、あるいは樹脂によって成形した押出形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様な断面形状を有するように構成されている。既設上枠41及び既設下枠42の互いに対向する部分に既設内障子レール部41a,42a、既設外障子レール部41b,42b及び既設網戸レール部41c,42cが設けられているのも、新設枠11,12,13と同様である。既設上枠41の既設内障子レール部41a、既設外障子レール部41b及び既設網戸レール部41cは、突出高さが互いにほぼ同じとなるように構成されている。これに対して既設下枠42では、既設内障子レール部42a及び既設外障子レール部42bの突出高さが互いにほぼ同じであるが、既設網戸レール部42cの突出高さは低く構成されている。より具体的に説明すると、既設下枠42は、既設内障子レール部42a及び既設外障子レール部42bが設けられた平板状を成す既設下枠基板部42dが室外に向けて漸次下方となるように傾斜して設けられている。既設下枠42の既設網戸レール部42cは、既設下枠基板部42dにおいて室外側となる縁部を下方に屈曲した後、室外に向けて水平に延在した延長部分42eの延在縁部から上方に向けて突出されたもので、突出高さが既設下枠基板部42dの上面延長線にほぼ合致するように構成されている。さらに、既設下枠42には、延長部分42eの延在縁部から下方に向けて既設見付け板部42fが設けられている。既設見付け板部42fは、延長部分42eの延在縁部から鉛直下方に向けて延在したものである。既設見付け板部42fの下縁には、室内側に向けてほぼ直角に延在した後、鉛直下方に向けてほぼ直角に屈曲した既設シール受け板部42gが連設されている。
【0018】
これらの既設枠41,42,43は、それぞれアンカー部材AKを介して躯体Bの開口部50に取り付けてある。躯体Bの開口部50は、上縁51、下縁52及び左右の側縁53を有した矩形状を成すものである。図からも明らかなように、開口部50の上縁51及び左右の側縁53については、それぞれの既設枠41,42,43よりも室外側となる部分が見込み方向に沿って延在するのに対し、開口部50の下縁52については、既設下枠42よりも室外側となる部分が室外に向けて漸次下方に傾斜した水切り面52aが設けてある。
【0019】
上記のように構成された既設枠体40に対して新設建具を設けて窓装置を構成するには、予め既設枠41,42,43のそれぞれにアルミニウム合金からなる下地材61,62,63を連結する。下地材61,62,63としては、それぞれの既設枠の長手に沿った全長にわたって設けても良いし、適宜間隔を確保した複数位置に設けても良い。新設建具については、新設枠11,12,13を予め四周枠組みして新設枠体10を構成し、この新設枠体10を既設枠体40の内周側に装着する。この状態からそれぞれの新設枠11,12,13を介して下地材61,62,63に取付ネジ70を螺合すれば、既設枠体40を介して新設枠体10を躯体Bに取り付けることが可能となる。新設枠体10を取り付けた後においては、新設網戸30、新設外障子20B及び新設内障子20Aを新設枠体10に順次配設すれば、既設建具が新設建具によって改装されることになる。
【0020】
図5図7は、新設下枠12の取付手順について示したものである。以下、これらの図を参照しながら、既設下枠42に対する新設下枠12の取付構造について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。なお、実際には、上述したように、予め四周枠組みした後の新設枠体10を既設枠体40に装着するであるが、便宜上、新設下枠12を既設下枠42に取り付ける手順のみを示して説明することとする。
【0021】
図5に示すように、新設下枠12を既設下枠42に取り付ける場合には、予め既設外障子レール部42bを切除するとともに、既設内障子レール部42aに対して下地材62の取り付けを行う。既設外障子レール部42bについては、切断工具を適用することにより、既設下枠基板部42dよりも上方に突出する部分のほぼすべてを全長にわたって切除するようにしている。既設下枠42に適用する下地材62は、鉛直方向に沿って延在する既設用連結板部62aと、既設用連結板部62aの上縁部から室外に向けてほぼ直角に屈曲した新設用連結板部62bとを有したものである。この下地材62は、既設内障子レール部42aにおいて室外に臨む面に既設用連結板部62aを重ね合わせた状態で、既設用連結板部62aを介して既設内障子レール部42aに補強ネジ71を螺合することによって既設内障子レール部42aに連結してある。
【0022】
上記のようにして下地材62を取り付けた既設下枠42に対しては、内周側から新設下枠12を配置し、新設下枠12を介して下地材62の新設用連結板部62bに取付ネジ70を螺合することで新設下枠12が連結された状態となる。本実施の形態で適用する新設下枠12は、新設下枠基板部12d、新設下枠基部12e、新設取付板部12f、新設カバー板部12gを有して構成したものである。
【0023】
新設下枠基板部12dは、室外に向けて漸次下方となるようにわずかに傾斜した板状を成すもので、その上面に新設内障子レール部12aを有している。上述した取付ネジ70は、この新設下枠基板部12dにおいて新設内障子レール部12aよりも室外側となる部分から下地材62の新設用連結板部62bに螺合してある。新設下枠基部12eにおいてもっとも室内側となる部分には、上下方向に沿って支持壁部12hが設けてある。
【0024】
新設下枠基部12eは、異形の中空部12jを有するもので、新設下枠基板部12dよりも室外側となる部分に設けてある。より具体的に説明すると、新設下枠基部12eは、内側壁部12e1、第1底壁部12e2、中間壁部12e3、第2底壁部12e4、外側壁部12e5、傾斜壁部12e6及び上壁部12e7によって囲まれる部分に中空部12jが構成されたものである。内側壁部12e1は、新設下枠基板部12dの延在縁部からほぼ鉛直下方に向けて延在するものである。内側壁部12e1の下縁は、既設下枠42の既設下枠基板部42dよりも上方において終端するように形成してある。第1底壁部12e2は、内側壁部12e1の下縁から室外側に向けて延在するもので、室外に向けて漸次下方となるようにわずかに傾斜している。中間壁部12e3は、第1底壁部12e2の延在縁部からほぼ鉛直下方に向けて延在するものである。中間壁部12e3の下縁は、既設網戸レール部42cの上縁とほぼ同じ高さとなるように形成してある。先の第1底壁部12e2は、中間壁部12e3の室内に臨む表面が、既設網戸レール部42c及び既設見付け板部42fの表面に当接可能となるようにその寸法が設定してある。第2底壁部12e4は、中間壁部12e3の下縁から室外に向けてほぼ水平となるように延在したものである。外側壁部12e5は、第2底壁部12e4の延在縁部からほぼ鉛直上方に向けて延在したものである。外側壁部12e5の上縁は、内側壁部12e1の上縁よりもわずかに下方となるように形成してある。上述した新設網戸レール部12cは、外側壁部12e5の上縁から室外に向けてほぼ水平に延在した傾斜延長部分12kの延在縁部から上方に向けて設けられたものである。傾斜壁部12e6は、外側壁部12e5の上縁から室内に向けて漸次上方となるように延在するものである。上壁部12e7は、傾斜壁部12e6の延在縁部から内側壁部12e1の上縁部までの間を連続するものである。上壁部12e7において室内側に位置する縁部は、内側壁部12e1の上縁よりもわずかに下方となるように形成してある。
【0025】
新設取付板部12fは、中間壁部12e3から下方に向けて延長した平板状を成すもので、下縁の位置が既設見付け板部42fの下縁とほぼ一致するように形成してある。この新設取付板部12fは、既設見付け板部42fの室外に臨む見付け面42f1に当接した状態で補助取付ネジ72を螺合することにより、既設下枠42に連結してある。
【0026】
新設カバー板部12gは、外側壁部12e5の下縁部から第2底壁部12e4を延長するように室外に向けてほぼ水平に延在したものである。
【0027】
図2図4に示すように、この新設下枠12には、新設下枠基板部12dの上面や新設下枠基部12eの上面の水を外部に排出するための排水構造が設けてある。具体的な排水構造としては、新設内障子レール部12a及び新設外障子レール部12bの適宜箇所に導水孔12a1,12b1が設けてある。従って、新設下枠基板部12dの上面や新設下枠基部12eの上面にある水は、これらの導水孔12a1,12b1を通じて漸次室外側に案内されることになる。
【0028】
また、新設下枠基部12eには、上壁部12e7の適宜箇所に排水孔12e8が設けてあるとともに、第2底壁部12e4の適宜箇所に水抜き孔12e9が設けてある。従って、新設下枠基部12eの上面にある雨水や結露水等の水は、排水孔12e8を通じて新設下枠基部12eの中空部12jに導入され、中空部12jに貯留した水が水抜き孔12e9を通じて外部に排出されることになる。図には明示していないが、水抜き孔12e9としては、新設下枠12の両端部付近にそれぞれ1カ所ずつ、合計2カ所設けるようにしている。
【0029】
さらに、新設下枠基部12eには、第2底壁部12e4の下面においてそれぞれの水抜き孔12e9に対応する部分に排水弁80が取り付けてある。排水弁80は、上面に連絡口81aを有するとともに、一方の側面に排水口81bを有した弁本体81と、弁本体81の排水口81bを開閉する板状の弁体82とを備えて構成した逆止弁であり、連絡口81aから排水口81bに向けてのみ水の通過を許容するように構成してある。すなわち、弁体82が上縁部を支点として下縁部が室外側に向けて回転した場合に、排水口81bが開口し、中空部12jに貯留された水が室外に排出されることになる。この排水弁80は、連絡口81aを第2底壁部12e4に設けた水抜き孔12e9に合致させるとともに、排水口81bが室外に向いた状態で弁本体81を介して第2底壁部12e4の下面から突出するように取り付けてある。図からも明らかなように、排水弁80は、弁本体81においてもっとも室外に位置する部分が、新設カバー板部12gの延在縁部よりも室内側となるように設けてある。
【0030】
上記のように構成した新設建具によれば、新設下枠基部12eにおいてもっとも下方となる第2底壁部12e4の下面に排水弁80を設けているため、排水孔12e8を設けた上壁部12e7の上面からの水頭差H1を大きく確保することができる。従って、台風や暴風雨等のように室外の圧力が高い状況下であっても排水を良好に行うことが可能となる。しかも、第2底壁部12e4の下面に配設した排水弁80は、室外に突出しないため外部から視認し難く、新設建具の外観品質を損なうおそれがなくなるばかりか、外力の影響も受け難くなる。この結果、排水弁80が新設下枠基部12eから脱落したり、損傷を来すおそれがなくなり、上述の排水性を確保して窓装置の水密性を向上させることが可能となる。加えて、排水弁80としては、第2底壁部12e4の下面から突出する構成となるものの、全長に連続して設けたものではない。従って、排水弁80を取り付けた状態で新設下枠12を既設下枠42に連結する場合にも、補助取付ネジ72を螺合する作業が邪魔されることがなく、取付作業が煩雑化する事態を招来するおそれがない。
【0031】
なお、上述した実施の形態では、改装用の建具について例示しているが、必ずしもこれに限定されず、躯体を被取付体として新規に設けられる建具にも適用することが可能である。この場合、必ずしもビルを対象とした建具である必要もなく、一般の住宅を対象としたものであってももちろん良い。また、建具として引き違い窓を例示しているが、その他の建具であっても構わない。下枠12の詳細構成についても実施の形態のものに限らず、中空部が設けられた下枠基部及び取付板部を有していれば、その他の形状のものであっても良く、新設カバー板部12gが設けられている必要もない。さらに、下枠12の両端部にのみ排水弁80を設けるようにしているが、排水弁80を設ける数や位置についてはこれらに限定されない。またさらに、弁本体81において室外に臨む側面に排水口81bを有した排水弁80を適用しているが、弁本体の下面に排水口を有した排水弁を適用しても良い。
【0032】
以上のように、本発明に係る建具は、中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が被取付体の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠を備えた建具であって、前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に、前記中空部に連通する排水弁が下方に突出する状態で設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下枠基部の下面に排水弁を設けているため、下枠基部の上面からの水頭差を確保することができ、室外の圧力が高い状況下であっても排水を良好に行うことが可能となる。しかも、下枠基部の下面に配設した排水弁は、外観品質を損なうおそれがなくなるばかりか、外力の影響も受け難くなる。この結果、下枠基部から脱落したり、損傷を来すおそれがなくなり、上述の排水性を確保して建具の水密性を向上させることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記排水弁は、前記下枠基部においてもっとも室外に配置される部分よりも室内側に位置するように前記下枠基部に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、排水弁が下枠基部よりも室外に突出しないため、外観品質の点及び外力の影響を受け難くなる点で、より有利となる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠基部には、前記排水弁が設けられる下面を室外に延長するようにカバー板部が突出して設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、突出したカバー板部によって排水弁の斜め上方域がカバーされるため、外観品質の点及び外力の影響を受け難くなる点で、より有利となる。
【0035】
また本発明に係る窓装置は、躯体に支持された既設下枠と、中空部が設けられた下枠基部を有するとともに、前記下枠基部の下面から下方に向けて延在した取付板部を有し、前記取付板部が前記既設下枠の見付け面に重ねられた状態で設置される下枠とを備えた窓装置であって、前記下枠には、前記下枠基部の下面において前記取付板部よりも室外に配置される部分に、前記中空部に連通する排水弁が下方に突出する状態で設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、既設下枠が設けられた躯体に改装用として下枠を設ける場合においても、下枠基部の下面に排水弁を設けているため、下枠基部の上面からの水頭差を確保することができ、室外の圧力が高い状況下であっても排水を良好に行うことが可能となる。しかも、下枠基部の下面に配設した排水弁は、外観品質を損なうおそれがなくなるばかりか、外力の影響も受け難くなる。この結果、下枠基部から脱落したり、損傷を来すおそれがなくなり、上述の排水性を確保して建具の水密性を向上させることが可能となる。
【0036】
また本発明は、上述した窓装置において、前記躯体において前記排水弁の下方となる部分には、室外に向けて漸次下方となるように傾斜した水切り面が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下枠基部の下面と躯体の水切り面との隙間を利用して排水弁を配置することができる。
【符号の説明】
【0037】
12 新設下枠、12e 新設下枠基部、12f 新設取付板部、12g 新設カバー板部、12j 中空部、42 既設下枠、52a 水切り面、80 排水弁、B 躯体
図1
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図7