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特許7385533音響受信装置、プログラムおよび音響受信装置における音響信号受信方法
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  • 特許-音響受信装置、プログラムおよび音響受信装置における音響信号受信方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】音響受信装置、プログラムおよび音響受信装置における音響信号受信方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/018 20130101AFI20231115BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G10L19/018
H04B11/00 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020104839
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021196564
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【弁理士】
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】東 啓
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-005377(JP,A)
【文献】特表2017-515429(JP,A)
【文献】特開2010-233164(JP,A)
【文献】特開2018-164247(JP,A)
【文献】特開2014-032364(JP,A)
【文献】特開2003-115996(JP,A)
【文献】特開昭62-008646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 19/00-19/26
H04B 11/00
H04L 1/00-1/24,12/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置であって、
収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部と、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部と、
前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行うデコード部とを備え、
前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わず、
前記判定部は、前記音響信号における前記埋込情報の有無を更に判定し、
前記抽出部は、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記埋込情報がないと判定されたときから所定の待機時間に亘り前記抽出処理を行わずに待機し、前記待機時間が経過すると、前記抽出処理を再開する音響受信装置。
【請求項2】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置であって、
収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部と、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部と、
前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行うデコード部と
制御部とを備え、
前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わず、
前記制御部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード部によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報を出力部に出力させ、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記出力部に提供情報なしの旨を出力させる音響受信装置。
【請求項3】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置であって、
収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部と、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部と、
前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行うデコード部とを備え、
前記音響信号には同じ識別情報がエンコードされた前記埋込情報が複数回連続して埋め込まれ、
前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わず、
前記デコード処理を行った場合は、デコードに成功する度に、前記埋込情報が連続する前記複数回に応じた第1待機時間の間はデコードを行わず待機する音響受信装置。
【請求項4】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置であって、
収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部と、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部と、
前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行うデコード部とを備え、
前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わず、
前記判定部により前記検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、前記音量検出部は、第2待機時間の間、前記検出音量の検出を行わず待機する音響受信装置。
【請求項5】
前記音量検出部は、前記音響信号の単位時間当たりの平均音量を算出し、
前記判定部は、前記平均音量と前記閾値とを比較して判定を行う請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項6】
前記抽出部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は前記抽出処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は前記抽出処理を行わない請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記音響信号における前記埋込情報の有無を更に判定し、
前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記デコード処理を行わない請求項2~請求項6のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記抽出部による抽出処理結果、または前記デコード部によるデコード処理結果に基づいて前記埋込情報の有無を判定する請求項1又は請求項7に記載の音響受信装置。
【請求項9】
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード部によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報を出力部に出力させ、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記出力部に提供情報なしの旨を出力させる制御部を備える請求項1、請求項3、請求項4のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項10】
前記音響信号には同じ識別情報がエンコードされた前記埋込情報が複数回連続して埋め込まれ、
前記デコード部は、デコードに成功する度に、前記埋込情報が連続する前記複数回に応じた第1待機時間の間はデコードを行わず待機する請求項1、請求項2、請求項4のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項11】
前記判定部により前記検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、前記音量検出部は、第2待機時間の間、前記検出音量の検出を行わず待機する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の音響受信装置。
【請求項12】
バッテリを有する携帯端末に備えられ、
前記バッテリの残量を検出する制御部を備え、
前記制御部は、前記バッテリの残量が第1残量のときよりも、当該第1残量よりも残量が少ない第2残量のときの方が、前記第2待機時間をより長い時間に設定する請求項4に記載の音響受信装置。
【請求項13】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置が備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定するとともに、前記音響信号における前記埋込情報の有無を判定する判定部、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部であって、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記埋込情報がないと判定されたときから所定の待機時間に亘り前記抽出処理を行わずに待機し、前記待機時間が経過すると、前記抽出処理を再開する前記抽出部
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコード部、として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置が備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコード部、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード部によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報を出力部に出力させ、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記出力部に提供情報なしの旨を出力させる制御部、として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置が備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコード部であって、前記デコード処理を行った場合は、デコードに成功する度に、前記音響信号に同じ識別情報がエンコードされた前記埋込情報が複数回連続して埋め込まれた前記複数回に応じた第1待機時間の間はデコードを行わず待機する前記デコード部、として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置が備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータを、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部、
前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコード部、
前記判定部により前記検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、第2待機時間の間、前記検出音量の検出を行わず待機する前記音量検出部、として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置における音響信号受信方法であって、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出ステップと、
前記音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出ステップと、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコードステップと
前記音響信号における前記埋込情報の有無を判定する第2判定ステップとを備え、
前記抽出ステップでは、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記埋込情報がないと判定されたときから所定の待機時間に亘り前記抽出処理を行わずに待機し、前記待機時間が経過すると、前記抽出処理を再開する音響受信装置における音響信号受信方法。
【請求項18】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置における音響信号受信方法であって、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出ステップと、
前記音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出ステップと、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコードステップと
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報を出力部に出力させ、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記出力部に提供情報なしの旨を出力させる出力ステップとを備える音響受信装置における音響信号受信方法。
【請求項19】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置における音響信号受信方法であって、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出ステップと、
前記音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出ステップと、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコードステップとを備え
前記音響信号には同じ識別情報がエンコードされた前記埋込情報が複数回連続して埋め込まれ、
前記デコードステップでは、前記デコード処理を行った場合は、デコードに成功する度に、前記埋込情報が連続する前記複数回に応じた第1待機時間の間はデコードを行わず待機する音響受信装置における音響信号受信方法。
【請求項20】
埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置における音響信号受信方法であって、
前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出ステップと、
前記音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、
前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出ステップと、
前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコードステップとを備え
前記音量検出ステップでは、前記検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、第2待機時間の間、前記検出音量の検出を行わず待機する音響受信装置における音響信号受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波などの音響信号に埋め込んで情報を受信する音響受信装置、プログラムおよび音響受信装置における音響信号受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響通信システムとして、特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の音響通信システムは、識別情報を音電子透かし技術により埋め込んだ音響信号を放音する音響信号送信装置と、この放音された音響信号をマイクロホンで収音(受信)する音響受信装置(携帯端末)とを備える。音響受信装置は、音響信号から識別情報を抽出してその識別情報に対応付けられた関連情報を、表示部や放音部に出力することで、利用者に提供する。音響信号送信装置が送信する音響信号には識別情報がエンコードされた埋込情報が埋め込まれている。このため、音響受信装置は、受信した音響信号から抽出した埋込情報を識別情報にデコードするデコード部を備える。音響受信装置は、例えば、スマートフォンやタブレット等の携帯端末に内蔵して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-153906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、音響受信装置が受信した音響信号の音量が小さい場合、受信エラーが繰り返し発生する。この場合、音響受信装置内のデコード部は、音響信号を受信している限り、デコード処理を繰り返し行う。このようにデコード部は、デコード処理が成功する保証もないままデコード処理を繰り返す。このため、携帯端末のバッテリの電力を無駄に消費させるという課題がある。また、音響受信装置が商用電源から電力の供給を受ける構成である場合は、消費電力が多くなるという課題がある。
【0005】
そこで、デコード処理を行うか否かの適正化によって消費電力を抑制できる音響受信装置、プログラムおよび音響受信装置における音響信号受信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)上記課題を解決する音響受信装置は、埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置であって、収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部と、前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部と、前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部と、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行うデコード部とを備え、前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わない。
【0007】
この構成によれば、収音部が収音した音響信号の検出音量が閾値以下である場合、デコード部はデコード処理を行わない。すなわち、音響信号がない場合や音響信号の音量が過度に小さくデコード処理を行っても失敗する可能性が高い場合は、無駄なデコード処理は行われない。よって、携音響受信装置の電力消費を低減できる。したがって、デコード処理を行うか否かの適正化によって音響受信装置の消費電力を抑制できる。
【0008】
(2)上記音響受信装置において、前記音量検出部は、前記音響信号の単位時間当たりの平均音量を算出し、前記判定部は、前記平均音量と前記閾値とを比較して判定を行ってもよい。
【0009】
この構成によれば、判定部は平均音量と閾値とを比較して判定する。このため、音響信号に含まれる音声中の言葉の息継ぎや音響ノイズが原因で一瞬小さな音量の部分があっても、単位時間当たりの平均音量を用いることで、音響信号がデコードしても問題のない適切な音量であるか否かを適切に判定することができる。
【0010】
(3)上記音響受信装置において、前記抽出部は、前記検出音量が前記閾値を超える場合は前記抽出処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は前記抽出処理を行わなくてもよい。
【0011】
この構成によれば、収音部が収音した音響信号の検出音量が閾値以下であるときは、デコード処理に加え抽出処理も行わない。すなわち、音響信号がない場合や音響信号の音量が過度に小さくデコード処理に失敗する可能性が高い場合は、デコード処理に加え抽出処理も行われない。よって、音響受信装置の電力消費を一層低減できる。
【0012】
(4)上記音響受信装置において、前記判定部は、前記音響信号における前記埋込情報の有無を更に判定し、前記デコード部は、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記デコード処理を行わなくてもよい。
【0013】
この構成によれば、判定部は、音響信号における埋込情報の有無を判定する。埋込情報がなければ、検出音量が閾値を超えていてもデコード処理は行われない。すなわち、音響信号に埋込情報が埋め込まれていない場合は、無駄なデコード処理は行われない。よって、音響受信装置の電力消費を低減できる。したがって、デコード処理を行うか否かの適正化によって音響受信装置の消費電力を抑制できる。
【0014】
(5)上記音響受信装置において、前記判定部は、前記抽出部による抽出処理結果、または前記デコード部によるデコード処理結果に基づいて前記埋込情報の有無を判定してもよい。
【0015】
この構成によれば、抽出部による抽出処理結果、またはデコード部によるデコード処理結果を利用して埋込情報の有無を判定するので、埋込情報の有無を検出する処理部を別途設ける必要がないうえ、埋込情報の有無を正確に判定できる。よって、埋込情報があるにも関わらずデコード処理しなかったり、反対に、埋込情報がないにも関わらずデコード処理したりする不具合が減少する。よって、音響受信装置の電力消費を適切に低減できる。
【0016】
(6)上記音響受信装置において、前記抽出部は、前記検出音量が前記閾値を超えても前記埋込情報がないと判定された場合は、前記抽出処理を行わず待機してもよい。
この構成によれば、検出音量が閾値を超えても埋込情報がないと判定された場合は、デコード部がデコード処理を行わず待機するとともに、抽出部が抽出処理を行わず待機する。よって、音響受信装置の電力消費を一層低減できる。
【0017】
(7)上記音響受信装置において、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記デコード部によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報を出力部に出力させ、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記出力部に提供情報なしの旨を出力させる制御部を備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、検出音量が閾値を超える場合は、デコード部によるデコードで得られた識別情報に対応する提供情報が出力部に出力される。一方、検出音量が閾値以下である場合は、デコード部によるデコードが行われず、出力部には提供情報なしの旨が出力される。利用者に有益な提供情報を適切に提供できるうえ、デコードの失敗に起因する不適切な提供情報が提供されるエラーを低減できる。よって、音響受信装置の電力消費を適切に低減できるうえ、利用者に有益な提供情報を適切に提供することができる。
【0019】
(8)上記音響受信装置では、前記音響信号には同じ識別情報がエンコードされた前記埋込情報が複数回連続して埋め込まれ、前記デコード部は、デコードに成功する度に、前記埋込情報が連続する前記複数回に応じた第1待機時間の間はデコードを行わず待機してもよい。
【0020】
この構成によれば、所定の待機時間の間は、収音部が音響信号を受信しても少なくともデコードは行われないので、バッテリの消費電力を一層低減できる。この場合、音量が閾値を超える場合、埋込情報が連続する複数回のうち1回目の埋込情報のデコードに成功すれば、その後、残りの繰り返し回数の間は、埋込情報が同じ識別情報にデコードされるので、その間、デコードを行わず待機することで、無駄なデコードの回数を低減できる。なお、複数回に応じた所定の待機時間とは、複数回に相当する待機時間に限らず、複数回よりも1回又は2回少ない回数に相当する待機時間でもよい。
【0021】
(9)上記音響受信装置では、前記判定部により前記検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、前記音量検出部は、第2待機時間の間、前記検出音量の検出を行わず待機してもよい。
【0022】
この構成によれば、検出音量が前記閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、第2待機時間の間、検出音量の検出を行わない。携帯端末を携帯する利用者の周囲の騒音等で埋込情報を正しくデコードできない場合に、デコードを行わないだけでなく、無駄な検出音量の検出及び判定も行われない。よって、携帯端末のバッテリの消費電力を一層低減できる。
【0023】
(10)上記音響受信装置は、バッテリを有する携帯端末に備えられ、前記バッテリの残量を検出する制御部を備え、前記制御部は、前記バッテリの残量が第1残量のときよりも、当該第1残量よりも残量が少ない第2残量のときの方が、前記第2待機時間をより長い時間に設定してもよい。
【0024】
この構成によれば、携帯端末のバッテリの残量が少ないときほど、第2待機時間が長く設定され、バッテリの消費電力を少なくすることができる。
(11)上記課題を解決するプログラムは、埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置が備えるコンピュータに実行させるプログラムであって、プログラムは、コンピュータを、前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出部、前記音量検出部が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部、前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出部、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコード部、として機能させる。よって、プログラムをコンピュータに実行させることで、デコード処理を行うか否かの適正化によって音響受信装置の消費電力を抑制できる。
【0025】
(12)上記課題を解決する音響受信装置における音響信号受信方法は、埋込情報が埋め込まれた音響信号を収音部で収音する音響受信装置における音響信号受信方法であって、前記収音部が収音した前記音響信号の音量を検出する音量検出ステップと、前記音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定ステップと、前記音響信号から前記埋込情報を抽出する抽出処理を行う抽出ステップと、前記検出音量が前記閾値を超える場合は、前記埋込情報を識別情報にデコードするデコード処理を行い、前記検出音量が前記閾値以下である場合は、前記デコード処理を行わないデコードステップとを備える。よって、デコード処理を行うか否かの適正化によって音響受信装置の消費電力を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、埋込情報をデコードするか否かの適正化によって音響受信装置の消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態における音響通信システムを示す模式図。
図2】音響通信システムを示す模式図。
図3】音響通信システムの構成を示すブロック図。
図4】エコー拡散法を説明するグラフ。
図5】音響信号受信処理を示すフローチャート。
図6】第2実施形態における音響受信装置の構成を示すブロック図。
図7】音響信号受信処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の音響通信システム10について図1図5を参照して説明する。
図1に示されるように、音響通信システム10は、1つまたは複数の放音部の一例としてのスピーカ12を有する音響送信装置20と、スピーカ12から放音された音響信号ASを受信する携帯端末15に内蔵された音響受信装置30とを備える。音響信号ASには、埋込情報SC(図2参照)が埋め込まれている。利用者は可搬型の携帯端末15を携帯して移動する。携帯端末15に内蔵された音響受信装置30が、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCを受信する。例えば、利用者は、携帯端末15の音響受信装置30によって、駅や商店街、公共施設などの放送主体のスピーカ12から放送される音響信号ASを受信する。携帯端末15は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等である。音響受信装置30は、音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCに基づいて、放送主体が提供する提供情報を取得する。このようにして、音響受信装置30を利用する利用者は、放送主体が提供する提供情報を受け取ることができる。
【0029】
放送主体は、例えば、音響信号ASを放送する者もしくは事業者であり、または、音響信号ASの放送を依頼する者もしくは事業者である。放送主体は、音響信号ASを自ら形成する者または事業者であってもよい。放送主体は、音響信号ASを自ら形成する者または事業者でなくてもよい。例えば、放送主体は、店舗を運営する事業者、鉄道等の公共交通機関を運営する事業者、学校等を含む学習施設の事業者または団体、美術館や展示会を運営する事業者、プール等のレジャー施設を運営する事業者、宿泊施設を運営する事業者、災害警報を放送する自治体等である。
【0030】
提供情報は、放送主体が利用者に提供する情報である。提供情報の保存場所は限定されない。一例では、提供情報は、インターネットIN上のサーバに記憶される。他の例では、提供情報は、音響受信装置30に記憶される。提供情報の例を次に挙げる。放送主体が店舗を運営する事業者の場合、提供情報は、店舗内の商品の詳細内容である。放送主体が自治体である場合、提供情報は、災害時に避難する場所を示す地図である。放送主体が展示を運営する事業者である場合、提供情報は、展示品の詳細を示す情報である。提供情報は、音響信号ASとして放送されたアナウンスを他言語に翻訳したアナウンスであってもよい。放送主体が映画館である場合、提供情報は、映画の台詞の字幕文であってもよい。提供情報は、詳細な情報が保存されている場所を示すリンク情報(例えば、URL:Uniform Resource Locator)であってもよい。本実施形態では、提供情報は、インターネットIN上のURLとして提供される。提供情報は、携帯端末15の表示部17に表示されてもよいし、携帯端末15のイヤホンジャックに接続されたヘッドホンまたはイヤホンから放音されたり、あるいは携帯端末15のスピーカから放音されたりしてもよい。
【0031】
音響信号ASは、可聴域の周波数を含む音波である。音響信号ASには、埋込情報SCが音電子透かしによって埋め込められる。音響信号ASは、放送装置11から放送される。音響信号ASの例として、アナウンス、警報、一般用または視力障害者用の音サイン、BGM(バックグラウンドミュージック)、美術館や展示会において出力される説明の音声、番組の放送が挙げられる。音電子透かしで埋め込まれる1つの埋込情報SCのデータ長は、例えば、8ビット程度である。また、音響信号ASは、伝播される距離、放音される音量、障害物の有無、携帯端末15を携帯する利用者の周辺の騒音などの種々の原因により、音響信号ASに音響ノイズが乗ったり音響信号ASの音量が過度に小さくなったりする。この場合、携帯端末15が音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCを受信できない可能性が高くなる。そのため、音響送信装置20は、音響受信装置30が埋込情報SCを一度受信に失敗しても次回受信できるように、同じ埋込情報SCを複数回ずつ繰り返し放音する。
【0032】
図2に示されるように、音響送信装置20は、装置本体20Aと、装置本体20Aに接続されたスピーカ12とを備える。音響送信装置20は、原音信号OS(図3参照)に埋込情報SCを埋め込むことによりデジタル信号である音響信号Sasを生成するとともに、スピーカ12から音響信号Sasに基づく音響信号ASを放音する。音響信号ASは、音声または音楽よりなる原音信号OSと、原音信号OS中の1つの原音に対して1つずつ埋め込まれた複数の埋込情報SCにより構成される。
【0033】
携帯端末15は、音響受信装置30を内蔵する。音響受信装置30は、携帯端末15にインストールされたアプリケーション(ソフトウェア)及びアプリケーションを実行するCPU(図示略)により構成される。携帯端末15は、収音部の一例としてのマイクロホン31を備える。携帯端末15は、マイクロホン31によって音響信号ASを収音する。また、音響受信装置30は、マイクロホン31が収音した音響信号ASを電気信号として取り込んでその電気信号よりなる音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。音響受信装置30は、埋込情報SCを識別情報IDに復元する。音響受信装置30は、識別情報IDに対応する提供情報を携帯端末15に出力する。この結果、利用者は、携帯端末15の表示部17(図3参照)に表示された提供情報を見たり、あるいは携帯端末15のイヤホンジャックに接続されたヘッドホンやイヤホンあるいはスピーカ(いずれも図示略)から出力された提供情報を聴くことができる。
【0034】
次に、図3を参照して、音響送信装置20と音響受信装置30の構成について説明する。なお、本実施形態では、空間を伝送される音波による音信号と電気信号とを区別するため、音波を音響信号AS、電気信号を音響信号Sasと表記する。また、原音信号OSは、電気信号である。また、埋込情報SCは、音響信号ASに埋め込まれたものは音波であり、音響信号Sasに埋め込まれたものは電気信号である。
【0035】
音響送信装置20は、原音信号OSに識別情報IDを音電子透かし技術で埋め込んでスピーカ12から音響信号ASとして放音する。識別情報IDは、音響信号ASに、埋込情報SCとして埋め込まれる。音響送信装置20は、音響信号ASを音波として出力するスピーカ12を備えた放送装置11に内蔵されてもよい。一方、音響受信装置30は、スマートフォン等の携帯端末15に内蔵されている。音響受信装置30は、マイクロホン31により収音した音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。この音響受信装置30は、携帯端末15に内蔵される装置として構成されるが、携帯端末15そのものであってもよい。
【0036】
まず、図3を参照して、音響送信装置20の詳細な構成を説明する。
音響送信装置20は、原音信号OSを入力する第1入力部21と、識別情報IDを入力する第2入力部22とを備える。この音響送信装置20は、音響送信装置20を統括的に制御する第1制御部23を備える。また、音響送信装置20は、拡散符号発生器26と、エンコード部27と、原音信号OSに埋込情報SCを畳み込む機能を有する埋込部28と、増幅器等を含む送信部29とを備える。
【0037】
また、拡散符号発生器26は、拡散符号を発生させる。拡散符号は、どのような符号であってもよい。例えば、拡散符号として、PN系列が用いられる。PN系列とは、Pseudo-Noise Sequence:疑似雑音系列と呼ばれる系列である。
【0038】
エンコード部27は、識別情報IDを埋込情報SCに符号化(エンコード)する。識別情報IDが符号化された埋込情報SCは、例えば8ビットの情報である。
埋込部28は、埋込情報SCを原音信号OSに畳み込むことで、埋込情報SCを音響信号ASに埋め込む。原音信号OSは、例えば、アナウンス等の音声信号やBGM等の音楽信号である。本例の原音信号OSは、埋込情報SCを埋め込む伝送媒体(搬送波)として機能する。また、本例の原音信号OSは可聴域の周波数を有する。なお、原音信号OSは非可聴域の周波数を有してもよい。
【0039】
埋込部28が、埋込情報SCを原音信号OSに畳み込んで埋め込む方式は、エコー拡散方式またはスペクトラム拡散方式である。埋込方式は、他の方式であってもよい。なお、PN系列の拡散符号が秘密鍵として機能する拡散方式を採用することが、埋込情報SCの秘匿性を高める点で好ましい。
【0040】
音響送信装置20は、CPUおよびメモリ等が実装された電子基板を備える。メモリには、音響信号生成処理用のプログラムが記憶されている。CPUがメモリから読み出したプログラムを実行することで、音響送信装置20内でソフトウェアよりなる各部23,26~28が構成される。つまり、音響送信装置20内のメモリに記憶されたプログラムは、コンピュータを、各部23,26~28として機能させる。なお、各部23,26~28は、ソフトウェアとハードウェアとにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0041】
次に、図3を参照して、音響受信装置30を内蔵する携帯端末15について説明する。
携帯端末15は、音響信号ASを収音する収音部の一例として機能するマイクロホン31と、利用者により操作される操作部16と、提供情報等を出力する出力部の一例としての表示部17と、バッテリBTと、携帯端末として機能する各種機能部とを備える。各種機能部には、電話機能部、メール機能部、インターネット通信機能部、GPS機能部などが含まれる。
【0042】
音響受信装置30は、音響受信装置30を統括的に制御する第2制御部32を備える。また、音響受信装置30は、マイクロホン31が収音した音響信号ASを電気信号である音響信号Sasに変換する、増幅器等を含む受信部33を備える。
【0043】
音響受信装置30は、受信部33から出力された音響信号Sasの音量を検出する音量検出部34と、音量検出部34が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部35とを備える。また、音響受信装置30は、受信部33から入力した音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する抽出部36と、抽出部36により音響信号Sasから抽出された埋込情報SCを識別情報IDにデコードするデコード部37とを備える。さらに、音響受信装置30は、参照テーブルDTを含む必要なデータ及び設定値を記憶するメモリ38と、表示部17に提供情報等を表示させる処理を行う表示処理部39とを備える。設定値には、判定用の閾値、後述する設定回数、第1待機時間T1及び第2待機時間T2などが含まれる。
【0044】
受信部33から出力される音響信号Sasは、音量検出部34と抽出部36とに入力される。音量検出部34は、マイクロホン31が収音した音響信号ASの音量を検出する。詳しくは、音量検出部34は、受信部33から入力した音響信号Sasに基づいて音響信号Sasの単位時間当たりの音量の平均レベルを算出することで、マイクロホン31が収音する音響信号ASの平均音量を検出する。判定部35は、音量検出部34が検出した検出音量の一例である平均音量が閾値を超えるか否かを判定する。ここで、閾値には、埋込情報SCを識別情報IDに正しくデコードできないとみなされる所定値以下の音量のうちの上限値が設定される。本例では、音響信号Sasの平均音量を判定することで、音響信号Sas中の原音の音量に対して一定比率の音量で埋め込まれた埋込情報SCの音量が正しくデコードできる音量であるか否かを間接的に判定する。
【0045】
ここで、閾値は、節電と提供情報の利用の観点から適宜な値に設定できる。例えば、閾値は、正しくデコードできない確率が100%になる場合にデコードしない選択が可能な値に設定されてもよい。また、閾値は、正しくデコードできない確率が50%以上となる場合にデコードしない選択が可能な値に設定されてもよい。
【0046】
判定部35は、音響信号Sasの平均音量が閾値を超えると、抽出部36及びデコード部37を起動させる。一方、判定部35は、音響信号Sasの平均音量が閾値を超えない場合は、抽出部36及びデコード部37を起動させない。詳しくは、判定部35は、平均音量が閾値を超えると、判定値「1」を抽出部36及びデコード部37に出力する。一方、判定部35は、平均音量が閾値を超えない場合は、判定値「0」を抽出部36及びデコード部37に出力する。
【0047】
抽出部36は、判定値「1」を入力すると起動し、判定値「0」を入力したときは起動しない又は起動を停止する。また、デコード部37は、判定値「1」を入力すると起動し、判定値「0」を入力したときは起動しない又は起動を停止する。こうして、抽出部36が起動するときはデコード部37も起動し、一方、抽出部36が起動しないときはデコード部37も起動しない。このため、音響受信装置30の起動中は、音量検出部34及び判定部35は起動するものの、平均音量が閾値以下である音響信号Sasを受信している間は、抽出部36及びデコード部37は起動しない。そして、音響受信装置30の起動中に、平均音量が閾値を超える音響信号Sasを受信する場合に限り、抽出部36及びデコード部37は起動する。
【0048】
抽出部36は、音響通信システム10が埋込情報SCの埋込方法として採用する拡散法に応じた方法で、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。埋込方法がエコー拡散法である場合、抽出部36は、原音信号OSに含まれる原音のエコーとして時間軸に拡散された埋込情報SCを、音響信号Sasから抽出する。詳しくは、抽出部36は、音響信号Sasに対してケプストラム変換を行うことで、取り出される複数のピークの時間間隔から決まる二値「0」「1」の列よりなる埋込情報SCを抽出する。また、埋込方法がスペクトラム拡散法である場合、抽出部36は、原音信号OSに含まれる原音にスペクトラム拡散された埋込情報SCを復調することで、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。また、埋込方法が他の方法である場合、抽出部36は、他の方法に応じた抽出法によって音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。なお、エコー拡散法の詳細については後述する。
【0049】
デコード部37は、埋込情報SCを識別情報IDに復号する。デコード部37は、音響送信装置20のエンコード部27で採用する拡散符号を用いて拡散に対して逆拡散を行うことで、埋込情報SCを識別情報IDに復号する。詳しくは、デコード部37は、拡散符号を用いて、埋込部28が拡散させたPN系列と同じPN系列との相互相関をとることで、埋込情報SCを符号化前の識別情報IDに復号する。デコード部37は、復号した識別情報IDを第2制御部32へ送る。
【0050】
音響受信装置30は、CPUおよびメモリ38等が実装された電子基板を備える。メモリ38には、音響信号受信処理用のプログラム(図5参照)が記憶されている。CPUはメモリ38から読み出したプログラムを実行することで、音響受信装置30内のソフトウェアよりなる各部32~37,39として機能する。つまり、音響受信装置30内のメモリ38に記憶されたプログラムは、コンピュータを、各部32~37,39として機能させる。詳しくは、音響受信装置30内のメモリ38に記憶されたプログラムは、コンピュータを、第2制御部32、音量検出部34、判定部35、抽出部36、デコード部37及び表示処理部39として機能させる。なお、各部32~37,39のうち受信部33と表示処理部39のうち一方又は両方は、携帯端末15が備えるハードウェアであってもよい。さらに、各部32,34~37は、ソフトウェアとハードウェアとにより構成されてもよいし、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0051】
次に、図4を参照して、埋込情報SCを音響信号Sasに埋め込む埋込方法についてエコー拡散法を例にして説明する。図4は、エコー拡散法による原音とエコーカーネルとを示す。原音が「1」に対してオフセット時間を空けたオフセット時刻から時間軸を複数の時間フレームに区切り、複数の時間フレームにPN系列を用いて「0」「1」の二値のそれぞれに対応する異なる時間差の位置に複数のピークが位置する。αは、拡散長Lのときの埋込強度である。つまり、αは、エコーを形成するPN系列の振幅である。エコー拡散法では、エコー法における単発エコーの埋込強度に対して埋込強度αを1/Lにしても同等の検出精度が確保される。電子透かしの埋込処理は、埋込部28が原信号とエコーカーネルとを畳み込むことにより行われる。また、検出時は、抽出部36が、原信号に埋め込まれた埋込情報SCの信号に対してケプストラム変換を行う。一方、スペクトラム拡散法を採用する場合、埋込部28は、変調前の搬送波に対して数10倍の占有帯域にPN系列を用いて拡散させる。検出時は、抽出部36が逆拡散を行って埋込情報SCを取り出す。ここで、原音の単位強度「1」は、音響信号Sas中の原音の音量に相当し、埋込強度αは、埋込情報SCの信号成分の音量に相当する。そして、原音の音量に対して一定比率αの音量で埋込情報SCは原音信号OSに埋め込まれる。
【0052】
次に、音響通信システム10の作用について説明する。
携帯端末15を携帯した利用者は、駅や商店街を移動したり、美術館や博物館、映画館の館内で鑑賞したり、競技場や会議場等の施設内で観戦や視聴したりする。利用者は、携帯端末15の電源オン状態の下で操作部16を操作して音響受信装置30を起動させる。利用者が移動するエリアや鑑賞する施設内には、放送主体の放送装置11のスピーカ12から音響信号ASが放音される。携帯端末15は、音響信号ASをマイクロホン31で収音する。音響受信装置30は、受信した音響信号ASに埋め込まれた埋込情報SCに対応する提供情報を携帯端末15に出力することで、利用者に提供情報を提供する。
【0053】
携帯端末15の電源オン中に音響受信装置30が起動されているとき、携帯端末15のCPUは、図5に示される音響信号受信処理ルーチンのプログラムを実行する。音響送信装置20のスピーカ12から音響信号ASが放音されると、電源オン中の携帯端末15のマイクロホン31が音響信号ASを収音する。受信部33は、マイクロホン31から音響信号Sasを増幅等して音量検出部34及び抽出部36へ出力する。抽出部36及びデコード部37は、音響受信装置30の起動中も判定部35から入力する判定値が「0」であるうちは起動しない。起動していない抽出部36は、音響信号Sasを受け付けない。
【0054】
以下、図5を参照して、携帯端末15のCPUがプログラムを実行することで駆動される音響受信装置30の動作について説明する。プログラムは、携帯端末15にインストールされ、CPU(コンピュータ)を、音響受信装置30を構成する各部32~39として機能させるアプリケーションに相当する。CPUは、プログラムを所定の単位時間(例えば数ミリ秒~数10ミリ秒の範囲内の時間)ごとに実行する。
【0055】
まずステップS11において、CPUは、音響信号Sasを受信したか否かを判定する。すなわち、CPUは、受信部33が音響信号Sasを入力したか否かを判定する。音響信号Sasを受信していなければそのまま待機し、音響信号Sasを受信すればステップS12に進む。
【0056】
次のステップS12において、CPUは、待機時間を経過したか否かを判定する。ここで、待機時間には、前回以前の処理でステップS14の判定結果が肯定判定である場合に設定される第1待機時間T1と、前回以前の処理でステップS14の判定結果が否定判定である連続回数が設定回数に達した場合に設定される第2待機時間T2とが含まれる。第1待機時間T1は、音響信号ASに同じ識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが繰り返し埋め込まれた複数回に相当する時間に設定される。第1待機時間T1は、例えば、0.1~2秒の範囲内の時間に設定される。また、第2待機時間T2は、検出音量が閾値以下になった連続回数が設定回数に達したときに設定され、その後、暫くの間は、音響信号ASが、検出音量が閾値を超える音量に復帰する見込みがない場合に設定される。例えば、利用者が携帯する携帯端末15の位置が、放送装置11のスピーカ12から遠い場合、検出音量が閾値以下になる連続回数が設定回数に達する場合がある。一方、スピーカ12と携帯端末15との間に一時的に障害物が存在したり、一時的な音響ノイズが音響信号ASに乗ったりした場合は、検出音量が閾値以下になる回数が1回で終わるなど連続回数が設定回数には達しない場合がある。この場合は、第2待機時間T2が設定されない。このため、次回もステップS12で肯定判定がなされる。CPUは、待機時間を経過していればステップS13に進み、待機時間を経過していなければ当該ルーチンを終了する。なお、待機時間の経過を待機する待機期間中は、平均音量の算出(ステップS13)及び判定処理(ステップS14)を実行するCPUの消費電力を節約する。
【0057】
ステップS13において、CPUは、平均音量を算出する。この処理は、音量検出部34が行う。音量検出部34は、音響信号Sasの単位時間当たりにN点の音量をサンプリングし、N点の音量を積算してその合計値をNで割ることで、音響信号Sasの平均音量を算出する。この音響信号Sasの単位時間当たりの平均音量が、検出音量の一例に相当する。なお、本実施形態では、このステップS13の処理が、音量検出ステップの一例に相当する。
【0058】
次のステップS14において、CPUは、平均音量が閾値を超えるか否かを判定する。この判定は、判定部35が行う。平均音量が閾値を超えればステップS15に進み、平均音量が閾値を超えなければステップS18に進む。ここで、平均音量が閾値を超えれば、判定部35が判定値「1」を出力するので、抽出部36及びデコード部37が起動する。一方、平均音量が閾値を超えなければ、判定部35が判定値「0」を出力するので、抽出部36及びデコード部37は起動されない、または起動を停止する。なお、本実施形態では、このステップS14の処理が、判定ステップの一例に相当する。
【0059】
ステップS15において、CPUは埋込情報SCを抽出する。この処理は、抽出部36が行う。抽出部36は、受信部33から入力した音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。この埋込情報SCの抽出は、エコー拡散方式やスペクトラム拡散方式など採用する拡散方式に応じた抽出方法で行われる。なお、本実施形態では、このステップS15の処理が、抽出ステップの一例に相当する。
【0060】
次のステップS16において、CPUはデコード処理を実行する。この処理は、デコード部37が行う。デコード部37は、埋込情報SCに対して、埋込部28が拡散させたPN系列と同じPN系列との相互相関をとることで、埋込情報SCを符号化前の識別情報IDに復号する。デコード部37は、復号した識別情報IDを第2制御部32へ送る。
【0061】
次のステップS17において、CPUは、識別情報IDに対応する提供情報を出力部に出力させる。この処理は、第2制御部32が行う。第2制御部32は、識別情報IDを基にメモリ38に記憶された参照テーブルDT(図3参照)を参照することでその識別情報IDに対応する提供情報を取得する。そして、第2制御部32は、提供情報を表示または音声により出力する。すなわち、第2制御部32は、表示処理部39を介して提供情報を表示部17に表示させたり、放音処理部によりイヤホンジャックに接続されたヘッドホン又はイヤホン、あるいは携帯端末15のスピーカ(いずれも図示略)から提供情報を放音させたりする。
【0062】
例えば、携帯端末15の表示部17には、原音信号OSのアナウンスに関連する、店舗情報、商品情報、クーポン情報、地図、展示品の説明文、アナウンスの翻訳文などのうちいずれか1つまたは複数が表示される。また、携帯端末15に接続されたヘッドホン、イヤホンあるいはスピーカから、原音信号OSのアナウンスに関連する、店舗情報、商品情報、クーポン情報、道案内音声、アナウンスの翻訳音声などのうちいずれか1つまたは複数が放音される。例えば、原音信号OSがBMG等の音楽である場合、携帯端末15を携帯する利用者が商店街やデパートを移動中である場合、店舗情報、商品情報、クーポン情報、地図、道案内音声のうち1つまたは複数が、携帯端末15に表示または放音される。また、原音信号OSがBMG等の音楽である場合、携帯端末15を携帯する利用者が、美術館、博物館などの館内、駅の構内、または競技場や会議場などの施設内にいる場合、説明文や多言語対応の説明音声、案内文や多言語対応の案内音声などのうち1つまたは複数が、携帯端末15に表示または放音される。
【0063】
一方、平均音量が閾値を超えなかった場合は、ステップS18において、CPUは、待機時間を設定する。ここでは、CPUは、第2待機時間T2を設定する。つまり、音響信号Sasの音量が閾値を超える場合であっても、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていないと判定された場合、判定部35は判定値「0」を出力することで、抽出部36およびデコード部37の起動を停止させるか、停止状態を継続させる。そして、その停止状態を継続する待機時間を設定する。そして、次のステップS19において、CPUは、提供情報なしの旨を出力部に出力させる。この処理は、第2制御部32が行う。第2制御部32は、提供情報なしの旨を表示または音声により出力する。すなわち、第2制御部32は、表示処理部39を介して提供情報なしの旨を表示部17に表示させたり、放音処理部によりイヤホンジャックに接続されたヘッドホン又はイヤホン、あるいは携帯端末15のスピーカ(いずれも図示略)から提供情報なしの旨の音声を放音させたりする。ここで、提供情報なしの旨とは、「提供情報なし」の旨の出力の他、「受信できません。」、「検出できません。」又は「受信エリア外です。」等の情報であってもよい。なお、本実施形態では、このステップS17及びS19の処理が、出力ステップの一例に相当する。
【0064】
また、本実施形態では、音響送信装置20のスピーカ12から放音される音響信号ASには、同じ識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが複数回連続して埋め込まれている。つまり、音響受信装置30のマイクロホン31は、同じ識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCを複数回連続して受信する。検出音量である平均音量が閾値を超える場合(ステップS14で肯定判定)、第2制御部32は、デコード部37がデコードに成功する度に、埋込情報SCが連続する複数回に応じた第1待機時間T1を設定する。この場合、埋込情報SCが連続する複数回のうち1回目の埋込情報SCのデコードに成功すれば、その後、埋込情報SCの残り繰り返し回数の間は、埋込情報SCが同じ識別情報IDにデコードされるので、その間、デコードを行わず待機することで、無駄なデコードの回数を低減できる。
【0065】
ここで、複数回に応じた第1待機時間T1とは、複数回のうちの残りの繰り返し回数((複数回-1)回)に相当する待機時間に限らず、繰り返し回数よりも1回又は2回少ない回数に相当する待機時間でもよい。例えば、同じ識別情報IDである埋込情報SCが連続する回数をn回とし、埋込情報SCの間隔時間をt秒とすると、1回目の埋込情報SCを受信時からn回目の埋込情報SCを受信する受信タイミングまでの残り繰り返し回数である(n-1)回分に相当する時間である、例えば(n-1)t秒を第1待機時間T1とする。なお、第1待機時間T1は、(n-k)t≦T1<ntの範囲で適宜な値に設定してよい。但し、kは、n-k≧1を満たす自然数である。こうして、デコード部37は、デコードに成功する度に、埋込情報SCが連続する複数回に応じた第1待機時間T1の間はデコードを行わず待機する。
【0066】
また、検出音量である平均音量が閾値以下である場合(ステップS14で否定判定)、CPUは、不図示のカウンターにより検出音量が閾値を超えなかった連続回数を計数する。そして、CPUは、連続回数が設定回数に達すると、第2待機時間T2を設定する。第2待機時間T2は、第1待機時間T1よりも長い時間に設定される(T2>T1)。
【0067】
また、第2制御部32は、バッテリBTの残量を検出し、バッテリBTの残量に応じて第2待機時間T2の長さを調整してもよい。例えば、第2制御部32は、バッテリBTの残量が第1残量のときよりも、第1残量よりも残量が少ない第2残量のときの方が、第2待機時間T2をより長い時間に設定する。この場合、第2待機時間T2は、バッテリ残量に対して段階的に変化するように複数段階に設定されてもよいし、バッテリ残量の変化に対して連続的に変化するように設定されてもよい。
【0068】
さらに、第2制御部32は、バッテリBTの残量に応じて連続回数を変化させてもよい。例えば、第2制御部32は、バッテリBTの残量が第1残量のときよりも、第1残量よりも残量が少ない第2残量のときの方が、連続回数をより少ない回数に設定する。このため、バッテリBTの残量が少ないほど、検出音量が閾値以下となる連続回数が少ない数で第2待機時間T2の待機がより早期に開始される。
【0069】
そして、本実施形態の音響受信装置30を内蔵する携帯端末15によれば、受信した音響信号Sasの音量が閾値を超え、埋込情報SCを正しく識別情報IDにデコードできる検出音量である場合に限り、抽出部36及びデコード部37が起動される。一方、受信した音響信号Sasの音量が閾値以下であり、埋込情報SCを正しく識別情報IDにデコードできない可能性の高い検出音量である場合、抽出部36及びデコード部37が起動されない。このため、携帯端末15のバッテリ電力の無駄な消費を低減できる。
【0070】
このため、利用者は、音響受信装置30を起動させた状態で携帯端末15を携帯しても、バッテリBTの電力消費をさほど気にする必要がなくなる。この結果、音響受信装置30を起動させたまま商店街や施設等で携帯端末15から有益な提供情報を取得できる。また、音響信号Sasの音量が小さ過ぎるにも関わらず、埋込情報SCを無理にデコードすることが原因で間違った識別情報IDに対応する誤った提供情報が携帯端末15から出力されるエラー出力の発生頻度が低下する。
【0071】
以上詳述述したように、第1実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)音響受信装置30は、マイクロホン31とバッテリBTとを有する携帯端末15に備えられ、識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが埋め込まれた音響信号ASをマイクロホン31で受信する。音響受信装置30は、マイクロホン31が収音した音響信号Sasの音量を検出する音量検出部34と、音量検出部34が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部35と、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する抽出処理を行う抽出部36と、埋込情報SCを識別情報IDにデコードするデコード処理を行うデコード部37とを備える。デコード部37は、検出音量が閾値を超える場合は、デコード処理を行い、検出音量が閾値以下である場合は、デコード処理を行わない。この構成によれば、音響信号Sasを受信していない場合や、音響信号Sasの音量が過度に小さく埋込情報SCの識別情報IDへのデコードに失敗する可能性が高い場合は、無駄なデコード処理は行われない。よって、携帯端末15のバッテリBTの電力消費を低減できる。したがって、デコード処理を行うか否かの適正化によって携帯端末15のバッテリBTの消費電力を抑制できる。
【0072】
(2)音量検出部34は、音響信号Sasの単位時間当たりの平均音量を算出する。判定部35は、平均音量と閾値とを比較して判定を行う。この構成によれば、判定部35は平均音量と閾値とを比較して判定する。このため、音響信号Sasに含まれる音声中の言葉の息継ぎや音響ノイズが原因で一瞬小さな音量の部分があっても、単位時間当たりの平均音量を用いることで、音響信号Sasをデコードしても問題のない適切な音量であるか否かを適切に判定することができる。
【0073】
(3)抽出部36は、検出音量が閾値を超える場合は抽出処理を行い、検出音量が閾値以下である場合は抽出処理を行わない。この構成によれば、マイクロホン31が収音した音響信号Sasの検出音量が閾値以下であるときは、デコード処理に加え抽出処理も行わない。すなわち、音響信号Sasを受信していない場合や、音響信号Sasの音量が過度に小さく埋込情報SCの識別情報IDへのデコードに失敗する可能性が高い場合は、デコード処理に加え抽出処理も行われない。よって、携帯端末15のバッテリBTの電力消費を一層低減できる。
【0074】
(4)携帯端末15は、デコード部37が埋込情報SCをデコードして得られた識別情報IDに対応する提供情報を出力する出力部として表示部17及びイヤホンジャック及びスピーカ等の放音部を備える。検出音量が閾値を超える場合は、デコード部37によるデコードで得られた識別情報IDに対応する提供情報を出力部に出力させ、検出音量が閾値以下である場合は、出力部に提供情報なしの旨を出力させる第2制御部32を備える。この構成によれば、検出音量が閾値を超える場合は、デコード部37によるデコードで得られた識別情報IDに対応する提供情報が出力部に出力される。一方、検出音量が閾値以下である場合は、デコード部37によるデコードが行われず、出力部には提供情報なしの旨が出力される。利用者に有益な提供情報を適切に提供できるうえ、誤デコードに起因する不適切な提供情報が提供されるエラーを低減できる。よって、携帯端末15のバッテリBTの電力消費を適切に低減できるうえ、携帯端末15の利用者に有益な提供情報を適切に提供することができる。
【0075】
(5)音響信号ASには同じ識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが複数回連続して埋め込まれる。デコード部37は、デコードに成功する度に、埋込情報SCが連続する複数回に応じた第1待機時間T1の間はデコードを行わず待機する。この構成によれば、所定の待機時間の間は、マイクロホン31が音響信号Sasを受信しても少なくともデコードは行われないので、バッテリBTの消費電力を一層低減できる。この場合、音量が閾値を超える場合、埋込情報SCが連続する複数回のうち1回目の埋込情報SCのデコードに成功すれば、その後、残りの繰り返し回数の間は、埋込情報SCが同じ識別情報IDにデコードされるので、その間、デコードを行わず待機することで、無駄なデコードの回数を低減できる。なお、複数回に応じた所定の待機時間とは、複数回に相当する待機時間に限らず、複数回よりも1回又は2回少ない回数に相当する待機時間でもよい。
【0076】
(6)判定部35により検出音量が閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、音量検出部34は、第2待機時間T2の間、検出音量の検出を行わず待機する。この構成によれば、検出音量が閾値以下と判定された連続回数が設定回数に達した場合、第2待機時間T2の間、検出音量の検出を行わない。携帯端末15を携帯する利用者の周囲の騒音等で埋込情報SCを正しくデコードできない場合に、デコードを行わないだけでなく、無駄な検出音量の検出及び判定も行われない。よって、携帯端末15のバッテリBTの消費電力を一層低減できる。
【0077】
(7)バッテリBTの残量を検出する第2制御部32を備える。第2制御部32は、バッテリBTの残量が第1残量のときよりも、第1残量よりも残量が少ない第2残量のときの方が、第2待機時間T2をより長い時間に設定する。この構成によれば、携帯端末15のバッテリBTの残量が少ないときほど、第2待機時間T2が長く設定され、バッテリBTの消費電力を少なくすることができる。
【0078】
(8)識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが音響信号ASに拡散させて埋め込まれた拡散方式が採用される。デコード部37は、埋込情報SCを識別情報IDにデコードする。具体的には、埋込情報SCがエコー拡散方式またはスペクトラム拡散方式で音響信号ASに埋め込まれ、デコード部37は、拡散符号を用いてデコード処理を行う。この構成によれば、識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが音響信号Sasに埋め込まれるので、音響信号ASに含まれる音声や音楽等の原音が聞き取りづらくなることを抑制できる。
【0079】
(9)プログラムは、マイクロホン31とバッテリBTとを有する携帯端末15に備えられる音響受信装置30が備えるコンピュータに実行させる。音響受信装置30は、識別情報IDがエンコードされた埋込情報SCが埋め込まれた音響信号ASをマイクロホン31で受信する。プログラムは、コンピュータを、マイクロホン31が収音した音響信号Sasの音量を検出する音量検出部34、音量検出部34が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定部35、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する抽出部36、埋込情報SCを識別情報IDにデコードするデコード部37、として機能させる。デコード部37は、検出音量が閾値を超える場合は、埋込情報SCをデコードし、検出音量が閾値以下である場合は、埋込情報SCをデコードしない。プログラムをコンピュータに実行させることで、埋込情報SCをデコードするか否かの適正化によって携帯端末15のバッテリBTの消費電力を抑制できる。
【0080】
(10)マイクロホン31と出力部とバッテリBTとを有する携帯端末15に備えられる音響受信装置30における情報出力方法は、以下のステップを備える。すなわち、この方法は、マイクロホン31が収音した音響信号Sasの音量を検出する音量検出ステップ(S13)と、音量検出ステップで検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する判定ステップ(S14)と、音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する抽出ステップ(S15)と、出力ステップ(S16~S19)とを備える。出力ステップでは、検出音量が閾値を超える場合は、埋込情報SCを識別情報IDにデコードするとともに識別情報IDに対応する提供情報を出力部に出力させ、検出音量が閾値以下である場合は、埋込情報SCをデコードせず出力部に提供情報なしの旨を出力部に出力させる。よって、埋込情報SCをデコードするか否かの適正化によって携帯端末15のバッテリBTの消費電力を抑制できる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、図6図7を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、音響受信装置30におけるデコード部37がデコード処理を継続するか否かを、音量検出部34の検出結果とデコード部37のデコード処理結果とに基づいて判定する点が、前記第1実施形態と異なる。音響通信システム10のその他の構成は、前記第1実施形態と同様である。以下、前記第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0082】
図6に示されるように、携帯端末15に内装される音響受信装置30は、前記第1実施形態と同様に、第2制御部32、受信部33、音量検出部34、判定部35、抽出部36、デコード部37、メモリ38及び表示処理部39を備える。
【0083】
抽出部36は、収音部の一例であるマイクロホン31が収音し受信部33を介して入力された音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。音量検出部34は、音響信号Sasを入力する。音量検出部34は、埋込情報SCの音量を検出する。判定部35は、音量検出部34が検出した検出音量が閾値を超えるか否かを判定する。デコード部37は、埋込情報SCを識別情報IDにデコードする。
【0084】
本実施形態では、音量検出部34は、前記第1実施形態と同様に音響信号Sasの音量を検出する。そして、判定部35は、音量検出部34が検出した音響信号Sasの音量が閾値を超えるか否かを判定する。判定部35が音響信号Sasの音量が閾値を超えると判定すると、抽出部36およびデコード部37が起動される。
【0085】
しかし、音響信号Sasの音量が閾値を超えても、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていない場合がある。そのため、判定部35は、埋込情報SCの有無を判定する。例えば、エコー拡散方式の場合、デコード部37がデコード処理を行わないと、埋込情報SCの有無を判定するのが困難である。そのため、判定部35は、デコード部37の復号結果情報(デコード処理結果)に基づいて埋込情報SCの有無を判定する。また、例えば、スペクトラム拡散方式の場合、デコード部37がデコード処理を行わなくても、抽出部36の抽出結果情報(抽出処理結果)から埋込情報SCの有無を判定可能である。そのため、判定部35は、抽出部36の抽出結果情報に基づいて埋込情報SCの有無を判定する。このように、判定部35は、埋込情報SCの埋込方式に応じて、デコード部37の復号結果情報または抽出部36の抽出結果情報に基づいて、埋込情報SCの有無を判定する。
【0086】
判定部35が、復号結果情報に基づいて埋込情報SCの有無を判定する場合、復号結果情報は、識別情報IDそのものでもよい。判定部35は、デコード部37から識別情報IDを入力すると、埋込情報ありと判定する。また、デコード部37はデコード処理の結果、識別情報IDが得られなければ、その旨を示す復号結果情報を判定部35に送る。判定部35は、デコード部37から識別情報IDが得られなかった旨の復号結果情報を受け付けた場合、埋込情報なしと判定する。また、判定部35は、デコード部37の復号結果情報が、埋込情報SCを正しい識別情報IDにデコードできなかったデコード失敗のエラーである場合は、埋込情報ありと判定する。これは、一時的なノイズが原因でデコードに失敗してエラーが発生した可能性があるので、埋込情報SCがあると判定する。なお、これとは反対に、判定部35は、デコード部37の復号結果情報が、デコード失敗のエラーである場合、埋込情報なしと判定してもよい。
【0087】
判定部35は、判定の結果、埋込情報SCがなければ、判定値「0」を出力する。この結果、埋込情報SCがない場合は、抽出部36およびデコード部37の起動が停止されるか、またはそれらの停止状態が継続される。一方、判定部35は、埋込情報SCがあれば、判定値「1」を出力する。この場合、抽出部36およびデコード部37が起動されるか、または起動状態が継続される。
【0088】
このとき、判定部35が判定値「0」を出力する場合、待機時間が設定される。本例では、例えば、第2待機時間T2が設定される。また、埋込情報SCがない旨の判定の連続回数が所定回数に達した場合に、第2待機時間T2を設定してもよい。
【0089】
また、埋込情報SCがあっても、携帯端末15の周囲の雑音が大きい場合、埋込情報SCをデコードできない場合がある。この場合も、識別情報IDが得られない。デコード部37は、デコードに失敗した場合も、識別情報IDがない旨の復号結果情報を判定部35に送る。判定部35は、復号結果情報に基づいてデコードに失敗したと判定した場合、そのデコード失敗の連続回数が設定回数に達すれば、判定値「0」を出力するとともに、第2待機時間T2を設定してもよい。この種の携帯端末15の周囲の騒音には、利用者が駅にいる場合の鉄道の音や駅のアナウンス、利用者が自動車等の交通量の多い道路近くのエリアにいるときの交通騒音、利用者が人混みの中にいるときなどの周囲の人の会話などが挙げられる。
【0090】
このように本実施形態では、埋込情報SCの有無を判定するので、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていない場合に限らず、埋込情報SCを識別情報IDに正しくデコードできないほど小さな音量であるか否かを適切に判定することができる。但し、埋込情報SCの有無を判定するためには、抽出部36およびデコード部37を起動させる必要がある。また、埋込情報SCの信号成分からその音量を検出するためには、抽出部36を起動させる必要がある。このため、抽出部36およびデコード部37に必要な消費電力が第1実施形態よりも多くなり易い。但し、第1実施形態では、音響信号Sasの音量が閾値を超える場合、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていなくても、デコード部37がデコード処理を継続した。これに対して本実施形態では、音響信号Sasの音量が閾値を超える場合であっても、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていなければ、抽出部36およびデコード部37の起動が停止される。このため、総合的には、第1実施形態よりも、バッテリBTの消費電力を抑制することができる。なお、抽出部36が抽出した埋込情報SCに基づき埋込情報SCの有無を判定できる場合は、抽出部36が抽出処理を行った抽出結果情報を判定部35に送ってもよい。この場合、判定部35は、抽出部36から送られた抽出結果情報に基づいて音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていると判定すると、デコード部37を起動する。一方、判定部35は、抽出部36から送られた抽出結果情報に基づいて音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていないと判定すると、デコード部37の起動を停止するか、停止状態を継続する。
【0091】
次に、音響受信装置30の作用について説明する。
以下、図7を参照して、携帯端末15のCPUがプログラムを実行することで駆動される音響受信装置30の動作について説明する。なお、プログラムは、携帯端末15にインストールされ、CPU(コンピュータ)を、音響受信装置30を構成する各部32~39として機能させるアプリケーションに相当する。また、図7では、前記第1実施形態と共通のステップS11,S12については省略している。以下では、前記第1実施形態と異なる処理を中心に説明する。その他の処理については、基本的に前記第1実施形態と同様である。
【0092】
利用者は、携帯端末15の操作部16を操作して音響受信装置30を起動させる。この起動によりCPUは図7に示される音響信号受信処理ルーチンのプログラムを実行する。
ステップS11~S16の処理は、前記第1実施形態と同様である。すなわち、CPUは、音響信号Sasを受信すると(ステップS11で肯定判定)、待機時間を経過したか否かを判定する(ステップS12)。つまり、CPUは、第1待機時間T1と第2待機時間T2とのうち一方でも経過していなければ(ステップS12で否定判定)、待機時間を経過するまで待機する。一方、第1待機時間T1と第2待機時間T2とが共に経過済みであれば、ステップS13に進む。
【0093】
CPUは、平均音量を算出する(ステップS13)。この処理は、音量検出部34が行う。音量検出部34は、音響信号Sasの単位時間当たりにN点の音量をサンプリングし、N点の音量を積算してその合計値をNで割ることで、音響信号Sasの平均音量を算出する。このステップは、音量検出ステップの一例に相当する。
【0094】
そして、CPUは、平均音量が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS14)。この判定は、判定部35が行う。平均音量が閾値を超えればステップS15に進み、平均音量が閾値を超えなければステップS18に進む。ここで、平均音量が閾値を超えれば、判定部35が判定値「1」を出力するので、抽出部36及びデコード部37が起動する。一方、平均音量が閾値を超えなければ、判定部35が判定値「0」を出力するので、抽出部36及びデコード部37は起動されない、または起動を停止する。なお、本実施形態では、このステップS14の処理が、判定ステップの一例に相当する。
【0095】
さらに、CPUは埋込情報SCを抽出する(ステップS15)。この処理は、抽出部36が行う。抽出部36は、受信部33から入力した音響信号Sasから埋込情報SCを抽出する。この埋込情報SCの抽出は、エコー拡散方式やスペクトラム拡散方式など採用する拡散方式に応じた抽出方法で行われる。なお、このステップS15の処理が、抽出ステップの一例に相当する。
【0096】
CPUはデコード処理を実行する(ステップS16)。この処理は、デコード部37が行う。デコード部37は、埋込情報SCに対して、埋込部28が拡散させたPN系列と同じPN系列との相互相関をとることで、埋込情報SCを符号化前の識別情報IDに復号する。デコード部37は、復号結果情報を判定部35に送るとともに、復号した識別情報IDを第2制御部32へ送る。
【0097】
次のステップS21において、CPUは、識別情報IDがあるか否かを判定する。この処理は、判定部35が行う。つまり、判定部35は、デコード部37によってデコードされた識別情報IDの有無を判定することで、埋込情報SCの有無を判定する。つまり、音響信号ASにおける埋込情報SCの有無を判定する。CPUは、識別情報IDがあればステップS17に進み、識別情報IDがなければステップS18に進む。エコー拡散方式では、デコード処理をしなければ埋込情報SCの有無を判定できないので、抽出部36による抽出処理と、デコード部37によるデコード処理との両方を行う。例えば、スペクトラム拡散方式では、デコード処理しなくても音響信号ASから埋込情報SCの有無を判定できれば、デコード処理は行わず、抽出部36による抽出処理を行うだけでもよい。これは、採用される埋込方式に応じて、埋込情報SCの有無を判定できる最低限の処理を行えばよい。また、抽出部36とデコード部37とのうちいずれも起動させず、他の方法で埋込情報SCの有無を判定してもよい。
【0098】
ステップS17~S19の処理は、図5に示される第1実施形態と同様である。すなわち、ステップS17において、CPUは、識別情報IDに対応する提供情報を出力部に出力させる。第2制御部32は、識別情報IDを基にメモリ38に記憶された参照テーブルDT(図6参照)を参照することでその識別情報IDに対応する提供情報を取得する。そして、第2制御部32は、表示処理部39を介して提供情報を表示部17に表示させたり、放音処理部によりイヤホンジャックに接続されたヘッドホン又はイヤホン、あるいは携帯端末15のスピーカ(いずれも図示略)から提供情報を放音させたりする。
【0099】
ステップS21において、CPUは、埋込情報SCがない場合、ステップS18に移行する。ステップS18では、CPUは、待機時間を設定する。つまり、音響信号Sasの音量が閾値を超える場合であっても、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていないと判定された場合、判定部35は判定値「0」を出力することで、抽出部36およびデコード部37の起動を停止させるか、停止状態を継続させる。そして、CPUは、その停止状態を継続する待機時間を設定する。ここでは、CPUは、第2待機時間T2を設定する。そして、ステップS19において、CPUは、識別情報IDなしの旨を出力部に出力する。
【0100】
以上詳述述したように、第2実施形態によれば、前記第1実施形態における効果(4)~(8)が同様に得られる他、以下に示す効果が得られる。
(11)判定部35は、音響信号Sasにおける埋込情報SCの有無を更に判定し、デコード部37は、検出音量が閾値を超えても埋込情報SCがないと判定された場合は、デコード処理を行わない。この構成によれば、判定部35は、音響信号Sasにおける埋込情報SCの有無を判定する。埋込情報SCがなければ、検出音量が閾値を超えていてもデコード処理は行われない。すなわち、音響信号Sasに埋込情報SCが埋め込まれていない場合は、無駄なデコード処理は行われない。よって、音響受信装置30の電力消費を低減できる。したがって、デコード処理を行うか否かの適正化によって携帯端末15のバッテリBTの消費電力を抑制できる。
【0101】
(12)判定部35は、抽出部36による抽出処理結果、またはデコード部37によるデコード処理結果に基づいて埋込情報SCの有無を判定する。この構成によれば、埋込情報SCの有無を検出する処理部を別途設ける必要がないうえ、埋込情報SCの有無を正確に判定できる。よって、埋込情報SCがあるにも関わらずデコード処理しなかったり、反対に、埋込情報SCがないにも関わらずデコード処理したりする不具合が減少する。よって、携帯端末15のバッテリBTの電力消費を適切に低減できる。
【0102】
(13)抽出部36は、検出音量が閾値を超えても埋込情報SCがないと判定された場合は、抽出処理を行わず待機する。このため、検出音量が閾値を超えても埋込情報がないと判定された場合は、デコード部37がデコード処理を行わず待機するとともに、抽出部36が抽出処理を行わず待機する。よって、携帯端末15のバッテリBTの電力消費を一層低減できる。
【0103】
実施形態は、上記に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、音量検出部34による音量検出及び判定部35による判定を含む音量判定を、利用者が音響受信装置30を起動させた後、最初に音響信号ASを受信した起動初期の期間に限り実行してもよい。また、音響受信装置30の起動初期の期間に加え、その後、リアルタイムに音量判定を行うのではなく、CPUの実行サイクルよりも十分長い所定の時間間隔ごとに定期又は不定期に音量判定を行ってもよい。時間間隔は、例えば、10秒~10分の範囲内の時間である。
【0104】
・各実施形態において、音量検出部34による音量検出及び判定部35による判定は、利用者が音響受信装置30を起動させた後、最初に音響信号ASを受信した起動初期の期間に限り実行してもよい。
【0105】
・各実施形態において、第2制御部32はバッテリBTの残量を検出し、バッテリBTの残量が残量閾値以下になった場合に、図5図7に示される音響信号受信処理ルーチンを実行する構成としてもよい。この場合、バッテリBTの残量が残量閾値を超えている間は、音量検出部34、判定部35、抽出部36及びデコード部37を常時起動させてもよい。バッテリBTの残量閾値は、例えば50%が挙げられる。なお、残量閾値は50%に限らず、70%又は30%であってもよい。
【0106】
・各実施形態において、第1待機時間T1を次のように設定してもよい。第2制御部32は、同じ埋込情報SCが連続するn回のうち何回目に成功したかをカウンターで計数し、p回目に成功した場合は、第1待機時間T1として、T1=(n-p)tを設定してもよい。
【0107】
・前記各実施形態において、第1待機時間T1を設定したが、第1待機時間T1の設定を無くしてもよい。
・前記各実施形態では、第2待機時間T2を設定したが、第2待機時間T2の設定を無くしてもよい。また、検出音量が閾値以下である連続回数が設定回数に達した場合に第2待機時間T2を設定したが、検出音量が1回でも閾値以下であれば第2待機時間T2を設定してもよい。
【0108】
・第2実施形態において、判定部35は、抽出部36の抽出結果情報(抽出処理結果)に基づいて埋込情報SCの有無を判定してもよい。例えば、スペクトラム拡散方式の場合、音響信号Sasから埋込情報SCの信号成分を抽出し、この信号成分に基づいて埋込情報SCの有無を判定してもよい。この構成によれば、判定部35が埋込情報SCの有無を判定するときにデコード部37の起動を停止しておけるので、バッテリBTの電力消費を一層低減できる。
【0109】
・第2実施形態において、判定部35は、音響信号の音量の判定と埋込情報SCの有無の判定とのうち、埋込情報SCの有無の判定のみ行ってもよい。この場合、埋込情報SCがなければ、デコード部37はデコード処理を行わないので、消費電力を抑制できる。
【0110】
・音響受信装置30は携帯端末15に備えられる構成に限定されない。可搬性ではない装置に音響受信装置30が備えられてもよい。この場合、可搬性ではない装置はバッテリを備えず、商用電源からケーブルを通じて電力の供給を受ける構成でもよい。バッテリを備えない装置であっても、音響受信装置30の消費電力を抑制することができる。
【0111】
・音電子透かし技術によるマスキングは、順向性マスキングに限らず、逆向性マスキングでもよい。
・音電子透かし方式は、エコー拡散法やスペクトラム拡散法に限らず、他の拡散法を用いてもよい。拡散符号のデコードを行うデコード部37を備える音響受信装置30であれば、例えば、周期的位相変調法、位相多重化法、振幅変調法などでもよい。また、スペクトラム拡散法は、直接拡散方式でもよいし、周波数ホッピング方式でもよい。
【0112】
・拡散符号は、PN系列(疑似雑音系列)に限定されず、2種類のPN系列を加算して得られるGold系列または最長系列(M系列)でもよい。
【符号の説明】
【0113】
10…音響通信システム
11…放送装置
12…放音部の一例としてのスピーカ
15…携帯端末
16…操作部
17…出力部の一例としての表示部
20…音響送信装置
21…第1入力部
22…第2入力部
23…第1制御部
26…拡散符号発生器
27…エンコード部
28…埋込部
29…送信部
30…音響受信装置
31…収音部の一例としてのマイクロホン
32…制御部の一例としての第2制御部
33…受信部
34…音量検出部
35…判定部
36…抽出部
37…デコード部
38…メモリ
39…表示処理部
BT…バッテリ
DT…参照テーブル
AS…音響信号
Sas…音響信号
OS…原音信号
SC…埋込情報
ID…識別情報
T1…第1待機時間
T2…第2待機時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7