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特許7385535画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/10 20060101AFI20231115BHJP
   B61K 9/12 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01M17/10
B61K9/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020110581
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022007547
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有田 真一
(72)【発明者】
【氏名】徳井 圭
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威人
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢太
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-85735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/08-17/10
B61K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、
前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記一方の画像において前記車輪の踏面の異常を検出した場合、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記一方の画像ではない他方の画像に関する情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記一方の画像ではない他方の画像において前記車輪の踏面を検出した場合、当該他方の画像に関する情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記一方の画像、ならびに、前記第1の画像および前記第2の画像のうち前記一方の画像ではない他方の画像において前記車輪の踏面の異常を検出した場合、前記他方の画像のうち、前記車輪の踏面の異常が検出された画像を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記一方の画像は、前記第1の画像および第2の画像のうち、制輪子と対向する方向から前記車輪の踏面を撮影した画像であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
撮像装置と、画像処理装置とを備える画像処理システムであって、
前記撮像装置は、鉄道車両の車輪ごとに、
進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影する第1の撮像部と、
進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影する第2の撮像部とを備え、
前記画像処理装置は、
前記鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、
前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えていることを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
画像処理装置が、鉄道車両の車輪ごとに、当該車輪の踏面を進行方向前方から撮影した第1の画像、および、当該車輪の踏面を進行方向後方から撮影した第2の画像を取得することと、
画像処理装置が、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させることと、を含むことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システムおよび画像処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両など、車輪を備えるものは、安全な運行を行うために、鉄道車両の種々の部品を定期的に検査する必要がある。検査の例として、車輪の踏面(車輪踏面)に傷などの異常がないかどうか確かめる検査がある。車輪踏面の異常の例として、鉄道車両の急制動による滑走および制輪子との摩擦を原因とする、車輪踏面に発生するフラットおよび剥離などの異常がある。車輪踏面にこのような異常が生じると、安全性の低下だけではなく、振動および騒音を引き起こす可能性があるため、車輪踏面の異常を早期に発見する必要がある。
【0003】
このような車輪踏面の検査では、車輪踏面の状態を確認するために、検査員(ユーザ)が目視にて検査を行っている。そのため、鉄道車両などが備える多数の車輪を検査する場合には、検査に時間がかかることから、車輪の検査漏れが生じやすいという問題がある。また、車輪踏面の一部が、接地箇所および車輪周辺部品によって隠れることから、鉄道車両の停車時には車輪踏面全体を目視にて確認することは困難である。
【0004】
そのため、線路脇に設置した撮像装置を用いて走行中の回転する車輪踏面を撮影することによって取得した画像(撮影画像)を用いて非接触で車輪踏面を検査する技術がある。
【0005】
特許文献1では、線路脇に複数の撮像装置、照明装置および車輪検知装置を線路方向に一定距離だけずらして配置し、走行する鉄道車両の車輪に対して検出位置ごとに車輪踏面の分割撮影を行い、車輪踏面の全周画像を取得する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-174672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得しつつ、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示可能な画像処理装置が求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献1には、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得することも、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示することも記載されていない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得しつつ、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示することができる画像処理装置およびその関連技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像処理装置は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えている。
【0011】
本発明の一態様に係る画像処理システムは、撮像装置と、画像処理装置とを備える画像処理システムであって、前記撮像装置は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影する第1の撮像部と、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影する第2の撮像部とを備え、前記画像処理装置は、前記鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えている。
【0012】
本発明の一態様に係る画像処理装置の制御方法は、画像処理装置が、鉄道車両の車輪ごとに、当該車輪の踏面を進行方向前方から撮影した第1の画像、および、当該車輪の踏面を進行方向後方から撮影した第2の画像を取得することと、画像処理装置が、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させることと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得しつつ、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る画像処理システムの概略構成例を示す機能ブロック図である。
図2】鉄道車両および台車の概略構成の一例を示す図である。
図3】従来の画像処理システムによる車輪踏面の撮影の一例を説明するための図である。
図4】従来の画像処理システムによる車輪踏面の分割撮影の一例を説明するための図である。
図5】本実施形態に係る画像処理システムによる車輪踏面の撮影の一例について説明するための図である。
図6】本実施形態に係る画像処理システムにおける撮像装置の配置の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る画像処理システムにおける撮像装置による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係る画像処理システムにおける撮像装置による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る画像処理システムにおける撮像装置による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る画像処理システムによる車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る画像処理システムによる車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。
図12】本実施形態に係る画像処理システムによる車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。
図13】本実施形態に係る画像処理システムによる車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。
図14】本実施形態に係る画像処理装置の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図1~8を参照しながら説明する。まず、前提として、従来の画像処理システムについて説明してから本実施形態に係る画像処理システムについて説明する。
【0016】
〔従来の画像処理システム〕
以下、図3および4を用いて、特許文献1に記載の従来の画像処理システムについて説明する。ここでは、従来の画像処理システムによる車輪踏面203の撮影を中心に説明する。
【0017】
図3は、従来の画像処理システムによる車輪踏面203の撮影の一例を説明するための図である。具体的には、図3は、従来の画像処理システムの撮像部1011または1012による車輪踏面203の撮影の一例を説明するための図である。より具体的には、図3における「進行方向」の図は、1本のレール(線路)201上の鉄道車両の進行方向(レール201が伸びる方向)から車輪202を見た図である。図3における「側面方向」の図は、レール201の側面方向から車輪202を見た図である。図3における「上面方向」の図は、レール201の上面方向(鉛直上方)から車輪202を見た図である。図4は、従来の画像処理システムによる車輪踏面306および307の分割撮影の一例を説明するための図である。具体的には、図3は、複数の撮像部210、211および212によって車輪踏面203を分割撮影する場合における、レール201の上面方向から車輪202を見た図である。以下、各図面において同じ部材番号は同じ部材を示すものとし、説明を省略する。
【0018】
図3における「進行方向」の図に示すように、車輪202は、車輪踏面203およびフランジ204を備えている。図3における「側面方向」の図に示すように、車輪202は、車輪踏面203が接触領域205においてレール201と接触するように配置される。また、車輪202は、回転方向206に回転しながら進行方向207に進行する。
【0019】
ここで、車輪踏面203に欠けなどの異常が生じると、車輪202が滑らかにレール201上を進まなくなるため、車輪踏面203が振動したり騒音が生じたりする。このことから、車輪踏面203の状態を把握するために車輪踏面203を撮影する必要がある。車輪踏面203を撮影するためには、図3における「上面方向」の図に示すように、所定の位置に撮像部1011または1012を配置して車輪踏面203を撮影する必要がある。また、車輪踏面203の接触領域205の部分は見えないため、車輪踏面203の全周を撮影する場合は、回転する車輪202の車輪踏面203を複数枚撮影する必要がある。
【0020】
このような車輪踏面203を撮影する際の撮像部1011および1012の配置について図3における「上面方向」の図を用いて説明する。例えば、車輪202の側面方向である撮影方向208から撮影するように撮像部1011を配置した場合、車輪踏面203が見えないため、車輪踏面203を撮影できない。また、建築限界と鉄道車両との衝突の防止の観点から、レール201が伸びる方向と同じ方向となる位置に撮像部を配置することもできない。
【0021】
そのため、レール201が伸びる方向、例えば、進行方向207の前方に対して角度θをつけた撮影方向に光軸209が向くように撮像部1012を配置して撮影を行う必要がある。このような配置の場合、撮像部1012は、撮像部1012側の車輪踏面203を撮影することになる。なお、撮像部1012側の車輪踏面203とは、車輪踏面203の特定の位置ではなく、車輪202が検知部103によって検知される検知位置において、撮像部1012側にある車輪踏面203を指している。
【0022】
複数の撮像部を用いて車輪踏面203全周を撮影する場合には、1台の撮像部によって取得可能な車輪踏面の範囲に応じて、特定の配置間隔および個数の撮像部が配置される。例えば、図4に示すように、撮像部210、211および212は、レール201が伸びる方向にずらして配置される。これにより、撮像部210、211および212は、車輪202が、それぞれ、検知位置213、214および215に差し掛かったタイミングで撮影できる。このように、図4では、撮像部210、211および212は、レール201が伸びる方向に対して同じ方向に配置されており、検知位置213、214および215において車輪踏面203を順次撮影する。従来の画像処理システムは、車輪踏面203の異常を検出し、車輪踏面203が撮影された画像を表示する。
【0023】
このように、従来の画像処理システムでは、鉄道車両の進行方向に対して特定の方向に配置された1以上の撮像部から車輪踏面を撮影する。そのため、従来の画像処理システムでは、複数の撮像部を用いた場合でも、鉄道車両の各車輪に対して常に同じ方向から車輪の車輪踏面を撮影する。また、従来の画像処理システムは、撮影された車輪踏面の画像に基づいて車輪踏面の異常を検出し、画像を表示する。しかしながら、従来の画像処理システムのように、常に特定の方向から撮影した場合、車輪周辺の部品および車輪周辺の他の床下部品の影響により、車輪踏面が周辺部品によって遮蔽されて車輪踏面を撮影できない場合がある。
【0024】
〔本実施形態に係る画像処理システム1〕
これに対し、本発明の一態様に係る画像処理システム1は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から車輪踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から車輪踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部105と、第1の画像および第2の画像のうち、車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像(基準画像)を選択的に表示部108に表示させる画像処理部106と、を備えている。
【0025】
このように、本実施形態に係る画像処理システム1は、レールが伸びる方向に対して互いに反対方向、すなわち、鉄道車両の進行方向前方および進行方向後方から車輪踏面を撮影し、車輪踏面を撮影した画像を取得する。これにより、本実施形態に係る画像処理システム1は、1方向から撮影された車輪踏面が遮蔽されていても、他方向から好適に車輪踏面を撮影できる。その結果、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得することができる。
また、画像処理システム1は、例えば、第1の画像および第2の画像の両方を取得しても、一方の方向(好ましくは、より好適に撮影可能な方向)から車輪踏面が撮影された画像を基準画像とし、当該基準画像のみを表示する。これにより、車輪踏面の異常を検出するための判断材料に関する情報をコンパクトに表示することができる。
【0026】
〔画像処理システム1の概要〕
以下、図2を用いて、本実施形態に係る画像処理システム1の概要について説明する。
【0027】
図2は、鉄道車両401および台車402の概略構成の一例を示す図である。具体的には、図2における「鉄道車両401」の図は、列車を構成する複数台の鉄道車両のうちの1つの鉄道車両401の全体図を示す。通常、鉄道車両401は、第1の台車402aおよび第2の台車402bから構成される台車402を備え、第1の台車402aおよび第2の台車402bは、それぞれ2組の車輪を有する。第1の台車402aおよび第2の台車402bのそれぞれの車輪はレール201上に接触している。なお、ここでは、鉄道車両401が先頭車両である場合について説明する。
【0028】
図2における「第1の台車402a」の図は、第1の台車402aをより詳細に示した図である。図2に示すように、第1の車輪(車輪)403aおよび第2の車輪(車輪)403bの2つの車輪から構成される車輪403は、鉄道車両401の下に備えられた台車404によって固定されている。第1の車輪403aと第2の車輪403bとの内側(間)には、第1の車輪403aおよび第2の車輪403bの進行速度(移動速度)を減速させるためのブレーキである制輪子405(第1の制輪子405aおよび第2の制輪子405b)がある。通常、第1の車輪403aおよび第2の車輪403bの内側(間)には、このような制輪子405以外の部品が配置されることがなく、台車404の種類によらず、形状の差が少なく、車輪踏面の撮影への影響も少ない。
【0029】
一方、図2における「第1の台車402a」の図に示すように、先頭車両である鉄道車両401の先頭側の第1の車輪403aには、レール201の異物を取り除くため、第1の車輪403aの付近に排障器406が配置されている。具体的には、第1の車輪403aにおける第1の制輪子(制輪子)405aとは反対側の車輪踏面付近に排障器406が配置されている。また、鉄道車両401の床下には様々な機器などの部材が配置されている場合がある。ここでは、第2の車輪403bにおける第2の制輪子(制輪子)405bとは反対側の車輪踏面付近に、箱状の床下部品407が配置されている。
このような場合、鉄道車両401の進行方向の前方から第1の車輪403aを撮影すると、第1の車輪403aの第1の制輪子405aとは反対側の車輪踏面が遮蔽され、この車輪踏面を撮影できなくなることがある。また、床下部品407の位置および大きさによっては、鉄道車両401の進行方向の後方から第2の車輪403bを撮影すると、第2の車輪403bの第2の制輪子405bとは反対側の車輪踏面が遮蔽され、この車輪踏面を撮影できなくなることがある。そのため、第1の車輪403aおよび第2の車輪403bの制輪子405側の車輪踏面を撮影する方が、遮蔽によって車輪踏面が撮影できなくなることがない。
このことから、一態様において、画像処理システム1は、第1の画像および第2の画像のうち、制輪子405と対向する方向から車輪踏面を撮影した画像を基準画像し、他方から撮影した画像を参照画像とする。この場合、第1の画像および第2の画像のうち、基準画像は車輪踏面が撮影されるが、他方の画像である参照画像には排障器406および周辺部品などによる遮蔽が生じ、車輪踏面が撮影されない場合がある。そのため、画像処理システム1は、基準画像を検査に使用するための画像として選択的に表示する。なお、本実施形態はこれに限定されず、車両の構造等に応じて適切な方向から撮影した画像を基準画像とし、他方から撮影した画像を参照画像とするものであればよい。
なお、上述の例では、床下部品407は、先頭車両である鉄道車両401の第2の車輪403bにおける第2の制輪子(制輪子)405bとは反対側の車輪踏面付近に配置されて場合において説明している。ただし、床下部品407は、先頭車両以外の鉄道車両に配置されていてもよい。また、中間車両などの鉄道車両の車輪付近に配置される場合など、鉄道車両によって床下部品407を配置する場所を異ならせてもよい。
【0030】
〔画像処理システム1の構成〕
次に、図1を用いて、実施形態1に係る画像処理システム1の構成について説明する。図1は、実施形態1に係る画像処理システム1の概略構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、画像処理システム1は、画像処理装置10と、撮像装置101と、照明部102と、検知部103と、制御部104と、表示部108と、進行方向取得部(移動方向取得部)109と、を備えている。
【0031】
[撮像装置101]
撮像装置101は、第1の撮像部101aと、第2の撮像部101bとを備え、線路(レール)上を通過する鉄道車両の車輪踏面を撮影する。
【0032】
第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bは、レンズおよびCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子から構成される。
【0033】
(第1の撮像部101a)
第1の撮像部101aは、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から車輪踏面を撮影する。
【0034】
(第2の撮像部101b)
第2の撮像部101bは、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向後方から車輪踏面を撮影する。
【0035】
[照明部102]
照明部102は、制御部104から入力された(受信した)制御信号に応じて点灯/消灯する。照明部102は、夜間および曇天時など低照度の場合、車輪踏面が撮影できる状態となるように、車輪踏面を照射する明るさを調整する。
【0036】
照明部102は、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic Light Emitting Diode)、蛍光灯、水銀灯および白熱電球などの光源によって構成される。
【0037】
[検知部103]
検知部103は、レール上の検知位置において車輪を検知する。すなわち、検知部103は、検知位置に達した(差し掛かった)車輪を検知する。検知部103は、検知部103が車輪を検知したことを示す検知信号を制御部104へと出力する。検知部103は、車輪踏面を複数画像に分割撮影する場合には複数の検知部から構成されており、各検知位置での検知信号を制御部104へ出力する。これにより、各検知位置において車輪踏面の撮影をすることができる。
【0038】
検知部103は、レーザを用いた物体検知デバイスにより構成することができる。検知部103としては、例えば、遮断式センサなどが挙げられる。検知部103が遮断式センサの場合、検知部103は、出射するレーザ光の遮断によって物体の有無を検知する。この場合、検知部103は、レールの脇からレールが伸びる方向に向けて車輪が検知位置を通過した際にレーザ光を遮断するように配置される。
【0039】
なお、検知部103は、高さなどを適宜調整することによって、車輪以外の部品を誤って検知することなく、車輪のみを好適に検知することができる。
【0040】
[制御部104]
制御部104は、検知部103の検知結果および鉄道車両の車輪の進行方向に基づいて、撮像装置101に車輪踏面を撮影させる。
【0041】
具体的には、制御部104は、検知部103における検知部103から出力された検知結果に関する検知信号に基づき、撮像装置101にシャッター信号を出力する。
【0042】
また、制御部104は、進行方向取得部109からの鉄道車両の車輪の進行方向に関する信号に基づいて、撮像装置101に車輪踏面を撮影させることが好ましい。これにより、より好適に車輪踏面を撮影することができる。
【0043】
例えば、制御部104は、第1の撮像部101aの撮影方向に対して近づく方向に車輪が進行(移動)する場合において、検知部103が車輪を検知していない非検知状態から、車輪を検知した検知状態に変化したとする。このとき、制御部104は、第1の撮像部101aに車輪踏面を撮影させる。また、第1の撮像部101aの撮影方向に対して遠ざかる方向に車輪が進行する場合において、検知部103が車輪を検知した検知状態から、車輪を検知していない非検知状態に変化したとする。このとき、制御部104は、第1の撮像部101aに車輪踏面を撮影させることが好ましい。これにより、検知位置において、第1の撮像部101a側の車輪踏面を撮影できるため、好適に車輪踏面を撮影することができる。
【0044】
上述の例では、制御部104による第1の撮像部101aの制御について説明したが、制御部104は、第2の撮像部101bも同様に制御する。
【0045】
図1に示すように、制御部104は、進行方向取得部109からの鉄道車両の車輪の進行方向を示す信号を受け取る。制御部104は、撮影方向と、鉄道車両の車輪の進行方向との関係、および、検知状態に基づいて撮像装置101に車輪踏面を撮影させる。例えば、制御部104は、上述の関係に基づいて、非検知状態から検知状態となった場合に撮像装置101に車輪踏面を撮影させるたり、検知状態から非検知状態となった場合に撮像装置101に車輪踏面を撮影させたりする。
【0046】
また、制御部104は、撮像装置101が撮影する際の露出を制御することによって、撮影される検査領域(撮影領域)が所定の明るさとなるように制御する。
【0047】
[進行方向取得部109]
進行方向取得部109は、鉄道車両の車輪がどちらの方向に進行しているのかを示す進行方向情報(移動方向情報)を取得する。進行方向取得部109は、例えば、超音波を用いた鉄道車両の通過を検知するセンサによって構成される。進行方向取得部109は、レールに対して、車輪踏面を撮影する範囲の両側に設置した超音波センサ情報から鉄道車両の車輪の進行方向を検出するものでもよい。
【0048】
[表示部108]
表示部108は、画像処理装置10から出力される表示データを表示する。表示データは、画像処理装置10によって処理された、車輪踏面の検査をするための画像に関する情報であり、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイにより構成される。表示データとしては、具体的には、基準画像に関する情報および参照画像に関する情報が挙げられる。基準画像に関する情報および参照画像に関する情報には、例えば、検出された車輪踏面の異常に関する情報などが含まれていてもよい。
【0049】
表示部108は、例えば、車輪踏面に異常が検出された場合に、車輪踏面の異常の検出を通知するための表示を行うとともに、画像検索によって見つかった車輪踏面における異常箇所を表示する。また、表示部108は、車輪踏面における異常箇所が分かるように異常箇所にマーカーを重畳して表示したり、異常箇所の色を変えて表示したり、車輪踏面全周の画像を表示したりする。このように、表示部108は、ユーザの目的に応じた画像に関する情報を分かりやすく表示する。
【0050】
表示部108は、基準画像を選択的に表示する。また、表示部108は、基準画像において踏面の異常を検出した場合、参照画像に関する情報を表示する。
【0051】
また、記録部107が着脱可能な記録デバイスであったり、無線または有線によって遠隔地に情報を転送したりする場合、表示部108は、画像に関する情報を異なる場所に表示できる。
【0052】
〔画像処理装置10〕
画像処理装置10は、第1の画像および第2の画像から得られた車輪踏面の検査結果から、車輪踏面の異常の有無および車輪踏面の状態を分かりやすく表示するデータを出力する。
【0053】
ここで、第1の画像は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向(移動方向)前方から車輪踏面を撮影した画像であり、第2の画像は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向後方から車輪踏面を撮影した画像である。
【0054】
画像処理装置10は、第1の画像および第2の画像を取得する取得部105と、第1の画像および第2の画像を処理する画像処理部106と、車輪踏面の検査をするための画像に関する情報などを記録する記録部107と、を備えている。
【0055】
[記録部107]
記録部107を構成する記録デバイスとしては、例えば、ハードディスク、光ディスクおよびフラッシュメモリなどが挙げられる。
【0056】
なお、記録部107は、無線または有線により、遠隔地のサーバーまたはPCに画像および検査結果の少なくとも一方を転送し、記録してもよい。なお、記録デバイスは、システムに搭載されていてもよいし、着脱可能であってもよい。
【0057】
[取得部105]
取得部105は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から車輪踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から車輪踏面を撮影した第2の画像を撮像装置101から取得する。一態様において、取得部105は、第1の撮像部101aから第1の画像を、第2の撮像部101bから第2の画像をそれぞれ取得する。なお、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態では、取得部105は、第1の撮像部101aから第2の画像を、第2の撮像部101bから第1の画像をそれぞれ取得してもよい。また、本実施形態では、取得部105は、撮像装置101の設置位置および車両の進行方向に応じて、何れの撮像部から第1の画像を取得するかを切り替えてもよい。
【0058】
取得部105は、第1の画像および第2の画像を、それぞれの撮像方向を示す撮像情報、および、それぞれの撮像対象である車輪を示す識別情報を関連付けて記録部107に記録する。
【0059】
なお、撮像情報は、画像を撮像した方向を示すものであればよい。一態様において、撮像情報は、画像を撮像したのが第1の撮像部101aか第2の撮像部101bかを示すものであってもよい。また、撮像情報は、画像を撮像した方向を、進行方向に依存した方向、すなわち、進行方向前方および進行方向後方から選択される方向を示すものであってもよい。また、撮像情報は、進行方向に依存せず、レールが伸びる方向に沿った第1の方向および第1の方向とは異なる第2の方向から選択される方向として示すものであってもよい。
【0060】
また、識別情報は、撮像対象である車輪を示すものであればよい。検査対象の車輪踏面の車輪がどの車輪かを示すID情報が挙げられる。ID情報は、単なる番号であってもよい。また、同一の車輪ごとに複数の画像がある場合には、識別情報は、当該画像が同じ車輪であるかどうかを示す情報であってもよい。
【0061】
[画像処理部106]
画像処理部106は、画像処理部106は、記録部107に記憶された第1の画像および第2の画像のうち、車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された基準画像を選択的に表示部108に表示させる。一態様において、記録部107には、各車輪を示す識別情報と、当該車輪に対応する基準画像の撮像方向を示す撮像情報との対応関係を示す対応情報が記憶されている。画像処理部106は、当該対応情報を参照して、各車輪について、当該車輪を示す識別情報が付された第1の画像および第2の画像のうち、当該識別情報に対する撮像情報が付されている画像を、基準画像として記録部107から取得する。続いて、画像処理部106は、当該基準画像を選択的に表示部108に表示させる。これにより、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得しつつ、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示することができる。
【0062】
また、画像処理部106は、基準画像と同一の識別情報が付された参照画像を記録部107から取得し、当該参照画像に車輪踏面が映っているか否かを判定してもよい。画像処理部106は、車輪踏面が映っていないと判定した場合、当該参照画像を記録部107に削除させてもよい。これにより、表示に不要な参照画像を削除し、記録部107の記憶容量を確保することができる。
【0063】
また、画像処理部106は、基準画像において踏面の異常を検出した場合に、参照画像に関する情報を表示部108に表示させてもよい。これにより、コンパクトに表示しつつ、必要に応じて付加的な情報を表示することができる。
【0064】
また、画像処理部106は、参照画像において車輪踏面を検出した場合に、当該参照画像に関する情報を表示部108に表示させてもよい。これにより、コンパクトに表示しつつ、必要に応じて付加的な情報を表示することができる。その結果、ユーザに車輪踏面の検査作業を効率よく行わせることができる。
【0065】
なお、参照画像に関する情報としては、例えば、参照画像の有無に関する情報などが挙げられる。参照画像の有無とは、車輪踏面が映った参照画像が存在するか否かを意味する。画像処理部106は、参照画像の有無に関する情報を表示部108による表示を介して通知することができる。
【0066】
また、画像処理部106は、基準画像および参照画像において車輪踏面の異常を検出した場合、参照画像のうち、車輪踏面の異常が検出された画像を表示部108に表示させてもよい。これにより、検査作業(確認作業)の効率を低くせずに、同じ車輪に対して2つの撮影方向から撮影した画像を表示することができる。
【0067】
画像処理部106は、少なくとも基準画像から車輪踏面の領域を検出し、車輪踏面の領域から剥離領域などの異常を検出して、車輪踏面の検査をしてもよい。これにより、非接触で車輪踏面を検査することができる。その後、画像処理部106は、画像における車輪踏面の領域に関する情報、異常検出結果および異常箇所情報などの検査結果を画像と共に記録部107に出力してもよい。
【0068】
車輪踏面の領域に関する情報の検出方法としては、例えば、画像と、あらかじめ記録部107に記憶された車輪および車輪踏面に関する画像とをパターンマッチングする方法が挙げられる。当該検出方法によれば、画像における、記録部107に記憶された車輪および車輪踏面に近い領域を車輪踏面の領域に関する情報として検出することができる。
【0069】
異常の検出方法としては、エッジ検出処理を行い、検出されたエッジパターンを解析し、車輪踏面上に段差(へこみ)および傷を検出する方法が挙げられる。また、車輪踏面の領域に対して2値化処理を行い、欠けおよびへこみなどによって陰影差が生じている領域を検出する方法が挙げられる。
【0070】
また、画像処理部106は、撮像装置101によって撮影された画像を取得部105から取得し、車輪踏面を検査しやすいように、画像に対して明るさおよび歪みを調整するなどの各種画像処理を施してもよい。各種画像処理としては、例えば、デモザイク、ノイズリダクション、ホワイトバランスおよびガンマ補正などが挙げられる。
【0071】
また、画像処理部106は、各種画像処理を施した画像を取得部105に出力してもよい。これにより、取得部105は、各主画像処理が施された画像を記録部107に出力し、記録部107は、各主画像処理が施された画像を記録することができる。
【0072】
〔画像処理システム1による車輪踏面の撮影例〕
次に、図5を用いて、画像処理システム1の撮像装置101による車輪踏面の撮影例を説明する。図5は、本実施形態に係る画像処理システム1による車輪踏面の撮影の一例について説明するための図である。図5では、画像処理システム1の撮像装置101は、一つの車輪202に対して鉄道車両の進行方向207の前方および進行方向207の後方の2つの方向から車輪踏面306を撮影する。図5における「第1の撮像部101aによる撮影」の図は、第1の撮像部101aによる、1本のレール201上を進行する車輪202の車輪踏面306を撮影の一例を示す上面図である。図5における「第2の撮像部101bによる撮影」の図は、さらに車輪202が進行方向207に進行した図であって、第2の撮像部101bによる車輪踏面306の撮影の一例を示す上面図である。
【0073】
図5に示すように、画像処理システム1では、第1の撮像部101aに加えて、第1の撮像部101aの反対側に第2の撮像部101bを配置する。画像処理システム1は、第1の撮像部101aによって、鉄道車両の進行方向207の前方から車輪踏面306を撮影し、第2の撮像部101bによって、進行方向207の後方から車輪踏面306を撮影する。このように、画像処理システム1では、レール201に対して両側から車輪踏面306を撮影する。
【0074】
図5に示すように、鉄道車両の進行方向207に進行する車輪202に対して、第1の撮像部101aは第1の撮影方向301aを向くように配置され、第2の撮像部101bは第2の撮影方向301bを向くように配置されている。第1の撮影方向301aと、第2の撮影方向301bとは、それぞれ、レール201が伸びる方向に対して反対方向となっており、共に検知位置303に向いている。第1の撮像部101aと第2の撮像部101bとは、検知位置303を含む一定の範囲に位置する車輪踏面306が撮影範囲に収まる第1の撮影画角302aと第2の撮影画角302bとをそれぞれ有する。
【0075】
検知位置303には、車輪202が通過したことを検知する検知部304が配置されている。検知部304は、例えば透過型光電センサであり、受光部304aと発光部304bとから構成される。受光部304aおよび発光部304bは、発光部304bから照射された光線が受光部304aに入射するようにそれぞれ配置される。検知部304は、検知位置303を通過する車輪202によって光線が遮断されると検知信号を出力する。第1の撮像部101a側の車輪踏面306が検知位置303に位置すると、検知部304は、非遮断状態(OFF)から遮断状態(ON)となる立ち上がりの検知信号を制御部104に出力する。第1の撮像部101aは、制御部104から出力された立ち上がり信号によってシャッター制御され、進行方向207の前方である第1の撮影方向301aから第1の撮像部101a側の車輪踏面306を撮影する。
【0076】
次に、図5における「第2の撮像部101bによる撮影」の図に示すように、車輪202がさらに進行し、検知位置303を通り抜けると、検知部304は、ONからOFFとなる立ち下がり信号を制御部104に出力する。第2の撮像部101bは、制御部104から出力された立ち下がり信号によってシャッター制御され、進行方向207後方である第2の撮影方向301bから第2の撮像部101b側の車輪踏面307を撮影する。
【0077】
このような撮像部の配置およびシャッター制御によって、1組の検知部304からの検知信号によって、第1の撮影方向301aと第2の撮影方向301bとから車輪202の両側の車輪踏面306および307を撮影できる。
【0078】
また、車輪202が進行方向207と反対方向に進行する場合であっても、第1の撮像部101aと第2の撮像部101bとのシャッター制御の対応関係を切り替えるだけでよい。この場合も、同じ検知位置303において第1の撮影方向301aによる撮影および第2の撮影方向301bによる撮影をすることができる。具体的には、車輪202の進行方向207が逆方向の場合には、第1の撮像部101aは、検知部304がONからOFFとなる立ち下がり信号に基づくシャッター制御により、車輪踏面306を撮影してもよい。これにより、同じ位置にて第1の撮像部101a側の車輪踏面306を撮影することができる。また、第2の撮像部101bは、検知部304がOFFからONとなる立ち上がり信号に基づくシャッター制御により、車輪踏面307を撮影してもよい。これにより、同じ位置にて第2の撮像部101b側の車輪踏面307を撮影することができる。
【0079】
複数回の撮影によって車輪踏面306および307を分割撮影する場合には、検知位置303の検知信号により、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bがそれぞれの検知タイミングで撮影を開始してもよい。この場合、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bは、車輪202が進行中に複数回連続して撮影することによって車輪202全周の車輪踏面を撮影する。また、検知部を複数設けて、各検知位置にて所定の回転量ずつ車輪踏面を撮影して車輪全周の車輪踏面を撮影する場合、各検知位置を車輪202が通過する際に、同様の制御にて第1の撮像部101aおよび第2の101bによって車輪踏面を撮影する。また、各検知位置での車輪踏面が第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bの画角に収まらなければ、複数の撮像部をレールが伸びる方向に並べて配置し、複数の撮像部によって車輪踏面を分割して撮影してもよい。この場合、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bは、それぞれレール201の方向にずらして配置される。また、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bは、各検知位置にて、それぞれ、第1の撮影方向301aからの車輪踏面306の撮影および第2の撮影方向301bからの車輪踏面307の撮影を行う。
【0080】
上述のように、鉄道車両の進行方向前方および進行方向後方から車輪踏面を撮影することによって、車輪踏面が遮蔽されていなくても、同じ車輪に対して、2つの方向から異なる撮影条件で車輪踏面を撮影できる。そのため、より好適に車輪踏面の異常を検出することができる。また、複数の異なる方向から略同時に車輪踏面を撮影すれば、光の当たり方などによって車輪踏面の異常箇所の見え方も変わるため、異なる角度からより詳細に車輪踏面の状態を確認できる。
【0081】
特に、車輪踏面はレールとの摩擦により、光沢のある表面である場合が多く、光の当たり方が異なると表面の見え方が異なる。そのため、異なる撮影条件によって撮影された車輪踏面の画像が増えることによって、車輪踏面の状態をより把握しやすくなる。また、車輪踏面は湾曲しているため、レール付近において撮影された車輪踏面に異常が検出された場合には、当該画像における車輪踏面の異常が検出された箇所は、画像上で大きく歪んで見える。これに対し、レールが伸びる方向に対して異なる2つの方向から撮影した2つの画像において、車輪の円周方向の異なる位置に異常があれば、異常が視認しやすい方の画像から車輪踏面の状態を好適に確認できる。
【0082】
また、画像処理システム1では、車輪の両方向から撮影することにより、車輪周辺の部品により、片側の車輪踏面が遮蔽される場合においても、検査に必要な車輪踏面の画像を取得することができる。例えば、鉄道車両では、車輪周辺には他の床下部品も配置されており、片側からの撮影のみでは車輪踏面が周辺の床下部品に遮蔽されて撮影できない場合がある。また、先頭車両の先頭車輪の進行方向側にはレール上の異物を取り除くための排障器があり、先頭車輪を鉄道車両の進行方向前方から撮影する場合には、排障器によって車輪踏面の広い範囲が遮蔽される。一方、後方車両の最後方車輪では、同様の排障器は鉄道車両の進行方向とは反対側に配置されており、先頭車輪とは反対側の車輪踏面が広い範囲で遮蔽される。そのため、いずれか一方向のみから撮影した場合には、所望の範囲の車輪踏面が撮影できず、車輪踏面上の異常を撮影できない場合がある。上述の排障器以外にも、車輪が位置するレールよりも鉄道車両の側面方向に床下部品および鉄道車両の車体が飛び出て配置されていることによって、車輪踏面の片側が遮蔽される場合がある。
【0083】
この場合も、画像処理システム1によれば、複数の撮像部をレールが伸びる方向に対して逆向きに配置し、鉄道車両の進行方向前方および後方から車輪踏面を撮影する。そのため、遮蔽されない方向から車輪踏面を撮影できる。
【0084】
なお、上述の例では、検知部304は、レール201の両側に設置した透過型光電センサだが、本実施形態ではこれに限定されない。本実施形態に係る画像処理システム1では、検知部304は、レール201の片側に配置され、車輪202の位置が検知できるものであればよい。例えば、検知部304は、照射する光線の反射によって車輪202の有無を検知する反射型光電センサなどであってもよい。
【0085】
〔画像処理システム1における撮像装置101の配置例〕
次に、図6を用いて、画像処理システム1における撮像装置101の配置例について説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理システム1における撮像装置101の配置の一例を示す図である。具体的には、図6は、レール201上を第1の台車402aが進行しており、4つの車輪を撮影する際の撮像装置101の配置の一例を上から見た図である。
【0086】
図6に示すように、レール201は、第1レール201aおよび第2レール201bから構成されており、車輪403は、第1の車輪403a、第2の車輪403b、第3の車輪(車輪)403cおよび第4の車輪(車輪)403dから構成されている。また、第1の台車402aは、第1レール201aおよび第2レール201b上に跨っており、第1の車輪403aおよび第2の車輪403bは、第1レール201a上を進行する。また、第3の車輪403cおよび第4の車輪403dは、第2レール201b上を同時に進行する。図6に示すように、第1の撮像部101a、第2の撮像部101b、第3の撮像部101cおよび第4の撮像部101dは、第1の車輪403a、第2の車輪403b、第3の車輪403cおよび第4の車輪403dの車輪踏面を撮影できるようにレール201の両側に配置されている。この場合、第1の撮像部101aの第1の撮影方向501aは、検知位置502に向かって配置されている。同様に、第2の撮像部101bの第2の撮影方向501b、第3の撮像部101cの第3の撮影方向501cおよび第4の撮像部101dの第4の撮影方向501も、検知位置502に向かって配置されている。また、第1の撮影方向501aと第2の撮影方向501b、および第3の撮影方向501cと第4の撮影方向501dとは、レール201が伸びる方向に対して反対方向を向いている。検知位置502には、検知部103が配置され、検知部103は、発光部503aおよび受光部503bから構成される。図6には記載されていないが、画像処理システム1は、検知部103からの信号により撮像装置101の制御を行う制御部104、取得部105、画像処理部106、記録部107および表示部108も備える。
【0087】
ここで、領域504における第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bの配置と、領域505における第3の撮像部101cと第4の撮像部101dの配置とは、レール201の中心に対して対称となっている。このことから、領域504における第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bによる車輪踏面の撮影制御および動作と、領域505における第3の撮像部101cおよび第4の撮像部101dの撮影制御および動作とは同じである。そこで、以下では、主に領域504における車輪踏面の撮影動作を中心に説明する。
【0088】
〔画像処理システム1による車輪踏面の撮影例の詳細〕
以下、図7および8を用いて、画像処理システム1における撮像装置101による車輪踏面の撮影例の詳細について説明する。図7および8は、本実施形態に係る画像処理システム1における撮像装置101による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。
【0089】
図7における「撮影例1」の図は、図6の領域504において、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bによって第1の車輪403aおよび第2の車輪403bの車輪踏面を撮影する様子を示す図である。図7に示すように、2つの第1の車輪403aおよび第2の車輪403bは、進行方向207に向かって進行し、検知位置502において、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bは、車輪踏面601、602、603および604を撮影する。
【0090】
図7における「撮影例2」および図8における「撮影例3」および「撮影例4」の図は、第1の車輪403aおよび403bの車輪踏面が検知位置502に位置したときに車輪踏面を撮影する様子を示した図である。これらの図では、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bのうち、車輪踏面を撮影する撮像部のみが示されている。
【0091】
図7における「撮影例2」の図は、第1の車輪403aにおける第1の撮像部101a側の車輪踏面601が、検知位置502に位置し、第1の撮像部101aによって撮影さる様子を示す図である。検知部103は、車輪踏面601によって光線が遮断されるとOFFからONとなる立ち上がりの検知信号を制御部104に出力する。第1の撮像部101aは、制御部104から出力された立ち上がり信号によってシャッター制御され、第1の撮影方向501aから第1の車輪403aの第1の撮像部101a側の車輪踏面601を撮影する。この場合、第1の撮像部101aは、制輪子側とは反対側から車輪踏面601を撮影する。
【0092】
図8は、本実施形態に係る画像処理システム1における撮像装置101による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。図8における「撮影例3」の図は、図7における「撮影例2」の図の第1の車輪403aが進行して車輪踏面602が検知位置502に位置し、第2の撮像部101bによって撮影される様子を示す図である。検知部103は、車輪踏面601によって光線が遮断されなくなるとONからOFFとなる立下がり信号を制御部104に出力する。第2の撮像部101bは、制御部104から出力された立下がり信号によってシャッター制御され、進行方向207の前方である第3の撮影方向501cから第1の車輪403aの第2の撮像部101b側の車輪踏面602を撮影する。この場合、第2の撮像部101bは、制輪子と対向する方向(制輪子側)から車輪踏面602を撮影する。そのため、記録部107が記録している撮影情報では、第1の車輪403aは、制輪子側の撮影方向である第3の撮影方向501cとあらかじめ対応付けられている。すなわち、制輪子側である第3の撮影方向501cから撮影された第1の車輪403aの車輪踏面602の画像が基準画像となっている。
【0093】
図8における「撮影例4」の図は、図7における「撮影例3」の図の第2の車輪403bが進行して車輪踏面603が検知位置502に位置し、第1の撮像部101aによって撮影される様子を示す図である。検知部103は、車輪踏面603によって光線が遮断されるとOFFからONとなる立ち上がりの検知信号を制御部104に出力する。第1の撮像部101aは、制御部104から出力された立ち上がり信号によってシャッター制御され、第1の撮影方向501aから第2の車輪403bの第1の撮像部101a側の車輪踏面603を撮影する。この場合、第1の撮像部101aは、制輪子側から車輪踏面603を撮影する。そのため、記録部107が記録している撮影情報では、第2の車輪403bは、制輪子側の撮影方向である第1の撮影方向501aとあらかじめ対応付けられている。すなわち、制輪子側である第1の撮影方向501aから撮影された第2の車輪403bの車輪踏面603の画像が基準画像となっている。
【0094】
図9は、本実施形態に係る画像処理システム1における撮像装置101による車輪踏面の撮影の一例を示す図である。図9の「撮影例5」の図は、図8における「撮影例4」の図の第2の車輪403bが進行して車輪踏面604が検知位置502に位置し、第2の撮像部101bによって撮影される様子を示す図である。検知部103は、車輪踏面604によって光線が遮断されなくなるとONからOFFとなる立下がり信号を制御部104に出力する。第2の撮像部101bは、制御部104から出力された立下がり信号によってシャッター制御され、第3の撮影方向501cから第2の車輪403bの第2の撮像部101b側の車輪踏面604を撮影する。この場合、第2の撮像部101bは、制輪子側とは反対側から車輪踏面604を撮影する。
【0095】
このように、第1の車輪403aおよび第2の車輪403bの車輪ごとに、撮影方向と基準画像との対応関係が変わる。ここでは、車輪ごとに基準画像と対応付けられる撮影方向が入れ替わって設定される。画像処理システム1は、車輪ごとに検査しやすい方向から撮影した画像をと基準画像に設定してもよく、車輪ごとに撮影方向と基準画像との対応関係が変わってもよい。制御部104は、車輪の撮影タイミングと撮影方向との関係を管理しており、撮影方向に関する情報を画像処理部106へ出力する。
【0096】
画像処理システム1では、鉄道車両401の車輪が進行方向207と反対に進行する場合には、制御部104によるシャッター制御を切り替えるが、撮影方向と基準画像との関係は変わらない。例えば、制御部104は、鉄道車両401の進行方向207が反対になると、ONからOFFとなった際から、OFFからONになった際に、撮像装置101にシャッターを切らせるように切り替える。ただし、この場合も撮像装置101によって撮影される車輪踏面は変わらない。制御部104は、進行方向取得部109によって検出された車輪の進行方向に応じて、撮像装置101のシャッター制御を行う。
【0097】
また、車輪踏面を明るく撮影する場合には、制御部104は、少なくとも撮影する際には、照明部102によって各車輪踏面を照射した状態でシャッター制御を行う。第1の撮像部101aと第2の撮像部101bとの連続撮影によって車輪踏面を分割撮影する場合には、制御部104は、撮像装置101のシャッター制御の開始とともに、撮像装置101に回転する車輪の車輪踏面を連続して撮影させる。これにより、車輪全周を複数の画像に分けて取得することができる。
【0098】
また、画像処理システム1では、複数の検知部103および複数の撮像部からなる撮像装置101を用いて、車輪踏面を撮影する場合には、レール201が伸びる方向にずらして各検知位置を設置する。また、設置した各検知位置を基準に、第1の撮像部101aおよび第2の撮像部101bのいずれかと撮影方向が同じとなるように各撮像部を配置する。
【0099】
この場合、画像処理部106は、基準画像に対して異常検出処理を実行したり、選択的に表示部108に表示させたりする。また、画像処理部106は、異常検出処理では、上述したように、画像から車輪踏面の領域を抽出し、車輪踏面の領域内の異常を検出する。画像処理部106は、異常の位置および寸法などの検出結果を記録部107に出力し、記録部107は、画像と検出結果とを関連付けて保存する。また、画像処理部106は、車輪ごとに、取得部105が参照画像を取得しているか否かを判定する。画像処理部106は、取得部105が、参照画像を取得していると判定した場合には、基準画像および異常検出結果と、参照画像とを対応付けて記録部107に出力する。記録部107は、基準画像および異常検出結果と、参照画像とを対応付けて保存する。
【0100】
画像処理部106は、車輪踏面が撮影された画像、および検出結果など検査に必要な情報を表示部108に表示させる。この場合、画像処理部106は、他の周辺部品による車輪踏面の遮蔽などの影響が少なく、より適した状態で車輪踏面が撮影されている基準画像および異常検出結果を表示部108に選択的に表示させる。すなわち、画像処理部106は、例えば、参照画像では、他の周辺部品による車輪踏面の遮蔽などの影響が大きい場合、基準画像および参照画像の両方ではなく、基準画像のみを表示部108に表示させてもよい。また、画像処理部106は、基準画像における異常検出結果に応じて、参照画像の有無を表示部108に通知させてもよい。
【0101】
ここで、取得部105が、基準画像および参照画像の両方を取得した場合、基準画像および参照画像は、同一の車輪の車輪踏面を撮影したものである。そのため、特に車輪踏面の異常が検出されない場合には、基準画像および参照画像の情報は、重複した情報となる。また、表示部108がモニタである場合、表示領域が限られているため、不要な重複した情報を大量に表示すると、操作および検査作業が煩雑になり、検査の作業効率の低下につながる。特に、車輪踏面を分割して複数枚撮影する場合、1つの車輪に対して取得する画像の数がさらに増える。
【0102】
これに対し、上述のように、選択的に検査に使用する基準画像および異常検出結果を表示部108に表示したり、異常がない参照画像を表示部108に表示させたりしないことによって、必要のない重複した画像および情報を提示しなくて済む。換言すれば、車輪踏面の異常を検出するための判断材料を多く取得しつつ、当該判断材料に関する情報をコンパクトに表示することができる。その結果、ユーザに、車輪踏面の検査作業を効率よく行わせることができる。
【0103】
また、参照画像は、場合により周辺部品によって遮蔽されることに起因して、車輪踏面が正常に撮影できていない場合もある。そのため、画像処理部106は、参照画像において車輪踏面が正常に撮影できているか否かの判定処理を行い、正常に撮影できていない場合には、参照画像がない旨、表示部108に表示させることが好ましい。
【0104】
また、基準画像において異常が検出され、取得部105が参照画像を取得している場合に、画像処理部106は、表示部108に、参照画像の有無を通知させてもよい。また、画像処理部106は、参照画像を表示させるためのアイコンである参照画像表示用アイコンなどを表示部108に表示させてもよい。さらに、画像処理部106は、参照画像表示用アイコンの選択操作をユーザから受け付けると、参照画像を表示部108に表示させてもよい。例えば、参照画像がある場合には、画像処理部106は、参照画像表示用アイコンを選択可能に表示部108に表示させてもよい。また、参照画像がない場合には、画像処理部106は、参照画像表示用アイコンをグレーアウトにて選択不可能な状態で表示部108に表示させてもよい。これにより、コンパクトに表示しつつ、必要に応じて付加的な情報を表示することができる。より具体的には、ユーザが、基準画像からは状態を視認しにくいと感じたり、さらに詳細な状態を確認したいと感じたりした場合でも、撮影条件の異なる参照画像を表示部108に表示させることができる。参照画像表示用アイコンの表示例は、後述の画像の表示例3において詳細に説明する。
【0105】
また、画像処理部106は、参照画像に対しても異常検出処理を行い、参照画像にさらに制限条件を課して表示部108に表示させてもよい。例えば、画像処理部106は、基準画像から異常が検出された場合に、参照画像における車輪踏面を分割撮影した画像のうち、異常の検出された画像のみを抽出して表示部108に表示させてもよい。これにより、異常のない重複した車輪踏面の画像の表示をさらに低減させ、異常が検出された参照画像のみを表示部108に表示させることができる。1つの車輪を分割撮影する数が増えるほど、また、検査する車輪の数が増えるほど、撮影する画像数が多くなる。そのため、上述のように、参照画像を異常が検出された画像に制限することによって、ユーザに、効率よく車輪踏面の状態を確認させることができる。異常の検出された画像のみを表示部108に表示する表示例は、後述の画像の表示例4において詳細に説明する。
【0106】
〔画像の表示例1〕
次に、図10を用いて、画像の表示例1について説明する。図10は、本実施形態に係る画像処理システム1による車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。具体的には、図10における「基準画像の例」の図は、第1の車輪403aが撮影された基準画像701の一例を示す図である。図10における「参照画像の例1」の図は、同じ第1の車輪403aが撮影された参照画像702の一例を示す図である。図10では、実際には、制輪子および台車などが撮影されるが、説明の簡略化のため、周辺部品については省略している。図10における「基準画像の例」の図では、第3の撮影方向501cから第2の撮像部101bによって、第2の撮像部101b側の車輪踏面602が撮影されている。また、図10における「基準画像の例」の図では、画像処理部106によって車輪踏面602に異常703が検出されている。図10における「参照画像の例1」の図では、第1の撮影方向501aから第1の撮像部101aによって第1の撮像部101a側の車輪踏面601が撮影されている。また、図10における「参照画像の例1」の図では、画像処理部106によって車輪踏面601に異常704が検出されている。
【0107】
ここで、図10における「基準画像の例」の図に対して図10における「参照画像の例1」は、撮影方向が反対となる。そのため、それぞれの画像において、車輪と車輪踏面の位置の関係とが左右逆に撮影される。また、回転する第1の車輪403aの両側から撮影した場合、同じ異常704は上下逆に撮影される。
【0108】
また、画像処理部106は、基準画像に加え、ユーザから参照画像を表示する選択操作を受け付けた場合、図10における「参照画像の例2」のように、「参照画像の例1」を左右反転させて表示部108に表示させてもよい。これにより、車輪踏面の領域を同じ方向に合わせることができるため、基準画像の車輪踏面と参照画像の車輪踏面とを好適に比較することができる。
【0109】
〔画像の表示例2〕
次に、図11を用いて、画像の表示例2について説明する。図11は、本実施形態に係る画像処理システム1による車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。具体的には、図11における「車輪踏面の画像の表示例1」の図は、図10の車輪踏面の領域を抽出し、正対化させるよう画像変換を行うことによって得られた画像の表示の一例を示す図である。より具体的には、図11における「車輪踏面の画像の表示例1」の図は、図10における「基準画像の例」の図における車輪踏面を正対化した画像801および検出された異常802を示している。図11における「車輪踏面の画像の表示例2」の図は、図10における「参照画像の例1」の図における車輪踏面の領域を抽出し、正対化させるよう画像変換を行った画像803および検出された異常804を示している。
【0110】
このような表示の場合でも、異常802と異常804とは同一の異常であるが、上下左右が反対となるため、検査時には同一の損傷と判断し難い。そこで、画像処理部106は、図11における「車輪踏面の画像の表示例3」の図のように、図11における「車輪踏面の画像の表示例2」の画像803を上下左右反転した画像805を表示部108に表示させてもよい。
【0111】
これにより、図11における「車輪踏面の画像の表示例3」の図の画像805および異常806は、図11における「車輪踏面の画像の表示例1」の画像801および異常802と方向が揃って表示される。その結果、同一の損傷であることを判断しやすくなり、車輪踏面の状態の比較も容易になる。特に、同じ車輪踏面に複数の損傷が検出された場合には、各損傷の対応を判断することが難しくなるが、このような表示とすることによって、異なる撮影方向から撮影された画像における車輪踏面の損傷の比較が容易となる。また、画像処理部106は、複数の異常が検出された場合に、表示部108に、異常の方向を揃えることに加えて、例えば、同じ異常には同じ色のマーカーを付与して重畳表示させてもよい。これにより、対応関係を分かりやすく示して表示することができる。
【0112】
このように、画像処理部106は、第1の画像および第2の画像を取得し、第1の画像および第2の画像のうちの基準画像の異常の検出結果に応じて、参照画像を表示してもよい。例えば、画像処理部106は、基準画像および参照画像において車輪踏面の異常を検出した場合、参照画像のうち、車輪踏面の異常が検出された画像を表示部108に表示させてもよい。これにより、検査作業の効率を低くせずに、同じ車輪に対して2つの撮影方向から撮影した画像を表示することができる。
【0113】
また、画像処理部106は、参照画像において車輪踏面を検出した場合、参照画像に関する情報を表示部108に表示させてもよい。これによっても、検査作業の効率を低くせずに、同じ車輪に対して2つの撮影方向から撮影した画像を表示することができる。
〔画像の表示例3〕
次に、図12を用いて、画像の表示例3について説明する。図12は、本実施形態に係る画像処理システム1による車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。具体的には、図12における「アイコンの表示例1」の図は、基準画像、および、参照画像を表示させるためのアイコンである参照画像表示用アイコン1205が表示された表示画面1201の表示の一例を示す図である。また、図12における「アイコンの表示例2」の図は、参照画像、および、基準画像を表示させるための車輪踏面のアイコンである基準画像表示用アイコン1215が表示された表示画面1211の表示の一例を示す図である。
図12における「アイコンの表示例1」の図に示すように、表示画面1201の表示領域1202には、第1の車輪403aにおける第2の撮像部101b側の車輪踏面602が分割撮影された基準画像が表示されている。ここでは、車輪踏面602は4分割して撮影されているため、表示領域1202には、4分割して撮影された基準画像が表示されている。また、表示画面1201の表示領域1204には、表示領域1202に表示された複数の基準画像のうち、選択された画像である選択画像1203が拡大表示されている。また、第1の車輪403aにおける第1の撮像部101a側の車輪踏面601が撮影された参照画像がある場合、表示画面1201には、参照画像表示用アイコン1205が選択可能に表示される。これにより、第1の車輪403aの参照画像が撮影されていることがわかる。なお、車輪踏面601が撮影された参照画像がない場合、参照画像表示用アイコン1205はグレーアウトされ、該当する参照画像がないことが通知される。
ここで、画像処理部106が参照画像表示用アイコン1205の選択操作をユーザから受け付けると、表示部108に表示される表示画面は、表示画面1201から、参照画像が表示された表示画面1211に切り替わる。
図12における「アイコンの表示例2」の図に示すように、表示画面1211の表示領域1212には、第1の車輪403aにおける第1の撮像部101a側の車輪踏面601が分割撮影された参照画像が表示されている。また、表示画面1211の表示領域1214には、表示領域1212に表示された複数の参照画像のうち、選択された画像である選択画像1213が拡大表示されている。また、表示画面1211には、参照画像表示用アイコン1205の代わりに、基準画像表示用アイコン1215が選択可能に表示されている。
このように、車輪踏面601が撮影された参照画像がある場合、参照画像表示用アイコン1205を選択可能に表示することにより、参照画像があることを通知し、参照画像が表示された表示画面1211を容易に表示させることができる。これにより、ユーザが確認したいときのみ、参照画像が表示された表示画面1211を表示させることができる。
なお、上述の例では、基準画像と参照画像とを切り替えて表示している。ただし、本実施形態では、参照画像表示用アイコン1205からの選択操作を受け付けた場合、基準画像に加えて参照画像も同時に表示させる構成であってもよい。
〔画像の表示例4〕
次に、図13を用いて、画像の表示例4について説明する。図13は、本実施形態に係る画像処理システム1による車輪踏面の画像の表示の一例を示す図である。具体的には、図13における「アイコンの表示例1」の図は、基準画像、および、参照画像を表示させるためのアイコンである参照画像表示用アイコン1305が表示された表示画面1301の表示の一例を示す図である。また、図13における「アイコンの表示例2」の図は、参照画像、および、基準画像を表示させるための車輪踏面のアイコンである基準画像表示用アイコン1315が表示された表示画面1311の表示の一例を示す図である。
図13における「アイコンの表示例1」の図に示すように、表示画面1301の表示領域1302には、第1の車輪403aにおける第2の撮像部101b側の車輪踏面602が分割撮影された基準画像が表示されている。ここでは、車輪踏面602に異常703が検出されている。また、ここでは、車輪踏面602は4分割して撮影されているため、表示画面1301の表示領域1302には、4分割して撮影された基準画像が表示されている。また、表示画面1301の表示領域1304には、表示領域1302に表示された複数の基準画像のうち、選択された画像である選択画像1303が拡大表示されている。また、図13における「アイコンの表示例1」の図では、第1の車輪403aにおける第1の撮像部101a側の車輪踏面601が撮影された参照画像があることから、表示画面1301には、参照画像表示用アイコン1305が選択可能に表示されている。
ここで、画像処理部106が参照画像表示用アイコン1305の選択操作をユーザから受け付けると、表示部108に表示される表示画面は、表示画面1301から、参照画像が表示された表示画面1311に切り替わる。
この場合、表示画面1311の表示領域1312には、第1の車輪403aにおける第1の撮像部101a側の車輪踏面601が分割撮影された参照画像のうち、異常704が検出された参照画像のみが表示される。また、表示画面1311の表示領域1314には、表示領域1312に表示された複数の参照画像のうち、選択された画像である選択画像1313が拡大表示される。また、表示画面1311には、参照画像表示用アイコン1305の代わりに、基準画像表示用アイコン1315が選択可能に表示される。
このように、表示領域1312に表示する参照画像を異常が検出された画像に制限することによって、ユーザに、効率よく車輪踏面の状態を確認させることができる。
【0114】
〔画像処理装置10の制御処理〕
次に、図14を用いて、本実施形態に係る画像処理装置10の制御処理(制御方法)を説明する。図14は、本実施形態に係る画像処理装置10の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0115】
ステップS101:まず、画像処理装置10の取得部105は、鉄道車両の車輪ごとに、車輪踏面を進行方向前方から撮影した第1の画像、および、車輪踏面を進行方向後方から撮影した第2の画像を取得する。
【0116】
ステップS102:次に、画像処理装置10の画像処理部106は、基準画像(一方の画像)を選択的に表示部108に表示させる。
【0117】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像処理装置10の制御ブロック(特に、取得部105および画像処理部106)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
後者の場合、画像処理装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0119】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る画像処理装置は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えている。
【0120】
本発明の態様2に係る画像処理装置は、上記態様1において、前記画像処理部は、前記一方の画像において前記車輪の踏面の異常を検出した場合、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記一方の画像ではない他方の画像に関する情報を前記表示部に表示させてもよい。
【0121】
本発明の態様3に係る画像処理装置は、上記態様1または2において、前記画像処理部は、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記一方の画像ではない他方の画像において前記車輪の踏面を検出した場合、当該他方の画像に関する情報を前記表示部に表示させてもよい。
【0122】
本発明の態様4に係る画像処理装置は、上記態様1~3のいずれか1つにおいて、前記画像処理部は、前記一方の画像、ならびに、前記第1の画像および前記第2の画像のうち前記一方の画像ではない他方の画像において前記車輪の踏面の異常を検出した場合、前記他方の画像のうち、前記車輪の踏面の異常が検出された画像を前記表示部に表示させてもよい。
【0123】
本発明の態様5に係る画像処理装置は、上記態様1~4のいずれか1つにおいて、前記一方の画像は、前記第1の画像および第2の画像のうち、制輪子と対向する方向から前記車輪の踏面を撮影した画像であってもよい。
【0124】
本発明の態様6に係る画像処理システムは、撮像装置と、画像処理装置とを備える画像処理システムであって、前記撮像装置は、鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影する第1の撮像部と、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影する第2の撮像部とを備え、前記画像処理装置は、前記鉄道車両の車輪ごとに、進行方向前方から当該車輪の踏面を撮影した第1の画像、および、進行方向後方から前記車輪の踏面を撮影した第2の画像を取得する取得部と、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させる画像処理部と、を備えている。
【0125】
本発明の態様7に係る画像処理装置の制御方法は、画像処理装置が、鉄道車両の車輪ごとに、当該車輪の踏面を進行方向前方から撮影した第1の画像、および、当該車輪の踏面を進行方向後方から撮影した第2の画像を取得することと、画像処理装置が、前記第1の画像および前記第2の画像のうち、前記車輪ごとにあらかじめ対応付けられている方向から撮影された一方の画像を選択的に表示部に表示させることと、を含む。
【0126】
本発明の各態様に係る画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記画像処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記画像処理装置をコンピュータにて実現させる画像処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0127】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 画像処理システム
10 画像処理装置
101 撮像装置
101a 第1の撮像部
101b 第2の撮像部
105 取得部
106 画像処理部
108 表示部
202、403 車輪
203、306、307、601、602、603、604 車輪踏面
207 進行方向
401 鉄道車両
403a 第1の車輪(車輪)
403b 第2の車輪(車輪)
403c 第3の車輪(車輪)
403d 第4の車輪(車輪)
405 制輪子
405a 第1の制輪子(制輪子)
405b 第2の制輪子(制輪子)
701、702、801、803、805 画像
703、704、802、804、806 異常
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14