(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】タブリード及び非水電解質デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/178 20210101AFI20231115BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/195 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20231115BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231115BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231115BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231115BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231115BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231115BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20231115BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20231115BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20231115BHJP
H01M 50/198 20210101ALN20231115BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/193
H01M50/197
H01M50/195
H01M50/184 C
H01M50/534
H01M50/562
B32B15/08 A
B32B27/18 Z
H01M10/058
H01M10/0566
H01M10/0562
H01G11/80
H01G11/74
H01M10/052
H01M50/198
(21)【出願番号】P 2020169167
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】中山 文豪
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
(72)【発明者】
【氏名】白神 崇生
(72)【発明者】
【氏名】小山田 洸介
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-235256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M50/50-50/598
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
H01G11/00-11/86
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、
前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ
、
前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた
タブリード。
【請求項2】
前記被覆部は前記フィルム部の熱圧着時に前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方が熱によって変形されることにより形成される
請求項1に記載のタブリード。
【請求項3】
前記第2の樹脂フィルムの二つの前記端面を結ぶ方向を被覆方向とし前記被覆部の前記被覆方向における厚さを被覆厚さとしたとき、
前記被覆厚さが0.1mm以上にされた
請求項1又は請求項2に記載のタブリード。
【請求項4】
前記第2の樹脂フィルムにおける前記乾燥剤の含有率が重量比で5%以上にされた
請求項3に記載のタブリード。
【請求項5】
前記第2の樹脂フィルムの厚みが20μm以上にされた
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のタブリード。
【請求項6】
前記第2の樹脂フィルムが架橋された
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載のタブリード。
【請求項7】
ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、
前記タブリードは、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、
前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、
前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、
前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、
前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ
、
前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられた
非水電解質デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード端子にフィルム部が密着されたタブリード及びこれを備えた非水電解質デバイスについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車載電池や蓄電池等として使用されるリチウムイオン電池等の非水電解質デバイスには、袋状にされたラミネート材の内部に電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスがある。ラミネート型の非水電解質デバイスにおいては、一端部が電極に接続され他端部がラミネート材の外部に露出されたタブリードによって電力の取り出しが行われる。
【0003】
このようなタブリードには、電力を取り出すための端子部材として機能する金属製のリード端子と、リード端子とラミネート材の間に両者の隙間を封止すると共に両者を絶縁するためのフィルム部とが設けられている。フィルム部が熱圧着されることにより、リード端子とラミネート材との隙間が封止される。
【0004】
タブリードにあっては、フィルム部の内部に熱圧着時の温度において非溶融性を呈する粒子(非溶融性樹脂)が分散されて含まれているもの(例えば、特許文献1参照)や、フィルム部の内部に樹脂フィルムの厚さよりも粒径の小さい粒子が分散されて含まれているもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。特許文献1及び特許文献2に示されたタブリードにおいては、フィルム部の内部に分散された粒子によって、フィルム部の熱圧着時におけるラミネート材とリード端子の接触が防止され、両者の絶縁性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-057400号公報
【文献】特開2016-207554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、非水電解質デバイスにあっては、上記したようにフィルム部によってラミネート材とリード端子の絶縁性は確保されるが、空気中の水分がフィルム部を透過してラミネート材の内部に侵入し電解液と反応することによりフッ酸(フッ化水素酸)が発生してフィルム部とリード端子間の剥離やリード端子と電極接続部間の剥離が生じる可能性がある。これにより非水電解質デバイスの出力の低下等の劣化や発熱等を招くおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、ラミネート材の内部への水分の侵入を抑制し、水分の侵入による劣化を軽減し非水電解質デバイスの長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタブリードは、ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられたものである。
【0009】
これにより、フィルム部の内部に分散された乾燥剤によってフィルム部を透過する空気中の水分が吸着されることによりラミネート材の内部への水分の侵入が抑制されると共に被覆部によって第2の樹脂フィルムの各端面が覆われるため第2の樹脂フィルムへの水分の侵入が抑制されて乾燥剤の失活速度が低減される。
【0011】
これにより、第2の樹脂フィルムの端面が第1の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの各一部によって覆われるため、被覆部が第1の樹脂フィルム又は第3の樹脂フィルムの一方に偏り難くなる。
【0012】
上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記被覆部は前記フィルム部の熱圧着時に前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方が熱によって変形されることにより形成されることが望ましい。
【0013】
これにより、熱圧着時に第1の樹脂フィルム又は第3の樹脂フィルムがリード端子又はラミネート材に密着されると共に被覆部が形成されるため、被覆部を形成するための専用の工程を必要としない。
【0014】
上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記第2の樹脂フィルムの二つの前記端面を結ぶ方向を被覆方向とし前記被覆部の前記被覆方向における厚さを被覆厚さとしたとき、前記被覆厚さが0.1mm以上にされることが望ましい。
【0015】
これにより、端面が十分な量の被覆部によって覆われるため、第2の樹脂フィルムに含有される乾燥剤の失活速度が低減される。
【0016】
上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記第2の樹脂フィルムにおける前記乾燥剤の含有率が重量比で5%以上にされることが望ましい。
【0017】
これにより、十分な量の乾燥剤が含有された状態で端面が十分な厚みの被覆部によって覆われる。
【0018】
上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記第2の樹脂フィルムの厚みが20μm以上にされることが望ましい。
【0019】
これにより、第1の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの厚みが薄くなった状態においても第2の樹脂フィルムが一定以上の厚みにされるため、フィルム部が全体として十分な厚みにされる。
【0020】
上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記第2の樹脂フィルムが架橋されることが望ましい。
【0021】
これにより、第2の樹脂フィルムが架橋されることにより、第2の樹脂フィルムの強度が高くなると共に耐熱性が高くなる。
【0022】
本発明に係る非水電解質デバイスは、ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、前記タブリードは、金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される外部端子部として設けられたリード端子と、前記リード端子に両側から密着され前記リード端子と前記ラミネート材との隙間を封止する一対のフィルム部とを備え、前記フィルム部は厚み方向において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの三層にされると共に前記第1の樹脂フィルムが熱圧着により前記リード端子に密着され前記第3の樹脂フィルムが熱圧着により前記ラミネート材に密着され、前記第2の樹脂フィルムは内部に分散された乾燥剤を有すると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムより耐熱性が高くされ、前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムには前記乾燥剤が分散されず、前記第1の樹脂フィルム又は前記第3の樹脂フィルムの少なくとも一方に前記第2の樹脂フィルムにおける前記電極接続部側の端面と前記外部端子部側の端面とを覆う被覆部が設けられ、前記被覆部が前記第1の樹脂フィルムと前記第3の樹脂フィルムの各一部によって設けられたものである。
【0023】
これにより、タブリードにおいて、フィルム部の内部に分散された乾燥剤によってフィルム部を透過する空気中の水分が吸着されることによりラミネート材の内部への水分の侵入が抑制されると共に被覆部によって第2の樹脂フィルムの各端面が覆われるため第2の樹脂フィルムへの水分の侵入が抑制されて乾燥剤の失活速度が低減される。また、第2の樹脂フィルムの端面が第1の樹脂フィルムと第3の樹脂フィルムの各一部によって覆われるため、被覆部が第1の樹脂フィルム又は第3の樹脂フィルムの一方に偏り難くなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水分の侵入による非水電解質デバイスの劣化が軽減され長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図2乃至
図12と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの正面図である。
【
図4】乾燥剤の失活状態を説明するための概念図である。
【
図6】フィルム部がリード端子に熱圧着される前の状態を示す概念図である。
【
図7】フィルム部がリード端子とラミネート材に熱圧着されて被覆部が形成された状態を示す概念図である。
【
図8】被覆部の全体が第3の樹脂フィルムの覆い部のみによって形成された例を示す概念図である。
【
図9】被覆部において第1の樹脂フィルムの覆い部と第3の樹脂フィルムの覆い部の大きさが異なる例を示す概念図である。
【
図10】
図11及び
図12と共に被覆部の機能に関するデータを示すものであり、本図は、セグメントの乾燥剤が失活状態になったときのバリア能力について測定した結果を示すグラフ図である。
【
図11】被覆部の異なる被覆厚さに対して第2の樹脂フィルムに含有された全ての乾燥剤が失活状態になるまでの失活期間について測定した結果を示すグラフ図である。
【
図12】非水電解質デバイスの寿命を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明のタブリード及び非水電解質デバイスを実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0027】
<非水電解質デバイスの概略構成>
先ず、タブリードが用いられるラミネート型の非水電解質デバイスの例としてリチウムイオン電池の概略構成について説明する(
図1及び
図2参照)。尚、本発明の非水電解質デバイスの適用範囲はリチウムイオン電池に限られることはなく、本発明はラミネート型のリチウムイオンキャパシタ等の他の非水電解質デバイスにも適用することが可能である。
【0028】
以下の説明にあっては、非水電解質デバイス(リチウムイオン電池)においてタブリードが突出される方向を上方とし、前後上下左右の方向を示すものとする。但し、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0029】
非水電解質デバイス(リチウムイオン電池)100は、袋状にされたラミネート材101と、ラミネート材101の内部に封入された各部と、一部がラミネート材101の内部に位置されたタブリード1、1とを有している(
図1参照)。
【0030】
ラミネート材101は上端部が封止部102として形成された筒状にされている。ラミネート材101は、例えば、三層構造にされ、それぞれ樹脂材料によって形成された外面層101aと内面層101bが金属層101cの両側に積層されている(
図2参照)。外面層101aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが用いられ、内面層101bとしては、例えば、ポリプロピレンが用いられ、金属層101cとしては、例えば、アルミニウムが用いられている。
【0031】
ラミネート材101の内部には、電解液103と正極104と負極105とセパレータ106が封入されている。正極104と負極105は電解液103に浸されており、セパレータ106によって正極104が配置された空間と負極105が配置された空間とが仕切られている。正極104としては、例えば、アルミニウムが用いられ、負極105としては、例えば、銅が用いられている。尚、電解液103に代えて固体電解質が用いられてもよい。
【0032】
<タブリードの構成>
次に、タブリード1の構成について説明する(
図2乃至
図6参照)。
【0033】
タブリード1は、金属材料によって形成されたリード端子2と、リード端子2に両側から密着された一対のフィルム部3、3とから成る(
図2参照)。タブリード1は、一部が封止部102に密着された状態にされ、上端側の部分がラミネート材101から突出されている。
【0034】
リード端子2は、例えば、厚さが50μmから3000μmにされた薄板状に形成されている。リード端子2の下端部は電極接続部2aとして形成され、正極104又は負極105に接続されている。リード端子2の上端部はラミネート材101から外部に露出された外部端子部2bとして形成され、外部端子部2bに外部機器の図示しない接続端子が接続されることにより非水電解質デバイス100から電力が取り出される。
【0035】
リード端子2としては、例えば、アルミニウム又は銅が用いられ、表面にニッケルメッキが施される。但し、アルミニウムの場合にはメッキが施されないこともある。尚、リード端子2におけるラミネート材101の内部に位置される部分に、リード端子2の腐食を抑制する耐食被膜が施されていてもよい。
【0036】
フィルム部3は、左右両側の端部がリード端子2からはみ出した状態でリード端子2の厚さ方向における両面に密着されている(
図3参照)。フィルム部3におけるリード端子2に密着された部分は密着部4とされている。フィルム部3の左右方向における両端部は、フィルム部3、3がリード端子2の両面に密着された状態で対向する端部同士が貼り合わされる合わせ部5、5とされている。
【0037】
フィルム部3の内部には、粒子状の乾燥剤6が分散(含有)されている。尚、フィルム部3には乾燥剤6の他に架橋剤や酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0038】
フィルム部3は厚み方向において第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9の三層にされると共に第1の樹脂フィルム7が熱圧着によりリード端子2に密着され第3の樹脂フィルム9が熱圧着によりラミネート材101の封止部102に密着されている。フィルム部3は、第1の樹脂フィルム7の内面7aがリード端子2に密着され、第3の樹脂フィルム9の外面9aが内面層101bに密着される。
【0039】
第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9は積層された部分において、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の厚さが、例えば、同じにされ、第2の樹脂フィルム8の厚さが第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の厚さより厚くされている。例えば、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9は厚さが10μmから50μmにされ、第2の樹脂フィルム8は厚さが20μmから50μmにされている。
【0040】
フィルム部3は第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9のベース樹脂が何れも樹脂の中では水分を透過しにくいポリオレフィン系の樹脂、例えば、ポリプロピレン(酸変性ポリプロピレン)によって形成されている。第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9は密着層として設けられ、第2の樹脂フィルム8は耐熱層として設けられ、第2の樹脂フィルム8は第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9より耐熱性が高くされている。第2の樹脂フィルム8には乾燥剤6と架橋剤が分散されている。
【0041】
乾燥剤6としては、水分を物理吸着する捕水性を有する材料、例えば、ゼオライトやステアライトやシリカ等が用いられる。ゼオライトやステアライトやシリカは、加熱することにより吸着した水分を大気開放することが可能なため、製造工程において乾燥剤6が水分を吸着することによって生じる捕水力の低下に配慮する必要がなく、フィルム部3の良好な製造状態を確保することができる。但し、乾燥剤6として、水分を物理吸着する材料と化学吸着する材料の両方が用いられてもよい。
【0042】
尚、乾燥剤6としては、水分を化学吸着する捕水性の高い材料、例えば、酸化カルシウムが用いられてもよい。酸化カルシウムは、例えば、粒径が30μm以下にされ、酸化カルシウムの重量は第2の樹脂フィルム8における含有率が第2の樹脂フィルム8の全体に対して重量比で、例えば、10%以上にされている。また、水分を化学吸着する捕水性を有する乾燥剤6の材料として、酸化カルシウムに代えて、酸化ストロンチウムや酸化バリウムや酸化マグネシウムが用いられてもよい。さらに、酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類金属の酸化物やアルカリ金属の酸化物又はこれらの混合物若しくは複合酸化物が用いられてもよい。
【0043】
酸化カルシウムは特に捕水上限が高いと共に入手や取り扱いの容易性が高いため、乾燥剤6として酸化カルシウムが用いられることにより十分な捕水性を確保した上で製造コストの削減を図ることができる。尚、酸化カルシウムに代えて、酸化ストロンチウムや酸化バリウムや酸化マグネシウムを用いることによっても同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、アルカリ土類金属の酸化物は、物理吸着によって捕水する材料と比べて捕水上限が高いため、乾燥剤6としてアルカリ土類金属の酸化物が用いられることによりフィルム部3に含まれる乾燥剤6の量を少なくすることが可能となり、十分な捕水性を確保した上で製造コストの削減を図ることができる。尚、乾燥剤6として、アルカリ土類金属の酸化物に代えて、アルカリ金属の酸化物又はアルカリ金属の酸化物やアルカリ土類金属の酸化物の混合物若しくは複合酸化物を用いることによっても同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、乾燥剤6は粒径が30μm以下にされることが望ましい。これにより、熱圧着が行われたときに、フィルム部3が少なくとも乾燥剤6の粒径分の厚さを保った状態でリード端子2とラミネート材101の隙間が封止される。従って、リード端子2とラミネート材101の良好な絶縁状態を確保することができる。但し、粒径の小さい乾燥剤6を用いた場合には、フィルム部3の厚さを薄くすることができる。
【0046】
さらにまた、乾燥剤6は、重量がフィルム部3の重量に対して30%以下にされることが望ましい。これにより、フィルム部3において乾燥剤6の分散不良や凝集が発生し難くされるため、フィルム部3におけるリード端子2とラミネート材101との良好な密着状態を確保することができる。
【0047】
上記のように、フィルム部3には乾燥剤6が含有されているが、乾燥剤6が含有されない構成にすることも可能である。しかしながら、フィルム部3に乾燥剤6が含有されない構成の場合には、フィルム部3を形成する樹脂の水蒸気透過度に応じて水分が侵入し侵入した水分がラミネート材101の内部に封入された電解液103と反応し、非水電解質デバイス100の寿命の低下を来すおそれがある。特に、非水電解質デバイス100が、例えば、車載用の電力源として用いられる場合には、少なくとも8年の耐用年数(寿命)を満たすことが好ましく、将来的には15年の耐用年数(寿命)を満たすことが必要とされ、乾燥剤6が分散されない構成の場合には、これらの耐用年数が満たされなくなるおそれがある。
【0048】
従って、フィルム部3に乾燥剤6を含有させることにより水分が乾燥剤6に吸着されて長寿命化が図られるが、フィルム部3の全体に乾燥剤6が含有されてしまうと、乾燥剤6の含有によりフィルム部3とリード端子2及びラミネート材101との密着性が低下してフィルム部3とリード端子2及びラミネート材101との十分な密着性を確保することができなくなる可能性がある。
【0049】
そこで、タブリード1においては、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9に乾燥剤6が含有されない構成にしてフィルム部3とリード端子2及びラミネート材101との十分な密着性を確保した上で、第2の樹脂フィルム8に乾燥剤6が含有される構成にしている。このような構成にすることにより、フィルム部3に侵入する水分を乾燥剤6によって吸着しラミネート材101の内部への水分の侵入を抑制することが可能になり、フィルム部3とリード端子2及びラミネート材101との十分な密着性を確保した上で非水電解質デバイス100の寿命を長くすることが可能になる。
【0050】
一方、乾燥剤6を含有する第2の樹脂フィルム8の一部が空気に対して露出された構成にされると、第2の樹脂フィルム8に空気中の水分が侵入し易くなるため、乾燥剤6が失活状態になる速度が速くなり、十分な長寿命化を図ることができなくなるおそれもある。
【0051】
乾燥剤6の失活状態とは、乾燥剤6の各粒子に対する水分の吸着量が最大になり、各粒子において、それ以上の水分を吸着することができなくなる状態であり、失活状態は空気に対して露出された部分(セグメント)から順に生じる(
図4参照)。
【0052】
例えば、一定の間隔で乾燥剤6が整列された部分をセグメントとし空気に対して露出された側から順にセグメントA、セグメントB、セグメントC、・・・とすると、水分はセグメントAから順に侵入する。水分の侵入によりセグメントAの各粒子に対する水分の吸着量が何れも最大になり飽和状態になった場合にはセグメントAにおける乾燥剤6が失活状態になる。このとき失活状態になった乾燥剤6が水分を通す状態になるため、セグメントAにおいて乾燥剤6が占める体積に応じて水分がセグメントAを通り易い状態になり、水分がセグメントAからセグメントBへ向かって侵入していく。従って、さらなる水分の侵入によってセグメントBにおける乾燥剤6が失活状態になって水分がセグメントBを通り易い状態になり、順に、各セグメントの乾燥剤6が失活状態になって水分が各セグメントを通り易い状態になる。
【0053】
そこで、フィルム部3においては、第2の樹脂フィルム8における乾燥剤6の失活速度を抑制するために、第2の樹脂フィルム8の上下方向における端面8a、8aがそれぞれ第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の各一部によって覆われている(
図2参照)。従って、フィルム部3には端面8a、8aをそれぞれ覆う被覆部10、10が設けられている。
【0054】
第2の樹脂フィルム8の端面8a、8aを結ぶ方向(上下方向)を被覆方向としたときに、被覆部10、10はフィルム部3の被覆方向における両端部に設けられている。このとき被覆部10の被覆方向における厚さを被覆厚さHとすると、被覆部10は被覆厚さHが、例えば、0.1mm以上にされている(
図5参照)。
【0055】
上記のように、第1の樹脂フィルム7には被覆部10の一部を構成する部分が存在し、第1の樹脂フィルム7は第2の樹脂フィルム8に厚み方向において積層された積層部7bと積層部7bの両端にそれぞれ連続され被覆部10、10の一部を構成する覆い部7c、7cとを有している。また、第3の樹脂フィルム9にも被覆部10の各一部を構成する部分が存在し、第3の樹脂フィルム9は第2の樹脂フィルム8に厚み方向において積層された積層部9bと積層部9bの両端にそれぞれ連続され被覆部10、10の各一部を構成する覆い部9c、9cとを有している。
【0056】
<被覆部の形成>
次に、被覆部10、10の形成について説明する(
図6乃至
図9参照)。尚、タブリード1は一対のフィルム部3、3を有しているが、以下には、説明を簡単にするために、一方のフィルム部3のみについて説明する。
【0057】
フィルム部3はリード端子2に熱圧着される前の工程において、例えば、照射量が制御されたガンマ線が第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9の全体又は第2の樹脂フィルム8のみに照射されることにより第2の樹脂フィルム8が架橋される。フィルム部3は第2の樹脂フィルム8が架橋されることにより、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9に対して高い耐熱性を有する状態にされ、その後の工程においてリード端子2とラミネート材101に熱圧着される。
【0058】
被覆部10、10は、フィルム部3のリード端子2に対する熱圧着による密着時とフィルム部3のラミネート材101に対する熱圧着による密着時とにおいて、以下のようにして形成される(
図6及び
図7参照)。
【0059】
フィルム部3は、先ず、リード端子2に熱圧着されることにより第1の樹脂フィルム7がリード端子2に密着されるが、熱圧着が行われる前の状態において、例えば、略同じ厚みにされた第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9が厚み方向において積層されている(
図6参照)。このとき、第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9の厚みは、例えば、40μmから60μmであり、第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9の被覆方向における幅は同じにされており、第2の樹脂フィルム8は端面8a、8aが露出した状態にされている。
【0060】
熱圧着により第1の樹脂フィルム7がリード端子2に接合されて密着されるとタブリード1が構成され、次に、タブリード1はラミネート材101に熱圧着されることにより第3の樹脂フィルム9が封止部102に密着される(
図7参照)。このように第1の樹脂フィルム7がリード端子2に熱圧着により密着される第1の熱圧着工程と第3の樹脂フィルム9が熱圧着により封止部102に密着される第2の熱圧着工程とにおいては、熱圧着により第1の樹脂フィルム7と第2の樹脂フィルム8と第3の樹脂フィルム9が変形(溶融)され、第1の樹脂フィルム7の各一部と第3の樹脂フィルム9の各一部とが端面8a、8a側に回り込んで被覆部10、10が形成される。第1の樹脂フィルム7のうち端面8a、8a側に回り込んだ各一部はそれぞれ覆い部7c、7cとされ、第3の樹脂フィルム9のうち端面8a、8a側に回り込んだ各一部はそれぞれ覆い部9c、9cとされる。
【0061】
このとき第2の樹脂フィルム8は架橋されているため、第2の樹脂フィルム8は架橋の程度が第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9より大きくされ、第2の樹脂フィルム8は第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9よりも熱圧着による変形量が小さく強度が高くされると共に第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9より耐熱性が高くされる。また、第2の熱圧着工程においては、第1の樹脂フィルム7より第3の樹脂フィルム9が変形し易く、フィルム部3の厚み方向において覆い部7cより覆い部9cの方が大きくなり易い。
【0062】
第1の樹脂フィルム7がリード端子2に密着され第3の樹脂フィルム9が封止部102に密着された状態においては、上記したように、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の厚さが10μmから50μmにされ、第2の樹脂フィルム8の厚さが20μmから50μmにされる。
【0063】
尚、タブリード1においては、端面8aを覆う被覆部10の全体が第3の樹脂フィルム9の覆い部9cのみによって形成されてもよい(
図8参照)。
【0064】
また、上記には、第1の樹脂フィルム7の覆い部7cと第3の樹脂フィルム9の覆い部9cとにおいて端面8aを覆う部分の被覆方向における大きさ(寸法)が何れも同じにされた例(
図7参照)を便宜的に示したが、第1の熱圧着工程と第2の熱圧着工程において、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の変形の程度が異なり、被覆方向において第1の樹脂フィルム7の覆い部7cが第3の樹脂フィルム9の覆い部9cより大きくなる場合もある(
図9参照)。この場合には、覆い部9cの被覆方向における厚さが覆い部7cの被覆方向における厚さより小さくされる。
【0065】
上記のように構成されたタブリード1においては、第2の樹脂フィルム8に乾燥剤6が分散されているため、フィルム部3の内部に侵入する空気中の水分が乾燥剤6によって吸着され、ラミネート材101の内部への水分の侵入が抑制される。従って、水分の侵入による非水電解質デバイス100の劣化が軽減され非水電解質デバイス100の長寿命化を図ることができる。また、乾燥剤6は潰れ難い材料によって形成されており、フィルム部3は熱溶着時に加圧されてもリード端子2とラミネート材101との接触が防止される厚さが保持されるため、リード端子2とラミネート材101の良好な絶縁状態を確保することができる。
【0066】
また、フィルム部3はポリオレフィン系の樹脂によって形成されている。従って、ラミネート材101の内部への水分の侵入を抑制する効果を高めることができる。
【0067】
<被覆部の機能に関する計算結果等>
次に、上記した被覆部10の機能に関して計算した結果等について説明する(
図10乃至
図12参照)。
【0068】
図10は、
図4に示す第2の樹脂フィルム8におけるセグメントAの乾燥剤6が失活状態になったときに、セグメントAにおける水分の侵入を抑制する能力(水分のバリア能力)について、被覆部10の被覆厚さHが異なる場合において計算したデータである。即ち、乾燥剤6が失活状態になった場合においても、第2の樹脂フィルム8の材料自体によっても水分の侵入が抑制されるため、このときの水分の侵入を抑制する能力を計算した。
【0069】
図10において、横軸は乾燥剤6の第2の樹脂フィルム8に対する含有率(重量比)であり、縦軸はバリア能力である。第2の樹脂フィルム8に乾燥剤6が含まれていない含有率0%の状態においてバリア能力を100%とした。
【0070】
図10に示すように、バリア能力は被覆厚さHの厚さに拘わらず乾燥剤6の含有率が増加するに従って低くなるが、被覆厚さHが厚くなるに従って高くなることが解り、失活状態においても被覆厚さHが厚くなるに従って水分の侵入を十分に抑制する結果が得られた。
【0071】
従って、フィルム部3に被覆部10を設けることにより、乾燥剤6の失活状態においてもフィルム部3への水分の侵入が抑制され、被覆部10が水分の侵入を抑制する高い機能を有することが解った。また、被覆部10の被覆厚さHが0.1mm程度であっても、被覆部10が設けられない場合に比し、水分の侵入を抑制する十分な効果が得られることも解った。
【0072】
図11は、異なる被覆厚さHに対して第2の樹脂フィルム8に含有された全ての乾燥剤6が失活状態になるまでの失活期間について、乾燥剤6の第2の樹脂フィルム8に対する含有率(重量比)が異なる場合において計算したデータである。
【0073】
図11において、横軸は被覆厚さHであり、縦軸は全ての乾燥剤6が失活状態になるまでの失活期間である。
【0074】
図11に示すように、失活期間は乾燥剤6の含有率の高さに拘わらず被覆厚さHが厚くなるに従って長くなり、被覆厚さHが厚く乾燥剤6の含有率が高くなるに従って長くなる結果が得られた。特に、被覆厚さHが0.1mm以上あり乾燥剤6の含有率が20%以上であれば失活期間が15年以上を満たす結果が得られた。
【0075】
尚、
図11において示した失活期間は第2の樹脂フィルム8に含有された全ての乾燥剤6が失活状態になるまでの期間であり、タブリード1においては
図10のデータでも示したように、フィルム部3の材料自体によっても水分の侵入が抑制されるため、非水電解質デバイス100の寿命は失活期間よりも長い期間である。即ち、非水電解質デバイス100の寿命は、第2の樹脂フィルム8に含有された全ての乾燥剤6が失活状態になることに加えフィルム部3の材料自体による水分の侵入の抑制機能を考慮し、水分が電解液103と反応して電力の取出に支障を来すまでの期間になるため、一般には、失活期間に8年程度の期間を加えた期間である。
【0076】
図12は、このような事項を考慮して非水電解質デバイス100の寿命を算出したデータである。
【0077】
図12において、横軸は被覆厚さHであり、縦軸は非水電解質デバイス100の寿命とされる期間である。
【0078】
図12に示すように、非水電解質デバイス100の寿命は乾燥剤6の含有率の高さに拘わらず被覆厚さHが厚くなるに従って長くなり、被覆厚さHが厚く乾燥剤6の含有率が高くなるに従って長くなる結果が得られた。特に、被覆厚さHが0.1mm以上あり乾燥剤6の含有率が5%以上であれば非水電解質デバイス100の寿命が、より望ましい期間である15年以上を満たす結果が得られた。
【0079】
<まとめ>
以上に記載した通り、タブリード1及び非水電解質デバイス100にあっては、第1の樹脂フィルム7が熱圧着によりリード端子2に密着され第3の樹脂フィルム9が熱圧着によりラミネート材101に密着され、第2の樹脂フィルム8は内部に分散された乾燥剤6を有すると共に第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9より耐熱性が高くされ、第1の樹脂フィルム7又は第3の樹脂フィルム9の少なくとも一方に第2の樹脂フィルム8の端面8a、8aをそれぞれ覆う被覆部10、10が設けられている。
【0080】
従って、フィルム部3の内部に分散された乾燥剤6によってフィルム部3を透過する空気中の水分が吸着されることによりラミネート材101の内部への水分の侵入が抑制されると共に被覆部10によって第2の樹脂フィルム8の各端面8a、8aが覆われるため第2の樹脂フィルム8への水分の侵入が抑制されて乾燥剤6の失活速度が低減される。これにより、水分の侵入による非水電解質デバイス100の劣化が軽減され長寿命化を図ることができる。
【0081】
また、被覆部10が第1の樹脂フィルム7の覆い部7cと第3の樹脂フィルム9の覆い部9cとによって設けられることにより、第2の樹脂フィルム8の端面8aが第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の各一部によって覆われるため、被覆部10が第1の樹脂フィルム7又は第3の樹脂フィルム9の一方に偏り難くなり、端面8aを確実に覆い乾燥剤6の捕水性能の低減を抑制することができる。
【0082】
さらに、被覆部10はフィルム部3の熱圧着時に第1の樹脂フィルム7又は第3の樹脂フィルム9の少なくとも一方が熱によって変形されることにより形成される。
【0083】
従って、熱圧着時に第1の樹脂フィルム7又は第3の樹脂フィルム9がリード端子2又はラミネート材101に密着されると共に被覆部10が形成されるため、被覆部10を形成するための専用の工程を必要とせず、製造コストの低減を図った上でラミネート材101の内部への水分の侵入を抑制して非水電解質デバイス100の長寿命化を図ることができる。
【0084】
尚、被覆部10は、予め被覆部10の各一部を構成する部分を有する形状に形成された第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9を第2の樹脂フィルム8とは別に形成し、その後の工程においてこれらの第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9を第2の樹脂フィルム8に貼り付けることによっても形成することが可能である。
【0085】
しかしながら、上記のように、熱圧着時に被覆部10が形成されるようにした場合には、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9を予め被覆部10の各一部を構成する部分を有する形状に形成する必要がなく、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9を第2の樹脂フィルム8に貼り付ける専用の工程も必要とせず、フィルム部3のリード端子2やラミネート材101に対する熱圧着時に同時に被覆部10が形成される。
【0086】
従って、熱圧着時に被覆部10が形成されるようにすることにより、タブリード1及び非水電解質デバイス100の製造時間の大幅な短縮化及び製造コストの大幅な低減による大幅な生産性の向上を図ることができる。特に、タブリード1を形成する一般的なプロセスと同様のプロセスによって第2の樹脂フィルム8を被覆する複雑な構成を容易に形成することができ、第2の樹脂フィルム8を被覆する複雑な構成を形成する際の大幅な生産性の向上を図ることができる。
【0087】
さらにまた、被覆部10の被覆厚さHが0.1mm以上にされることにより、端面8aが十分な量の被覆部10によって覆われるため、第2の樹脂フィルム8に含有される乾燥剤6の失活速度が低減され、非水電解質デバイス100の一層の長寿命化を図ることができる。
【0088】
また、第2の樹脂フィルム8における乾燥剤6の含有率が重量比で5%以上にされることにより、十分な量の乾燥剤6が含有された状態で端面8aが十分な厚みの被覆部10によって覆われるため、第2の樹脂フィルム8に含有される乾燥剤6の高い捕水機能を確保した上で乾燥剤6の失活速度の低減を図ることができる。
【0089】
さらに、第2の樹脂フィルム8の厚みが20μm以上にされることにより、第1の樹脂フィルム7と第3の樹脂フィルム9の厚みが薄くなった状態においても第2の樹脂フィルム8が一定以上の厚みにされるため、フィルム部3が全体として十分な厚みにされ、フィルム部3による良好な絶縁性を確保することができる。
【0090】
加えて、第2の樹脂フィルム8が架橋されることにより、第2の樹脂フィルム8の強度が高くなると共に耐熱性が高くなるため、フィルム部3の全体としての高い強度を確保することができると共に高い耐熱性を確保することができる。
【0091】
尚、上記した非水電解質デバイス100においては、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1が何れもラミネート材101から上方へ突出された例を示したが、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1のうち一方がラミネート材101から上方へ突出され、他方がラミネート材101から下方へ突出されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
100 非水電解質デバイス
101 ラミネート材
103 電解液
104 正極(電極)
105 負極(電極)
1 タブリード
2 リード端子
2a 電極接続部
2b 外部端子部
3 フィルム部
6 乾燥剤
7 第1の樹脂フィルム
7c 覆い部
8 第2の樹脂フィルム
8a 端面
9 第3の樹脂フィルム
9c 覆い部
10 被覆部