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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】回転電機および回転電機検査システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20231115BHJP
   H02K 11/20 20160101ALI20231115BHJP
【FI】
H02K9/06 E
H02K9/06 B
H02K11/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020176868
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067975
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一馬
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-294249(JP,A)
【文献】特開2008-035615(JP,A)
【文献】特開平05-115152(JP,A)
【文献】実開昭54-023211(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
H02K 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部が形成された筐体と、
前記筐体に収容された固定子と、
前記固定子に対して回転可能に前記筐体に収容された回転子と、
前記筐体の内部の気体が通過可能な流路が設けられるとともに前記第1の開口部に挿入されて前記筐体に着脱可能に取り付けられる流路部材と、前記流路に配置されて前記流路部材に保持されたフィルタと、前記流路部材に保持されるとともに回転することにより前記フィルタに前記気体を通過させるファンと、前記ファンに取り付けられるとともに当該ファンを回転駆動させる駆動部と、前記流路部材に保持されるとともに前記フィルタによって捕捉された前記気体中の粒子の量に関する物理量を検出する検出部と、前記流路部材に設けられるとともに前記検出部によって検出された前記物理量を出力する出力部と、を有するモジュールと、
を備え
前記駆動部は、前記モジュールが前記筐体に装着された場合に出力される第1の信号と、前記回転子が回転している場合に出力される第2の信号と、がともに入力されたことを条件として、前記ファンを回転駆動させる、
回転電機。
【請求項2】
前記物理量は、前記フィルタに対して前記流路における前記気体の流れ方向での上流側の圧力と、前記フィルタに対して前記流路における前記気体の流れ方向での下流側の圧力と、の差を表す差圧である、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記出力部は、前記差圧を表示する、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記気体と外気との間で熱交換を行う熱交換器と、
回転することにより前記固定子および前記回転子と前記熱交換器との間で前記気体を循環させる循環用ファンと、
を備え、
前記循環用ファンによって循環する前記気体が前記流路を通過する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記流路部材は、前記フィルタ、前記ファン、及び前記検出部を保持する骨組部材と、前記出力部が設けられた蓋部材とを有し
前記蓋部材は、前記第1の開口部を覆う、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記筐体は、第1の接点を有し、
前記モジュールは、前記蓋部材に設けられて前記第1の接点に接触する第2の接点を有し、
前記第1の信号は、前記第1の接点と前記第2の接点とが互いに接触した場合に出力される、
請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記流路は、上下方向に延び、
前記蓋部材には、前記筐体の外部から前記筐体の内部における前記フィルタの下側に受け皿を挿入可能な第2の開口部が設けられる、
請求項5に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ファンは、前記フィルタの下流側に設置される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項9】
開口部が形成された筐体と、
前記筐体に収容された固定子と、
前記固定子に対して回転可能に前記筐体に収容された回転子と、
前記筐体の内部の気体が通過可能な流路が設けられるとともに前記開口部に挿入されて前記筐体に着脱可能に取り付けられる流路部材と、前記流路に配置されて前記流路部材に保持されたフィルタと、前記流路部材に保持されるとともに回転することにより前記フィルタに前記気体を通過させるファンと、前記ファンに取り付けられるとともに当該ファンを回転駆動させる駆動部と、前記流路部材に保持されるとともに前記フィルタによって捕捉された前記気体中の粒子の量に関する物理量を検出する検出部と、前記流路部材に設けられるとともに前記検出部によって検出された前記物理量を出力する出力部と、を有するモジュールと、
前記出力部が出力した前記物理量を監視するモニタ部と、
を備え
前記駆動部は、前記モジュールが前記筐体に装着された場合に出力される第1の信号と、前記回転子が回転している場合に出力される第2の信号と、がともに入力されたことを条件として、前記ファンを回転駆動させる、
回転電機検査システム。
【請求項10】
前記モニタ部は、前記物理量が閾値以上である場合に報知を行う、
請求項9に記載の回転電機検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および回転電機検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子には、コイルの巻線が巻回されている。巻線は、絶縁部材である樹脂製のくさび(ウエッジ)によって固定子に固定される。くさびは、回転電機の温度変化や振動、経年劣化等の影響によって摩耗する。また、同じく絶縁部材である巻線の被覆部材も、同様の理由で摩耗する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭63-202145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
くさびの摩耗が進行すると、巻線の固定状態が維持できなくなる可能性がある。また、巻線の被覆部材の摩耗によって、コイルの絶縁性能が悪化する可能性がある。そのため、特許文献1には、定期的に回転電機を停止させて、くさびを引き抜いて目視検査を行うことが記載されている。このような目視検査を行うためには固定子を分解する必要があるため、手間と時間を要する。そのため、容易な検査方法が求められていた。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、回転電機を停止および分解することなく、回転電機内部の絶縁部材の状態を容易に把握することができる回転電機および回転電機検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の回転電機は、第1の開口部が形成された筐体と、前記筐体に収容された固定子と、前記固定子に対して回転可能に前記筐体に収容された回転子と、前記筐体の内部の気体が通過可能な流路が設けられるとともに前記第1の開口部に挿入されて前記筐体に着脱可能に取り付けられる流路部材と、前記流路に配置されて前記流路部材に保持されたフィルタと、前記流路部材に保持されるとともに回転することにより前記フィルタに前記気体を通過させるファンと、前記ファンに取り付けられるとともに当該ファンを回転駆動させる駆動部と、前記流路部材に保持されるとともに前記フィルタによって捕捉された前記気体中の粒子の量に関する物理量を検出する検出部と、前記流路部材に設けられるとともに前記検出部によって検出された前記物理量を出力する出力部と、を有するモジュールと、を備え、前記駆動部は、前記モジュールが前記筐体に装着された場合に出力される第1の信号と、前記回転子が回転している場合に出力される第2の信号と、がともに入力されたことを条件として、前記ファンを回転駆動させる
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る回転電機は、回転電機を停止および分解することなく、回転電機内部の絶縁部材の状態を容易に把握することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機の構成の一例を示すXZ断面図である。
図2図2は、固定子巻線の構造の一例を示す断面図である。
図3図3は、図1の全閉外扇形回転電機のA-A断面図である。
図4図4は、フィルタボックスの概略構造および装着構造の一例を示す斜視図である。
図5図5は、フィルタボックスを回転電機のフレームに装着した状態の一例を示すYZ断面図である。
図6図6は、ファンモータの回転状態を制御する制御回路の概略構成を示す図である。
図7図7は、モジュールに、受け皿を挿入する蓋部を設けた例を示す斜視図である。
図8図8は、図7のモジュールを全閉外扇形回転電機のフレームに装着した状態の一例を示すYZ断面図である。
図9図9は、第2の実施形態の回転電機検査システムの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図10図10は、回転電機検査システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明の例示的な実施形態を開示する。以下に示される実施形態の構成(技術的特徴)、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、いずれも一例である。
【0010】
<全閉外扇形回転電機の構成>
まず、図1を用いて、本発明の第1の実施形態である全閉外扇形回転電機1aの構成を説明する。図1は、実施形態の全閉外扇形回転電機1aの構成の一例を示すXZ断面図である。
【0011】
図1に示すように、全閉外扇形回転電機1aは、回転動作を行う回転電機本体2と、冷却器3と、筐体5と、を備える。筐体5は回転電機本体2と冷却器3とに亘って設けられている。また、全閉外扇形回転電機1aの内部には、回転電機本体2と冷却器3とに亘って、冷却用気体(以下、単に気体と呼ぶ)で満たされた閉空間4が設けられている。気体は、例えば空気である。回転電機本体2の発熱によって加熱された閉空間4の内部の気体が冷却器3にて外気と熱交換されることにより、回転電機本体2が冷却される。なお、全閉外扇形回転電機1aは、本開示における回転電機の一例である。また、冷却器3は、本開示における冷却部の一例である。
【0012】
回転電機本体2は、フレーム11aと、回転子12と、固定子13とを有する。
【0013】
フレーム11aは、箱型に形成されている。フレーム11aは、回転子12の一部と固定子13とを収容している。なお、フレーム11aの上端には、仕切板11cが設置されて、フレーム11aの上端を塞いでいる。これによって、フレーム11aと仕切板11cとによって、密閉された筐体5が構成される。フレーム11aは筐体部材とも称される。
【0014】
回転子12は、ロータシャフト14と、回転子鉄心15とを有する。ロータシャフト14のうち軸方向の両端部の間の部分には、回転子鉄心15が固定されている。
【0015】
ロータシャフト14は、二つの軸受16を介してフレーム11aに回転可能に支持されている。二つの軸受16は、ロータシャフト14の軸方向(X軸方向)において回転子鉄心15の両側に位置する。軸受16は、例えば、すべり軸受やころがり軸受等である。
【0016】
ロータシャフト14の軸方向の両端部は、フレーム11aからフレーム11aの外部に突出している。ロータシャフト14の軸方向の一方の端部(X軸正側の端部)には、結合部14aが設けられている。結合部14aは、結合対象(不図示)と結合される。また、ロータシャフト14の軸方向の他方の端部(X軸負側の端部)には、外扇17が固定されている。外扇17は、ロータシャフト14と一体に回転する。また、ロータシャフト14における二つの軸受16と回転子鉄心15とのそれぞれの間には、内扇18が固定されている。内扇18は、ロータシャフト14と一体に回転する。内扇18は、回転することにより、固定子13および回転子12と冷却器3(より具体的には後述する熱交換器31)との間で気体を循環させる。なお、内扇18は、本開示における循環用ファンの一例である。
【0017】
固定子13は、固定子鉄心19と、固定子巻線20とを有する。固定子鉄心19は、ロータシャフト14の径方向における回転子鉄心15の外側に位置し、回転子鉄心15を囲む円筒状に形成されている。固定子巻線20は、ロータシャフト14の軸方向に延びるように固定子鉄心19の内周面19aに形成された複数のスロット23(図2参照)内を貫通して、くさび22(図2参照)によって、固定子鉄心19に固定されている。なお、くさび22の詳細な構造は後述する。
【0018】
冷却器3は、熱交換器31と、外扇カバー32と、出口ガイド33と、を有する。
【0019】
熱交換器31は、複数の冷却管41と、入口端板42と、出口端板43と、冷却器カバー45とを有する。複数の冷却管41は、互いに並列に配置されている。入口端板42と出口端板43とは、冷却管41の軸方向(X軸方向)の両端部を支持している。冷却器カバー45は、入口端板42と出口端板43とに亘って設けられて、冷却管41を収納している。
【0020】
入口端板42と、出口端板43と、冷却器カバー45とは、フレーム11bを構成している。フレーム11bは、回転電機本体2の上端部に固定されている。フレーム11bの下端には、仕切板11cが設置されて、フレーム11bの下端を塞いでいる。これによって、フレーム11bと仕切板11cとによって、密閉された筐体5が構成される。即ち、全閉外扇形回転電機1aは、冷却器3を収容する筐体5と、回転電機本体2を収容する筐体5と、を有する。フレーム11bは筐体部材とも称される。
【0021】
冷却管41、入口端板42、出口端板43、冷却器カバー45、およびフレーム11aは、互いに接続されて、閉空間4を形成している。閉空間4におけるフレーム11a内の空間4aと冷却器カバー45内の空間4bとは、いずれも仕切板11cに形成された入口10aおよび二つの出口10bで互いに連通している。入口10aは、フレーム11aにおける、固定子13の上方の部分に形成されている。二つの出口10bは、フレーム11aにおける内扇18の斜め上方の部分に形成されている。即ち、入口10aは、二つの出口10bの間に位置している。
【0022】
また、冷却器カバー45内には、二つのガイド板44が設けられている。二つのガイド板44は、入口端板42と出口端板43との間で、冷却管41の軸方向に互いに間隔を空けて並べられている。二つのガイド板44は、冷却器カバー45内の空間4bの底部から上方(Z軸正方向)に延びて、冷却器カバー45内の空間4bのうち上部連通空間4cを除く空間を冷却管41の軸方向に仕切っている。
【0023】
外扇カバー32は、入口端板42に固定され、外扇17を収納している。外扇カバー32には、吸込口37が設けられており、外扇17が回転することにより、外気が吸込口37から外扇カバー32内に流入する。また、外扇17により外扇カバー32内に流入した外気が複数の冷却管41の内側に流入するように、外扇カバー32が入口端板42と接続されている。また、外扇カバー32内には、吸込口37から外扇カバー32内に流入した外気が外扇17を通過して複数の冷却管41に流れるように外気をガイドするガイド部材46が設けられている。
【0024】
出口ガイド33は、出口端板43に固定されている。出口ガイド33は、複数の冷却管41から流出する外気が所定の方向(図1の例ではZ軸負方向)に流れるようにガイドする。
【0025】
<全閉外扇形回転電機における気体の流れ>
次に、全閉外扇形回転電機1aの内部における気体の流れについて説明する。
【0026】
まず、閉空間4内の冷却用気体(気体)について説明する。閉空間4におけるフレーム11a内の空間4aの気体は、ロータシャフト14と一体に回転する二つの内扇18により圧送されて、回転子12および固定子13に沿って流れて回転子12および固定子13を冷却した後、固定子鉄心19の径方向外側に流出する。固定子鉄心19の径方向外側に流出した気体は、気流F1を形成して、入口10aを経由して冷却器3内の空間4bに流入する。冷却器3の空間4bに流入した気体は、冷却管41の外側を通過する過程で、冷却管41内を流れる外気と熱交換し冷却されながら、二つのガイド板44の間を上昇して上部連通空間4cに流出する。
【0027】
上部連通空間4cの気体は、冷却管41の軸方向(Z軸方向)に互いに反対方向に分流して、入口端板42とガイド板44との間と、出口端板43とガイド板44との間とを、それぞれ冷却管41内の外気と熱交換し冷却されながら下降する。その後、気体は、気流F2,F3を形成して、出口10bを介してフレーム11a内の空間4aに戻り、再びそれぞれ内扇18に流入する。
【0028】
次に、外気の流れを説明する。外気は、ロータシャフト14と一体に回転する外扇17により吸込口37から外扇カバー32内に流入し、外扇カバー32内を通過して入口端板42に到達する。入口端板42に到達した外気は、入口端板42で開口している各冷却管41内に流入し、冷却管41内で冷却管41外側の気体から熱を受けて温度上昇しながら冷却管41内を通過した後、出口端板43側の開口から冷却器3の外部に流出する。このように、冷却管41の内側の外気と冷却管41の外側の気体との間で熱交換が行われることにより、回転子12および固定子13の冷却が行われる。
【0029】
<固定子の巻線構造>
次に、図2を用いて、固定子13の巻線構造を説明する。図2は、固定子巻線の構造の一例を示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、固定子13を構成する固定子鉄心19には、内周面19aに沿って、複数のスロット23が形成される。スロット23の内部には、固定子巻線20が上下2層に巻回される。固定子巻線20の表面は、絶縁部材である絶縁被膜21によって被覆されている。
【0031】
固定子巻線20の上方には、くさび22が嵌合される。くさび22は樹脂部材等の絶縁部材で形成される。くさび22は、全閉外扇形回転電機1aが回転した際の振動によって、固定子巻線20が、スロット23から脱落するのを防止する。
【0032】
絶縁被膜21は、一般に機械加工での製作ではなく、例えば手作業で塗布されるため、表面が微小な凹凸を有している。全閉外扇形回転電機1aを長期間回転させると、この微小な凹凸は、経年に亘る電磁振動やヒートサイクル等によるなじみ現象によって次第に平坦になる。これによって、くさび22が絶縁被膜21および固定子巻線20を押す力が弱まるため、くさび22と絶縁被膜21との間には緩みが発生する。この緩みによって、くさび22と絶縁被膜21との間には隙間が出来る。全閉外扇形回転電機1aの運転によって振動が発生すると、隙間の中で固定子巻線20が振動するため、絶縁被膜21がくさび22やスロット23と接触することによって、絶縁被膜21やくさび22の摩耗が発生する。このような摩耗によって発生した絶縁部材の粉塵は、全閉外扇形回転電機1aのフレーム11a内に放出される。そして、くさび22や絶縁被膜21が摩耗することによって、固定子巻線20の固定状態に緩みが生じるため、固定子巻線20がスロット23の内部で移動するようになる。これによって、固定子巻線20の絶縁性能が悪化するおそれがある。
【0033】
<フィルタボックスの構成>
次に、図3を用いて、全閉外扇形回転電機1aの構成を説明する。図3は、図1の全閉外扇形回転電機のA-A断面図である。
【0034】
フレーム11a内の空間4aの入口10aの近傍には、フィルタボックス50aが設置されている。フィルタボックス50aは、入口10aに流入する閉空間4内の気体を通過させる筒状の部材である。フィルタボックス50aには、気体が通過可能な流路が設けられる。フィルタボックス50aは金属材料または樹脂材料で形成される。フィルタボックス50aの内部には、フィルタ52と、圧力センサ54と、ファン56とが設置される。そして、フィルタボックス50aは、フィルタ52と、圧力センサ54と、ファン56とを、フレーム11aの内部に一体的に保持する。なお、フィルタボックス50aは、本開示における流路部材の一例である。
【0035】
フィルタ52は、全閉外扇形回転電機1aが回転した際に当該全閉外扇形回転電機1aを循環する気体の流路に配置される。また、フィルタ52は、フィルタボックス50aに流入した気体を通過させる。その際、フィルタ52は、当該フィルタ52を通過しない粉塵等の粒子を捕捉する。フィルタ52は、例えば不織布や樹脂等で形成されて、全閉外扇形回転電機1aが回転中にフレーム11aの内部が高温状態になった場合であっても使用可能な耐熱性を備える。なお、フィルタ52に捕捉される粒子は、全閉外扇形回転電機1aの固定子13に使用されている絶縁部材が摩耗することによって生じた粒子を含む。本実施形態では、フィルタ52は、フレーム11a内の空間4aの入口10aの近傍に設置される。フレーム11a内の空間4aの入口10aの近傍は、フィルタ52が全閉外扇形回転電機1aで発生した粒子を比較的捕捉しやすい位置である。
【0036】
圧力センサ54は、気体がフィルタ52を通過する際の流路の上流側に備えられた圧力センサ54aと、気体がフィルタ52を通過する際の流路の下流側に備えられた圧力センサ54bとを有する。圧力センサ54aは、フィルタ52の上流側における気体の圧力Paを計測する。そして、圧力センサ54bは、フィルタ52の下流側における気体の圧力Pbを計測する。圧力センサ54(54a,54b)は、例えば、シリコン等の半導体で形成されたダイヤフラムに加わる圧力に応じて、半導体の抵抗値が変化することを利用したものが用いられるが、その他の計測原理を用いた圧力センサを用いてもよい。圧力センサ54が検出した、フィルタ52の上流における気体の圧力Paからフィルタ52の下流における気体の圧力Pbを差し引いた差圧P、即ちPa-Pbは、フィルタ52に捕捉された粒子の量を反映する。詳しくは後述する。なお、圧力センサ54(54a,54b)は、本開示における検出部の一例である。また、差圧Pは、本開示における、フィルタ52によって捕捉された気体中の粒子の量に関する物理量の一例である。
【0037】
ファン56は、フィルタ52の上流側または下流側のいずれかの側に設置されて、回転することによって、フィルタ52の上流側から下流側に気体を通過させる。なお、本実施形態では、ファン56は、フィルタ52を通過する気体の下流側に設置されるものとして説明する。回転したファン56は、フレーム11aの内部の気体を吸い込んで、図3に示す気流F1をフィルタボックス50aに導く。そして、ファン56に吸い出された気体は、入口10aから、冷却器カバー45内の空間4bの内部に流入する。なお、ファン56は、フィルタ52の上流側に設置してもよい。但し、ファン56をフィルタ52の上流側に設置する場合には、フィルタボックス50aに流入する粒子がファン56にも付着してしまうおそれがあるため、ファン56を、帯電しにくく埃が付着しにくい材質とするのが望ましい。
【0038】
なお、フィルタボックス50aの詳細な構造は後述する(図4図5参照)。
【0039】
<フィルタボックスの詳細構造>
次に、図4図5を用いて、フィルタボックス50aの詳細構造を説明する。図4は、フィルタボックスの概略構造および装着構造の一例を示す斜視図である。図5は、フィルタボックスを回転電機のフレームに装着した状態の一例を示すYZ断面図である。
【0040】
フィルタボックス50aは、骨組部材51aと、蓋部57aとを有する。骨組部材51aは。筒状である。骨組部材51aには、図5に示す流路83が設けられている。流路83はZ軸に沿って上下方向に延びる。流路83には、図3に示した気流F1が流れる。骨組部材51aは、フィルタ52と、圧力センサ54と、ファン56とを保持する。蓋部57aは、骨組部材51aに取り付けられる。具体的には、骨組部材51aは、フレーム11aに形成された開口部60に挿入される。開口部60は、フィルタボックス50aとフィルタ52とファン56とが通過可能な形状に形成される。図4に示すように、蓋部57aは、フレーム11aの開口部60を覆う位置でフレーム11aに雄ネジであるビス62によって着脱可能に取り付けられる。ビス62は、蓋部57aの端部に設けられた取付孔61に挿入された状態で、フレーム11aに設けられた雌ネジ63と結合する。なお、フレーム11aの内部の気密性を保つために、蓋部57aの裏面とフレーム11aの表面とが接する領域には、密閉用のシール部材であるガスケット64が設置される。蓋部57aは、本開示における蓋部材の一例である。フィルタボックス50aと、フィルタ52と、圧力センサ54と、ファン56と、蓋部57aとを併せて、モジュール70aと称する。
【0041】
フィルタ52は、図5に示すように、骨組部材51aの内周、および蓋部57aの裏面に沿って設けられた2本のリブ53の間に差し込まれた状態で保持される。なお、2本のリブ53の間隔は、フィルタ52の厚さよりも若干狭くなっており、フィルタ52は、当該フィルタ52が有する弾性力によって、2本のリブ53の間に保持される。
【0042】
圧力センサ54a,54bは、それぞれ骨組部材51aの内部に備えられた2本の管部材55a,55bの先端に設置される。圧力センサ54aの出力は、管部材55aの内部に敷設された信号線(不図示)を通して、蓋部57aの外側に設置された表示器59に導かれる。同様に、圧力センサ54bの出力は、管部材55bの内部に敷設された信号線(不図示)を通して、蓋部57aの外側に設置された表示器59に導かれる。
【0043】
表示器59は、圧力センサ54aが出力した圧力Paから、圧力センサ54bが出力した圧力Pbを差し引く減算機能と、減算結果である差圧Pを出力する出力機能とを備える。なお、図4に示す表示器59は、差圧Pをアナログ表示として出力する形態であるが、差圧Pをデジタル表示として出力する形態としてもよい。この場合、表示器59は、更に、差圧Pをデジタル信号に変換するAD変換器を備える。なお、表示器59は、本開示における出力部の一例である。
【0044】
ファン56は、当該ファン56を回転駆動するファンモータ58に取り付けられる。ファンモータ58は、例えばDCモータである。ファンモータ58の駆動電源は、骨組部材51aに埋設した電源線(不図示)を通して供給される。即ち、フィルタボックス50aは、フィルタ52と、圧力センサ54a,54b(検出部)と、ファン56と、表示器59(出力部)と、蓋部57a(蓋部材)とを一体的に保持する。
【0045】
<フィルタの集塵量と差圧との関係>
次に、フィルタ52の集塵量と差圧Pとの関係について説明する。まず、ファン56をフィルタ52の下流側に設置した場合について説明する。ファン56を回転させて気体を下流側に吸い出すと、フィルタ52の下流側は上流側に比べて圧力が低下する。即ち、フィルタ52の下流側には負圧が発生する。この負圧によって、フィルタ52の上流側の気体が、フィルタ52に吸い込まれて、フィルタ52を通過して下流側に移動する。そして、フィルタ52の集塵量が多くなると、フィルタ52の通気抵抗が大きくなる。そのため、フィルタ52を通過する気体の量が減少する。これによって、フィルタ52の下流側の負圧はより一層大きくなる。即ち、フィルタ52の下流側の圧力は、フィルタ52の上流側の圧力よりもさらに減少する。ここで、全閉外扇形回転電機1aの回転状態および冷却器3の動作状態が一定であると仮定すると、フィルタ52の集塵量が増加した場合であっても、フレーム11a,11bの内部の気体の圧力は変動しないため、フィルタ52の上流側の圧力は、略一定になる。これに対して、フィルタ52の下流側の圧力は、前記したように、フィルタ52の集塵量の増加に伴って減少する。
【0046】
なお、気体がフィルタ52を通過する場合、集塵量が少ない場合であっても、フィルタ52は通気抵抗を有するため、気体がフィルタ52を通過した際の圧力損失が発生する。したがって、集塵量が少ないフィルタ52であっても、フィルタ52の上流側と下流側とには、圧力差ΔPが存在する。
【0047】
そして、フィルタ52の上流側の圧力からフィルタ52の下流側の圧力を差し引いた差圧Pは、フィルタ52の集塵量に応じて単調に増加する。
【0048】
全閉外扇形回転電機1aが、粉塵の少ないクリーンな環境で使用される場合、フィルタ52の集塵量は、全閉外扇形回転電機1aの固定子13に使用されている絶縁部材が摩耗することによって発生した粉塵の量と相関が高い。即ち、フィルタ52の集塵量が増加するほど、固定子13に使用されている絶縁部材が摩耗していると推定される。
【0049】
したがって、差圧Pが所定の閾値を超えた場合には、フィルタ52に、全閉外扇形回転電機1aから発生した所定量を超える粉塵が捕捉されているものと推定することができる。なお、差圧Pの所定の閾値は、事前に評価実験を行って設定すればよい。当該閾値は、全閉外扇形回転電機1aの種類や運転条件、運転環境等、および設置するフィルタ52の面積等によって異なるため、実際の使用場面に近い状態で取得した閾値を利用するのが望ましい。
【0050】
次に、ファン56をフィルタ52の上流側に設置した場合について説明する。フィルタ52の上流側に設置したファン56を回転させて気体をフィルタ52の側に送り出すと、フィルタ52の上流側は下流側に比べて圧力が増加する。即ち、フィルタ52の上流側には正圧が発生する。この正圧によって、フィルタ52の上流側の気体が、フィルタ52に送り出されて、フィルタ52を通過して下流側に移動する。そして、フィルタ52の集塵量が多くなると、フィルタ52の通気抵抗が大きくなる。そのため、フィルタ52を通過する気体の量が減少する。これによって、フィルタ52の上流側の正圧はより一層大きくなる。即ち、フィルタ52の上流側の圧力は、フィルタ52の下流側の圧力よりもさらに増加する。ここで、全閉外扇形回転電機1aの回転状態および冷却器3の動作状態が一定であると仮定すると、フィルタ52の集塵量が増加した場合であっても、フレーム11a,11bの内部の気体の圧力は変動しないため、フィルタ52の下流側の圧力は、略一定になる。これに対して、フィルタ52の上流側の圧力は、前記したように、フィルタ52の集塵量の増加に伴って増加する。
【0051】
そして、フィルタ52の上流側の圧力からフィルタ52の下流側の圧力を差し引いた差圧Pは、フィルタ52の集塵量の増加に応じて単調に増加する。このときの差圧Pの変化の状態は、ファン56をフィルタ52の下流側に置いた場合と略等しくなる。なお、ファン56をフィルタ52の下流側に置いた場合と上流側に置いた場合とで、集塵量が増加するほど差圧Pが増加するという変化の傾向が同じになるのであって、差圧Pの値が同じになる訳ではない。
【0052】
したがって、本実施形態において、ファン56は、フィルタ52を通過する気体の流路に対して、上流側と下流側のいずれに設置してもよい。
【0053】
そして、全閉外扇形回転電機1aを回転させた状態で、表示器59に表示された差圧Pが、前記した所定の閾値を超えた場合には、固定子13に使用されている絶縁部材の摩耗が進行した状態であると推定される。
【0054】
なお、フィルタ52の集塵量を推定するのに、差圧P以外の物理量を利用してもよい。例えば、フィルタ52が捕捉した粒子の重量に基づいて、フィルタ52の集塵量を推定してもよい。即ち、フィルタ52が捕捉した粒子の重量が大きいほど、フィルタ52の集塵量が多いと推定することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、フィルタ52が、フレーム11a(筐体)の内部に備えられた例を説明したが、フィルタ52は、入口10a付近の、フレーム11b(筐体)の内部に備えられてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、フィルタボックス50aの下側から上側に向けて気体が流れる構造を例にあげて説明したが、気体の流れる方向は、これに限定されない。即ち、フィルタボックス50aの上側から下側に向けて気体が流れる構造としてもよいし、フィルタボックス50aの中を気体が水平方向に流れる構造としてもよい。フィルタボックス50aの構造は、例えば、全閉外扇形回転電機1aを収容するフレーム11aと、熱交換器31を収容するフレーム11bとの位置関係に応じて決定すればよい。
【0057】
また、本実施形態において、モジュール70aを、当該モジュール70aから圧力センサ54a,54b(検出部)と表示器59(出力部)とを取り除いた構成を有するモジュール70b(非図示)としてもよい。即ち、フィルタボックス50aに保持されたフィルタ52とファン56と蓋部57aとを、フレーム11aから着脱可能なモジュールとしてもよい。これによって、全閉外扇形回転電機1aを停止させることなく、モジュール70bをフレーム11aから取り外して、フィルタ52に捕捉された粒子の量を確認することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、モジュール70aは筐体5の内部に設置したが、フレーム11aとフレーム11bとを非図示の管状部材によって接続して、当該管状部材に中を流れる気体がモジュール70の内部を通過する構成としてもよい。
【0059】
<ファンモータの駆動方法>
次に、図6を用いて、ファン56の駆動機構について説明する。図6は、ファンモータの回転状態を制御する制御回路の概略構成を示す図である。
【0060】
ファンモータ58は、モータドライバ58aと、ANDゲート58bと、モータ本体58cとを備える。なお、モータドライバ58aは、本開示における駆動部の一例である。
【0061】
ファン56はファンモータ58によって回転駆動されるため、一般には、ファンモータ58の回転を指示するスイッチ操作に基づいて回転と停止とを切り替える必要がある。しかしながら、モジュール70aを筐体5に取り付けた後で、ファンモータ58の回転の指示を怠る可能性がある。そのため、ファンモータ58の回転と停止の指示が不要となるように、本実施形態では、モジュール70aがフレーム11aに装着されて、尚且つ、全閉外扇形回転電機1aが回転しているときだけ、ファン56がファンモータ58によって回転駆動される。ファンモータ58は、モジュール70aがフレーム11aに装着されていること、および全閉外扇形回転電機1aが回転していることを検出する機能を備える。
【0062】
即ち、モータドライバ58aは、ANDゲート58bの出力がHiレベルであるときのみ、モータ本体58cを回転させる。ANDゲート58bには、接点導通信号S1と、全閉外扇形回転電機1aの回転信号S2とが入力される。
【0063】
接点導通信号S1は、モジュール70aがフレーム11aに装着された状態にあるときにのみ、全閉外扇形回転電機1aが出力する信号である。接点導通信号S1は、モジュール70aがフレーム11aに装着された状態にあるときにHiレベルを出力する。詳細は図示しないが、例えば、蓋部57aをフレーム11aに装着した際に、蓋部57aの裏面側とフレーム11aの表面とが接触する領域の一部に、電気的な接点を設けて、当該接点が接触した場合に、接点導通信号S1が出力されるものとする。
【0064】
全閉外扇形回転電機1aの回転信号S2は、全閉外扇形回転電機1a(回転電機)が出力する、全閉外扇形回転電機1aが回転していることを示す信号である。回転信号S2は、全閉外扇形回転電機1aが回転しているときにHiレベルを出力する。
【0065】
全閉外扇形回転電機1aが回転しており、モジュール70aがフレーム11aに装着された状態にあるときには、接点導通信号S1と回転信号S2とがともにHiレベルになる。そして、ANDゲート58bはHiレベルを出力する。このとき、モータドライバ58aに供給された電源がモータ本体58cに供給されるため、ファンモータ58が回転駆動されて、ファン56が回転する。また、モジュール70aをフレーム11aから取り外すと、接点導通信号S1がLoレベルに変化するため、ANDゲート58bの出力がLoレベルに変化する。このとき、ANDゲート58bはHiレベルを出力するため、ファンモータ58が停止する。そして、ファン56も停止する。
【0066】
以上説明したように、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)は、フレーム11a(筐体)と、フレーム11aに収容された固定子13と、固定子13に対して回転可能にフレーム11aに収容された回転子12とを備える。また、全閉外扇形回転電機1aは、フィルタボックス50a(流路部材)と、フィルタ52と、ファン56と、圧力センサ54a,54b(検出部)と、表示器59(出力部)とを備える。フィルタボックス50aには、フレーム11aの内部の気体が通過可能な流路83が設けられている。フィルタ52は、流路83に配置される。ファン56は、回転することによって、フィルタ52にフレーム11aの内部の気体を通過させる。圧力センサ54a,54bは、フィルタ52によって捕捉された気体中の粒子の量に関する物理量の一例である差圧Pを検出する。表示器59は、圧力センサ54a,54bによって検出された物理量を出力する。したがって、全閉外扇形回転電機1aを停止および分解することなく、フィルタ52が捕捉した粒子の量、例えば、全閉外扇形回転電機1aの固定子13に使用されている絶縁部材が摩耗することによって発生した粒子の量を把握することができる。これによって、全閉外扇形回転電機1aの状態を容易に把握することができる。
【0067】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)において、圧力センサ54a,54b(検出部)は、フィルタ52に対して流路83における気体の流れ方向での上流側の圧力Paと、フィルタ52に対して流路83における気体の流れ方向での下流側の圧力Pbと、の差を表す差圧Pを検出する。したがって、フィルタ52に捕捉された粒子の量に関する物理量を確実かつ容易に検出することができる。
【0068】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)において、表示器59(出力部)は、差圧Pを表示する。したがって、フィルタ52に捕捉された粒子の量を容易に確認することができる。
【0069】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)は、気体と外気との間で熱交換を行う熱交換器31と、回転することにより固定子13および回転子12と熱交換器31との間で気体を循環させる内扇18(循環用ファン)とを備える。そして、内扇18によって循環する気体が流路83を通過する。したがって、全閉外扇形回転電機1aで発生した粒子を冷却用気体に乗せて効率的にフィルタ52に導くことができる。
【0070】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)は、フィルタボックス50a(流路部材)とフィルタ52とファン56と圧力センサ54(54a,54b)と蓋部57a(蓋部材)とを有して、フレーム11a(筐体)に着脱可能なモジュール70aを備える。そして、フレーム11aには、フィルタボックス50aとフィルタ52とファン56と圧力センサ54とが通過可能な開口部60が設けられて、蓋部57aは、開口部60を覆うように設置される。したがって、表示器59に出力された差圧Pの値に応じて、全閉外扇形回転電機1aを分解することなく、モジュール70aをフレーム11aから取り出してフィルタ52の状態を確認することができる。
【0071】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)において、ファン56を回転駆動するファンモータ58のモータドライバ58a(駆動部)は、モジュール70aがフレーム11a(筐体)に装着された場合に出力される接点導通信号S1(第1の信号)と、全閉外扇形回転電機1aの回転子12が回転している場合に出力される回転信号S2(第2の信号)と、がともに入力されたことを条件として、ファン56を回転駆動させる。したがって、ファンモータ58の回転および停止の指示を不要とすることができる。また、全閉外扇形回転電機1aが運転していないときにはファン56が回転しないため、ファンモータ58による消費電力を低減させることができる。
【0072】
また、第1の実施形態の全閉外扇形回転電機1a(回転電機)は、フレーム11a(筐体)と、フレーム11aに収容された固定子13と、固定子13に対して回転可能にフレーム11aに収容された回転子12とを備える。また、全閉外扇形回転電機1aは、フィルタボックス50b(流路部材)と、フィルタ52と、ファン56と、モジュール70bと、を備える。フィルタボックス50bには、フレーム11aの内部の気体が通過可能な流路83が設けられている。フィルタ52は、流路83に配置される。ファン56は、回転することによって、フィルタ52にフレーム11aの内部の気体を通過させる。モジュール70bは、フィルタボックス50bとフィルタ52とファン56と蓋部57a(蓋部材)とを備える。当該モジュール70bは、フレーム11aに設けられた、フィルタボックス50bとフィルタ52とファン56とが通過可能な開口部60を通して、蓋部57aが開口部60を覆うように、フレーム11aに着脱可能に取り付けられる。したがって、全閉外扇形回転電機1aを停止および分解することなく、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外して、フィルタ52に捕捉された粒子の状態を確認することができる。
【0073】
(第1の実施形態の変形例)
次に、図7図8を用いて、本発明の第1の実施形態の変形例である全閉外扇形回転電機1bが備えるモジュール70cについて説明する。図7は、モジュールに、受け皿を挿入する蓋部を設けた例を示す斜視図である。図8は、図7のモジュールを全閉外扇形回転電機のフレームに装着した状態の一例を示すYZ断面図である。
【0074】
全閉外扇形回転電機1b(非図示)は、第1の実施形態で説明した全閉外扇形回転電機1aが備えるモジュール70aの代わりにモジュール70cを備える。モジュール70cは、フィルタボックス50bと蓋部57bとを備える。なお、モジュール70cは、本開示における流路部材の一例である。
【0075】
蓋部57bは、フレーム11aの内部におけるフィルタ52の下側に開口部65を備える。開口部65には、ヒンジ67で開閉可能に取り付けられた開閉扉66が設置される。なお、蓋部57bは、本開示における蓋部材の一例である。
【0076】
開口部65には、開閉扉66を開いた状態で受け皿68が挿入される。即ち、受け皿68は、開口部65を介してフレーム11aの内部に挿入される。受け皿68の底面は、フィルタボックス50bの底部の内周に沿ってリブ状に形成されたガイド部材69にガイドされて、フィルタボックス50bの奥まで挿入される。即ち、フィルタボックス50bは、フィルタボックス50aが備える骨組部材51aにガイド部材69を付加した骨組部材51bを備える。なお、受け皿68は、フィルタボックス50bの内部において、フィルタ52の有効面積(フィルタ52に流入した気体が通過する面積)よりも広い面積を有する。
【0077】
受け皿68は、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外す際の振動によって、フィルタ52から落下する粒子を受け止める。これによって、フィルタ52に捕捉された粒子がフレーム11aの内部に落下するのを防止する。
【0078】
作業者は、開閉扉66を開いて、開口部65から受け皿68を挿入する。そして、受け皿68を挿入したまま、フレーム11aからフィルタボックス50bを取り外す。その後、フィルタ52の状態を目視確認して、フィルタ52が汚れている場合は、フィルタ52を取り外して洗浄する。そして、作業者は、洗浄後に再びフィルタ52を取り付けて、フィルタボックス50bをフレーム11aに装着する。なお、フィルタボックス50bをフレーム11aに装着する際は、受け皿68は取り外してもよい。
【0079】
なお、フィルタボックス50bは、受け皿68を保持する機構を備えていないため、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外す際に受け皿68が外れないように、本実施形態では、受け皿68のY軸に沿う長さを、フィルタボックス50bのY軸に沿う長さよりも大きくしている。これによって、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外す際に、作業者は、蓋部57bと受け皿68の双方に指をかけて保持することができる。したがって、開口部65に挿入した受け皿68を移動させることなく、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外すことができる。勿論、開口部65に挿入した受け皿68が、フィルタボックス50bに固定される固定機構を設けてもよい。
【0080】
なお、ファン56をフィルタ52の上流に設置した場合は、受け皿68は、ファン56の更に上流側、即ち、ファン56のZ軸負側に挿入される構造とすればよい。
【0081】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例の全閉外扇形回転電機1b(回転電機)において、気体の流路83は上下方向に延びて、蓋部57b(蓋部材)には、フレーム11a(筐体)の外部からフレーム11aの内部におけるフィルタ52の下側に受け皿68を挿入可能な開口部65が設けられる。したがって、フィルタボックス50bをフレーム11aから取り外す際に、開口部65から受け皿68を挿入することによって、フィルタ52に捕捉された粒子は受け皿68に落下するため、粒子がフレーム11aの内部に落下するのを防止することができる。
【0082】
なお、フィルタボックス50bを取り出すことによって、フィルタ52に捕捉された粒子や受け皿68に落下した粒子を取得することができるため、取得した粒子の成分分析を行うことによって、絶縁部材の摩耗のみならず、全閉外扇形回転電機1bの内部で何かしらの摩耗が発生していることを検出することができる。
【0083】
(第2の実施形態)
次に、図9を用いて、本発明の第2の実施形態である回転電機検査システム80について説明する。図9は、第2の実施形態の回転電機検査システムの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0084】
<回転電機検査システムの構成>
回転電機検査システム80は、全閉外扇形回転電機1a(回転電機)に装着されたフィルタボックス50cと、検査装置90とを備える。なお、フィルタボックス50cは、前記したフィルタボックス50a(図5)から表示器59を取り除いた構成を有する。また、フィルタボックス50cは、前記したフィルタボックス50b(図7)から表示器59を取り除いた構成であってもよい。
【0085】
フィルタボックス50cは、フレーム11aの内部の気体の流路に設置されて、フィルタ52と、圧力検出部81と、ファン56と、圧力出力部82とを備える。
【0086】
フィルタボックス50cは、フィルタ52と、圧力検出部81と、ファン56と、圧力出力部82とを保持して、フィルタ52に気体を通過させるための流路を形成する。
【0087】
フィルタ52は、気体の流路に設置されて、当該気体に含まれた粒子を捕捉する。
【0088】
圧力検出部81は、フィルタ52の上流と下流における気体の圧力を検出する。圧力検出部81は、例えば、前記した圧力センサ54a,54bである。なお、圧力検出部81は、本開示における検出部の一例である。
【0089】
ファン56は、フィルタ52の上流または下流に設置されて、回転駆動されることによって、フィルタ52に気体を通過させる。
【0090】
圧力出力部82は、圧力検出部81が検出した圧力Pa,Pbを、電気信号としてフィルタボックス50cの外部に出力する。なお、圧力出力部82は、本開示における出力部の一例である。
【0091】
検査装置90は、圧力出力部82が出力した、フィルタ52の上流と下流における気体の圧力、即ちフィルタ52に捕捉された粒子の量に係る情報を監視する。なお、検査装置90は、本開示におけるモニタ部の一例である。
【0092】
検査装置90は、圧力取得部91と、差圧算出部92と、差圧表示部93と、報知判定部94と、報知出力部95と、回転電機状態モニタ部96とを備える。なお、検査装置90は、ROM(Read Only Memory)から読み出したプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して、プログラムに記録された処理を順次実行する制御部と、制御部に対して各種操作指示を行うキーボード等の操作部と、制御部が行った処理結果を出力するディスプレイ等の表示部とを備える、一般的なPC(Personal Computer)の構成を備える。
【0093】
圧力取得部91は、フィルタボックス50cが出力したフィルタ52の上流の圧力Paと、フィルタ52の下流の圧力Paとを取得する。
【0094】
差圧算出部92は、圧力Paから圧力Paを差し引くことによって、差圧Pを算出する。
【0095】
差圧表示部93は、差圧算出部92が算出した差圧Pを表示する。
【0096】
報知判定部94は、差圧Pと閾値とを比較することによって、差圧Pが閾値以上であるかを判定する。
【0097】
報知出力部95は、差圧Pが閾値以上である場合に、音や表示によって報知を行う。なお、報知出力部95は、例えば音を出力するスピーカや、映像を出力するモニタ等である。
【0098】
回転電機状態モニタ部96は、全閉外扇形回転電機1a(回転電機)が回転しているかをモニタする。回転電機状態モニタ部96は、例えば、フィルタボックス50cに保持されたファン56を回転駆動するファンモータ58の回転状態をモニタすることによって、ファンモータ58が回転している場合は、全閉外扇形回転電機1aが回転していると判定する。なお、回転電機状態モニタ部96は、全閉外扇形回転電機1aの回転子12が回転しているかをモニタすることによって、回転子12が回転している場合に、全閉外扇形回転電機1aが回転していると判定してもよい。
【0099】
なお、検査装置90は、圧力取得部91が取得した圧力Pa,Pb、または、差圧算出部92が算出した差圧Pの時間変化(ログ)を記憶する機能を備えてもよい。このようにして記憶されたログを解析することによって、集塵量の変化等を分析することができる。
【0100】
<検査装置が行う処理の流れ>
次に、図10を用いて、回転電機検査システム80が行う処理の流れを説明する。図10は、回転電機検査システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0101】
圧力取得部91は、フィルタボックス50cから、フィルタ52の上流の圧力Paと、フィルタ52の下流の圧力Paとを取得する(ステップS11)。
【0102】
差圧算出部92は、圧力取得部91が取得した圧力Paから圧力Pbを差し引くことによって、差圧Pを算出する(ステップS12)。
【0103】
差圧表示部93は、差圧算出部92が算出した差圧Pを表示する(ステップS13)。
【0104】
報知判定部94は、差圧Pが閾値以上であるかを判定する(ステップS14)。差圧Pが閾値以上であると判定される(ステップS14:Yes)とステップS15に進む。一方、差圧Pが閾値以上であると判定されない(ステップS14:No)とステップS16に進む。
【0105】
ステップS14において、差圧Pが閾値以上であると判定されると、報知出力部95は報知を行う(ステップS15)。このとき、報知出力部95は、検査装置90が備える表示部に画像や映像、または音や音声によって、差圧Pが閾値以上であることを示す情報を提示する。その後、回転電機検査システム80は、図10の処理を終了する。
【0106】
ステップS14において、差圧Pが閾値以上であると判定されないと、回転電機状態モニタ部96は、全閉外扇形回転電機1aが停止しているかを判定する(ステップS16)。全閉外扇形回転電機1aが停止していると判定される(ステップS16:Yes)と、回転電機検査システム80は、図10の処理を終了する。一方、全閉外扇形回転電機1aが停止していると判定されない(ステップS16:No)とステップS11に戻る。
【0107】
以上説明したように、第2の実施形態の回転電機検査システム80は、フレーム11a(筐体)と、フレーム11aに収容された固定子13と、固定子13に対して回転可能にフレーム11aに収容された回転子12とを備える。また、回転電機検査システム80は、フィルタボックス50c(流路部材)と、フィルタ52と、ファン56と、圧力検出部81(検出部)と、圧力出力部82(出力部)と、検査装置90(モニタ部)とを備える。フィルタボックス50cには、フレーム11aの内部の気体が通過可能な流路83が設けられている。フィルタ52は、流路83に配置される。ファン56は、回転することによって、フィルタ52にフレーム11aの内部の気体を通過させる。圧力検出部81は、フィルタ52によって捕捉された気体中の粒子の量に関する物理量の一例である差圧Pを検出する。圧力出力部82は、圧力検出部81によって検出された差圧P(物理量)を出力する。検査装置90は、圧力出力部82が出力した差圧Pを監視する。したがって、フィルタ52が捕捉した粒子の量に関する物理量を常時監視することができる。
【0108】
また、第2の実施形態の回転電機検査システム80において、検査装置90(モニタ部)の報知出力部95は、差圧P(フィルタ52に捕捉された気体中の粒子の量に関する物理量)が閾値以上である場合に報知を行う。したがって、全閉外扇形回転電機1aの固定子13の点検が必要であることを、確実に報知することができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1a,1b…全閉外扇形回転電機(回転電機)、2…回転電機本体、3…冷却器、4…閉空間、5…筐体、11a,11b…フレーム(筐体)、11c…仕切板、12…回転子、13…固定子、14…ロータシャフト、15…回転子鉄心、18…内扇(循環用ファン)、19…固定子鉄心、19a…内周面、20…固定子巻線、21…絶縁被膜、22…くさび、23…スロット、31…熱交換器、50a,50b,50c…フィルタボックス(流路部材)、51a,51b…骨組部材、52…フィルタ、53…リブ、54,54a,54b…圧力センサ(検出部)、55a,55b…管部材、56…ファン、57a,57b…蓋部(蓋部材)、58…ファンモータ、58a…モータドライバ(駆動部)、59…表示器(出力部)、60…開口部、64…ガスケット、65…開口部、68…受け皿、69…ガイド部材、70a,70b,70c…モジュール、80…回転電機検査システム、81…圧力検出部、82…圧力出力部、83…流路、90…検査装置(モニタ部)、91…圧力取得部、92…差圧算出部、93…差圧表示部、94…報知判定部、95…報知出力部、96…回転電機状態モニタ部、F1,F2,F3…気流、S1…接点導通信号(第1の信号)、S2…回転信号(第2の信号)
図1
図2
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図9
図10