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特許7385566突然変異RASに対するHLAクラスI拘束性T細胞受容体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】突然変異RASに対するHLAクラスI拘束性T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20231115BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231115BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231115BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/725
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61K38/16
A61K35/76
A61K48/00
A61K35/12
A61K38/04
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020530325
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063581
(87)【国際公開番号】W WO2019112941
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】62/594,244
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ、ラミ
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ヨン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】カフリ、ガル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/085904(WO,A1)
【文献】Cancer Immunology Research,2016年03月,Vol.4, No.3 ,pp.204-214,https://aacrjournals.org/cancerimmunolres/article/4/3/204/468486/Identification-of-T-cell-Receptors-Targeting-KRAS参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K 14/00-825
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)2、配列番号3のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号7のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;及び
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含み、
前記TCRは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子のHLA-A 11:01分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)。
【請求項2】
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域であって:
(i)配列番号17の48位のXが、Cysであり;
(ii)配列番号17の112位のXが、Luであり;
(iii)配列番号17の114位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号17の115位のXが、Vlである、α鎖定常領域;及び
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域であって、配列番号18の57位のXが、Cysである、β鎖定常領
更に含む、請求項1に記載単離又は精製されたTCR。
【請求項3】
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むα鎖であって:
(i)配列番号21の185位のXがCysであり;
(ii)配列番号21の249位のXが、Luであり;
(iii)配列番号21の251位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号21の252位のXが、Vlである、α鎖;及び
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むβ鎖であって、配列番号22の190位のXが、Cysである、β鎖
含む、請求項1又は2に記載の単離又は精製されたTCR。
【請求項4】
離又は精製されたポリペプチドであって、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)2、配列番号3のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号7のアミノ酸配列を含むα鎖可変領域;及び
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号8のアミノ酸配列を含むβ鎖可変領域を含み、
ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子のHLA-A 11:01分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、
単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項5】
請求項4に記載の記載の単離又は精製されたポリペプチドであって、
a)配列番号17のアミノ酸配列を含むα鎖定常領域であって:
(i)配列番号17の48位のXが、Cysであり;
(ii)配列番号17の112位のXが、Luであり;
(iii)配列番号17の114位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号17の115位のXが、Vlである、α鎖定常領域;及び
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域であって、配列番号18の57位のXが、Cysである、β鎖定常領域
含む、単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の単離又は精製されたポリペプチドであって、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むα鎖であって:
(i)配列番号21の185位のXが、Cysであり;
(ii)配列番号21の249位のXが、Luであり;
(iii)配列番号21の251位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号21の252位のXが、Vlである、α鎖;及び
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むβ鎖であって、配列番号22の190位のXが、Cysである、β鎖
含む、単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項7】
単離又は精製されたタンパク質であって、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)2、配列番号3のアミノ酸配列を含むTCRのα鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号7のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むTCRのβ鎖の相補性決定領域(CDR)3を有する、配列番号8のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖

ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子のHLA-A 11:01分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、単離又は精製されたタンパク質。
【請求項8】
請求項7に記載の単離又は精製されたタンパク質であって、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖であって:
(i)配列番号17の48位のXが、Cysであり;
(ii)配列番号17の112位のXが、Luであり;
(iii)配列番号17の114位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号17の115位のXが、Vlである、第一のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号18のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖であって、配列番号18の57位のXが、Cysである、第二のポリペプチド
更に含む、単離又は精製されたタンパク質。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の単離又は精製されたタンパク質であって、
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖であって:
(i)配列番号21の185位のXが、Cysであり;
(ii)配列番号21の249位のXが、Luであり;
(iii)配列番号21の251位のXが、Ieであり;及び
(iv)配列番号21の252位のXが、Vlである、第一のポリペプチド鎖;及び
(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖であって、配列番号22の190位のXが、Cysである、第二のポリペプチド鎖;
含む、単離又は精製されたタンパク質。
【請求項10】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒトキルステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、突然変異ヒトハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、又は突然変異ヒト神経芽腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列である、請求項1~のいずれか1項に記載のTCR。
【請求項11】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列のアミノ酸配列が、配列番号29若しくは30を含むか、又はから成る、請求項10に記載のTCR。
【請求項12】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、12位のグリシンの置換を含む、野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのアミノ酸配列を含み、12位は、それぞれ、野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASタンパク質を基準にして定義される、請求項10に記載のTCR。
【請求項13】
置換が、12位のグリシンの、バリンでの置換である、請求項12に記載のTCR。
【請求項14】
請求項1~及び1013のいずれか1項に記載のTCR、請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、又は請求項9のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の組換え発現ベクターを含む、単離又は精製された宿主細胞。
【請求項17】
請求項16に記載の宿主細胞を含む、単離又は精製された細胞集団。
【請求項18】
(a)請求項1~及び1013のいずれか1項に記載のTCR、請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項9のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項14に記載の核酸、請求項15に記載の組換え発現ベクター、請求項16に記載の宿主細胞、又は請求項17に記載の細胞集団、及び(b)医薬的に許容可能な担体、を含む、医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法であって:
(a)がんの細胞を含む試料と、請求項1~及び1013のいずれか1項に記載のTCR、請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項9のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項14に記載の核酸、請求項15に記載の組換え発現ベクター、請求項16に記載の宿主細胞、請求項17に記載の宿主細胞集団又は請求項18に記載の医薬組成物とを接触させ、それにより複合体を形成すること;及び
(b)複合体を検出すること
を含み、複合体の検出が哺乳動物におけるがんの存在を示す、方法。
【請求項20】
哺乳動物におけるがんの治療又は予防のための医薬組成物であって、請求項1~及び1013のいずれか1項に記載のTCR、請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項9のいずれか1項に記載のタンパク質、請求項14に記載の核酸、請求項15に記載の組換え発現ベクター、請求項16に記載の宿主細胞、又は請求項17に記載の細胞集団を含む、医薬組成物。
【請求項21】
がんが突然変異ヒトRASアミノ酸配列を発現し、突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトHRAS、又は突然変異ヒトNRASのアミノ酸配列である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、12位のグリシンの置換を含む野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのアミノ酸配列を含み、12位が、それぞれ野生型ヒトKRAS、野生型ヒトHRAS、又は野生型ヒトNRASのアミノ酸配列を基準にして定義される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
置換が、12位のグリシンの、バリンによる置換である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒトキルステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)のアミノ酸配列である、請求項2123のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列である、請求項2123のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒトハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)のアミノ酸配列である、請求項2123のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
がんが膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、又は前立腺がんである、請求項2026のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年12月4日に出願された米国仮特許出願番号第62/594,244号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦によって支援された研究開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号BC010985の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された物件の参照による組込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に組込まれる:2018年12月3日付の「741039_ST25.txt」という名前の37,098バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ある種のがんは、特に、がんが転移性で切除不能になった場合、治療選択肢が非常に限られる場合がある。例えば、手術、化学療法、及び放射線療法等の治療における進歩にもかかわらず、例えば膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん及び前立腺がん等の多くのがんの予後は、不良な場合がある。従って、がんに対する更なる治療について、満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、(i)配列番号1~3、(ii)配列番号4~6、又は(iii)配列番号1~6のアミノ酸配列を含む単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)であって、TCRが、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し、突然変異ヒトRASアミノ酸配列が、突然変異ヒトキルステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、突然変異ヒトハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、又は突然変異ヒト神経芽腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)のアミノ酸配列である、TCRを提供する。
【0006】
本発明の別の実施形態は、本発明のTCRの機能的部分を含む単離又は精製されたポリペプチドであって、機能的部分が、(a)配列番号1~3のすべて、(b)配列番号4~6のすべて、又は(c)配列番号1~6のすべてのアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを提供する。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも1の本発明のポリペプチドを含む、単離または精製されたタンパク質を提供する。
【0008】
本発明の更なる実施形態は、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質に関連する、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団及び医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の実施形態により、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法、及び哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法が、更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はKRAS WT 24マーペプチド若しくはKRAS G12V 24マーペプチドでパルスした自己DCとの共培養後の末梢血CD8+T細胞によるCD137発現を説明するグラフを表す。枠内の数字は、各共培養条件でCD137を発現するT細胞の割合を示す。
図1B図1Bは、T細胞の、DMSO、KRAS WT 24マーペプチド又はKRAS G12V 24マーペプチドでパルスした自己DCとの共培養後の2×10細胞当たりのIFN-γスポットの数を示すグラフである。PMA:イオノマイシンと培養したT細胞及びDMSOでパルスしたDCと培養したT細胞がコントロールとして機能した。
図2図2は、KRAS G12V四量体-アロフィコシアニン(APC)又はKRAS G12V四量体-フィコエリトリン(PE)に結合したKRAS G12V 24マーペプチドで既にIVSを受けたCD8+末梢血細胞のパーセンテージを説明する実験データ(ドットプロット)を表すグラフを示す(右のプロット)。左のプロットは、KRAS G12V四量体-APC又はKRAS G12V四量体-PEに結合したHLA-A11:01に関連してKRAS G12D 10マーを認識するTCRを発現するよう改変しているT細胞を示す。
図3図3は、フローサイトメトリーにより、マウスTCRベータ鎖定常領域(mTCRベータ)発現についての染色によって測定した、実施例2のTCRで形質導入した第一及び第二のドナー(それぞれ左及び右パネル)からの同種異系T細胞の表面上のTCRの発現を示すグラフを表す。枠内の数字は、mTCRベータ発現について陽性であった細胞の割合を示す。
図4図4は、異なるKRASG12突然変異を発現するがん細胞株と一晩共培養した後の、実施例2のTCRで形質導入した、2人の異なるドナー(ドナー1及びドナー2)からのT細胞による、ELISPOTアッセイ(2E4細胞あたりのIFN-γスポット)により測定したIFN-γ産生及び4-1BB発現(%mTCRβ+CD137+)を示すグラフである。各標的がん細胞株は、形質導入しなかったか、又はHLA-A11:01で形質導入した。「>」は500スポット超を示す。
図5図5Aは、実施例2のTCRで形質導入したT細胞の、表示した濃度(ng/mL)のKRAS G12V 9マーペプチド(黒丸)又はKRAS WT 9マーペプチド(白丸)でパルスした標的細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度(pg/mL)を示すグラフである。図5Bは、実施例2のTCRで形質導入したT細胞の、表示した濃度(ng/mL)のKRAS G12V 10マーペプチド(黒丸)又はKRAS WT 10マーペプチド(白丸)でパルスした標的細胞との共培養後に分泌されたIFN-γの濃度(pg/mL)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
RASファミリーのタンパク質は、低分子量GTPアーゼの大ファミリーに属する。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、突然変異すると、RASタンパク質は多くのヒトがんの発がんの初期において、シグナル伝達に関与し得ると考えられている。単一のアミノ酸置換がタンパク質を活性化し得る。突然変異RASタンパク質産物は、構成的に活性化され得る。突然変異RASタンパク質は、例えば、膵臓がん(例、膵臓がん(pancreatic carcinoma))、結腸直腸がん、肺がん(例、肺腺がん)、子宮内膜がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん)、及び前立腺がん等の種々のヒトのがんのいずれかで発現し得る。ヒトRASファミリーのタンパク質としては、キルステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、ハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、及び神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)が挙げられる。
【0012】
KRASは、GTPアーゼKRas、V-Ki-Ras2キルステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子、又はKRAS2とも称される。2のKRAS転写産物変異体:KRAS変異体A及びKRAS変異体Bがある。野生型(WT)KRAS変異体Aは、配列番号9のアミノ酸配列を有する。野生型(WT)KRAS変異体Bは配列番号10のアミノ酸を有する。以下、「KRAS」(突然変異又は非突然変異(WT))への言及は、特に明記しない限り、変異体A及び変異体Bの両方を指す。活性化されると、突然変異KRASはグアノシン5’-三リン酸(GTP)に結合し、GTPをグアノシン5’-二リン酸(GDP)に変換する。
【0013】
HRASは、RASタンパク質ファミリーの別のメンバーである。HRASは、ハーベイラット肉腫ウイルスがんタンパク質、V-Ha-Rasハーベイラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ、又はRasファミリー低分子量GTP結合タンパク質H-Rasとも称される。WT HRASは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。
【0014】
NRASは、RASタンパク質ファミリーの更に別のメンバーである。NRASは、GTPase NRas、V-Ras神経芽細胞種RASウイルスがん遺伝子ホモログ、又はNRAS1とも称される。WT NRASは、配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0015】
本発明の一実施形態は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列(以下、「突然変異RAS」)に対して抗原特異性を有する単離又は精製されたTCRを提供し、突然変異ヒトRASアミノ酸配列は、突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトHRAS、又は突然変異ヒトNRASのアミノ酸配列である。以下、「TCR」への言及は、特に明記しない限り、TCRの機能的部分及び機能的変異体も指す。
【0016】
本発明のTCRは、任意の突然変異ヒトRASタンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有し得る。本発明の一実施形態においては、突然変異ヒトRASアミノ酸配列は、突然変異ヒトKRASアミノ酸配列、突然変異ヒトHRASアミノ酸配列、又は突然変異ヒトNRASアミノ酸配列である。WTヒトKRAS、NRAS、及びHRASのタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ188~189アミノ酸残基の長さを有し、互いに高度な同一性を有している。例えば、WTヒトNRASタンパク質のアミノ酸配列は、WTヒトKRASタンパク質のそれと86.8%同一である。WTヒトNRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~86は、100%同一である。WTヒトHRASタンパク質のアミノ酸配列は、WTヒトKRASタンパク質のそれと86.3%同一である。WTヒトHRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~94は、100%同一である。以下、「RAS」(突然変異又は非突然変異(WT))への言及は、特に明記しない限り、集合的にKRAS、HRAS、及びNRASを指す。
【0017】
本発明の一実施形態においては、突然変異ヒトRASアミノ酸配列は、12位のグリシンの置換を含むWT RASアミノ酸配列を含み、12位は、WT RASタンパク質をそれぞれ基準にして定義される。上記説明の通り、WTヒトNRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~86は100%同一であり、WTヒトHRASタンパク質及びWTヒトKRASタンパク質のアミノ酸残基1~94は100%同一であるため、WT RASタンパク質は、WT KRASタンパク質(配列番号9又は10)、WT HRASタンパク質(配列番号11)、又はWT NRASタンパク質(配列番号12)のいずれであってもよい。従って、WT KRAS、WT HRAS、及びWT NRASタンパク質のそれぞれの12位のアミノ酸残基は同一、即ちグリシンである。
【0018】
WT RASアミノ酸配列の12位のグリシンは、グリシン以外の任意のアミノ酸残基で置換されてもよい。本発明の一実施形態においては、置換は、WT RASアミノ酸配列の12位のグリシンのバリンでの置換である。これに関して、本発明の実施形態は、G12V突然変異を含む任意のWT RASタンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアミノ酸配列に対して抗原特異性を有するTCRを提供する。
【0019】
RASの突然変異及び置換は、本明細書において、WT RASタンパク質のアミノ酸配列を基準にして定義される。従って、RASの突然変異及び置換は、WT RASタンパク質中の特定の位置に存在するアミノ酸残基、次に位置番号、次に、その残基が、検討中の特定の突然変異又は置換において置換されたアミノ酸残基を基準にして、本明細書に記載される。RASアミノ酸配列(例、RASペプチド)は、全長のWT RASタンパク質の全部に満たない、アミノ酸残基を含み得る。従って、12位は、本明細書において、RASアミノ酸配列の特定の例における対応する残基の実際の位置が異なる場合があるという理解の下で、WT全長RASタンパク質(即ち、配列番号9~12のいずれか1つ)を基準にして定義される。位置が配列番号9~12のいずれか1つで定義される通りである場合、用語「G12」は、配列番号9~12のいずれか1つの12位に通常存在するグリシンを指し、「G12V」は、配列番号9~12のいずれか1つの12位に通常存在するグリシンはバリンにより置換されていることを示す。例えば、RASアミノ酸配列の特定の例が、例、
【0020】
【化1】
【0021】
(配列番号28)(配列番号9の連続するアミノ酸残基2~24に対応する例示的なWT KRASペプチド)である場合、「G12V」は、たとえ配列番号28の下線付きグリシンの実際の位置が11であるとしても、配列番号28の下線付きグリシンのバリンでの置換を指す。
【0022】
G12V突然変異を含む全長RASタンパク質の例を、以下の表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明の一実施形態においては、TCRは、上記のG12V突然変異を含むRASペプチドに対して抗原特異性を有し、突然変異RASペプチドは任意の長さを有する。本発明の一実施形態においては、突然変異RASペプチドは、本明細書に記載のHLAクラスI分子のいずれかへの結合に好適な任意の長さを有する。例えば、TCRは、G12V突然変異を含むRASペプチドに対して抗原特異性を有し得、RASペプチドは、約9~約10アミノ酸残基の長さを有する。突然変異RASペプチドは、G12V突然変異を含む突然変異RASタンパク質の任意の連続するアミノ酸残基を含み得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、G12V突然変異を含むRASペプチドに対して抗原特異性を有し得、突然変異RASペプチドは、約9アミノ酸残基又は約10アミノ酸残基の長さを有する。本発明のG12V TCRによって認識され得る、それぞれG12V突然変異を含む特定のペプチドの例は、9マーのVVGAVGVGK(配列番号29)及び10マーのVVVGAVGVGKである。
【0025】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、HLAクラスI分子によって提示される突然変異RASを認識することができる。これに関して、TCRは、突然変異RASへの結合に際して、HLAクラスI分子の関連内で、免疫応答を誘発し得る。本発明のTCRは、突然変異RASに加え、HLAクラスI分子に結合し得る。
【0026】
本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子は、HLA-A分子である。HLA-A分子は、α鎖とβ2マイクログロブリンのヘテロ二量体である。HLA-Aα鎖は、HLA-A遺伝子によってコードされ得る。β2マイクログロブリンは、アルファ鎖のアルファ1、アルファ2、アルファ3ドメインに非共有結合的に結合して、HLA-A複合体を構築する。HLA-A分子は、任意のHLA-A分子であり得る。本発明の一実施形態においては、HLAクラスI分子は、HLA-A11分子である。HLA-A11分子は、任意のHLA-A11分子であり得る。HLA-A11分子の例としては、HLA-A11:01、HLA-A11:02、HLA-A11:03、又はHLA-A11:04が挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましくは、HLAクラスI分子は、HLA-A11:01分子である。
【0027】
本発明のTCRは、養子細胞移入のために用いられる細胞によって発現される場合を含め、種々の利点のいずれか1以上を提供し得る。突然変異RASはがん細胞によって発現され、健常な非がん細胞によっては発現されない。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、本発明のTCRは、健常な非がん細胞の破壊を最小化又は排除し、それにより毒性を、例えば最小化又は排除することによって低減しながら、がん細胞の破壊を好都合に目的とすると考えられる。更に、本発明のTCRは、例えば、化学療法、手術又は放射線療法等の他のタイプの治療に応答しない突然変異RAS陽性がんを、首尾よく好都合に治療又は予防し得る。RASG12突然変異は、多くのがんの種類で見られる最も一般的なホットスポット突然変異の1つである。たとえば、KRAS G12V突然変異は、膵臓がん及び結腸直腸がんの患者のそれぞれ約27%及び約9%に発現する。更に、RASファミリーのメンバーは、様々な種類のがん(例、メラノーマにおけるNRAS)でG12ホットスポット突然変異を共有する。追加的に、本発明のTCRは、親和性の高い突然変異RASの認識を提供し、これは、操作されていない腫瘍細胞(例、インターフェロン(IFN)γで処理されていない、突然変異RAS及びHLA-A11:01の一方若しくは両方をコードするベクターでトランスフェクションされていない、G12V突然変異を含むRASペプチドでパルスされていない、又はそれらの組合せの腫瘍細胞)を認識する能力を提供し得る。更に、HLA-A11:01アレルは、コーカサス及びヒスパニックの民族の概ね14%及び概ね9%でそれぞれ発現する。HLA-A11:01アレルは、合衆国におけるアジア系民族の最大約45%で発現する。従って、本発明のTCRは、他のMHC分子によって提示されたRASを認識するTCRを用いた免疫療法に適していない場合があるHLA-A11:01アレルを発現する患者を含む、免疫療法に適格ながん患者数を増加させ得る。更に、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、ヒトアミノ酸配列を含み、これは、例、マウスアミノ酸配列を含むTCR、ポリペプチド及びタンパク質と比較して、ヒト免疫系による拒絶のリスクを低減し得る。
【0028】
本明細書で用いられる場合、語句「抗原特異性」は、TCRが高いアビディティーで突然変異RASに特異的に結合し得、免疫学的に認識し得ることを意味する。例えば、(a)低濃度の突然変異RASペプチド(例、約0.05ng/mL~約10ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、5ng/mL、8ng/mL、10ng/mL、又は前記値の任意の2つによって定義される範囲)でパルスした抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、又は(b)標的細胞が突然変異RASを発現するよう、突然変異RASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、との共培養に際して、TCRを発現する約1×10~約1×10のT細胞が、少なくとも約200pg/mL以上(例、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、20,000pg/mL以上、又は前記値の任意の2つによって定義される範囲)のIFN-γを分泌する場合、TCRは突然変異RASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。本発明のTCRを発現する細胞はまた、より高濃度の突然変異RASペプチドでパルスした抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞との共培養に際しても、IFN-γを分泌し得る。HLAクラスI分子は、本明細書に記載のHLAクラスI分子のいずれであってもよい(例、HLA-A11:01分子)。
【0029】
代替的に又は追加的に、(a)低濃度の突然変異RASペプチドでパルスした抗原陰性HLA-クラスI分子陽性標的細胞、又は(b)標的細胞が、突然変異RASを発現するよう、突然変異RASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、との共培養に際して、TCRを発現するT細胞が、ネガティブコントロールによって発現されるIFN-γの量と比べて少なくとも2倍の多さのIFN-γを分泌する場合、TCRは突然変異RASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。ネガティブコントロールは、例えば、(i)(a)同じ濃度の関係性のないペプチド(例、突然変異RASペプチドとは異なる配列を含む幾つかの他のペプチド)でパルスした抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、若しくは(b)標的細胞が関係性のないペプチドを発現するよう、関係性のないペプチドをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、と共培養された、TCRを発現するT細胞、又は(ii)(a)同じ濃度の突然変異RASペプチドでパルスされた抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、若しくは(b)標的細胞が突然変異RASを発現するよう、突然変異RASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、と共培養された、非形質導入T細胞(例、TCRを発現しないPBMC由来)であり得る。ネガティブコントロールの標的細胞によって発現されるHLAクラスI分子は、試験されるT細胞と共培養される標的細胞によって発現されるHLAクラスI分子と同じである。HLAクラスI分子は、本明細書に記載のHLAクラスI分子のいずれであってもよい(例、HLA-A11:01分子)。IFN-γ分泌は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等の当該技術分野において公知の方法によって測定され得る。
【0030】
代替的に又は追加的に、(a)低濃度の突然変異RASペプチドでパルスされた抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、又は(b)標的細胞が突然変異RASを発現するよう、突然変異RASをコードするヌクレオチド配列が導入されている抗原陰性HLAクラスI分子陽性標的細胞、との共培養に際して、IFN-γを分泌するネガティブコントロールT細胞の数と比べて、少なくとも2倍の多さの数の、TCRを発現するT細胞がIFN-γを分泌する場合、TCRは突然変異RASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。HLAクラスI分子、ペプチドの濃度及びネガティブコントロールは、本発明の他の態様に関して明細書に記載される通りであり得る。IFN-γを分泌する細胞の数は、例えば、例、ELISPOT等の当該技術分野において公知の方法によって測定され得る。
【0031】
代替的に又は追加的に、TCRを発現するT細胞が、例えば、突然変異RASを発現する標的細胞で刺激後にフローサイトメトリーによって測定された、1以上のT細胞活性化マーカーの発現を上方制御する場合、TCRは突然変異RASに対して「抗原特異性」を有すると考えられ得る。T細胞活性化マーカーの例としては、4-1BB、OX40、CD107a、CD69、及び抗原刺激に際して上方制御されるサイトカイン(例、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)-2等)が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態は、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖又はそれらの組合せ等の、2のポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRが突然変異RASに対して抗原特異性を有するという条件で、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0033】
本発明の一実施形態においては、TCRは2のポリペプチド鎖を含み、そのそれぞれが、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3を含む可変領域を含む。本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1(α鎖のCDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2(α鎖のCDR2)、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3(α鎖のCDR3)を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1(β鎖のCDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2(β鎖のCDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3(β鎖のCDR3)を含む第二のポリペプチド鎖を含む。これに関して、本発明のTCRは、配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列のいずれか1以上を含み得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、(a)配列番号1~3のすべて、(b)配列番号4~6のすべて、又は(c)配列番号1~6のすべて、のアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態においては、TCRは、配列番号1~6のすべてのアミノ酸配列を含む。
【0034】
本発明の一実施形態においては、TCRは、上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含む。TCRは、ヒト可変領域、例、ヒトα鎖可変領域及びヒトβ鎖可変領域、を含み得る。これに関して、TCRは:配列番号7(α鎖の可変領域);配列番号8(β鎖の可変領域);又は配列番号7及び8の両方、のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、TCRは、配列番号7及び8の両方のアミノ酸配列を含む。
【0035】
本発明のTCRは、α鎖定常領域及びβ鎖定常領域を更に含み得る。定常領域は、例、ヒト又はマウス等の任意の好適な種に由来し得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、マウスα鎖及びβ鎖定常領域又はヒトα鎖及びβ鎖定常領域を更に含む。本明細書で用いられる場合、用語「マウス」又は「ヒト」は、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、α鎖、及び/又はβ鎖)に言及する場合は、それぞれマウス又はヒトに由来するTCR(又はその構成要素)、即ち、それぞれマウスT細胞又はヒトT細胞起源であるか、又はかつてそれに発現したTCR(又はその構成要素)を意味する。
【0036】
本発明の一実施形態は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRであって、HLAクラスI分子によって提示される突然変異ヒトRASアミノ酸配列に対して抗原特異性を有する、TCRを提供する。マウス定常領域は、任意の1以上の利点を提供し得る。例えば、マウス定常領域は、本発明のTCRの、本発明のTCRが導入される宿主細胞の内因性TCRとの誤対合を減少させ得る。代替的に又は追加的に、マウス定常領域は、ヒト定常領域を含む同じTCRと比較して、本発明のTCRの発現を増大させ得る。キメラTCRは、配列番号19(野生型(WT)マウスα鎖定常領域)、配列番号20(WTマウスβ鎖定常領域)、又は配列番号19及び20の両方、のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号19及び20の両方のアミノ酸配列を含む。キメラTCRは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りのCDR領域のいずれかと組合せて、本明細書に記載のマウス定常領域のいずれかを含み得る。これに関して、TCRは:(a)配列番号1~3及び19のすべて;(b)配列番号4~6及び20のすべて;又は(c)配列番号1~6及び19~20のすべて、のアミノ酸配列を含み得る。本発明の別の実施形態においては、キメラTCRは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される可変領域のいずれかと組合せて、本明細書に記載のマウス定常領域のいずれかを含み得る。これに関して、TCRは:(i)配列番号7及び19の両方;(ii)配列番号8及び20の両方;又は(iii)配列番号7~8及び19~20のすべて、のアミノ酸配列を含み得る。
【0037】
本発明の別の実施形態においては、TCRは:配列番号23(WTマウス定常領域を含むα鎖)、配列番号24(WTマウス定常領域を含むβ鎖)又は配列番号23~24の両方、のアミノ酸配列(複数可)を含む。
【0038】
本発明の一実施形態においては、TCRは置換定常領域を含む。これに関して、TCRは、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域に1、2、3、又は4アミノ酸の置換(複数可)を含む、本明細書に記載のTCRのいずれかのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、TCRは、α鎖及びβ鎖の一方又は両方のマウス定常領域において1、2、3、又は4アミノ酸の置換(複数可)を含むマウス定常領域を含む。特に好ましい実施形態においては、TCRは、α鎖のマウス定常領域に1、2、3、又は4アミノ酸の置換(複数可)及びβ鎖のマウス定常領域に1のアミノ酸置換を含むマウス定常領域を含む。いくつかの実施形態においては、置換定常領域を含むTCRは、非置換(野生型)定常領域を含む親TCRと比較して、好都合に、突然変異RAS標的の認識の増大、宿主細胞による発現の増大、内因性TCRとの誤対合の減少、及び抗腫瘍活性の増大のうちの1以上を提供する。一般に、TCRα鎖及びβ鎖のマウス定常領域の置換アミノ酸配列、それぞれ配列番号17及び18は、非置換マウス定常領域アミノ酸配列のすべて又は一部に対応し、配列番号17は、配列番号19と比較した場合に、1、2、3、又は4アミノ酸の置換(複数可)を有し、配列番号18は、配列番号20と比較した場合に、1のアミノ酸置換を有する。これに関して、本発明の一実施形態は、(a)配列番号17(α鎖の定常領域)であって;(i)48位のXが、Thr又はCysであり;(ii)112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり;(iii)114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、配列番号17;(b)配列番号18(β鎖の定常領域)であって、57位のXが、Ser又はCysである、配列番号18;又は(c)配列番号17及び18の両方、のアミノ酸配列を含む、TCRを提供する。本発明の一実施形態においては、配列番号17を含むTCRは、配列番号19(α鎖の非置換マウス定常領域)を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号18を含むTCRは、配列番号20(β鎖の非置換マウス定常領域)を含まない。
【0039】
本発明の一実施形態においては、TCRは、可変領域及び定常領域を含むα鎖、並びに可変領域及び定常領域を含むβ鎖を含む。これに関して、TCRは、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むα鎖であって、(i)配列番号21の185位のXが、Thr又はCysであり;(ii)配列番号21の249位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり;(iii)配列番号21の251位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)配列番号:21の252位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、α鎖;(b)配列番号:22のアミノ酸配列を含むβ鎖であって、配列番号22の190位のXが、Ser又はCysである、β鎖;又は(c)(a)及び(b)の両方を含み得る。本発明の一実施形態においては、配列番号21を含むTCRは、配列番号23(非置換α鎖)を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号22を含むTCRは、配列番号24(非置換β鎖)を含まない。
【0040】
本発明の一実施形態においては、置換定常領域は、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域におけるシステイン置換を含み、システイン置換TCRを提供する。α鎖とβ鎖の対向するシステインは、非置換マウス定常領域を含むTCRには存在しない、置換TCRのα鎖及びβ鎖の定常領域を相互に連結するジスルフィド結合を提供する。これに関して、TCRは、配列番号19の48位のネイティブのThr(Thr48)及び配列番号20の57位のネイティブのSer(Ser57)の一方又は両方がCysで置換されてもよいシステイン置換TCRであり得る。好ましくは、配列番号19のネイティブのThr48及び配列番号20のネイティブのSer57の両方がCysで置換される。システイン置換TCR定常領域配列の例を表2に示す。本発明の一実施形態においては、システイン置換TCRは、(i)配列番号17、(ii)配列番号18、又は(iii)配列番号17及び18の両方を含み、配列番号17及び18の両方は、表2に定義される通りである。本発明のシステイン置換TCRは、本明細書に記載のCDRのいずれか又は可変領域に加えて置換定常領域を含み得る。
【0041】
本発明の一実施形態においては、システイン置換キメラTCRは、全長アルファ鎖及び全長ベータ鎖を含む。システイン置換キメラTCRのアルファ鎖及びベータ鎖の配列の例を表2に示す。本発明の一実施形態においては、TCRは、(i)配列番号21、(ii)配列番号22、又は(iii)配列番号21及び22の両方を含み、配列番号21~22は表2に定義される通りである。
【0042】
【表2】
【0043】
本発明の一実施形態においては、置換されたアミノ酸配列は、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける1、2、又は3アミノ酸の、疎水性アミノ酸による置換を含み、疎水性アミノ酸置換TCRを提供する(本明細書中、「LVL改変TCR」とも呼ばれる)。TCRのTMドメインにおける疎水性アミノ酸置換(複数可)は、TMドメイン中に疎水性アミノ酸置換(複数可)を欠くTCRと比較して、TCRのTMドメインの疎水性を増大させ得る。これに関して、TCRはLVL改変TCRであり、配列番号19のネイティブのSer112、Met114、及びGly115のうちの1つ、2つ、又は3つが独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpで;好ましくは、Leu、Ile、又はValで置換され得る。好ましくは、配列番号19のネイティブのSer112、Met114、及びGly115の3つすべてが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpで;好ましくはLeu、Ile、又はValで置換され得る。本発明の一実施形態においては、LVL改変TCRは、(i)配列番号17、(ii)配列番号18、又は(iii)配列番号17及び18の両方を含み、配列番号17及び18の両方は、表3に定義される通りである。本発明のLVL改変TCRは、本明細書に記載のCDR又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。
【0044】
本発明の一実施形態においては、LVL改変TCRは、全長アルファ鎖及び全長ベータ鎖を含む。LVL改変TCRのアルファ鎖及びベータ鎖の配列の例を表3に示す。本発明の一実施形態においては、LVL改変TCRは、(i)配列番号21、(ii)配列番号22、又は(iii)配列番号21及び22の両方を含み、配列番号21~22は、表3に定義される通りである。
【0045】
【表3】
【0046】
本発明の一実施形態においては、置換されたアミノ酸配列は、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける1、2、又は3アミノ酸の、疎水性アミノ酸による置換(複数可)と組合せて、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域に、システイン置換を含む(本明細書では「システイン置換、LVL改変TCR」とも呼ばれる)。これに関して、TCRは、配列番号19のネイティブのThr48がCysで置換される、システイン置換、LVL改変、キメラTCRである。配列番号19のネイティブのSer112、Met114、及びGly115のうちの1つ、2つ、又は3つが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpで;好ましくは、Leu、Ile、又はValで;置換され;配列番号20のネイティブのSer57が、Cysで置換される。好ましくは、配列番号19のネイティブのSer112、Met114、及びGly115の3つすべてが、独立して、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpで;好ましくは、Leu、Ile、又はValで;置換され得る。本発明の一実施形態においては、システイン置換、LVL改変TCRは、(i)配列番号17、(ii)配列番号18、又は(iii)配列番号17及び18の両方を含み、配列番号17及び18の両方は、表4に定義される通りである。本発明のシステイン置換、LVL改変TCRは、本明細書に記載のCDR又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。
【0047】
一実施形態においては、システイン置換、LVL改変TCRは、全長アルファ鎖及び全長ベータ鎖を含む。本発明の一実施形態においては、システイン置換、LVL改変TCRは、(i)配列番号21、(ii)配列番号22、又は(iii)配列番号21及び22の両方を含み、配列番号21~22は表4に定義される通りである。
【0048】
【表4】
【0049】
本発明の一実施形態によって、本明細書に記載のTCRのいずれかの機能的部分を含むポリペプチドも提供される。本明細書で用いられる場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合によって連結した一本のアミノ酸鎖を指す。
【0050】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分が突然変異RASに特異的に結合するという条件で、機能的部分はTCRの一部である連続するアミノ酸を含む任意の部分であり得る。TCRに関連して用いられる場合、用語「機能的部分」は、本発明のTCRの任意の部分又はフラグメントを指し、そしてその部分又はフラグメントは、それが一部であるところのTCR(親TCR)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、突然変異RASに特異的に結合する能力(例、HLA-A11:01分子の関連内で)、又は親TCRと類似する程度、同じ程度、又はより高い程度にがんを検出、治療若しくは予防する能力、を保持するTCRの部分を包含する。親TCRに関連して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、約25%、約30%、約50%、約70%、約80%、約90%、約95%以上を含み得る。
【0051】
機能的部分は、該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又は両方の末端に、追加的なアミノ酸を含み得る。該追加的なアミノ酸は、親TCRのアミノ酸配列中には見られない。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例、突然変異RASに特異的に結合すること;及び/又はがんを検出し、がんを治療し若しくは予防する能力を有すること等と干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCRの生物学的活性と比較して、その生物学的活性を増強する。
【0052】
ポリペプチドは、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2及びCDR3の1以上を含む機能的部分等の、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分を含み得る。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは配列番号1(α鎖のCDR1)、配列番号2(α鎖のCDR2)、配列番号3(α鎖のCDR3)、配列番号4(β鎖のCDR1)、配列番号5(β鎖のCDR2)、配列番号6(β鎖のCDR3)又はそれらの組合せのアミノ酸配列を含み得る。
【0053】
これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号1~6からなる群から選択される任意の1つ以上のアミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、TCRは、(a)配列番号1~3のすべて、(b)配列番号4~6のすべて、又は(c)配列番号1~6のすべてのアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号1~6のすべてのアミノ酸配列を含む。
【0054】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記のCDR領域の組合せを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、ポリペプチドは、(i)配列番号7(α鎖の可変領域)、(ii)配列番号8(β鎖の可変領域)、又は(iii)配列番号7及び8の両方、のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号7及び8の両方のアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、上記の本発明のTCRの定常領域を更に含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号19(α鎖のWTマウス定常領域)、配列番号20(β鎖のWTマウス定常領域)、配列番号17(α鎖の置換マウス定常領域)、配列番号18(β鎖の置換マウス定常領域)、配列番号19及び20の両方、又は配列番号17及び18の両方のアミノ酸配列を更に含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるCDR領域又は可変領域のいずれかとの組合せで、配列番号19及び20の両方、又は配列番号17及び18の両方のアミノ酸配列を更に含む。
【0056】
本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは:(a)配列番号17のアミノ酸配列であって、(i)配列番号17の48位のXが、Thr又はCysであり;(ii)配列番号17の112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり;(iii)配列番号17の114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)配列番号17の115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、アミノ酸配列;(b)配列番号18のアミノ酸配列であって、配列番号18の57位のXが、Ser又はCysである、アミノ酸配列;又は(c)(a)及び(b)の両方を含む。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドの、配列番号17及び18の一方又は両方は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0057】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRのα鎖又はβ鎖の全長を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号21及び22の両方、又は配列番号23及び24の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号21及び22の両方、又は配列番号23及び24の両方のアミノ酸配列を含む。
【0058】
本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは:(a)配列番号21のアミノ酸配列であって、(i)配列番号21の185位のXが、Thr又はCysであり;(ii)配列番号21の249位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpでり;(iii)配列番号21の251位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)配列番号:21の252位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、アミノ酸配列;(b)配列番号22のアミノ酸配列であって、配列番号22の190位のXが、Ser又はCysである、アミノ酸配列;又は(c)(a)及び(b)の両方を含む。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドの、配列番号21~22のいずれか1つ以上は、表2~4のいずれか1つで定義される通りである。
【0059】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の少なくとも1のポリペプチドを含むタンパク質を更に提供する。「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0060】
一実施形態においては、本発明のタンパク質は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号4~6のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。
【0061】
本発明の別の実施形態においては、タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号8のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。
【0062】
本発明のタンパク質は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される定常領域のいずれかを更に含み得る。これに関して、本発明の一実施形態においては、第一のポリペプチド鎖は、配列番号17のアミノ酸配列を更に含み得、第二のポリペプチド鎖は、配列番号18のアミノ酸配列を更に含み得る。本発明の一実施形態においては、第一のポリペプチド鎖は、配列番号19のアミノ酸配列を更に含み得、第二のポリペプチド鎖は、配列番号20のアミノ酸配列を更に含み得る。
【0063】
本発明の一実施形態においては、タンパク質は:(a)配列番号17のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖であって、(i)配列番号17の48位のXが、Thr又はCysであり;(ii)配列番号17の112位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり;(iii)配列番号17の114位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)配列番号17の115位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、第一のポリペプチド鎖;(b)配列番号18のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖であって、配列番号18の57位のXが、Ser又はCysである、第二のポリペプチド鎖;又は(c)(a)及び(b)の両方を含む。本発明の一実施形態においては、タンパク質の、配列番号17及び18の一方又は両方は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0064】
代替的に又は追加的に、本発明の一実施形態のタンパク質は:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖であって、(i)配列番号21の185位のXが、Thr又はCysであり;(ii)配列番号21の249位のXが、Ser、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり;(iii)配列番号21の251位のXが、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、又はTrpであり;及び(iv)配列番号21の252位のXが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpである、第一のポリペプチド鎖;(b)配列番号22のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖であって、配列番号22の190位のXが、Ser又はCysである、第二のポリペプチド鎖;又は(c)(a)及び(b)の両方を含み得る。本発明の一実施形態においては、タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号24のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。本発明の一実施形態においては、配列番号21~22の一方又は両方は、表2~4のいずれか1つに定義される通りである。
【0065】
本発明のタンパク質はTCRであり得る。代替的には、例えば、タンパク質が、配列番号21及び22の両方、配列番号23及び24の両方のアミノ酸配列を含む単一のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第一及び/若しくは第二のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列、例、免疫グロブリン又はその部分をコードするアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。これに関して、本発明の一実施形態は、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1を含む融合タンパク質も提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別のポリペプチドとして存在し得、又は本明細書に記載の本発明のポリペプチドの1つとインフレームで(in frame)(タンデムで)発現されるポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等を含むがそれらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性の分子、又はそれらの部分をコードし得る。
【0066】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー及び/又は他のポリペプチドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドの1、2、3、4、5以上のコピーを含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、組換え法が挙げられる。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態においては、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現され得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質はリンカーペプチドを更に含み得る。リンカーペプチドは、宿主細胞内で、組換えTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質の発現を好都合に容易にし得る。リンカーペプチドは、任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含むフューリン-SGSG-P2Aリンカーであり得る。宿主細胞によるリンカーペプチドを含むコンストラクトの発現に際して、リンカーペプチドは切断され得、結果として分離したα鎖及びβ鎖となる。本発明の一実施形態においては、TCR、ポリペプチド又はタンパク質は、全長α鎖、全長β鎖、並びにα鎖とβ鎖との間に位置するリンカーペプチドを含むアミノ酸配列を含み得る。
【0068】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1を含む組換え抗体又はその抗原結合部分であり得る。本明細書で用いられる場合、「組換え抗体」は、本発明のポリペプチド、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分の少なくとも1を含む組換え(例、遺伝学的に操作された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、一本鎖可変フラグメント(scFv)、又はFc、Fab若しくはF(ab)’フラグメント等であり得る。抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、組換え抗体の別のポリペプチドとして存在し得る。代替的には、抗体のポリペプチド鎖又はその抗原結合部分は、本発明のポリペプチドとインフレームで(タンデムで)で発現されるポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド又はその抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体及び抗体フラグメントのいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体フラグメントのポリペプチドであり得る。
【0069】
本発明の範囲内には、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質の機能的変異体が含まれる。本明細書で用いられる場合、用語「機能的変異体」は、機能的変異体が、それが変異体であるところのTCR、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を保持している、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に対する実質的又は有意な配列同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド又はタンパク質を指す。機能的変異体は、例えば、親TCRが抗原特異性を有するか、又は親ポリペプチド若しくはタンパク質が、特異的に結合する突然変異RASに、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と類似する程度、同じ程度若しくはより高い程度に特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に関連して、例えば、機能的変異体は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のそれぞれに対して、アミノ酸配列で、少なくとも、約30%、約50%、約75%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一であり得る。
【0070】
例えば、機能的変異体は、少なくとも1の保存的アミノ酸置換を含む親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は当該技術分野において公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1のアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸に置き換えられるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸(例、Asp又はGlu)への置換、非極性側鎖を含むアミノ酸の非極性側鎖を含む別のアミノ酸(例、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)への置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸(Lys、Arg等)への置換、極性側鎖を含むアミノ酸の極性側鎖を含む別のアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)への置換等であり得る。
【0071】
代替的に又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1の非保存的アミノ酸置換を含む親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合においては、非保存的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性と干渉しないか又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性が、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と比較して増大するよう、機能的変異体の生物学的活性を増強する。
【0072】
TCR、ポリペプチド又はタンパク質の他の構成要素、例、他のアミノ酸が、TCR、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を実質的に変化させないよう、TCR、ポリペプチド又はタンパク質は、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列の一つ又は複数(sequence or sequences)から実質的になり得る。これに関して、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号21~22の両方又は配列番号23~24の両方のアミノ酸配列から実質的になり得る。また、例えば、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、(i)配列番号7、(ii)配列番号8、又は(iii)配列番号7及び8の両方のアミノ酸配列(複数可)から実質的になり得る。更に、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質は、(a)配列番号1~6のいずれか1以上;(b)配列番号1~3のすべて;(c)配列番号4~6のすべて;又は(d)配列番号1~6のすべてのアミノ酸配列から実質的になり得る。
【0073】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、TCR、ポリペプチド又はタンパク質が、それらの生物学的活性、例、突然変異RASに特異的に結合し;哺乳動物におけるがんを検出し;又は哺乳動物におけるがんを治療若しくは予防する能力等を保持するという条件で、任意の長さであり得、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約50、約70、約75、約100、約125、約150、約175、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000以上のアミノ酸長等の約50~約5000アミノ酸長の範囲であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドはオリゴペプチドも含む。
【0074】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、天然で生じた1以上のアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当該技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸(aminocyclohexane carboxylic acid)、ノルロイシン(norleucine)、α-アミノ-n-デカン酸(α-amino n-decanoic acid)、ホモセリン(homoserine)、S-アセチルアミノメチル-システイン(S-acetylaminomethyl-cysteine)、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン(trans-3- and trans-4-hydroxyproline)、4-アミノフェニルアラニン(4-aminophenylalanine)、4-ニトロフェニルアラニン(4-nitrophenylalanine)、4-クロロフェニルアラニン(4-chlorophenylalanine)、4-カルボキシフェニルアラニン(4-carboxyphenylalanine)、β-フェニルセリン(β-phenylserine) β-ヒドロキシフェニルアラニン(β-hydroxyphenylalanine)、フェニルグリシン(phenylglycine)、α-ナフチルアラニン(α-naphthylalanine)、シクロヘキシルアラニン(cyclohexylalanine)、シクロヘキシルグリシン(cyclohexylglycine)、インドリン-2-カルボン酸(indoline-2-carboxylic acid)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline-3-carboxylic acid)、アミノマロン酸(aminomalonic acid)、アミノマロン酸モノアミド(aminomalonic acid monoamide)、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン(N’-benzyl-N’-methyl-lysine)、N’,N’-ジベンジルリジン(N’,N’-dibenzyl-lysine)、6-ヒドロキシリジン(6-hydroxylysine)、オルニチン(ornithine)、α-アミノシクロペンタンカルボン酸(α-aminocyclopentane carboxylic acid)、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸(α-aminocyclohexane carboxylic acid)、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸(α-aminocycloheptane carboxylic acid)、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸(α-(2-amino-2-norbornane)-carboxylic acid)、α,γ-ジアミノ酪酸(α,γ-diaminobutyric acid)、α,β-ジアミノプロピオン酸(α,β-diaminopropionic acid)、ホモフェニルアラニン(homophenylalanine)及びα-tert-ブチルグリシン(α-tert-butylglycine)が挙げられる。
【0075】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、(例、ジスルフィド架橋を介した)環化、若しくは酸付加塩への変換、及び/或いは必要に応じて二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化され得る。
【0076】
本発明のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質は、例えば、例、デノボ合成等の当該技術分野で公知の方法によって得られ得る。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を用い、本明細書に記載の核酸を用いて、組換えにより作製され得る。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第4版)Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照。代替的には、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)等の企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0077】
本発明の範囲には、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(それらの機能的部分又は変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含む、コンジュゲート、例、バイオコンジュゲートが含まれる。コンジュゲート及びコンジュゲートを合成する方法は、一般的に、当該技術分野において公知である。
【0078】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書で用いられる場合、「核酸」は「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAの重合体を意味し、一本鎖又は二本鎖であり得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含有し得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチド間結合、例えば、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間にみられるホスホジエステルの代わりに、ホスホロアミデート結合又はホスホロチオエート結合等を含有し得る。一実施形態においては、核酸は相補的DNA(cDNA)を含む。一般的には、核酸が、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何ら含まないことが好ましい。しかし、本明細書で検討される通り、幾つかの例においては核酸が1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが、好適であり得る。
【0079】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書で用いられる場合、用語「組換え体」は、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生細胞内で複製できる核酸分子に接合することによって、生細胞外で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されたものの複製から生じる分子を指す。本明細書における目的のためには、複製はin vitro複製、又はin vivo複製であり得る。
【0080】
核酸は、当該技術分野で公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、上記のGreen and Sambrook et al.を参照。例えば、核酸は、天然で生じたヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増大させるよう、若しくはハイブリダイゼーション時に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるよう設計された、様々に修飾されたヌクレオチド(例、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて化学的に合成され得る。核酸を生成するために用いられ得る修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、5-ブロモウラシル(5-bromouracil)、5-クロロウラシル(5-chlorouracil)、5-ヨードウラシウル(5-iodouracil)、ヒポキサンチン(hypoxanthine)、キサンチン(xanthine)、4-アセチルシトシン(4-acetylcytosine)、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル(5-(carboxyhydroxymethyl)uracil)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(5-carboxymethylaminomethyl-2-thiouridine)、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル(5-carboxymethylaminomethyluracil)、ジヒドロウラシル(dihydrouracil)、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン(inosine)、N-イソペンテニルアデニン(N-isopentenyladenine)、1-メチルグアニン(1-methylguanine)、1-メチルイノシン(1-methylinosine)、2,2-ジメチルグアニン(2,2-dimethylguanine)、2-メチルアデニン(2-methyladenine)、2-メチルグアニン(2-methylguanine)、3-メチルシトシン(3-methylcytosine)、5-メチルシトシン(5-methylcytosine)、N-置換アデニン(N-substituted adenine)、7-メチルグアニン(7-methylguanine)、5-メチルアミノメチルウラシル(5-methylaminomethyluracil)、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル(5-methoxyaminomethyl-2-thiouracil)、ベータ-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル(5’-methoxycarboxymethyluracil)、5-メトキシウラシル(5-methoxyuracil)、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン(2-methylthio-N-isopentenyladenine)、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)(uracil-5-oxyacetic acid(v))、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン(2-thiocytosine)、5-メチル-2-チオウラシル(5-methyl-2-thiouracil)、2-チオウラシル(2-thiouracil)、4-チオウラシル(4-thiouracil)、5-メチルウラシル(5-methyluracil)、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル(uracil-5-oxyacetic acid methylester)、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル(3-(3-amino-3-N-2-carboxypropyl)uracil)及び2,6-ジアミノプリン(2,6-diaminopurine)が挙げられるが、これらに限定されない。代替的には、本発明の核酸の1以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)等の企業から購入され得る。
【0081】
核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコードする、任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、核酸は、配列番号31~32のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る(表5)。本発明の一実施形態においては、核酸は配列番号31~32の両方のヌクレオチド配列を含む。
【0082】
【表5】
【0083】
本発明の一実施形態においては、核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコードする、コドンを最適化したヌクレオチド配列を含む。如何なる特定の理論又はメカニズムにも縛られないが、ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を増大させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、ネイティブのコドンを、同じアミノ酸をコードするが、細胞内でより容易に利用できるtRNAによって翻訳され得る、別のコドンに置換することを含み得、従って、翻訳効率が上昇する。ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳に干渉するmRNAの二次構造も減少させ得、従って、翻訳効率が上昇する。
【0084】
本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、核酸も提供する。
【0085】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件としては、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は散らばったミスマッチを少しだけ含有するポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチしたいくつかの小領域(例、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から識別する条件が挙げられる。かかる相補的な小領域は、14~17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらが容易に識別可能となる。比較的高ストリンジェンシーの条件としては、例えば、低塩及び/又は高温条件(約0.02~0.1MのNaCl又は当量によって、約50~70℃の温度で提供される等)が挙げられる。かかる高ストリンジェンシー条件は、許容したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のTCRのいずれかの発現を検出するのに特に好適である。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが、一般的に理解される。
【0086】
本発明は、本明細書に記載の核酸のいずれかと、少なくとも約70%以上、例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。これに関して、核酸は、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかから実質的になり得る。
【0087】
本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組込まれ得る。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の一実施形態においては、組換え発現ベクターは、α鎖、β鎖及びリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0088】
本明細書における目的のためには、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現を可能にする、遺伝学的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、この場合、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然には存在しない。しかし、該ベクターの一部は天然に存在し得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成され得るか、又は一部が天然のソースから得られ得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含有し得る)を含む(がこれらに限定されない)、任意のタイプのヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方のタイプの結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写や複製を妨害しない。
【0089】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするために用いられ得る。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等の増殖及び増幅のため、若しくは発現のため、又は両方のために設計されたベクターが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)から成る群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも用いられ得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例、レトロウイルスベクターである。特に好ましい実施形態においては、組換え発現ベクターはMSGV1ベクターである。
【0090】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、Green and Sambrook et al.(上記)に記載の標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製され得る。複製系は、例、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス等に由来し得る。
【0091】
望ましくは、組換え発現ベクターは、適宜、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞の種類(例、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的な、転写、並びに翻訳の開始及び終止コドン等の調節配列を含む。
【0092】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例、抗生物質、重金属などに対する耐性、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主細胞における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0093】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に、又は、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相補的であるか、又はハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に結合したネイティブの、又は非ネイティブのプロモーターを含み得る。プロモーター、例、強力なプロモーター、弱いプロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター及び発生特異的(developmental-specific)プロモーターの選択は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組合せることも、当業者の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター、又はウイルスプロモーター、例、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルス長鎖末端反復配列(long-terminal repeat)において見受けられるプロモーターであり得る。
【0094】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定した発現のためのいずれか、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現のため、又は誘導性発現のために作製され得る。
【0095】
更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。用語「自殺遺伝子」は、本明細書で用いられる場合、自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、その遺伝子を発現する細胞に対し物質、例、薬物に対する感受性を付与し、細胞が該物質と接触するとき又は該物質に曝露されるときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ニトロレダクターゼ及び誘導性カスパーゼ9遺伝子の系が挙げられる。
【0096】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を更に提供する。用語「宿主細胞」は、本明細書で用いられる場合、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の種類の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例、植物、動物、真菌又は藻類であり得、又は、原核細胞、例、細菌若しくは原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞、又は、初代細胞であり得、即ち、生物、例、ヒトから直接単離され得る。宿主細胞は、接着細胞、又は、浮遊細胞、即ち、懸濁物中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は、当該技術分野において公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞、例、DH5α細胞である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意の種類の細胞であり得、任意の種類の組織由来であり得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核球(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0097】
本明細書における目的のためには、T細胞は、任意のT細胞(培養T細胞(例、初代T細胞)、若しくは培養T細胞株(例、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞等)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数のソース(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が含まれるが、これらに限定されない)から得られ得る。T細胞は、濃縮又は精製もされ得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。T細胞は、任意の種類のT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞、例、Th及びTh細胞、CD4T細胞、CD8T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0098】
本明細書に記載の、少なくとも1の宿主細胞を含む細胞集団も本発明により提供される。細胞集団は、記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を、いずれの組換え発現ベクターも含まない、少なくとも1の他の細胞、例、宿主細胞(例、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加えて含む不均一集団であり得る。代替的には、細胞集団は、実質的に均一な集団であって、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例、実質的にそれからなる)集団であり得る。集団はまた、集団のすべての細胞が組換え発現ベクターを含むように、集団のすべての細胞が、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンである、細胞のクローン集団でもあり得る。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、本明細書に記載の通りの組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0099】
本発明の一実施形態においては、集団中の細胞数が急速に増幅され得る。T細胞数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開番号第2012/0244133号;Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003);及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載の通りの、当該技術分野で公知の多くの方法のいずれかによって達成され得る。一実施形態においては、T細胞数の増幅は、T細胞をOKT3抗体、IL-2、及びフィーダーPBMC(例、放射線照射された同種異系PBMC)と共に培養することによって行われる。
【0100】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)は、単離及び/又は精製され得る。用語「単離された」は、本明細書で用いられる場合、その自然環境から取り出されたことを意味する。用語「精製された」は、本明細書で用いられる場合、純度が増したことを意味するが、「純度」は、相対的な用語であって、必ずしも絶対的純度として解釈されるべきでない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%を超え得、又は約100%であり得る。
【0101】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)は、これらすべてが、以降、「本発明のTCR材料」と総称されるものであるが、医薬組成物等の、組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、発現ベクター、及び宿主細胞(その集団を含む)のいずれか、並びに医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1超の本発明のTCR材料、例、ポリペプチド及び核酸、又は2以上の異なるTCRを含み得る。代替的には、医薬組成物は、化学療法剤等、別の医薬的に活性な物質(複数可)又は薬物(複数可)、例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキサート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)など)と組合せて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0102】
好ましくは、担体は医薬的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮中の特定の本発明のTCR材料のために従来用いられているもののいずれかであり得る。投与できる組成物を調製するための方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第22版,Pharmaceutical Press(2012)においてより詳細に記載されている。医薬的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0103】
担体の選択は、特定の本発明のTCR材料によって、及び本発明のTCR材料を投与するために用いられる特定の方法によってある程度決定される。従って、多様な、本発明の医薬組成物の好適な製剤がある。好適な製剤としては、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、腫瘍内及び腹腔内投与のための、いずれかの製剤が挙げられ得る。本発明のTCR材料を投与するために、1超の経路が用いられ得、特定の例においては、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ効果的な反応をもたらし得る。
【0104】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射により、例、静脈内に投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCRを発現する宿主細胞(その集団を含む)である場合には、注射用の細胞のための医薬的に許容可能な担体としては、任意の等張性の担体、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液等が挙げられ得る。一実施形態においては、医薬的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミンが補充される。
【0105】
本発明の目的のためには、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例、本発明のTCR材料が1以上の細胞の場合、細胞数)は、被験者又は動物において、適切な期間にわたって、例、治療的又は予防的応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、がん抗原(例、突然変異RAS)と結合するのに、又は、投与時から約2時間以上、例、12~24時間以上という期間でがんを検出、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の実施形態においては、期間は、もっと長くなり得る。用量は、特定の本発明のTCR材料の有効性、及び動物(例、ヒト)の状態と、治療する動物(例、ヒト)の体重とによって決定される。
【0106】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当該技術分野において公知である。本発明の目的のためには、それぞれが異なる用量のT細胞を与えられる1組の哺乳動物のうち、1匹の哺乳動物への、ある特定の用量のかかるT細胞の投与の際の、本発明のTCR、ポリペプチド、又はタンパク質を発現するT細胞によって標的細胞が溶解される程度、又は、IFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために用いられ得る。一定用量の投与の際の、標的細胞が溶解する程度、又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野において公知の方法によってアッセイされ得る。
【0107】
本発明のTCR材料の用量は、特定の本発明のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。典型的には、主治医が、年齢、体重、全般的健康、食習慣、性別、投与する本発明のTCR材料、投与経路、及び治療されるがんの重篤度等、様々な要因を考慮に入れて、各個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の用量を決定する。本発明のTCR材料が細胞集団である実施形態においては、注入あたりで投与される細胞の数は、例、約1×10から約1×1012細胞又はより多くまで変動し得る。特定の実施形態においては、1×10未満の細胞が投与され得る。
【0108】
当業者は、本発明のTCR材料の治療効力又は予防効力が修飾によって増大するよう、本発明のTCR材料(inventive TCR materials of the invention)が、いくつもの形に修飾され得ることを、容易に理解する。例えば、本発明のTCR材料は、直接的又は化学療法剤への架橋物(bridge)を介する間接的のいずれかでコンジュゲート化され得る。化合物を化学療法剤にコンジュゲート化する実務は、当該技術分野において公知である。当業者は、本発明のTCR材料の機能には必要でない、本発明のTCR材料における部位が、架橋物及び/又は化学療法剤を結合させるのに好適な部位であると認識する(但し、架橋物及び/又は化学療法剤は、本発明のTCR材料に結合して、本発明のTCR材料の機能(即ち、突然変異RASに結合する能力、又はがんを検出、治療若しくは予防する能力)を妨害しないものとする)。
【0109】
本発明の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞及び細胞集団が、がんを治療又は予防する方法において用いられ得ることが企図される。特定の理論には縛られないが、本発明のTCRは、突然変異RASに特異的に結合すると考えられ、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド又はタンパク質)が、細胞に発現すると、突然変異RASを発現する標的細胞に対する免疫反応を調節することができる。これに関して、本発明は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む、任意の核酸又は組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む、任意の宿主細胞又は細胞集団を、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0110】
本発明の一実施形態は、哺乳動物におけるがんの治療又は予防において用いるための、本明細書に記載の医薬組成物、TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む、任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む、任意の宿主細胞又は細胞集団を提供する。
【0111】
用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、本明細書で用いられる場合、100%の、又は完全な治療若しくは予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、任意のレベルの任意の量の、哺乳動物におけるがんの治療又は予防を提供し得る。更に、本発明の方法により提供される治療又は予防は、治療又は予防される1以上の、がんの状態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退行を促進することを含み得る。また、本明細書における目的のためには、「予防」は、がん、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。代替的に又は追加的に、「予防」は、がん、又はその症状若しくは状態の再発を予防又は遅延させることを包含し得る。
【0112】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法も提供される。該方法は、(i)哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料と、本明細書に記載の、本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は医薬組成物のいずれかとを接触させ、それにより複合体を形成すること、及び(ii)該複合体を検出することを含み、該複合体の検出が哺乳動物におけるがんの存在を示す。
【0113】
本発明の、哺乳動物におけるがんを検出する方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分、例、核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分を含む試料であり得る。
【0114】
本発明のがんを検出する方法の目的のためには、接触は、哺乳動物に関してインビトロ又はインビボで行い得る。好ましくは、接触はインビトロである。
【0115】
また、複合体の検出は、当該技術分野で公知の、任意の数の方法によって行われ得る。例えば、本明細書に記載の本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、又は細胞集団は、例えば、放射性同位体、蛍光色素(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識で標識され得る。
【0116】
宿主細胞又は細胞集団が投与される、本発明の方法の目的のためには、細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0117】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、子宮頸がん、胃腸カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭のがん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜がん、大網がん及び腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮のがん、尿管がん及び膀胱がんのいずれかを含む、任意のがんであり得る。好ましいがんは、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、又は前立腺がんである。好ましくは、肺がんは肺腺がんであり、卵巣がんは上皮性卵巣がんであり、膵臓がんは膵臓腺がんである。本発明の一実施形態においては、がんは、突然変異ヒトRASアミノ酸配列であって、突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトHRAS、又は突然変異ヒトNRASのアミノ酸配列である、突然変異ヒトRASアミノ酸配列を発現する。がんによって発現される突然変異ヒトKRAS、突然変異ヒトHRAS、及び突然変異ヒトNRASは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りであり得る。
【0118】
本発明の方法において言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。用語「哺乳動物」は、本明細書で用いられる場合、マウス及びハムスター等、ネズミ目の哺乳動物、及びウサギ等、ウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない、任意の哺乳動物を指す。哺乳動物が、ネコ科の動物(ネコ)及びイヌ科の動物(イヌ)を含むネコ目由来であることが好ましい。哺乳動物が、ウシ科の動物(ウシ)及びイノシシ科の動物(ブタ)を含むウシ目、又はウマ科の動物(ウマ)を含むウマ目(Perssodactyla)由来であることが、より好ましい。哺乳動物が、霊長目、セボイド(Ceboids)目若しくはシモイド(Simoids)目(サル)又は、類人(Anthropoids)目(ヒト及び類人猿)であることが、最も好ましい。特に好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【0119】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、もちろん、決してその範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例
【0120】
実施例1
本実施例は、G12V突然変異を含むヒトKRASに対して抗原特異性を有するTCRであって、突然変異KRASが、HLA-A11:01分子によって提示される、TCRの単離を実例で示す。
【0121】
TCRを、インビトロ感作(IVS)後の子宮内膜がん患者の末梢血から同定及び単離した。患者のがん細胞は、KRAS G12V突然変異を発現していることが判明した。簡単に言うと、自己のDCを突然変異ペプチド(MTEYKLVVVGAVGVGKSALTIQLI)(配列番号26)でパルスし、患者の末梢血から選別したCD8 T細胞と10日間共培養した。
【0122】
次に、T細胞の反応性を、KRAS G12V突然変異(MTEYKLVVVGAGVGKSALTIQLI)(配列番号26)又は対応するWTペプチド(MTEYKLVVVGAGVGKSALTIQLI)(配列番号27)を包含する24マーペプチドでパルスした自己DCに対して試験した。ペプチドをDMSOに再懸濁する。DMSOでパルスしたDCと培養したT細胞をネガティブコントロールとして用いた。T細胞の反応性は、CD137発現とELISPOTアッセイにより測定したIFN-γ産生に基づいて測定した。次いで、反応性T細胞をCD137発現に基づいて選別し、選別したT細胞の数を増幅し、選別し増幅した数の細胞を、本実施例に記載の通り再度試験した。結果を図1A及び1Bに示す。図1A及び1Bに示す通り、T細胞は、KRAS G12VペプチドでパルスしたDCとの共培養後にのみ、CD137発現を上方制御し(図1A)、IFN-γ産生を増大させた(図1B)。
【0123】
患者はHLA-A11:01陽性であったので、KRAS G12V 9マー及び10マーペプチドは、高親和性でこの対立遺伝子に結合すると予測された。従って、四量体染色技術を利用して、T細胞がHLA-A11:01に関連してKRASG12Vに対して反応性であるかどうかを試験した。KRAS G12V 24マーペプチドによるIVSを経た末梢血CD8+T細胞を、四量体(9マー VVGAGVGK(配列番号29)又は10マー VVVGAGVGK(配列番号30))で染色した。PEとAPCはどちらも蛍光色素分子である。四量体を、これらの蛍光色素分子の一方又は他方にコンジュゲート化した。両方の四量体で細胞を染色すると、特異性の信頼度が増大する。結果を図2に示す(右のプロット)。HLA-A11:01に関連してKRAS G12D 10マーを認識するTCRを発現するように改変したT細胞を、ネガティブコントロールとして用いた。ネガティブコントロールについての結果を図2に示す(左のプロット)。図2に示す通り、KRAS G12V 24マーペプチドによるIVSを経たCD8 T細胞は、KRASG12V-HLA-A11:01四量体で染色されたが、ネガティブコントロールT細胞はされなかった。
【0124】
単一細胞配列決定法を用いて、四量体で選別した細胞を配列決定すると、1のベータ鎖及び1のアルファ鎖が明らかになった(表6)。TCRアルファ鎖及びベータ鎖可変領域のヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号31及び32であった。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例2
本実施例は、システイン置換、LVL改変マウス定常領域を含む実施例1のTCRをコードする発現カセットの調製及びレトロウイルスベクターへの発現カセットのクローニングを実例で示す。
【0127】
実施例1のTCRを、MSGV1レトロウイルスベクターにクローニングした。実施例1の単離したG12V反応性TCRをコードし(配列番号31及び配列番号32のヌクレオチド配列を含む)、システイン置換、LVL改変マウス定常領域を含む核酸配列をレトロウイルスベクターにクローニングした。α鎖マウス定常領域は、配列番号17のアミノ酸配列であって、48位のXがCysであり、112位のXがLeuであり、114位のXがIleであり、115位のXがValであるアミノ酸配列で構成された。β鎖定常領域は、配列番号18のアミノ酸配列であって、57位のXがCysであるアミノ酸配列で構成された。配列番号25のアミノ酸配列を含むP2Aリンカー(Wargo et al.,Cancer Immunol.Immunother.,58(3):383-94(2009))を、α鎖定常領域とβ鎖可変領域の間に配置した。レトロウイルスベクターには、5’末端から3’末端にかけて、TCRβ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、続いて改変β鎖マウス定常領域、続いてP2Aリンカー配列、続いてTCRα鎖可変領域、続いて改変α鎖マウス定常領域が含まれた。
【0128】
実施例3
本実施例は、実施例2のTCRで形質導入した末梢血同種異系T細胞が、G12V突然変異を含むヒトKRASであって、HLA-A11:01分子によって提示される突然変異KRASを特異的に認識することを実証する。
【0129】
実施例2のTCRをコードするレトロウイルスを作製し、2人のドナーからの末梢血同種異系T細胞を形質導入するために使用した(Tran et al.,N.Engl.J.Med.,375:2255-2262(2016)に記載の通りの方法))。細胞の表面でのTCRの発現をフローサイトメトリーによって測定した。結果を図3に示す。図3に示す通り、マウスTCRベータ鎖定常領域(mTCRベータ)の発現が細胞の表面で検出された。
【0130】
実施例2のTCRで形質導入した同種異系細胞を、KRAS G12D、KRAS G12C、又はKRAS G12Vを発現する標的がん細胞株に対する反応性について試験した。図4に示す通り、標的がん細胞株はHLA-A11発現について陽性又は陰性であった。反応性はIFN-γ産生(ELISPOT)及びCD137上方制御(フローサイトメトリー)により測定した。結果を図4に示す。図4に示す通り、形質導入した細胞は、KRASG12V及びHLA-A11:01を発現するがん細胞株に対して特異的な反応性があることが判明した。
【0131】
実施例4
本実施例は、実施例2のTCRがKRAS G12V 9マーペプチド
【0132】
【化2】
【0133】
(配列番号29)及びKRAS G12V 10マーペプチド(KRAS G12V 10マー peptide KRAS G12V 10マー peptide)
【0134】
【化3】
【0135】
(配列番号30)のそれぞれを特異的に認識することを実証する。
【0136】
実施例3に記載の通り、同種異系T細胞を実施例2のTCRで形質導入した。COS7/A11標的細胞を、様々な濃度のKRAS G12V 9マーペプチド
【0137】
【化4】
【0138】
(配列番号29)、KRAS G12V 10マーペプチド
【0139】
【化5】
【0140】
(配列番号30)、KRAS WT 9マーペプチド
【0141】
【化6】
【0142】
(配列番号33)、又はKRAS WT 10マーペプチド
【0143】
【化7】
【0144】
(配列番号34)でパルスした。形質導入したT細胞を、パルスした標的細胞と共培養した。IFN-γ分泌を測定した。結果を図5A(9マー)及び図5B(10マー)に示す。図5A~5Bに示す通り、TCRは、KRAS G12V 9マーペプチド及びKRAS G12V 10マーペプチドのそれぞれを特異的に認識した。
【0145】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用したすべての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組込まれる。
【0146】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1」)は、本明細書に特記しないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択された1の事項(A若しくはB)又は列挙した事項のうち2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書に提供される任意の及びすべての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書のすべての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0147】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載の主題のすべての改変及び均等物を含む。更に、そのすべての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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