(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】同時フレームとのレンジング
(51)【国際特許分類】
H04B 1/7183 20110101AFI20231115BHJP
【FI】
H04B1/7183
(21)【出願番号】P 2020530979
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2018084058
(87)【国際公開番号】W WO2019110833
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-06
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518276357
【氏名又は名称】デカウェーブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニェフチャス ヤロスロー
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-217392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0219093(US,A1)
【文献】特開2015-062302(JP,A)
【文献】特開2010-283582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/7183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランシーバを有する第1ノードから第2ノードに信号を送信する方法であって、
前記第1ノードにおいて前記第2ノードからメッセージを受信する工程であって、前記メッセージは前記第1ノードの複数の前記トランシーバのそれぞれにより受信される工程と、
前記メッセージに応じて、複数の前記トランシーバのそれぞれにより、各データフレームを前記第2ノードに送信する工程と、
を含み、
前記トランシーバのそれぞれは、前記トランシーバによるメッセージの受信後、所定期間、それぞれの前記データフレームの送信を開始し
、
前記各データフレームは、第1トレーニングシーケンスと、第2トレーニングシーケンスと、を含み、前記各データフレームごとに、
前記第1トレーニングシーケンスは、前記各データフレームの開始に位置し、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に第1期間を開始するように構成され、
前記第1期間は、他のデータフレームのそれぞれの前記第1期間とは異なり、
前記第2トレーニングシーケンスは、暗号的に生成されたトレーニングシーケンスを含み、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に第2期間を開始するように構成され、
前記第2期間は、前記データフレームのそれぞれについて同じである、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記データフレームの前記所定期間は、前記データフレームのそれぞれの送信持続時間よりも短く、互いに異なる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1トレーニングシーケンスは、
シンボルレートで複数のシンボル、
を含み、
前記各第1トレーニングシーケンスの開始は、所与のトレーニングシーケンスの開始時間が他のフレームの第1トレーニングシーケンスのいずれかのシンボル境界と一致しないように、および/または前記各第1トレーニングシーケンスのシンボル境界が整列されないように選択される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記各第1トレーニングシーケンスに先行する遅延期間は、前記第1トレーニングシーケンスおよび/または前記第2トレーニングシーケンスのシンボル期間の非整数倍である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1トレーニングシーケンスは、
完全な周期的自己相関を有するシーケンス、好ましくは、Ipatovシーケンス、
を含む、
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2トレーニングシーケンスが前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に共通の時間オフセットで開始するように、前記第2トレーニングシーケンスに先行する前記データフレームの1つまたは複数の部分の長さを変更する工程を含む、
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記データフレームの異なるものの間で、前記第1トレーニングシーケンスと、前記フレームのデータペイロードと、前記第2トレーニングシーケンスの前に挿入された送信ギャップとのうち1つまたは複数の長さを変更する工程を含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記各データフレームの1つまたは複数の部分の長さは、前記各データフレームの開始前に挿入された送信遅延を補償するために変更される、
請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記データフレームのそれぞれの前記第2トレーニングシーケンスが前記各トランシーバにおける前記メッセージの受信に対して同時オフセットで生じるようにサイズ設定された各送信ギャップは、前記各第2トレーニングシーケンスに先行する、
請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第2トレーニングシーケンスに先行する前記フレームの一部において、好ましくは、物理レイヤヘッダと前記フレームのペイロードとのうち一方または両方において、前記送信ギャップサイズをシグナリングする工程を含む、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記データフレームの所定の1つに対して、前記物理レイヤヘッダ内に暗号化されていない形式で、かつ前記ペイロード内に再び暗号化された形式でそれぞれの送信ギャップを特定する情報を含む、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第2トレーニングシーケンスは、前記各データフレームの終わりに位置する、
請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記各データフレームは、それぞれ異なる前記第2トレーニングシーケンスを含む、
請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2トレーニングシーケンスは、前記各データフレームについて同じである、
請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記各データフレームは、
第3トレーニングシーケンス、好ましくは、暗号的に生成されたトレーニングシーケンス、
を含む、
請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第3トレーニングシーケンスは、前記各データフレームについて同じである、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記第3トレーニングシーケンスは、前記第2トレーニングシーケンスとは異なる、
請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記各第2トレーニングシーケンスは、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に共通の開始時間で開始するように構成され、
前記各第3トレーニングシーケンスは、任意選択で可変送信ギャップが先行することにより、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後にそれぞれの異なる開始時間で開始するように構成される、
請求項15乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記各データフレームは、
前記第2トレーニングシーケンスと前記第3トレーニングシーケンスとの前、前記第2トレーニングシーケンスと前記第3トレーニングシーケンスとの間、または前記第2トレーニングシーケンスと前記第3トレーニングシーケンスとの後に位置するそれぞれの前記ペイロード、
を含む、
請求項
7,10または11のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記各データフレームは、
第1整列Ipatovトレーニングシーケンスと、
第2整列暗号トレーニングシーケンスと、
第3非整列暗号トレーニングシーケンスと、
を含む、
請求項15乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記各トランシーバの送信タイミングは、前記各トランシーバのクロックに基づき、
前記方法は、
1つまたは複数の前記クロックのクロック周波数を調整して、前記各トランシーバのキャリア周波数オフセット(CFO)を調整する工程、
を含む、
請求項1乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記クロック周波数は、前記第2ノードから受信された以前の送信の検出されたCFOに基づいて調整される、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記トランシーバのクロック周波数を調整して、前記受信された送信のCFOに対して各トランシーバの共通CFOを設定する工程を含む、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記受信された送信のCFOに関して各トランシーバについて異なる相対CFOオフセットを設定することを含む、
請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記第2ノードからの初期メッセージに基づいて第1クロック調整を実行する工程と、前記第2ノードからの後続のメッセージに基づいて前記クロック調整を精緻化する工程とを含む、
請求項21乃至24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記各トランシーバは、クロック信号の周期に基づいて離散時間増分で送信を開始するように構成され、
前記方法は、
送信開始時間の前に前記クロック信号のクロック周波数を調整することにより、前記離散時間増分に対して前記トランシーバの送信開始時間を調整する工程、
を含む、
請求項1乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
好ましくは、決定された持続時間の間、前記クロック周波数を増加または減少させて、フレーム送信の開始を、調整前に、前記クロックにより定義された離散時間増分に対して、より早い時間またはより遅い時間に調整する工程を含む、
請求項26記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の前記データフレームの一部の送信をミュートする工程を含む、
請求項1乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ミュートされた部分は、
前記第1トレーニングシーケンスと、フレーム開始デリミタと、物理レイヤヘッダと、データペイロードとのうち1つまたは複数、
を備える、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記データフレームのうち少なくとも1つがミュートされていない形態の部分を含むように、前記データフレームの全てではないが、前記データフレームのうち1つまたは複数についてミュートを実行する工程を含む、
請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
前記第2トレーニングシーケンスおよび/または前記第3トレーニングシーケンスは、前記データフレームのいずれについても前記ミュートされた部分に含まれない、
請求項
15乃至
19のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記第2ノードからのメッセージと、
前記トランシーバの送信強度、または、前記トランシーバと前記第2ノードとの間のチャネル品質と、
のうち1つまたは複数に基づいて、前記データフレームの前記部分がミュートされるべき1つまたは複数の前記トランシーバを選択する工程を含む、
請求項
31記載の方法。
【請求項33】
前記第1トレーニングシーケンスがミュートされていないデータパケットの送信のための、比較的大きい送信強度またはより良好なチャネル品質を有する1つまたは複数の前記トランシーバを選択する工程を含む、
請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記データフレームの一部の送信をミュートする工程は、
送信電力を低減する工程、または、前記データフレームの前記一部の送信を無効化する工程、
を含む、
請求項28乃至33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
1つまたは複数の前記データフレームの全体の送信をミュートする工程を含み、
好ましくは、前記トランシーバのうち1つまたは複数の予め選択された前記トランシーバ用のデータフレームのみが送信される、
請求項28乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
好ましくは、閾値信号強度を超える信号の検出された第1パスの信号強度を検出することに応じて、前記第2ノードから以前に受信された信号の信号強度に基づいて、1つまたは複数の前記データフレームのための送信電力を低減する工程を含む、
請求項1乃至35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第2トレーニングシーケンスの後に、前記データフレームの追加のデータが続き、
前記方法は、好ましくは、
1つまたは複数の前記データフレームのための前記第2トレーニングシーケンスの送信後に、送信電力を低減する工程、または送信を無効化にする工程と、
を含む、
請求項1乃至36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記データフレームは、前記第2ノードと前記第1ノードとの間のレンジング交換の一部として送信される、
請求項1乃至37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記データフレームは、前記第2ノードから前記第1ノードに送信された前記レンジング交換の初期メッセージに応じて送信される、
請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記第2ノードにおいて前記送信されたデータフレームに対応する信号を受信する工程を含む、
請求項1乃至39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記第2ノードにおいて前記各データフレームのうちの特定の1つを識別する工程と、前記識別されたフレームのデータを取得する工程とを含む、
請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記第1トレーニングシーケンスを使用して前記データフレームを検出する工程と、前記第1トレーニングシーケンスの検出に基づいて前記データフレームの取得を開始する工程とを含む、
請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記第1トレーニングシーケンス、前記第2トレーニングシーケンス、および/または前記第3トレーニングシーケンスのうち1つまたは複数の受信時間から導出された複数の距離測定値に基づいて、前記第1ノードの位置を測定する工程を含む、
請求項40乃至42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記データフレームのミュートされた部分が受信されている間、および/または前記第2トレーニングシークエンスの受信後に、前記第2ノードで受信機を無効化する工程を含む、
請求項1乃至43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記ノード間の通信は、無線通信プロトコルに基づく無線であり、好ましくは、超広帯域(UWB)無線通信システムに基づく無線通信プロトコルである、
請求項1乃至44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記第1ノードは、車両を構成し、
前記第2ノードは、車両用無線キーフォブ等の遠隔操作デバイスを構成する、
請求項1乃至45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記フレームは、前記車両の自動運転を制御するための制御メッセージ交換の一部として交換される、
請求項46記載の方法。
【請求項48】
請求項1乃至47のいずれかに記載の方法を実行するための手段を有することを特徴とするデバイスまたはシステム。
【請求項49】
複数のトランシーバを備えるデバイスまたはシステムであって、
前記各トランシーバは、遠隔デバイスからメッセージを受信し、前記メッセージに応じてそれぞれのデータフレームを前記遠隔デバイスに送信するように構成され、
前記各トランシーバは
、前記トランシーバによる前記メッセージの受信後、所定期間、そのそれぞれの各データフレームの送信を開始するように構成され、
前記各データフレームは、第1トレーニングシーケンスと第2トレーニングシーケンスとを含み、前記各データフレームごとに、
前記第1トレーニングシーケンスは、前記各データフレームの開始に位置し、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に第1期間を開始するように構成され、
前記第1期間は、他のデータフレームのそれぞれの前記第1期間とは異なり、
前記第2トレーニングシーケンスは、暗号的に生成されたトレーニングシーケンスを含み、前記各トランシーバによる前記メッセージの受信後に第2期間を開始するように構成され、
前記第2期間は、前記データフレームのそれぞれについて同じである、
ことを特徴とするデバイスまたはシステム。
【請求項50】
請求項1乃至47のいずれかに記載の方法を実行するかまたはそれに参加するように構成される、
ことを特徴とする請求項49記載のデバイスまたはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスのうち少なくとも1つが複数のトランシーバを含む場合における、デバイス間の通信のためのシステムと方法とに関する。具体的には、当該デバイス間のレンジング(ranging)交換に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイス(特に車両などのより大きなデバイス)上に複数の送信機を設けることにより、他の遠隔デバイス(例えば、車両の無線キーフォブ)で送信が確実に受信される可能性が向上できる。このような送信は、例えば、レンジング(測距)または遠隔操作(例えば、ドアの施錠/解錠、自動駐車機能など)に使用され得る。しかし、送信機のいずれかからの通信の接続待ちをする遠隔デバイスに対するニーズは遠隔デバイスにおける電力要件を増加させ、これは典型的には限られたバッテリ容量および/または長いバッテリ寿命要件を有する多くの小型デバイス(例えば、キーフォブ)にとって問題である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施形態はそのような問題を改善し、マルチ送信器デバイスのための改善された通信方式を提供する。
【0004】
したがって、本発明の第1態様では複数のトランシーバを有する第1ノードから第2ノードに信号を送信する方法であって、第1ノードにおいて第2ノードからメッセージを受信する工程であって、メッセージは第1ノードの複数のトランシーバのそれぞれにより受信される工程と、メッセージに応じて、複数のトランシーバのそれぞれにより、それぞれのデータフレームを第2ノードに送信する工程と、を含み、各トランシーバはトランシーバによるメッセージの受信後、所定の期間、それぞれのデータフレームの送信を開始し、複数のトランシーバからのデータフレームの送信は重複する、方法が提供される。
【0005】
所定の期間は、送信されたデータフレームのそれぞれについて同じでもよい。
【0006】
また、所定の期間は、送信されたデータフレームのそれぞれについて異なってもよい。好ましくは、データフレームのための所定の期間は、データフレームのそれぞれの送信持続時間よりも短く、互いに異なる。好ましくは、所定の期間のそれぞれは、データフレームの送信時間よりも短い。
【0007】
好ましくは、各データフレームはトレーニングシーケンスを含み、トレーニングシーケンスは各トランシーバによるメッセージの受信後に共通の時間遅延(すなわち、トレーニングシーケンスの開始までの時間遅延は各データフレームについて同じでもよい)でトランシーバにより送信されるように構成される。このトレーニングシーケンスは、データフレームの第2トレーニングシーケンスでもよく、別の第1トレーニングシーケンスよりもフレーム内で後に現れてもよい。
【0008】
好ましくは、各データフレームは、第1トレーニングシーケンスと第2トレーニングシーケンスとを含む。好ましくは、各データフレームごとに、第1トレーニングシーケンスは各トランシーバによるメッセージの受信後に第1期間を開始するように構成され、第1期間は任意選択で、他のデータフレームのそれぞれの第1期間とは異なる。第2トレーニングシーケンスは各データフレームごとに、各トランシーバによるメッセージの受信後に第2期間を開始するように構成されてもよく、第2期間は任意選択で、データフレームのそれぞれについて同じである。代替的に、第1期間と第2期間との両方が各データフレームについて同じでもよく、そのような実施形態では、フレームが完全に整列されてもよい(各フレームセクションがデータフレームの各バージョンにおけるメッセージの受信後に同じ持続時間を開始する)。このような例では、第2ノードと各トランシーバとの間の異なる伝搬時間による小さな相対オフセットを除いて、フレームは、完全に並列に(整列して)送信される。
【0009】
本発明のさらなる態様では、複数のトランシーバを備える第1ノードから第2ノードに信号を送信する方法が提供され、この方法は第1ノードの複数のトランシーバのそれぞれから第2ノードに各データフレームを送信する工程を含み、各データフレームを送信する工程はデータフレームの送信が重複するように送信開始時間に対して開始され、各データフレームは第1トレーニングシーケンスと第2トレーニングシーケンスとを含み、各データフレームごとに、第1トレーニングシーケンスは他のデータフレームの対応する第1トレーニングシーケンスと比較して、送信開始時間に対して異なる時間で開始するように構成され、第2トレーニングシーケンスは他のデータフレームの対応する第2トレーニングシーケンスと比較して、送信開始時間に対して同時に開始するように構成される。
【0010】
この方法は、第2ノードからメッセージを受信する工程を含み、データフレームはメッセージに応じて送信される。各データフレームの送信開始時間は、各トランシーバによるメッセージの受信後の所定の遅延期間として判定されてもよい。
【0011】
以下の任意選択的な特徴は、前述の態様のいずれかに適用されてもよい。
【0012】
好ましくは、第1トレーニングは各データフレームの開始に位置し、任意選択、メッセージの受信に対する第1トレーニングシーケンスの開始時間を決定する可変遅延期間が先行する。
【0013】
第1トレーニングシーケンスは、好ましくは、シンボルレートで複数のシンボルを含み、各第1トレーニングシーケンスごとの開始は所与のトレーニングシーケンスの開始時間が他のフレームの第1トレーニングシーケンスのいずれかのシンボル境界と一致しないように、および/または、各第1トレーニングシーケンスのシンボル境界が整列しないように選択される。各第1トレーニングシーケンスに先行する遅延期間は、第1トレーニングシーケンスおよび/または第2トレーニングシーケンスのシンボル期間の非整数倍でもよい。
【0014】
好ましくは、第1トレーニングシーケンスは、所定のコードシーケンス(任意選択で、周期的に反復するコードに基づく)を含む。第1トレーニングシーケンスは、完全な周期的自己相関を有するシーケンスでもよく、好ましくはIpatovシーケンスでもよい。第2トレーニングシーケンスは、好ましくは暗号的に生成されたトレーニングシーケンスを含む。
【0015】
この方法は、第2トレーニングシーケンスがそれぞれのトランシーバによるメッセージの受信後に共通の時間オフセットで開始するように、第2トレーニングシーケンスに先行するデータフレームの1つまたは複数の部分の長さを変更する工程を含んでもよい。この方法は、データフレームの異なるものの間で、第1トレーニングシーケンスと、フレームのデータペイロードと、第2トレーニングシーケンスの前に挿入された送信ギャップと、のうち1つまたは複数の長さを変更する工程を含んでもよい。各データフレームの1つまたは複数の部分の長さは、各データフレームの開始前に挿入された送信遅延を補償する(好ましくは実質的に正確にバランスを取る)ために変更されることが好ましい。好ましくは、これは、第1トレーニングシーケンスの前に挿入された遅延を含む、第2トレーニングシーケンスまでの(しかしそれを含まない)データフレームの全長が全てのデータフレームについて同じであるように行われる。
【0016】
あるアプローチでは、各第2トレーニングシーケンスに先行して、各データフレームの第2トレーニングシーケンスが各トランシーバでのメッセージの受信に対して同一のオフセットで生じるようにサイズ設定された各送信ギャップが設けられてもよい。第2トレーニングシーケンスの前に挿入された送信ギャップと、第1トレーニングシーケンスに先行して挿入された任意の遅延期間との合計は、好ましくは、全てのデータフレームについて実質的に一定である。この方法は、第2トレーニングシーケンスに先行するフレームの一部において、好ましくは物理レイヤヘッダおよびフレームのペイロードの一方または両方において、送信ギャップサイズをシグナリングする工程を含んでもよい。この方法は、データフレームの所定の1つに対して、物理レイヤヘッダ内の暗号化されていない形式の、また、ペイロード内の暗号化された形式の各送信ギャップを特定する情報を含んでもよい。
【0017】
あるアプローチでは、各第2トレーニングシーケンスに先行して、各データフレームの第2トレーニングシーケンスが各トランシーバでのメッセージの受信に対して異なる時間オフセットで発生するようにサイズ設定された各送信ギャップが設けられてもよい。
【0018】
第2トレーニングシーケンスは、各データフレームの終わりに、および/またはデータフレームのペイロードの後に位置してもよい。各データフレームは、それぞれ異なる第2トレーニングシーケンスを含んでもよく、または、第2トレーニングシーケンスが各データフレームについて同じ(すなわち、同じビットシーケンス)でもよい。
【0019】
任意選択で、各データフレームは、第3トレーニングシーケンス、好ましくは、暗号的に生成されたトレーニングシーケンスをさらに含んでもよい。第3トレーニングシーケンスは、各データフレームに対して同じであることが好ましい。第3トレーニングシーケンスは、第2トレーニングシーケンスとは異なる(すなわち、異なるビットシーケンス)ことが好ましい。
【0020】
あるアプローチでは、各第2トレーニングシーケンスは各データフレームの送信の開始後に(言い換えると、各トランシーバによるメッセージの受信後に)、共通の開始時間で開始するように構成されてもよく、各第3トレーニングシーケンスは各データフレームの送信の開始後に(言い換ええると、各トランシーバによるメッセージの受信後に)、それぞれ異なる開始時間で開始するように構成されてもよく、任意選択で、可変送信ギャップが先行するように構成されてもよい。
【0021】
各データフレームはそれぞれのペイロードを含んでもよく、代替のフレーム構造では、ペイロードは第2トレーニングシーケンスおよび第3トレーニングシーケンスの前、第2トレーニングシーケンスおよび第3トレーニングシーケンスの間、または第2トレーニングシーケンスおよび第3トレーニングシーケンスの後に位置してもよい。
【0022】
一実施形態では、各データフレームは、第1整列Ipatovトレーニングシーケンスと、第2整列暗号トレーニングシーケンスと、第3非整列暗号トレーニングシーケンスと、を含む。なお、フィールドやトレーニングシーケンスなどが時間的に整列されたものとして本明細書に記載されている場合、これは、一般的には、フレーム送信の開始から共通の時間オフセットで送信されるように、または同様に、各トランシーバにおけるオリジナルメッセージの受信から送信されるようにタイミングが合わせられることを意味し、その結果、フィールドは実質的に同時に送信されることになるが、異なるトランシーバへの異なる伝搬遅延は整列が実際には正確ではなく近似的であることを意味し得ることに留意されたい。
【0023】
この方法は、1つまたは複数のデータフレームの一部の送信をミュートする工程を含んでもよい。ミュートされた部分は、第1トレーニングシーケンスと、フレーム開始デリミタと、物理レイヤヘッダと、データペイロードとのうち1つまたは複数を含んでもよい。ミュートする工程は、少なくとも1つのデータフレームがミュートされていない形態の部分を含むように、データフレームの全てではないが、データフレームのうち1つまたは複数について実行されてもよい。好ましくは、第2トレーニングシーケンスおよび/または第3トレーニングシーケンスがデータフレームのいずれについてもミュートされた部分に含まれない。
【0024】
この方法は、第2ノードからのメッセージと、トランシーバの送信強度またはトランシーバと第2ノードとの間のチャネル品質と、のうち1つまたは複数に基づいて、データフレームの部分がミュートされるべき1つまたは複数のトランシーバを選択する工程を含んでもよい。比較的高い送信強度またはより良好なチャネル品質を有する1つまたは複数のトランシーバは、第1トレーニングシーケンスがミュートされていないデータパケットの送信用に選択されてもよい。選択工程は、フレームが送信されていることに応じて、第2ノードからトランシーバへの前述のメッセージに基づいて行われてもよい(これは、チャネルが一般的に、両方向において非常に類似していると予想され得るためである)。また、最良のチャネルを有するトランシーバは、他の送信プロトコル(利用可能であれば、LF、UHF、Bluetooth(登録商標))に基づいて、または以前の交換に基づいて(好ましくは、それらがごく最近発生した場合)選択されてもよい。
【0025】
データフレームの一部の送信をミュートする工程は、(例えば、フレームの他の部分に対して)送信電力を低減する工程と、またはその部分の送信を無効化する工程を含んでもよい。
【0026】
この方法は、代替的にまたは追加的に、1つまたは複数のデータフレームの全体の送信をミュートする工程を含んでもよく、好ましくは、トランシーバのうち1つまたは複数の事前に選択されたトランシーバのためのデータフレームのみが送信される。
【0027】
この方法は、好ましくは、閾値信号強度を超える信号の検出された第1パスの信号強度(例えば、検出された第1パスが特に強い場合)の検出に応じて、第2ノードから以前に受信された信号(例えば、メッセージ)の信号強度に基づいて、データフレームのうち1つまたは複数のための送信電力を低減する工程を含んでもよい。
【0028】
第2トレーニングシーケンスに次いで、データフレームの追加のデータが続いてもよく、この方法は、好ましくは、1つまたは複数のデータフレームのための第2トレーニングシーケンスの送信後に、送信電力を低減する工程、または送信を無効化する工程を含む。追加データは、フレームのペイロードおよび/またはフレームの物理レイヤヘッダを含んでもよい。
【0029】
好ましくは、各トランシーバの送信のタイミングはトランシーバのそれぞれのクロックに基づいており、この方法はトランシーバクロックのうち1つまたは複数のクロック周波数を調整して、各トランシーバのキャリア周波数オフセット(CFO)を調整する工程を含む。クロック周波数は、第2ノードから受信された以前の送信(例えば、メッセージ)の検出されたCFOに基づいて調整されてもよい。この方法は、受信した送信のCFOに対して各トランシーバの共通CFOを設定するようにトランシーバのクロック周波数を調整する工程を含んでもよく、任意選択で、共通CFOは、所与のCFOオフセット(動的に計算され得る)だけ受信CFOよりも小さいかまたは大きい。共通CFOは、所定の目標CFOでもよい。この方法は、代替的に、受信した送信のCFOに関連して、各トランシーバについて異なる相対CFOオフセットを設定する工程を含んでもよい。この方法は、第2ノードからの初期メッセージに基づいて第1クロック調整を実行する工程と、第2ノードからの後続のメッセージに基づいてクロック調整を精緻化する工程とを必要とし得る。
【0030】
各トランシーバのフレームの送信開始は、CFOが共通目標CFOに調整される前に、トランシーバの初期CFOを補償するようにさらに調整されてもよい。
【0031】
各トランシーバは、クロック信号の周期(トランシーバがそれらの特定の時間増分でのみ送信を開始することを可能にする設計上の制限の結果であり得る)に基づいて、離散時間増分で送信を開始するように構成されてもよい。その場合、この方法は、送信開始時間の前にクロック信号のクロック周波数を調整することにより、離散時間増分に対するトランシーバの送信開始時間を調整する工程を含んでもよい。これは、調整前にクロックにより規定される離散時間増分に対して、フレーム送信の開始をより早い、またはより遅い時間に調整するために、好ましくは、決定された期間に亘って、クロック周波数を増減させる工程を含んでもよい。
【0032】
好ましくは、データフレームが第2ノードと第1ノード間のレンジング交換の一部として送られる。データフレームは、第2ノードから第1ノードに送られるレンジング交換の初期メッセージに応じて送られ得る。
【0033】
この方法は、第2ノードにおいて送信されたデータフレームに対応する信号を受信する工程をさらに含んでもよい。次いで、この方法は、第2ノードにおいてそれぞれのデータフレームのうちの特定の1つを識別する工程と、識別されたフレームのデータを取得する工程と、を含んでもよい。この方法は、第1トレーニングシーケンスを使用して、データフレームを検出する工程と、第1トレーニングシーケンスの検出に基づいてデータフレームの取得を開始する工程と、を含んでもよい。
【0034】
本発明のさらなる態様(前述の態様のいずれかと組み合わせてもよい)では、第1ノードと第2ノードとの間の通信の方法が提供される。この方法は、第2ノードにおいて、第1ノードにメッセージを送信する工程と、第1ノードの各トランシーバにより送信された複数の重複したデータフレームに対応する信号を受信する工程と、それぞれのデータフレームのうちの特定の1つを識別して、各データフレームに含まれる第1トレーニングシーケンスに基づいて識別されたデータフレームのデータを取得する工程と、を含み、各第1トレーニングシーケンスは好ましくは、各トランシーバにおけるメッセージの受信時間に対してそれぞれの異なる開始時間で開始し、識別されたフレームのデータを取得する工程は好ましくは、各データフレームに含まれる第2トレーニングシーケンスを検出する工程を含み、データフレームの第2トレーニングシーケンスは各トランシーバにおけるメッセージの受信時間から共通の時間オフセットで開始する。
【0035】
以下の任意選択的特徴は、前述の態様のいずれにも適用され得る。
【0036】
この方法は、第2トレーニングシーケンスの検出に基づいて、(第2ノードにおける)フレームの受信時間を決定する工程を含んでもよい。受信信号は、典型的には、トランシーバから第2ノードへの複数の信号パスに対応するデータフレームの複数の重複バージョンを含む。この方法は、信号内の第2トレーニングシーケンスの最も早い出現を検出し、最も早い出現を使用して、フレームの受信時間を判定する工程を含んでもよい。決定された受信時間は、第1ノードと第2ノードとの間の距離を計算するために使用され得る。
【0037】
この方法は、第1トレーニングシーケンスのうち1つまたは複数(好ましくはそれぞれ)のそれぞれの受信時間を決定する工程と、それぞれの受信時間に基づいてトランシーバのうちのそれぞれのトランシーバまでのそれぞれの距離を測定する工程とを含んでもよい。測定された距離は、例えば三角測量により、第1ノードの位置を計算するために使用されてもよい。この方法は、測定された距離のうち最も短い距離を判定する工程と、第2トレーニングシーケンスの受信に基づいて計算された距離と最短距離を比較する工程と、比較に基づいてフレームを処理する工程とをさらに含んでもよい。この方法は、最短距離が第2トレーニングシーケンスの受信に基づいて測定された距離と一致する場合、フレームが真正であると判断する工程、および/または一致しない場合、フレームまたはそこから測定された距離測定値を破棄する工程を含んでもよい。
【0038】
この方法は、第1トレーニングシーケンス、第2トレーニングシーケンス、および/または第3トレーニングシーケンスのうち1つまたは複数の受信時間から導出された複数の距離測定値に基づいて、第1ノードの位置を測定する工程を含んでもよい。
【0039】
この方法は、受信されているデータフレームのミュートされた部分の間、および/または第2トレーニングシーケンスの受信の後に、第2ノードにおける受信機を無効化する工程を含んでもよい。
【0040】
ノード間の通信は、好ましくは、無線通信プロトコルに基づく無線であり、例えば、超広帯域(UWB)無線通信システムに基づく。
【0041】
一実施形態では、第1ノードは車両を含んでもよく、第2ノードは車両用の無線キーフォブなどの遠隔操作デバイスを含んでもよい。フレームは、車両の自動運転を制御するための制御メッセージ交換の一部として交換されてもよい。
【0042】
さらなる態様では、前述のような、または以下により詳細に記載されるような、任意の方法を実行するための手段を有するデバイスまたはシステムを提供する。
【0043】
本発明は、複数のトランシーバを備えるデバイスまたはシステムであって、各トランシーバは遠隔デバイスからメッセージを受信し、メッセージに応じて各データフレームを遠隔デバイスに送信するように構成され、各トランシーバは複数のトランシーバからのデータフレームの送信が重複するように、トランシーバによるメッセージの受信後、所定の期間、それぞれのデータフレームの送信を開始するように構成される、デバイスまたはデバイスをさらに提供する。
【0044】
本発明は、遠隔デバイスと通信するためのトランシーバであって、遠隔デバイスにメッセージを送信し、遠隔デバイスのそれぞれのトランシーバによりメッセージに応じて送信された複数の重複データフレームに対応する信号を受信するように適合されたトランシーバと、各データフレームの特定の1つを識別し、各データフレームに含まれる第1トレーニングシーケンスに基づいて、識別されたデータフレームのデータを取得するための手段と、を備え、各第1トレーニングシーケンスは好ましくは、各トランシーバにおけるメッセージの受信時間に対してそれぞれの異なる開始時間で開始し、取得手段は好ましくは、データフレームのそれぞれに含まれる第2トレーニングシーケンスを検出するように構成され、データフレームの第2トレーニングシーケンスはそれぞれのトランシーバにおけるメッセージの受信時間から共通の時間オフセットで開始する、デバイスまたはシステムをさらに提供する。
【0045】
前述の態様のいずれかにおけるようなデバイスまたはシステムは、上記で説明されたような、または以下でより詳細に説明されるような、任意の方法を実行するか、またはそれに参加するようにさらに構成されてもよい。
【0046】
また、本発明は、データ処理デバイスにより実行される場合、本明細書に記載の任意の方法を実行するように適合されたソフトウェアコードを含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0047】
本発明の一態様における任意の特徴は、任意の適切な組み合わせで、本発明の他の態様に適用されてもよい。特に、方法の態様は、デバイスまたはコンピュータプログラムの態様に適用されてもよく、その逆もまた同様である。
【0048】
さらに、ハードウェアで実施される特徴は、一般的に、ソフトウェアで実施されてもよく、その逆もまた同様である。本明細書内のソフトウェアとハードウェアとの機能についての記載は、全て適宜解釈されるべきである。
【0049】
本発明の好ましい特徴を、以下の添付の図面を参照しながら、例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、UWB(超広帯域)双方向レンジングプロトコルの空中フレームを示す。
【
図2】
図2は、DecaCypherを使用する安全なUWB双方向レンジングプロトコルの空中フレームを示す。
【
図3A】
図3Aは、複数のトランシーバを有するノードとの通信を示す。
【
図3B】
図3Bは、記載された通信技術を利用する自動駐車シナリオを示す。
【
図4】
図4は、複数のアンカ(カム)への双方向レンジングを示す。
【
図5】
図5は、開示された1つの通信方式による準同時フレームの使用を示す。
【
図6】
図6は、CFO=-5ppmの場合の典型的なキャリアループとアキュムレータとを示す。
【
図7】
図7は、4つの準同時フレームに対するシミュレーション結果を示す。
【
図8】
図8は、4つの準同時フレームの時間領域プロットを示す。
【
図9】
図9は、同時DecaCypherを有する準同時フレームを使用する代替通信方式を示す。
【
図10】
図10は、同時DecaCyphersを持つ4つの準同時フレームに対するシミュレーション結果を示す。
【
図12】
図12は、例えば、DW1100インプリメンテーションにおいて使用されるようなプロトコルフレームを示す。
【
図13】
図13は、例えば、DW1100トランシーバを使用して実施されるような同時DecaCypherシーケンスを有する通信方法の変形例を示す。
【
図14】
図14は、分離され、重畳された4つの準同時フレームを示す。
【
図15】
図15は、DW1100実装における同時DecaCypherを有する4つの準同時フレームのシミュレーション結果を示す。
【
図17】
図17は、減衰したNLOS条件におけるローカリゼーションを示す。
【
図18】
図18は、LOS条件におけるローカリゼーションを示す。
【
図19】
図19は、4つのアンカでの徘徊テスト(walk-around test)を示す。
【
図20】
図20は、4つのアンカでの徘徊ローカリゼーションテストの距離測定値を示す。
【
図21】
図21は、PRF64フレーム構造例(216μs持続時間)を示す。
【
図22】
図22は、任意選択のフレーム部分(177μsフレーム持続時間)を有するローカリゼーションでの使用のためのPRF64フレーム構造を示す。
【
図23】
図23は、2つの有効なIpatovプリアンブルおよびペイロード(175μsフレーム持続時間)を有するPRF64フレーム構造を示す。
【
図24】
図24は、PRF64パケット(フレーム持続時間158μs)を示す。
【
図25】
図25は、送信された同一のデータ(163μsフレーム持続時間)を有するPRF64方式を示す。
【
図26】
図26は、データペイロードなしの並列サイマルレンジング(simulranging)(123μsフレーム持続時間)を示す。
【
図27】
図27は、基本的なPRF16バリアント(variant)を示す。
【
図28】
図28は、ペイロードの差がより小さく、Ipatov配列がより長いPRF16バリアントを示す。
【
図29】
図29は、通信方式の2アンカバリアント(158μsフレーム持続時間)を示す。
【
図30】
図30は、(任意選択として)ミュートされたSLAVE CAM_Bプリアンブルを有する、通信方式の超短時間の2アンカバリアントを示す。
【
図31】
図31は、車両とキーフォブとの間の送信/受信の例示的なシナリオを示す。
【
図32】
図32は、例示的なシナリオにおける推定CIRを示す。
【
図33】
図33は、キーフォブとアンカとの空中フレームを示す。
【
図34】
図34は、6.5GHzチャネルにおけるパス振幅対CFOのプロットを示す。
【
図35】
図35は、同じチャネルにおけるパス振幅対CFOのズームインプロットを示す。
【
図36】
図36は、4GHzチャネルにおけるパス振幅対CFOのプロットを示す。
【
図37】
図37は、8GHzチャネルにおけるパス振幅対CFOのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
IEEE規格802.15.4-2011は、
図1に示されるフレーム構造と双方向レンジング能力とを有する超広帯域物理レイヤ(UWB PHY)について記載している。実線の輪郭は、送信されたフレームを示す。点線の輪郭は、受信されたフレームを示す。以下の略語は、フレームの特定の部分を示すために、
図1および後続の図で使用される。
・SFD-フレーム開始デリミタ
・PHR-PHY(物理レイヤ)ヘッダ
フレームは、Ipatovシーケンス形式で、チャネルサウンディングとフレーム検出とのために使用されるトレーニングシーケンスを含む。これは、チャネルサウンディングの目的(完全な周期的自己相関を含む)に役立つ特定の特性を有する所定のコードシーケンスに基づいて、フレームプリアンブルを形成するシンボルのシーケンスである。
【0052】
デバイスAがフレームの送信時間Tsaを把握し、応答の受信時間Traを検出し、応答遅延tdを把握している場合、デバイスAは、以下のように伝搬時間tpを計算することができる。
(式1)
【0053】
次いで、これに光速度を掛けて、デバイスAとデバイスB間の距離を見出すことができる。
【0054】
複数パス伝搬のため、各デバイスの受信機は、フレームの複数の遅延重畳コピーから成る信号を受信する。デバイスは、チャネルサウンディング用のトレーニングシーケンスとしてIpatovプリアンブルシーケンスを使用して、チャネルのインパルス応答を推定し、これらのコピーのそれぞれの到着時間を計算する。デバイスは、最初のコピーの到着時間を真のTraとして使用する。
【0055】
802.15.4に記載されている方式は、Ipatovプリアンブルシーケンスが事前定義されたコードを繰り返す周期的シーケンスであるため、安全ではない。これは、実際に到着したよりも早く到着したように見せるために、攻撃者によりなりすまされる可能性がある。この理由のため、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/134310号は、チャネルサウンディングシーケンス(本明細書ではトレーニングシーケンスとも呼ばれる)が例えば、暗号的に安全な乱数発生器(CSPRNG)により生成され得る任意のランダムな2進シーケンスであり得る安全な方法を導入した。この場合、受信機と送信機との両方は(送信機において)暗号トレーニングシーケンスを生成し、(受信機において)それを再生成して受信時にシーケンスを検出するために必要な情報(生成アルゴリズムおよび任意のシードおよび/またはキー情報を含む)にアクセスすることができる。これは、中継攻撃からチャネルサウンディングシーケンスを安全にする。このシーケンスを「DecaCypher」と呼ぶことにする。なお、本明細書ではDecaCypherシーケンスを「暗号化プリアンブル(cypher preamble)」または簡単に「暗号」とも呼ぶ。この文脈における「プリアンブル」という用語の使用は、DecaCypherシーケンスがフレームの始めまたはその近傍に位置することを意味するものではなく、トレーニング/チャネルサウンディングシーケンスとしての機能を示すものであり、ここに示す例ではDecaCypherは、通常、フレームの終わりまたは中間に位置する(Ipatovプリアンブルはフレームの始めにある)。
【0056】
前述の特許公報においてDecaCypherが使用される方法の1つが
図2に示される(DecaCypherを用いた安全なUWB双方向レンジングプロトコルのエアフレームを示す)。
【0057】
以下に説明する実施形態は、これらのフレームフォーマットを実施するトランシーバを使用する。
【0058】
なお、本明細書で使用されるDecaCypherという用語は、国際公開第2017/134310号に記載されている実施形態のいずれかで使用される安全なトレーニングシーケンスを指す場合があるが、代替的に、他のタイプのトレーニング/パイロットシーケンスが代用され得ることに留意されたい。好ましくは、これらは暗号的に生成されたまたは保護されたトレーニングシーケンスであるが、他の実施形態では(例えば、セキュリティに対してあまり関心がない場合)、任意の他のタイプのトレーニングシーケンスがフレームのDecaCypher要素として使用されてもよい。
【0059】
文脈上他の解釈を必要としない限り、用語「フレーム」と「パケット」とは、本明細書では通信媒体を介して送信される構造化データユニットを意味するものと互いに互換性を持って使用される(本実施例では無線で)。
【0060】
本発明の実施形態は、ノード間の通信のために前述のフレーム構造の変形を採用し、これらのノードのうち少なくとも1つは、複数の別個の送信機/受信機を含む。そのような構成の一例は、
図3Aに示され、第1ノード302と第2ノード304とを含む。第2ノードは、4つの別個のトランシーバ306,308,310,312を含み、これらは本明細書では「アンカ」とも呼ばれ、それぞれが、信号の送信/受信用の各アンテナに関連付けられる。この例のノード302は、単一のトランシーバ316を含む(しかし、他の例では、両方のノードが複数のトランシーバを含み得る)。ノード間の通信は、ノード304のいずれかのアンカを介して行うことができる。
【0061】
説明される実施形態は、ノード302および/またはノード304内のトランシーバにおいて、DW1000またはDW1100トランシーバ集積回路(IC)モジュール(アイルランド国、デカウエーブ社から入手可能)を使用してもよい。しかし、任意の適切なトランシーバ技術が使用されてもよい。一実施形態では、ノード304は、本明細書内で記載される様々な技法と、フレーム構造と、フレームタイミングとを使用して、複数のトランシーバからデータを受信し、それぞれのトランシーバからのフレームの送信を制御および調整するためのコントローラ314(たとえば、マイクロプロセッサ)を含んでもよい。しかし、好ましい実施形態では、本明細書で説明する様々な通信方式は、アンカの中央調整(central coordination)なしで動作する。特に、各アンカは、ノード302から独立してメッセージを受信し、自律的に応答フレームを生成する。しかしながら、アンカの応答がアンカでのメッセージの受信に応じて所定のタイミングで生成されるため、それぞれの応答フレームは主にノード302とノード304の異なるアンカとの間の信号伝搬時間の差によるわずかな差を除いて、調整されたやり方で実質的に同時に生成される。
【0062】
現実世界での適用の一例を
図3Bに示す。ここで、ノード302は自動車または他の車両用の無線キーフォブであり、ノード304はトランシーバまたはアンカ306からアンカ312(例えば、車両のそれぞれの前隅および後隅に配置される)を含む車両である。この実施形態では、記載された通信方式は、車両の自動駐車機能を実装するために使用される。
【0063】
このシナリオでは、異常がないことを確認するために、自動車が近くの運転者と共に自動的に駐車されている。規則によれば、運転者は自動車から6mを超えない虚栄で離れていなければならない。自動車のバンパの各隅には、キーフォブからの信号に応答する準備ができたトランシーバがある。いかなる特定時においても、運転者はアンテナのうち1つのみを見るのに遮るもののない視界を有してもよく、使用するのに最適なアンテナは車の操縦自体に応じて絶えず変化する可能性がある。安全上の理由から、車がキーフォブから「警報解除(All Clear)」信号の受信を停止した場合、例えば100msのオーダーの短時間内に自動駐車手順を停止しなければならない。
【0064】
これに対処する1つの方法は、キーフォブが100msごとにフレームを送信することである。「カム(Cam)」と呼ばれる、車内の4つのトランシーバ/アンカのそれぞれは、異なる予めプログラムされた応答時間後、例えば20ms、40ms、60ms、80ms後にキーフォブに応答するようにプログラムされる。キーフォブは、少なくとも1つのアンテナを見るための比較的見通しのよい視野を有し、適切な時間にアンテナの応答を準備して聴取するように予めプログラムされているので、通常、少なくとも1つのフレームを受信する。この通信方式は、
図4に示される。
【0065】
式(1)を再使用して、各カムへの伝搬遅延を見出すことができ、例えば、カムCの場合は以下の通りである。
(式2)
【0066】
これにはいくつかの問題がある。1つは、キーフォブが通常、小容量バッテリを有し、1つのフレームを送信し、次いで4つのフレームを受信することに多くの電力を要することである。バッテリ容量に加えて、バッテリからの過度の瞬間的電流を引き出すことを避けるために、しばしば大容量キャパシタを必要とする。受信するフレームが多いほど、これらのキャパシタは大容量でなくてはならない。
【0067】
●同時フレームとのレンジング
本発明の実施形態は、本明細書において「サイマルレンジング(simulranging)」と呼ばれる方式を用いて、別の解決策を提供する。明瞭さおよび理解を容易にするために、この方式は、車両と通信するキーフォブの文脈(例えば、自動駐車のシナリオまたは安全なドア施錠/解除への適用)において説明され続けるが、この方式はこの適用に限定されず、少なくとも1つが複数のトランシーバを含むノードまたはデバイス間の通信を含む任意の適切な文脈で適用され得ることに留意されたい。
【0068】
この方式では4つのカム全てが、それらのフレームを準同時に送信するが、1つのカムのみがキーフォブにより受信される。車内の各トランシーバは、各トランシーバにおけるキーフォブからのメッセージの受信から、わずかに異なる時間遅延、例えば、それぞれ100μs、101.25μs、102.5μs、および103.75μs後に、キーフォブからの初期メッセージに応答するようにプログラムされる。これは、トランシーバが全てほぼ同時に応答するが、1.25μsの間隔があることを意味する。キーフォブ内の受信機は100μs後にフレームを受信する準備をするようにプログラムされ、いくつかのフレーム、おそらくは1つのみであるが、おそらくは全てのフレームを「見る」ことになる。しかしながら、1.25μsの間隔は、(約1μsのシンボル持続時間を有する)各DecaCypherトレーニングシーケンスのシンボル境界が整列されていないため、実際には、応答のうち1つのフレームのみを復号し、フレームのうち1つのチャネルインパルス応答のみを推定することを意味する。より一般的には、各オフセットは、DecaCypherシーケンスのシンボル整列を防止するために、DecaCypherシンボル持続時間の任意の非整数倍でもよい。
【0069】
したがって、特定のオフセットは、単に例として与えられる(本明細書の他の箇所では例えば128nsのオフセットが提案されている)。オフセットは、(例えば)1つの送信機からのマルチパスがそのエネルギを別の送信機のアキュムレータ領域に重複しないように、予想される遅延拡散(例えば、マルチパス遅延)よりも大きいことが好ましい。
【0070】
前述のように、空中フレームは、
図5に示されるように存在する。
【0071】
これは、受信機(例えば、キーフォブ)がフレームを受信するときに行うものである。
・Ipatovプリアンブル検出モードで起動する。
・プリアンブル検出モードでは、信号が存在すると継続的に想定され、受信するものが何であってもCIR(チャネルインパルス応答)推定値を構築する。
・CIR推定値が実際の有効な信号から来ていると判断すると、取得モードに切り替わります。
・取得モードでは、アキュムレータを使用して多くのノイズの多いチャネル推定値を合計して、1μsの長いチャネルインパルス応答(CIR)を構成し、キャリア回復アルゴリズムを開始する。
・キャリア回復アルゴリズムは、最大のエネルギを含む完全なCIRの64nsセクションから情報を収集のみする。
・取得モードでは、プリアンブルの終わりをシグナリングするSFDも探索する。ここでも、64nsウィンドウから情報を収集のみする。
・SFDが見つかると、受信機は、ペイロードを受信する準備をする。Ipatov CIR推定が完了する。
・ペイロードは再び、CIRの同じ64nsセクションからの情報のみを使用して復調される。
【0072】
ペイロードの復調が終了すると、DecaCypherを使用して2 番目の安全なCIR推定値を構築する。
【0073】
図6は、-5ppm(百万分率)のキャリア周波数オフセット(CFO)を有し、10dBs強度が高く、15ns遅延するピークパスが続く弱いパスがある一般的な受信フレームのアキュムレータとキャリアループを示す。
【0074】
一番上のサブプロットは、-5ppmオフセットでのキャリア回復ループホーミング(carrier recovery loop homing)である。2番目のサブプロットは、プリアンブル検出から形成されたアキュムレータを示す。受信機は、ここで最も強い信号を拾い、この信号がおよそタップインデックス728に現れるように、その遅延を調整する。次いで、Ipatovプリアンブルの受信中に、そのキャリアとタイミング回復をこの信号に集中させ、そのIpatovベースのチャネル推定値を累積する。3番目のサブプロットは、Ipatovプリアンブルから構築されたチャネル推定値を示す。4番目のサブプロットは、DecaCypherから構築されたチャネル推定値を示す。
【0075】
図5に示された4つのフレーム全てが同時に到着する受信機のシミュレーションが、Matlab(登録商標)でシミュレーションされた。異なるキャリア周波数オフセット(CFO)を有する4フレームは、ほぼ同時に送信された。3つのフレームに対する受信電力は-90dBmであったが、フレーム4の受信電力は-88.5dBmであった。各信号のチャネルは、最初のパスがメインパスよりも10dB弱い二パスチャネルであった。
【0076】
フレーム1) 40μs遅延後に送信。CFO=-5ppm。Rxレベル = -90dBm。
フレーム2) 41.25μs遅延後に送信。CFO=-4ppm。Rxレベル = -88.5dBm。
フレーム3) 42.50μs遅延後に送信。CFO=-3ppm。Rxレベル = -90dBm。
フレーム4) 43.75μs遅延後に送信。CFO=+5ppm。Rxレベル = -90dBm。
【0077】
図7は、シミュレーションによる(準)同時フレームに対する受信機の応答を示す。
【0078】
一番上のサブプロットは、最も強い信号の-4ppmオフセットでのキャリア回復ループのホーミングである。2番目のサブプロットは、プリアンブル検出から形成されたアキュムレータを示す。受信機は、ここで見られる4つの信号のうち最も強い信号を拾い、この最も強い信号がほぼタップインデックス728に現れるようにその遅延を調整する。これは、一般に、自動車の隅の最も近い見通し線(LOS)である。次いで、Ipatovプリアンブルの受信中に、そのキャリアとタイミング回復をこの信号に集中させ、そのIpatovベースのチャネル推定値を累積する。3番目のサブプロットは、Ipatovプリアンブルから構築されたチャネル推定値を示す。4つのうちの3つのフレームは、この推定において強いパスを生成する。フレーム4に起因する信号は、そのCFOが後続の信号とは9ppm異なるため、存在しない。4番目のサブプロットは、暗号化されたプリアンブルから構築されたチャネル推定値を示す。この推定では、1つのフレームのみが任意のパスを生成する。フレーム2による信号は、その遅延が受信機がホームインした遅延に一致する唯一の信号である。他の3つのフレームは、1μs以上離れている。DecaCypherは、長さ1μsのシンボルのグループを使用するため、別のシンボルから1μs以上離れているシンボルはそれとゼロ相関を有する。
【0079】
●セキュリティ強化
前述のようなサイマルレンジング方式は、DecaCypherが使用されているにもかかわらず、安全ではない。4つのフレームは、全て同じDecaCypherシーケンスを有するが、それらの間に遅延を伴って送信される。攻撃者は、第1シーケンスを聴取することができ、次いで、3.75μsで、送信されることを知っているシーケンスよりもわずかに早く同じシーケンスを送信する第4フレームに対する記録および再生攻撃を使用することができ、したがって、真の飛行時間(TOF)が低減される。これは、自動駐車での適用には問題にならないが、他のアプリケーション、例えば、パッシブエントリシステム(passive entry system)において問題になり得る。
【0080】
この方式は、
図8と
図9とに示され、以下で説明されるように、安全になるように修正することができる。
【0081】
図8は、4つの準同時フレームの時間領域プロットを示す。
【0082】
図9は、同時DecaCypherを有する準同時フレームを示す。ここで、各フレームは(別のトランシーバにより送信された先行フレームに対して)1.25μsの時間オフセットで前述のように送信されるが、DecaCypherは全て整列して送信され、すなわち、各フレームにおいて、その挿入されたギャップと開始時の時間オフセットとの合計がある程度まで等しくなるように、ペイロードとDecaCypherとの間にギャップが挿入され、その結果、各DecaCypherはトランシーバによるキーフォブメッセージの受信後に同じ遅延で送信され、したがって、各DecaCypherは事実上、4つのトランシーバのそれぞれから同時に送信される(キーフォブと異なるトランシーバとの間の異なる伝搬時間によるわずかな変動を除く)。
【0083】
当然のことながら、キーフォブ内の受信ICは4つのフレームのうち1つを「見る」だけであり、どのフレームがどれかを知ることができず、したがって、ペイロードとDecaCypherとの間のギャップを知らない。この理由のために、それは、DecaCypherが到着する前のギャップの長さを知らせる。このギャップ長は、PHYヘッダ(PHR)またはペイロードに符号化され得る。ペイロードは通常、暗号化されるため、複合化に時間がかかる場合があり、このため、PHRは通常、符号化に適した場所である可能性がある。PHRは暗号化されないため、PHRが攻撃され、場合によっては、受信機が実際よりも早く到来したと考えるように騙される可能性がある。この問題に対処するために、送信機は、後の検証のためにペイロード内の同じビット(おそらく暗号化された)を符号化することもできる。
【0084】
これは今や安全であり、キーフォブ内の大量のエネルギを節約する。フレーム受信を1回のみ行う必要があるが、最良の位置決めされた送信機からフレームを受信する。
【0085】
この安全な改訂版方式では、プリアンブル検出時間における全ての信号が類似の強度であることが起こり得る。その場合、受信機はキャリアとタイミング回復とを訓練するために、最も離れた信号を抽出し、そのチャネル推定値を構成することができる。次いで、暗号化された信号が到着し、より近いトランシーバが非常に類似したCFOを有することが起こり得る。このトランシーバからの暗号パルスは、より遠いトランシーバのパルスの前に現れ、チャネル推定値を破損するように見える。実際、これは破損ではなく、元々ロックオンされていたトランシーバよりも実際に近いトランシーバがあることを示すだけである。
【0086】
図10は、この場合に対応するアルゴリズム出力(同時DecaCypherによる4つの準同時フレームのシミュレーション)を示す。
【0087】
●アンカ内のクロックの目標オフセットへの調整
キーフォブとトランシーバとの間に異なるクロックオフセットが存在する場合、様々な遅延の正確な値は、どのデバイスが遅延をカウントしているかに応じて、わずかな割合だけ変化し得る。これらの遅延変動は集計され、知覚される到着時間を変動させる可能性がある。これは、複雑化を引き起こし得る。本発明の実施形態は、例えば、クリスタルトリミングキャパシタの値に対して小さな調整を行うことにより、ソースクロックの周波数に対して小さな調整を行うためのいくつかの最新のICに設けられた設備を利用して、これに対処する。それらは、1ppm未満の誤差で目標周波数を達成することができる。多くの受信機では、CFOが測定可能である。これにより、ICは特定のCFOでフレームを受信し、そのCFOを測定した後、そのソースクロックを所望の値にトリミングすることができる。これは、それらがそのフレームに対する応答を送信する前に有効になる。例えば、自動車内の全ての受信機が正確に同時に無音送信を開始することを確実にするために、それらは全て、キーフォブに対してそれらのCFOを同じ値に設定することができる。多くの受信機において、小さな負のオフセットは他の利点を提供し、したがって、それらは全て、例えば-2ppmのCFOを目指すことができる。他の理由のために、各受信機に対して異なるクロックオフセットを有することが望ましく、それらはそれぞれ異なる目標、例えば-20ppm、-15ppm、+10ppmおよび+20ppmを有することができる。
【0088】
クリスタルトリミング手順の重要な態様は、全てのアンカが同じCFOに同期することを可能にすることである。したがって、キーフォブが1つのアンカにロックオンされても、他のアンカからのパスは、キーフォブアキュムレータにおいても簡単に確認可能である。これは、以下により詳細に説明される。あるいは、CFOが共通のCFOに同調されていない場合、Ipatovプリアンブルの取得中に受信機が同期したアンカのみが見られる可能性が高い。
【0089】
初期CFOが大きい場合、第1トリミングは、ターゲットCFOへの完全な収束(convergence)をもたらさない可能性がある。これは、クリスタルトリミング機能の特定の予測不能性と、デバイスごとのばらつきによるものです。したがって、実施形態では、クリスタルトリミングは、2つの工程で行われる。第1工程は、短いIpatovプリアンブルのみからなるキーフォブからアンカへの初期ショートメッセージを伴う(そして、プリアンブルの有効性を確認するために、おそらくSFDを伴う)。暗号またはデータペイロードは存在しない。そのため、Ipatovプリアンブル長は最小、例えば、16、24、または32シンボルに低減され得る。クリスタルトリミングは、最初にこの予備メッセージに基づいて実行され、その後、ターゲットCFOへの収束を改善するために、前述のように完全なデータフレームに基づいて繰り返される。
【0090】
●8ns TX送信グリッドの補償
DW1100 ICのデジタル部は、125MHzクロックでクロックされる。この手段は、所定の8nsタイムグリッドクロックエッジでのみ送信を開始することができる。つまり、パケットによっては、理想的な送信時間から0ー8ns遅れることがあり、この遅れはパケットごとに異なる。通常、データペイロードは、送信機が受信機に必要な遅延を知らせるために使用され、受信機はそれを差し引くことになる。サイマルレンジングと複数のパケットとを用いた場合、4つのペイロード全てを復号し、4つのパケット全てを補償することは不可能である。この補償なしでは、第1パスの不確定性が最大+/-4nsまでである可能性がある。これについては、以下の「シナリオ例」でさらに説明する。
【0091】
一実施形態によると、8nsの送信時間の不確実性は、送信機内で除去される。理想時間からのグリッド時間のオフセットが計算されると、送信機は必要とされる補償に応じて、そのクリスタルクロックレートを変更し、それを一定期間、ある数の百万分率(ppm)だけスピードアップまたはスピードダウンする。たとえば、クリスタルを100μsの間30ppms高速化させると、グリッドポイントのエッジが3ns早く移動する。
【0092】
補正は、クロックをスピードアップさせることにより後の8nsグリッドエッジに対して、またはクロックをスローダウンさせることにより前の8nsグリッドエッジに対して行われてもよい。
【0093】
正確な補償は、クリスタルトリミング(利用可能な範囲が典型的には+/40ppmのオーダー)と離調期間(典型的には100μsと300μsとの間であり得る)との両方を変化させることにより制御され得る。
【0094】
●送信電力削減
実施形態は、送信電力を制御するための様々なアプローチを実施してもよい。TX(送信)電力は、アンカごとに、また各送信パケット内で個別に変更可能である(例えば、ペイロードのような特定の部分は、プリアンブルよりも低い電力レベルで送信可能である)。フレームの所与の部分の送信電力を低減すること、または部分の送信を完全に無効化すること(または部分の送信電力をゼロに等しく低減すること)は、本明細書ではその部分を「ミュートすること」とも呼ばれる。
【0095】
自動車全体が1つの送信デバイスとして扱われる場合、各個々の送信機(アンカ)の送信電力は、総電力制限を超えることを回避するために低減され得る。一アプローチでは、送信するアンカを事前選択するために別のプロトコルが利用可能である場合、各個別のアンカは、例えば、予想される信号強度、送信するアンカの数などに応じて、総TX電力量内で動的にそのTX電力セットを有してもよい。
【0096】
一変形例では、キーフォブが交換を開始し、アンカが応答し、アンカはそれらのTX電力(送信電力)を調整して、その非常に強い信号により、他のより弱いアンカの「シャドウイング」を防止する。キーフォブから非常に強い第1パスを見るアンカは、電力低減の後であっても、キーフォブがその第1パスを見ることに問題がないことを知り、その送信電力を大幅に低減することができる。最も強いアンカによる消費電力低減により、キーフォブが他のアンカからより弱い第1パスをより容易に見ることができる。アンカのTX電力を低減するために使用されるアルゴリズムは、例えば、第1パスの受信レベル(RSL)、キーフォブから受信したマルチパスを含む総RSL、キーフォブ側で適用された送信電力の知見、アンカ自身の最小/最大/デフォルトのTX PWR設定、潜在的に送信するアンカの数、パケットの長さ、総TX PWRバジェット、弱いパスを検出するために必要な最小受信機RSLなど、複数の要因を考慮することができる。
【0097】
本文書で提示されているいくつかの方法は、フレームの特定の部分(例えば、Ipatovプリアンブルまたはデータペイロード中)におけるTX電力のを削減またはミュートし、暗号化トレーニングシークエンス(DecaCypher)中に電力を昇圧することを提案している。減衰された(弱い)第1パスの場合、このアプローチは、この第1パスを検出する可能性を最大にすることができる。
【0098】
●パケットの終了前の受信機/送信機の停止
この技術は、受信機または送信機RFチェーンを早期に停止することにより、受信機および/または送信機の電力節約を可能にする。例えば、データペイロードが不要であるが、PHRとデータとが暗号化プリアンブル(DecaCypher)の後に依然として送信される場合、受信機/送信機は最後の暗号化シンボルの直後にシャットダウンされ得る。
【0099】
暗号化の直後にRFチェーンを停止するために、以下の擬似コードが実行される。
1. SFD検出(またはSFD送信)後に割込をトリガする(約20-30μsかかる)。
2. 受信機または送信機の電源をオフにするためにSPIコマンドを発行する(約10μsかかる)。暗号化には64μsかかり、途中での中断を避けるため、遅延が使用される。
3. SFD検出割込後に、タイマを設定し、次いで、予定時刻に受信/送信を停止するコマンドを送信する。
【0100】
●Ipatovプリアンブル長の短縮
チャネル推定は、チャネル整合フィルタ(CMF)の係数を設定するために使用される。このフィルタは完全なチャネル推定よりもはるかに短く、例えば、DW1000では64サンプル長であるが、チャネル推定は約1000サンプル長である。キャリア回復と、SFD検出と、データ復調ブロックとは、CMFの出力からエネルギを供給され、完全なチャネル推定タップの制限された部分がこれらの関数に使用される。
【0101】
Ipatovシーケンスは、良好な初期CFO推定値が利用可能である場合、または他の理由のために、通常よりも短縮可能である。これを可能にする状況は、以下の状況が挙げられる。
・以前のメッセージが同じデバイスから受信されたことが、受信機がCFOターゲットがゼロに近いことを知っていることを既に意味していた状況。
・全てのアンカが同じCFOで送信し、キーフォブがこのターゲットCFOを知っている場合、キャリアオフセット推定のためにその開始点を事前に初期化することができる状況。
・全てのアンカが同時に送信する場合、同じ受信機CMFウィンドウ内で、キャリアリカバリロック(carrier recovery locking)に使用されるサンプルを決定する(すなわち、64または128nsのタイミングオフセットなしで)状況。
・結果として生じるIpatovアキュムレータにおける弱いパス検出は、暗号アキュムレータのみが第1パス検出に使用されるため、問題ではない。
・データ復調がないため、データ復調のための正確なCMFは必要ない(CFOおよびSFD検出では、データ復調ほど正確なCMFが必要ではない。)
【0102】
●DW1100を用いた安全なサイマルレンジングの実施
Decawave DW1100トランシーバICに基づくトランシーバを使用して、前述の技術の実施に関するさらなる詳細が以下に提供されることに留意されたい。しかしながら、記載されたアプローチは、任意の他の適切なトランシーバ技術に適合されてもよい。
【0103】
これらの実施形態で利用されるDecawave IC(DW1100)では、前述し、
図9に示されるような、(DecaCypherフィールドの前に可変送信ギャップを使用する)安全なサイマルレンジング方式の実施はできない。しかしながら、代わりに、フレームは、
図12に示されるように構成され得る。
【0104】
この方式では、Ipatovパルス間の128nsのタイミング差を維持するために(同じCMFウィンドウ内にマルチパスが加わることを回避するために)、ペイロードサイズは16オクテットだけ異なるように変更される。これは、各ペイロードシンボルがIpatovシンボルよりも8ns長いく、したがって、16×8ns=128nsの時間シフトが導入されるためである。ペイロードサイズは16オクテット異なるが、最小のペイロードはサイズが1オクテットしかない(次のペイロードはそれぞれ17オクテット、33オクテット、49オクテットになる)。
【0105】
このアプローチを使用して、車内の4つのアンカ/カムは
図13に示されるように応答するように構成され、Ipatovプリアンブルとペイロードの長さとは各フレームの開始時に変化する遅延のバランスを取るために変更される。
【0106】
IpatovプリアンブルとSFDシンボル(より短い「タイプS」シンボル)とは全て、1016nsまでの長さであるが、PHRシンボルと、ペイロードオクテットと、DecaCypherシンボル(より長い、「タイプL」シンボルまたはオクテット)とは全て、1024nsまでの長さである。これは、ペイロードオクテットがフレームから削除され、同時に1つのIpatovシンボルが追加された場合、フレーム全体の長さは約8nsまで短くなる。このようにして、DecaCypherの4つ全てが時間的に一致し、したがって、他の1つを聴取することによりそれらのいずれも予測することができないようにDecaCypherの前に来るフレームの部分を短縮して、個々の応答の前に来る無音の量を相殺することができる。受信機は、ペイロード長がPHRで符号化されているため、DecaCypherがいつ到着するかを知っている。また、PHRは暗号化方法で保護されていないが、セキュリティが必要な場合、ペイロードは暗号化される。ハッキング技術によってはこれを利用できるため、セキュリティが必要な場合は、暗号化されたペイロードにペイロード長の確認を含めることも可能である。
【0107】
場合によっては、このようにペイロードサイズを設定する際に、わずかな複雑さがあり得る。リードソロモン(Reed Solomon)符号は、ペイロードの330ビットごとに6オクテットの誤り訂正ブロックを追加する。これは、いずれかのペイロードサイズが41オクテットを超えると、2番目のチェックブロックが追加される。これにより、他のペイロードブロックの6ダミーオクテットでのパディングが必要となる。当然のことながら、フレーム持続時間は、初期無音時間を増加させること、および/または余分なIpatovプリアンブルシンボルを追加することにより等化され得る。
【0108】
●これらの同時フレームが互いに干渉しない理由
前述の方法が機能する理由を理解するために、例示的なシミュレーションを見ることが役立つ。
図14は、全てが同時に空中にある例示的な4つのフレームを示す。各フレームは、開始時に挿入された異なる無音を有する。無音長は、それぞれ192ns、256ns、128ns、0nsである。そして、各フレームは、異なるIpatovプリアンブル長を有する。長さは、それぞれ72シンボル、64シンボル、56シンボル、48シンボルである。ペイロード長は、それぞれ12オクテット、20オクテット、28オクテット、36オクテットである。これにより、セキュリティを維持するために重要である、各フレームのDecaCypherが同時に送信されることが保証される。
図14は、最初の4つのプロットにおける4つの準同時フレームを別々に示し、最終プロットにおける重畳された4つの準同時フレームを示す。
【0109】
図15は、この状況でのDW1100 ICのシミュレーション結果を示す。この場合、各フレームは、それぞれ-2ppm、-3ppm、-4ppm、-5ppmのキャリア周波数オフセット(CFO)を有する空中のフレームとしてシミュレートされた。フレーム振幅は、-4ppmフレームが-89dBmに、他の3つのフレームが-91dBmになるようにスケーリングされた。
【0110】
プリアンブル検出アルゴリズムは、推定されるチャネル応答の短いスナップショットを構築する。これは、
図15の第2サブプロットに見ることができる。受信機は、最も強いエネルギウィンドウを探し、アキュムレータのタップ728とタップ792間の64nsウィンドウにこのエネルギとそのチャネル整合フィルタ(CMF)を配置するように、受信機遅延を調整する。推定されたチャネル応答のこの部分は、チャネル整合フィルタの係数を設定するために使用される。この特定のシミュレーションにおいて、プリアンブル検出中に見られる最も強い信号は、2番目に到着した信号であった。一旦プリアンブルが検出されると、キャリア回復と、タイミング回復と、SFD検出とは、動作するためにチャネル推定のCMF部分内のエネルギのみを使用する。これは
図15の第1サブプロットに見られるように、キャリアループで追跡されている推定キャリアオフセットを-4ppmに収束させる。次いで、アキュムレータは、SFDが検出されるまで、そのチャネル推定値を構築する。これは、
図15の第3サブプロットでわかる。2つの理由から、2番目に到着した信号が最も強く見える。第一に、信号が実際には2dB強く、第二に、他の信号のCFOが補正されていないため、これらの他の信号が部分的に打ち消されてしまうからである。
【0111】
2番目に到着する信号のSFDが検出される。なお、より早く到着するSFDは、CMFが配置されているウィンドウ内に到着しないため、見えないことに留意されたい。CMFのスパンは64nsのみであり、4つの信号は全て互いに少なくとも64nsだけ遅延される。
【0112】
次いで、受信機は、データの複合を開始し、PHR内のデータビットを受信し、次いでペイロードを受信する。それは、他のフレームのデータビットのエネルギがCMFにより掻き集められないように、所望の信号があるウィンドウからエネルギを収集のみするCMFを使用する。また、PHRおよび後続のデータの各ビットは、送信機において異なる拡散コードを使用し、受信機において逆拡散コードを使用し、これは、真のデータを不要な他の信号からさらに分離する。
【0113】
次いで、受信機は、個々の伝搬遅延により分離された全てのフレームから4つのDecaCypher信号の全てを同時に取得する。受信機は、DecaCypher内の各シンボルを構成するパルスのシーケンス内の各パルスの極性を知っているため、予想されるパルスと相関し、チャネルインパルス応答の推定値を得ることができる。同様の時間に受信機に到着するDecaCypherシーケンスのコピーが4つまであるため、インパルス応答推定値は、オーバーレイされた4つのチャネル全ての推定値である。このように、自動車までの距離を計算するためにこれを使用する場合、最初に到着する信号は、到着するこれらの全てのDecaCypherのための最初の十分に大きなパスとなる。
【0114】
図16は、シングルパケットと4つの同時パケット(二パスチャネル)のパフォーマンス比較を示す。
【0115】
なお、上記の例では、特定の遅延と、無音と、Ipatov長と、ペイロードサイズとが使用されることに留意されたい。同様の効果を達成するために、無音をフレーム長とバランスさせる、またはほぼバランスさせるために使用可能の多くの他の遅延がある。使用可能な、64ns以外の多くのCMF長さがある。シンボル長は、基礎となる概念を変更することなく、1μsから変動可能である。また、上記の例は、IEEE802.15.4-2011に記載される6.8Mbpsモード用である。遅延のバランスを取るために異なる数を必要とする、使用可能な他のビットレートもある。また、IEEE802.15.4f、IEEE802.15.6、IEEE802.15.8、を含むその他多くの無線実装もあり、これらは、本明細書に記載される技術からメリットを得る。
【0116】
●サイマルレンジングベースのローカリゼーション
三角測量法によるローカリゼーションもまた、サイマルレンジングパケットを用いて可能となる。三角測量するために、2つ以上のアンカからキーフォブまでの距離が取得される。全ての暗号送信が整列されるため、一般的に、暗号アキュムレータにおいて様々なアンカパスを分離することは不可能である。しかしながら、Ipatovアキュムレータの部位に基づいて異なる距離を計算することが可能である。
【0117】
これを行うために、アンカからのパルスシーケンスはそれらがIpatovアキュムレータ内の異なるセグメントを占有するように、例えば128nsだけシフトされる。
【0118】
4つのアンカが本体の背後に隠れている、難しいNLOS(見通し外)シナリオ(例えば、バックポケット内のキーフォブ)において、このシフト技術を使用する例が
図17のアキュムレータプロットに示される。最初の1016個のアキュムレータサンプルは、Ipatovプリアンブルからのアキュムレータである。次の512個のサンプルは、暗号化プリアンブル(DecaCypher)からのアキュムレータである。0メートルの距離に対応する仮定のIpatovサンプルインデックスは、各アンカについて計算される(垂直赤線)。これらの線から第1パスまでの距離は、各アンカの距離を測定し、この例では2.1m、1.3m、1.6m、1.7mであり、これらは実際の距離に近い。暗号に基づく距離は1.5mと計算されたため、三角測量プロセスではセキュリティ上の理由から、最短のIpatovに基づく距離は1.3から1.5mに増加する。
【0119】
LOS(見通し線)条件では、一つのアンカが極端に近い距離にあり、巨大な電力で発破する場合を除いて、パスはより強く、より鋭くなる。
図18において、第3アンカは、2.0から2.6メートルで他のLOSパスの振幅を減少させる0.1mの距離にある。
【0120】
徘徊テストの結果を以下に示す。4つのアンカを表す4つの点を、
図19に示されるように、互いに約1.9m離れた正方形状に配置し、歩行パスを示した。
【0121】
(個々のIpatovプリアンブルに基づく)4つ全てのアンカまでの測定された距離は、暗号距離(すなわち、同時DecaCypherトレーニングシーケンスに基づいて測定された距離)と共に、
図20に示される。
【0122】
●サイマルレンジングパケット構造の最適化
上記で提案されたベースラインと比較して、多くの最適化アプローチが可能である。
1.Ipatovパルスのタイミングオフセットの低減。タイミングオフセットは、128nsから96nsに、さらには64nsに低減され得る。これは、別のパスのマルチパス重複CMFウィンドウを防止するために依然として十分でなければならない。その結果、ペイロードサイズ間の差が減少する。PRF64モードでは、16オクテットだけ異なるペイロード(128nsのタイミングオフセットをもたらす)の代わりに、ペイロードは、8オクテット(64nsのオフセット)だけ異なり得る。これは、全体的なパケットサイズを縮小させることに役立つ。
2.データパケットサイズの縮小。最小データパケットブロックが16オクテットではなく4オクテットの場合、全てのペイロードサイズが12オクテット(12μs)縮小される。データペイロードが不要な場合、データオクテット(0サイズ)なしでPHRを送信することも可能である。その場合、ペイロードサイズは、4つのアンカの場合、0オクテット、16オクテット、32オクテット、48オクテットとすることができます。
3.TX電力/ミュートの低減。キーフォブは1つのアンカにロックオンし、1つのアンカからペイロードを復号するだけでよいので、他のアンカIpatov/ペイロードを遅延させ、ミュートする(または、より低い電力で送信する)ことができる。このようにして、総TX電力バジェットは最適化され得て、選択されたシーケンスの電力は増加され得る。特定のアンカのみが有効なペイロード(マスターアンカ)を送信するパケット構造の場合、残りのアンカの1つ(スレーブ)は、ペイロードが暗号の後に送信される代替の暗号モードで動作可能である(したがって、全体的なパケット長が短縮される)。
4.事前選択。別の物理通信レイヤ(LFなど)、または以前のUWBパケット送信に基づいて、システムは、例えば、最も強い信号を有する2つの最良のアンカのアンカ事前選択を行うことができ、2アンカバリアントが可能であり、4アンカバリアントと比較してパケット長の増加を大幅に低減する。または、2つの最良の事前選択されたアンカがデータと共にIpatovプリアンブルを送信することができ、一方、残りのアンカは(ミュートされたIpatovプリアンブル、SFD、PHR/データと共に)暗号化プリアンブルのみを送信することができる(
図22参照)。
5.最短のIpatovプリアンブルへのロックオンを回避するための無音ギャップの追加。Ipatovアキュムレータの品質を改善するために(例えば、ローカリゼーションの目的のために)、Ipatovアキュムレータを最短のIpatov長よりも長く累積させることが最良である。最短のIpatovへのロック(および第1SFD後の累積の停止)を防ぐために、最短のアキュムレータの前には少なくとも8シンボル長無音が先行し得る。これにより、キーフォブは、先に到着したIpatovプリアンブルにロックオンする。より短いIpatovアンカからのチャネル推定の品質を改善するために、それらのIpatov TX電力は、データペイロードを犠牲にして(いずれにせよ復号されない)、増加され得る(
図21参照)。
6.混合暗号プロトコルの使用。特定のアンカ(暗号の前は1024nsのシンボルは存在しない)と、暗号の前に211024nsのシンボルを有するペイロードサイズ0(PHRのみ)を有する特定のアンカにおいて、暗号がSFDの直後に送信される暗号プロトコル1を使用する。受信機はモード1またはモード2のいずれかのために構成されるため、異なるモードで動作するアンカはスレーブアンカであるべきである(すなわち、受信機はそれらにロックオンしない)(
図22参照)。
7.暗号ギャップの使用。スレーブモードのアンカの場合(キーフォブがロックオンすることはない)、長いペイロードや長いIpatovではなく、暗号プリアンブルの前に設定可能な送信ギャップが使用可能である。これは送信電力が節約されることを可能にし、電力バジェットは他のシーケンスの電力を昇圧するために使用され得る。
8.早期RFのシャットダウン。RF受信機および/または送信機は、PHR/データを待たずに、暗号を受信/送信した直後にシャットダウンされ得る。これにより、少なくとも21-28μs(
図26)だけパケット長をさらに短縮することができる。
9.タイミングオフセットのない並列パケット。クリスタルがトリミングされ、全てのアンカが同じCFOを有し、同一のデータペイロードを有する(またはデータペイロードが全くない)場合、タイミングオフセットなしに完全に並列に送信することが可能である。その場合、追加のアンカは、マルチパスのように見える。特定のアンカメッセージは、アクティブシーケンスのTX電力の増加を可能にするために、任意選択で、ミュートされたIpatov/SFDプリアンブルを有し得る。
10.Ipatovプリアンブルの短縮。キーフォブに知られているCFOと、複数のアンカから来る強い信号とを用いて、Ipatovプリアンブルを短縮することが可能でなければならない。
そしていくつかのPRF16ベースの最適化アプローチは以下の通りである。
11.PRF16モードの使用。Ipatovシンボル長は992nsであり、アンカのペイロード間の長さの差を16オクテットからちょうど4オクテットに減少させることができる。これにより、パケット長の短縮、または有効プリアンブル長の(同じパケットサイズでの)拡張が可能になり、より良好なローカリゼーション性能が得られる。
12.PRF16 IpatovをPRF64暗号と共に使用する混合モードも可能である。それは、最良の暗号品質を提供しながら、ペイロードサイズを最適化する。PRF16 Ipatovは、PRF16中の全てのIpatov配列がほぼ同じ長さを有するため、PRF64 Ipatovよりも良好な感度を有する。例えば、88長PRF16は48長PRF64よりも性能が良く、両方とも同じパケットサイズになる。暗号化プリアンブルでは、シンボルカウントがPRFに関係なく同じであり、PRF64はより良好に動作する。
【0123】
非常に多数の正規の組み合わせがあり、これらは機能し、整列した暗号プリアンブルをもたらす。ユーザは、シナリオと要求に応じて、提示されたアイデアを選択的に適用し、パケット構造を最適化することができる。いくつかのシナリオを以下の実施例に示す。
【0124】
●ローカリゼーションを支持するPRF64バリアント
ローカリゼーションは、全てのIpatovシーケンスが既知のタイミングシフト(例えば、128ns)だけ離れてシフトされることを必要とする。このタイミングシフトは、データシンボルの数(各1024ns長)を増加させることにより、またはPHR(これも1024nsシンボルからなる)を有効化/無効化することにより実施され得る。
【0125】
以下の例は、前述の最適化アイデアを実施する。
【0126】
図12に示されるデフォルト構造に戻ると、その配置のパケット長は、以下の通りである。
384+96*1016+8*1016+21*1024+1024*22+65536=215616ns=216μs
【0127】
デフォルト構造の1つの弱点は、Ipatovプリアンブルが最も短いカムAにロックすると、40ー48シンボル後に累積プロセスを停止させることである。これは、Ipatovピークの品質を低下させる。
【0128】
提案された代替案では、カムA/Bの開始遅延のために、キーフォブはアンカCまたはDのいずれかにロックするが、AおよびBからのパスはIpatovアキュムレータに存在する。これで、累積は80シンボルまたは96シンボルをとり、IpatovアキュムレータのアンカC/Dの電力を最大化する。キーフォブはAまたはBにロックしないので、それらのペイロードは最小電力を使用して送信され得る。カムAおよびBは、それらのより短い長さを補償するために、より高いTX電力でそれらのIpatovプリアンブルを送信する代わりに、それらのTX電力バジェットを使用することができる。この代替案は、デフォルトのものと同じ長さ(216μs)を有するが、より正確な位置特定のためにはるかに良好なIpatovピーク品質を有するべきである。
【0129】
データペイロードが不要な場合は、パケット長を短縮することが可能である(全てのペイロードを22シンボル短縮する)。
【0130】
図21は、PRF64フレーム構造例(216μs)を示す。
【0131】
図22は、より短い代替案を提示しており、DecaCypherの開始から終了までのパケット長は、ちょうど424+13*1016+88*1016+8*1016+65536=176704ns=177μsである。これは、暗号の後にPHR/データを使用して第1アンカを設定し、PHRのみを使用して第2を設定することにより実現される。データなしのPHRのみ(21シンボル×1024ns)を使用すると、Ipatovパルスグリッドは21×8ns=168nsシフトし、これは十分以上である。
【0132】
Ipatovの前に>8シンボルの無音部分を配置すると、キーフォブがアンカにロックオンしなくなる。この方式の弱点は、より短いIpatovシーケンス(カムCまたはカムD)、一般的にはより短い累算長にロックすることである。
【0133】
●ローカリゼーションを伴わないがアンカ固有のデータ要件を伴うRF64バリアント
ローカリゼーションが必要とされない多くの場合、特にアンカ事前選択を用いて、4つのペイロードまたは4つのIpatovシーケンスを送信する必要がなく、低減された数の有効なIpatov/ペイロードメッセージが送信可能である。
図23に示される例では、カムCおよびカムDのみが有効なIpatovプリアンブルとペイロードとを送信する。キーフォブは、4つのアンカ全てから暗号化されたプリアンブルを依然として受信しながら、これらのうち1つにロックオンする。一部のアンカで有効なデータペイロードを送信しないと、全体的なマルチパケット長の削減が可能になる。ここでの例では、パケット長(暗号の終わりまで)は以下の通りである。
0+48*1016+8*1016+21*1024+30*1024+65536=174656=175μs
【0134】
カムAとカムBとは、ほとんどが暗号化プリアンブル(DecaCypher)を除いてミュートされるため、代替的にカムC/Dと同じ方法でプログラム可能であるが、ミュートされるIpatov/SFD/PHR/データを用いる。
【0135】
単一のアンカが(ペイロードを受信するために)十分であると見なされる場合、カムCは、カムA/Bと同様にセットアップされ得て、カムDのみが有効なペイロードとIpatovとを送信する。これにより、
図24に示されるように、パケットは、さらに短縮されます。
長さ:48*1016+8*1016+21*1024+14*1024+65536=158272ns=158μs
【0136】
●ローカリゼーションサポートを伴わず、全てのアンカ上で同一のデータを有するバリアント
全てのアンカ上の正確なクリスタルトリミングにより、タイミングシフト(64,128ns等)なしに全てのアンカからの同時の送信が可能となる。このような送信は、マルチパスプロファイルの追加パスとしてキーフォブにより認識されます。全てのパスが同じCMFウィンドウ(64ns幅)に終わるので、全ての送信は、同一のデータと、非常に密接に整合したCFOと、を有する必要がある。したがって、アンカ固有のデータ(たとえば、アンカID)を送信する必要がない場合、またはデータを全く送信する必要がない場合、
図25に示される方式が使用され得る。
【0137】
追加のアンカは、Ipatov/SFDプリアンブル中にミュートされるか、または送信することができる。この方式は、任意の数のアンカを用いて実施することができる。キーフォブにより受信される潜在的に良好なIpatov信号品質と、制御されたCFO(キーフォブにとって先験的に知られている)とにより、Ipatovシーケンスを短縮することが可能であり得る。
【0138】
●ローカリゼーションサポートとデータ要件とを伴わないバリアント
データが必要とされない場合、各アンカは、DecaCypherフィールドの後に送信されるPHR/データ(0サイズ)で、かつそのTX電力がミュートされた状態で構成されることができる。したがって、キーフォブ内の受信機は、暗号化の直後にそのRFを遮断することができる(同様に、送信機は、暗号化の後にそのRFを遮断することができる)。この技術は、前述の通りである。一例が
図26に示される。48シンボルのIpatovでは全シーケンス長は123μs(未使用のPHRを除く)であるが、より短いIpatovプリアンブルを使用することができる場合(前述のように)、全シーケンス長はさらに短縮され得る。
【0139】
●ローカリゼーションを支持するPRF16 Ipatovバリアント
PRF16では、Ipatov/SFDシンボル長は992nsであり、ペイロードシンボル長よりも32ns短い。これはペイロードサイズが4オクテットだけ異なり得るため、パケットのスケジューリングをより最適にする(4シンボル倍の32nsの差はIpatovの間のパケットパルス間の128nsのタイミングシフトを与える)。
【0140】
図27は、例示的なPRF16構造を示す。なお、全てのペイロードを同じオクテット数だけ減らすことができ(たとえば、4オクテット、12オクテット、20オクテット、28オクテット)、Ipatovプリアンブルを例えば48シンボル(カムA)、56シンボル(カムB)、64シンボル(カムC)、72シンボル(カムD)に減らすことができることに留意されたい。
【0141】
ペイロードの長さの差を4オクテットに低減するために、さらなる最適化を行うことができる。この方式では、4×992ns無音をカムBとカムDに加えると、2つのIpatov長さのみが使用可能となる。また、前の例と同様に、ペイロードを4オクテット、8オクテット、12オクテット、16オクテットに減らすことができ、Ipatovシーケンスを48シンボル(カムAとカムB)と56シンボル(カムCとカムD)に減らすことができる。一例は
図28に示され、ペイロード差がより小さく、Ipatovシーケンスがより長いPRF16構造が示される。
【0142】
●パケット長最適化2アンカバリアント(データあり/なし)
2-アンカバリアントは、前述の4-アンカバリアントに由来し得る。
小さいペイロードを用いた例(158μs)が
図29に示される。Ipatovプリアンブルとデータペイロードとは、一方または両方のアンカで送信できます。データが両方で送信される場合、それは同一でなければならない。
【0143】
ペイロードが必要とされない場合、暗号化プリアンブルの後にPHR/データを移動させることが可能である。これは
図30に示される。カムB Ipatov/SFDはミュートされるか、またはより低い電力で送信され得て、PHR/データは常にミュートされる。これは、DecaCypherシーケンスの後に送信機/受信機RFが(前のセクションで説明したように)遮断されると仮定し、超短123μsパケット(またはIpatovを短くすることができる場合はより短い)を提供する。
【0144】
これらのバリアントの利点は、以下を含む。
・可能な限り低い電力消費のための超短パケットサイズ。
・TX電力限界は1000μsごとに計算されるため、ベースラインTX電力 1000/123=8.13倍、すなわち9.1dB(123μs長と仮定)増加させることができる
・任意選択で、スレーブカムBは、暗号(64μs)のみを送信することができる。スレーブにより節約された約50%のTX電力は、全体のTX電力バジェットを増やすために送信され得る。
【0145】
スレーブカムBがIpatovプリアンブルを送信していない場合、カムAがロックオンされない可能性がある。しかしながら、このリスクは、以下の理由により低減される。
・ベストアンカの事前選択
・追加の使用可能なTX電力
・スレーブアンカからの干渉なし
【0146】
応答が失敗した場合、自動車は、交換されたアンカを用いてプロセスを再開することができる。
【0147】
●シナリオ例
例示的なシナリオは
図31に示され、車両3106からそれた方向を向いているキーフォブ3104を有するユーザ3102が示される。車両は、前述のように複数のアンカを含む。アンカ1は、(ユーザの介在する身体のために)弱い第1パスを有する。アンカ2は、弱い第1パスを有するが、リフレクタ3112による強いマルチパスを有する(例えば、パス障害による減衰は信号パスを横切る太い黒いバーとして示される)。
【0148】
このシナリオでは、以下のことが起こる。アンカ1とアンカ2との両方は、キーフォブのパケットを参照し、応答する。マルチパスが強いため、キーフォブ3104は、アンカ2にラッチし、アンカ2のSFDとデータとを見る。アンカ2への到着時間ToA
2は、データパケット内のフォブに戻って伝達される。DecaCypherはほぼ同時に到着するが、アンカ1の暗号は、(a)フォブの開始パケットをわずかに早く受信し、(b)アンカ1の暗号は移動する距離が短いため、わずかに早く到着する。これは、アンカ1から来るフォブのCIR推定に、アンカ1からのFPよりもわずかに早く存在する第1パスをもたらす。CIR推定値は、
図32に示されるように近似的に見える。
【0149】
フォブからのパケットのアンカ2への到着時刻ToA2は、フォブパケットの送信時刻ToSに、フォブからアンカ2への飛行時刻TpA2を加えたものになる。
ToA2=ToS+TpA2
同様に、以下のようになる。
ToA1=ToS+TpA1
【0150】
次いで、アンカは、既知の応答遅延時間(Tdel)を待った後に応答する。送信と応答とは、
図33に示される。
【0151】
アンカ2からの最初のパスTfp2のフォブへの到着時刻は以下の通りである。
Tfp2=ToA2+Tdel2+TpA2
【0152】
ここで、Tdel
2は、アンカ2で実行される時間遅延である。これは事前に合意された遅延だが、アンカ2のクロックでカウントされ、これは一般的には、理想的には正確なクロックではないが、0から20ppmまたは0から20×1
-6のオーダーの小さい分数、ε
2でオフセットされる。
(式3)
【0153】
送信機が厳密な応答時間に対して有限の制御しか持たないため、少量の時間δ2が加算される。
【0154】
同様に、アンカ1からの最初のパスのフォブへの到着時刻Tfp1は、以下の通りである。
Tfp1=ToA1+Tdel1+TpA1
【0155】
ToA1の置換をすると、以下のようになる。
Tfp1=ToS+TpA1+Tdel1+TpA1
【0156】
(式4)
上記の場合、時間遅延はアンカ1において実施される。
【0157】
フォブは、アンカ2からのパケットのCFOを測定し、次いで、ToSを減算して飛行時間を計算する。メッセージはアンカ2から来たため、Tdel2は以下の通りになる。
Tp2_est=(Tfp1-ToS-Tdel2)/2
【0158】
Tfp1の代替は以下の通りである。
=(ToS+ToFA1+Tdel1+TpA1-ToS-Tdel2)/2
【0159】
Tdel1とTdel2との代替は以下の通りである。
=(ToS+ToFA1+Tdel+ε1Tdel+δ1+TpA1-ToS-Tdel-ε2Tdel-δ2)/2
=(2TpA1+ε1Tdel+δ1-ε3Tdel-δ2)/2
Tp2_est=TpA1+Tdel(ε1-ε2)/2+(δ1-δ2)/2
【0160】
Decawave DWシリーズICでは、トランスミッタは8ns境界線でのみパケットを送信できる。これはδ1とδ2とが0nsから8nsの間で任意の値を取ることができるため、(δ1-δ2)/2は-4nsから4nsの範囲で変化し得ることを意味する。なお、この誤差が正であり、パスをさらに遠くに移動させる場合、最も遠くに移動することができるのは、Tfp2の位置であることに留意されたい。その結果、より近いアンカは、より遠いアンカより遠くに見えることはない。
【0161】
Tdelは、SFDマーカの受信とSFDマーカの送信との間の時間隔である。ターンアラウンド時間は、受信機が受信パケットを読み取り、新しい送信時間を送信パケットに挿入することを可能にする必要があり、したがって、135μsがこれに加えて許容され 、パケット自体の長さが165μsである場合、Tdelは約300μsになる。
【0162】
前述のグリッドシフト方法が実施される場合(クロック周波数の精密な制御により固定 8nsグリッドからの送信時間を調整する)、送信機は、所望の任意の時間に送信を始めることができ、すなわちδ1=0、δ2=0にする。この場合、最終方程式は以下のようになる。
Tp2_est=TpA1+Tdel(ε1-ε2)/2
【0163】
全てのカムがほぼ同一のクロックオフセットを使用する場合、ε
1=ε
2となる。
(式5)
【0164】
したがって、アンカ2からパケットを受け取ったとしても、所望のアンカ1への飛行時間がわかる。
【0165】
●CFOのパスの振幅への影響
2つのパケットのCFO差が大きいほど、パスの累積振幅は小さくなる。アキュムレータは、回転する第1パスの合計、すなわちキャリアオフセット周波数で回転する指数関数の合計を保持する。オフセットによっては、パスは、プリアンブルのコースに亘ってちょうど1サイクル回転する。この場合、全ての構成要素は、合計してゼロになる。この和を積分で近似すると、以下のようになる。
(式6)
【0166】
ここで、ωがキャリアオフセット周波数であれば、Tは暗号の長さであり、Φは最初の位相オフセットである。
図34に示されるように現れるチャネル5(6.5GHz)の64長の暗号について、パス振幅対CFOのプロットが示される。なお、強度は開始段階とは無関係であることに留意されたい。
【0167】
チャネル5におけるCFOに対する拡大されたパス振幅は、
図35に示される。
【0168】
約±1ppmまでは3dB以下の減衰があり、±6.3ppmを超えると20dB以上の減衰がある。
【0169】
チャネル2(4GHz)では、
図36(チャネル2のパス振幅対CFO)に示されるように、応答が広くなります。チャネル9(8GHz)では、
図37(チャネル9のパス振幅対CFO)に示されるように、応答が狭くなる。
【0170】
DW1100は、約0.5ppmの精度でクロックを調整する能力を有する。チャネル5において同時応答を使用するとき、全ての第1パスが見えるようにするためには、全てのアンカのクロックがキーフォブの周波数よりも約2ppm低くなるように調整されることが好ましい。これは、パスが約1dBを超えて減衰されないことを保証する。
【0171】
●さらなる実施形態
前述の実施形態の多くでは、暗号フィールドは同じであり、時間的に整列されていた。
【0172】
しかしながら、他の実施形態では、各応答トランシーバ(「カム」)がそれ自体の(異なる)暗号プリアンブルを異なる遅延で送信する。一例は、
図38に示される。ここで、各トランシーバにより送信されるフレームは、それぞれ異なる暗号フィールド1-4(先の実施形態で示された「DecaCypher」フィールドに対応する)を含む。
【0173】
これにより、受信機は、複数の距離測定値(応答するトランシーバごとに1つなど)を取得可能となる。これを可能にするために、各ペイロードの後のギャップのサイズは、前述のように単純にN*128nsではなく、N*128ns+m*(暗号長+暗号を分離する余分なギャップ)である。暗号を分離する余分なギャップは(
図38の例に示されるように)0でもよく、より大きな分離を提供するために0より大きくてもよい(代替の例では、暗号は互い違いにされ、部分的に重複される)。
【0174】
さらなるバリアントでは、複数の暗号プリアンブルは、各トランシーバのフレームに含まれ得る。特定の例では、
図39に示されるように、各フレームに2つの暗号(1および2)がある。暗号1は(例えば、前述の技術を使用して)最も近いデバイスへの安全な距離測定のために使用され、全ての暗号1セグメントは時間整列される。暗号2は、互い違いにされ、相関/累積後に複数のピークを生成することが意図される。これらのピークは、応答トランシーバの個々の距離を明らかにする。これらの複数の距離測定値に基づいて、車両に対するキーフォブの位置(またはその逆も可能)(例えば、距離および方向)を見出すために、マルチラテレーションおよび/または三角測量が使用可能である。第2暗号の分野のずれ込みは、暗号1と暗号2との間の可変的な送信ギャップにより達成される(この例では0から3の範囲のnに対して、1024ns+n×128ns)。
【0175】
暗号2から導出された距離は、暗号2がトランシーバ「カムA」からの最初の送信後に攻撃者に知られ得るので、安全ではない場合がある。暗号1は、任意選択でスキップされてもよく、その場合、トランシーバ「カムA」の距離測定値のみが安全であり、残り(B,C,D)は潜在的に攻撃される可能性がある。
【0176】
図40と
図41とは、フレームごとに2つの暗号プリアンブルを使用するが、ペイロードの位置が異なる、
図39の実施形態の代替的な変形を示す。
図39ではペイロードは両方の暗号フィールドに先行するが、
図40ではペイロードは暗号フィールドの間に置かれ、
図41ではペイロードはフレームの終わりに、第2暗号フィールドの後に付加される。
【0177】
本発明は、上記の記載を単に例示としてのみ示し、詳細の修正は、本発明の範囲内でなされ得ることが理解されたい。
【0178】
場合によっては異なる実施形態として説明されるが、本開示全体にわたって説明される変形例のいずれかまたは全て(例えば、説明された種々のフレームの編成、暗号フィールドなど)は単一のデバイスまたはシステム内の異なる動作モードとして提供され得る。
【0179】
前述の本発明の様々な実施形態は、下記の特徴および利点のいくつかまたは全てを提供することができる。
【0180】
実施形態は、直列的ではなく並列的に複数のパケットの送信を提供してもよい。これにより、受信機がアクティブのままでいる必要がある時間が短縮される(省電力)。
【0181】
様々な異なる方法および組み合わせが可能である。例えば、複数の送信の開始時間(第1Ipatovプリアンブルシンボル)は、可変遅延(前述の例では典型的には0から2000nsの間であるが、他の遅延を使用することができる)によりオフセット可能である。記載された方法の多くまたは全てに共通することは、暗号プリアンブルの開始が全ての送信にわたって整列されることである。
【0182】
実施形態は、単一の同時パケットに基づいてローカリゼーションを計算することを可能にし得る(「単一の同時パケット」という用語が並列に送信される応答フレームの複数のバージョンを指す)。可変オフセットにより、Ipatovアキュムレータには複数の分離したピークがある。これは、各ロック/アンカからキーフォブまでの距離の計算を可能にする。複数のIpatovベースの距離は安全ではない可能性があるが、最短のIpatov距離は、一般的に、DecaCypherベースの距離に一致すべきである。これにより、3回少ない、1回の安全な距離測定を行うことができる。したがって、このような三角測量に基づく位置特定は、依然として適度に安全である。安全な距離測定値(DecaCypherに基づく)がIpatovに基づく測定値の最短値と一致する場合、パケットは、したがって、信頼性がある/真正であるとみなされ、それ以外の場合、パケットは廃棄され、および/または距離測定のために利用され得ない。
【0183】
実施形態は、キーフォブ(最終メッセージの受信機)がそのアキュムレータ内の全てのピークを見ることができるように、応答アンカデバイス上でクロッククリスタルのトリミングを実施し得る。アンカ間のCFOが1-2ppmを超えて異なる場合、キーフォブは、それがロックオンしたアンカのピークのみを見る。他のアンカからの余分なピークは全くない(または、強く減衰される)。全てのCFOを互いに近づけるために、全てのアンカはキーフォブからの初期メッセージを聴取し、受信中に計算されたCFOをチェックし、次いで、全てが正確に同じ周波数(例えば、キーフォブのクロックから2ppm)で応答するようにそれらのクリスタルをトリミングする。キーフォブは、目標とするCFO(この例では-2ppm)を知っているため、(キャリア積分器を-2ppmに事前に初期化することにより)そのキャリア回復アルゴリズムをより速く収束させることができる。これは、Ipatovプリアンブルの短縮を可能にする。
【0184】
実施形態は、200μsのような特定の期間(したがって、時間測定を高速化するか、または低速化する)クロッククリスタルをトリミング解除することにより、その時間オフセットを必要な遅延に調整するまで、送信デバイスにおいて、送信グリッドに対する補償を実施してもよい。これにより、送信機は8nsの送信グリッドに限定されるのではなく、いつでも効果的に送信することが可能となる。
【0185】
主に特定の条件でパケット長を短縮することを意図したメインの方式の変形例が提供され得る。例えば、将来のチップでは、メッセージ内の任意の遅延を設定し得る。その場合、Ipatov/データシンボルの数を変える必要はない。ローカリゼーションが必要とされず、全てのデータペイロードが同一であり得る場合、0nsオフセットを有する方法を実行することが可能である。このようなパケットは、デフォルトよりもはるかに短くなる。これは、また、全てのアンカがパケットを送信することができるという利点を提供することができ、その結果、好ましい事前に選択された送信機からのリターンチャネルにおける障害により、パケットが受信されないという危険性がない。
【0186】
データペイロードが必要でない場合、データペイロードはミュートされ、最後に送信され得て(またはまったく送信されない)、電力が節約される。より一般的には、いくつかのバリアントでは、例えば、Ipatov、SFD、および/またはデータペイロードなどのフレームの特定の部分は、いくつかのアンカ上でミュートされ、選択されたアンカのみがフレームのこれらの部分を送信する。しかしながら、全てのアンカは、暗号プリアンブル(DecaCypher)を送信する。これは、総送信電力バジェットが最適化されることを可能にする。Ipatovプリアンブルを送信するアンカは、様々な方法、例えば、キーフォブからの以前のメッセージに基づいて、または他の送信方法(Bluetooth(登録商標)など)に基づいて、事前に選択され得る。一般的に、最も強いと考えられるアンカのみが、同期Ipatovプリアンブルシーケンスを送信するために選択され得る。
【0187】
記載されたプロセスまたはその一部は、適切なデータ処理デバイス(例えば、
図3Aに示されるようなコントローラ)による実行のために、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体に格納された1つまたは複数のコンピュータプログラムを使用して実装され得る。いくつかの実施形態では、方法は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを使用して実行されてもよいが、ハードウェアのみの実施形態も可能である。