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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】口腔ケア装置の位置の決定
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/04 20060101AFI20231115BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20231115BHJP
   A46B 11/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A46B9/04
A46B15/00 K
A46B11/00 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020537517
(86)(22)【出願日】2019-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2019050052
(87)【国際公開番号】W WO2019137841
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】62/615,474
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ディーン スティーヴン チャールス
(72)【発明者】
【氏名】マスクロ フェリペ マイア
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ ヴィンセント
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214854(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145033(WO,A1)
【文献】特開2017-006248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0127371(US,A1)
【文献】国際公開第2016/104442(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/156098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00~17/08
A46D 1/00~99/00
A61C 15/00~17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア装置であって、
口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を持つヘッド部と、
前記口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくともつのセンサと、
プロセッサと、
を有し、前記プロセッサは、
前記ヘッド部の動きにおける一時停止を検出することにより、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定し、
前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定する
よう構成された、口腔ケア装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、加速度計、向きセンサ、及び近接センサのうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の口腔ケア装置。
【請求項3】
前記少なくともつのセンサは、加速度計を有し、前記プロセッサは、
前記加速度計からの加速度データを時間について積分して速度データを取得し、
前記速度データの最小値を検出することにより、前記突出部がいつ隣接歯間領域と係合するかを決定する
よう構成された、請求項1又は2に記載の口腔ケア装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記速度データを時間について積分することによって、隣接歯間領域間の距離を算出し、隣接歯間領域間において前記突出部が移動した距離を取得する
よう構成された、請求項3に記載の口腔ケア装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサは、ユーザの頭部に対する前記口腔ケア装置の向きを決定するための向きセンサを有し、前記プロセッサは、
前記決定された向きに基づいて、前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定する
よう構成された、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記動きデータから、口腔内の歯列弓の周りの全体的な経路を決定する
よう構成され、前記プロセッサは、前記全体的な経路に略垂直な方向における前記ヘッド部の動きを検出することによって、前記突出部がいつ隣接歯間領域に係合するかを決定するように構成された、請求項1に記載の口腔ケア装置。
【請求項7】
ユーザ入力機構
を更に有し、前記プロセッサは、前記ユーザ入力機構を介したユーザ入力の受け付けに基づいて、前記ヘッド部の前記突出部が隣接歯間領域に係合したことを決定するように構成された、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項8】
口腔内健康障害を検出するための検出器
を更に有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項9】
前記口腔ケア装置が歯ブラシを有し、前記歯ブラシのヘッド部が複数の毛を有し、
前記突出部が、複数の毛のなかの毛の延長された房を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項10】
前記口腔ケア装置が、前記ヘッド部のノズルからの流体の流れを隣接歯間領域に向けて導くように構成された口腔洗浄装置を有し、
前記突出部が前記ノズルを有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の口腔ケア装置。
【請求項11】
口腔内の口腔ケア装置の位置を決定する方法であって、前記口腔ケア装置は、口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を含むヘッド部と、前記口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサと、を有する、方法であって、前記方法は、
前記ヘッド部の動きにおける一時停止を検出することにより、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定するステップと、
前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項12】
隣接歯間領域間の距離を算出するステップと、
前記算出された隣接歯間領域間の距離を、同じ隣接歯間領域間の以前に算出された距離と比較するステップと、
前記比較された距離が閾値よりも大きく異なると決定された場合に、警告信号を生成するステップと、
を更に有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘッド部の突出部が隣接歯間領域と係合したことを決定する前に、前記動きデータに統計モデルを適用するステップ
を更に有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
口腔ケアシステムであって、前記口腔ケアシステムは、
口腔ケア装置であって、
口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を持つヘッド部と、
前記口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくともつのセンサと、
を含む口腔ケア装置を有し、前記口腔ケアシステムは更に、
前記ヘッド部の動きにおける一時停止を検出することにより、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定し、
前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定する
よう構成された処理回路を有する、口腔ケアシステム。
【請求項15】
前記口腔ケア装置に対するユーザの頭部の相対的な動きを測定するための動き検出器
を更に有し、前記処理回路は、前記測定された動きに少なくとも部分的に基づいて、隣接する隣接歯間領域間の距離を算出するよう構成された、請求項14に記載の口腔ケアシステム。
【請求項16】
プロセッサであって、
口腔ケア装置のヘッド部の動きにおける一時停止を検出することにより、前記ヘッド部の突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定し、及び
前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定する、よう構成され、前記少なくとも1つのセンサが、前記口腔ケア装置に含まれる、プロセッサ。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記口腔ケア装置とは別の計算装置に含まれる、請求項16に記載のプロセッサ。
【請求項18】
前記プロセッサが、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ウェアラブル装置、又はスマートミラーに含まれる、請求項16に記載のプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケア装置に関し、より詳細には、ユーザの口腔内における口腔ケア装置の位置の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ヘルスケア装置の分野では、使用中に口腔ケア装置の位置を決定できることが有用である場合がある。例えば、ブラシング中に1本以上の歯をブラシングし損ねたかどうかを知ることが有用であり、その場合、どの歯をブラシングし損ねたかを知ることが有用である。同様に、歯肉炎などの口腔健康問題を検出するために装置を使用する場合、歯肉炎の識別された徴候の位置を決定できるように、装置が口腔内のどこに位置しているかを知ることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
個々人の口の異なる幾何(例えば、歯の数及び配列が異なる)のため、既存の方法を使用して装置の位置を正確に決定することは困難であり得る。
【0004】
口腔内の装置の位置を決定するための1つの既存の方法は、高解像度カメラと組み合わせた多数のセンサを使用して、使用中の装置及びユーザの位置を追跡する。例えば、斯かるカメラは、スマートミラー(即ち、接続性及び他の機能を有するミラー)内に実装されても良く、又は該カメラは、口腔ケア装置から離れているが、口腔ケア装置に関連付けられていても良い。しかしながら、斯かるシステムは、浴室(又は他のプライベートな)環境でカメラを使用することによってもたらされるプライバシーの潜在的な欠如のために、望ましいとは考えられないものとなり得る。更に、斯かるシステムは、ユーザが口腔ケア活動中に比較的静止していること(例えば、カメラの視野内に留まること)を必要とする場合があり、それにより、ユーザが活動中に移動する自由が制限される。
【0005】
口腔内で装置を位置決めする既存の方法は、ユーザの口の16個のサブセグメントのうちの1つの範囲内に装置を位置決めするために使用することができる。この精度を改善することが望ましいが、斯かる改善は、ユーザの動きなど、複数の要因が考慮されなければならないために、これまでのところ困難であることが証明されている。従って、ユーザに大きな制約を課すことなく、口腔内における装置の位置を正確に決定することができる機構を提供することが望しいこととなり得る。
【0006】
ユーザの口腔内における口腔ケア装置の位置を正確に決定することを可能にするという要求がある。例えば、個々の歯、又は隣接歯間領域(即ち、隣接する2本の歯の間の領域)の精度で装置の位置を決定できることは有用であり得る。この目的のために、装置が口腔内の隣接歯間領域と係合するようにされたときに、位置情報が決定され得ることが発見されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、口腔ケア装置は、口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を持つヘッド部と、前記口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサと、プロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定し、前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定するよう構成される。
【0008】
幾つかの既存の口腔ケア装置は、動きデータを取得するのに適した1つ以上のセンサを含んでも良い。ここで開示された実施例によれば、該装置がいつ隣接歯間領域に係合するかの知識が、該装置の位置を正確に決定するために、動きデータと共に使用されても良い。
【0009】
前記少なくとも1つのセンサは、加速度計、向きセンサ、及び近接センサのうちの少なくとも1つを有しても良い。
【0010】
幾つかの実施例においては、該少なくとも1つのセンサは、加速度センサを有しても良い。前記プロセッサは、加速度計からの加速度データを時間について積分して速度データを取得し、速度データの最小値を検出することにより、突出部がいつ隣接歯間領域に係合するかを決定するように構成されても良い。
【0011】
幾つかの実施例においては、前記プロセッサは、速度データを時間について積分して隣接歯間領域間の距離を算出し、隣接歯間領域間を突出部が移動した距離を得るように構成されても良い。
【0012】
幾つかの実施例においては、該少なくとも1つのセンサは、ユーザの頭部に対する口腔ケア装置の向きを決定するための向きセンサを有しても良い。該プロセッサは、決定された向きに基づいて口腔ケア装置のヘッド部の位置を決定するように構成されても良い。
【0013】
幾つかの実施例においては、該プロセッサは、動きデータから、口腔内の歯列弓の周りの全体的な経路を決定するように構成されても良い。該プロセッサは、該全体的な経路に略垂直な方向のヘッド部の動きを検出することによって、突出部がいつ隣接歯間領域に係合するかを決定するように構成されても良い。
【0014】
該口腔ケア装置は、ユーザ入力機構を更に有しても良い。プロセッサは、ユーザ入力機構を介したユーザ入力の受け付けに基づいて、ヘッド部の突出部が隣接歯間領域に係合したことを決定するように構成されても良い。
【0015】
幾つかの実施例においては、該口腔ケア装置は、口腔健康障害を検出するための検出器を更に有しても良い。
【0016】
幾つかの実施例においては、該口腔ケア装置は、歯ブラシを有しても良く、歯ブラシのヘッド部は、複数の毛を有しても良い。前記突出部は、複数の毛のなかの毛の延長された房を有しても良い。
【0017】
他の実施例においては、口腔ケア装置は、ヘッド部のノズルからの流体の流れを隣接歯間領域に向けて導くように構成された口腔洗浄装置を有しても良い。斯かる実施例においては、該突出部は、ノズルを有しても良い。
【0018】
第2の態様によれば、口腔内の口腔ケア装置の位置を決定する方法が提供される。前記口腔ケア装置は、口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を含むヘッド部と、前記口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサと、を有する。前記方法は、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定するステップと、前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定するステップと、を有する。
【0019】
幾つかの実施例においては、該方法は、隣接歯間領域間の距離を算出するステップと、算出された隣接歯間領域間の距離を、以前に算出された同じ隣接歯間領域間の距離と比較するステップと、比較された距離が閾値より大きく異なると決定された場合に警告信号を生成するステップと、を更に有しても良い。
【0020】
該方法は、ヘッド部の突出部が隣接歯間領域に係合したと決定する前に、動きデータに統計モデルを適用するステップを更に有しても良い。
【0021】
第3の態様によれば、口腔ケアシステムが提供される。該口腔ケアシステムは、口腔ケア装置と処理回路とを有する。口腔ケア装置は、口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部を含むヘッド部と、口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサと、を含む。該処理回路は、前記ヘッド部の前記突出部が口腔内の隣接歯間領域にいつ係合するかを決定し、前記突出部が前記隣接歯間領域間を移動する際に前記少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、前記口腔内における前記口腔ケア装置の前記ヘッド部の位置を決定するよう構成される。
【0022】
該口腔ケアシステムは、幾つかの実施例においては、前記口腔ケア装置に対するユーザの頭部の相対的な動きを測定するための動き検出器を更に有する。前記処理回路は、前記測定された動きに少なくとも部分的に基づいて、隣接する隣接歯間領域間の距離を算出するよう構成されても良い。
【0023】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
【0024】
本発明をより良く理解するために、また本発明がどのように効果的に実施され得るかをより明確に示すために、単に例として、添付の図面への参照が為される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】口腔ケア装置の一例の簡略化された概略図である。
図2】腔ケア装置の一部及びユーザの歯列弓の表現である。
図3】時間経過に伴う口腔ケア装置の速度又は動きを示すグラフである。
図4】口腔ケア装置の更なる一例の簡略化された概略図である。
図5】口腔ケア装置のヘッド部の一例の説明図である。
図6】口腔ケア装置のヘッド部の更なる例の説明図である。
図7】口腔ケア装置の位置を決定する方法の一例を示すフロー図である。
図8】口腔ケア装置の位置を決定する方法の更なる例を示すフロー図である。
図9】口腔ケア装置の位置を決定するためのシステムの一例の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで開示される実施例は、ユーザの口腔内における口腔ケア装置の位置を決定することに関する。具体的には、実施例は、装置がいつ隣接歯間領域に位置しているか、通過するか、又は係合するかを決定する。ここで使用される用語「隣接歯間領域」は、隣接する2本の歯の間の空間、又は体積を含むと考えられる。装置の少なくとも一部が隣接歯間領域へと移動されるか、又は隣接歯間領域内の表面(例えば、歯の表面又は歯肉の表面)と接触するとき、該装置は隣接歯間領域と係合するとみなされる。
【0027】
口腔内の隣接歯間領域の相対位置が決定されても良く、どの隣接歯間領域が装置によって係合されたか、又は係合されているかを正確に決定することが可能となり得る。
【0028】
図面を参照すると、図1は、口腔ケア装置100の簡略化された概略図である。口腔ケア装置100は、口腔ケア活動で使用するためのいずれのタイプの装置を有しても良い。例えば、口腔ケア装置100は、電動歯ブラシ、口腔洗浄ツール、フロッシングツール、又は歯肉炎、歯垢、若しくは結石などの口腔健康問題を検出するためのセンサを有しても良い。このリストは、網羅的であるとは考えられず、他の例では、装置100は、別のタイプの装置を有してもよいことが理解されるであろう。
【0029】
口腔ケア装置100は、ヘッド部102を有する。ヘッド部は、口腔内の隣接歯間領域と係合するための突出部104を有する。幾つかの例では、装置100は、ハンドル部106を含んでも良い。ハンドル部106は、口腔ケア装置100の1つ以上の構成要素を収容するための筐体を含んでも良いし、斯かる筐体を形成しても良い。例えば、斯かる筐体は、ヘッド部102の少なくとも一部の運動(例えば、振動又は回転)を引き起こすための駆動系などの駆動機構を収容しても良い。幾つかの例では、筐体は、バッテリなどの電源を含んでも良い。幾つかの例では、筐体は、本明細書に開示された装置100の1つ以上の構成要素を含んでも良い。
【0030】
口腔ケア装置100は、口腔ケア装置の動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサ108を有する。少なくとも1つのセンサ108は、装置100内(例えば、筐体内)に配置されても良いし、装置100上に配置されても良い。幾つかの例では、少なくとも1つのセンサ108は、装置100のハンドル部106内又はハンドル部106上に配置されても良く、他の例では、少なくとも1つのセンサは、装置のヘッド部102内又はヘッド部102上に配置されても良い。複数のセンサ108が含まれる例では、1つ以上のセンサが装置100のハンドル部106内又はハンドル部106上に配置されても良く、1つ以上のセンサが装置のヘッド部102内又はヘッド部102上に配置されても良い。
【0031】
装置100に含まれてもよいセンサ108の種類の例は、以下で議論される。しかし、一般的に、少なくとも1つのセンサ108は、口腔ケア装置100についての動きデータ(即ち、該装置の動きを表すデータ)を取得することができるいずれのタイプのセンサを有しても良い。様々な例では、少なくとも1つのセンサは、加速度計、ジャイロスコープ、近接センサ、磁力計、光学センサ、及び慣性測定ユニット(IMU)のうちの1つ以上(任意の組み合わせで)を有しても良い。
【0032】
上述したように、装置101の少なくとも1つのセンサ108は、様々なタイプの1つ以上のセンサを有しても良い。幾つかの実施例においては、少なくとも1つのセンサ108は、加速度センサ、向きセンサ、及び近接センサのうちの少なくとも1つを有しでも良い。幾つかの実施例においては、2つ以上のセンサが含まれても良く、センサは、本明細書に記載されたもの又は他のタイプのセンサから選択される。
【0033】
幾つかの実施例においては、少なくとも1つのセンサ108は、加速度センサを有しても良い。プロセッサ110は、加速度計からの加速度データを時間について積分して速度データを得るように構成されても良い。プロセッサ110は更に、速度データの最小値を検出することによって、突出部が隣接歯間領域に係合するときを決定するように構成されても良い。斯くして、加速度計は、加速度を3次元的に記述したデータを出力しても良い。加速度センサは、装置100のハンドル部106又はヘッド部102内に配置されても良い。装置100の幾何は既知であるので、装置100のヘッド部102の加速度は、装置内のどこに加速度計が配置されているかに関係なく決定され得る。幾つかの実施例においては、加速度計などのセンサ108は、装置100のハンドル部106及びヘッド部102に配置されても良い。
【0034】
口腔ケア装置100はまた、プロセッサ110を有する。プロセッサ110は、幾つかの実施例においては、装置100内又は装置100上に配置されても良く、又は該装置に接続されても良く、例えば有線接続又は無線接続によって接続されても良い。プロセッサ110は、装置100のハンドル部106内又はハンドル部106上に、又は装置のヘッド部102内又はヘッド部102上に配置されても良い。プロセッサ110は、少なくとも1つのセンサからデータを受信して処理するため、少なくとも1つのセンサ108と動作可能に通信していても良い。幾つかの例では、プロセッサ110は、装置100の1つ以上の他の構成要素と動作可能に通信しても良い。例えば、プロセッサ110は、装置100の電源及び/又は駆動機構を操作しても良い。
【0035】
プロセッサ110は更に、ヘッド部102の突出部104がいつ口腔内の隣接歯間領域206と係合するかを決定するように構成される。後述するように、隣接歯間領域との係合を決定することは、多くの方法で達成され得る。しかし、一般的に、突出部が隣接歯間領域に係合するときを知ることは、装置100(又は少なくとも該装置のヘッド部102)の位置に関する情報をより容易に決定することができることを意味する。
【0036】
プロセッサ110はまた、突出部104が隣接歯間領域の間を移動する際に少なくとも1つのセンサ108によって取得された動きデータに基づいて、口腔内における口腔ケア装置のヘッド部102の位置を決定するように構成されている。幾つかの例では、位置の決定は、装置100が口腔内の周囲、特に隣接歯間領域の間で移動するにつれて、リアルタイムで行われても良い。他の例では、位置の決定は、口腔ケア活動が完了した後に行われても良い。例えば、動きデータはメモリに記憶されても良く、プロセッサ110は、口腔ケア活動の間に突出部がいつ隣接歯間領域に係合したかを決定するように構成されても良く、また、記憶されたデータに基づいて、口腔内における装置100のヘッド部の位置を決定するように構成されても良い。
【0037】
隣接歯間領域間の装置100の動きを利用することで、カメラを使用することなく正確に位置を決定することができる。更に、ユーザの口腔内における装置100の位置を正確に決定することができるということは、ユーザの口腔内の健康状態が改善され得ることを意味する。例えば、装置100が口腔内の健康問題を検出するために使用される場合、検出された問題の正確な位置を決定することができる。同様に、装置100が口腔内の清掃又は治療のために使用される場合、口腔内の特定の領域が適切に治療されたかどうかを判断することが可能である。その結果、ユーザの口腔内の健康状態が大幅に改善され得る。
【0038】
図2は、装置100のような口腔ケア装置のヘッド部102と、ユーザの歯列弓200とを示す図である。歯列弓200は、歯202及び歯肉204を含む。隣接する歯202の間に隣接歯間領域206が示されている。使用時には、装置100のヘッド部102の突出部104は、歯202に向かって延在する。上述したように、装置100は、多くの異なる形態を取り得る。しかしながら、一般的に、突出部104は、使用時には、口腔内の間隣接歯間領域206と係合するように構成される。幾つかの例では、装置100は、一般的に歯の輪郭に沿った線208によって示される経路で歯列弓の周りを移動しても良い。従って、突出部104は、歯202の間を移動する際に、少なくとも部分的に隣接歯間領域206に入っても良い。他の例では、突出部104は、隣接歯間領域206に入らず、突出部がいつ隣接歯間領域に位置している(例えば、係合している)かをプロセッサ110が判断できるようにするための別の機構を有していても良い。
【0039】
ヘッド部102が歯202の表面の周りで、ある隣接歯間領域206から別の隣接歯間領域206に移動すると、加速度センサ108によって測定される加速度が変化する。測定された加速度を時間で積分することにより、加速度センサ108の速度が経時的にどのように変化するかを示すデータを得ることが可能である。このような積分では、重力加速度成分について補償を行っても良い。図3は、口腔ケア装置100の加速度センサ108の移動速度の経時変化を示すグラフ300である 明確性のため、グラフ300で表された速度は1次元に低減されているが、3次元での速度を考慮しても同様の速度の表現が得られることは明らかであろう。グラフ300の各最小値302a、302b、302c、302dは、突出部104が隣接歯間領域206に係合していることを表している。グラフ300によれば、突出部104が隣接歯間領域206から外に移動するにつれて、ヘッド部102の移動速度は、最大値に達する前に急速に増加し、その後、突出部が次の隣接歯間領域に移動するにつれて減少する。
【0040】
幾つかの実施例においては、装置100のヘッド部102は、突出部104が各隣接歯間領域206内に位置している(即ち、係合している)間、ほぼ静止していてもよい。例えば、装置100は、歯202の間の隣接歯間領域206に空気及び/又は水のジェットを投射する口腔洗浄装置を有しても良い。斯かる装置は、適切な位置にあるとき(即ち、突出部104が隣接歯間領域に係合しているとき)、比較的静止した状態で保持されても良い。従って、加速度計によって出力される加速度データから算出される速度は、装置がユーザの頭部に対して相対的に静止した状態で保持されている間、ゼロに落ちると予想され得る。しかしながら、ゼロではない速度は、例えば、ユーザが装置を使用している間に移動している場合(例えば、装置とユーザの頭部が一緒に移動しているが、互いに相対的には移動していない場合)、又はセンサドリフトの結果として算出され得る。グラフ300の最小値302a乃至302dは、時間の経過とともに増加し、非ゼロ値を有するが、各最小値は、突出部104が隣接歯間領域206に係合することに起因する運動の一時的な一時停止として認識され得る。
【0041】
幾つかの実施例においては、プロセッサ110は、突出部104が隣接歯間領域206の間を移動させられた距離を得るために、時間で速度データを積分することによって、隣接歯間領域206の間の距離を算出するように構成されていても良い。例えば、図3のグラフ300に示されたデータを用いて、速度曲線と隣接する最小値302b、302cの間に引かれた基準線304との間の面積を積分して、最小値302b、302cに対応する隣接する隣接歯間領域の間で移動した距離を得るように構成されても良い。図3では、この領域がハッチングされている。
【0042】
また、加速度/速度データに加えて、歯202の形状や歯列弓200の形状に関する3次元データが取得されても良い。臼歯の外表面は一般的に平坦であるのに対し、犬歯の表面は一般的に湾曲しているので、データの分析は、装置がどの歯を通過しているかについての更なる洞察を提供しても良い。このことは位置決定を改善し得る。
【0043】
装置100のヘッド部102が口腔内(例えば、図2の線208によって示されるような歯列弓200の周り)で移動する際に突出部104が移動した距離を記述するデータは、幾つかの方法で使用され得る。一例では、隣接する隣接歯間領域206間の距離が算出されても良く、距離のパターンに基づいて、各距離がどの歯202に対応するかについての決定がなされても良い。例えば、人間の上部歯列弓は、典型的には、前部に切歯があり、次に、後部に向かって、犬歯、小臼歯、及び大臼歯を有する16本の歯を含み得る。各タイプの歯は、その隣接する歯又は歯に対して典型的なサイズを有していても良く、従って、隣接する隣接歯間領域206の間の2又は3の距離が算出されると、突出部104がどの歯に移動したかを決定することが可能となり得る。ユーザには、1本又は複数の歯が欠けている人もおり、従って、装置のヘッド部102の位置を決定するには、ヘッド部がより多くの歯の上を移動する際に、加速度計データのような追加のデータを必要とする場合がある。しかしながら、十分な隣接歯間領域からのデータがあれば、口腔内の隆起部104の位置を決定することが可能であり得る。別の例では、隣接する一対の隣接歯間領域206の間の算出された距離が記録され、後日、ある時点で測定された距離と比較されても良い。測定された距離が時間とともに変化しない場合、ユーザが習慣的な口腔治療ルーチンを遵守したと結論づけられても良い。しかしながら、2つの隣接歯間領域206の間の距離が時間とともに変化している場合には、ユーザが特定の隣接歯間領域の処置をし損ねたと決定されても良く、その領域における口腔健康問題の発生につながる可能性がある。幾つかの例では、少なくとも1つのセンサ108によって取得されたデータは、幾つかの後の時点で比較に使用するために、記憶媒体(例えば、メモリ)に格納されても良い。幾つかの実施例においては、比較された距離が定義された期間にわたって定義された量以上に変化する場合、警告信号がプロセッサ110によって生成されても良い。斯かる警告信号は、ユーザに提示される警告及び/又は歯科専門家に送信される警告メッセージを含んでも良い。斯かる警告は、ユーザが、歯肉炎などの口腔健康問題の早期発症を特定するのに役立ち得る。
【0044】
上記の幾つかの実施例においては、少なくとも1つのセンサ108は加速度計を含む。しかしながら、他の実施例においては、加速度計に加えて、又は加速度計の代わりに、1つ以上の他のセンサが含まれても良い。幾つかの実施例においては、少なくとも1つのセンサ108は、ユーザの頭部に対する口腔ケア装置の向きを決定するための向きセンサを含んでも良い。例えば、幾つかの実施例においては、向きセンサは、ジャイロスコープを有しても良い。プロセッサ110は、決定された向きに基づいて口腔ケア装置100のヘッド部102の位置を決定するように構成されても良い。例えば、ユーザの口の隣接歯間領域206に空気及び/又は水のジェットを投射する洗浄装置のような口腔ケア装置を使用する場合、ユーザは、典型的には、歯(及び/又は隣接歯間領域)を口の前に向かって治療している間、略直立した(例えば、垂直な)方向に装置を保持し得るが、典型的には、歯(及び/又は隣接歯間領域)を口の奥に向かって治療している間、略水平な方向に装置を保持し得る。装置内の向きセンサは、装置が保持されている水平又は垂直に対するおおよその角度を決定しても良く、そのデータから、装置の突出部104のおおよその位置が決定されても良い。幾つかの実施例においては、向きセンサからのデータは、ヘッド部102の位置の決定をより正確に行うことを可能にするために、1つ以上の他のセンサ(例えば、加速度計)からのデータと組み合わせられても良い。
【0045】
再び図2を参照すると、線208は、装置100のヘッド部102の突出部104が隣接歯間領域206の間を移動する際に、装置100のヘッド部102の突出部104によって辿られる経路を表している。歯列弓の正確な形状及びサイズ、及び歯202の数は人によって異なり得るが、各歯列弓は一般的に同じ形状及びサイズを有し得る。従って、突出部104が歯列弓200の周りでユーザの歯202の上を移動されると、突出部104は、一般的なアーチ状の経路208を辿り得る。突出部104が各隣接歯間領域206と係合するとき、突出部104は、一般的なアーチ形状の経路からわずかに変位し得る。例えば、突出部104は、図2の線208によって示されるように、アーチ状経路に対して略垂直な方向に一時的に移動し得る。このように、幾つかの実施例においては、プロセッサ110は、動きデータから、口腔内の歯列弓の周りの全体的な経路を決定するように構成されても良い。プロセッサ110は、全体的な経路に略垂直な方向のヘッド部102の動きを検出することによって、突出部104がいつ隣接歯間領域206に係合するかを決定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、ヘッド部により追従される全体的な経路に略垂直な方向におけるヘッド部の動きに関するデータは、上述したように、加速度センサ及び/又は向きセンサによって取得されたデータのような他の動きデータに加えて使用されても良い。
【0046】
これまでのところ、突出部104が隣接歯間領域206に係合したことを決定するための方法は、装置100内の1つ以上のセンサ108によって取得されたデータに基づく自動決定を含んでいる。しかし、幾つかの実施例においては、ユーザは、突出部104が隣接歯間領域206に位置しているときに、装置100に示唆を提供しても良い。図4は、図1に示された口腔ケア装置100を有しても良く、又は図1に示された口腔ケア装置100と類似していても良い、口腔ケア装置100の一例の簡略化された概略図である。口腔ケア装置100は、ユーザ入力機構112を有しても良い。幾つかの実施例においては、ユーザ入力機構112は、ユーザが装置を操作することによって作動可能なボタン又はスイッチを有しても良い。例えば、ユーザは、突出部104が隣接歯間領域206に係合するように装置のヘッド部102を位置決めするたびに、ボタン112を押しても良い。ボタン112を押すと、ボタンからプロセッサ110に信号が送られても良い。プロセッサは、本明細書に記載された方法を使用して、隣接歯間領域206の間の距離を決定しても良い。より具体的には、プロセッサ110は、ユーザ入力機構112を介したユーザ入力の受け付けに基づいて、ヘッド部102の突出部104が隣接歯間領域206と係合したことを決定するように構成されても良い。斯かるユーザ入力機構112は、例えば、ユーザの口の隣接歯間領域206に空気及び/又は水のジェットを噴射する口腔洗浄装置に含まれていても良い。ユーザ入力機構112は、流体のジェットが装置から噴射されることをユーザが意図するときに、ユーザ入力を受け付けるように構成されていても良い。典型的には、流体ジェットは、装置が静止している間、及び突出部104が隣接歯間領域206内に配置されている間又は隣接歯間領域206に隣接している間に噴射されても良い。従って、プロセッサ110は、ユーザ入力機構112を介したユーザ入力の受け付けを、突出部104が隣接歯間領域206に係合したことを示すものとして扱うように構成されても良い。
【0047】
口腔ケア装置100は、幾つかの実施例においては、口腔健康障害を検出するための検出器114を更に含んでも良い。検出器は、口腔内に顕在化する健康障害、又は特定の口腔健康障害、問題若しくは疾患を検出するための、いずれのセンサ又は検出器を含んでいても良い。例えば、検出器114は、歯垢、歯石、脱灰、カリエス、歯周病、虫歯、歯肉炎などを検出するように構成されても良い。検出器114は、光学的、蛍光的及び/又は電気的配置などの1つ以上の検出技術を含んでも良い。幾つかの実施例においては、検出器114は、ユーザの口腔健康に関するデータを取得しても良く、一方、1つ以上のセンサ108は、使用中の装置100の位置を決定するために使用される。このようにして、口腔健康の障害又は欠陥が検出器114によって検出された場合、検出された障害の位置を決定することができる。
【0048】
上述したように、口腔ケア装置100、特にヘッド部102は、多くの形態をとることができる。任意の実施例においては、ヘッド部102は、ユーザの口の中の隣接歯間領域206と係合することができるように、ヘッド部から延在する(即ち、起立する)突出部104を含む。図5及び図6は、ヘッド部102のタイプの例を示す図である。
【0049】
図5は、歯ブラシのヘッド部102の一例を示す説明図である。ヘッド部102は、装置100のハンドル部106に接続するように、又は装置100のハンドル部106に嵌合するように構成されても良い、ネック部504を含む。ヘッド部102は、複数の毛の房508を保持して支持するように構成された毛支持部506を含んでも良い。図5に示す実施例においては、歯ブラシヘッド部102は、複数の異なるサイズを有する毛房508を含む。中央の房(又は複数の房)510は、隣接して取り囲む毛又は毛の房よりも更に毛支持部506から外側に向けて延在している。換言すれば、中央房510は、隣接して取り囲んでいる房よりも長くなっている。このようにして、中央房510は、突出部104を有する。歯ブラシヘッド部102がユーザの歯列弓の周りで移動させられると、ブラシの中央房510が隣接歯間領域206と係合させられる。中央房510が隣接歯間領域に係合すると、ユーザは感覚(例えば、音を聞く、及び/又は「ノッチング」感覚を感じる)を感じるかもしれない。この感覚は、中央房510が隣接歯間領域206に係合するたびに、ユーザが動きを一旦止めること、又はブラシの移動速度を遅くすることを引き起こし得る。幾つかの例では、ユーザは、中央房510が隣接歯間領域に係合するのを感じるたびに動きを一旦止めるように要求又は指示されても良い。
【0050】
換言すれば、口腔ケア装置100は、幾つかの実施例においては、歯ブラシを有しても良く、歯ブラシのヘッド部102は、複数の毛508を有している。突出部104は、複数の毛508のなかで、毛の延長させられた房510を有しても良い。
【0051】
幾つかの実施例においては、中央房510の毛は、他の毛に対して傾斜していても良い。他の実施例においては、他の房の構成が使用されても良い。しかしながら、一般的に、毛の構成は、毛又は房の1つ又は複数が隣接歯間領域に係合する際に、ユーザが触覚フィードバックを受け取ることができるようなものである。これは、一旦止まらずに歯の上を連続的に掃引するのではなく、歯の上を「ステップ的に動く」ことをユーザに促すことができる。毛508の配置は、幾つかの実施例においては、ヘッド部102の端部(例えば、前部及び後部)の毛が、他の毛508に対して相対的に延長させられた(例えば、他の毛508よりも長い)ようなものであっても良い。例えば、図5に示すように、端部の毛(又は房)512は、中央の房510と略同じ長さまで延びても良い。この配置では、使用時には、端部の毛/房512はまた、隣接歯間領域206と係合し得る。具体的には、中央房510が第1の隣接歯間領域206に係合するとき、端部の房512は、それぞれ第1の隣接歯間領域の両側の第2の隣接歯間領域及び第3の隣接歯間領域に係合しても良い。このようにして、ユーザによって経験される触覚フィードバックが増強されても良い。
【0052】
代替的な実施例においては、装置100は、流体(例えば、ガス及び/又は水)のジェットが口腔内の領域(例えば、隣接歯間領域)に向かって噴射される、口腔洗浄装置を有しても良い。図6は、流体のジェットを噴射する口腔洗浄装置のヘッド部102の一例を示す説明図である。ヘッド部102は、装置100のハンドル部106に接続するように、又は装置100のハンドル部106に嵌合するように構成されても良い、ネック部604を含む。ヘッド部102は、支持部分606及びノズル608を含んでも良い。流路610(破線で示される)が、ノズル608、支持部606及びネック部604を通って形成されても良い。チャネル610は、流体リザーバ(図示せず)と流体連通していても良く、ノズル608から口腔内の標的に向かって放出されるように、流体がそこを流れるように構成されていても良い。使用時には、ユーザは、ノズルが隣接歯間領域206に係合するように(例えば、内側にあるように)ヘッド部102を位置決めしても良い。その後、流体のジェットは、ノズル608から隣接歯間領域206に向かって流れるように(例えば、自動的に又はユーザの入力に応答して)されても良い。このようにして、ユーザは、装置100のヘッド部102を口の中で動かしてもよいが、ノズル608が隣接歯間領域206に係合するたびに一旦止まっても良い。上述したように、流体の噴出は、自動的に噴出されても良いし、ユーザが、例えばボタン(例えば、ユーザ入力機構112)を押すことによって、流体噴出を作動させても良い。
【0053】
このように、幾つかの実施例によれば、口腔ケア装置100は、ヘッド部102のノズル608から隣接歯間領域206へと流体の流れを向けるように構成された口腔洗浄装置を有しても良い。突出部104が、ノズル608を有しても良い。
【0054】
口腔ケア装置100に加えて、本開示の一態様は、方法にも関する。図7は、口腔内の口腔ケア装置100の位置を決定する方法700の一例のフロー図であり、口腔ケア装置は、口腔内の隣接歯間領域に係合するための突出部104を含むヘッド部102と、口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサ108とを有する。方法700は、ステップ702で、ヘッド部102の突出部104がいつ口腔内の隣接歯間領域に係合するかを決定するステップを有する。例えば、決定するステップ702は、ここで記載されたいずれの技術を用いて行われても良い。ステップ704において、方法700は、突出部104が隣接歯間領域間を移動する際に少なくとも1つのセンサ108によって取得された動きデータに基づいて、口腔内の口腔ケア装置100のヘッド部102の位置を決定することを有する。装置100のヘッド部102の位置は、ここで記載されたいずれの技術を用いて行われても良い。
【0055】
図8は、口腔ケア装置100の位置を決定する方法800の更なる例のフロー図である。方法800のステップは、特定の実施例において実行されても良い。方法800は、上述したステップ702及び704を含む。しかしながら、幾つかの実施例においては、ヘッド部102の突出部104がいつ隣接歯間領域に係合するかを決定する前に、方法800は、ステップ802において、動きデータに統計モデルを適用するステップを有しても良い。例えば、幾つかの実施例においては、隠れマルコフモデル及び/又はカルマンフィルタがデータに適用されても良い。斯かる統計モデルを適用することは、データをフィルタリングするのに役立つかもしれず、それによって、位置決定(ステップ704において)は、頭部の動きのような外乱に対してより頑強なものになる。幾つかの統計モデルは、ユーザが一般的に口腔清掃装置を歯から歯へと順次移動させるという推定に依存し得る。従って、装置100の現在の位置の知識に基づいて、装置が次に移動する可能性が高い位置についての予測がなされても良い。幾つかの実施例においては、位置決定の頑強性は、ユーザの2本の上前歯の間の隣接歯間領域など、口腔内の特定の位置で口腔ケア活動を開始するようにユーザに要求又は指示することによって、更に改善されても良い。
【0056】
方法800は、ステップ804において、隣接歯間領域206の間の距離を算出するステップを更に有しても良い。該算出は、ここで議論されるいずれの技術を使用して行われても良い。例えば、加速度データが少なくとも1つのセンサ108を用いて取得される場合、加速度データは、隣接歯間領域間の距離のような、該装置が移動した距離の測定値を得るために、時間に関して2回積分されても良い。ステップ806において、方法800は、算出された隣接歯間領域206間の距離を、同じ隣接歯間領域間の以前に算出された距離と比較することを含んでも良い。このように、幾つかの実施例においては、少なくとも1つのセンサ108によって取得されたデータは、例えば、該装置に関連付けられた記憶媒体(例えば、装置内のメモリ、又は「クラウド」のような装置からリモートで)に保存されても良い。以前に取得されたデータは、算出された距離が時間の経過とともに変化したかどうかを判断するために、新たに取得されたデータと比較されても良い。方法800は、ステップ808において、比較された距離が閾値以上に異なると判断された場合、警告信号を生成するステップを有しても良い。隣接する隣接歯間領域206の特定の対の間の距離が経時的に変化している場合、このことは、歯の動き、歯肉の炎症、又は他の口腔健康問題を示している可能性がある。このように、算出された距離における著しい(即ち、閾値以上の)変化が検出された場合、信号が(例えば、装置100に関連するプロセッサによって)生成されてもよい(ステップ808)。該信号は、例えば、ディスプレイを介して視覚的に又はスピーカを介して可聴的にユーザに、及び/又は医療又は歯科専門家に配信されても良い。
【0057】
更なる態様によれば、口腔ケアシステムも開示されている。図9は、口腔ケアシステム950の簡略化された概略図である。口腔ケアシステム950は、口腔ケア装置100と処理回路910とを有する。口腔ケア装置100は、口腔内の隣接歯間領域206と係合するための突出部104を含むヘッド部102を有する。口腔ケア装置100はまた、ハンドル部106を含んでも良い。口腔ケア装置100はまた、口腔ケア装置についての動きデータを取得するための少なくとも1つのセンサ108を含む。処理回路910は、ヘッド部102の突出部104がいつ口腔内の隣接歯間領域206と係合するかを決定するように構成されている。処理回路910はまた、突出部104が隣接歯間領域206の間を移動する際に少なくとも1つのセンサによって取得された動きデータに基づいて、口腔内の口腔ケア装置100のヘッド部102の位置を決定するように構成されている。
【0058】
幾つかの実施例においては、処理回路910は、口腔ケア装置100からリモートで配置されても良い。例えば、処理回路910は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ウェアラブル装置、スマートミラーなどの計算装置内のプロセッサを有しても良い。幾つかの実施例においては、処理回路910は、サーバ又はクラウドベースの計算環境に配置されても良い。斯かる例では、処理回路910は、口腔ケア装置100と(例えば、送信回路及び/又は口腔ケア装置内の1つ以上のプロセッサと)無線で通信しても良い。
【0059】
使用時には、ユーザは、ここで説明された方法で口腔ケア装置100を操作しても良い。口腔ケア装置100は、例えば、装置によって取得された動きデータを処理回路に送信することによって、処理回路910と通信しても良い。その後、処理回路910は、例えば上述した処理ステップのような処理を実行しても良い。幾つかの例では、処理回路910は、ここで開示された方法の1つ以上のステップを実行するように構成されても良い。
【0060】
口腔ケア装置100からリモートに配置された処理回路910を使用することにより、データ処理が、装置自体のプロセッサによってではなく、例えば計算装置内の専用プロセッサによって実行され得るため、より低コストの装置が使用され得る。
【0061】
幾つかの実施例においては、口腔ケアシステム950は、口腔ケア装置100に対するユーザの頭部の相対的な動きを測定するための動き検出器912を更に含んでも良い。図9の破線は、動き検出器912が任意であることを示す。処理回路910は、測定された動きに少なくとも部分的に基づいて、隣接する隣接歯間領域206間の距離を算出するように構成されても良い。動き検出器912は、幾つかの実施例においては、カメラなどの光学センサを有しても良い。他の実施例においては、動き検出器912は、光検出器、レーダ検出器、ライダ検出器、レーザ検出器、超音波検出器、静電容量検出器、近接検出器などを有しても良い。動き検出器は、口腔ケア装置100自体に配置されていても良いし、又は口腔ケア装置からリモートに、例えば計算装置内に配置されていても良い。このように、装置のヘッド部の位置を決定することに加えて、処理回路は、隣接歯間領域間の距離を算出しても良い。該算出を、口腔ケア装置に対するユーザの頭部の測定された動きに基づいて行うことにより、距離算出は、より正確となり得る。例えば、該口腔ケア装置は、該装置の使用中にユーザが移動(例えば、歩行)することによって移動しても良い。この動きは、該装置の少なくとも1つのセンサによって検出されても良い。しかしながら、この動き(又は動きの少なくとも一部)が、該装置が頭部に対して相対的に移動したことよりも、ユーザが頭部及び装置を移動したことに起因すると判断できる場合には、この動きは無視されても良い。
【0062】
従って、ここで開示された実施例は、口腔ケア装置の位置を、使用中の口腔内の間隣接歯間領域における該装置の位置に基づいて、決定することができる機構を提供する。このようにして位置を決定することは、プライバシーの侵害であると考えられる可能性のある高解像度カメラ装置の必要性を回避する。
【0063】
プロセッサ110、910は、ここに記載の方法で、装置100を制御するように構成又はプログラムされた1つ以上のプロセッサ、処理ユニット、マルチコアプロセッサ、又はモジュールを有しても良い。特定の実施例においては、プロセッサ110、910は、それぞれが、ここで記載された方法の個々のステップ又は複数のステップを実行するように構成されている又は実行するための、複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを有しても良い。
【0064】
ここで用いられる「モジュール」なる語は、特定の機能を実行するよう構成されたプロセッサ若しくプロセッサの構成要素のようなハードウェア要素、又はプロセッサにより実行されるときに特定の機能を持つ命令データのセットのようなソフトウェア要素を含むことを意図されている。
【0065】
本発明は、コンピュータプログラム、特に本発明を実行するように構成された、担体上又は担体中のコンピュータプログラムにも拡張されることは、理解されるであろう。該プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形態のようなコード中間ソース及びオブジェクトコード、又は本発明による方法の実装における使用に適した他のいずれかの形態であっても良い。斯かるプログラムは、多くの異なる構造的な設計を持ち得ることも理解されるであろう。例えば、本発明による方法又はシステムの機能を実装するプログラムコードは、1つ以上のサブルーチンに分割されても良い。これらサブルーチンに機能を分散させる多くの方法が、当業者には明らかであろう。これらサブルーチンは、1つの実行可能ファイルに合わせて保存され、内蔵型プログラムを形成しても良い。斯かる実行可能ファイルは、例えばプロセッサ命令及び/又はインタプリタ命令(例えばJava(登録商標)インタプリタ命令)のような、コンピュータ実行可能な命令を有しても良い。代替として、これらサブルーチンの1つ以上又は全てが、少なくとも1つの外部のライブラリファイルに保存され、例えば実行時に、静的又は動的にメインプログラムとリンクされても良い。メインプログラムは、これらサブルーチンの少なくとも1つに対する少なくとも1つの呼び出しを含む。また、これらサブルーチンは、互いに対する関数呼び出しを有しても良い。コンピュータプログラムに関連する実施例は、開示された方法の少なくとも1つの処理ステップの各々に対応するコンピュータ実行可能な命令を有する。これら命令はサブルーチンに分割されても良く、及び/又は静的又は動的にリンクされ得る1つ以上のファイルに保存されても良い。コンピュータプログラムに関連する他の実施例は、開示されたシステム及び/又はコンピュータプログラムの少なくとも1つの手段の各々に対応するコンピュータ実行可能な命令を有する。これら命令はサブルーチンに分割されても良く、及び/又は静的又は動的にリンクされ得る1つ以上のファイルに保存されても良い。
【0066】
コンピュータプログラムの担体は、該プログラムを担持することが可能ないずれのエンティティ又は装置であっても良い。例えば、該担体は、例えばCD-ROM若しくは半導体ROMといったROMのような記憶媒体、又は例えばフロッピー(登録商標)若しくはハードディスクのような磁気記録媒体を含んでも良い。更に、該担体は、電気若しくは光ケーブル、無線、又はその他の手段を介して搬送され得る、電気又は光信号のような、送信可能な媒体であっても良い。該プログラムが斯かる信号において実施化される場合には、該担体は斯かるケーブル又はその他の装置若しくは手段により構成されても良い。代替として、該担体は、関連する方法を実行するように又は関連する方法の実行における使用のために構成された、該プログラムが組み込まれた集積回路であっても良い。
【0067】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する変形が理解され実行され得る。請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体のような適切な媒体上で保存/配布されても良いが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介してのような、他の形態で配布されても良い。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9