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特許7385575WNT/SFRP複合体、WNT含有組成物、WNT発現細胞、並びにそれらを生成、精製及び使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】WNT/SFRP複合体、WNT含有組成物、WNT発現細胞、並びにそれらを生成、精製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20231115BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C12N15/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020540697
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018055001
(87)【国際公開番号】W WO2019074918
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/569,748
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520122600
【氏名又は名称】バイオ-テクネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーソン,アントニー
(72)【発明者】
【氏名】シオン,リーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ビー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー,カムリン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0202749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0072239(US,A1)
【文献】国際公開第2014/194267(WO,A2)
【文献】MII, Y., et al.,"Secreted Frizzled-related proteins enhance the diffusion of Wnt ligands and expand their signalling range.",DEVELOPMENT,2009年,Vol.136, No.24,pp.4083-4088,DOI: 10.1242/dev.032524
【文献】WAWRZAK, D., et al.,"Wnt3a binds to several sFRPs in the nanomolar range.",BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS,2007年04月19日,Vol.357, No.4,pp.1119-1123,DOI: 10.1016/j.bbrc.2007.04.069
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)と哺乳動物分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)とを含む単離されたタンパク質複合体であって、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
該Wntが活性Wnt2bを含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、または、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
ものであり、
該Wntが活性Wntを含み、かつ、
該活性Wntが、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いた測定で、標準的なβ-カテニンシグナル伝達を活性化し、HEK293 TCF9-分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP) hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いた測定で、500ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、前記タンパク質複合体。
【請求項2】
Wnt1が連結されたWnt1を含む、
Wnt2bが連結されたWnt2bを含む、又は
Wnt6が連結されたWnt6を含む、
請求項1に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項3】
WntがヒトWntを含み、sFRPがヒトsFRPを含む、請求項1又は2に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項4】
タンパク質複合体が、実質的に界面活性剤を含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項5】
WntがマウスWntを含み、sFRPがマウスsFRPを含む、請求項1、請求項2、又は、請求項1若しくは2に従属する請求項4に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項6】
単離された哺乳動物Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)と単離された哺乳動物分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)とを含む組成物、ここで
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
該Wntが活性Wnt2bを含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、または、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
ものであり、
前記Wntは活性なWntを含み、前記組成物は実質的に界面活性剤を含まない、前記組成物。
【請求項7】
Wnt1が連結されたWnt1を含む、
Wnt2bが連結されたWnt2bを含む、又は
Wnt6が連結されたWnt6を含む、
請求項に記載の組成物。
【請求項8】
活性なWntが、分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いて測定されるWntレポーター活性を有するWntを含む、請求項又はに記載の組成物。
【請求項9】
WntがヒトWntを含み、sFRPがヒトsFRPを含む、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
WntがマウスWntを含み、sFRPがマウスsFRPを含む、請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
Wntが、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いた測定で、100ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、R-スポンジン 1、R-スポンジン 2、R-スポンジン 3、R-スポンジン 4、リポカリン7若しくはWIF1又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
Wnt1を発現する細胞とsFRP1を発現する細胞とを共培養する工程:
培養上清を単離する工程、並びに、
Wnt1及びsFRP1の複合体を前記培養上清から単離する工程を含み、
ここで、前記培養上清から前記Wnt1とsFRP1との複合体を単離する工程が、水性精製手順を含み、界面活性剤の使用を含まないものであり、かつ、
前記Wnt1は活性なWnt1を含む、
方法。
【請求項14】
哺乳動物Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)、及び、哺乳動物分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)の両方を発現する細胞を培養する工程、ここで、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
該Wntが活性Wnt2bを含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、または、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
ものである、
培養上清を単離する工程、並びに、
該Wntタンパク質及びsFRPタンパク質の複合体を前記培養上清から単離する工程、を含み、
ここで、前記培養上清から前記Wntタンパク質とsFRPタンパク質との複合体を単離する工程が、水性精製手順を含み、界面活性剤の使用を含まないものであり、かつ、
前記Wntタンパク質は活性なWntタンパク質を含むものである、
方法。
【請求項15】
哺乳動物Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)を発現する細胞を、哺乳動物分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)の調製物と共に培養する工程、ここで、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt1を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
該Wntが活性Wnt2bを含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP1を含む、または、
該Wntが活性Wnt6を含み、かつ、該sFRPがsFRP5を含む、
ものである、
培養上清を単離する工程、並びに、
前記培養上清から、該Wntタンパク質と該sFRPタンパク質との複合体を単離する工程、を含み、
ここで、前記培養上清から該Wntタンパク質と該sFRPタンパク質との複合体を単離する工程が、水性精製手順を含み、界面活性剤の使用を含まないものであり、かつ、
前記Wntタンパク質は活性なWntタンパク質を含むものである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WNT/SFRP複合体、WNT含有組成物、WNT発現細胞、並びにそれらを生成、精製及び使用する方法に関する。
【0002】
継続出願データ
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年10月9日に出願された米国仮出願第62/569,748号の利益を主張する。
【0003】
配列表リスト
本出願には、2018年10月9日に作成され、84キロバイトのサイズを有する「541-00060201_ST25.txt」と題するASCIIテキストファイルとして、EFS-Webを介して米国特許商標庁に電子的に提出された配列表リストが含まれる。配列表リストの電子出願により、電子的に提出された配列表リストは、37 CFR §1.821(c)により要求される紙書類及び§1.821(e)により要求されるCRFの両方として機能する。配列表リストに含まれる情報は、本明細書に参照により取り込まれる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書は、Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)及び分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)を含む、単離されたタンパク質複合体;Wntを含む組成物であって、界面活性剤を実質的に含まない組成物;Wnt及びsFRPを過剰発現する細胞;Wntを過剰発現する細胞及びsFRPを過剰発現する細胞を含む組成物;タンパク質複合体、組成物及び細胞を生成する方法;並びに、タンパク質複合体、組成物及び細胞を使用する方法を開示する。一部の実施形態において、Wntは、好ましくは活性なWntを含む。一部の実施形態において、組成物は培地添加剤として使用することができ、界面活性剤を含む組成物と比較して有利な効果を提供することができる。
【0005】
ある態様において、本開示は、Wnt及びsFRPを含む単離されたタンパク質複合体について説明する。
【0006】
他の態様において、本開示はWntを含む組成物について説明し、ここで、組成物は、界面活性剤を実質的に含まない。
【0007】
さらなる態様において、本開示は、Wnt及びsFRPを過剰発現する細胞について説明する。
【0008】
さらなる態様において、本開示は、Wntを過剰発現する細胞及びsFRPを過剰発現する細胞を含む組成物について説明する。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成する工程、及びWntを単離する工程を含む方法について説明する。
【0010】
「好ましい」及び「好ましくは」の用語は、特定の状況下で、特定の利益を与え得る本発明の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況下で、他の実施形態が好ましい場合もあり得る。さらに、1つ又は複数の好ましい実施形態の明示は、他の実施形態が有用でないことを示唆しておらず、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図していない。
【0011】
「含む(comprise)」の用語及びその変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に見られる場合、限定的な意味を有さない。「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」の語句の後に続くものを含み、かつ、これに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」の語句は、列挙された要素が必要又は必須であることを示し、他の要素は存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」の語句は、語句の後に列挙されるすべての要素を含むこと、及び、列挙された要素の開示における具体的な活性又は作用に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」の語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在しても存在しなくてもよいことを意味する。
【0012】
別段の指定がない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は、互換的に使用され、1つ又は複数を意味する。
【0013】
また、本明細書において、終点による数値範囲の明示は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0014】
本明細書に開示される別個の工程を含むすべての方法について、工程は、任意の実現可能な順序で実行されてもよい。また、必要に応じて、2つ以上の工程の任意の組み合わせが同時に実行されてもよい。
【0015】
本発明の上記概要は、本発明の開示される実施形態のそれぞれや、すべての実施について説明することを意図するものではない。以下の説明は、実施形態をより具体的に例示しようとするものである。本出願全体のいくつかの箇所において、例のリストを通してガイダンスが提供され、例は様々な組み合わせで使用され得る。各々の場合において、列挙されたリストは代表的なグループとしてのみ機能するものであり、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書中の「一実施形態(one embodimen)」、「実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiments)」又は「一部の実施形態(some embodiments)」等の記載は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所におけるこれらの語句の明示は、必ずしも本開示の同じ実施形態を参照しているわけではない。また、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、任意の適切な手段で組み合わされてもよい。
【0017】
特に指定のない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの量を表すすべての数値は、すべての場合において、「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、反対に指定されない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性によって変化し得る近似値である。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等の範囲を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、全ての数値は、本質的に、それぞれの試験測定において割り出される標準偏差から必然的に生じる範囲を含む。
【0019】
表題は全て読む者の便宜のためであり、特に断らない限り、表題に続く文章の意味を限定するために使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1(A~B)はCHO細胞におけるマウスsFRP1(msFRP1)及びマウスWnt1(mWnt1)の共発現によって、上清(本明細書中では馴化培地とも称する)において、より高いレベルの活性mWnt1タンパク質が生じることを示す。 図1A:等量の馴化培地(CM)のウェスタンブロットは、CHO対照細胞CM(レーン1)、CHO mWnt1 CM(レーン3)、及びCHO msFRP1(レーン4)におけるmWnt1レベルと比較して、mWnt1/msFRP1-His(レーン2)及びmWnt1/msFRP1(レーン5)を発現するCHO細胞におけるmWnt1レベルが高いことを示す。msFRP1のウェスタンブロットは、CHO CM(レーン1)及びCHO mWnt1 CM(レーン3)と比較して、CHO mWnt1/msFRP1-His CM(レーン2)、CHO msFRP1 CM(レーン4)、及びCHO mWnt1/msFRP1 CM(レーン5)においてmsFRP1発現が促進されることを示す。
図1B図1(A~B)はCHO細胞におけるマウスsFRP1(msFRP1)及びマウスWnt1(mWnt1)の同時発現によって、上清(本明細書中では馴化培地とも称する)におけるより高いレベルの活性mWnt1タンパク質が生じることを示す。図1B:CHO細胞(青色の丸)、CHO mWnt1(赤色の四角)、CHO mWnt1/msFRP1(緑色の三角)、CHO mWnt1/msFRP1-His(橙色の菱形)及びCHO msFRP1(赤色の丸)からの馴化培地を、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt レポーター細胞に添加し、培地の最高濃度で開始して、1:2に希釈した。CHO細胞がmWnt1及びmsFRP1又はmsFRP1-Hisを同時に発現した場合にのみ、馴化培地中でWnt1活性が検出された。このHEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt Reporterアッセイにおいて、CHO-s m Wnt1/msFRP1細胞(緑色三角形)からの馴化培地では、バックグラウンドの22倍高い誘導が生じ、一方、CHO mWnt1/msFRP-His(橙色ダイヤ)では、17倍高い誘導が生じた。他のCHO株由来の条件培地では、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt レポーター細胞株における活性の誘導は見られなかった。
図2A図2Aは、mWnt1及びmsFRP1-Hisの両方を発現するCHOの馴化培地中で、msFRP1-His がmWnt1に結合することを示す。免疫沈降実験は、抗Wnt1抗体(レーン2、レーン4)、抗His抗体(レーン3、レーン5)、又は抗体なし対照(レーン1、レーン6)を、mWnt1及びmsFRP1-Hisの両方を過剰発現する等量のCHO細胞の馴化培地に添加して実施した。抗体/馴化培地混合物をプロテインGアガロースビーズと複合体化し、免疫沈降実験を行った。抗体をmWnt1/msFRP/Hisを発現するCHOの馴化培地に添加しなかった場合、msFRP1及びmWnt1はウェスタンブロットで検出されなかった(それぞれレーン1及び6)。抗mWnt1抗体を使用して免疫沈降を行った場合、Hisタグ化msFRP1/Hisタンパク質は、抗His抗体でブロットした場合、約37キロダルトン(kDa)で検出された(レーン2)。抗His抗体を使用して免疫沈降を行った場合、抗mWnt1抗体は、約42kDaでmWnt1バンドを検出した(レーン5)。レーン3における50kDa及び25kDaのバンドは、抗His抗体によって認識される重鎖及び軽鎖IgGである。
図2B図2Bは、mWnt2b及びmsFRP1の両方を発現するCHO馴化培地中で、msFRPf1がmWnt2bに結合することを示す。免疫沈降実験は、mWnt2b単独又はmWnt2b及びmsFRP1を過剰発現する等量のCHO細胞(クローン18)の馴化培地に、抗マウスWnt2b、抗ヒトsFRP1、又は抗体なし対照を添加して実施した。抗mWnt2b抗体による免疫沈降、その後の抗hsFRP1抗体によるブロッティングにより、約35kDaでsFRP1タンパク質が検出され(黒い矢印によって示される)、mWnt2b及びmsFRP1が、mWnt2b及びmsFRP1の両方を発現するCHO細胞の馴化培地中で物理的に相互作用していることが実証された。この35kDaのバンドは、抗mWnt2bで免疫沈降を行い、抗hsFRP1でブロットした場合、mWnt1のみを発現するCHO細胞の馴化培地では検出されなかった。
図2C図2Cは、mWnt2b及びmsFRP1の両方を発現するCHOの馴化培地中で、msFRP1がmWnt2bに結合することを示す。免疫沈降実験はmWnt2b単独又はmWnt2b及びmsFRP1を過剰発現する等量のCHO細胞(クローン18)の馴化培地に、抗Wnt2b、抗hsFRP1、又は抗体なし対照を添加して実施した。抗hsFRP1抗体による免疫沈降、その後の抗mWnt2b抗体によるブロッティングでは、約42kDaでmWnt2bタンパク質が検出され(黒い矢印によって示される)、mWnt2b及びmsFRP1がmWnt2b及びmsFRP1の両方を発現するCHO細胞の馴化培地中で物理的に相互作用していることが実証された。この42kDaのmWnt1バンドは、抗hsFRP1で免疫沈降を行い、抗mWnt1でブロットした場合、mWnt1のみを発現するCHO細胞の馴化培地では検出されなかった。
図3図3は、マウスsFRP1(msFRP1)が、マウスWnt1(mWnt1)活性の増強と阻害の両方をもたらすことを示す。組換えmsFRP1タンパク質をCHO mWnt1発現細胞に添加して24時間置いた後、馴化培地をHEK293 hFz4/hLRP5 Wntレポーター細胞に添加した。sFRP1タンパク質は、6.25マイクログラム/ミリリットル(μg/mL)でmWnt1活性の最大増強を示したが、タンパク質を25μg/mL及び50μg/mLの用量で添加した場合、mWnt1活性はベースラインレベルまで低下した。
図4図4(A~F)は、陽イオン交換SPセファロースカラム(図4(A~C))上でsFRP1と共溶出したWnt-1、及びゲル濾過カラム上での遊離sFRP1からのsFRP1/Wnt-1複合体の分離を示す(図4(D~E))。図4A:msFRP1及びmWnt-1を共発現するCHO細胞からの馴化培地をSP Sepharoseカラムにロードし、結合したタンパク質を直線勾配の高塩濃度緩衝液で溶出した。明確な後の溶出ピークは、sFRPが通常溶出される位置であった。図4B:SP溶出から回収した画分を15パーセント(%)SDS-PAGEにロードし、銀染色を行った。37kDaのバンドはsFRP1を表す。図4C図4Bと同じ画分を、mWnt-1に対する抗体を用いて捕捉するウェスタンブロットに供した。mWnt-1はsFRP1が検出されたのと同じ画分に存在する、約52kDaのバンドとして検出された。図4D:SP Sepharoseカラムからのプールをゲル濾過カラム(Superdex 200)にロードし、溶出した。先の溶出ピークはsFRP1/Wnt‐1複合体を含有し、後の溶出ピークは遊離sFRPを含有した。図4E:ゲル濾過溶出から回収した画分を15% SDS-PAGEゲル上にロードし、クーマシーブルーで染色した。下のバンド(37kDa)はsFRP1を表し、上のバンド(52kDa)はWnt-1を表す。図4F:ゲル濾過カラムから精製したsFRP1/Wnt-1複合体を15% SDS-PAGEゲル上にロードし、クーマシーブルーで染色した。37kDa及び52kDaの2つのバンドが、およそ1:1のモル比で観察された。
図5図5は、精製された組換えmWnt1/msFRP1複合体をSDS-PAGEゲル上で泳動させたとき、mWnt1及びmsFRP1タンパク質の両方がウェスタンブロットで検出されたことを示す。0.001ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)のmWnt1/msFRP1(レーン1)、0.01ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン2)、0.1ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン3)、1ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン4)、10ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン5)、100ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン6)、500ng/mLのmWnt1/msFRP1(レーン7)、及び1マイクログラム/ミリリットル(μg/mL)のmWnt1/msFRP1(レーン8)を、還元条件下で4~20%アクリルアミドゲル上で泳動し、次いでPVDF膜に移した。ヤギ抗Wnt-1抗体(1μg/mL)及びヤギ抗msFRP1抗体(1μg/mL)を用いてウェスタンブロットを行った。1μg/mLの二次抗体(ロバ抗ヤギHRP抗体)を検出に使用した。
図6A図6(A~D)は、精製された組換えmWnt1/msFRP1タンパク質複合体が、hFz4及びhLRP5の両方を発現するHEK293 Wntレポーター細胞において、Wntシグナル伝達経路を活性化することを示す。図6A:mWnt1/msFRP1タンパク質複合体を、hFz4/Hlrp5を発現するHEK293 Wntレポーター細胞において試験し、組換えマウスWnt10Bタンパク質と比較して、より活性を有することを示した。
図6B図6(A~D)は、精製された組換えmWnt1/msFRP1タンパク質複合体が、hFz4及びhLRP5の両方を発現するHEK293 Wntレポーター細胞において、Wntシグナル伝達経路を活性化することを示す。ヒトFz4及びヒトLRP5を発現するHEK293レポーター細胞を、組換えマウスsFRP1タンパク質(青色四角)又は組換えマウスWnt1/sFRP1(mWnt1/msFRP1)タンパク質複合体(赤色丸)のいずれかで処理した。mWnt1/msFRP1複合体は、用量に応じてHEK293 Wntレポーター細胞を誘導することを明確に示したが、msFRP1タンパク質は単独で活性を有することを示さなかった。
図6C図6(A~D)は、精製された組換えmWnt1/msFRP1タンパク質複合体が、hFz4及びhLRP5の両方を発現するHEK293 Wntレポーター細胞において、Wntシグナル伝達経路を活性化することを示す。組換えmWnt1/msFRP1タンパク質複合体の精製は、類似の生物学的活性を示す複数のロットで再現可能である。2つの異なるmWnt1/msFRP1複合体を精製し、HEK293 hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイで互いに比較し、両方が同様の活性を示すことが示された。Wntレポーター活性の最大の増強は、110ng/mLの複合体で検出された。これらのWnt1/msFRP1複合体の活性は、ベル型曲線を形成し、110ng/mL未満又は110ng/mLを超える用量は、より低い活性を示した。
図6D図6(A~D)は、精製された組換えmWnt1/msFRP1タンパク質複合体が、hFz4及びhLRP5の両方を発現するHEK293 Wntレポーター細胞において、Wntシグナル伝達経路を活性化することを示す。図6D:図4に記載されるように精製されたマウスWnt1/sFRP1複合体は、CHAPS緩衝液中に保存された最も高活性な精製Wnt(組換えマウスWnt3a)と比較して、非常に強力であり、HEK293 Wntレポーターアッセイにおいて、より良好な効力を有することが実証された。mWnt1/msFRP1について観察された50パーセント有効量(ED50)は1.8ng/mLであったが、組換えマウスWnt3aについて観察されたED50は12.2ng/mLであった。
図7A図7(A~C)は、sFRPが、例示的なWnt(Wnt1、Wnt2b、及びWnt6)の活性について、細胞の自律的な反応によらず増強することを示す。図7A:msFRP1、msFRP3、msFRP4、及びmsFRP5を発現する細胞からの馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加したが、HEK293 Wntレポーター活性のみを超えるWntレポーター活性は誘導されなかった。mWnt1を発現する細胞を、msFRP1及びmsFRP5を発現する細胞と一緒に24時間培養したところ、この共培養の馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加することでWnt経路の活性が誘導された。
図7B図7(A~C)は、sFRPが、例示的なWnt(Wnt1、Wnt2b、及びWnt6)の活性について、細胞の自律的な反応によらず増強することを示す。図7B:同様の実験により、msFRP1と共にマウスWnt2bを発現する細胞の共培養物からの馴化培地によって、Wnt経路の活性化が生じたことを示す。
図7C図7(A~C)は、sFRPが、例示的なWnt(Wnt1、Wnt2b、及びWnt6)の活性について、細胞の自律的な反応によらず増強することを示す。図7C:msFRP1又はmsFRP5の発現細胞と共培養したヒトWnt6発現細胞由来の馴化培地もまた、Wntレポーター活性の有意な増加をもたらした。
図8図8は、分泌されたWntタンパク質(例えば、Wnt3a)がsFRPホモログに結合し、分泌されたWntタンパク質が、連結されたWnt(例えば、Wnt1、Wnt2b及びWnt6)のように、sFRPタンパク質とともに過剰発現されて、3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート(CHAPS)なしで活性化状態で精製され得ることを示す。精製した組換えマウスsFRPタンパク質を、ビオチン化マウスWnt3aタンパク質を用いたELISA結合アッセイで試験した。 (異なるsFRPタンパク質に異なるタグが使用されたため、これらのデータを用いて相対的な結合親和性を比較することはできない。) msFRP1とmsFRP4は、それぞれ、ヤギ抗sFRP1抗体及びヒツジ抗sFRP4抗体を用いて検出した。Hisタグ化マウスsFRP2及びHisタグ化マウスsFRP3を、マウス抗His抗体を用いて検出した。HAタグ化マウスsFRP5を、マウス抗HA抗体を用いて検出した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明及び実施形態
本明細書は、Wingless/Integrated-1タンパク質(Wnt)及び分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)を含む単離されたタンパク質複合体;Wntを含む組成物であって、組成物が界面活性剤を実質的に含まない組成物;Wnt及びsFRPを過剰発現する細胞;Wntを過剰発現する細胞及びsFRPを過剰発現する細胞を含む組成物;タンパク質複合体、組成物及び細胞を作製する方法;並びにタンパク質複合体、組成物及び細胞を使用する方法を開示する。本明細書は、さらに、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成し、Wntを単離する方法を開示する。本明細書は、また、本発明の時点で利用可能なWnt精製手順を用いて精製できなかった、例えば、連結された(tethered)Wntを含むWntを精製するために使用可能な方法も開示する。本明細書は、さらに、界面活性剤を使用せずに、例えば分泌Wntを含むWntを精製するために使用され得る方法を開示する。
【0022】
Wntタンパク質は、活性化状態での精製が極めて困難であることが判明している、グリコシル化及びパルミトイル化タンパク質である(Willert et al.Cold Spring Harbor Perspectives In Biology、4:a007864(2012))。Wntは、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、及びWnt16のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0023】
Wntファミリーのメンバーは、胚形成の調節に関与し、細胞増殖、生存、遊走、極性、細胞運命の特定及び幹細胞の自己複製など、生後の多様なプロセスを制御する。Wnt量の摂動、又はWntの下流効果因子の活動の変化は、発達障害を引き起こし、疾患の病因に寄与する可能性がある。
【0024】
Wntタンパク質の脂質修飾によって、これらの増殖因子は、Wnt産生細胞の外膜と会合し得、Wnt産生源はなれた分泌及びシグナル伝達の制限をもたらす。2003年に、界面活性剤の(3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネート)(CHAPS)を使用して、パルミトイル化Wntタンパク質を精製する手順が公表された;この手順では、Wnt活性を保持するために、Wntを疎水性環境下で保持する必要があることが示された(Willert et al. Nature 423:448-452 (2003); Reya et al. Nature 423:409-414 (2003))。しかしながら、CHAPSで精製されたWnt3aタンパク質は、疎水性であるため、細胞培養培地中で急速に活性を失い、界面活性剤の存在は、例えば、幹細胞自己再生を含む正常な細胞機能を妨害し得るか、又は細胞培養において毒性を有し得る(Tuysuz et al. Nature Communications 8:14578 (2017))。
【0025】
例えば、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a、及びWnt10aを含むWntを過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の馴化培地(本明細書中では上清とも呼ばれる)中で、一部のWntを活性化状態で検出することができる。これらの「分泌されたWnt」は、通常、前述のCHAPS精製手順を用いた精製に順応する。他のWnt、又は、例えば、Wnt1、Wnt2b、Wnt6、Wnt7aを含む「連結されたWnt(束縛されたWnt)(tethered Wnt)」は、基本的にこれらのWntを産生する細胞の細胞膜と結合しているようである。活性なWntタンパク質は、これらの連結されたWnt(束縛されたWnt)を生成する細胞の馴化培地中では検出されない。連結されたWnt(拘束されたWnt)を過剰発現する細胞の馴化培地は、傍分泌の形でのWntシグナル伝達を活性化せず、連結されたWnt(繋がれたWnt)を生成する細胞がWnt応答性細胞と共培養される場合にのみ、Wnt活性が実現可能となる。膜関連タンパク質を精製する試みは極めて困難であることが示されており、不活性タンパク質の精製又は低い生産収率により、生産物は経済的に利用不可能なものであった。
【0026】
分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)は、当初はWntシグナル伝達のアンタゴニストとして特徴づけられた、分泌Wnt結合タンパク質のファミリーである。ヒト及びマウスのゲノムには、5つのsFRPが存在する。sFRP1-5はすべて、Frizzled 7回膜貫通受容体のWnt結合性システインリッチドメイン(CRD)と構造的な類似性を示す。7回膜貫通型Frizzled受容体とは異なり、sFRPはCRDの下流にネトリン様ドメインを含む分泌タンパク質であり、このネトリン様ドメインはFrizzled受容体には存在しない。
【0027】
sFRPは、当初はWnt活性に結合してそれを阻害する分泌タンパク質として特徴づけられたが、その後の研究によって、例えば、生物学的に関連する量で発現される場合などは、Wntの活性を増強し得ることが示された(Mii and Taira, Development 136:4083-4088 (2009); Holly et al., Developmental Biology 388:192-204 (2014))。
【0028】
本明細書は、Wnt産生細胞において発現されたsFRPが細胞表面に結合し、細胞表面から連結されたWntを遊離させることができることを示す実験結果を開示する。Wnt1発現細胞におけるsFRP1又はsFRP5の過剰発現によって、馴化培地における活性なWnt1/sFRP複合体が検出される。このWnt1/sFRP1複合体は、続いて、CHAPS等の界面活性剤の使用を必要としない水性精製手順で精製できる。
【0029】
本開示は、sFRP発現細胞、又はsFRP組換えタンパク質が、細胞自律的、非細胞自律的の両方で、Wnt1発現細胞の膜から活性なWnt1/sFRP複合体を遊離できることを示す実験結果を提供する。例えば、表1に要約されるデータは、マウスsFRP1(msFRP1)が細胞膜に結合し、細胞膜からマウスWnt 1(mWnt1)を遊離し得ることを示唆する。分泌タンパク質sFRP1又はsFRP5がmWnt1発現細胞の表面上でmWnt1と接触している場合にのみ、馴化培地中のmWnt1活性を検出することができる。従って、細胞表面でWntに結合するsFRPは、Wntタンパク質が「分泌された」モルフォゲンとして作用することを可能にし得る。
【0030】
本明細書中で提供される実験結果はまた、sFRPが、Wnt発現細胞の外細胞膜から他のWnt(例えば、Wnt2b及びWnt6を含む)を遊離することで、Wnt2b又はWnt6を発現する細胞の馴化培地中でWnt2b/sFRP及びWnt6/sFRP複合体を生じることが可能であることを示す。これらのデータは、sFRPがWnt結合パートナーとして作用できることを示す。しかしながら、Wntシグナル伝達において、例えば、図3図6CでsFRPの二相性応答が観察された。
【0031】
理論に拘束されることを意図するものではないが、sFRPはWnt上のパルミトイル化部分に結合し、この脂質修飾を水性環境から遮蔽し、したがって、連結されたWntを活性なWnt/sFRP複合体中に精製することが可能になると考えられる。また、理論に拘束されることを意図するものではないが、sFRPは、Wntとの結合が飽和するsFRP量までWntに結合し、Wntシグナル伝達を増強すると考えられる(図3図6Cを参照のこと)。しかし、利用可能なWntタンパク質の全てがsFRPと複合体を形成すると、sFRPタンパク質は、例えば、Frizzled受容体を含むWnt経路の他の非Wnt成分と相互作用することによって、Wntシグナル伝達を阻害し得る(Bafico et al. The Journal of Biological Chemistry 274, 16180-16187 (1999))。例えば、過剰のsFRPは、Wntタンパク質がFrizzled受容体を活性化することを阻害し得る。
【0032】
Wnt
Wntは、任意のWntタンパク質又はWntタンパク質の組み合わせを含み得る。Wntタンパク質は、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、 Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうちの少なくとも1つを含むことができる。一部の施形態では、Wntは、分泌Wnt及び/又は連結されたWntを含む。一部の実施形態では、分泌Wntは、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及びWnt10aのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、Wntは真核生物Wntを含む。Wntは、例えば、哺乳動物、両生類(例えば、アフリカツメガエル)、鳥類(例えば、ニワトリ)、又は魚類(例えば、ゼブラフィッシュ)を含む任意の適切な真核生物由来のWntであり得る。一部の実施形態では、Wntは、好ましくは哺乳動物Wntを含む。哺乳動物Wntは、例えば、ヒトWnt、マウスWnt、ラットWnt、ウマWnt、イヌWnt、ヤギWnt、ウシWntなどを含み得る。
【0034】
一部の実施形態では、Wntはタグ付きWntを含む。Wntは、任意の適切なタンパク質タグ(例えば、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、赤血球凝集素(HA)タグ、Fcタグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ、蛍光タグ(例えば、GFPタグ、YFPタグ、BFPタグを含む)などを含む)でタグ付けされてもよい。一部の実施形態では、タグはC末端であってもよく、一部の実施形態では、タグはN末端であってもよい。
【0035】
一部の実施形態では、Wntは活性なWntを含む。本明細書中で使用される場合、「活性なWnt(活性化Wnt)」は、標準的なβ-カテニンシグナル伝達を活性化するWntである。
【0036】
sFRP
sFRPは、任意のsFRPタンパク質又はsFRPタンパク質の組み合わせを含み得る。sFRPは例えば、sFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0037】
一部の実施形態では、sFRPは真核生物sFRPを含む。sFRPは、例えば、哺乳動物、両生類(例えば、アフリカツメガエル)、鳥類(例えば、ニワトリ)、又は魚類(例えば、ゼブラフィッシュ)を含む任意の適切な真核生物由来のsFRPであり得る。一部の実施形態では、sFRPは、好ましくは哺乳動物sFRPを含む。哺乳動物sFRPは、例えば、ヒトsFRP、マウスsFRP、ラットsFRP、ウマsFRP、イヌsFRP、ヤギsFRP、ウシsFRPなどを含み得る。
【0038】
一部の実施形態では、sFRPは、タグ付きsFRPを含む。sFRPは、任意の適切なタンパク質タグ(例えば、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、赤血球凝集素(HA)タグ、Fcタグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ、蛍光タグ(例えば、GFPタグ、YFPタグ、BFPタグを含む)などを含む)でタグ付けされ得る。一部の実施形態では、タグはC末端であってもよく、一部の実施形態ではタグはN末端であってもよい。
【0039】
単離されたタンパク質複合体及び組成物
一部の態様において、本開示は、Wnt及びsFRPを含む単離されたタンパク質複合体について示す。一部の実施形態では「単離されたタンパク質複合体」は、天然に見られるものとは異なる組成物又は環境、すなわち天然又は本来の細胞又は身体環境に見出されるものとは異なる、組成物又は環境に存在するタンパク質複合体を意味する。「単離されたタンパク質複合体」は、他の天然に共存する細胞又は組織成分の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、又は少なくとも95%から単離され得る。「単離されたタンパク質複合体」は、人工生成物及び/又は非天然宿主細胞中に天然に存在するタンパク質複合体を含み得る。一部の実施形態では「単離されたWnt/sFRPタンパク質複合体」は、非天然に高レベルの組換えWnt及びsFRPを発現するように操作された細胞から単離されたWnt/sFRP複合体を含み得る。一部の実施形態では、細胞は、非天然宿主細胞を含んでもよく、及び/又は、細胞は、細胞のゲノムに組み込まれた非天然DNAを含んでもよい。
【0040】
一部の実施形態において、単離されたタンパク質複合体は、好ましくは実質的に界面活性剤を含まない。界面活性剤を「実質的に含まない」単離されたタンパク質複合体は、単離されたタンパク質複合体中のWntの活性又は作用に実質的に影響を及ぼすのに十分な界面活性剤を含まない。一部の実施形態では、「界面活性剤を実質的に含まない」とは、2%重量/体積(w/v)未満、1%(w/v)未満、0.5%(w/v)未満、0.1%(w/v)未満、又は0.01%(w/v)未満の界面活性剤を含むことを意味する。一部の実施形態では、界面活性剤は、双性イオン性及び/又は両性の界面活性剤を含む。一部の実施形態において、界面活性剤は、CHAPS(3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホネートとも呼ばれる)、CHAPSO (3-([3-コラミドプロピル] ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネートとも呼ばれる)、Triton-X-100、Tween 20、Tween 80、SDS、デオキシコール酸塩、コール酸塩、サルコシル、DDM、ジギトニン及び尿素のうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、界面活性剤はCHAPSを含む。
【0041】
別の態様では、本開示は、Wntを含む組成物を示す。組成物は、好ましくは実質的に界面活性剤を含まない。界面活性剤を「実質的に含まない」組成物は、組成物中のWntの活性又は作用に実質的に影響を及ぼすのに十分な界面活性剤を含まない。
【0042】
いくつかの実施形態において、単離されたタンパク質複合体又は組成物のWntは、好ましくは活性なWntを含む。本明細書中で使用される場合、「活性なWnt(活性化Wnt)」は、標準的なβ-カテニンシグナル伝達を活性化するWntである。
【0043】
標準的なβ-カテニンシグナル伝達は、当業者に公知の任意の方法を使用して測定され得る。例えば、標準的なβ-カテニンシグナル伝達は、β-カテニン、LRP5、LRP6、GSK3B、アキシン、及び/又はディシブルドのWnt媒介性のリン酸化のアッセイによって測定され得る。リン酸化は、ウェスタンブロットを用いて測定することができる。自己分泌及び傍分泌C57MG細胞、細胞形質転換アッセイ、並びにアフリカツメガエル(Xenopus laevis)又はゼブラフィッシュにおける胚軸の重複もまた、Wnt媒介性の標準的なβ-カテニン活性について試験するための確立されたアッセイである。(例えば、Shimizu et al., Cell Growth Differ. 1997, 8(12):1349-58; Wong et al., Mol. Cell. Biol. 1994, 14(9):6278-86; McMahon and Moon, Cell. 1989, 58(6):1075-1084; Lustig et al., Mol. Cell. Biol. 2002, 22(4):1184-93; Tamai et al., Mol. Cell. 2004, 13(1):149-156; Van Noort et al., J Biol Chem. 2002, 277(20):17901-17905; Molenaar et al., Cell. 1996, 86(3):391-399; Klein and Melton, Proc Natl Acad Sci USA 1996, 93(16):8455-8459を参照のこと)。
【0044】
一部の実施形態において、標準的なβ-カテニンシグナル伝達は、実施例1に記載されるHEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを含む、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを使用して測定され得る。一部の実施形態では、活性なWntを含むタンパク質複合体は、SEAPレポーターアッセイを用いて測定した場合、Wntを含まない複合体よりも2倍以上高いWntレポーター活性を有する。一部の実施形態では、活性なWntを含む組成物は、SEAPレポーターアッセイを用いて測定した場合、Wntを含まない組成物よりも2倍以上高いWntレポーター活性を有する。
【0045】
一部の実施形態において、活性なWnt又は単離されたタンパク質複合体は、本明細書に記載されるように、例えば、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt レポーターアッセイを使用して測定した場合、1000ng/mL未満、500ng/mL未満、100ng/mL未満、50ng/mL未満、40ng/mL未満、30ng/mL未満、20ng/mL未満、15ng/mL未満、10ng/mL未満、8ng/mL未満、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満、又は2ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す。
【0046】
一部の実施形態では、活性Wnt又は単離されたタンパク質複合体は、本明細書に記載されるように、例えば、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを使用して測定した場合、少なくとも2ng/mL、少なくとも3ng/mL、少なくとも4ng/mL、少なくとも5ng/mL、少なくとも8ng/mL、少なくとも10ng/mL、少なくとも15ng/mL、少なくとも20ng/mL、少なくとも30ng/mL、少なくとも40ng/mL、少なくとも50ng/mL、少なくとも100ng/mL、又は少なくとも500ng/mLの50%有効量(ED50)を示す。
【0047】
一部の実施形態において、単離されたタンパク質複合体又は組成物は、Wnt-sFRP融合タンパク質を含み得る。一部の実施形態において、Wntは、例えばペプチドリンカーを含むリンカーを介してsFRP1に融合され得る。任意の適切なリンカーが使用され得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、GSGSG(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)及びGSGSGGSGSG (配列番号5)のうちの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、(GGGS)x(配列番号6)、(GGGGS) x(配列番号7)、(GSGSG) x(配列番号8)、(GSGSGGSGSG) x (配列番号9)及び/又はGx(ここで、X=1~400)を含む、上記のペプチドリンカーうちの1つ以上の複数の反復を含み得る。
【0048】
一部の実施形態において、単離されたタンパク質複合体又は組成物は、例えば、R-スポンジン 1、R-スポンジン 2、R-スポンジン 3及びR-スポンジン 4の少なくとも1つを含むR-スポンジンファミリーのメンバーを含んでいてもよい。
【0049】
一部の実施形態において、R-スポンジンは、sFRP1及び/又はWntに融合されて、融合タンパク質を形成していてもよい。一部の実施形態では、R-スポンジンは、例えばペプチドリンカーを含むリンカーを介して、sFRP1及び/又はWntに融合されてもよい。任意の適切なリンカーが使用され得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、GSGSG(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)、及びGSGSGGSGSG (配列番号5)のうちの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、例えば、(GGGS)x(配列番号6)、(GGGGS) x(配列番号7)、(GSGSG) x(配列番号8)、(GSGSGGSGSG)x(配列番号9)及び/又はGx(ここで、X=1~400)を含む、上記のペプチドリンカーうちの1つ以上の複数の反復を含み得る。
【0050】
一部の実施形態において、単離されたタンパク質複合体又は組成物は、リポカリン7を含み得る。一部の実施形態において、単離されたタンパク質複合体又は組成物は、WIF1を含み得る。
【0051】
生成方法
さらなる態様では、本開示は、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成すること、及びWntを単離することを含む方法を示す。一部の実施形態において、Wntは、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成する前に単離され得る。一部の実施形態において、Wntは、Wnt及びsFRPを含む複合体から単離され得る。一部に実施形態において、WntがWnt及びsFRPを含む複合体から単離される場合を含み、Wntは、好ましくは界面活性剤を使用せずに単離され得る。
【0052】
一部の実施形態において、例えば、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成する前にWntが単離される場合を含み、Wntを単離することは、界面活性剤を使用することを含み得る。界面活性剤としては、例えば、CHAPSを挙げることができる。一部の実施形態では、方法は、Wnt及びsFRPを含む複合体から界面活性剤を除去することをさらに含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、Wntを単離することは、水性精製手順を含み得る。いくつかの実施形態において、Wntを単離することは、クロマトグラフィー分離を含み得る。クロマトグラフィー分離は、例えば、SEPHAROSEカラムを使用する分離を含み得る。
【0054】
一部の実施形態では、方法は、Wnt及びsFRPのうちの少なくとも1つを生成及び/又は発現することを含み得る。一部の実施形態において、Wnt及び/又はsFRPは、過剰発現され得る。Wnt及び/又はsFRPは、哺乳動物細胞、酵母、細菌、昆虫細胞(S2、Sf9、Sf21)、又は他の細胞において、適切なプロモーターの制御下で発現され得る。また、無細胞翻訳系も、RNAを使用してWnt及び/又はsFRPを生成するために使用され得る。原核生物宿主及び真核生物宿主と共に使用するための適切なクローニング及び発現ベクターは、例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に開示される。
【0055】
一部の実施形態では、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成することは、Wnt発現細胞をsFRP発現細胞と共培養することを含み得る。一部の実施形態では、Wnt及びsFRPを含む複合体を形成することは、Wnt発現細胞をsFRP発現細胞と共培養することを含み得る。
【0056】
一部の実施形態では、方法は、Wnt及びsFRPを発現する細胞から、又はWnt発現細胞とsFRP発現細胞との共培養物から、馴化培地を単離することを含み得る。一部の実施形態では、方法は、Wnt及びsFRPを含む複合体を、馴化培地から単離することをさらに含み得る。
【0057】
使用方法
別の態様において、本開示は、本明細書中に示すように、単離されたタンパク質複合体を使用する方法を示す。例えば、単離されたタンパク質複合体、本明細書中に記載される単離されたWnt及び/又は組成物は、培地添加剤として使用され得る。一部の実施形態において、培地添加剤は、例えば、幹細胞培養物又はオルガノイド培養物を含む細胞培養物において使用され得る。一部の実施形態において、本明細書に示される単離されたタンパク質複合体、単離されたWnt及び/又は組成物は、疾患モデルにおいて使用され得る。一部の実施形態において、本明細書中に記載される単離されたタンパク質複合体、単離されたWnt及び/又は組成物は、例えば、胚性幹細胞又は誘導された多能性幹細胞を含む細胞の分化を指向するために使用され得る。細胞は、例えば、ニューロン、神経外胚葉、心筋細胞、間葉幹細胞、及び/又は間葉誘導体を含む任意の所望の細胞型に分化され得る(例えば、Lam et al., 2014, Semin Nephrol, 34(4):445-461; Spence et al., 2011, Nature, 470:105-109; Paige et al., 2010, PLoS One 5(6):e11134. doi: 10.1371/journal.pone.0011134; Murashov et al., 2004 FASEB 19(2):252-4を参照のこと)。
【0058】
例示的な実施形態
単離されたタンパク質複合体の実施形態
1.Wnt及びsFRPを含む単離されたタンパク質複合体。
2.Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11 及びWnt16のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1の単離されたタンパク質複合体。
3.Wntが、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及びWnt10aのうち、少なくとも1つを含む、実施形態1又は2の単離されたタンパク質複合体。
4.sFRPが、sFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
5.Wntが活性なWntを含む、実施形態1~4のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
6.活性なWntが、β-カテニンシグナル伝達を活性化するWntを含む、実施形態5の単離されたタンパク質複合体。
7.活性なWntが、分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いて測定される、Wntレポーター活性を有するWntを含む、実施形態5又は6の単離されたタンパク質複合体。
8.単離されたタンパク質複合体が、SEAPレポーターアッセイを用いて測定した場合に、Wntを含まない単離されたタンパク質複合体よりも2倍以上のWntレポーター活性を有する、実施形態7の単離されたタンパク質複合体。
9.タンパク質複合体が、実質的に界面活性剤を含まない、実施形態1~8のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
10.タンパク質複合体が、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いて測定した場合に、1000 ng/mL未満、500 ng/mL未満又は100 ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、実施形態1~9のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
11.Wntが哺乳動物Wntを含む、実施形態1~10のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
12.WntがヒトWnt又はマウスWntを含む、実施形態1~11のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
13.sFRPが哺乳動物sFRPを含む、実施形態1~12のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
14.sFRPがヒトsFRP又はマウスsFRPを含む、実施形態1~13のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
15.sFRPがタグ付けされたsFRPを含む、実施形態1~14のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
16.タグ付けされたsFRPが、ヒスチジンでタグ付けされたsFRPを含む、実施形態15の単離されたタンパク質複合体。
17.タグ付けされたsFRPが、C末端がタグ付けされたsFRPを含む、実施形態15又は16の単離されたタンパク質複合体。
18.Wntがタグ付けされたWntを含む、実施形態1~17のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
19.タグ付けされたWntが、ヒスチジンでタグ付けされたWntを含む、実施形態18の単離されたタンパク質複合体。
20.タグ付けされたWntが、C末端がタグ付けされたWntを含む、実施形態18又は19の単離されたタンパク質複合体。
21.複合体が、Wnt-sFRP融合タンパク質を含む、実施形態1~20のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
22.Wnt-sFRP融合タンパク質がリンカーを含む、実施形態21の単離されたタンパク質複合体。
23.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態22の単離されたタンパク質複合体。
24.単離されたタンパク質が、R-スポンジン 1、R-スポンジン 2、 R-スポンジン 3 及び R-スポンジン 4のうち少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~23のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
25.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、sFRP1と融合して融合タンパク質を形成する、実施形態24の単離されたタンパク質複合体。
26.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3 及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してsFRPと融合する、実施形態25の単離されたタンパク質複合体。
27.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態26の単離されたタンパク質複合体。
28.融合タンパク質が、さらにWntを含む、実施形態25~27のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
29.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち、少なくとの1つがWntと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態24又は実施形態28の単離されたタンパク質複合体。
30.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してWntと融合する、実施形態29の単離されたタンパク質複合体。
31.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態30の単離されたタンパク質複合体。
32.ペプチドリンカーが、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)、及びGSGSGGSGSG(配列番号5)のうち、少なくとも1つを含む、実施形態23、27又は31のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
33.単離されたタンパク質複合体が、リポカリン7をさらに含む、実施形態1~32のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
34.単離されたタンパク質複合体が、WIF1をさらに含む、実施形態1~33のいずれかの単離されたタンパク質複合体。
35.実施形態1~34のいずれかの単離されたタンパク質複合体を使用する方法。
【0059】
Wnt組成物の実施形態
1.組成物が、実質的に界面活性剤を含まない、Wntを含む組成物。
2.Wntが活性なWntを含む、実施形態1の組成物。
3.Wntが活性なWntを含む、Wntを含む組成物。
4.活性なWntが標準的なβカテニンシグナル伝達を活性化するWntを含む、実施形態2又は3の組成物。
5.活性なWntが、分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いて測定される、Wntレポーター活性を有するWntを含む、実施形態2又は3の組成物。
6.単離されたタンパク質複合体が、SEAPレポーターアッセイを用いて測定した場合に、Wntを含まない単離されたタンパク質複合体よりも2倍以上のWntレポーター活性を有する、実施形態5の組成物。
7.Wntが、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いて測定した場合に、1000 ng/mL未満、500 ng/mL未満又は100 ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、実施形態2~6のいずれかの組成物。
8.Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~7のいずれかの組成物。
9.Wntが、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及び Wnt10aのうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~8のいずれかの組成物。
10.Wntが哺乳動物Wntを含む、実施形態1~9のいずれかの組成物。
11.WntがヒトWnt又はマウスWntを含む、実施形態1~10のいずれかの組成物。
12.組成物が、sFRPをさらに含む、実施形態1~11のいずれかの組成物。
13.sFRPがsFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4 及びsFRP5のうち少なくとも1つを含む、実施形態12の組成物。
14.組成物が、Wnt-sFRP融合タンパク質を含む、実施形態12又は13の組成物。
15.Wnt-sFRP融合タンパク質がリンカーを含む、実施形態14の組成物。
16.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態15の組成物。
17.sFRPが哺乳動物sFRPを含む、実施形態12~15のいずれかの組成物。
18.sFRPがヒトsFRP又はマウスsFRPを含む、実施形態12~17のいずれかの組成物。
19.sFRPがタグ付けされたsFRPを含む、実施形態12~18のいずれかの組成物。
20.タグ付けされたsFRPがヒスチジンでタグ付けされたsFRPを含む、実施形態19の組成物。
21.タグ付けされたsFRPが、C末端がタグ付けされたsFRPを含む、実施形態20又は21の組成物。
22.Wntがタグ付けされたWntを含む、実施形態1~21のいずれかの組成物。
23.タグ付けされたWntが、ヒスチジンでタグ付けされたWntを含む、実施形態22の組成物。
24.タグ付けされたWntが、C末端がタグ付けされたWntを含む、実施形態22又は23の組成物。
25.組成物が、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン 4のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~24のいずれかの組成物。
26.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち、少なくとも1つがWntと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態25の組成物。
27.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち、少なくとも1つがペプチドリンカーを介してWntを融合する、実施形態23の組成物。
28.組成物がsFRPを含み、Wnt、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち、少なくとも1つがsFRPと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態25~27のいずれかの組成物。
29.Wnt、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち、少なくとも1つがペプチドリンカーを介していsFRPと融合する、実施形態28の組成物。
30.ペプチドリンカーが、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)及びGSGSGGSGSG(配列番号5)のうち、少なくとも1つを含む、実施形態16、27又は29の組成物。
31.組成物が、さらにリポカリン7を含む、実施形態1~30のいずれかの組成物。
32.組成物が、さらにWIF1を含む、実施形態1~31のいずれかの組成物。
33.実施形態1~32のいずれかの組成物を使用する方法。
【0060】
細胞の実施形態
1.Wnt及びsFRPを過剰発現する細胞。
2.Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1の細胞。
3.Wntが、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及びWnt10aのうち、少なくとも1つを含む、実施形態1又は2の細胞。
4.sFRPがsFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうち少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれかの細胞。
5.Wntが活性なWntを含む、実施形態1~4のいずれかの細胞。
6.活性なWntが、β-カテニンのシグナル伝達を活性化するWntを含む、実施形態5の細胞。
7.Wntが、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いて測定した場合に、1000 ng/mL未満、500 ng/mL未満,又は100 ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、実施形態1~6のいずれかの細胞。
8.Wntが、哺乳動物Wntを含む、実施形態1~7のいずれかの細胞。
9.WntがヒトWnt又はマウスWntを含む、実施形態1~8のいずれかの細胞。
10.sFRPが哺乳動物sFRPを含む、実施形態1~9のいずれかの細胞。
11.sFRPが、ヒトsFRP又はマウスsFRPを含む、実施形態1~10のいずれかの細胞。
12.sFRPがタグ付けされたsFRPを含む、実施形態1~11のいずれかの細胞。
13.タグ付けされたsFRPが、ヒスチジンでタグ付けされたsFRPを含む、実施形態12の細胞。
14.タグ付けされたsFRPが、C末端がタグ付けされたsFRPを含む、実施形態12又は13の細胞。
15.Wntが、タグ付けされたWntを含む、実施形態1~14のいずれかの細胞。
16.Wntが、ヒスチジンでタグ付けされたWntを含む、実施形態15の細胞。
17.Wntが、C末端がタグ付けされたWntを含む、実施形態15又は16の細胞。
18.細胞が、Wnt-sFRP融合タンパク質を発現する、実施形態1~17のいずれかの細胞。
19.Wnt-sFRP融合タンパク質がリンカーを含む、実施形態18の細胞。
20.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態19の細胞。
21.細胞が、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つをさらに発現する実施形態1~20のいずれかの細胞。
22.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つがsFRPと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態21の細胞。
23.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してsFRPと融合する、実施形態22の細胞。
24.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態23の細胞。
25.融合タンパク質が、さらにWntを含む、実施形態22~27のいずれかの細胞。
26.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つがWntと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態21又は25の細胞。
27.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してWntと融合する、実施形態26の細胞。
28.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態27の細胞。
29.ペプチドリンカーが、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)及び GSGSGGSGSG(配列番号5)のうち、少なくとも1つを含む、実施形態20、24又は28の細胞。
30.実施形態1~29のいずれかの細胞を用いる方法。
【0061】
細胞組成物の実施形態
1.Wntを過剰発現する細胞:及び
sFRPを過剰発現する細胞、
を含む組成物。
2.Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1の組成物
3.Wntが、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及びWnt10aのうち、少なくとも1つを含む、実施形態1又は2の組成物。
4.sFRPがsFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうち少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれかの組成物。
5.Wntが活性なWntを含む、実施形態1~4のいずれかの組成物。
6.活性なWntが、β-カテニンのシグナル伝達を活性化するWntを含む、実施形態5の組成物。
7.Wntが、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いて測定した場合に、1000 ng/mL未満、500 ng/mL未満又は100 ng/mL未満の50%有効量(ED50)を示す、実施形態1~6のいずれかの組成物。
8.Wntが、哺乳動物Wntを含む、実施形態1~7のいずれかの組成物。
9.WntがヒトWnt又はマウスWntを含む、実施形態1~8のいずれかの組成物。
10.sFRPが哺乳動物sFRPを含む、実施形態1~9のいずれかの組成物。
11.sFRPがヒトsFRP又はマウスsFRPを含む、実施形態1~10のいずれかの組成物。
12.sFRPがタグ付けされたsFRPを含む、実施形態1~11のいずれかの組成物。
13.タグ付けされたsFRPが、ヒスチジンでタグ付けされたsFRPを含む、実施形態12の組成物。
14.タグ付けされたsFRPが、C末端がタグ付けされたsFRPを含む、実施形態12又は13の組成物。
15.Wntがタグ付けされたWntを含む、実施形態1~14のいずれかの組成物。
16.タグ付けされたWntが、ヒスチジンでタグ付けされたWntを含む、実施形態15の組成物。
17.タグ付けされたWntが、C末端がタグ付けされたWntを含む、実施形態15又は16の組成物。
18.組成物が、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~17のいずれかの組成物。
19.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、sFRPと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態18の組成物。
20.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してsFRPと融合する、実施形態19の組成物。
21.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態20の組成物。
22.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、Wntと融合して融合タンパク質を形成する、実施形態18の組成物。
23.R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4のうち少なくとも1つが、リンカーを介してWntと融合する、実施形態22の組成物。
24.リンカーがペプチドリンカーを含む、実施形態23の組成物。
25.ペプチドリンカーが、GGGS(配列番号1)、GGGGS(配列番号2)、(配列番号3)、GGGGG(配列番号4)及び GSGSGGSGSG(配列番号5)のうち、少なくとも1つを含む、実施形態21又は24の組成物。
26.Wntを過剰発現する細胞及びsFRPを過剰発現する細胞のうち少なくとも1つが、プラスミドによって形質転換される、実施形態1~25のいずれかの組成物。
27.実施形態1~26のいずれかの細胞を使用する方法。
【0062】
方法の実施形態
1.WntとsFRPを含む複合体を形成する工程;及び
Wntを単離する工程、
を含む、方法。
2.Wntを単離する工程が、水性精製手順を含む、実施形態1の方法。
3.Wntを単離する工程が、クロマトグラフィー精製を含む、実施形態1又は2の方法。
4.方法が、Wntを過剰発現する工程をさらに含む、実施形態1~3のいずれかの方法。
5.方法が、sFRPを過剰発現する工程をさらに含む、実施形態1~4のいずれかの方法。
6.WntとsFRPを含む複合体を形成する工程が、Wnt発現細胞をsFRP発現細胞と共培養する工程を含む、実施形態1~5のいずれかの方法。
7.WntとsFRPを含む複合体が、Wntを単離する工程の後で形成される、実施形態1~6のいずれかの方法。
8.Wntを単離する工程が、界面活性剤の使用を含む、実施形態1~7のいずれかの方法。
9.WntとsFRPを含む複合体が、Wntを単離する工程の前に形成される、実施形態1~7のいずれかの方法。
10.Wntを単離する工程が、界面活性剤の使用を含まない、実施形態1~7又は9のいずれかの方法。
11.Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~10のいずれかの方法。
12.Wntが、Wnt3a、Wnt5a、Wnt5b、Wnt8a及びWnt10aのうち、少なくとも1つを含む、実施形態1~11のいずれかの方法。
13.sFRPがsFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうち少なくとも1つを含む、実施形態1~12のいずれかの方法。
14.Wmtが、哺乳動物Wntを含む、実施形態1~13のいずれかの方法。
15.Wntが、ヒトWnt又はマウスWntを含む、実施形態1~14のいずれかの方法。
16.sFRPが、哺乳動物sFRPを含む、実施形態1~15のいずれかの方法。
17.sFRPが、ヒトsFRP又はマウスsFRPを含む、実施形態1~16のいずれかの方法。
18.sFRPがタグ付けされたsFRPを含む、実施形態1~17のいずれかの方法。
19.タグ付けされたSFRPが、ヒスチジンでタグ付けされたsFRPを含む、実施形態18の方法。
20.タグ付けされたsFRPが、C末端がタグ付けされたsFRPを含む、実施形態18又は19の方法。
21.Wntが、タグ付けされたWntを含む、実施形態1~20のいずれかの方法。
22.タグ付けされたWntが、ヒスチジンでタグ付けされたWntを含む、実施形態21の方法。
23.タグ付けされたWntが、C末端がタグ付けされたWntを含む、実施形態21又は22の方法。
24.複合体が、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3、R-スポンジン4、リポカリン7及び WIF1のうち少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~23のいずれかの方法。
25.方法が、Wntを発現する細胞を培養する工程を含む、実施形態1~24のいずれかの方法。
26.方法が、sFRPを発現する細胞を培養する工程を含む、実施形態1~25のいずれかの方法。
27.Wntを過剰発現する細胞及びsFRPを過剰発現する細胞が共培養される、実施形態26の方法。
28.方法が、WntとsFRPを発現する細胞を培養する工程を含む、実施形態1~27のいずれかの方法。
29.方法が、馴化培地を単離する工程をさらに含む、実施形態25~28のいずれかの方法。
30.方法が、馴化培地からWntとsFRPを含む複合体を単離する工程を含む、実施形態29の方法。
31.方法が、WntとsFRPを含む複合体から界面活性剤を除去する工程をさらに含む、実施形態1~30のいずれかの方法。
32.方法が、複合体を培地添加物として使用する工程をさらに含む、実施形態1~31のいずれかの方法。
33.方法が、複合体を幹細胞培地又はオルガネラ培地に添加する工程をさらに含む、実施形態1~32のいずれかの方法。
【0063】
本発明を以下の実施例により説明する。特定の例、材料、量、及び手順は、本明細書に記載される本発明の範囲及び精神に従って広く解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【実施例
【0064】
実施例1
本実施例は、界面活性剤の使用を除外し、組換えWntタンパク質の活性を維持する、Wntタンパク質を精製する方法を開示する。方法は、Wntに結合するsFRPを共発現する工程を含む。理論に束縛されることを意図しないが、sFRPは水性環境からWntタンパク質の脂質修飾を保護すると考えられる。本明細書中に提示されるデータはまた、sFRPがWntを産生する細胞の馴化培地中の活性なWntと複合体を形成し、その量を増強するために使用され得ることを実証する。
【0065】
方法
細胞培養及び細胞の形質転換
CHO、CHO mWnt-1、CHO mFRP-1、CHO mWnt-1/msFRP-1及びCHO mWnt-1/msFRP-1/msFRP-1-Hisを含むすべての細胞株を、2ミリモル(mM)のL-グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)、並びに適切な選択用抗生物質(Puromycin、G418、及び/又はHygromycin;すべてThermoFisher Scientific、Waltham、MAから入手)を含むIMDM(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)中で培養した。細胞を、Lipofectamine 2000試薬(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、製造者の指示に従って、発現プラスミドで形質転換した。
【0066】
5×104細胞を12ウェルディッシュに播種し、37℃、5% CO2の培養条件で4日間培養して、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt Reporterアッセイ及びウェスタンブロットのための馴化培地を得た。馴化培地(すなわち、上清)を回収し、細胞残屑を遠心分離によって除去した。
【0067】
HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wnt レポーターアッセイ
分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)の上流の全長ヒトLRP5、全長ヒトFZ4、及び9×T細胞因子DNA結合部位(TCF9)を発現するクローン性HEK293細胞を96ウェルプレートに播種し、37℃+5% CO2で一晩培養した。次いで、細胞を、馴化培地又はタンパク質のいずれかで18時間処理した。内因性アルカリフォスファターゼの熱で不活性化させた後、各ウェルからの馴化培地10マイクロリットル(μL)を、50μLのSEAP Reporter Assay Buffer/Substrate(0.1M Tris-HCl、pH 9.0、0.1mM DiFMUP(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA))と混合し、暗所、室温で15分間~30分間インキュベートした。SEAP活性を、マイクロプレートリーダー(Spectra Max Gemini EM, Molecular Devices, LLC, Sunnyvale, CA)上で、励起波長350ナノメートル(nm)、発光波長450nm、及びカットオフ波長435nmの条件下で測定した。
【0068】
ウェスタンブロット分析
馴化培地又は組換えタンパク質を、2×還元サンプル緩衝液(20mMジチオトレイトール、6% SDS、0.25モル(M)トリス、pH 6.8、10%グリセロール、10mM NaF及びブロモフェニルブルー)中で溶解し、95℃で3分間変性させ、4~20%SDS-PAGEゲル上で分離した。ゲルをPVDFメンブレン(Millipore, Billerica, MA)に移し、5%脱脂粉乳を含むブロッキング緩衝液(25mM Tris、pH 7.4、0.15 M NaCl、0.1% Tween-20)中、4℃で一晩、一次抗体と共にインキュベートした。十分に洗浄した後、ブロッキング緩衝液中でメンブレンを二次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。免疫標識は、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)を用いた化学発光反応によって検出した。ウェスタンブロッティングに使用した抗体は以下の通りであった; Gt x mWnt-1,1μg/mL(カタログ番号AF1620, Bio-Techne, Minneapolis, MN):Gt x hsFRP-1,1μg/mL(カタログ番号AF1384, Bio-Techne, Minneapolis, MN):Dk x Gt IgG、HRP、1:1000希釈(カタログ番号HAF109, Bio-Techne, Minneapolis, MN)。
【0069】
mWnt1及びmsFRP1の免疫沈降
5×104のCHO mWnt-1/msFRP1細胞を12ウェルディッシュに播種し、インキュベーター中、37℃、5% CO2で4日間培養した。馴化培地を回収し、細胞残屑を遠心分離によって除去した。まず、馴化培地500μLを免疫沈降抗体と共に4℃で2時間~4時間インキュベートし、次いで50μLのプロテインG-アガロースビーズ(Pierce Protein Biology / ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)を添加し、2時間インキュベートした。結合した免疫複合体を回収し、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)で3回洗浄した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDFメンブレンに移してウェスタンブロット分析に供した。免疫沈殿及びウェスタンブロッティングに使用した抗体は、以下の通りであった;Gt x mWnt-1, 1μg/mL (カタログ番号 AF1620, Bio-Techne, Minneapolis, MN): Ms x His, 1μg/mL (カタログ番号MAB050R, Bio-Techne, Minneapolis, MN): Dk x Gt IgG, HRP, 1:1000 希釈 (カタログ番号 HAF109, Bio-Techne, Minneapolis, MN:Gt x Ms IgG, HRP (カタログ番号HAF007, Bio-Techne, Minneapolis, MN)。
【0070】
CHO mWnt2b/msFRP1馴化培地の免疫沈降
5×104のCHO mWnt2b/msFRP1細胞を12ウェルディッシュに播種し、インキュベーター中で、37℃、5% CO2で4日間培養した。馴化培地を回収し、細胞残屑を遠心分離によって除去した。まず、馴化培地500μLを免疫沈降抗体と共に4℃で2時間~4時間インキュベートし、次いで50μLのプロテインG-アガロースビーズ(Pierce Protein Biology / ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を添加し、2時間インキュベートした。結合した免疫複合体を回収し、DPBSで3回洗浄した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDFメンブレンに移してウェスタンブロット分析に供した。免疫沈降及びウェスタンブロッティングに使用した抗体は以下の通りであった; Gt x mWnt2b, 1μg/mL (カタログ番号 AF3900, Bio-Techne, Minneapolis, MN): Gt x hsFRP-1, 1μg/mL (カタログ番号 AF1384 Bio-Techne, Minneapolis, MN): Dk x Gt IgG, HRP, 1:1000 希釈 (カタログ番号 HAF109, Bio-Techne, Minneapolis, MN)。
【0071】
Wnt発現細胞のmsFRP発現細胞との共培養
5×104 Wnt発現細胞を12ウェルディッシュに播種し、37℃、5% CO2のインキュベーターで3日間培養した。2×105のmsFRP発現細胞をWnt発現細胞に添加し、1日間共培養した。馴化培地を回収し、HEK293 Wntレポーター細胞に適用した。
【0072】
CHO mWnt-1細胞のsFRP-1タンパク質による処理
12ウェルプレートに、0.6ミリリットル(mL)の培養液中の4×105 CHO mWnt-1細胞を播種した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、次いで、50μg/mLから開始して1:2で連続希釈したmsFRP-1タンパク質処理液を添加した。24時間後、レポーター細胞を添加する前に、5分間遠心分離して細胞残屑を除去し、馴化培地を回収した。
【0073】
マウスWnt-1/マウスsFRP複合体の精製
マウスWnt-1及びマウスsFRP1を同時発現したCHO細胞からの馴化培地を、20mM MOPS、0.1M NaCl、pH 6.8で平衡化したSPセファロースFast Flowカラム(GE Healthcare、Chicago、IL)にロードした。直線勾配の高塩緩衝液(20mM MOPS、1.6M NaCl、pH 6.8)を用いて、結合したタンパク質を溶出した。SDS-PAGEの銀染色を用いて、マウスsFRP1の溶出(~37kDa)をモニタリングし、抗マウスWnt-1で捕捉したウェスタンブロットを用いて、マウスWnt-1の溶出(~40kDa)をモニタリングした。Wnt-1及びsFRP1の両方を含むタンパク質ピークを収集した。濃縮後、プールしたピークをSuperdex-200カラム(GE Healthcare、Chicago、IL)にロードして、遊離sFRP1からWnt-1/sFRP1複合体を分離し、前の工程と同様にSDS-PAGE銀染色及びウェスタンブロットの両方によってモニタリングした。
【0074】
Wnt3a/sFRP ELISA結合アッセイ
96ウェル組織培養プレートをPBS中1% BSAでブロックし、溶液中結合プレートとして使用した。 100ng/mL組換えマウス(rm)Wnt3aビオチン化タンパク質及びsFRP(1:3連続希釈)を含有する総体積120μLの溶液を、結合プレート中で4℃、一晩インキュベートした。次いで、100μLの結合溶液を、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルELISAプレートに移し、4℃で一晩インキュベートし、続いてHRPを検出した。マウスsFRP1はヤギ抗マウスsFRP1抗体で検出され、マウスsFRP2及びマウスsFRP3はHisでタグ付けされてマウス抗His抗体で検出され、マウスsFRP4はヒツジ抗マウスsFRP4抗体で検出され、HAでタグ付けされたマウスsFRP5はマウス抗HAペプチドで検出された。抗HRP二次抗体を使用して、一次抗体を検出し、続いて比色測定の読取りを行った。
【0075】
結果
マウスsFRP1(msFRP1)又はマウスsFRP1-His(msFRP1-His)の発現がCHO細胞の馴化培地(CM)中のマウスWnt1(mWnt1)の量を増強するかどうかを測定するために、mWnt1、msFRP1、mWnt1及びmsFRP1、並びにmWnt1及びmsFRP1-Hisを発現する安定なクローン株を作成した。馴化培地のウェスタンブロット分析は、mWnt1のmsFRP1又はmsFRP1-Hisとの同時発現によって、CHO、CHO mWnt1又はCHO msFRP1の馴化培地と比較して、馴化培地において有意に高いレベルのmWnt1が得られることを実証した(図1A)。また、msFRP1を過剰発現するCHO細胞では、CHO又はCHO mWnt1の馴化培地中のmsFRP1レベルと比較して、より高いレベルのmsFRP1が明らかに見られた(図1A)。
【0076】
図1Aのウェスタンブロット分析で使用したものと同じ馴化培地を、ヒトFrizzled4 (hFz4) 及びヒトLRP5 (hLRP5)を発現するHEK293 Wnt レポーター株でも試験した(本明細書では、HEK293 hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを行うともいう)。CHO細胞からの馴化培地は、mWnt1がmsFRP1又はmsFRP1-Hisと同時発現された場合にのみ、Wntレポーターの活性化をもたらした(図1B)。野生型CHO、CHO mWnt1、及びCHO msFRP1の馴化培地は、Wntレポーターをバックグラウンドを超えるレベルで活性化しなかった。これらのデータは、mWnt1及びmsFRP1又はmsFRP1-Hisの両方を発現する細胞の馴化培地において、より高いレベルの活性なmWnt1を生じるmsFRP1又はmsFRP1-Hisの過剰発現と一致する(図1)。
【0077】
WntとsFRPが複合体中で互いに結合できるかどうかを試験するために、mWnt1とmsFRP1の相互作用を試験した。免疫沈降実験は、mWnt1及びmsFRP1-Hisが複合体中で結合することを実証した(図2)。抗Wnt1抗体を用いた免疫沈降及び抗His抗体を用いたブロッティングでは、37kDaのバンド(msFRP1-Hisと推察されるサイズ)が検出された(図2、レーン2)。抗His抗体を用いた免疫沈降及び抗Wnt1抗体を用いたブロッティングでは、42kDaのバンド(mWnt1と推察されるサイズ)が検出された(図2、レーン5)。これらのデータは、mWnt1及びmsFRP1が、mWnt1及びmsFRP1の両方を発現するCHO細胞の馴化培地中の複合体中で互いに結合していることを示唆する。
【0078】
マウスsFRP1(msFRP1)が、マウスWnt2b(mWnt2b)及びmsFRP1の両方を発現するCHO条件培地中でmWnt2bに結合するかどうかを試験した。免疫沈降実験は、抗Wnt2b、抗hsFRP1、又は抗体を含まない対照を、mWnt2b単独又はmWnt2b及びmsFRP1を過剰発現する等量のCHO細胞(クローン18)の馴化培地に添加することによって行った。図2Bは、抗mWnt2b抗体による免疫沈降とその後の抗hsFRP1抗体によるブロッティングで約35kDaのsFRPタンパク質が検出され(図2B中の矢印)、mWnt2b とmsFRP1の両方を発現するCHO細胞の馴化培地中でmWnt2bとmsFRP1が物理的に相互反応することが実証されたことを示す。この35kDaのバンドは、抗mWnt2bによる免疫沈降とその後の抗hsFRP1によるブロッティングを行った際のmWnt1のみを発現するCHO細胞の馴化培地中では検出されなかった。
【0079】
さらなる免疫沈降実験は、msFRP1が、mWnt2bとmsFRP1の両方を発現するCHO馴化培地中でmWnt2bに結合することを実証する。免疫沈降実験は、抗Wnt2b、抗hsFRP1、又は抗体を含まない対照を、mWnt2b単独又はmWnt2b及びmsFRP1を過剰発現する等量のCHO細胞(クローン18)の馴化培地に添加することによって行った。 図2Cは、抗hsFRP1抗体による免疫沈降とその後の抗mWnt2b抗体によるブロッティングで、約42 kDaのmWnt2bタンパク質が検出され(図2Cの矢印)、mWnt2bとmsFRP1の両方を発現するCHO細胞の馴化培地中で、mWnt2bとmsFRP1が物理的に相互作用することを示す。 この42 kDaのmWnt1バンドは、抗hsFRP1による免疫沈降とその後の抗mWnt1によるブロッティングを行った際のmWnt1のみを発現するCHO細胞の馴化培地で中は検出されなかった。
【0080】
なぜmWnt1とmsFRP1の両方を発現する細胞の馴化培地中で活性なmWnt1のレベルの増加が観察されたのかを解明するために、さらなる実験を実施した。mWnt1のみを発現するCHO細胞をHEK293 hFz4 / hLRP5 Wntレポーター細胞(本明細書ではHEK293 Wntレポーター細胞とも称する)と共培養すると、Wntレポーター活性の強固な活性化が検出され、mWnt1を発現するCHO細胞が活性なmWnt1タンパク質を生成することが実証された(表1、3行目)。 CHO mWnt1細胞からの馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加した場合は、Wntレポーターの活性化は検出されない(表1、4行目)。これらのデータは、活性なmWnt1タンパク質は馴化培地に存在せず、CHO mWnt1細胞の細胞表面に局在していることを示唆する。 msFRP1又はmsFRP5を単独で発現するCHO細胞をHEK293 Wntレポーター細胞と共培養したところ、活性は検出されなかった(表1、5行目)。さらに、msFRP1又はmsFRP5を発現するCHO細胞からの馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加したところ、活性は検出されず(表1、6行目)、sFRP1又はsFRP5は、mWnt1との共発現なしにWntシグナル伝達を増強できないことが示唆された。 CHO mWnt1の馴化培地とCHO msFRP1又はCHO msFRP5の馴化培地とを組み合わせてからHEK293 Wntレポーターに添加したところ、活性は検出されなかった(表1、7行目)。 CHO mWnt1細胞の馴化培地をCHO msFRP1又はCHO msFRP5発現細胞に加え、一晩培養した後、馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に加えたところ、活性は検出されなかった(表1、8行目)。 CHO msFRP1又はCHO msFRP5の馴化培地をCHO mWnt1発現細胞に添加して一晩置いた後、この馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加したところ、レポーター活が検出された(表1、9行目)。組換えhsFRP1タンパク質又は組み換えhsFRP5タンパク質をCHO mWnt1発現細胞に添加して一晩置いた後、この馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に加えたところ、Wntレポーターの活性化が観察された(表1、行11)。最後に、mWnt1とmsFRP1又はmsFRP5の両方が同じCHO細胞で共発現された場合、馴化培地はHEK293 Wntレポーターを活性化した(表1、10行目)。
【0081】
【表1】
【0082】
sFRPは、Wnt活性の正と負の両方のレギュレーターとして作用することが観察されている。当初は、いくつかの論文でsFRPのWnt活性への阻害が示されていたが(Leyns et al。Cell 88:747-756(1997); Wang et al。Cell 88:757-766(1997))、その後の研究では、生理学的用量のsFRPで、sFRPがWntシグナル伝達を増強できることが示された(Mii et al. Development 136:4083-4088 (2009); Holly et al. Dev. Biol. 388:192-204 (2014))。 sFRPのこの二相性の活性を試験するために、一連の用量の組換えsFRP1タンパク質をCHO mWnt1発現細胞に添加して24時間置いた後、この馴化培地を除去してHEK293 Wntレポーター細胞を処理した。比較的低用量のsFRPでmWnt1活性が増強され、高濃度のsFRP1でWntシグナル伝達がベースラインレベル戻る、ベル型の曲線が観察された(図3)。
【0083】
CHO mWnt1 / msFRP1発現細胞を使用して、mWnt1 / msFRP1タンパク質複合体を精製した。 CHO mWnt1 / msFRP1発現細胞を、5%FBS含有培地から2%FBS含有培地に移行させることで、これらを懸濁液中で増殖させることができた。培養9日後、CHO mWnt1 / msFRP1馴化培地を単離し、mWnt1 / msFRP1複合体をイオン交換クロマトグラフィー(図4A~C)、続いてゲル濾過クロマトグラフィー(図4D~E)により精製した。 sFRP1は陽イオン交換体SPセファロースカラムにしっかりと結合し、このタンパク質を溶出するには1 Mを超えるNaCl濃度を要するが、Wnt-1は通常0.3 M未満のNaCl濃度で溶出される。sFRPとWnt1が複合体を形成しない場合、sFRP1とWnt-1は異なるピークで溶出される。しかし、抗Wnt-1抗体で捕捉するウェスタンブロット(図4B)は、SPセファロースカラムから(図4A)、Wnt-1がsFRP1(図4C)と共に後のピーク中で共溶出されたことを示し、sFRP1とWnt-1の間の複合体の形成を示唆した。銀染色でsFRP1が検出されたが、Wnt-1はほとんど見えず、大量の遊離sFRP1が存在することを示した。 sFPR1 / Wnt-1複合体と遊離sFRPのサイズの違いから、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、これら2つの異なる集団を十分に分離した。 sFRP1 / Wnt-1複合体は先のピークで溶出され、遊離sFRP1は後のピークで溶出された(図4D)。 sFRP1とWnt-1の両方が、SDS-PAGE上のクーマシーブルー染色で、複合体のピーク(先のピーク)に検出された(図4E)。精製されたsFRP1 / Wnt-1複合体をSDS-PAGEにロードし、クーマシーブルーで染色した。 37 kDaと52 kDaの2つのバンドが観察され、そのデンシトメトリー分析に基づくモル比は約1:1であった(図4F)。ウェスタンブロットを用いてタンパク質複合体の特徴を調べたところ、精製された複合体サンプルにおいてmWnt1とmsFRP1の両方が検出された(図5)。精製された複合体のN末端側のシーケンシングにより、マウスWnt-1とマウスsFRP-1の両方の配列が同定され、他のタンパク質の配列は検出されなかった。馴化培地におけるmWnt1とmsFRP1の結合は、精製時にmWnt1とmsFRP1が複合体として連結している可能性が高いことを示唆する。
【0084】
組換えmWnt1 / msFRP1精製タンパク質の活性を、HEK293 Wntレポーターアッセイで測定した。 HEK293 Wntレポーター細胞を組換えmsFRP1タンパク質で処理しても、未処理のバックグラウンドのレベルを超えるWntレポーターの活性化は生じなかった(図6B)。 HEK293 Wntレポーター細胞をmWnt1 / msFRP1タンパク質複合体で処理すると、Wntレポーターが強固に活性化された(図6A図6B)。 mWnt1 / msFRP1精製手順に追加の精製工程を加え(図4)、CHAPSバッファー中で従来使用される最も強力な精製Wnt(Wnt3a)と比較してより強力なmWnt1 / msFRP1複合体が得られた(図6D)。
【0085】
これらのデータは、sFRPがmWnt1を生成するCHO細胞と相互作用する場合に、sFRPが馴化培地中の活性なmWnt1タンパク質の量を増加できることを実証する。 sFRPによって誘発されたWntの遊離がmWnt1に特異的であるか、sFRPが他のWntファミリーメンバーに同様に機能するかどうかを検討するために、mWnt1、mWnt2b、及びヒトWnt6(hWnt6)について追加のsFRP共培養実験を実施した。
【0086】
msFRP1を発現するCHO細胞を、mWnt2bを発現するCHO細胞と共培養し、得られた馴化培地をHEK293 Wntレポーター細胞に添加したところ、Wntレポーターの活性化が検出された(図7B)。 興味深いことに、CHO mWnt2b細胞とCHO msFRP5との共培養はCHO mWnt1及びCHO msFRP5細胞の共培養由来の馴化培地(図7A)と同様に、馴化培地中のWnt活性を生じなかった(図7B)。CHO msFRP1及びCHO msFRP5と共培養したhWnt6を発現するHEK293由来の馴化培地は、CHO mWnt1とCHO sFRP1及びCHO sFRP5との共培養実験(図7A)で見られたものと同様に、HEK293 Wntレポーター細胞を活性化した(図7C)。 これらのデータは、sFRPが、mWnt1を発現する細胞の細胞表面からのmWnt1の遊離だけを増強できるわけではなく、sFRPが、mWnt2b又はhWnt6を発現する細胞の細胞表面からのmWnt2b及びhWnt6を遊離させることができることを実証する。 これらのデータは、sFRPを使用することで、全てではないが、細胞膜に結合している多くのWntタンパク質を遊離させて、活性なWnt/sFRP複合体の精製を促進できることも示唆する。
【0087】
本明細書中に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に利用可能な資料(例えば、GenBank及びRefSeqにおけるヌクレオチド配列の提示、並びに、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列の提示、並びにGenBank及びRefSeqにおけるアノテーションされたコーディング領域からの翻訳を含む)の完成された開示は、参照により組み込まれる。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる任意の資料の開示との間に何らかの不一致が存在する場合は、本出願の開示が適用されるものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にするためにのみ提供される。これらから、不必要な限定を解釈するべきではない。実施形態により定義される、本発明に含まれる当業者にとって明白なバリエーションについて、本発明は示された及び記載された詳細には厳密には限定されない。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] WntとsFRPを含む単離されたタンパク質複合体。
[2] Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4, 、Wnt5a, 、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうちの1以上を含む、実施形態1に記載の単離されたタンパク質複合体。
[3] sFRPが、sFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうちの1以上を含む、実施形態1又は2に記載の単離されたタンパク質複合体。
[4] Wntが活性なWntを含む、実施形態1~3のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[5] 活性なWntが、分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いて測定されるWntレポーター活性を有するWntを含む、実施形態4に記載の単離されたタンパク質複合体。
[6] タンパク質複合体が、実質的に界面活性剤を含まない、実施形態1~5のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[7] WntがマウスWntを含み、sFRPがマウスsFRPを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[8] WntがマウスWnt1を含み、sFRPがマウスsFRP1を含む、実施形態1~7のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[9] タンパク質複合体が、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いた測定で、500ng/mL未満の50%有効量(ED 50 )を示す、実施形態1~8のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[10] タンパク質複合体が、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いた測定で、100ng/mL未満の50%有効量(ED 50 )を示す、実施形態1~9のいずれかに記載の単離されたタンパク質複合体。
[11] Wntを含む組成物であって、実質的に界面活性剤を含まない、組成物。
[12] Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及びWnt16のうちの1以上を含む、実施形態11に記載の組成物。
[13] Wntが活性なWntを含む、実施形態11又は12に記載の組成物。
[14] 活性なWntが、分泌アルカリフォスファターゼ(SEAP)レポーターアッセイを用いて測定されるWntレポーター活性を有するWntを含む、実施形態13に記載の組成物。
[15] 組成物が、さらにsFRPを含む、実施形態11~14のいずれかに記載の組成物。
[16] sFPRが、sFRP1、FRP2、sFRP3、sFRP4及び sFRP5のうちの1以上を含む、実施形態15に記載の組成物。
[17] WntがマウスWntを含み、sFRPがマウスsFRPを含む、実施形態15又は16に記載の組成物。
[18] WntがマウスWnt1を含み、sFRPがマウスsFRP1を含む、実施形態15~17のいずれかに記載の組成物。
[19] Wntが、HEK293 TCF9-SEAP hFz4/hLRP5 Wntレポーターアッセイを用いた測定で、100ng/mL未満の50%有効量(ED 50 )を示す、実施形態11~18のいずれかに記載の組成物。
[20] 組成物が、R-スポンジン 1、R-スポンジン 2、R-スポンジン 3、R-スポンジン 4、リポカリン7又はWIF1のうち1以上をさらに含む、実施形態11~19のいずれかに記載の組成物。
[21] Wnt及びsFRPを過剰発現させる工程:
WntとsFRPを含む複合体を形成する工程:及び
Wntを単離する工程を含み、Wntを単離する工程が、水性精製手順を含む、方法。
[22] WntとsFRPを含む複合体が、Wntを単離する工程の前に形成される、実施形態21に記載の方法。
[23] Wntを単離する工程が、界面活性剤の使用する工程を含まない、実施形態21又は22に記載の方法。
[24] Wntを単離する工程が、WntとsFRPを含む複合体から界面活性剤を除去する工程を含む、実施形態21又は22に記載の方法。
[25] Wntが、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11及び Wnt16のうちの1以上を含む、実施形態21~24のいずれかに記載の方法。
[26] sFRPが、sFRP1、sFRP2、sFRP3、sFRP4及びsFRP5のうちの1以上を含む、実施形態21~25のいずれかに記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
【配列表】
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