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特許7385581二相性プラズマ・マイクロリアクタとその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】二相性プラズマ・マイクロリアクタとその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20231115BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 5/327 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 13/20 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 29/50 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 35/08 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 45/33 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 49/403 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 407/00 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 409/06 20060101ALI20231115BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20231115BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01J19/08 E
C07C5/327
C07C13/20
C07C29/50
C07C35/08
C07C45/33
C07C49/403 A
C07C407/00
C07C409/06
H05H1/24
C07B61/00 C
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020545699
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2019055027
(87)【国際公開番号】W WO2019166570
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】18305214.1
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518436250
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
(73)【特許権者】
【識別番号】510073202
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】520328121
【氏名又は名称】エコール ナシオナル シュペリュール ドゥ シミ ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウェングラー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】オニエー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】アル アヨウビ,サフワーン
(72)【発明者】
【氏名】タトウリアン,マイケル
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181945(WO,A1)
【文献】特開2003-036996(JP,A)
【文献】特表2017-501860(JP,A)
【文献】特表2019-505379(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102451653(CN,A)
【文献】S. Knaustet al.,Influence of surface modifications and channel structure for microflows of supercritical carbon dioxide and water,The Journal of Supercritical Fluids,Elsevier,2015年07月28日,vol.107,p.649-656
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00- 19/32
A61L 2/00- 2/28
B81B 1/00
B81C 3/00
C02F 1/30- 1/32
C02F 1/46- 1/48
C07B 31/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
G01N 37/00
H01J 37/00- 37/248
H05H 1/24- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に誘電材料から作られた支持体であって、気体リザーバへの接続に適合した気体入口と、液体リザーバへの接続に適合した液体入口と、気体及び/又は液体を含むレシーバへの接続に適合した少なくとも1つの流体出口と、を有する、支持体と、
前記液体入口から前記流体出口への液体流を許容するのに適合した支持体内の液体マイクロチャネルと、
気体入口から流体出口まで気体流を許容するのに適合した支持体内の気体チャネルと、
少なくとも1つの接地電極と、
前記支持体の前記誘電材料によって前記気体チャネルから分離された、少なくとも1つの高電圧電極と、
を備えるプラズマ・マイクロリアクタであって、
前記接地電極と前記高電圧電極とは、前記気体チャネル内に電界を確立できるように前記気体チャネルの対向面上に配置され、
前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとは隣接し、前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間に少なくとも1つの開口が配置され、したがって、流体チャネルを形成し、前記液体流を前記気体流と接触させ、
前記液体流は、毛管現象によって前記液体マイクロチャネル内に保持され、
前記開口は、流体チャネルの壁の凸状屈曲部分によって、部分的に画定され、
前記凸状屈曲部分は、前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間に配置されており、前記液体マイクロチャネルに沿って、且つ、前記気体チャネルに沿って連続的に延在し、
前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間にステップを形成するように、前記液体マイクロチャネルは、前記気体チャネルより小さい高さを有し、
前記凸状屈曲部分によって前記ステップのエッジが形成されている、
プラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項2】
少なくとも1つの開口は、前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間に、前記流体チャネルの長さの少なくとも80%の上に配置されている、
請求項1記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項3】
前記凸状屈曲部分は、20μm未満の曲率半径を有する、
請求項2記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項4】
前記接地電極及び前記高電圧電極に電気的に接続した高電圧源を有する、
請求項1乃至3いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項5】
前記液体マイクロチャネルの長さ及び前記気体チャネルの長さは、2cm以上である、
請求項1乃至4いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項6】
前記支持体は、V硬化ポリマー、ポリ(テトラメチレン・サクシネート)、状オレフィン・コポリマー(COC)、ガラス、セラミック材料、又は、これらの組み合わせ、から作られている、
請求項1乃至5いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項7】
前記流体チャネルは、主平面に従って配置されており、
前記流体チャネルの設計は、20mm以上の正方形にわたって、0.3より高い、前記主平面内の前記流体チャネルの表面密度を有することを可能にし、
請求項1乃至6いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項8】
2つの前記液体マイクロチャネルは前記気体チャネルの対向面上に配置され、したがって、流体チャネルはT字状の断面を有する、
請求項1乃至7いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項9】
前記支持体は、全体に、ガラス又はセラミック材料から作られるか、又は、少なくとも2枚のガラス層の間に含まれるポリマー層でできている。
請求項1乃至8いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項10】
前記液体マイクロチャネルの高さは、1μmより大きく、且つ、200μm未満である、及び/又は、
前記気体チャネルの高さは、前記液体マイクロチャネルの高さと1mmとの間にある、
請求項1乃至9いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項11】
プラズマ・マイクロリアクタ内でプラズマを生成する方法であって、
(a) 請求項1乃至10いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタを用意するステップと、
(b) 液体を供給し、複数の前記液体マイクロチャネルを介して所与の方向において液体流を作成するステップと、
(c) 気体を供給し、前記気体チャネルを介して前記方向において気体流を作成するステップと、
(d) 前記気体チャネル内でプラズマを生成するように前記高電圧電極と前記接地電極との間に高電圧を印加するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記気体チャネルを介する気体流量は、前記液体マイクロチャネルを介する液体流量よりも高い、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記気体は、空気、アルゴン、ヘリウム、酸素、水素、窒素、水蒸気、アンモニアゴム、二酸化炭素、一酸化炭素、発性炭化水素、揮発性有機化合物、及びそれらの混合物のうちから選択され、及び/又は、
前記液体は、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、ハロゲン化溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン性液体若しくはそれらの混合物を含む溶媒、及び、メタクリル酸メチル(MMA)若しくはフェノールを含む試薬、又は、それらの混合物から選択される、
請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記高電圧は、250Vと30kVとの間に含まれており、
前記高電圧は、100Hzと1MHzとの間に含まれる周波数を有する、高電圧の、変数であるか、又は、
高電圧は、100Hzと1MHzとの間に含まれる周波数を有するパルス電圧である、
請求項11乃至13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記液体の中に存在する化合物は、分解、酸化、水素添加、脱水素、アミノ化又はカルボニル化を含む少なくとも1つの化学反応に供される、
請求項11乃至14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの開口は、前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間に、前記流体チャネルの長さの少なくとも90%の上に配置されている、
請求項2記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項17】
少なくとも1つの開口は、前記液体マイクロチャネルと前記気体チャネルとの間に、前記流体チャネルの長さの100%の上に配置されている、
請求項16記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項18】
前記液体マイクロチャネルの長さ及び前記気体チャネルの長さは、20cm以上である、
請求項5記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項19】
前記液体マイクロチャネルの長さ及び前記気体チャネルの長さは、100cm以上である、
請求項18記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項20】
前記流体チャネルは蛇行パターンに配置されている、
請求項7記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項21】
前記液体マイクロチャネルの高さは、10μmより大きい、
請求項10記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項22】
前記液体マイクロチャネルの高さは、40μmより大きい、
請求項21記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項23】
前記液体マイクロチャネルの高さは、100μm未満である、
請求項10、21及び22いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項24】
前記液体マイクロチャネルの高さは、50μm未満である、
請求項23記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項25】
前記気体チャネルの高さは、前記液体マイクロチャネルの高さと200μmとの間にある、
請求項10及び21乃至24いずれか1項記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項26】
前記気体チャネルの高さは、前記液体マイクロチャネルの高さと100μmとの間にある、
請求項25記載のプラズマ・マイクロリアクタ。
【請求項27】
前記気体チャネルを介する気体流量は、前記液体マイクロチャネルにおける液体流量の5倍から10000倍の間でより高い、
請求項12記載の方法。
【請求項28】
前記高電圧は、1kVと20kVとの間に含まれる、
請求項14記載の方法。
【請求項29】
前記高電圧は、1kVと10kVとの間に含まれる、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記高電圧は、100Hzと100kHzとの間に含まれる周波数を有する正弦波である、
請求項14、28及び29いずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記周波数100Hzと10kHzとの間に含まれる、
請求項30記載の方法。
【請求項32】
高電圧は、100Hzと10kHzとの間に含まれる周波数を有するパルス電圧である、
請求項14、28及び29いずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記周波数は、100Hzと1kHzとの間に含まれる、
請求項32記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液プラズマ・マイクロリアクタに関し、また、プラズマを発生させて化学合成を行うためにかかる装置を使用する方法に関する。本発明のマイクロリアクタは、適切な電場を印加することにより、液体に沿って流れる気体中でプラズマを発生させ、プラズマ中に形成された反応性化学種又は分子を効率的に液体中に移動させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
プラズマ放電は、室温及び室圧で、気相中に反応性化学種を生成することが知られている(ラジカル、異なる励起状態の中性、光子及び電子など)。プラズマ放電の使用は、特に気体中で化学合成を行うことが知られている。しかしながら、気体の使用は、合成に関与する物質の量を制限する。
【0003】
したがって、二相性気液プラズマリアクタが開発されている。これらのリアクタの有効性は、気体から液体へのプラズマ放電によって形成される活性種の移動によって制限される。Malikらは、活性種を移動するための種々のタイプのプラズマリアクタの有効性を評価した[1]。この著者らは、水中の染料の50%の変色を得るのに必要なエネルギー(g/kWhで表されるG50)を用いて、27の異なる種類のプラズマリアクタを比較した。彼らの結論は、最も効率の良いリアクタは、(i)液体がプラズマゾーンに噴霧されるか、又は(ii)薄膜として円筒状電極の内壁を流れるパルス駆動反応器である。効率の改善は、液体の大きな表面積対体積比によって説明され、その結果、気体から液体への反応種の移動速度が速くなり、液体中の汚染物質分子が液体表面に到達するために拡散する必要がある短い距離がもたらされる。
【0004】
特に、Yanoらは、液体の薄膜が、ワイヤ対シリンダ電極間の気体中における放電の存在下で、円筒状電極の内壁を流れる、湿潤壁プラズマリアクタを記載している[2]。このようなリアクタの問題は、均一な液体膜、特に薄い液体膜(<1mm)を得ることが困難であることである。
【0005】
Matsuiらは、酢酸を水中で分解するための二相流反応器について報告している[3]。パルス誘電障壁放電は水中を流れる酸素気泡中に生成される。リアクタは2本の同軸ガラス管で構成され、内管と外管の間の隙間は1mmであった。リアクタの底部にあるバブラーを用いて気泡を発生させた。酢酸分解に関して良好な結果が得られた。しかし、このリアクタの欠点は、気泡のサイズが大きい(0.1cmから1cm)ことと、気泡のサイズが制御されにくいことであり、気泡のサイズ分布が大きくなることである。その結果、液体のある部分は過剰のラジカルを吸収し、他の部分はラジカルを吸収しないことがある。
【0006】
したがって、マイクロ流体チャネルは、サイズ分布の制御を強化するために使用されてきた。マイクロ流体ツールを使用することにより、Zhangらは、マイクロサイズの気泡が従来のフローフォーカス形状を使用して生成されるプラズマ・マイクロリアクタを開発した[4]、[5]。そこで、プラズマ放電は、チャネルの両側に配置された高電圧電極により、連続液相中を移動するマイクロサイズの分散気泡中で繰り返し発生する。気泡の体積に対する表面積の比率が高いため、反応生成物をプラズマ相から非常に速く、例えばミリ秒単位で抽出することができる。マイクロリアクタの開発と共に、生成したラジカル種を定量化し定性化することを目的とした実験的(電子スピン共鳴分光法、蛍光)及び理論的(プラズマモデリング)方法を実施されている。水/アルゴン二相流の場合、溶解したOH°ラジカルの生成が証明され定量化されており、水酸化反応を可能にしている。しかしながら、気泡を扱う作業は、液体の所定の部分によって見られる気体の量を制限し、これは、液体相の試薬としての気体成分の使用を妨げる。さらに、両相の滞留時間は強く相関し、気泡の生成に必要な流速によって制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】PCT国際公開第2017097996号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Malik, M. A. (2010). Water purification by plasmas: Which reactors are most energy efficient ?, Plasma Chemistry and Plasma Processing, 30(1), 21-31.
【文献】Yano, T., Uchiyama, I., Fukawa, F., Teranishi, K., & Shimomura, N. (2008, May). Water treatment by atmospheric discharge produced with nanosecond pulsed power. In IEEE International Power Modulators and High Voltage Conference, Proceedings of the 2008 (pp. 80-83).IEEE.
【文献】Matsui, Y., Takeuchi, N., Sasaki, K., Hayashi, R., & Yasuoka, K. (2011). Experimental and theoretical study of acetic-acid decomposition by a pulsed dielectric-barrier plasma in a gas-liquid two-phase flow. Plasma Sources Science and Technology, 20(3), 034015.
【文献】Zhang, M., Ognier, S., Touati, N., Binet, L., Thomas, C., Tabeling, P., & Tatoulian, M. (2017). The development and numerical simulation of a plasma microreactor dedicated to chemical synthesis. Green Processing and Synthesis, 6(1), 63-72.
【文献】Knaust, S., Andersson, M., Hjort, K., & Klintberg, L. (2016). Influence of surface modifications and channel structure for microflows of supercritical carbon dioxide and water. The Journal of Supercritical Fluids, 107, 649-656.
【文献】Bartolo, D., Degre, G., Nghe, P., & Studer, V. (2008). Microfluidic stickers. Lab on a Chip, 8(2), 274-279.
【発明の概要】
【0009】
先行技術の上述の問題に少なくとも部分的に反応するように、プラズマ・マイクロリアクタが開発された。
プラズマ・マイクロリアクタは:
- 少なくとも部分的に誘電材料から作られた支持体であって、気体リザーバへの接続に適合した気体入口と、液体リザーバへの接続に適合した液体入口と、気体及び/又は液体を含むレシーバへの接続に適合した、少なくとも1つの流体出口と、を有する支持体と;
- 液体入口から流体出口への液体流を許容するのに適合した支持体内の液体マイクロチャネルと;
- 気体入口から流体出口への気体流を許容するのに適合した支持体内の気体チャネルと;
- 少なくとも1つの接地電極と;
- 支持体の誘電材料によって気体チャネルから分離された、少なくとも1つの高電圧電極と;を備え、
接地電極と高電圧電極とは、気体チャネル内に電界を確立できるように気体チャネルの対向面上に配置され、
流体チャネルを形成し、液体流を気体流と接触させるように、液体マイクロチャネルと気体チャネルとは隣接し、液体マイクロチャネルと気体チャネルとの間に少なくとも1つの開口が配置されており、
液体流は、毛管現象によって液体マイクロチャネル内に保持される。
【0010】
本発明のさらなる任意の態様において:
- 少なくとも1つの、特に1つの開口は、前記液体マイクロチャネと前記気体チャネルとの間に、前記流体チャネルの長さの少なくとも80%、特に90%、例えば約100%の上に配置されており、
- 開口は、液体マクロチャネルと気体チャネルとの間に配置された凸状屈曲部分によって部分的に画定されており、凸状屈曲部分は、液体マイクロチャネルに沿って、且つ、気体チャネルに沿って連続的に延在し、
- 凸状屈曲部分は、20μm未満の曲率半径を有する、
- 凸状屈曲部分は、液体マイクロチャネルの長さに沿って、且つ、気体チャネルの長さに沿ってエッジを画定し、
- プラズマ・マイクロリアクタは、(複数の)接地電極及び(複数の)高電圧電極に電気的に接続した高電圧源を有し、
- 接地電極及び高電圧電極の少なくとも1つは、支持体に埋め込まれており、
- 気体チャネルの長さおよび液体マイクロチャネルの長さは、2cm以上、特に20cm、好ましくは100cm以上以上であり、
- 支持体は、チオール‐エン系樹脂(thiol-ene based resin)を光重合して得られるポリマーなどのUV硬化ポリマー、ポリ(テトラメチレン・サクシネート)(poly(tetramethylene succinate))、エチレンとノルボルネン(norbornene)若しくはテトラシクロドデセン(tetracyclododecene)とのコポリマーなどの環状オレフィン・コポリマー(COC)、ガラス、セラミック材料、又は、これらの組み合わせ、から作られており、
- 2つの液体マイクロチャネルは、気体チャネルの対向面上に配置されており、したがって、液体マイクロチャネルは、液体マイクロチャネル及びT字状の断面を有する気体チャネルによって形成されており、
- 流体チャネルは、液体マイクロチャネルによって、及び、気体チャネルによって形成されており、流体チャネルは、主平面に従って配置されており、流体チャネルの設計は、少なくとも20mmの正方形にわたって、0.3より高い、平面内の流体チャネルの表面密度を有することを可能にし、
- 流体チャネルの少なくとも一部は蛇行パターンに配置されており、
- 液体マイクロチャネルと気体チャネルとの間にステップを形成するように、液体マイクロチャネルは気体チャネルより小さい高さを有する、
- 支持体は、全体に、ガラス又はセラミック材料から作られるか、又は、少なくとも2枚のガラス層の間に含まれるポリマー層でできており、
- 液体マイクロチャネルの高さは、1μmを超え、特に10μmを超え、好ましくは40μmを超え、且つ、200μm未満であり、特に100μm未満であり、好ましくは50μm未満であり、
- 気体チャネルの高さは、液体マイクロチャネルの高さと1mmとの間、特に液体マイクロチャネルの高さと200μmとの間、好ましくは液体マイクロチャネルの高さと100μmとの間に含まれる。
【0011】
本発明の別の態様は、プラズマ・マイクロリアクタ中でプラズマを生成するための方法であって:
(a) 上記したプラズマ・マイクロリアクタを用意するステップと、
(b) 液体を供給し、(複数の)液体マイクロチャネルを介して所与の方向において液体流を作成するステップと、
(c) 気体を供給し、気体チャネルを介して前記方向において気体流を作成するステップと、
(d) 気体チャネル内でプラズマを生成するように高電圧電極と接地電極との間に高電圧を印加するステップと、
を含む。
【0012】
本発明のさらなる任意の態様において:
- 気体チャネルを介した気体流量は、液体マイクロチャネルを介した液体流量より高く、好ましくは液体マイクロチャネル内の液体流量の5倍と10000倍との間、特に液体マイクロチャネル内の液体流量の50倍と2000倍との間であり、好ましくは液体マイクロチャネル内の液体流量の80倍と1000倍との間に含まれ、
- 気体は、空気、アルゴン、ヘリウム、酸素、水素、窒素、水蒸気、アンモニアゴム、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどの揮発性炭化水素、揮発性有機化合物、及びそれらの混合物のうちから選択され、
- 液体は、溶媒、より好ましくは、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、ハロゲン化溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン性液体若しくはそれらの混合物などの有機又は水性溶媒、及び、メタクリル酸メチル(MMA)若しくはフェノールなどの試薬、又は、それらの混合物から選択され、
- 高電圧は、250Vと30kVとの間、特に1kVと20kVとの間、好ましくは1kVと10kVとの間に含まれ、
- 高電圧は、有利には100Hzと1MHzとの間に含まれ、特に100Hzと100kHzとの間に含まれ、好ましくは100Hzと10kHzとの間に含まれる周波数を有する、高電圧の、正弦波などの変数であるか、又は、高電圧は、有利には100Hzと1MHzとの間に含まれ、特に100Hzと10kHzとの間に含まれ、好ましくは100Hzと1kHzとの間に含まれる周波数を有するパルス電圧であり、
- 溶媒又は試薬などの液体の中に存在する化合物を分解(cleaving)、酸化、水素添加、脱水素、アミノ化又はカルボニル化などの少なくとも1つの化学反応に供する。
【0013】
定義
チャネルの「長さ」という用語は、本明細書において、チャネルを通る流体の主流れ方向に従うチャネルのサイズを示すために用いられる。
【0014】
チャネルの「高さ」という用語は、本明細書において、チャネルを通る流体の主流れ方向を横断する第1方向におけるチャネルの最小サイズを示すために用いられる。
【0015】
チャネルの「幅」という用語は、本明細書では、チャネルを通る流体の主流れ方向を横断し、且つ、第1方向を横断する方向におけるチャネルの最大サイズを示すために用いられる。
【0016】
用語「マイクロチャネル」又は「マイクロ流体チャネル」は、本明細書では、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含むチャネルを示すために用いられ、その高さは、100nmと1mmとの間に含まれる。マイクロチャネルは、液体及び/又は気体を流すのに適合うした材料内に少なくとも1つの壁を有する。
【0017】
用語「マイクロリアクタ」は、本明細書では、最小サイズが100nmと1mmとの間に含まれるハウジングを含むデバイスを示すために用いられる。より正確には、用語「マイクロリアクタ」は、本明細書では、少なくとも1つのマイクロチャネルを含むデバイスを示すために使用される。
【0018】
用語「凸状」は、本明細書では、バンプを画定する表面又は表面の断面を画定するために用いられる。より具体的には、流体チャネルの壁の「凸状屈曲部分」は、壁の一部であり、壁の凸状屈曲部分上の選択された2つの点について、2つの点の間のセグメントは、流体チャネルによって含まれない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を例として説明する。
図1】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの断面を概略的に示す図である。
図2】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの断面を概略的に示す図である。
図3A】流体チャネルの2つの平行部分の光学的プロファイル画像であり、
図3B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの断面を概略的に示す図である。
図3C】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの三次元表示を概略的に示す図である。
図3D】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの断面を概略的に示す図である。
図4A】プラズマ・マイクロリアクタ内の流体チャネルの上面を示す図である。
図4B】プラズマ・マイクロリアクタ内の流体チャネルの上面を示す図である。
図5】プラズマ・マイクロリアクタを含む一般的なセットアップを概略的に示す図である。
図6】電極の二重誘電体バリア放電構成を示す図である。
図7】電極の単一誘電体バリア放電構成を示す図である。
図8】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの2つの層を製造するためのマスクの設計を示す図である。
図9】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの2つの層を製造するためのマスクの設計を示す図である。
図10A】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの一部の製造を示す図である。
図10B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの一部の製造を示す図である。
図10C】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの一部の製造を示す図である。
図10D】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの一部の製造を示す図である。
図10E】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの一部の製造を示す図である。
図11A】本発明の可能な実施形態によるリフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
図11B】本発明の可能な実施形態によるリフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
図11C】本発明の可能な実施形態によるリフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
図11D】本発明の可能な実施形態によるリフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
図11E】本発明の可能な実施形態によるリフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
図12A】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図12B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの断面を示す図である。
図13A】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図13B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図13C】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図13D】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図14A】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図14B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタの製造を示す図である。
図15A】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタを示す図である。
図15B】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタを示す図である。
図16】リサージュ法によって作製されたプラズマ・マイクロリアクタの電気的特徴を示す図である。
図17】プラズマ・マイクロリアクタの平面を示す図である。
図18A】プラズマ・マイクロリアクタの平面画像を示す図である。
図18B】プラズマ・マイクロリアクタの平面画像を示す図である。
図19】本発明の可能な実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタ内及びフラット流体チャネル内における気体流及び液体流を示す図である。
図20】出力液体中の化合物のモル分率を%で示す図である。
図21】本発明の可能な実施形態による、プラズマ・マイクロリアクタ内の気体流及び液体流を示す図である。
図22】本発明の可能な実施形態による、プラズマ・マイクロリアクタ内の気体流及び液体流を示す図である。
図23】本発明の可能な実施形態による、プラズマ・マイクロリアクタ内の気体流及び液体流を示す図である。
図24】本発明の可能な実施形態による、プラズマ・マイクロリアクタ内の気体流及び液体流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
マイクロリアクタの構造
図1を参照すると、プラズマ・マイクロリアクタ1は、支持体3を含む。支持体3は、気体チャネル10と、気体チャネル10の対向面上に配置された2つの液体マイクロチャネル9とを含み、したがってT字型断面を有する流体チャネル2を形成する。接地電極4と高電圧電極5とは、気体チャネル10の対向面上に配置されている。高圧電極5と接地電極4とは、高圧電源6に電気的に接続され、支持体3の誘電材料によって流体チャネル2から分離される。
【0021】
誘電材料
本発明に係る支持体3は、気体チャネル10を絶縁するために少なくとも部分的に誘電材料で作られている。電極4,5間において支持体3の内側で高圧電界を制御することができるからである。本発明において使用される誘電材料は、その誘電特性に関して公知である任意の材料であり得る。しかしながら、誘電材料は、有利には、支持体3に含まれる流体チャネルを通って流れなければならない気体及び液体に対して不浸透性になる。さらに、誘電材料は、有利には、少なくとも液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10を有する支持体3と、例えば埋め込み電極と、を形成することも可能であるべきである。したがって、誘電材料は、例えば、チオール‐エン系樹脂(例えば、NOA-81又はNOA-61、好ましくはNOA-81などのノーランド光学接着剤(Norland Optical Adhesive)(R)(NOR)の光重合によって得られるポリマーなどのUV硬化ポリマー(すなわち、モノマー又はプレポリマーの光重合によって得られるポリマー)、ポリ(テトラメチレンスクシネート)(poly(tetramethylene succinate))(PTMS)、エチレンとノルボルネン又はテトラシクロドデセンとのコポリマーなどの環状オレフィン・コポリマー(COC)、ガラス、セラミック材料、又は、それらの組み合わせであり得る。本発明の好ましい実施形態では、支持体3は、2つのガラス層、例えば2つのカバーガラス(glass coverslips)の間に含まれるポリマー層で作られる。本発明の別の好ましい実施形態では、支持体3は、全体的にガラス又はセラミック材料で作られている。(複数の)液体マイクロチャネル9及び(複数の)気体チャネル10を形成するために、ガラスは、化学ウェットエッチング(例えば、HF選択エッチングを使用)及び/又はレーザー彫刻によって微細加工され得る。
【0022】
(複数の)液体マイクロチャネル及び(複数の)気体チャネル
本発明の全ての実施形態において、支持体3は、少なくとも1つの流体チャネル2を形成するように、少なくとも1つの気体チャネル10、好ましくは少なくとも気体マイクロチャネルと、少なくとも1つの液体マイクロチャネル9と、を含み、各液体マイクロチャネル9は気体チャネル10に隣接し、開口は各液体マイクロチャネル9間に配置され、少なくとも1つの気体チャネル10は液体マイクロチャネル9内の液体8を気体チャネル10内の気体に接触させ、液体8は毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に保持される。
【0023】
図2を参照すると、支持体3は、T字形の断面を有する流体チャネル2を形成するように、1つの気体チャネル10及び2つの液体マイクロチャネル9を含む。各液体マイクロチャネル9は、気体チャネル10と隣接している。各液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間には、開口11が配置されており、液体マイクロチャネル9内の液体8を気体チャネル10内の気体12と接触させ、液体8の流れは、毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に保持される。液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10によって形成された流体チャネル2の形状及び寸法を、毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に液体8を保持するように適合させることが知られている。例えば、トリプルライン(a triple line)(すなわち、気相、液相及び固相が共存する線)を、凸状屈曲部分7、特に流体チャネル2の壁の鋭いエッジに留める(pin)ことが可能である。この凸状屈曲部分7は、部分的に開口11を画定し得る。Knaust他は、例えば、チャネルの中央に沿った底部に、凸状屈曲部分として10μmの高さのガイドを含む流体チャネルを記載している[6]。ハイガイドは、水の流れが安定している液体マイクロチャネルと、水とCOが接触している超臨界COの流れが安定しているガスチャネルを分離するために、トリプルラインを留めるように適合されています。
【0024】
凸状屈曲部分7は、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間に配置された開口部11を部分的に画定する。凸状屈曲部分7は、液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10の長さに沿って連続的に延在する。好ましくは、凸状屈曲部分7の曲率半径は、50μm未満、特に20μm未満、好ましくは5μm未満である。したがって、凸状屈曲部分7は、液体8が液体マイクロチャネルに注入されるときに、トリプルラインを留めるように適合され、液体マイクロチャネル9における液体の流れ、及び気体チャネル10における気体の流れを安定化させることができ、液体の流れが開口11において気体の流れに接触する。
【0025】
液体マイクロチャネル9の高さhlは、500nm~500μm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。気体チャネル10の高さhgは、500nm~1mm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。
【0026】
好ましい態様において、液体マイクロチャネル9は、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間にステップを形成するように、気体チャネル10よりも小さい高さを有することができる。この場合、凸状屈曲部分7は、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間のステップのエッジである。従って、液体8は、毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に保持(maintained)され得る。図2を参照すると、流体チャネル2が設計された層18を微細加工することによって、流体チャネル2を支持体3内に作製することができ、層18は、有利にはポリマーで作製され、例えばガラス層などの2つの支持層17の間にサンドイッチされ、任意には電極を含む。したがって、層18は、気体チャネル10の一部が設計された第1層L1と、気体チャネル10の別の一部及び液体マイクロチャネル9が設計された第2層L2とで形成され得る。この実施形態では、気体チャネル10の高さは、好ましくは、液体マイクロチャネル9の高さと200μmとの間、特に気体チャネル10の高さと100μmとの間に含まれる。
【0027】
図3Aは、流体チャネル2の2つの平行な部分の光学的プロファイル画像(optical profilometer image)である。各流体チャネル2において、気体チャネル10は、気体チャネル10の対向面上に配置された2つの液体マイクロチャネル9によって囲まれる。従って、気相と液相との間の接触は、液体マイクロチャネル9と液体マイクロチャネル9に隣接する気体チャネル10とを1つのみ含む配置と比較して最適化される。異なる流体チャネル2は、並列化され、支持体3によって分離され得る。したがって、液相に移動する化学種の量を増加させることができる。
【0028】
図3Bは、本発明の異なる可能な実施形態を概略的に示す。支持体3は、十字形の断面を有する流体チャネル2を形成するように、1つの気体チャネル10及び2つの液体マイクロチャネル9を含む。各液体マイクロチャネル9は、気体チャネル10と隣接している。各液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間には、開口部11が配置されており、液体マイクロチャネル9内の液体8を気体チャネル10内の気体12と接触させ、液体8の流れは、毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に保持される。各液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10は、2つの凸状部分7が開口11を画定するように配置することができる。開口11の凸状部分7の各々は、液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10の長さに沿って連続的に延在する。したがって、液体8の流れを保持する毛管現象は、1つの凸部7を有する開口11と比較して増加することができる。
【0029】
液体マイクロチャネル9の高さhlは、有利には500nm~500μm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。気体チャネル10の高さhgは、有利には500nm~1mm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。
【0030】
液体マイクロチャネル9は、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間に2つのステップを形成するように、気体チャネル10よりも小さい高さを有することができる。この場合、凸状屈曲部分7は、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間の複数のステップのエッジである。
【0031】
図3Cは、図3Bに示される実施形態の概略図であり、各開口11は、2つの凸状部分7によって画定される。流体チャネル2は、支持体3内に蛇行(serpentine)を形成するレイアウトを有することができる。したがって、一定サイズの支持体3内の(複数の)開口の表面は、マイクロ流体チャネルの典型的な線形レイアウトと比較して、増加させることができる。
【0032】
図3Dは、本発明の異なる可能性のある実施形態を概略的に示す。流体チャネル2は、液体マイクロチャネル9のアレイによって少なくとも部分的に囲まれた気体チャネル10を含むことができる。各液体マイクロチャネル9は、気体チャネル10と隣接している。各液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間には、開口11が配置されており、液体マイクロチャネル9内の液体8を気体チャネル10内の気体12と接触させ、液体8の流れは、毛管現象によって液体マイクロチャネル9内に保持される。
【0033】
液体マイクロチャネル9は、少なくとも1つ、好ましくは2つの凸状部分7が各開口11を画定するように配置することができる(図3Dに示すように、2つの液体マイクロチャネル9は端部において、開口11を画定する1つだけの凸状部分7を有するように配置することができる)。開口11の凸状部分7の各々は、液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10の長さに沿って連続的に延在する。液体マイクロチャネル9は、好ましくは平行な、液体マイクロチャネル9の二次元アレイを形成することができ、各液体マイクロチャネルは、気体チャネル10に隣接している。アレイは、気体チャネル10の下に配置されることができる。したがって、プラズマリアクタ1の製造をシンプルにするために、開口11のレイアウトを並列化することが可能である。
【0034】
液体マイクロチャネル9の高さhlは、有利には500nm~500μm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。気体チャネル10の高さhgは、有利には500nm~1mm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。
【0035】
液体マイクロチャネル9の幅wlは、有利には、500nm~500μm、特に2μm~200μm、好ましくは5μm~100μmに含まれる。気体チャネル10の幅wgは、有利には、2μmと10mmの間、特に2μmと1mmの間に含まれる。
【0036】
図4A及び図4Bは、プラズマ・マイクロリアクタ内の流体チャネル2の上面図を示す。図4において、気体チャネル10及び気体入口13が黒で示されており、液体マイクロチャネル9及び液体入口14は灰色で示されている。支持体3は、気体リザーバに接続されるように適合された気体入口13と、液体リザーバに接続されるように適合された液体入口14とを備える。好ましい態様において、液体入口は、例えば、等しい流体力学的抵抗の2つのチャネルに分割することができ、2つのチャネルのそれぞれは、複数の液体マイクロチャネル9の1つに接続される。従って、液体入口14は、気体チャネル10の対向面上に配置された液体マイクロチャネル9内に等しい流速で液体8を提供するように適合されている。
【0037】
本発明の異なる実施形態(図示せず)では、支持体3は、複数の液体入口14を含むことができる。例えば、支持体3は、2つの液体リザーバ及びそれぞれ2つの液体マイクロチャネル9に接続されるように適合された2つの液体入口14を含むことができる。したがって、異なる液体8が、同じ気体チャネル10に接触する2つの異なる液体マイクロチャネル9に注入されることができる。
【0038】
流体チャネル2は、流体チャネル2の共通の流体出口(図示せず)によって、気体及び/又は液体を含むレシーバに接続することができる。図4に示される異なる実施形態において、液体出口15aは液体マイクロチャネル9を液体レシーバに接続しており、気体出口15bは気体チャネル10を気体レシーバに接続している。したがって、液体マイクロチャネル9の端部における圧力と、気体チャネル10の端部における圧力とは、調整されることができる。
【0039】
流体チャネル2は、主平面に従って蛇行パターンに配置される。したがって、所与の表面に対する流体チャネル2の密度は、所定のマイクロリアクタ表面に対して最適化することができる。特に、流体チャネル2の長さ、したがって、液体マイクロチャネル9の長さ及び/又は気体チャネル10の長さは、2cmよりも長く、特に20cmよりも長く、好ましくは100cmよりも長いことができる。この流体チャネル2の長さは、例えば、60mm×24mmの標準的な典型的なガラスカバースリップで作られたマイクロリアクタにおいて、1mより長くすることができる。したがって、所定の表面に対して液体8と気体12との間の接触表面を増加させることが可能であり、したがって、プラズマ・マイクロリアクタ1の効率を増加させることが可能である。主平面における流体チャネル2の密度を増加させるために、流体チャネル2の他のパターンは用いられることができる。例えば、複数の並列流体チャネル2が設計されることができる。より一般的には、主平面内の流体チャネル2の表面密度は、20mm以上の正方形に対して0.3よりも高くすることができる。
【0040】
一般設定
図5は、本発明の一実施形態によるプラズマ・マイクロリアクタ1を模式的に示したものであり、図2に示す実施形態による支持体3を備える。支持体3の気体入口13は気体リザーバ19に接続されており、支持体3の液体入口14は液体リザーバ20に接続されている。液体リザーバ20は、例えば、シリンジであることができる。他の液体リザーバ20は、液体リザーバ20に結合される液体流アクチュエータのタイプに応じて用いられることができる。圧力コントローラ(例えば、流体MFCS圧力コントローラ)を使用するときに、加圧気相を含む液体リザーバ20を使用することができる。液体リザーバ20は、ぜん動ポンプに流体的に接続されることもできる。液体出口15bは、プラズマ・マイクロリアクタ1の出力における化学種を分析するために、分析器に直接接続されることができる。
【0041】
また、液体出口15bは、例えば、プラズマ・マイクロリアクタ1から放出された液体上で別の合成ステップを行うように、本発明による別のプラズマ・マイクロリアクタ1に接続されることもできるし、されないこともできる。他の実施形態では、気体出口15a及び液体出口15bは、共通のレシーバに接続されることができる。
【0042】
プラズマ・マイクロリアクタ1は、特に以下をモニタリングするように適合されたコンピュータによって、モニタリングされることができる:
- プラズマ・マイクロリアクタ1上流の気体12の圧力を制御する圧力コントローラ23、
- プラズマ・マイクロリアクタ1上流の液体8の圧力及び/又は流量(flow rate)を制御する圧力コントローラ及び/又は自動シリンジドライバ20、
- 関数発生器、信号増幅器、高速高電圧スイッチ、及びオシロスコープなどの種々の装置から構成されることができる高電圧源6、
- 必要に応じて、気体チャネル10内の流れ形状又は放電を可視化するために、iCCDカメラ又はCCDカメラなどの任意の撮像システム(図示せず)。
【0043】
流れ制御
プラズマ・マイクロリアクタ1は、液相及び気相を扱うように適合されている。両者に対して、化学物質についての流速を制御し、それらの滞留時間へのアクセスを有することが重要である。したがって、好ましい実施形態では、液体8の流れは、シリンジドライバ(kdScientific Legato 180)によってモニターされる。圧力コントローラ又はぜん動ポンプとして、他の液体流アクチュエータを使用することができる。気体流量を制御し、気体混合物を実現するために質量流量コントローラ(Bronkhorst EL‐FLOW)を用いることができる。好ましい態様において、気体チャネル10を通る気体流量は、液体マイクロチャネル9を通る液体流量より高く、好ましくは、液体マイクロチャネル9における液体流量の5倍から10000倍の間に含まれ、特に、液体マイクロチャネルにおける液体流量の50倍から2000倍の間に含まれ、好ましくは、液体マイクロチャネルにおける液体流量の80倍から1000倍の間に含まれる。したがって、液体マイクロチャネル9内の液体流量から独立して反応種の滞留時間を調整することが可能である:各相の滞留時間は、相関しない。液体8は、少なくとも1つの溶媒、及び任意に少なくとも1つの試薬を含む。シリンジドライバによってモニターされる液体8の流量は、0.5μL/min~100μL/minの範囲、特に1μL/min~50μL/min、好ましくは4μL/min~30μL/minの範囲に含まれることができる。使用される気体は、不活性気体(例えば、Ar、He、N2)又は活性気体(O、H、CO、CO、NH、CH等の揮発性炭化水素)又はそれらの混合物であり得る。気体12の流量は、0.1mL/min~50mL/minの範囲、特に0.5mL/min~10mL/minの範囲に含まれることができる。
【0044】
電極
本発明によるプラズマ・マイクロリアクタ1は、少なくとも1つの接地電極4及び少なくとも1つの高電圧電極5を含む。
【0045】
「接地電極」(接地電極とも呼ばれる)とは、グランド(the ground)に接続される電極を意味する。
【0046】
「高電圧電極」とは、高電圧源6に接続される電極を意味し、高電圧源6は、有利には、250V~30kV、特に1kV~20kV、好ましくは1kV~10kVの高電圧源である。
【0047】
接地電極4及び高圧電極5は、インジウム(In)、スズ(Sn)、銅(Cu)、金(Au)、それらの酸化物及び/又は合金、又はそれらの混合物、特にインジウムスズ酸化物(ITO)、銅(Cu)、金(Au)、クロム(Cr)又はインジウム-スズ合金(In-Sn)又はそれらの混合物、より詳細には、任意に金と混合された、ITO等の導電体材料で作製される。(複数の)接地電極及び(複数の)高電圧電極は、同一又は異なる導電体材料で作製されることができる。
【0048】
(複数の)接地電極は、1つ又は複数の接地電極で構成されることができる。各接地電極は、種々の形態を有し、流体チャネル2の種々の部分にわたって延在することができる。
【0049】
同様に、(複数の)高電圧電極は、流体チャネル2の様々な部分にわたって延在する1つ又は複数の高電圧電極で構成することができる。(複数の)接地電極4及び(複数の)高圧電極5は、同一又は異なるパターンを有することができる。したがって、電極配置はプラズマが気体チャネル10のどこで発生するかを正確に画定するので、化学反応は、接地電極4及び高電圧電極5によって囲まれた流体チャネル2の一部において開始され得、流体チャネル2の他の部分において発生し得る。したがって、電極4,5の特定の空間パターンは、プラズマが発生し得る流体チャネル2の代替部分にも、プラズマ中で生成された反応種が拡散して液相に反応し得る他の部分にも有用であり得る。
【0050】
また、特定のマスク層の設計は、電極の製造前に、接地電極4又は高電圧電極5に対応して描かれることができる(図示せず)。このマスクは、例えば、プラズマ放電が発生する気体チャネル10の部分をカバーするように適合された矩形領域を画定することができる。従って、上流又は下流の制御されない放電は回避され、全リアクタ内において繰り返し可能な放電体積が許容される。
【0051】
図5は、本発明の様々な実施形態による流体チャネル2が配置された主平面の上及び下にそれぞれ延在する高圧電極5及び接地電極4の上面図を概略的に示す。しかし、他の形態を想定することもできる。好ましい実施形態では、接地電極4は、主平面の一方の側の平面上に延在し、高圧電極5は、主平面の他方の側の平面上に延在する。したがって、気体チャネル10内の放電は均一であることができ、気相の反応性も均一であることができる。
【0052】
好ましい実施形態では、高圧電極5及び接地電極4は、それぞれ、支持体3の対向面上、例えば支持体3の上下に堆積される。別の好ましい実施形態では、接地電極4及び高圧電極5の少なくとも1つを支持体3に埋め込むことができる。本発明の全ての実施形態において、接地電極4及び高電圧電極5の少なくとも1つは、誘電材料によって流体チャネル2から分離される。
【0053】
好ましい実施形態では、(複数の)高圧電極5と(複数の)接地電極4との間の距離は、10μm~10mm、特に50μm~5mm、好ましくは500μm~2mmに含まれる。より小さい距離、特に500μm~1000μmが好ましく、エネルギー消費の少ない低い降伏電圧を有する。この距離は、接地電極4と高電圧電極5との間に存在する気体チャネル10の高さにも依存する。
【0054】
図6を参照すると、好ましい実施形態では、接地電極4及び高圧電極5は、二重誘電体バリア放電構成(二重DBD)に配置されることができる。したがって、プラズマによる電極スパッタリングは避けられることができる。
【0055】
図7を参照すると、接地電極4及び高圧電極5は、単一の誘電体バリア放電構成(モノDBD)に配置されることができる。
【0056】
電気接続
高圧電極5及び接地電極4は、それぞれ高圧電源6及びアースに接続されている。好ましい実施形態では、高電圧源6は、電位の正弦波又はパルス電位を供給することができる。
【0057】
正弦波は、関数発生器によって生成され、信号増幅器(Trek、20/20C)によって数千ボルト、任意で500Vピーク間~20000Vピーク間の範囲、好ましくは1000Vピーク間~10000Vピーク間の範囲で増幅される。波の周波数は、50Hzから5kHzまで変化することができる。この範囲は、増幅器のスルーレート及び/又はプラズマ・マイクロリアクタ1内の放電の挙動(種の移送、拡散、標的化学反応の動力学など)によって制限され得る。
【0058】
高電圧パルスは、高速高電圧スイッチ(Behlke HTSシリーズ)と結合したDC高電圧発生器(Spellman UMシリーズ)で作られたパルス発生器によって生成される。それは±10kVまでの100ns幅のパルスを生成する。
【0059】
プラズマ・マイクロリアクタの製造
図8及び図9を参照すると、流体チャネル2は、例えば図2に示すような上述の実施形態で示された断面を有する蛇行パターン化チャネルとして設計されている。図8及び図9は、プラズマ・マイクロリアクタ1の第1層L1及び第2層L2をそれぞれ製造するためのマスクの設計を示す。設計は、2Dコンピュータ支援設計ソフトウェア(Clewin5)を用いて描かれる。
【0060】
図10A図10B図10C図10D及び図10Eを参照すると、PDMSモールド103が製造される。
【0061】
図10Aを参照すると、ネガ型フォトレジスト101(MicroChemRから購入したSU8 2035)を、シリコンウェハ102上で30秒間、3500 RPMでスピンコーティングし、30μmの厚さの層を得る。
【0062】
図10Bを参照すると、フォトレジスト層は、マスクアライナー(KLOE(R)社のUV-KUB3 Mark Aligner)中で、第1層L1に対応するマスク105(特に図8に示すように)を介して、5.5秒間、40mW/cmで、照射され、その後65℃で1分間、さらにその後、95℃で6分間、ソフトベークされる。フォトレジスト層の照射された部分は、それらを強化する化学反応を受ける。ソフトベーク後、フォトレジストの第2層を30秒間に2500RPMで第1の層上にスピンコートして、50μmの厚さの層を得る。前述と同じ手順を、第1層の識別可能な形状と整列した第2層L2に対応するマスク105(特に図8に示されるような)を用いて繰り返す。第2ソフトベーク後、基板102及びフォトレジスト層は、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート(Microposit(R))の浴中で7分間現像し、フォトレジスト層の未反応部分を除去する。
【0063】
図10Cを参照すると、この手順は、少なくとも予測される流体チャネル2の形状を有するポジ型モールド104を提供することを可能にする。
【0064】
図10Dを参照して、液体PDMS(RTV、室温加硫ポリジメチルシロキサン)及び架橋剤の混合物を、ポジ型モールド104上に注ぎ、70℃で1時間架橋する。
【0065】
図10Eを参照すると、架橋PDMS層は、ポジ型モールド04から剥離され、PDMSモールド103を提供する。その後、2つの150μm厚さのD263Mカバーガラス(Menzel-Glaser、24x60mm)を含み、その間でNOA-81(Norland Optical Adhesive)レジストが流体チャネル2の壁を形成するプラズマ・マイクロリアクタ1を、ポジティブPDMSモールド103を用いて作製する。
【0066】
図11A図11B図11C図11D、及び図11Eは、リフトオフ・プロセスによる電極軸受カバースリップの製造を示す図である。
【0067】
図11Aを参照すると、ポジ型フォトレジスト111(S1818、Microposit(R))をカバースリップ112の上にスピンコートする。
【0068】
図11Bを参照すると、フォトレジスト111は、電極に対応するマスク115を介して23mW/cmで11秒間UV照射され、その後5℃で1分間、115℃で2分間ベークされる。
【0069】
図11Cを参照すると、フォトレジスト111は、フォトレジスト現像剤(MF-319Microposit(R))の浴中で現像される。フォトレジスト111は、照射されていない部分上のみに留まり、電極があるべきではない下地ガラスを保護する。
【0070】
図11Dを参照すると、カバースリップは、ITOの1つのターゲットと金の1つのターゲットとで動作するマグネトロンスパッタリング蒸着システム(Plasmionique(R))に導入される。酸素プラズマ洗浄ステップの後、堆積プロセスは、純粋なITO堆積、混合Au-ITO堆積、純粋なITO堆積のステップに従い、Au-ITO層113を形成する。ITO膜に金を添加することは、空気中400℃で2h熱アニールした後、その導電率を100倍に増加させた。堆積された薄膜の最終的な厚さは約70nmである。
【0071】
図11Eを参照すると、フォトレジスト111は、例えばアセトンの浴を用いて、それを覆うターゲット材料の一部と共に除去される。
【0072】
図12Aを参照すると、第1カバーガラス(coverslip)122の電極側面121は、チップのロバスト性を確実にするために、銀ペイント(図示せず)を介してアルミニウム箔のバンドに電気的に接続され、その後、例えばNOAで1mm厚さのガラススライド基板に接着される。入口及び出口孔124は、このアセンブリを通って完全にドリル加工される。
【0073】
図12Bは、この電極側面121上の第1カバーガラス122に接着されたガラススライド基板123で作られた、孔124を有するアセンブリの断面図を示す。
【0074】
図13Aを参照すると、ネガ型PDMSモールド103は、第1カバーガラス122の裸側に配置される。したがって、電極(例えば、接地電極4)は、誘電体であるカバーガラス122のガラスによって流体チャネル2から分離されることができる。
【0075】
図13Bを参照すると、液体NOA-81液滴がモールド103の周囲に堆積される。NOA-81は、チオール-エン系のUV硬化性樹脂である。これは、物理的、化学的、電気的、光学的特性が良好であることから、従来のPDMS(ポリジメチルシロキサン)よりもマイクロマシニング材料として選ばれているが、その大部分は[7]に詳述されている。したがって、PDMSマイクロリアクタとは異なり、NOA-81マイクロリアクタは、空気及び水蒸気等の気体に対して不透過性であり、プラズマ及び化学反応のための閉じた環境を保証する。さらに、硬化したNOA-81は高い弾性係数(典型的には1GPa)を有し、これはサギング効果を回避する。NOA-81は、PDMSよりも溶媒の膨潤効果に対する感受性が低く現れる。NOA-81の誘電率は、1MHzで4.05、1kHzで6.5であり、PDMSより性能の良い絶縁材料である。NOA-81は、可視及び近紫外領域での高い透過率により、その場放電診断(光発光分光法(OES)又は超高速カメラ測定)を可能にする。これらの特性のために、NOA-81は、プラズマ・マイクロリアクタ1の製造のための良好な候補である。
【0076】
液体は、第1カバーガラス122のガラスとPDMSモールド103との間で、それが微細構造の開口部分を完全に満たすまで、毛管力によって駆動される。そのステップの間、図8及び図9に示されるマスク105上に見られる円形のアレイは、剛性ガラスと接触するチャネル部分がないところでPDMSモールド103が崩壊するのを防止するピラーとして作用する。
【0077】
図13Cを参照すると、その後、UV光による短時間の処理が用いられ、表面上に未硬化液体の薄層を保持する部分的に絶縁されたNOA-81微細構造125を得る。
【0078】
図13Dを参照すると、次いで、PDMSモールド103は、微細構造125から注意深く除去される。
【0079】
図14A及び図14Bを参照すると、第2ガラスカバースリップ142の裸の側面が、構造に均一に押し付けられる。UV光処理は硬化プロセスを終了させる。
【0080】
図15A及び図15Bを参照すると、第2のカバースリップの電極(例えば、高電圧電極5)とアルミニウム箔との電気的接続が確立され、コネクタ(例えば、Nanoports(R)コネクタ)が、孔124に接着される。電極4,5は、平面対平面配置で互いに対向する。特に、接地電極4及び高圧電極5は、ダブルDBD構成に配置されており:両電極はプラズマゾーンから、すなわち、気体チャネル10から絶縁層によって分離されている。別の実施形態では、ガラススライド基板123上に接地電極4を直接作製し、接地電極4が堆積された基板123の表面上にミクロ構造125を直接作製することによって、シングルDBDを作製することができる。
【0081】
光学診断は、透明ITO接地電極4及び透明ITO高電圧電極5を用いることにより、光透過イメージングセットアップで行われることができる。他の実施形態では、接地電極4は、不透明な材料内、例えばCr/Au内に作製されることができる。したがって、1つの透明電極を用いて、プラズマ放電によって放射された光を撮像することが可能である。これらの診断法のいずれも必要としない場合、両方の電極は、通常の、安価な、及び/又は不透明な金属から作ることができる。
【0082】
電力アセスメント
図16を参照すると、電極4,5は、正弦波ポテンシャルによって分極されることができる。電気的特性評価は、Lissajous法によって行われる。接地電極4と接地との間に3.2nFのコンデンサを直列に接続し、コンピュータに接続されたオシロスコープ(Teledyne Lecroy WaveSurfer10, 1GHz)を使用し、適合電圧プローブ(LeCroy PPE 20kV, 1000:1, 100MHz; Teledyne LeCroy PP024 10:1, 500MHz)を用いて、高圧電極5とコンデンサとの両方の間の電圧降下を測定する。
【0083】
プラズマ放電がない場合、プラズマ・マイクロリアクタ1は、静電容量として作用する。したがって、測定された電圧は、等価電気回路が直列の2つの静電容量と等価であるので、同調している。この動作は、XYモードのオシロスコープによって表示される直線によって測定される。
【0084】
プラズマ放電が発生すると、少量の電荷が気体チャネル10内のプラズマを横切って到達し、静電容量上にデポジットされる。このようなリアクタの純粋な容量挙動からの偏差は放電の存在を証明し、オシロスコープが平行四辺形のXY画像を示すときに測定することができる。
【0085】
さらに、静電容量にわたる電圧降下はその電荷に比例するので、平行四辺形の面積は、図16に示すように、一周期の間にリアクタに伝達されるエネルギーを容易に与えてくれる。
【0086】
別の実施形態では、電極4,5は、パルス高電圧によって分極されることができる。高電圧プローブ(Keysight 10076C電圧プローブ、4kV、500MHz又はLeCroy PPE 20kV、1000:1、100MHz)は、プラズマ・マイクロリアクタ1にわたる電圧降下を提供し、一方、マイクロリアクタとアースとの間に配置された電流プローブ(Pearson電流プローブ、モデル2877、200MHz)は、プラズマ・マイクロリアクタ1を通って流れる全電流(容量性+放電)を与える。容量性電流は電圧の微分であり、放電電流は全電流から抽出することができ、プラズマ・マイクロリアクタ1にデポジットされたエネルギーは計算されることができる。
【0087】
光検出
電荷結合素子(CCD)カメラ(Pixelink PL-B781U)はマクロスコープ(Leica Z16 APO)に取り付けられることができ、プラズマ・マイクロリアクタ1内の流体の流れを画像化することができる。プラズマ・マイクロリアクタ1は、拡散LEDランプによって後方照射されることができる。したがって、コリニア気体/液体流の安定性は評価されることができ、液体8及び気体12の流量を調整することができる。
【0088】
図17は、プラズマ・マイクロリアクタ1の上面図である。強化型電荷結合素子(iCCD)カメラ(Pimax4, Princeton Instruments)を関数発生器によってトリガして,マクロスコープ(Leica Z16 APO)を介してプラズマ放電の画像を収集した。関連する少量の体積のために、放電の弱い光学的放出を検出するために暗い環境が必要である。図17は、シクロヘキサン及びアルゴンが隣接して、すなわち、液体マイクロチャネル9におけるシクロヘキサン液体8及び気体チャネル10におけるアルゴン気体12が、流れている間に放電がトリガされたときに、プラズマによって気体チャネル10に沿って全て均一に放射された光を示す。
【0089】
図18A及び図18Bは、プラズマ・マイクロリアクタ1の上面図である。図18Aを参照すると、プラズマ放電は、T字型流体チャネル2内で撮像される。気体12は、流体チャネル2全体、すなわち、液体マイクロチャネル9及び気体チャネル10の両方において流れる。したがって、液体マイクロチャネル9と気体チャネル10との間の高さの差は、プラズマ放電画像の強度の差を介して測定することができる。
【0090】
図18Bを参照すると、液体8は液体マイクロチャネル9内を流れ、気体は気体チャネル10内を流れる。したがって、プラズマ放電は、気体チャネル10内においてのみ視認可能である。
【0091】
プラズマ増強化学合成
上述のプラズマ・マイクロリアクタ1は、流体相と接触するプラズマを生成するように構成されている。
プラズマ・マイクロリアクタ1内でプラズマを生成する方法であって、
(a) プラズマ・マイクロリアクタ1を用意するステップと、
(b) 液体8を供給し、複数の液体マイクロチャネルを介して所与の方向において液体流を作るステップと、
(c) 気体12を供給し、気体チャネル10を介して前記方向において気体流を作るステップと、
(d) 気体チャネル10内でプラズマを生成するように、(複数の)高電圧電極5と(複数の)接地電極4との間に高電圧を印加するステップと、を含む。
液体の流れと気体の流れの制御は独立しているので、液相と気体相の滞留時間を調整することができ、例えば、異なる液体流量(flow rate)と異なる気体流量とを有する。
【0092】
実施例
実施例1:
流れの安定化
図19は、2つの異なるタイプの流体チャネル内で制御される水の流れ及びアルゴンの流れを示す:0.5mL/minから2mL/minまで変化する気体流量について、図2に示される実施形態による2つの凸状屈曲部分7を含む流体チャネル2(「ステップ有り」)、及び、本発明とは異なる平坦な流体チャネル(「ステップ無し」)。したがって、凸状屈曲部分7無しでは、安定した二相流を達成することができず、流れは、ランダムに前方に移動するプラグ流又は散乱水滴である。凸状屈曲部分7を含む流体チャネル2は、気体12が液体8を通って流れることを可能にする。
【0093】
より一般的には、シクロヘキサンと水の流れの挙動は、ガラスとNOAに対するシクロヘキサンと水のそれぞれの親和性に依存している。シクロヘキサンは、流体チャネル2の壁の2つの材料である、ガラス(接触角~10°)とNOA(接触角~6°)に対して類似の親和性を有するが、水はNOA(水との接触角~65°)をわずかにしか濡らさない。これらの接触角を液滴形状アナライザ(Kruessアナライザ)で測定した。プラズマ・マイクロリアクタ1の材料のぬれ性は、所定の液相を含む化学反応のためにプラズマ・マイクロリアクタ1を設計する際に考慮されなければならない。
【0094】
実施例2
シクロヘキサンの酸化
液体シクロヘキサン(VWR、HiPerSolv CHROMANORM for HPLC)は、それぞれ0.5mL/min、1.5mL/min、2mL/min(sccm)の純O気体と共に、プラズマ・マイクロリアクタ1に3つの異なる流速(6μL/min、12μL/min、24μL/min)で導入された。高電圧、2kHz正弦波電位は、気体チャネル10内での大気圧誘電体バリア放電をトリガする。電位の振幅は、前述の電気的セットアップにより測定したように、500mWの定電力を得るように適合され、6kV~7kVピーク間で測定されるように制御された。
【0095】
液体8と気体12の流出混合物は、8℃の水浴中に浸漬したバイアル中にPTFEチューブを通して一緒に導かれた。バイアルに接続された第2チューブは、気体12の出口として機能した。冷浴は揮発性シクロヘキサンの剥離を減少させ、最終的な変換の評価に影響する。同じ回収条件で、既知量の純シクロヘキサンを6L/minで、アルゴンガスを1mL/minで流して実験したところ、確かに14±5%のシクロヘキサンの損失を示したが、冷浴なしでは、目立った30%のシクロヘキサンの損失を測定した。8℃の温度は、シクロヘキサンの融解温度(Tm=6.47℃)をわずかに上回るように選択された。実際、0℃の氷浴が用いられると、バイアル内のチューブから流れ出る液体が凍結し、チューブの端が詰まる。この温度制御なしでは、リアクタの応力限界まで流入する気体レートのためにプラズマ・マイクロリアクタ1の内部の圧力は上昇し、リアクタ自体が剥離し、漏れて、完全に使用できなくなる。
【0096】
液体8の分析は、GC-MS/FID(Agilent、7890B GC+5977B MSD)によって行われた。クロマトグラフは、3つの主生成物、1つの二次生成物、及び多くの痕跡を示した。主生成物のうち2つはシクロヘキサノール(cyclohexanol)及びシクロヘキサノン(cyclohexanone)として、二次生成物はシクロヘキセン(cyclohexene)として、確実に同定された。三次主生成物はシクロヘキシル・ヒドロペルオキシド(cyclohexyl hydroperoxide)であると考えられ、これは2つの元素によって間接的に証明された。先ず、プラズマ・マイクロリアクタ1を通過する前後のシクロヘキサンについて、ヒドロペルオキシド官能基のバンド試験を行い、後者の場合のみポジティブの結果を得た。次に、流出液のNaBH4還元を行い、対応するクロマトグラフの比較は、シクロヘキサノールのピークが増加する一方で未知ピークの消失を示した。これはシクロヘキシル・ヒドロペルオキシドのシクロヘキサノールへの還元と一致する。
【0097】
シクロヘキサノール、シクロヘキサノン及びシクロヘキシル・ヒドロペルオキシドの3つの生成物は、実際には同じ反応連鎖に由来し、容易に1つの生成物に変換することができる(シクロヘキサノール、還元による)。生成物は工業用途に使用可能である。シクロヘキサノール/シクロヘキサノン混合物は、実際には「KA油」として知られており、ナイロンの前駆体として使用される。したがって、反応の選択性を計算する際に、これらの生成物を一緒に考慮することが選択された。
【0098】
図20は、出力液体8中の化合物のモル分率を示す。各反応時間(30秒、1分及び2分)について、図の部分(a)は未知化合物の割合を示し、図の部分(b)はシクロヘキシル・ヒドロペルオキシドの割合を示し、図の部分(c)はシクロヘキサノンの割合を示し、図の部分(d)はシクロヘキサノールの割合を示し、図の部分(e)はシクロヘキセンの割合を示す。したがって、プラズマ・マイクロリアクタ1内ではシクロヘキサンの部分酸化が行われ、過酸化は検出されなかった。
【0099】
表1は、3つの異なる反応時間における、プラズマ・マイクロリアクタ1内での変換の選択性及び変換されたシクロヘキサンの割合(全変換)を示す。
【表1】
【0100】
実施例3
反応物の変化
実施例2に記載されているように、他の気体12を用いて化学反応を実施することができる。プラズマ・マイクロリアクタ1内でのシクロヘキサン上での純粋な水素気体12の使用は、主生成物としてシクロヘキセンを生成するが、これは、脱水素反応を証明するので、予想外である。シクロヘキセンの選択性は17%から35%と幅があり、全体的な変換率の上昇に伴って低下する。有意な量の副生成物は、シクロヘキセンの二重結合のためにシクロヘキサンよりも反応性が高いシクロヘキセンの過剰反応に起因すると考えられる。表2は、供給される気体の種類によるプラズマ・マイクロリアクタ1内で実施される可能性のある反応を示す。
【表2】
【0101】
実施例4
液体及び気体マイクロチャネルの設計の変更
マイクロリアクタは、図3Dに示される幾何学的形状に従って、Borofloat(R)33ガラス内に製造された。製作工程には、2枚のガラス板のプラズマエッチングとその後の接合が含まれた。全体的に蛇行形状のチャネルでは、液体流はチャネルの1mm幅の側面のうちの1つに、数十個の40μm×40μmの平行溝が案内され、気体流は高さ300μm以上のチャネル空間で流れることを可能にされたた。
【0102】
図21は、様々な流量について透過で撮影されたチャネルの写真である。空のとき(図21d)、チャネルは、光を散乱するプラズマエッチングされたガラス表面の粒状性のため、暗く見える。液層で覆われると、表面が滑らかになり、光散乱が少なくなり、画像が明るくなる。次いで、液体流の存在は、画像の輝度によって評価される。図21a、21b及び21cにおいて、流量は、酸素気体20ml/min、液体シクロヘキサン25、30及び35μl/minであった。
【0103】
チャネルの溝状構造は、このセットアップでは見えないままであるが、チャネルの中心とそのエッジ(明るい方、図21b及び21cのみ)の2つの領域の間の差を明確に見ることができる。後者は、チャネルの全高さを有する液体の流れを示す。対照的に、前者は溝状の構造のおかげで、チャネルの底部のみを湿らせる薄い液体層である。チャネルをズームすることで、この構造を注意深く見て推測することができる(図22、酸素流量10ml/min、シクロヘキサン流量20μl/min)。
【0104】
その後、チップの両側に2つのくし形銅電極を堆積させて、直接光学的可視化を可能にした。プラズマは、2kHzの20kVピーク間の正弦高電圧によってトリガされた。
【0105】
図23及び24は、プラズマを有効にした、20ml/minの酸素及び30μl/minのシクロヘキサンの二相流を示す。液体流は、溝内に十分に閉じ込められている。流出液のGC‐FID分析は、5.9%の転化率と83%の選択性を示した(シクロヘキサノール+シクロヘキサノン+シクロヘキシル・ヒドロペルオキシドにおいて)。
【0106】
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図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24