(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】スパーキャップおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20231115BHJP
F03D 80/30 20160101ALI20231115BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231115BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231115BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231115BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231115BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231115BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20231115BHJP
B29C 70/28 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F03D1/06 A
F03D80/30
C09J9/02
C09J201/00
C09J11/04
C09J163/00
B32B27/18 Z
B32B5/02
B29C70/28
(21)【出願番号】P 2020552255
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 US2019024563
(87)【国際公開番号】W WO2019191414
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-28
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520047510
【氏名又は名称】ゾルテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エリック バルディーニ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マイケル コービン
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-003229(JP,A)
【文献】特開2011-231297(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102277097(CN,A)
【文献】特開2008-186590(JP,A)
【文献】特表2012-524851(JP,A)
【文献】特開昭63-172722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033249(WO,A1)
【文献】特開平03-124407(JP,A)
【文献】特開2013-022757(JP,A)
【文献】特開2013-084587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/00
B32B 1/00-43/00
B29C 70/28
F03D 1/06、80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの構成要素を含むスパーキャップであって、第1構成要素の一部が、導電性接着剤組成物を使用して、第2構成要素の一部に接着接合されており、
前記導電性接着剤組成物は、
熱硬化性樹脂に分散された、粉砕された炭素繊維(milled carbon fiber)と、
硬化剤と、
を含み、
前記第1構成要素及び前記第2構成要素は、いずれも繊維強化樹脂複合材を含み、
前記2つの構成要素が、面取り領域を形成するスパーキャップ。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載のスパーキャップ。
【請求項3】
上記硬化剤が、アミン官能基を含む、請求項1又は請求項2に記載のスパーキャップ。
【請求項4】
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、及びそれらの任意の組み合わせ、コポリマー、及び/又は誘導体のうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載のスパーキャップ。
【請求項5】
前記粉砕された炭素繊維が、導電性接着剤組成物の総重量に対して1重量%から20重量%の範囲の量において存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載のスパーキャップ。
【請求項6】
前記粉砕された炭素繊維が、5~10ミクロン(μm)の範囲の平均直径及び1~300ミクロン(μm)の範囲の平均長さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のスパーキャップ。
【請求項7】
前記導電性接着剤組成物が、10
-14ジーメンス/cmから10
-10ジーメンス/cmの範囲の線形伝導率(linear conductivity)を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスパーキャップ。
【請求項8】
前記粉砕された炭素繊維が、サイジング剤を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載のスパーキャップ。
【請求項9】
前記粉砕された炭素繊維が、サイジング剤を含まない、新品の又はリサイクルされた炭素繊維である、請求項1~8のいずれか1項に記載のスパーキャップ。
【請求項10】
前記繊維強化樹脂複合材が、バインダー樹脂を融着させた炭素繊維を含む、請求項1に記載のスパーキャップ。
【請求項11】
前記少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つが、引抜き成形されたシート、樹脂注入織物、予め含侵させたテープ、又はシート成形コンパウンド、の形態である、請求項1に記載のスパーキャップ。
【請求項12】
前記引抜き成形されたシートが、バインダー樹脂を融着させた平面トウ形態において炭素繊維を含む、請求項11に記載のスパーキャップ。
【請求項13】
前記バインダー樹脂が、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びシリコーン樹脂の中から選択された熱硬化性バインダー樹脂を含む、請求項10に記載のスパーキャップ。
【請求項14】
前記バインダー樹脂が、そのブレンド自体を含め、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアリールエーテルケトンの中から選択された熱可塑性バインダー樹脂を含む、請求項10に記載のスパーキャップ。
【請求項15】
前記樹脂注入織物が、多方向性織物、一方向性織物、又は織布を含む、請求項11に記載のスパーキャップ。
【請求項16】
前記少なくとも2つの構成要素が、
a)ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維、又は
b)エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維
のうちの少なくとも1つを含み、
この場合、体積%で表された量は、上記繊維強化樹脂複合材の総体積に基づく、
請求項1に記載のスパーキャップ。
【請求項17】
a)粉砕された炭素繊維を熱硬化性樹脂に分散させて混合物を形成するステップと、
b)該混合物に硬化剤を加えて導電性接着剤を形成するステップと、
c)第1構成要素の表面の一部に前記導電性接着剤を塗工するステップと、
d)前記導電性接着剤が第1構成要素と第2構成要素との間に配置されるように、前記第2構成要素を前記第1構成要素に接着接合させて複合パネルを形成するステップと、
を含む方法であって、
前記第1構成要素及び前記第2構成要素は、いずれも繊維強化樹脂複合材を含み、
前記複合パネルが、スパーキャップの形態である方法。
【請求項18】
上記粉砕された炭素繊維を熱硬化性樹脂に分散させて混合物を形成するステップが、機械的に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物に硬化剤を加えるステップが、さらに、真空下において混合するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記導電性接着剤を形成するために前記混合物を硬化させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記繊維強化樹脂複合材が、バインダー樹脂を融着させた炭素繊維を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記繊維強化樹脂複合材が、引抜き成形シート、樹脂注入織物、又は予め含侵されたテープ、又はシート成形コンパウンドの形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記引抜き成形シートが、バインダー樹脂を融着させた平面トウ形態において炭素繊維を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記バインダー樹脂が、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びシリコーン樹脂の中から選択された熱硬化性バインダー樹脂を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記バインダー樹脂が、そのブレンド自体を含め、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアリールエーテルケトンの中から選択された熱可塑性バインダー樹脂を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記樹脂注入織物が、多方向性織物、一方向性織物、又は織布を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記引抜き成形シートが、前記繊維強化樹脂複合材の総体積に対して20~80体積%の炭素繊維を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記繊維強化樹脂複合材が、ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維、又はエポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維の少なくとも1つを含む引抜き成形シートの形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記スパーキャップが面取り領域を有する、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年3月28日に「ELECTRICALLY CONDUCTIVE ADHESIVE」の名称で出願された米国仮特許出願第62/649,054号の優先権の恩典に関し、ならびにその権利を主張するものであり、なお、当該仮出願の内容は、全ての目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、熱硬化性樹脂に分散された粉砕された炭素繊維(milled carbon fiber)と硬化剤とを含む導電性接着剤組成物に関する。本開示はさらに、概して、当該導電性接着剤組成物によって接着接合された少なくとも2つの構成要素を含む物品、ならびにそのような接着剤及び物品の作製方法にも関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
接着剤を使用して接合された場合、多くの導電性表面は、良好な縦導電性及び表面導電性を示すが、膜厚方向の横導電性は乏しい。したがって、導電性表面を接合するための、及び接合された表面の膜厚方向の横導電性を向上させるための、改良された導電性接着剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、熱硬化性樹脂に分散された粉砕された炭素繊維と硬化剤とを含む導電性接着剤組成物が提供される。
【0005】
別の態様において、少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、第1構成要素の一部が、本発明の導電性接着剤組成物を使用して、第2構成要素の一部に接着接合される、物品が提供される。
【0006】
さらなる別の態様において、本発明の導電性接着剤組成物を使用してお互いに接着接合された複数の繊維強化樹脂複合材シートを含むスパーキャップ(spar cap)であって、各繊維強化樹脂複合材シートが、バインダー樹脂を融着させた50体積%から80体積%の炭素繊維を含む、スパーキャップが提供され、この場合、体積%で表される量は、当該繊維強化樹脂複合材シートの総体積に基づく。
【0007】
さらなる別の態様において、熱硬化性樹脂に粉砕された炭素繊維を分散させて混合物を形成するステップと、当該混合物に硬化剤を加え、場合により導電性接着剤を形成するために硬化させるステップとを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の1つ(複数)の実施形態を例示し、ならびに記述された説明と共に、本発明のある特定の原理を説明するのに役立つ。
【0009】
【
図1】本発明の様々な実施形態による、導電性接着剤を作製する方法を示す。
【
図2】本発明の様々な実施形態による、導電性接着剤を作製する別の方法を示す。
【
図3】真空の有無での混合方法における違いの結果を示す。
【
図4】パネルの表面への本発明の導電性接着剤の塗工方法を示す。
【
図5】本発明の様々な実施形態による、複合パネルを含む例示的物品の一部分の断面図を示す。
【
図6】本発明の様々な実施形態による、複合パネルを含む別の例示的物品の一部分の断面図を示す。
【
図7】本発明の様々な実施形態によるスパーキャップの一部分の例示的概略断面図を示す。
【
図8】本発明の様々な実施形態によるスパーキャップの一部分の別の例示的概略断面図を示す。
【
図9】ANSI ANSI/ESD STM11.12に従った、厚さ方向の導電率を測定するための例示的実験セットアップを示す。
【
図10】フィラー含有率の関数としての、2つの異なる混合方法によって作製された本発明の導電性接着剤で接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルの膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む。
【
図11】フィラー含有率の関数としての、本発明の導電性接着剤によって接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルの膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、20~80体積%の炭素繊維を含む。
【
図12】フィラー含有率の関数としての、2つの異なる混合方法によって作製された本発明の導電性接着剤によって接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルの膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む。
【
図13】非導電性接着剤接合部及び導電性接着剤接合部における落雷の結果を示す。
【
図14】本発明の様々な実施形態による、例示的C断面のイラストを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特定の実施形態を参照しながら本明細書において例示及び説明されるが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図しない。むしろ、特許請求の範囲と等価な範囲内において、本発明から逸脱することなく、当該詳細に対して様々な変更を為すことができる。
【0011】
風力エネルギー産業は、炭素繊維強化樹脂複合材がスパーキャップに対して一般的に使用されてきたブレードのための避雷保護を必要とする。製造された炭素繊維強化樹脂複合材は、典型的には、導電性ではないバインダー樹脂を使用して、積み重ねて一緒に接合される。炭素繊維の導電性における強い異方性及びこれらの炭素繊維強化樹脂複合材の一方向性平面トウ形状に起因して、これらの炭素繊維強化樹脂複合材の縦方向の導電性は、横方向の導電性より4桁高くあり得る。したがって、これらの異方性の結果、落雷が落ちた際に、高エネルギーの電気が、縦方向に流れるであろうが、横方向にはアークを発するであろうし、それは、結果として温度上昇をもたらし、それにより、スパーキャップの層剥離又は焼却を生じ得る。したがって、スパーキャップを形成する当該炭素繊維強化樹脂複合材の膜厚方向の横導電性を効果的に高める必要があることが見出された。様々な技術、例えば、以下の手法などによって、材料の導電性を増加させることが想到された。
・接着剤へのナノ材料の組み入れ。しかしながら、ナノ材料は高価であり、ならびに、粉末状のナノ材料は、環境によっては危険物質と見なされ得るため、取り扱いにおいてCOMをさらに増加させるような特別な予防措置を必要とする場合がある。
・接着剤への金属粒子及び/又は金属でコーティングされた粒子の組み入れ。
・接着剤よりもむしろプレプレグ材料の導電性を向上させる。
・いくつかの目的のフィルムの作製。
・いくつかの目的の表面フィルム及び処理。
【0012】
これらのアプローチが様々な課題を抱えている限り、代替のアプローチは、接着剤の導電性を高めることに対して、より効率的で、コスト効率良くあり得る。さらに、接着剤の導電性を高めることは、スパーキャップにおける接合されたプレートのスタックの厚さ全体を通しての導電性を保証する方法を提供する。接着剤の導電性を効果的に高めることは、本発明の目的である。
【0013】
本明細書において、導電性接着剤組成物、当該導電性接着剤組成物によって接着接合された少なくとも2つの構成要素を含む物品、ならびにそれらを作製する方法が開示される。
【0014】
ある態様において、熱硬化性樹脂に分散された粉砕された炭素繊維と硬化剤とを含む導電性接着剤組成物が提供される。当該粉砕された炭素繊維は、当該導電性接着剤組成物の総重量に対して2重量%から40重量%、又は1重量%から50重量%の範囲の量において存在することができる。
【0015】
ある実施形態において、当該接着剤組成物は、10-14~10-10ジーメンス/cmの範囲の線形伝導率(linear conductivity)を有する。
【0016】
新品の炭素繊維から粉砕されたか、それともリサイクルされた炭素繊維から粉砕されたかにかかわらず、任意の好適な粉砕された炭素繊維を使用することができる。ある実施形態において、当該粉砕された炭素繊維は、サイジング剤を含まない、リサイクルされた炭素繊維である。本明細書において使用される場合、語句「サイジング剤を含まない、リサイクルされた炭素繊維」は、それらの寿命のある時点において廃棄物となった炭素繊維を意味する。当該リサイクルされた粉砕された炭素繊維の繊維源は、長繊維又は短繊維製造物にとって好適ではないと考えられた繊維、繊維の通常の生産の際に切断された繊維、又は炭素繊維中間生成物の製造プロセスからの残り物であり得る。さらに、各繊維生産工程の終わりには残ったわずかな繊維が存在し、それは、リサイクルされた粉砕された炭素繊維を作製するための繊維源として使用することができる。これらの破棄された炭素繊維は、粉砕されて粉砕された炭素繊維へと転化される前に、有しているかもしれない全てのサイジング剤が除去される。
【0017】
ある実施形態において、当該粉砕された炭素繊維は、約0.00155Ohm・cmの電気抵抗を有する。当該粉砕された炭素繊維は、5~10ミクロン(μm)の範囲の平均直径及び5~300ミクロン(μm)の範囲の平均長さを有し得る。ある実施形態において、粉砕された炭素繊維は、7.2ミクロンの平均直径及び100ミクロンの平均長さを有し得る。市販の粉砕された炭素繊維における好適な例としては、これらに限定されるわけではないが、どちらもZoltek Corporationから入手可能であるPX35MF015G、PX35MF0200が挙げられる。
【0018】
任意の好適な熱硬化性樹脂を使用することができ、そのようなものとしては、これらに限定されるわけではないが、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂(例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂(PF)、フェノールネオプレン、レゾルシノールホルムアルデヒド(RF))、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、ならびにその任意の組み合わせ、コポリマー、及び/又は誘導体、のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0019】
ある実施形態において、当該熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である。市販の熱硬化性樹脂のいくつかの例としては、これらに限定されるわけではないが、Sika Corporationから入手可能なSikadur WTG-1280 Part A;Ko¨mmerling Corporationから入手可能なKo¨rapur 4W-Komp Aが挙げられる。
【0020】
別の実施形態において、当該硬化剤は、アミン官能基を含む。市販の硬化剤のいくつかの例としては、これらに限定されるわけではないが、Sika Corporationから入手可能なSikadur WT6-1050 Part B;及びKo¨mmerling Corporationから入手可能なKo¨racur 4W-Komp Bが挙げられる。
【0021】
さらなる別の実施形態において、当該熱硬化性樹脂及び当該硬化剤は、2成分接着剤キットとして入手可能である。市販の2成分接着剤キットのいくつかの例としては、これらに限定されるわけではないが、Sika Corporationから入手可能なSikadur WTG-1280;及びKo¨mmerling Corporationから入手可能なKo¨rapur 4Wが挙げられる。
【0022】
ある実施形態において、本発明の導電性接着剤組成物は、風車接着用途での使用にとって好適である。
【0023】
本開示の導電性接着剤は、スパーキャップの他に様々な導電性接合用途、例えば、ブレードのための避雷設備の一部である主要避雷導線ケーブルにスパーキャップを接続するケーブルの接続など、に使用することができるであろう。
【0024】
接着剤組成物を作製する方法
ある態様において、熱硬化性樹脂に粉砕された炭素繊維を分散させて混合物を形成するステップと、当該混合物に硬化剤を加えるステップと、その後に満遍なく混合するステップと、場合により、導電性接着剤を形成するために硬化させるステップとを含む方法が提供される。熱硬化性樹脂に粉砕された炭素繊維を分散させて混合物を形成するステップのために、任意の好適な機械的手段を使用することができる。ある実施形態において、当該混合物に硬化剤を加えるステップ及び混合するステップは、空気中、又は不活性環境下において行われる。別の実施形態において、当該混合物に硬化剤を加えるステップ及び混合するステップは、真空下において行われる。各混合ステップのために必要な時間は、組成物及び機械的手段に依存するであろうし、30秒から60分の範囲であり得る。
【0025】
物品
別の態様において、少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、第1構成要素の一部が、本明細書の上記において開示されるような導電性接着剤組成物を使用して、第2構成要素の一部に接着接合されている、物品が提供される。
【0026】
任意の好適な材料を、当該構成要素のために使用することができる。一実施形態において、当該少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つは、繊維強化樹脂複合材を含む。当該繊維強化樹脂複合材は、繊維とバインダー樹脂とを含み得る。
【0027】
上記繊維強化樹脂複合材の実施形態において、繊維は、炭素繊維である。別の実施形態において、繊維は、導電性サイジング処理繊維である。
【0028】
さらなる別の実施形態において、上記繊維強化樹脂複合材は、バインダー樹脂を融着させた炭素繊維を含む。
【0029】
本発明による繊維強化樹脂複合材は、当技術分野において既知の任意のバインダー樹脂から、及びそれらに基づいて形成され得る。
【0030】
熱硬化性(コ)ポリマーであるバインダー樹脂の非限定的な例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0031】
熱可塑性(コ)ポリマーであるバインダー樹脂の非限定的な例としては、その合金及びブレンドを含め、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアリールエーテルケトンが挙げられる。
【0032】
ある実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材は、引抜き成形シート、織物、又はプレプレグの形態である。別の実施形態において、引抜き成形シートの形態の繊維強化樹脂複合材は、バインダー樹脂を融着させた平面トウ形態において炭素繊維を含む。さらなる別の実施形態において、当該繊維が、多方向性(multidirectional)織物、一方向性(unidirectional)織物、又は織布である、織物の形態の繊維強化樹脂複合材。
【0033】
ある実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材は、20~80体積%の繊維補強材及びビニルエステル樹脂、20~80体積%の繊維補強材及びポリエステル樹脂、又は20~80体積%の繊維補強材及びエポキシ樹脂、のうちの少なくとも1つを含み、この場合、体積%で表された量は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に基づく。
【0034】
ある実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材は、引抜き成形シート、樹脂注入織物、又は予め含侵されたテープ、又はシート成形コンパウンドの形態である。引抜き成形された形態において、当該繊維は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に対して40~80体積%、好ましくは60~72体積%の範囲の量において存在し得る。引抜き成形された形態において、当該繊維は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に対して40~80体積%、好ましくは60~72体積%の範囲の量において存在し得る。プレプレグの形態において、当該繊維は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に対して40~80体積%、好ましくは54~61体積%の範囲の量において存在し得る。樹脂注入織物の形態において、当該繊維は、繊維強化樹脂複合材の総体積に対して、40~80体積%、好ましくは48~59体積%の範囲の量において存在し得る。
【0035】
当該繊維強化樹脂複合材はさらに、複合材、例えば、ポリマー複合材など、を強化するための、当技術分野において既知の任意のフィラー及び/又は粒子も含んでもよく、そのような粒子の例としては、これらに限定されるわけではないが、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、及びシリカが挙げられる。
【0036】
物品
ある態様において、当該導電性接着剤組成物を使用してお互いに接着接合された少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、当該少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つが、本明細書の上記において開示されるような繊維強化樹脂複合材を含む、物品が提供される。
【0037】
図5は、本発明の様々な実施形態による、複合パネルを含む例示的物品の一部分の断面図を示している。当該例示的複合パネルは、2つの構成要素を含み、第1構成要素は、当該第1構成要素と第2構成要素との間に配置されそれらに接触する導電性接着剤組成物を使用して、当該第2構成要素に接着接合される。ある実施形態において、当該2つの構成要素のうちの少なくとも1つは、繊維強化樹脂複合材を含む。
【0038】
図6は、本開示の導電性接着剤組成物を使用してお互いに接着接合された複数のパネルを含む複合パネルを含む別の例示的物品の一部分の断面図を示している。
図6に示されるように、当該例示的複合パネルは、少なくとも4つのパネルを含み、各パネルの間に配置されてそれらと接触する導電性接着剤組成物を使用して、第1パネルは、第2パネルに接着接合されており、当該第2パネルは、第3のパネルに接着接合されて、第3パネルは、第4パネルに接着接合されている。ある実施形態において、これらのパネルは、少なくとも1つの端部が傾斜されて斜面を有するように、お互いの上に積み重ねられる。ある実施形態において、これら複数のパネルのうちの少なくとも1つは、繊維強化樹脂複合材を含む。
【0039】
本発明の複合材パネルは、任意の好適な厚さ、例えば、0.5~30mmの範囲の厚さ、を有することができる。
【0040】
ある実施形態において、上記物品は、本発明の導電性接着剤組成物を使用してお互いに接着接合された複数の繊維強化樹脂複合材シートを含むスパーキャップであり、
図10は、スパーキャップの一部分の概略断面図を示している。
【0041】
図7は、本発明の様々な実施形態によるスパーキャップの一部分の例示的概略断面図を示している。特に、
図7は、スパーキャップにおける接合板の構成を示している。
【0042】
図8は、本発明の様々な実施形態によるスパーキャップの一部分の別の例示的概略断面図を示している。特に、
図8は、一方のプレートの面取り領域の端部と、当該面取りされたプレート及び隣接するプレートの周囲表面領域とを覆うための、導電性接着剤を使用した状態を示している。
【0043】
当該スパーキャップの実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材シートは、ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む。当該スパーキャップの別の実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材シートは、エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む。スパーキャップの別の実施形態において、当該繊維強化樹脂複合材シートは、ポリエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む。当該スパーキャップのさらなる別の実施形態において、複数の繊維強化樹脂複合材シートのうちの少なくとも1枚は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に対して40~80体積%、好ましくは60~72体積%の繊維を含む引抜き成形シートである。
【0044】
ある実施形態において、少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、第1構成要素の一部が、本開示の導電性接着剤によって第2構成要素の一部に接着接合されている、物品が提供される。ある実施形態において、当該物品は、スパーキャップであり、当該2つの構成要素は、面取り領域を形成する。別の実施形態において、当該物品はさらに、当該少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つを覆うように配置された導電性接着剤を含む。さらなる別の実施形態において、当該導電性接着剤は、当該面取り領域を越えて、隣接する構成要素の両方の表面上まで広がる。
【0045】
上記導電性は、本願の導電性接着剤組成物を使用することにより、上記接着接合された繊維強化樹脂複合材シートの間において維持され、結果としてアーク放電現象は最小限に抑えられるであろうと考えられる。結果として得られる本発明のスパーキャップは、繊維強化樹脂複合材シートの間に導電性中間層を有さないものと比べてはるかに高い落雷耐性を有するものとなると考えられる。
【0046】
複合材シートを作製する方法
ある態様において、第1パネルの表面の一部の上に導電性接着剤を塗工するステップと;当該導電性接着剤が第1パネルと第2パネルの間に配置されて複合パネルを形成するように、当該第1パネルに第2パネルを接着接合するステップとを含む方法が提供される。接着剤の塗工には、任意の好適な方法を使用することができ、そのような方法としては、これらに限定されるわけではないが、噴霧塗工、ウェブ塗工、ホイール塗工、又はブラシ塗工が挙げられる。塗工方法は、上記導電性接着剤の特定の組成物、上記パネルの性質、及び要求生産量に基づく。上記方法はさらに、複合パネルを硬化させるステップを含む。当該硬化ステップは上記接着剤組成物中に存在する硬化剤の性質に応じて、熱的又は光化学的に行うことができる。当該硬化ステップは、空気中において、不活性環境下において、又は真空下において行うことができる。
【0047】
ある実施形態において、当該第1パネル又は当該第2パネルのうちの少なくとも1つは、本明細書の上記において開示されるような繊維強化樹脂複合材を含む。
【0048】
ある態様において、当該方法はさらに、引抜き成形シート又は樹脂注入織物、又は予め含漬されたテープ(プレプレグ、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含侵させたもの)、又はシート成形コンパウンド(SMC)の形態において繊維強化樹脂複合材を形成するステップを含み得る。ある実施形態において、上記繊維強化樹脂複合材を形成するステップは、繊維を織物へと構成するステップと、当該織物にバインダー樹脂を注入して樹脂注入織物又はプレプレグを形成するステップとを含むことができる。別の実施形態において、上記繊維強化樹脂複合材を形成するステップは、繊維を平面トウ形態へと構成するステップと、当該平面トウ形態にバインダー樹脂を注入するステップと、当該樹脂注入平面トウ形態を引抜き成形して、引抜き成形シートを形成するステップとを含むことができる。
【0049】
別の実施形態において、上記繊維強化樹脂複合材を形成するステップは、繊維と織物との組み合わせを構造断面形態へと構成するステップと、当該構造断面形態にバインダー樹脂を注入するステップと、当該樹脂注入された構造断面形態を引抜き成形して、結果として引抜き成形された構造断面(例えば、C断面、J断面、又はπ断面)を生じるステップとを含むことができる。
図14は、本発明の様々な実施形態による例示的C断面のイラストを示している。
【0050】
別の実施形態において、繊維強化樹脂複合材を形成するステップが、複数の短繊維又は複数の長繊維のうちの少なくとも一方をバインダー樹脂と共にコンパウンド化するステップと、結果として得られた組成物を物品へと圧縮成形又は射出成形するステップとを含むことができる。
【0051】
別の実施形態において、当該方法は、スパーキャップの形態において複合パネルを作製するステップを含んでもよい。
【0052】
ある実施形態において、本発明の導電性接着剤組成物は、風車用途での使用にとって好適である。
【0053】
少なくとも2つの構成要素を接着接合する際における本発明の導電性接着剤組成物の使用は、従来の接着剤に勝るいくつかの利点を提供し、そのような利点としては、これらに限定されるわけではないが、以下のようなものが挙げられる。:
・低コスト、すなわち、粉砕された繊維(milled fiber)は、先行技術において開示されるようなナノ材料よりもはるかに安価である。ナノ粒子の特徴的寸法は、この用途において求められておらず、したがって、不要な経費負担であろう。その上、粉砕された炭素繊維の粉末形態に対する特別な予防措置を取る必要がない。対照的に、粉末状のナノ粒子は、環境によっては危険な物質であると見なすことができる。
・そのアスペクト比に起因して、粉砕された繊維は、いくつかの構造的/機械的有益性を接着剤に付与する。
・粉砕された炭素繊維は、接合された炭素プレートとの完全な相容性を保証する。
・粉砕された炭素繊維における比較的低いレベルは、
図7~9に示されるように、炭素プレートのスタックにおいて、厚さ方向の導電性を保証するために必要である。
・2成分接着剤の場合、粉砕された繊維は、パートA(樹脂成分)中へと予混合することができ;その結果、2成分導電性接着剤を使用者に提供することができる。したがって、使用者は、当該2成分導電性接着剤を混合及び使用する場合、普通のプロセスを維持するであろう。さらに、これは、自動混合管アプリケーターによる、使用場所での混合を可能にする。
・風車製造用途の場合、既に使用されている2成分接着剤を使用することは、プロセスの熟知、機械的接合特性、及び取り扱い適性の保持を提供する。
・全ての他の既知のアプローチとは対照的に、本発明は、導電性フィラーとしての、粉砕された炭素繊維の使用を開示する。結果として得られる導電性接着剤を、入手した炭素複合材の積層化に使用することによって、上記導電性は、風車型タービンブレードにおける落雷事象の際の層の間での絶縁破壊を減じる。
【0054】
より詳細には、以下は、本発明の特定の実施形態を表している。
実施形態1
a)熱硬化性樹脂に分散された粉砕された炭素繊維と;
b)硬化剤と
を含む導電性接着剤組成物。
実施形態2
上記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、実施形態1に記載の導電性接着剤組成物。
実施形態3
上記硬化剤が、アミン官能基を含む、実施形態1又は2に記載の導電性接着剤組成物。
実施形態4
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、及びそれらの任意の組み合わせ、コポリマー、及び/又は誘導体のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態5
上記粉砕された炭素繊維が、上記導電性接着剤組成物の総重量に対して1重量%から20重量%の範囲の量において存在する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態6
上記粉砕された炭素繊維が、5~10ミクロン(μm)の範囲の平均直径及び1~300ミクロン(μm)の範囲の平均長さを有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態7
10-14~10-10ジーメンス/cmの範囲の線形導電率(linear conductivity)を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態8
上記粉砕された炭素繊維が、サイジング剤を含まない、実施形態1~7のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態9
上記粉砕された炭素繊維が、サイジング剤を含まない、新品の炭素繊維又はリサイクルされた炭素繊維である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物。
実施形態10
少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、第1構成要素の一部が、実施形態1~9のいずれか1つに記載の導電性接着剤組成物を使用して、第2構成要素の一部に接着接合されている、物品。
実施形態11
上記少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つが、繊維強化樹脂複合材を含む、実施形態10に記載の物品。
実施形態12
上記繊維強化樹脂複合材が、バインダー樹脂を融着させた炭素繊維を含む、実施形態11に記載の物品。
実施形態13
上記少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つが、引抜き成形シート、樹脂注入織物、予め含侵させたテープ、又はシート成形コンパウンドの形態である、実施形態10に記載の物品。
実施形態14
上記引抜き成形シートが、バインダー樹脂を融着させた平面トウ形態において炭素繊維を含む、実施形態12に記載の物品。
実施形態15
上記バインダー樹脂が、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びシリコーン樹脂の中から選択された熱硬化性バインダー樹脂を含む、実施形態12に記載の物品。
実施形態16
上記バインダー樹脂が、その合金及びブレンドを含め、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアリールエーテルケトンの中から選択された熱可塑性バインダー樹脂を含む、実施形態12に記載の物品。
実施形態17
上記織物が、多方向性織物、一方向性織物、又は織布を含む、実施形態13のいずれか1つに記載の物品。
実施形態18
上記引抜き成形シートが、
a)ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維、又は
b)エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維
のうちの少なくとも1つを含み、
この場合、体積%で表された量は、当該繊維強化樹脂複合材の総体積に基づく、実施形態13に記載の物品。
実施形態19
実施形態1~9のいずれか1つに記載の上記接着剤組成物を使用してお互いに接着接合された複数の繊維強化樹脂複合材シートを含むスパーキャップであって、
各繊維強化樹脂複合材シートが、バインダー樹脂を融着させた50体積%から80体積%の炭素繊維を含み、
この場合、体積%で表される量は、当該繊維強化樹脂複合材シートの総体積に基づく、
スパーキャップ。
実施形態20
上記繊維強化樹脂複合材シートが、ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む、実施形態19に記載の物品。
実施形態21
上記繊維強化樹脂複合材シートが、エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む、実施形態19に記載の物品。
実施形態22
a)粉砕された炭素繊維を熱硬化性樹脂に分散させて混合物を形成するステップと;
b)該混合物に硬化剤を加え、場合により導電性接着剤を形成するために硬化させるステップと
を含む方法。
実施形態23
上記粉砕された炭素繊維を熱硬化性樹脂に分散させて混合物を形成するステップが、機械を用いて行われる、実施形態22に記載の方法。
実施形態24
上記混合物に硬化剤を加えるステップが、さらに、真空下において混合するステップを含む、実施形態23に記載の方法。
実施形態25
さらに、
a)第1構成要素の表面の一部に上記導電性接着剤を塗工するステップと、
b)当該導電性接着剤が上記第1構成要素と第2構成要素との間に配置されるように当該第2構成要素を当該第1構成要素に接着接合させて複合パネルを形成するステップと、
を含む、実施形態22~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26
上記第1構成要素又は上記第2構成要素のうちの少なくとも一方が、繊維強化樹脂複合材を含む、実施形態25に記載の方法。
実施形態27
上記繊維強化樹脂複合材が、バインダー樹脂を融着させた炭素繊維を含む、実施形態26に記載の方法。
実施形態28
上記繊維強化樹脂複合材が、引抜き成形シート、樹脂注入織物、又は予め含侵されたテープ、又はシート成形コンパウンドの形態である、実施形態26に記載の方法。
実施形態29
上記引抜き成形シートが、バインダー樹脂を融着させた平面トウ形態において炭素繊維を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態30
上記バインダー樹脂が、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及びシリコーン樹脂の中から選択された熱硬化性バインダー樹脂を含む、実施形態27に記載の方法。
実施形態31
上記バインダー樹脂が、その合金及びブレンドを含め、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリアリールエーテルケトンの中から選択された熱可塑性バインダー樹脂を含む、実施形態27に記載の方法。
実施形態32
上記織物が、多方向性織物、一方向性織物、又は織布を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態33
上記引抜き成形シートが、上記繊維強化樹脂複合材の総体積に対して20~80体積%の炭素繊維を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態34
上記繊維強化樹脂複合材が、ビニルエステル樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む引抜き成形シートの形態である、実施形態28に記載の方法。
実施形態35
上記繊維強化樹脂複合材が、エポキシ樹脂を融着させた20~80体積%の炭素繊維を含む引抜き成形シートの形態である、実施形態28に記載の方法。
実施形態36
上記複合パネルが、スパーキャップの形態である、実施形態25~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37
少なくとも2つの構成要素を含む物品であって、第1構成要素の一部が、実施形態1~9のいずれか1つに記載の上記導電性接着剤によって第2構成要素の一部に接着接合されている、物品。
実施形態38
スパーキャップであり、ならびに上記2つの構成要素が、面取り領域を形成する、請求項37に記載の物品。
実施形態39
さらに、上記少なくとも2つの構成要素のうちの少なくとも1つを覆うように配置された導電性接着剤を含む、実施形態37に記載の物品。
実施形態40
上記導電性接着剤が、上記面取り領域を越えて、上記隣接する構成要素の両方の表面上まで広がる、実施形態38に記載の物品。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるであろうが、それらは、純粋に本発明の例示であることが意図され、いずれにおいても本発明の限定と見なされるべきではない。
【実施例】
【0055】
使用した材料:
Sikadur WTG-1280として入手可能な熱硬化性エポキシ樹脂(パートA)及びSikadur WTG-1050として入手可能な硬化剤(パートB)を、Sika Corporationから入手した。ZOLTEK PX35 MF200の粉砕された繊維(長さ約5μmから150μm、直径約7μm)をZoltek Corporationから入手した。全ての材料をそのまま使用した。
【0056】
使用した引抜き成形プロファイル:
実施例において以下の引抜き成形シートのプロファイルを使用した。
・38%のビニルエステルを伴う62%の繊維混入率(Fiber Volume Fraction:FVF)の炭素繊維
・28%のエポキシ樹脂を伴う72%のFVFの炭素繊維
【0057】
試験方法:
体積(膜厚方向)導電率は、
図9に示されるような、PROSTAT(登録商標) PRS-801抵抗システム又は同様の計器ならびにPROSTAT PRF-911コンセントリックリング又は同様の機器を使用して、 ANSI ANSI/ESD STM11.12により、電気抵抗から特定することができる。
【0058】
基本プロセス:
ステップ1:図1及び2に示される、導電性接着剤を作製する方法
粉砕された炭素繊維(PX35 MF200)を、2成分接着剤の熱硬化性エポキシ樹脂(パートA、Sikadur WTG-1280)中へ混合した。当該粉砕された炭素繊維は、接着剤組成物の総重量に対して2~37.5重量%の範囲の様々な量において加えた。当該混合ステップは、当該2つの成分が十分に混合されて均一な混合物を形成するまで行った。次いで、製造元による使用説明書に従って硬化剤/硬化成分(パートB、Sikadur WTG-1050)をパートA/粉砕された繊維の混合物に50:50の比において加え、十分に混合されて導電性接着剤を形成するまで混合した。
【0059】
図1及び2に示されるように、パートA/粉砕された繊維の混合物とパートBとの混合ステップは、空気中において、又は部分的に真空下において、実施することができる。
図3は、空気中において当該混合ステップを行った場合と、パートA/粉砕された繊維の混合物をパートBと混合するステップを真空下で行った場合との間の違いを示してる。
図3から明らかなように、真空下での混合ステップは、空気中において実施した場合に勝るある特定の利点、例えば、均一な混合及び気泡がないなど、を提供する。気泡は、パネル上に薄い均一な層の接着剤を得るためには有害であり得る。
【0060】
ステップ2:図4~6に示されるような複合パネルを作製する方法
図4に示されるように、最初に、完全に混合した導電性接着剤を薄い均一な層として第1引抜き成形プレート(62%体積分率のビニルエステル又は72%体積分率のエポキシ樹脂)の1つの片面上に塗工することによって引抜き成形された複合パネルを形成した。次いで、
図5に示されるように、第2引抜き成形プレートを、当該第1引抜き成形プレートの上記接着剤層の上に位置することにより、接合されたスタックの引抜き成形複合パネルを形成した。
【0061】
導電性接着剤の薄層を塗工し、その後にプレートを加えることで、引抜き成形複合パネルの接合スタックを形成するこのプロセスは、
図6に示されるように、所望の数のパネルに対して継続することができる。
【0062】
上記引抜き成形複合パネルの接合スタックを、接着剤供給元の推奨する、70℃で5時間真空下において硬化させる硬化サイクルにおいて、真空下で硬化させた。
【0063】
図10~12に示されるように、複合パネルに対して導電率試験を実施することにより、当該スタックの厚さ方向の導電性の劇的な向上を確認した。
【0064】
図10は、2つの異なる混合方法(通常の混合とResodyn LabRamモデルRasonantAcoustic(登録商標)ミキサー(RAM)を使用して行った混合)によって作製された本発明の導電性接着剤によって接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルにおける、フィラー含有量の関数としての、膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、ビニルエステル樹脂を融着させた62体積%の炭素繊維を含む。
図10からわかるように、真空下での混合は結果として気泡を有さない均一な混合物を生じたにもかかわらず、ResonantAcoustic(登録商標)ミキサーを使用して形成された複合パネルの導電率は、空気中で形成されたものと比べてより低い導電性を有した。この発見は、パートBの一部がLabRamミキサーの壁面上に固着したことにより、結果として、パートA/粉砕された繊維に対する硬化剤/硬化成分(パートB、Sikadur WTG-1050)の量の比が、供給元の推奨した50:50比と異なっていたためである。
【0065】
図11は、フィラー含有率の関数としての、本開示の導電性接着剤によって接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルの膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、62体積%の炭素繊維を含む。
【0066】
図12は、フィラー含有率の関数としての、2つの異なる混合方法によって作製された本開示の様々な実施形態の導電性接着剤によって接着接合された2枚の引抜き成形シートを含む複合パネルの膜厚方向の導電率を示すグラフを示しており、この場合、各引抜き成形シートは、エポキシ樹脂を融着させた72体積%の炭素繊維を含む。
【0067】
図11及び12は、フィラーを含まない接着剤と比較して、繊維強化複合材の組成に関係なく、上記接着剤組成物が、スタックを通して測定された導電率における驚くべき劇的な増加を提供し、単一のパネル(単一のプロファイル)に近い導電率に達することを示している。
【0068】
図13は、2枚のプレートの面取り領域への導電性接着剤の使用の効果を比較している。
図13の第1パネルは、電気エネルギーの落雷を受けた場合の絶縁性接合部の結果を示している。当該エネルギーは、一方のプレートの両方の近傍表面(a)から第2プレートの近傍表面(b)へとアークを発生している。
【0069】
図13の第2パネルは、導電性接着接合部における同じ落雷の結果を示している。このパネルにおいて、電気は、2枚のプレートの近傍表面から近傍表面への1つの経路のみを使用してアークを発生している。
図13に示されるように、導電性接合部は、落雷から損傷を受けないことを示している。当該接合部及び面取り部に隣接する各プレートの表面領域に導電性接着剤を塗工する方法は、当該接合部の近くでのアーク発生の可能性を減じるであろう。
【0070】
本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく本発明の実践に様々な改変及び変更を為すことができることは、当業者に明らかであろう。本発明の他の実施形態は、本明細書の熟考及び本発明の実践から、当業者に明らかになろう。本明細書及び実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲及び要旨は特許請求の範囲によって示されることが意図される。