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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】シールドパッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20231115BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L23/00 A
H01L23/00 C
H01L23/28 J
H01L23/28 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020558418
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045237
(87)【国際公開番号】W WO2020105622
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018218409
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】野口 英俊
(72)【発明者】
【氏名】中園 元
(72)【発明者】
【氏名】石岡 宗悟
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-015498(JP,A)
【文献】特開2000-334785(JP,A)
【文献】特開平06-013475(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181706(WO,A1)
【文献】特開2001-118945(JP,A)
【文献】特開2015-233164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54
H01L23/00-23/04
H01L23/06-23/10
H01L23/16-23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、
前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、
前記非図形部のSal(最小自己相関長さ)と前記図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0であり、
前記封止材の表面は、複数の溝部が集合することにより線描及び/又は点描された描写領域と、前記描写領域以外の非描写領域とからなり、
前記描写領域の上に位置する前記シールド層の表面には、前記溝部に起因する複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、集合して前記図形部を線描及び/又は点描していることを特徴とするシールドパッケージ。
【請求項2】
電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、
前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、
前記非図形部のSmr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)と前記図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0であり、
前記封止材の表面は、複数の溝部が集合することにより線描及び/又は点描された描写領域と、前記描写領域以外の非描写領域とからなり、
前記描写領域の上に位置する前記シールド層の表面には、前記溝部に起因する複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、集合して前記図形部を線描及び/又は点描していることを特徴とするシールドパッケージ。
【請求項3】
電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、
前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、
前記非図形部のSsk(スキューネス)と前記図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0であり、
前記封止材の表面は、複数の溝部が集合することにより線描及び/又は点描された描写領域と、前記描写領域以外の非描写領域とからなり、
前記描写領域の上に位置する前記シールド層の表面には、前記溝部に起因する複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、集合して前記図形部を線描及び/又は点描していることを特徴とするシールドパッケージ。
【請求項4】
電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、
前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、
前記非図形部のRvk(突出谷部深さ)と前記図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4であり、
前記封止材の表面は、複数の溝部が集合することにより線描及び/又は点描された描写領域と、前記描写領域以外の非描写領域とからなり、
前記描写領域の上に位置する前記シールド層の表面には、前記溝部に起因する複数の凹部が形成されており、
前記凹部は、集合して前記図形部を線描及び/又は点描していることを特徴とするシールドパッケージ。
【請求項5】
複数の前記溝部の内、少なくとも一部は、線状に形成されている請求項1~4のいずれかに記載のシールドパッケージ。
【請求項6】
複数の前記溝部の内、少なくとも一部は、直線状に、かつ、前記溝部同士が平行になるように形成されている請求項に記載のシールドパッケージ。
【請求項7】
隣り合う前記溝部同士の間隔は、10~100μmである請求項に記載のシールドパッケージ。
【請求項8】
複数の前記溝部の内、少なくとも一部は、格子状に形成されている請求項1~4のいずれかに記載のシールドパッケージ。
【請求項9】
前記溝部により形成される格子の幅は、10~100μmである請求項に記載のシールドパッケージ。
【請求項10】
前記溝部の幅は、5~100μmである請求項1~9のいずれかに記載のシールドパッケージ。
【請求項11】
前記溝部の深さは、5μm以上である請求項1~10のいずれかに記載のシールドパッケージ。
【請求項12】
前記図形部は、二次元コードである請求項1~11のいずれかに記載のシールドパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタブレット端末等の電子機器においては、近年、大容量のデータを伝送するための無線通信用の電子部品が封止材により封止されたパッケージとして多数実装されている。
このような無線通信用の電子部品は、ノイズを発生しやすいだけでなくノイズに対する感受性が高く、外部からのノイズに曝されると誤動作を起こしやすいという問題がある。
【0003】
また、電子機器の小型軽量化と高機能化を両立させるため、電子部品の実装密度を高めることが求められている。しかしながら、実装密度を高めるとノイズの発生源となる電子部品が増えるだけでなく、ノイズの影響を受ける電子部品も増えてしまうという問題がある。
従来から、ノイズの発生源である電子部品をパッケージごとシールド層で覆うことで、電子部品からのノイズの発生を防止するとともにノイズの侵入を防止した、いわゆるシールドパッケージが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
また、電子部品が封止材により封止されたパッケージの識別性を向上させるために、パッケージの表面にレーザーマーキングをする方法も従来から行われている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/170390号
【文献】国際公開第2015/186624号
【文献】特開平03-124051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シールドパッケージの識別性を向上させる方法としては、例えば、以下の方法がある。
まず、パッケージの封止材にレーザーを照射して封止材表面をエッチングすることにより溝部を形成する。このレーザーによるエッチングにより、封止材表面の溝部の底部には微細な凹凸が形成されることになる。
次に、スパッタリング法により、封止材に金属薄膜を堆積してシールド層を形成し、封止材表面の微細な凹凸に起因した凹凸を有するシールド層を形成することにより識別機能を有する図形部を形成するという方法がある。
【0007】
スパッタリング法によって形成されたシールド層は、封止材表面の微細な凹凸に起因した凹凸を有し、その凹凸が図形部を形成するので、図形部の境界が判別しやすいという特徴がある。しかし、スパッタリング法によって形成されたシールド層は、電子部品を封止している封止材と金属薄膜との線膨張率が異なるので、ヒートサイクル試験における信頼性が悪いという問題点があった。さらに、スパッタリング装置は高価であるため生産性が充分といえなかった。
【0008】
また、スプレー法により導電性塗料を封止材の表面に塗布すると、導電性塗料のレベリング効果によって、封止材の溝部の微細な凹凸の上に形成されるシールド層は、なだらかになる。その結果、レーザーを照射した箇所の境界が判別しにくくなり、識別機能を有する図形部の境界が曖昧になるという問題が生じることがある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、識別性が高い図形部がシールド層の表面に形成されたシールドパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシールドパッケージでは、シールド層の表面には、図形部と上記図形部以外の非図形部とがある。
本発明のシールドパッケージでは、非図形部の形状を表現する特定のパラメータと図形部の形状を表現する当該特定のパラメータとの比が、所定の関係を満たすことにより、非図形部と図形部の反射率に差が生じ、図形部以外の非図形部との明度の差が大きくなる。そのため、図形部の境界が明確になる。従って、本発明のシールドパッケージでは、図形部の識別性が高い。
なお、本明細書において「図形部」とは、円や三角形等の単純図形に加え、文字や標識等の識別力を有する情報を示すものも含む。
また、「識別力を有する情報を示すもの」とは、目視により識別できるものに加え、リーダー等の光学的手段により識別できるものを含む。
【0011】
本発明のシールドパッケージは、電子部品が封止材により封止されたパッケージと、上記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、上記シールド層の表面には、図形部と上記図形部以外の非図形部とがあり、上記非図形部のSal(最小自己相関長さ)と上記図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0であることを特徴とする。
【0012】
本発明のシールドパッケージでは、非図形部の形状を表現する特定のパラメータ、及び、図形部の形状を表現する当該特定のパラメータはSal(最小自己相関長さ)である。
Salの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0013】
本発明の別のシールドパッケージは、電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、上記非図形部のSmr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)と上記図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0であることを特徴とする。
【0014】
本発明の別のシールドパッケージでは、非図形部の形状を表現する特定のパラメータ、及び、図形部の形状を表現する当該特定のパラメータはSmr1(突出山部とコア部を分離する負荷面積率)である。
Smr1の比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0015】
本発明の別のシールドパッケージは、電子部品が封止材により封止されたパッケージと、前記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、前記シールド層の表面には、図形部と前記図形部以外の非図形部とがあり、上記非図形部のSsk(スキューネス)と上記図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0であることを特徴とする。
【0016】
本発明の別のシールドパッケージでは、非図形部の形状を表現する特定のパラメータ、及び、図形部の形状を表現する当該特定のパラメータはSsk(スキューネス)である。
Sskの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも細かな凸部が多くなるので、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0017】
本発明の別のシールドパッケージは、電子部品が封止材により封止されたパッケージと、上記パッケージを覆うシールド層とからなるシールドパッケージであって、上記シールド層の表面には、図形部と上記図形部以外の非図形部とがあり、上記非図形部のRvk(突出谷部深さ)と上記図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4であることを特徴とする。
【0018】
本発明の別のシールドパッケージでは、非図形部の形状を表現する特定のパラメータ、及び、図形部の形状を表現する当該特定のパラメータは、Rvk(突出谷部深さ)である。
Rvkの比が上記範囲であると、図形部の表面における谷部が非図形部の表面における谷部よりも充分に深くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0019】
本発明のシールドパッケージでは、上記封止材の表面は、複数の溝部が集合することにより線描及び/又は点描された描写領域と、上記描写領域以外の非描写領域とからなり、上記描写領域の上に位置する上記シールド層の表面には、上記溝部に起因する複数の凹部が形成されており、上記凹部は、集合して上記図形部を線描及び/又は点描していてもよい。
封止材の表面に溝部を形成することにより、容易にシールド層の表面に図形部を形成することができる。
また、線描及び/又は点描により図形部を形成するため、図形部の識別性は良好になる。
【0020】
本発明のシールドパッケージでは、複数の上記溝部の内、少なくとも一部は、線状に形成されていてもよい。
線状の溝部はレーザーマーキングにより形成しやすい。
【0021】
本発明のシールドパッケージでは、複数の上記溝部の内、少なくとも一部は、直線状に、かつ、上記溝部同士が平行になるように形成されていることが望ましい。
直線状、かつ、平行な溝部は、単純な形状なので効率的に形成することができる。
【0022】
本発明のシールドパッケージでは、隣り合う上記溝部同士の間隔は、10~100μmであることが望ましい。
溝部同士の間隔が上記範囲であると、シールド層の表面に線描される図形部と、非図形部との明度の差がより明確になる。
隣り合う溝部同士の間隔が、10μm未満であると、溝部形成に時間がかかり効率的でない。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
隣り合う溝部同士の間隔が、100μmを超えると、シールド層の表面に形成される凹部の間隔が広がり、単位面積当たりの凹部の数が少なくなる。そのため、図形部を線描する凹部の数が少なくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0023】
本発明のシールドパッケージでは、複数の上記溝部の内、少なくとも一部は、格子状に形成されていてもよい。
格子状の溝部は、十字にレーザーマーキングすることにより容易に形成することができる。
【0024】
本発明のシールドパッケージでは、上記溝部により形成される格子の幅は、10~100μmであることが望ましい。
溝部により形成される格子の幅が、上記範囲であると、シールド層の表面に線描される図形部と、非図形部との明度の差が明確になる。
溝部により形成される格子の幅が、10μm未満であると、溝部形成に時間がかかり効率的でない。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
溝部により形成される格子の幅が、100μmを超えると、シールド層の表面に形成される凹部の間隔が広がり、単位面積当たりの凹部の数が少なくなる。そのため、図形部を線描する凹部の数が少なくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部と明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0025】
本発明のシールドパッケージでは、上記溝部の幅は、5~100μmであることが望ましい。
溝部の幅が、上記範囲であると、シールド層の表面に線描及び/又は点描される図形部と、非図形部との明度の差が明確になる。
溝部の幅が、5μm未満であると、シールド層の表面に凹部が形成されにくくなる。その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
溝部の幅が、100μmを超えると、シールド層の表面に形成される凹部の幅が広がるので、単位面積当たりの凹部の数が少なくなる。そのため、図形部を線描する凹部の数が少なくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0026】
本発明のシールドパッケージでは、上記溝部の深さは、5μm以上であることが望ましい。
溝部の深さが、5μm以上であると、シールド層の表面にはっきりと凹部が形成されるので、シールド層の表面に線描及び/又は点描される図形部と、非図形部との明度の差が明確になる。
【0027】
本発明のシールドパッケージでは、上記シールド層の厚さは、3~15μmであることが望ましい。
シールド層の厚さが3μm未満であると、充分なシールド性能を得られにくくなる。
シールド層の厚さが15μmを超えると、溝部からシールド層の表面までの距離が長くなるので、凹部が形成されにくくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0028】
本発明のシールドパッケージでは、上記図形部は、二次元コードであることが望ましい。
上記の通り、本発明のシールドパッケージでは、図形部の識別性が高い。そのため、図形部が二次元コードであったとしてもリーダー等の光学的手段で容易に読み取ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のシールドパッケージでは、非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0である。
Salの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0030】
本発明の別のシールドパッケージでは、非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0である。
Smr1の比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0031】
本発明の別のシールドパッケージでは、非図形部のSskと図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0である。
Sskの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも細かな凸部が多くなるので、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0032】
本発明のシールドパッケージでは、非図形部のRvkと図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4である。
Rvkの比が上記範囲であると、図形部の表面における谷部が非図形部の表面における谷部よりも充分に深くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1(a)は、本発明のシールドパッケージの一例を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)中、破線で囲った部分の拡大図である。図1(c)は、図1(b)のA-A線断面図である。
図2図2(a)は、シールド層において、一つの凹部により一つの図形部を描いた比較技術のシールドパッケージの一例を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)中、破線で囲った部分の拡大図である。図2(c)は、図2(b)のB-B線断面図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明のシールドパッケージの封止材に形成した溝部の形状の一例を模式的に示す上面図である。
図4図4は、本発明のシールドパッケージの製造方法におけるパッケージ準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5図5は、本発明のシールドパッケージの製造方法における描写予定領域決定工程の一例を模式的に示す工程図である。
図6図6は、図5中、破線で囲った部分の拡大図であり、かつ、本発明のシールドパッケージの製造方法における描写領域形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7図7は、本発明のシールドパッケージの製造方法におけるシールド層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図8図8(a)は、実施例1に係るシールドパッケージの写真である。図8(b)は、図8(a)に示すシールドパッケージの図形部の拡大写真である。
図9図9は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSalと図形部のSalとの比((非図形部のSal)/(図形部のSal))を示すグラフである。
図10図10は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比((非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1))を示すグラフである。
図11図11は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSskと図形部のSskとの比((非図形部のSsk)/(図形部のSsk))を示すグラフである。
図12図12は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のRvkと図形部のRvkとの比((非図形部のRvk)/(図形部のRvk))を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のシールドパッケージについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0035】
(第1実施形態)
本発明のシールドパッケージの一態様について、以下に図面を用いて説明する。
図1(a)は、本発明のシールドパッケージの一例を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)中、破線で囲った部分の拡大図である。図1(c)は、図1(b)のA-A線断面図である。
【0036】
図1(a)に示すように、シールドパッケージ1は、電子部品10が封止材20により封止されたパッケージ30と、パッケージ30を覆うシールド層40とからなる。
そして、シールド層40には、図形部50と非図形部60とがある。
【0037】
図1(b)に示すように、図形部50は、シールド層40の表面に形成された凹部41が集合することにより線描されている。
【0038】
また、図1(c)に示すように、封止材20の表面は、複数の溝部21が集合することにより線描された描写領域22と、描写領域22以外の非描写領域23とからなる。
複数の凹部41は、溝部21に起因して、描写領域22の上に位置するシールド層40の表面に形成されている。
【0039】
ここで、一つの溝部により封止材に描写領域を形成し、その上にシールド層を形成して凹部を形成し、一つの凹部により一つの図形部を描く、比較技術のシールドパッケージについて説明する。
図2(a)は、シールド層において、一つの凹部により一つの図形部を描いた比較技術のシールドパッケージの一例を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)中、破線で囲った部分の拡大図である。図2(c)は、図2(b)のB-B線断面図である。
【0040】
図2(a)に示すようにシールドパッケージ501は、電子部品510が封止材520により封止されたパッケージ530と、パッケージ530を覆うシールド層540とからなる。
そして、シールド層540には、図形部550が形成されている。
【0041】
図2(b)に示すように、図形部550は、シールド層540の表面に形成された一つの凹部541により形成されている。
【0042】
また、図2(c)に示すように、封止材520には、溝部521が形成されており、一つの溝部521で描写領域522が形成されている。また、それ以外の部分は、非描写領域523である。
この一つの溝部521はレーザーによるエッチングにより形成されている。
このエッチングにより一つの溝部521の底部は、レーザーエッチングにより微細な凹凸525が形成されている。
【0043】
また、一つの凹部541が、溝部521に起因して、描写領域522の上に位置するシールド層540の表面に形成されている。
【0044】
このようなシールドパッケージ501を製造する場合、封止材520に溝部521を形成した後、導電性塗料を塗布してシールド層540を形成することになる。
図2(c)の破線で囲った部分に示されるように、導電性塗料のレベリング効果によって、微細な凹凸525の上に形成されるシールド層540は、なだらかになる。その結果、凹部541の境界が判別しにくくなり、図形部550の境界が曖昧になる。
【0045】
一方、シールドパッケージ1では、複数の凹部41が集合することにより、シールド層40の表面に図形部50が線描されている。
このように線描された図形部50は、反射率の違いにより、非図形部60との明度の差が大きくなる。そのため、図形部50の境界が明確になる。
【0046】
シールドパッケージ1では、非図形部60のSalと図形部50のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0である。
Salの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0047】
なお、非図形部60及び図形部50のSalは、ISO25178に準拠して、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID)により測定することができる。
【0048】
また、これらのパラメータは、溝部21の幅、深さ、溝部21同士の間隔、シールド層を形成するための導電性塗料の組成等を調整することにより制御することができる。
【0049】
シールドパッケージ1では、溝部21の幅W(図1(c)中、符号「W」で示す距離)は、5~100μmであることが望ましい。
溝部21の幅Wが、上記範囲であると、シールド層40の表面に線描される図形部50と、非図形部60との明度の差が明確になる。
溝部21の幅Wが、5μm未満であると、シールド層40の表面に凹部41が形成されにくくなる。その結果、シールド層40の表面の図形部50と、非図形部60との明度の差が小さくなり、図形部50が識別されにくくなる。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
溝部21の幅Wが、100μmを超えると、シールド層40の表面に形成される凹部41の幅が広がるので、単位面積当たりの凹部41の数が少なくなる。そのため、図形部50を線描する凹部41の数が少なくなる。
その結果、シールド層40の表面の図形部50と、そうでない部分との明度の差が小さくなり、図形部50が識別されにくくなる。
【0050】
シールドパッケージ1では、溝部21の深さD(図1(c)中、符号「D」で示す距離)は、5μm以上であることが望ましく、20μm以上であることがより望ましい。
溝部21の深さDが、5μm以上であると、シールド層40の表面にはっきりと凹部41が形成されるので、シールド層40の表面に線描される図形部50と、非図形部60との明度の差が明確になる。
【0051】
本発明のシールドパッケージにおいて、溝部は、シールド層の表面に凹部が形成できる形状であれば、どのように形成されていてもよい。
例えば、溝部は、線状であってもよく、点状であってもよい。
特に、溝部が線状である場合、レーザーマーキングにより形成しやすい。
【0052】
ここで、本発明のシールドパッケージにおける溝部の形状について図面を用いて説明する。
図3(a)及び(b)は、本発明のシールドパッケージの封止材に形成した溝部の形状の一例を模式的に示す上面図である。
【0053】
図3(a)に示す封止材120には、溝部121が、直線状に、かつ、溝部121同士が平行になるように形成されている。
また、隣り合う溝部121同士の間隔I(図3(a)中、符号「I」で示す距離)は等間隔である。
直線状、かつ、平行な溝部121は、単純な形状なので効率的に形成することができる。
【0054】
封止材120では、隣り合う溝部121同士の間隔Iは、10~100μmであることが望ましい。
溝部121同士の間隔Iが上記範囲であると、シールド層の表面に線描される図形部と、非図形部の差が明確になる。
隣り合う溝部同士の間隔が、10μm未満であると、多くの溝部を形成することになるので、溝部形成に時間がかかり効率的でない。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
隣り合う溝部同士の間隔が、100μmを超えると、シールド層の表面に形成される凹部の間隔が広がり、単位面積当たりの凹部の数が少なくなる。そのため、図形部を線描する凹部の数が少なくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0055】
図3(a)では、隣り合う溝部121同士の間隔Iは等間隔であるが、本発明のシールドパッケージでは、隣り合う溝部同士の間隔は等間隔でなくてもよい。
【0056】
図3(b)に示す封止材220には、溝部221が格子状に形成されている。
また、溝部221により形成される格子は、それぞれが互いに同じ形状である。
格子状の溝部221は、十字にレーザーマーキングすることにより容易に形成することができる。
【0057】
封止材220では、溝部221により形成される格子225の幅S(図3(b)中、符号「S」で示す距離)は、10~100μmであることが望ましい。
格子225の幅Sが、上記範囲であると、シールド層の表面に線描される図形部と、非図形部との明度の差が明確になる。
溝部により形成される格子の幅が、10μm未満であると、多くの溝部を形成することになるので、溝部形成に時間がかかり効率的でない。また、導電性塗料のレベリング効果により、リーダー等の光学的手段で図形部が認識されにくくなる。
溝部により形成される格子の幅が、100μmを超えると、シールド層の表面に形成される凹部の間隔が広がり、単位面積当たりの凹部の数が少なくなる。そのため、図形部を線描する凹部の数が少なくなる。
その結果、シールド層の表面の図形部と、非図形部との明度の差が小さくなり、図形部が識別されにくくなる。
【0058】
図3(b)では、溝部221により形成される格子は同じ形状の正方形であるが、本発明のシールドパッケージでは、溝部により形成される格子は同じ形状でなくてもよく、長方形であってもよい。
【0059】
本発明のシールドパッケージにおいて、電子部品は、特に限定されず、例えば、従来の無線通信用の電子部品であってもよい。
【0060】
本発明のシールドパッケージにおいて、電子部品を封止する封止材の材料は、特に限定されず、通常使用される樹脂材料であってもよい。
このような樹脂材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂等が挙げられる。
また、樹脂材料は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂から選択される少なくともいずれか一つにより構成されていても良いが、耐熱性の観点から熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線硬化性樹脂により構成されることが望ましい。
【0061】
本発明のシールドパッケージでは、シールド層は限定されず、公知の導電性塗料により形成されていてもよい。
シールド層は、バインダ成分である樹脂と、導電性粒子からなっていてもよい。
【0062】
シールド層を構成するバインダ成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0063】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されない。(メタ)アクリレート化合物の例としては、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0065】
シールド層を構成する導電性粒子としては、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀コート銅粒子、金コート銅粒子、銀コートニッケル粒子、金コートニッケル粒子等の金属粒子が挙げられる。
【0066】
金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状等であってもよい。
なお、球状には、略真球のもの(アトマイズ粉)だけでなく、略多面体状の球体(還元粉)や、不定形状(電解粉)等の略球状のものを含む。
【0067】
なお、シールド層は、硬化剤を含む導電性塗料が硬化して形成されることになるので、シールド層には硬化剤由来の成分が含まれていてもよい。
【0068】
また、シールド層には、必要に応じ、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0069】
本発明のシールドパッケージにおいて、シールド層の表面の図形部は、単純図形や、文字や、標識等の識別力を有する情報を示すものであってもよい。
【0070】
図形部が文字である場合、製品の型番、ロット番号、製造日時等であってもよい。なお、図形部が文字である場合、視認できることが望ましい。
【0071】
識別力を有する情報を示すものとしては、例えば、二次元コードが挙げられる。
図形部が二次元コードである場合、リーダー(例えば、Honey well社 バーコードスキャナーXenon1902シリーズ等)で読み取り可能であることが望ましい。
【0072】
上記シールドパッケージ1では、封止材20の表面は、複数の溝部21に形成することによりシールド層40の表面に図形部50を形成していた。
しかし、本発明のシールドパッケージでは、非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0であればよく、封止材の表面に溝部が形成されていなくてもよい。
例えば、シールド層の表面に複数の凸部及び/又は複数の凹部を形成することにより図形部は形成されていてもよい。複数の凸部または複数の凹部は、ランダムに配列されていてよいし、規則的に配列されていてもよい。また、複数の凸部または複数の凹部が線描及び/又は点描されていてもよい。
シールド層の表面に複数の凸部及び/又は凹部を形成する方法としては、特に限定されず、シールド層の表面をエンボス処理、サンドブラスト処理等で加工する方法や、シールド層を形成する導電性塗料に粒子を添加する方法等、従来の方法を用いることができる。
また、電子部品を封止材で被覆したパッケージにエンボス処理、サンドブラスト処理等で加工したり、パッケージに粒子を添加することにより、パッケージの表面に複数の凸部及び/又は凹部を形成した後、導電性塗料を塗布してシールド層を形成することにより、シールド層の表面に複数の凸部及び/又は凹部を形成してもよい。
【0073】
次に、本発明のシールドパッケージの製造方法の一例について説明する。
本発明のシールドパッケージの製造方法は、(1)パッケージ準備工程と、(2)描写予定領域決定工程と、(3)描写領域形成工程と、(4)シールド層形成工程とを含む。
以下に、各工程について図面を用いて説明する。
図4は、本発明のシールドパッケージの製造方法におけるパッケージ準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5は、本発明のシールドパッケージの製造方法における描写予定領域決定工程の一例を模式的に示す工程図である。
図6は、図5中、破線で囲った部分の拡大図であり、かつ、本発明のシールドパッケージの製造方法における描写領域形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7は、本発明のシールドパッケージの製造方法におけるシールド層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【0074】
(1)パッケージ準備工程
まず、図4に示すように、電子部品10が封止材20に封止されたパッケージ30を準備する。
電子部品の種類や封止材の材料は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0075】
(2)描写予定領域決定工程
次に、図5に示すように、封止材20の表面に、描写予定領域22aと、描写予定領域22a以外の非描写領域23とを決定する。
【0076】
(3)描写領域形成工程
次に、図6に示すように、描写予定領域22aにレーザーLを照射することにより複数の線状の溝部21を形成し、線状の溝部21を集合させることにより描写領域22を線描する。
なお、図6では、描写領域22を線状の溝部21により線描しているが、本発明のシールドパッケージの製造方法では、点状の溝部を形成し、描写領域を点描してもよい。
【0077】
描写予定領域に形成する溝部の幅及び深さは、レーザーの出力及び移動速度を調整することにより制御することができる。
また、この際、後の工程を経て形成されるシールド層において、非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0となるように、溝部の幅、深さ、溝部同士の幅、パッケージ表面に塗布する導電性塗料の組成等を制御する。
【0078】
(4)シールド層形成工程
次に、図7に示すように、封止材20の表面に導電性塗料40aを塗布した後、導電性塗料を硬化させてシールド層40を形成する。
この工程では、線状の溝部21に起因する線状の凹部41を形成し、凹部41を集合させることにより図形部50を線描する。
なお、図7では、線状の溝部21に起因して線状の凹部41が形成されている。上記の通り、本発明のシールドパッケージの製造方法では、描写領域形成工程において、点状の溝部を形成してもよい。この場合、点状の凹部が形成されることになり、図形部は点状の凹部により点描されることになる。
【0079】
本工程において、導電性塗料を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ディッピング法等が挙げられる。これらの中では、均一な厚さのシールド層を得やすいスプレー法で塗布することが望ましい。
また、スプレー時間等を制御し、導電性塗料の塗布量を調整することにより、シールド層の厚さを調整することができる。
【0080】
本工程において使用する導電性塗料について説明する。
導電性塗料は、バインダ成分、導電性粒子及び硬化剤を含む。
【0081】
バインダ成分及び導電性粒子の望ましい種類は、上記シールド層を構成するバインダ成分及び導電性粒子の望ましい種類と同じであるので、ここでの記載は省略する。
【0082】
導電性粒子の配合量は、バインダ成分100重量部に対して500~1800重量部であることが望ましく、550~1800重量部であることがより望ましい。
【0083】
硬化剤としては、例えばフェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤等が挙げられる。
【0084】
フェノール系硬化剤としては、例えばノボラックフェノール、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0085】
イミダゾール系硬化剤としては、例えばイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0086】
カチオン系硬化剤の例としては、三フッ化ホウ素のアミン塩、P-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0087】
ラジカル系硬化剤(重合開始剤)の例としては、ジ-クミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0088】
硬化剤の配合量は、硬化剤の種類によっても異なるが、通常は、バインダ成分の合計量100重量部に対して0.3~40重量部であることが望ましく、0.5~35重量部であることがより望ましい。
【0089】
また、導電性塗料は必要に応じてメチルエチルケトン等の溶剤を含んでいてもよい。
導電性塗料の粘度は、10~5000mPa・sであることが望ましい。
導電性塗料の粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低すぎて凹凸が埋まりやすくなる。
導電性塗料の粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高すぎて塗膜の表面粗さが大きくなる。その結果、シールド特性が悪くなりやすくなり、外観が悪くなりやすくなる。
【0090】
導電性塗料を硬化する方法としては、加熱によりバインダ成分を硬化する方法、活性化エネルギー線を照射してバインダ成分を硬化させる方法等、公知の硬化方法を採用することができる。硬化条件は、バインダ成分中の硬化剤の種類や配合量に応じて適宜設定することができる。
【0091】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るシールドパッケージは、第1実施形態に係るシールドパッケージの非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0である代わりに、非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0である以外は、本発明の第1実施形態に係るシールドパッケージと同様のシールドパッケージである。
【0092】
Smr1の比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも急激な凹凸が多くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0093】
非図形部及び図形部のSmr1は、ISO25178に準拠して、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID)により測定することができる。
【0094】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るシールドパッケージは、第1実施形態に係るシールドパッケージの非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0である代わりに、非図形部のSskと図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0である以外は、本発明の第1実施形態に係るシールドパッケージと同様のシールドパッケージである。
【0095】
Sskの比が上記範囲であると、図形部の方が非図形部よりも細かな凸部が多くなるので、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0096】
非図形部及び図形部のSskは、ISO25178に準拠して、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID)により測定することができる。
【0097】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係るシールドパッケージは、第1実施形態に係るシールドパッケージの非図形部のSalと図形部のSalとの比が、(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0である代わりに、非図形部のRvkと図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4である以外は、本発明の第1実施形態に係るシールドパッケージと同様のシールドパッケージである。
【0098】
Rvkの比が上記範囲であると、図形部表面における谷部が非図形部の表面における谷部よりも充分に深くなるため、光の反射が抑えられると考えられる。そのため、図形部と非図形部との間の明暗の差が明確になり、図形部の識別性がより向上する。
【0099】
非図形部及びのRvkは、JIS B 0601:2001に準拠して、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID)により測定することができる。
【0100】
(その他の実施形態)
上記本発明の第1実施形態~第4実施形態に係るシールドパッケージは、それぞれ「非図形部のSalと図形部のSalとの比が(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0であること」、「非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0であること」、「非図形部のSskと図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0であること」及び「非図形部のRvkと図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4であること」を満たしていた。
本発明のシールドパッケージは、「非図形部のSalと図形部のSalとの比が(非図形部のSal)/(図形部のSal)>4.0であること」、「非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比が、(非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1)>1.0であること」、「非図形部のSskと図形部のSskとの比が、(非図形部のSsk)/(図形部のSsk)<5.0であること」及び「非図形部のRvkと図形部のRvkとの比が、(非図形部のRvk)/(図形部のRvk)<0.4であること」を、同時に2つ以上満たすシールドパッケージであっても良い。
特に、Sal、Smr1及びSskは、3次元的な形状を表現するパラメータであるので、本発明のシールドパッケージは、これらを同時に満たしていても良い。
【実施例
【0101】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
(1)パッケージ準備工程
モデルICを熱硬化性エポキシ樹脂からなる封止材により封止した縦1cm×横1cmの大きさのモデルパッケージを準備した。
【0103】
(2)描写予定領域決定工程
モデルパッケージの封止材の表面に、二次元コードとなる描写予定領域と、それ以外の非描写領域とを決定した。
【0104】
(3)描写領域形成工程
次に、レーザーマーカー(esi社製「LodeStone」)により、レーザー出力0.3W、レーザー堀幅4.0μm、レーザー移動速度400mm/sの条件で、描写予定領域に複数の溝部を形成し、描写領域を形成した。
溝部は、直線状となり、かつ、隣り合う溝部同士が等間隔で平行となるように形成された。
また、溝部の幅は10μmであり、深さは、40μmであり、隣り合う溝部同士の間隔は、15μmであった。
【0105】
(4)シールド層形成工程
まず、下記組成の導電性塗料を準備した。
<導電性塗料の組成>
・バインダ成分(エポキシ樹脂)
三菱化学(株)製、商品名「JER157S70」を20重量部
(株)ADEKA製、商品名「EP-3905S」を30重量部
(株)ADEKA製、商品名「EP-4400」を50質量部
・導電性粒子
銀被覆銅合金粒子(平均粒径5μm、フレーク状、アスペクト比2~10)を1000重量部
・硬化剤
フェノールノボラック(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル758」)を15重量部
2-メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名「2MZ-H」)を5重量部
・溶剤
1-メトキシ-2-プロパノール 24Wt%
次に、下記条件でスプレー塗布し、モデルパッケージの封止材の表面に厚さ7μmのシールド層を形成した。
<スプレー条件>Nordson Asymtek社製 SL-940E ペースト押し出し圧力:2.8Psi
アシストエアー(噴霧化エアー):5Psi
パッケージ表面の温度:22℃
パッケージ表面からノズルまでの距離:約15cm
スプレーヘッド移動ピッチ:5mm
スプレーヘッド移動スピード:500mm/秒
スプレー回数:4回
硬化条件:160℃の乾燥機内に20分放置
【0106】
この工程において、シールド層に、溝部に起因する複数の凹部が形成され、凹部が集合することにより二次元コードが線描された実施例1に係るモデルシールドパッケージを製造した。
【0107】
図8(a)は、実施例1に係るシールドパッケージの写真である。図8(b)は、図8(a)に示すシールドパッケージの図形部の拡大写真である。
【0108】
(実施例2~3)及び(比較例1~2)
上記(3)描写領域形成工程において、隣り合う溝部同士の間隔を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に、実施例2~3及び比較例1~2に係るシールドパッケージを製造した。
【0109】
(図形部及び非図形部のパラメータ測定)
各実施例及び各比較例のシールドパッケージのシールド層の図形部及び非図形部の各パラメータをコンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用い、Sal、Smr1及びSskはISO25178に準拠して、Rvkは、JIS B 0601:2001に準拠して、測定した。なお、Sal、Smr1、Ssk及びRvkは、いずれも図形部と非図形部のそれぞれについて任意の3箇所で測定した値の平均値を採用した。また、Sal、Smr1及びSskの測定面積は縦200μm×横200μmとし、Rvkの測定長は200μmとした。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
また、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージのシールド層の図形部及び非図形部の各パラメータの比を図8図11に示す。
図9は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSalと図形部のSalとの比((非図形部のSal)/(図形部のSal))を示すグラフである。
図10は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSmr1と図形部のSmr1との比((非図形部のSmr1)/(図形部のSmr1))を示すグラフである。
図11は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のSskと図形部のSskとの比((非図形部のSsk)/(図形部のSsk))を示すグラフである。
図12は、各実施例及び各比較例におけるシールドパッケージの非図形部のRvkと図形部のRvkとの比((非図形部のRvk)/(図形部のRvk))を示すグラフである。
【0112】
(二次元コード読み取り試験)
「Honey well社 バーコードスキャナーXenon1902シリーズ」を用い、各実施例及び各比較例に係るモデルシールドパッケージに形成された二次元コードの読み取り試験を行った。結果を表1に示す。
【0113】
表1に示すように、各実施例に係るシールドパッケージでは、図形部を読み取ることができた。一方、各比較例に係るシールドパッケージでは、図形部を読み取ることができなかった。
【符号の説明】
【0114】
1、101、201、501 シールドパッケージ
10、110、210、510 電子部品
20、120、220、520 封止材
21、121、221、521 溝部
22、522 描写領域
22a 描写予定領域
23、523 非描写領域
30、530 パッケージ
40、540 シールド層
40a 導電性塗料
41、541 凹部
50、550 図形部
60 非図形部
225 格子
525 微細な凹凸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12