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特許7385607DCリンクコンデンサを放電する制御装置及び方法、電力変換機、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】DCリンクコンデンサを放電する制御装置及び方法、電力変換機、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231115BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020572990
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019064763
(87)【国際公開番号】W WO2020001951
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】102018115295.7
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エーデルホイザー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エルトマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ゲッツエ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヒューブナー
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207684(JP,A)
【文献】特開2013-188092(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102437771(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102012203073(DE,A1)
【文献】中国実用新案第206481057(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷抵抗器(5)と、前記負荷抵抗器(5)と直列に接続されたスイッチ素子(6)とを備えた放電装置(3)によってDCリンクコンデンサ(2)を放電するための制御装置(1)であって、
決定されたデューティサイクルを有する前記スイッチ素子(6)へのパルス幅変調作動信号を生成する生成ユニット(12)と、前記負荷抵抗器(5)を時間平均において所望の放電電流が流れるように前記デューティサイクルを決定する制御ユニット(11)とを備えることを特徴とする、制御装置(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(11)は、前記放電電流が時間平均においてほぼ一定の電力消費を前記負荷抵抗器(5)に生じさせるように前記デューティサイクルを決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御ユニット(11)は、前記DCリンクコンデンサ(2)において降下するDCリンク電圧(13)を示す電圧情報の関数として前記デューティサイクルを決定する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(11)は、前記電圧情報の関数として放電電流目標値を決定する目標値決定ユニット(24)を備える、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記目標値決定ユニット(24)は、前記DCリンク電圧(13)の反転値の関数として前記放電電流目標値を決定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記目標値決定ユニット(24)は、前記放電電流目標値を前記反転値とオフセットとの和に決定する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御ユニット(11)は、前記負荷抵抗器(5)の抵抗値とその所望の電力消費との積と前記DCリンク電圧(13)の二乗との比として前記デューティサイクルを計算する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御ユニット(11)は、前記負荷抵抗器(5)を流れる電流(19)の時間平均を示す電流情報の関数として前記デューティサイクルを決定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
制御ユニット(11)は、前記放電電流目標値から、前記負荷抵抗器(5)を流れる電流(19)の時間平均の偏差の関数として前記デューティサイクルを決定するコントローラ(29)を備える、請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
瞬時の前記電流(19)を示す電流測定値から前記電流情報を生成するローパスユニットを備える、請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(11)は、アナログ回路またはマイクロプロセッサとして設計されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記DCリンクコンデンサ(2)と、
前記DCリンクコンデンサ(2)を放電させることができ、前記負荷抵抗器(5)と前記負荷抵抗器(5)と直列に接続された前記スイッチ素子(6)とを備える前記放電装置(3)と、
前記放電装置(3)を作動させる請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置(1)と、を備える電力変換機(41)。
【請求項13】
車両(40)を駆動する電気モータ(42)と、
前記電気モータ(42)に電気を供給するように構成された請求項12に記載の電力変換機(41)と、を備える、車両(40)。
【請求項14】
負荷抵抗器(5)と、前記負荷抵抗器(5)と直列に接続されたスイッチ素子(6)とを備える放電装置(3)によってDCリンクコンデンサ(2)を放電する方法であって、
決定されたデューティサイクルを有する前記スイッチ素子(6)へのパルス幅変調作動信号を生成し、前記負荷抵抗器(5)を時間平均において所望の放電電流が流れるように前記デューティサイクルを決定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷抵抗器と負荷抵抗器と直列に接続されたスイッチ素子とを備える放電装置によってDCリンクコンデンサを放電する制御装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、電力変換機、車両、およびDCリンクコンデンサを放電する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DCリンクコンデンサは、例えば電力変換機において電気モータに供給するための多相交流に変換されるDC電圧を蓄える。例えば電気モータが遮断された場合など、電力変換機を備える車両の障害または事故の発生時に放電事象が生じている場合、電気的安全性を確保するために、DCリンクコンデンサを危険でない電圧まで迅速に放電することが目標となる。負荷抵抗器と負荷抵抗器と直列に接続されたスイッチ素子とを有する放電装置を使用する場合、スイッチ素子は、放電事象が生じている場合に閉じられて、DCリンクコンデンサに蓄えられているエネルギーを熱に変換する。
【0004】
電気負荷と放電調整器とを有する電圧変換器内のDCリンクコンデンサを放電するこのような装置は、DE102013224884A1から知られている。放電調整器は、所定の放電電流を用いて電気負荷を介してDCリンクコンデンサを放電するように設計されている。放電調整器は、少なくともほぼ一定の放電電流を可能にし、放電が所定の放電電流で行われるようにパワートランジスタを作動させる演算増幅器を備える。
【0005】
このようにして、負荷抵抗器によるほぼ一定の電力消費が達成される。しかし、スイッチ素子のパワートランジスタは、その有効範囲内で作動し、パワートランジスタ自体が蓄えられたエネルギーの大きな部分を熱に変換する。したがって、負荷抵抗器による均一な電力消費は、スイッチ素子の電力消費を変動可能にすることによって達成される。スイッチ素子は、これに対応して高い電力消費を実現するように設計する必要があり、構成部品が複雑になる。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、より複雑でないDCリンクコンデンサを放電する選択肢を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、決定されたデューティサイクルを有するスイッチ素子へのパルス幅変調作動信号を生成する生成ユニットと、負荷抵抗器を時間平均において所望の放電電流が流れるようにデューティサイクルを決定する制御ユニットとを備える、冒頭に記載の種類の制御装置によって解決される。
【0008】
本発明は、パルス幅変調作動信号によってスイッチ素子をスイッチモードでのみ動作させるという思想に基づき、負荷抵抗器を流れるクロック電流はデューティサイクルに基づいて予め定められる。このようにして、一方ではスイッチ素子は有利には電力損失に関してアクティブ動作ではなくスイッチモードのみのために設計され、他方では負荷抵抗器は時間平均で生じる電力損失に基づいて設計することができる。
【0009】
本発明における「時間平均」という表現は、パルス幅変調作動信号いくつかの期間にわたる移動平均または加重平均を意味すると理解されるべきである。したがって、平均値は基本的にはパルス幅変調による計時のみを補償する。このプロセスで、作動信号の持続時間は、負荷抵抗器の熱時定数を下回るように、必要に応じて負荷抵抗器における冷却条件を付加的に考慮して好都合な方法で選択される。この熱抵抗器は、その熱容量によって、電流によって生じる熱電力消費を平均化する。
【0010】
制御ユニットは、放電電流が時間平均においてほぼ一定の電力消費を負荷抵抗器に生じさせるようにデューティサイクルを決定するよう構成されることが好ましい。したがって、負荷抵抗器は、一定の放電容量に対応する最大電力消費を可能にするだけでよい。したがって、負荷抵抗器を電流が連続的に流れる場合と比較して、負荷抵抗器は、高い一時的に発生するピーク電力レベルまたはピーク電流を消費するように設計されず、よって、より小さく、より安価であるように選択され得る。負荷抵抗器の熱容量により、オン時間の期間が負荷抵抗器の熱時定数と比較して短いので、作動信号のオン時間の間に流れる電流は負荷抵抗器を損傷させることなく流れることができる。電力消費は、DCリンクコンデンサに蓄えられる最大エネルギーレベルと予め定められた放電時間とに基づいて決定することができる。
【0011】
本発明の制御装置においては、特に有利には、制御ユニットは、DCリンクコンデンサにおいて降下するDCリンク電圧を示す電圧情報の関数としてデューティサイクルを決定するよう構成される。このプロセスにおいて、より大きな放電電流、すなわち、作動信号のより大きなデューティサイクルは、典型的には、減少するDCリンク電圧とともに予め規定される。
【0012】
好ましい第1の実施形態によれば、制御ユニットは、電圧情報の関数として放電電流目標値を決定するよう構成された目標値決定ユニットを備える。放電電流目標値は、負荷抵抗器の電力消費の二次依存性が負荷抵抗器における電圧降下(P=U/R)によって補償されるように選択されることが好ましい。放電電流目標値が負荷抵抗器の電力消費とDCリンク電圧との商に対応するときに、最適な補償となる。
【0013】
目標値決定ユニットは、放電電流目標値を、DCリンク電圧の反転値、すなわち負の値の関数として決定するように構成することができる。負の値の使用は、DCリンク電圧の逆数値の形の反転値を近似し、これによって回路に関してより単純な実装を可能にする。すなわち、負の値はDCリンク電圧の曲線を反映する。有利には、目標値決定ユニットはさらに、放電電流目標値を反転値とオフセットとの和に決定するよう構成されている。
【0014】
好ましい第2の実施形態によれば、制御ユニットは、負荷抵抗器の抵抗値とその所望の電力消費との積とDCリンク電圧の二乗との比としてデューティサイクルを計算するよう構成されている。この場合、電圧の二次依存性の補償は計算によって行われる。さらに、デューティサイクルを直接計算することもできる。
【0015】
本発明の制御装置においては、制御ユニットは、負荷抵抗器を流れる電流の時間平均を示す電流情報の関数としてデューティサイクルを決定するよう構成される。制御装置は、電流情報の決定を通じて、負荷抵抗器を通るクロック電流を調整する。この目的のために、制御装置は、負荷抵抗器を流れる瞬時の電流を示す電流測定値から電流情報を生成するローパスユニットを備えるよう構成される。すなわち、ローパスユニットは、パルス幅変調作動信号によって計時される電流測定値を調整する。ローパスユニットは、RC回路、保持素子、または別の平滑化回路または平均化回路であり得る。
【0016】
放電プロセスが調整できるように、制御装置は、放電電流目標値からの電流の時間平均の偏差の関数としてデューティサイクルを決定するように構成されたコントローラを備え得る。コントローラはP動作、PI動作、またはPID動作を有し得る。このプロセスにおいて、放電電流目標値が保持されている場合には、典型的には、流れる電流の時間平均での減少傾向、特に電圧降下に伴う減少傾向が、相応に大きなデューティサイクルによって補償される。負荷抵抗器を流れる電流を考慮することにより、特に、負荷抵抗器の製造に関連した抵抗値の変動にほとんど依存しない方法で放電電流を制御することが可能になる。これにより、負荷抵抗器に関して精度要件を有利に低減する。
【0017】
本発明の制御装置の場合、制御ユニットは好ましくはアナログ回路として設計される。自動車用途の目的に関して、これは、制御ユニットを実装するために標準的な構成要素を用いることができ、それによって、準拠する自動車安全水準(ASIL)に関する認証の複雑さを最小限に抑えるという利点を有する。あるいは、制御ユニットはマイクロプロセッサとして設計することもできる。これは、特に放電電流目標値および電流情報の決定が省かれる、放電電流が上述の第2の実施形態に従って計算される場合に特に適用される。しかし、この計算をアナログ回路によって実行することも考えられる。
【0018】
本発明は、DCリンクコンデンサと、DCリンクコンデンサを放電させることができ、負荷抵抗器と負荷抵抗器と直列に接続されたスイッチ素子とを備える放電装置と、放電装置を作動させる本発明の制御装置と、を備える電力変換機にさらに関する。
【0019】
本発明はさらに、車両を駆動するための電気モータおよび電気モータに電気を供給するように構成された本発明の電力変換機を備える車両(特に電気自動車またはハイブリッド車)に関する。
【0020】
最後に、本発明は、負荷抵抗器と負荷抵抗器と直列に接続されたスイッチ素子とを備える放電装置によってDCリンクコンデンサを放電する方法であって、決定されたデューティサイクルを有するスイッチ素子へのパルス幅変調作動信号を生成し、負荷抵抗器を時間平均において所望の放電電流が流れるようにデューティサイクルを決定する方法に関する。
【0021】
本発明の制御装置についてのすべての実施形態は、上記効果が得られるように、本発明の電力変換機、本発明の車両、および本発明の方法に同様に適用できる。
【0022】
本発明のさらなる効果や詳細については、以下に説明する例示的実施形態および図面により明らかになるであろう。これらは概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の制御装置の第1の例示的実施形態の回路図である。
図2図2は、制御装置の第2の例示的実施形態のブロック図である。
図3図3は、本発明の電力変換器の例示的実施形態を有する、本発明の車両の例示的実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、放電装置3によってDCリンクコンデンサ2を放電するための制御装置1の第1の例示的実施形態の回路図である。
【0025】
DCリンクコンデンサ2は、DC電圧源4によって電気が供給され、特に、過渡電流を平滑化するために、電力インバータの電力ユニットに並列に接続することができる。放電装置3は、放電事象が生じているときに、所定の時間(例えば2秒)以内に所定の電圧閾値(例えば60V)を下回るまでDCリンクコンデンサ2を能動的に放電するために使用される。この目的のために、放電装置3は、負荷抵抗器5と、例えばIGBTまたはパワーMOSFETなどの電子スイッチの形態である、負荷抵抗器5と直列に接続されたスイッチ素子6とを備える。放電のために、DCリンクコンデンサ2は、典型的には1極または2極のスイッチ装置7によってDC電圧源4から切り離される。
【0026】
DCリンクコンデンサ2の放電プロセスは、制御装置1によって制御される。この目的のために、制御装置3のまたはスイッチ素子6の制御端子8は、ドライバユニット9を介して制御装置1の出力10に接続されている。ドライバユニット9は、DCリンクコンデンサ2から放電される電流19が負荷抵抗器5を流れるようにスイッチ素子6が導通するか、または非導通であるように、出力10における作動信号を増幅する。
【0027】
制御装置1は、制御ユニット11と生成ユニット12とを備え、生成ユニット12は、制御ユニット11によって決定されたデューティサイクルを有する、スイッチ素子6のためのパルス幅変調作動信号を出力10において生成するように構成されている。
【0028】
制御ユニット11は、負荷抵抗器5を流れる放電電流が時間平均において、負荷抵抗器5による実質的に一定の電力消費を生じさせるように、デューティサイクルを放電プロセスにおいて決定するように構成されている。これによって、負荷抵抗器5における一定の電気的および熱的負荷が実現できる。同時に、スイッチ素子6は導電またはブロックモードにおいてのみ作動し、したがってアクティブまたは増幅範囲では作動しない。このようにして、スイッチ素子6の電力消費は最小化され、これによって負荷抵抗器5を流れる電流19を同相制御する場合と比較して、スイッチ素子6をかなり低い電力要件に応じて設計することができるようになる。
【0029】
制御ユニット11は目標値決定ユニット24を備えており、目標値決定ユニット24は、放電電流目標値を、DCリンクコンデンサ2において降下するDCリンク電圧13を示す電圧情報の関数として決定するように構成されている。この目的のために、制御装置1は、第1の入力14を備え、第1の入力14を介して電圧情報を受信する。本例示的実施形態においては、このために第1の入力14は電圧検出装置15と接続されている。電圧検出装置15は、DCリンクコンデンサ2と抵抗素子16、17とが並列に接続された分圧器として構成されている。抵抗素子16、17は、高いDCリンク電圧13を分圧器のタップ18においてこれらに比例した電圧に分割する。このプロセスにおいて、抵抗素子16は500kΩの抵抗、抵抗素子17は820Ωの抵抗とすることができ、例えば、抵抗素子16、17はそれぞれ、1つの抵抗成分または複数の互いに接続された抵抗成分によって形成されている。
【0030】
電流目標値を決定するために、目標値決定ユニット24は、第1の入力14から提供される電圧情報を受信する。目標値決定ユニット24は、演算増幅器25を備え、演算増幅器25は、電圧情報によって示されるDCリンク電圧13を反転し、すなわちその負の値を求め、このように求めたDCリンク電圧13の反転値に一定のオフセット値を加える。この目的のために、演算増幅器25は、負の入力において、それぞれが例えば20kΩの抵抗値を有する2つの抵抗器26、27によって反転増幅器として接続され、正の入力において定電圧源28に接続されている。このようにして、負荷抵抗器5によって消費される電力の二次依存性が負荷抵抗器5における電圧降下によって大部分が補償されるように、負荷抵抗器5を流れる電流19が選択されるように、DCリンクコンデンサ2の放電が行われる。
【0031】
さらに、制御ユニット11は、負荷抵抗器5を流れる電流19の時間平均を示す電流情報の関数としてデューティサイクルを決定するように構成されている。電流情報を決定するために、制御装置1は、放電装置3と直列に接続された電流検出装置21に接続された第2の入力20を介して電流測定値を受信する。本例示的実施形態においては、これは分路抵抗器22によって形成されている。電流測定値はスイッチ素子6の切り替えによって計時される電流19を示すので、例えばRC回路の形態のローパスユニット23が、第2の入力20の下流に接続されている。ローパスユニット23は、電流情報が電流19の短期移動平均または加重平均に比例して提供されるように電流測定値を調整する。
【0032】
デューティサイクルを調整するために、制御ユニット11は、放電電流目標値からの電流19の時間平均の偏差の関数としてデューティサイクルを決定するように構成されたコントローラ29を備えている。本例示的実施形態においては、コントローラ29が偏差およびPI制御特性の決定を行う。この目的のために、コントローラ29は演算増幅器30を備え、演算増幅器30は、その負の入力に2つのインピーダンス31、32が入力され、その正の入力に目標値決定ユニット24の出力信号が入力される。図1におけるインピーダンス31、32の実装は、単なる一例である。インピーダンス31は、例えば、20kΩであり、インピーダンス32は、例えば、1nFのキャパシタンスと並列な100kΩの抵抗値を有する抵抗器によって形成されている。あるいは、コントローラ29はP制御特性またはPID制御特性を有する。
【0033】
あるいは、目標値決定ユニット24の出力信号と電流情報とは、まずコントローラ29の減算ユニット(図示せず)、例えば差動増幅器または減算器として互いに接続された演算増幅器に供給され、減算ユニットの出力信号は演算増幅器30の負の入力に入力される。このプロセスにおいて、演算増幅器30の正の入力はグランド電位に接続されている。
【0034】
コントローラ29の出力信号は、生成ユニット12に入力される。生成ユニット12は、コントローラ29の出力信号が入力される正の入力と信号発生器34に接続された負の入力とを有する比較器33を備え、信号発生器34は、例えば、出力10においてパルス幅変調された出力信号を生成するための鋸歯状電圧または三角電圧を生成する。
【0035】
制御装置1はさらに停止ユニット35を備え、停止ユニット35によって、出力10における作動信号の出力を制御装置1の第3の入力36における停止信号に応じて停止させることができる。この目的のために、停止ユニット35はトランジスタ回路37を備え、トランジスタ回路37によって、制御装置3のスイッチ素子6が持続的に遮断され、特に通常動作中にDCリンクコンデンサ2の放電が発生しないように、停止信号に応じて出力10を抵抗器を介してグランド電位に切り替えることができる。トランジスタ回路37が遮断すると、作動信号が出力10を通過することが可能となる。
【0036】
本例示的実施形態においては、制御ユニット11と生成ユニット12との両方がアナログ回路として設計されている。あるいは、制御ユニット11および/または生成ユニット12はマイクロコントローラとして設計されてもよい。
【0037】
図2は、制御装置1の第2の例示的実施形態のブロック図を示し、以下に記載する違いを除いて上述の例示的実施形態に相当する。同一または類似した構成要素には同一の参照符号を付す。
【0038】
制御ユニット11は、ここでは、負荷抵抗器5の抵抗値とその所望の電力消費との積とDCリンク電圧13の二乗との比からデューティサイクルを直接計算するように構成されている。この目的のために、制御ユニット11は、電圧情報から第1の入力14で得られたDCリンク電圧13を二乗する二乗ユニット38を備えている。二乗ユニット38の出力信号は、除算ユニット39に供給され、除算ユニット39は、メモリユニット40から、負荷抵抗器5の抵抗値と所望の電力消費との積を示す信号を受信し、それを二乗ユニット38の出力信号で除算する。除算ユニット39の出力信号はデューティサイクルを示す。これにより、負荷抵抗器5の電力消費が実質的に一定となり、生成ユニット12に供給される。式によって表されるように、抵抗RとデューティサイクルDに対する所望の電力消費Pとから次式が得られる。
【数1】
【0039】
デューティサイクルの計算を簡単にするために、第2の例示的実施形態においては、制御ユニット11および生成ユニット12はマイクロコントローラとして設計され、二乗ユニット38および除算ユニット39は、マイクロコントローラの適切なソフトウェアルーチンによって実装されている。あるいは、二乗ユニット38および除算ユニット39を適切なアナログ演算回路によって実装することも可能である。
【0040】
図3は、車両40を駆動するために電気モータ42に電気を供給するように構成された電力変換器41の例示的実施形態を含む車両40の例示的実施形態のブロック図を示す。同一または類似した構成要素には、図1、2と同一の参照符号を付す。
【0041】
電力変換器41は、DCリンクコンデンサ2と、DCリンクコンデンサ2を放電することができる放電装置3と、放電装置3を作動させる前述の例示的実施形態のうちの1つによる制御装置1とを備える。この目的のために、DCリンクコンデンサ2は、スイッチ装置7を介して電力変換器41のDC電圧側に接続される、高電圧バッテリの形態のDC電圧源4から供給を受ける。電力変換器41は、ドライバユニット9と、電圧検出装置15と、電流検出装置21とをさらに備えている。これらは、図示を明快にするために図3に個々に示されていない。
【0042】
DCリンクコンデンサ2は、電力変換器41の電源ユニット43が生成する過渡電流を平滑化する。電源ユニット43は、DC電圧源4から供給されるDC電圧を、電気モータ42のための多相、特に3相または6相交流に変換する。電源ユニット43は、それぞれがDCリンクコンデンサ2に並列に接続されるとともに、それぞれが直列に接続された2つの電力半導体スイッチ素子からなる3つまたは6つのハーフブリッジを備えている。
【0043】
制御装置1は停止信号を車両40の制御モジュール44から受信する。制御モジュール44は、放電事象、例えば事故、絶縁障害、または車両40もしくは電気モータ42の遮断が発生しているかどうかを確認するように構成される。このような放電事象が生じている場合、または停止信号が他の理由で存在しない場合、第3の入力36における停止信号の信号状態変化、または停止信号の不在が、放電装置3によるDCリンクコンデンサ2の放電をトリガする。
図1
図2
図3