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  • 特許-故障検知リレー回路 図1
  • 特許-故障検知リレー回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】故障検知リレー回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/10 20060101AFI20231115BHJP
   H01H 47/22 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01H47/10
H01H47/22 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021035063
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135325
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】関 貫造
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154221(JP,A)
【文献】実開昭58-006358(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/10
H01H 47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置から入力される故障検知信号に応じた駆動出力を行う故障検知リレー駆動回路と、
前記駆動出力が第2リレーの動作接点を介して印加される故障検知リレーと、
前記駆動出力が前記故障検知リレーの復旧接点を介して印加される前記第2リレーと、
前記故障検知リレーの動作接点と直列に接続された抵抗であって、当該直列接続が前記第2リレーの動作接点に対して並列に接続された抵抗と、
を備え、
前記故障検知リレー及び前記第2リレーそれぞれには、保護回路が並列接続されており、
前記抵抗は、前記故障検知リレーのコイル電流を当該故障検知リレーの保持電流以上で且つ定格電流未満に制限する、
故障検知リレー回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障検知リレー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道信号保安制御システムでは、制御装置の故障を外部出力するために故障検知リレーが用いられる。通常、故障検知リレーとしては直流リレーが用いられる。制御装置は、故障が検知されていない場合には、1と0が交互に構成された交番信号を故障検知信号として故障検知リレーの駆動回路に出力して駆動回路から直流出力を発生させて故障検知リレーを動作させる。一方、故障が検知された場合には、0のみで構成された信号を故障検知信号として駆動回路に出力して駆動回路の直流出力を消失させて故障検知リレーを復旧させることで、故障検知リレーの動作接点を介して故障の発生を外部出力する。また、故障検知リレーの動作接点を介して制御装置の出力を外部に出力し、故障検知時には故障検知リレーを復旧させて外部への出力を遮断することで安全な制御を実現している。
【0003】
直流リレーでは、復旧時にリレーコイルに蓄積された電磁エネルギーによる逆起電圧が発生することから、駆動回路の半導体素子等を電気的破壊から保護するために、逆起電圧の吸収用の保護回路が設けられる。しかしながら、リレーコイルに蓄積されている電磁エネルギーを保護回路とコイルとで循環させて消費させるため、保護回路が設けられない場合に比較して、リレーの復旧時間が長くなる。そこで、復旧時間が長くなることを抑制した保護回路の一例として、ダイオードとツェナーダイオードとを直列接続して構成した保護回路が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭51-054256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道信号保安制御システムでは、高い安全性が要求される。そのため、故障検知リレーについても、保護回路を設けることを前提として、制御装置による故障検知時における故障検知リレーの復旧時間の更なる短縮が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保護回路が並列接続された故障検知リレーの復旧時間を短縮することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
制御装置から入力される故障検知信号に応じた駆動出力を行う故障検知リレー駆動回路と、
前記駆動出力が第2リレーの動作接点を介して印加される故障検知リレーと、
前記駆動出力が前記故障検知リレーの復旧接点を介して印加される前記第2リレーと、
前記故障検知リレーの動作接点と直列に接続された抵抗であって、当該直列接続が前記第2リレーの動作接点に対して並列に接続された抵抗と、
を備え、
前記故障検知リレー及び前記第2リレーそれぞれには、保護回路が並列接続されており、
前記抵抗は、前記故障検知リレーのコイル電流を当該故障検知リレーの保持電流以上で且つ定格電流未満に制限する、
故障検知リレー回路である。
【0008】
第1の発明によれば、保護回路が並列接続された故障検知リレーの復旧時間を短縮することができる。つまり、故障検知リレーに印加される駆動出力の経路には、第2リレーの動作接点を介した経路と、故障検知リレーの動作接点と抵抗との直列接続を介した経路との2つがある。前者の経路は故障検知リレーを作動させるために利用し、後者の経路は故障検知リレーを継続的に動作状態とするために利用することができる。後者の経路はいわゆる自己保持回路である。後者の経路にある抵抗は、故障検知リレーのコイル電流を保持電流以上で且つ定格電流未満に制限する。これにより、故障検知リレーが動作状態のときにリレーコイルに蓄積される電磁エネルギーは、故障検知リレーのコイル電流が定格電流付近である従来のリレー回路の場合と比較して小さくなる。そのため、動作状態から復旧するときに発生する逆起電圧が小さくなり、復旧時間を短縮することができる。また、故障検知リレーは定格電流未満の電流で動作状態を保持することから、省電力化を図ることができる。
【0009】
また、第2リレーは、駆動出力が故障検知リレーの復旧接点を介して印加されるので、故障検知リレーが復旧状態のときに動作し、故障検知リレーが動作すると復旧する。これにより、故障検知リレーを復旧状態から動作させるときに、先ず第2リレーを動作させて故障検知リレーを動作させ、故障検知リレーが動作状態となった後に、駆動出力が故障検知リレーの動作接点と抵抗との直列接続のみを介して故障検知リレーに印加されて自己保持回路が形成されることで、故障検知リレーの動作状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】故障検知リレー回路の構成図。
図2】リレー回路の動作を説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0012】
[回路の構成]
図1は、本実施形態の故障検知リレー回路100の構成図である。図1に示すように、故障検知リレー回路100は、リレー回路1と、故障検知リレー駆動回路(以下、適宜「駆動回路」と略称する)3とを備える。
【0013】
駆動回路3は、制御装置5から入力される故障の検出有無を示す故障検知信号に応じた駆動信号を出力する。以下、この出力を駆動出力という。具体的には、駆動出力として、出力端子間に、故障が検出されていない旨の故障検知信号が入力された場合には故障検知リレー10の定格電圧(或いは定格電圧近傍)の所定電圧を出力し、故障が検出されている旨の故障検知信号が入力された場合にはゼロ電圧(電圧無し)を出力する。
【0014】
リレー回路1は、駆動回路3に接続され、駆動回路3からの駆動出力が印加される。リレー回路1は、故障検知リレー10と、第2リレー20と、抵抗40とを備えて構成される。
【0015】
故障検知リレー10は、第2リレー20の動作接点22を介して、駆動回路3の出力端子間に接続されて駆動出力が印加される。第2リレー20は、故障検知リレー10の復旧接点14を介して、駆動回路3の出力端子間に接続されて駆動出力が印加される。
【0016】
抵抗40は、故障検知リレー10の動作接点12と直列に接続され、その直列接続が、第2リレー20の動作接点22に対して並列に接続されている。つまり、故障検知リレー10に印加される駆動出力の経路には、第2リレー20の動作接点22を介した経路と、故障検知リレー10の動作接点12及び抵抗40の直列接続とを介した経路とがある。後述するように、前者の経路は故障検知リレー10を作動させるために利用し、後者の経路は故障検知リレー10を継続的に動作状態とするために利用する。後者の経路はいわゆる自己保持回路を形成する。抵抗40は、故障検知リレー10のコイル電流を保持電流以上で且つ定格電流未満に制限する。一般的に保持電流は定格電流の30%程度であるから、例えばコイル電流が定格の50%程度となるように、抵抗40の抵抗値を定めることができる。つまり、抵抗40の抵抗値は、故障検知リレー10が動作状態にあるときにリレーコイルに蓄積される電磁エネルギーを、従来のリレー回路に比べて低減することができる。
【0017】
故障検知リレー10及び第2リレー20は、何れも同種類の直流リレーである。つまり、定格電圧や定格電流、動作時間、復旧時間等の特性値が同等である。また、故障検知リレー10に保護回路30aが並列接続され、第2リレー20に保護回路30bが並列接続されている。保護回路30a,30bは、リレーコイルに蓄積された電磁エネルギーにより発生する逆起電圧を抑制するための回路である。例えば、ダイオードや、ダイオードとツェナーダイオードとの直列接続等で構成することができる。
【0018】
[回路の動作]
図2は、リレー回路1の動作を説明するタイムチャートである。図2では、横方向を時間経過として、上から順に、駆動回路3が出力する駆動出力、第2リレー20の状態、故障検知リレー10の状態、を示している。駆動出力は、故障が検出されず所定電圧を出力する“正常”と、故障が検出されて出力電圧が無しとなる“故障”との2つの状態として示している。第2リレー20及び故障検知リレー10の状態は、“動作”と“復旧”との2つの状態として示している。
【0019】
先ず、駆動回路3の立ち上げ前の初期状態では、駆動出力である駆動回路3の出力電圧は無しの状態である。従って、第2リレー20及び故障検知リレー10は、ともに復旧しており、それぞれの復旧接点が構成され、動作接点が開放されている(図2の(a))。
【0020】
駆動回路3の立ち上げ直後は、故障が検出されていないならば、駆動回路3から所定電圧が出力される(図2の(b))。すると、故障検知リレー10の復旧接点14を介して駆動出力が印加される第2リレー20が所定の動作時間taの経過後に動作し、第2リレー20の動作接点22が構成される(図2の(c))。
【0021】
第2リレー20は、リレーコイルの電圧(又は電流)が、その定格電圧(又は定格電流)において動作接点を構成するまでの時間が、動作時間taである。そして、駆動出力である駆動回路3の出力電圧は故障検知リレー10の定格電圧付近の所定電圧であるから、故障検知リレー10と同一種類の第2リレー20のリレーコイルに流れる電流(コイル電流)は、定格電流付近の電流に達することになる。
【0022】
次いで、第2リレー20の動作接点22を介して駆動出力が印加される故障検知リレー10が所定の動作時間taの経過後に動作し、故障検知リレー10の動作接点12が構成されるとともに復旧接点14が開放される(図2の(d))。このとき、故障検知リレー10のリレーコイルに流れる電流(コイル電流)は、第2リレー20と同様に、定格電流付近の電流に達することになる。そして、故障検知リレー10の動作接点が構成されることで、直列接続された抵抗40とともに自己保持回路を形成し、この自己保持回路を介して、故障検知リレー10は動作状態を継続することになる。
【0023】
また、故障検知リレー10の復旧接点14が開放されることで、第2リレー20が所定の復旧時間tnの経過後に復旧し、第2リレー20の動作接点22が開放される(図2の(e))。この復旧時間tnは、保護回路30bが並列接続されていることにより、特性値の復旧時間より長い時間となっている。これにより、故障検知リレー10に対する駆動出力の経路が、第2リレー20の動作接点22を介した経路から、故障検知リレー10の動作接点12と抵抗40との直列接続による自己保持回路を形成する経路に切り替わることになる。また、故障検知リレー10のリレーコイルに流れる電流(コイル電流)は、動作直後は定格電流付近の電流であったが、自己保持回路を介する経路に切り替わった後は、抵抗40に流れる電流の分だけ定格電流から小さくなった電流(例えば、定格電流の50%程度)となる。
【0024】
その後、故障が検知されることにより駆動回路3の出力電圧が無しに変化すると(図2の(f))、故障検知リレー10が復旧時間t1を経過した後に復旧し、故障検知リレー10の動作接点12が開放されるとともに復旧接点14が構成される(図2の(g))。このときの復旧時間t1は、復旧時間tnより短い。これは、故障検知リレー10には抵抗40を介して駆動回路3の駆動出力が印加されており、故障検知リレー10のコイル電流が、抵抗40によって保持電流以上定格電流未満の電流となっているからである。つまり、リレーコイルに蓄積される電磁エネルギーPは、リレーコイルの自己インダクタンスL及びコイル電流Iから、P=(1/2)×L×I、で与えられる。従って、コイル電流Iが定格電流の1/2(50%)である場合の電磁エネルギーは、コイル電流Iが定格電流付近である場合の1/4となる。また、駆動回路3の出力電圧が無しに変化したときに発生する逆起電圧Eは、E=-L(dI/dt)、で与えられる。これにより、コイル電流が定格電流より小さい場合、リレーコイルに蓄積された電磁エネルギーが小さくなることから、逆起電圧Eも小さくなり、その結果、復旧時間が短くなるのである。
【0025】
[作用効果]
このように、本実施形態のリレー回路1によれば、保護回路30aが並列接続された故障検知リレー10の復旧時間を短縮することができる。つまり、故障検知リレー10に印加される駆動出力の経路には、第2リレー20の動作接点22を介した経路と、故障検知リレー10の動作接点12と抵抗40との直列接続を介した経路との2つがある。前者の経路は故障検知リレー10を作動させるために利用され、後者の経路は故障検知リレー10を継続的に動作状態とするために利用される。後者の経路はいわゆる自己保持回路である。後者の経路にある抵抗40は、故障検知リレー10のコイル電流を保持電流以上で且つ定格電流未満に制限する。これにより、故障検知リレー10が動作状態のときにリレーコイルに蓄積される電磁エネルギーは、故障検知リレー10のコイル電流が定格電流付近である従来のリレー回路の場合と比較して小さくなる。そのため、動作状態から復旧するときに発生する逆起電圧が小さくなり、復旧時間を短縮することができる。
【0026】
また、第2リレー20は、駆動出力である駆動回路3の出力端子間に故障検知リレー10の復旧接点14を介して接続されているので、故障検知リレー10が復旧状態のときに動作し、故障検知リレー10が動作すると復旧する。これにより、故障検知リレー10を復旧状態から動作させるときに、先ず第2リレー20を動作させて故障検知リレー10を動作させ、故障検知リレー10が動作状態となった後に、駆動出力が故障検知リレー10の動作接点12と抵抗40との直列接続のみを介して故障検知リレー10に接続して自己保持回路を形成させることで、故障検知リレー10の動作状態を保持することができる。また、故障検知リレー10は定格電流未満の電流で動作状態を保持することから、省電力化を図ることができる。
【0027】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。例えば、駆動回路の電源に定電圧電源を使用することで安定した復旧時間を提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
100…故障検知リレー回路
1…リレー回路
10…故障検知リレー
12…動作接点、14…復旧接点
20…第2リレー
22…動作接点
30a,30b…保護回路
40…抵抗
3…駆動回路(故障検知リレー駆動回路)
図1
図2