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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20231115BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20231115BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20231115BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20231115BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20231115BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C02F1/20 A
B01D19/00 H
B01D61/02 500
C02F1/44 A
B01D61/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021047812
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146706
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】山内 悠平
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179341(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047257(WO,A1)
【文献】特開2014-014645(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021508(WO,A1)
【文献】特表2009-523829(JP,A)
【文献】特開2019-195805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C02F 1/20
C02F 1/44
B01D 19/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
A61M 1/00- 1/38
A61M 60/00-60/90
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して血液透析用の電解水を生成する電解水生成装置であって、
陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが隔膜によって区分された電解槽と、
前記陰極室から供給された前記電解水から電解逆浸透水を生成する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜モジュールから排出された濃縮水から水素ガスを回収する、回収モジュールとを含む、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記回収モジュールは、回収した前記水素ガスを前記陰極室に供給される前記水に混合する、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記回収モジュールは、多孔質膜を含む、請求項1又は2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記濃縮水を前記回収モジュールに圧送するポンプを含む、請求項3に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記水素ガスが回収された前記濃縮水を前記陽極室から取り出された前記電解水と共に排出する排出部を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して血液透析用の電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解水を用いた血液透析治療が、患者の酸化ストレスを軽減できるとして、注目されている。例えば、特許文献1には、RO装置の濃縮水ラインが電解水製造装置に接続されている精製水の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-87784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている装置では、濃縮水に含まれる水素ガスが電解水製造装置に戻されるので、水素ガスが有効に利用できる。
【0005】
しかしながら、水素ガスの一部は、再度電気分解される陽極側の水にも含まれるので酸性水として排出される。従って、水素ガスの利用効率の点で改良が望まれている。また、濃縮水がRO装置と電解水製造装置との間を循環する際、何度も逆浸透膜を通過するため、逆浸透膜が早期に消耗する。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、水素ガスの有効利用を図ると共に、逆浸透膜の消耗を抑制できる電解水生成装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水を電気分解して血液透析用の電解水を生成する電解水生成装置であって、陽極給電体が配された陽極室と陰極給電体が配された陰極室とが隔膜によって区分された電解槽と、前記陰極室から供給された前記電解水から電解逆浸透水を生成する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜モジュールから排出された濃縮水から水素ガスを回収する、回収モジュールとを含む。
【0008】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記回収モジュールは、回収した前記水素ガスを前記陰極室に供給される前記水に混合する、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記回収モジュールは、多孔質膜を含む、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記濃縮水を前記回収モジュールに圧送するポンプを含む、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記水素ガスが回収された前記濃縮水を前記陽極室から取り出された前記電解水と共に排出する排出部を含む、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の前記電解水生成装置は、前記回収モジュールが前記逆浸透膜モジュールから排出された前記濃縮水から前記水素ガスを回収する。従って、前記水素ガスの有効利用を図ることが可能となる。また、前記濃縮水が逆浸透膜モジュールと電解槽との間を循環しないので、逆浸透膜の消耗が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の電解水生成装置を含む透析システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図1の電解水生成装置の構成を示す図である。
図3図2の電解水生成装置の変形例の構成を示す図である。
図4図3の電解水生成装置の変形例の構成を示す図である。
図5図3の電解水生成装置の別の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1を含む透析システム100の概略構成を示している。透析システム100は電解水で調製された透析液を用いた血液透析の治療を行うためのシステムである。
【0015】
透析システム100は、前処理装置10と、電解水生成装置1と、透析液調製装置11と、透析装置12とを含んでいる。
【0016】
前処理装置10は、原水を逆浸透処理によって浄化して前処理水として電解水生成装置1に供給する。原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、井戸水、地下水等を用いることができる。
【0017】
前処理装置10は、例えば、軟水化処理装置と、活性炭処理装置等によって構成される。軟水化処理装置は、原水からカルシウムイオン及びマグネシウムイオン等の硬度成分を除去して軟水化する。活性炭処理装置は、微細な多孔質物質である活性炭を有し、軟水化処理装置から供給される水から塩素等を吸着・除去する。軟水化処理装置の上流側には、原水を貯えるためのタンクが設けられていてもよい。
【0018】
電解水生成装置1は、透析液の調製に用いられる電解水を生成するための装置である。電解水生成装置1は、前処理装置10から供給された前処理水を電気分解して電解水を生成し、透析液調製装置11に供給する。なお、前処理装置10と電解水生成装置1とは、1つの装置として統合された構成であってもよい。
【0019】
本実施形態の電解水生成装置1には、逆浸透膜処理を行う逆浸透膜モジュール(後述する図2参照)が含まれており、電解水生成装置1から透析液調製装置11に供給される電解水は、電気分解の後、逆浸透膜処理された電解逆浸透水であり、透析液調製用水として用いられる。電解水生成装置1の詳細は、図2等を参照して後述する。
【0020】
透析液調製装置11は、電解水生成装置1から供給された電解逆浸透水を用いて、例えば、透析原剤を希釈して、透析液を調製する。透析原剤は、液状の他粉末状のものが適用される。透析液調製装置11によって調製された透析液は、透析装置12に送られる。
【0021】
透析装置12は、透析液供給装置とダイアライザーとを含んでいる。透析液供給装置は、透析液調製装置11から供給された透析液をダイアライザーに送出する。ダイアライザーは、例えば、中空糸膜等の多孔質膜によって構成された透析膜を含む人工腎臓であり、透析膜を介して透析液調製装置11から供給された透析液を透析治療の患者の血液に作用させ、血液から老廃物及び水分を除去する。
【0022】
なお、例えば、個人用(少人数用)の透析システム100にあっては、透析液調製装置11と透析装置12とが統合された装置が適用されてもよい。
【0023】
図2は、電解水生成装置1の概略構成を示している。電解水生成装置1は、電解槽4と、
逆浸透膜モジュール5と、回収モジュール6とを含んでいる。
【0024】
前処理装置10から供給された前処理水は、電解槽4に送り込まれて電気分解される。電解槽4は、電解室40と、陽極給電体41と、陰極給電体42と、隔膜43とを含んでいる。電解室40は、隔膜43によって、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとに区分される。前処理水は、例えば、二股に分岐する流路を介して、陽極室40a及び陰極室40bに供給される。
【0025】
陽極給電体41と陰極給電体42との間に印加される電圧は、制御部(図示せず)によって制御される。制御部は、陽極給電体41及び陰極給電体42に供給される電解電流が予め設定された所望の値となるように、陽極給電体41及び陰極給電体42に印加する電解電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部は、上記電圧を増加させる。これにより、電解電流が適切に制御される。
【0026】
電解槽4で電気分解された電解水のうち、陰極室40bで生成された電解水は陰極水として逆浸透膜モジュール5に送られる。一方、陽極室40aで生成された電解水は陽極水として、電解水生成装置1(透析システム100)の外部に排出される。
【0027】
電解槽4内で水が電気分解されることにより、陰極室40bで水素ガスが発生し、陽極室40aで酸素ガスが発生する。
【0028】
陰極室40bで発生した水素ガスは、陰極室40b内の電解水に溶け込んで、陰極室40bから取り出される。すなわち、陰極室40bから逆浸透膜モジュール5に送られる陰極水は、陰極室40bで電気分解され、水素ガスが溶け込んだ電解水素水である。
【0029】
陽極室40aで発生した酸素ガスは、陰極室40b内の電解水に溶け込んで、陽極水として陽極室40aから取り出され、電解水生成装置1の外部に排出される。
【0030】
逆浸透膜モジュール5は、逆浸透膜51を備えている。逆浸透膜51は、逆浸透膜モジュール5の内部を第1室50aと第2室50bとに区分する。陰極室40bからの陰極水は、第1室50aに供給される。第1室50a内の陰極水は、逆浸透膜51を透過して第2室50bに移動する際に浄化される。これにより、前処理装置10では除去できなかった不純物が逆浸透膜51によって除去される。
【0031】
逆浸透膜モジュール5は、陰極室40bから供給された陰極水を、逆浸透膜51によって浄化された逆浸透水と、前処理装置10では除去できなかった不純物を含む濃縮水とに分離する。すなわち、逆浸透膜モジュール5は、第1室50aに供給された陰極水を逆浸透膜51を透過させて電解逆浸透水を生成する。一方、逆浸透膜モジュール5において、逆浸透膜51を透過できなかった成分は、濃縮された不純物を含む濃縮水として回収モジュール6に送られる。
【0032】
第1室50a内で陰極水に溶け込んでいる水素ガスの大部分は、陰極水と共に逆浸透膜51を透過し、第2室50bに移動する。しかしながら、一部の水素ガスは、陰極水と共に逆浸透膜51を透過することなく、第1室50a内に留まり不純物と共に、濃縮水として逆浸透膜モジュール5から排出される。すなわち、逆浸透膜モジュール5から排出される濃縮水は、不純物の他、陰極水に溶け込んだ水素ガスを含んでいる。
【0033】
回収モジュール6は、逆浸透膜モジュール5から排出された濃縮水から水素ガスを回収する。従って、水素ガスの有効利用を図ることが可能となる。
【0034】
一方、回収モジュール6は、水素ガスの回収後の濃縮水を、排水として電解水生成装置1(透析システム100)の外部に排出する。これにより、濃縮水が逆浸透膜モジュール5と電解槽4との間を循環しないので、逆浸透膜51の消耗が抑制される。
【0035】
回収モジュール6によって回収された水素ガスは、種々の用途に適用できる。例えば、水素ガスは、燃料電池等のエネルギー用途に使用できる。回収モジュール6としては、例えば、後述する多孔質膜モジュール等が適用される。
【0036】
陰極室40bと逆浸透膜モジュール5とをつなぐ陰極水の流路には、ポンプ7が設けられるのが望ましい。ポンプ7は、陰極室40bから取り出された陰極水を逆浸透膜モジュール5に圧送する。これにより、逆浸透膜モジュール5での第1室50aと第2室50bとの間の圧力差が大きくなり、電解逆浸透水を効率よく生成可能となる。
【0037】
なお、逆浸透膜モジュール5の第2室50bの下流側には、UF(限外フィルター)モジュール(図示せず)が設けられていてもよい。
【0038】
図3は、図2の電解水生成装置1の変形例である電解水生成装置1Aを示している。電解水生成装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1の構成が採用されうる。
【0039】
電解水生成装置1Aでは、回収モジュール6によって回収された水素ガスは、陰極室40bに供給される前処理水と混合される。これにより、水素ガスが前処理水に溶け込んで、陰極水の初期の溶存水素濃度が高められる。従って、陰極室40bから逆浸透膜モジュール5に供給される陰極水の溶存水素濃度が高められる。
【0040】
図4は、図3の電解水生成装置1Aの変形例である電解水生成装置1Bを示している。電解水生成装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1Aの構成が採用されうる。
【0041】
電解水生成装置1Bは、水素ガスが回収された後の濃縮水を回収モジュール6から排出するための排出部8を含んでいる。排出部8は、回収モジュール6からのびる流路81を含んでいる。
【0042】
流路81は、陽極室40aからのびる流路82に接続されている。流路82は、陽極室40aから陽極水を排出するための流路である。電解水生成装置1Bにあっては、排出部8が、水素ガスが回収された後の濃縮水を、陽極室40aから取り出された電解水(陽極水)と共に排出する。これにより、電解水生成装置1Bひいては透析システム100の構成が簡素化される。
【0043】
図5は、図3の電解水生成装置1Aの別の変形例である電解水生成装置1Cを示している。電解水生成装置1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1Aの構成が採用されうる。
【0044】
電解水生成装置1Cにおいては、回収モジュール6として、多孔質膜モジュール61が適用されている。多孔質膜モジュール61は、多孔質膜62を備えている。多孔質膜62は、多孔質膜モジュール61の内部を第1室61aと第2室61bとに区分している。多孔質膜62には、微細な孔が形成されている。例えば、本実施形態の多孔質膜62では、孔の直径は、水素分子の直径以上であり、濃縮水に含まれるその他の分子の直径よりも小さい。
【0045】
第1室61aには、逆浸透膜モジュール5からの濃縮水が供給される。第1室61a内の濃縮水の溶け込んだ水素ガスは、多孔質膜62を透過して第2室61bに移動する。これにより、濃縮水から水素ガスが分離され、回収される。
【0046】
電解水生成装置1Cでは、第2室61bが、前処理水を陰極室40bに供給するための流路の一部を構成している。これにより、陰極室40bに供給される前処理水は、第2室61bを通過する際に、多孔質膜62を透過した水素ガスと混合される。これにより、水素ガスが前処理水に溶け込んで、陰極水の初期の溶存水素濃度が高められる。
【0047】
逆浸透膜モジュール5と多孔質膜モジュール61とをつなぐ濃縮水の流路には、ポンプ9が設けられるのが望ましい。ポンプ9は、逆浸透膜モジュール5から取り出された濃縮水を多孔質膜モジュール61に圧送する。これにより、多孔質膜モジュール61での第1室61aと第2室61bとの間の圧力差が大きくなり、水素ガスが効率よく多孔質膜62を透過し、回収可能となる。
【0048】
以上、本発明の電解水生成装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明の電解水生成装置1等は、少なくとも、水を電気分解して血液透析用の電解水を生成する電解水生成装置であって、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとが隔膜43によって区分された電解槽4と、陰極室40bにて生成された電解水から電解逆浸透水を生成する逆浸透膜モジュール5と、逆浸透膜モジュール5から排出された濃縮水から水素ガスを回収する、回収モジュール6とを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電解水生成装置
4 電解槽
5 逆浸透膜モジュール
6 回収モジュール
8 排出部
9 ポンプ
40a 陽極室
40b 陰極室
41 陽極給電体
42 陰極給電体
43 隔膜
51 逆浸透膜
62 多孔質膜
図1
図2
図3
図4
図5