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特許7385622熱膨張材取付具、区画貫通具、及び、耐火区画貫通具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】熱膨張材取付具、区画貫通具、及び、耐火区画貫通具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20231115BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20231115BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20231115BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E04B1/94 F
A62C3/16 B
F16L5/04
F16L5/02 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021092278
(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公開番号】P2022184432
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩松 毅
(72)【発明者】
【氏名】勝部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】正木 良和
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-007755(JP,U)
【文献】実開平05-095134(JP,U)
【文献】特開2018-204359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 17/08
A62C 3/16
F16L 5/02-5/04
F16L 5/10
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、
耐火性を有し、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有し、
該筒状体は、筒内部に設けられる前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となるよう構成され、前記熱膨張材の一部が前記筒状体の径外方の外部領域に延出することを許容するものであり、前記筒状体を径方向に貫通する複数の延出孔を含む延出許容部を備え
前記複数の延出孔の各々は、前記熱膨張材取付具の前記貫通孔への設置状態で、前記筒内部に設けられる前記熱膨張材により全体が覆われる熱膨張材取付具。
【請求項2】
前記延出許容部は、前記筒状体の周方向に略一周に亘って設けられている請求項1に記載の熱膨張材取付具。
【請求項3】
記延出孔は、前記筒状体の周方向の一端部が、他の前記延出孔と軸線方向において隣り合うよう構成される請求項1又は2に記載の熱膨張材取付具。
【請求項4】
前記複数の延出孔の各々は、前記筒状体の周方向に延びる長孔であり、
複数の前記長孔は、前記筒状体の周方向に間欠的に設けられると共に、前記筒状体の軸線方向に並列して設けられており、
前記並列する関係で一方の前記長孔と他方の前記長孔とが、前記周方向において交互にオーバーラップするように形成されている請求項3に記載の熱膨張材取付具。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱膨張材取付具と、前記熱膨張材取付具の前記筒状体の外周面に設けられる可燃性の遮蔽部材と、を備え、
前記遮蔽部材は、
前記筒状体の外周面のうち、前記延出許容部を覆う位置に又は前記延出許容部の近傍の位置に設けられ、
前記筒状体の外周面と前記貫通孔の内壁との間に形成された隙間を遮蔽可能である区画貫通具。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱膨張材取付具、又は、請求項に記載の区画貫通具と、前記熱膨張材取付具の内部に設けられ、熱を受けて膨張する熱膨張材と、を備える耐火区画貫通具。
【請求項7】
前記筒状体は、前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が径内側へ膨張するための外壁となるよう構成され、筒内部に前記熱膨張材を設けることができ、かつ、外周面に前記熱膨張材を設けることができるように構成され、前記熱膨張材を外周面に取り付けることができる外周取付部を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱膨張材取付具。
【請求項8】
建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に挿通される耐火区画貫通具であって、
前記耐火区画貫通具は、
耐火性を有し、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有する、請求項1乃至4、請求項7のいずれか1項に記載の熱膨張材取付具と、
前記筒状体に設けられ、熱を受けて膨張する熱膨張材と、を備え、
前記熱膨張材は、前記熱膨張材取付具の内周面及び外周面にそれぞれ設けられ、
前記筒状体は、前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に内周面に設けられた前記熱膨張材が径内側へ膨張するための壁となるよう構成される耐火区画貫通具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外又は内部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設けるための熱膨張材取付具、該熱膨張材取付具を備える区画貫通具、及び、前記熱膨張材取付具又は前記区画貫通具を備える耐火区画貫通具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁に形成された貫通孔への耐火工法に用いる耐火スリーブとして、特許文献1に記載の耐火スリーブが知られている。耐火スリーブは、円筒形状のスリーブ本体と、スリーブ本体の軸線方向一端部から径外方に延びるフランジプレートと、を備え、スリーブ本体は、半割れ形状の一対のスリーブ片を組み合わせて構成される。このような耐火スリーブは、一対のスリーブ片を組み合わせてスリーブ本体を構成し、フランジプレートが壁に当接するまでスリーブ本体を貫通孔に挿通することで、壁に形成された貫通孔に取り付けられる。また、スリーブ本体から径外方に延びるフランジプレートで貫通孔の外縁部分を隠蔽できる。そして、壁体に取り付けられたスリーブ本体の内部に熱膨張性耐火パックを充填することで、スリーブ本体が貫通孔の内壁に圧着するとされている。
【0003】
以上のような耐火スリーブによれば、火災が発生した際に、スリーブ本体の内部に充填された熱膨張性耐火パックが膨張し、スリーブ本体の内部空間を閉塞するため、貫通孔からの延焼を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4196383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のような耐火スリーブにおいては、熱膨張性耐火パックが膨張してもなお延焼が生じる場合があり、改善が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、より確実に延焼することを抑制できる熱膨張材取付具、該熱膨張材取付具を備える区画貫通具、及び、前記熱膨張材取付具又は前記区画貫通具を備える耐火区画貫通具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱膨張材取付具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、耐火性を有し、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有し、該筒状体は、筒内部に設けられる前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が主として径内側へ膨張するための外壁となるよう構成され、前記熱膨張材の一部が前記筒状体の径外方の外部領域に延出することを許容する延出許容部を備える。
【0008】
かかる構成の熱膨張材取付具にあっては、内部に設けられる熱膨張材の外部領域への延出を許容する延出許容部を備えるので、熱膨張材が筒状体の内部で径内方へ膨張するだけでなく、延出許容部を介して径外方にも延出できる。よって、熱膨張材によって筒状体の内部と該筒状体の外周面及び貫通孔の内壁の間の隙間とを閉塞でき、区画体に形成された貫通孔を全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0009】
また、前記延出許容部は、前記筒状体の周方向に略一周に亘って設けられるよう構成することもできる。
【0010】
かかる構成によれば、延出許容部は、筒状体の周方向の全周に亘って熱膨張材の径外方への延出を許容するので、熱膨張材が筒状体の全周から径外方に向かって延出できるため、筒状体と貫通孔の内壁との間の隙間を全周に亘って熱膨張材によって確実に閉塞できる。
【0011】
また、前記延出許容部は、前記筒状体を径方向に貫通する複数の延出孔を含み、前記延出孔は、前記筒状体の周方向の一端部が、他の前記延出孔と軸線方向において隣り合うよう構成されることもできる。
【0012】
かかる構成によれば、延出許容部として筒状体に延出孔が複数形成され、延出孔の周方向の一端部は、他の延出孔と軸線方向において隣り合うように形成されるので、延出許容部として略全周に亘って延びるように1つの孔が形成される場合に比べて、筒状体の強度を高めることができ、かつ、他の延出孔と隣り合う部分においては熱膨張材における前記一端部から延出した部分が他の延出孔から延出した部分と隣り合うことで軸線方向に沿った直線状の隙間が生じない。よって、熱膨張材による熱膨張材取付具と貫通孔の内壁との間の隙間の確実な閉鎖と、熱膨張材取付具の耐久性の確保と、を両立できる。
【0013】
また、本発明の区画貫通具は、前記熱膨張材取付具と、前記熱膨張材取付具の前記筒状体の外周面に設けられる可燃性の遮蔽部材と、を備え、前記遮蔽部材は、前記筒状体の外周面のうち、前記延出許容部を覆う位置に又は前記延出許容部の近傍の位置に設けられ、前記筒状体の外周面と前記貫通孔の内壁との間に形成された隙間を遮蔽可能であるよう構成される。
【0014】
かかる構成によれば、火災が発生していない通常時には遮蔽部材によって貫通孔の内壁と熱膨張材取付具との間の隙間を塞ぎ、貫通孔の一方側から他方側が見えることを抑制することができる。火災が発生した際に、初期段階では、遮蔽部材で前記隙間を遮蔽して熱気等が貫通することを抑制でき、その後は、径外方に延出した熱膨張材によって前記隙間を塞いで延焼を抑制できる。
【0015】
また、本発明の耐火区画貫通具は、前記熱膨張材取付具、又は、前記区画貫通具と、前記熱膨張材取付具の内部に設けられ、熱を受けて膨張する熱膨張材と、を備えるよう構成される。
【0016】
かかる構成によれば、熱膨張材取付具又は区画貫通具によって熱膨張材を貫通孔に取り付けることで、確実に延焼を抑制できる。
【0017】
また、本発明の他の熱膨張材取付具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に、熱を受けて膨張する熱膨張材を設置するための熱膨張材取付具であって、前記熱膨張材取付具は、前記貫通孔に挿入可能となるとなるよう筒状に形成した筒状体を有し、該筒状体は、前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に前記熱膨張材が径内側へ膨張するための外壁となるよう構成され、筒内部に前記熱膨張材を設けることができ、かつ、外周面に前記熱膨張材を設けることができるように構成され、前記熱膨張材を外周面に取り付けることができる外周取付部を備えるよう構成される。
【0018】
かかる構成によれば、内部だけでなく外周面にも熱膨張材を設けることができるので、内部を閉塞するだけでなく、貫通孔の内壁と筒状体の外周面との間の隙間も閉塞でき、貫通孔全体を塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0019】
また、本発明の他の耐火区画貫通具は、建築物の内部又は内部と外部を区画する区画体を貫通するよう形成された貫通孔に挿通される耐火区画貫通具であって、前記耐火区画貫通具は、耐火性を有し、前記貫通孔に挿入可能となるように筒状に形成された筒状体を有する熱膨張材取付具と、前記筒状体に設けられ、熱を受けて膨張する熱膨張材と、を備え、前記熱膨張材は、前記熱膨張材取付具の内周面及び外周面にそれぞれ設けられ、前記筒状体は、前記熱膨張材が熱を受けて膨張する際に内周面に設けられた前記熱膨張材が径内側へ膨張するための壁となるよう構成される。
【0020】
かかる構成によれば、内部だけでなく外周面にも熱膨張材を設けることができるので、内部を閉塞するだけでなく、貫通孔の内壁と筒状体の外周面との間の隙間も閉塞でき、貫通孔全体を塞いで確実に延焼を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、筒状体の内部だけでなく、外周面と貫通孔の内壁との間の隙間も熱膨張材で閉塞できるので確実に延焼を抑制できる熱膨張材取付具、区画貫通具、及び、耐火区画貫通具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の耐火区画貫通具を示す斜視図である。
図2】同耐火区画貫通具を示す外側から見た展開図である。
図3】同耐火区画貫通具を示す内側から見た展開図である。
図4】同耐火区画貫通具を貫通孔に取り付ける方法の概略を示す図である。
図5】同耐火区画貫通具を貫通孔に取り付けた状態を示す図である。
図6図5に示すVI-VI端面図である。
図7図5に示すVII-VII端面図である。
図8】火災発生時の同耐火区画貫通具の状態を示す図である。
図9図8に示すIX-IX端面図である。
図10図8に示すX-X端面図である。
図11】他の実施形態の耐火区画貫通具を示す外側から見た展開図である。
図12】他の実施形態の耐火区画貫通具を示す外側から見た展開図である。
図13】他の実施形態の耐火区画貫通具を示す図である。
図14】他の実施形態の耐火区画貫通具を示す図である。
図15】他の実施形態の耐火区画貫通具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態の耐火区画貫通具1について図1乃至図10を参照して説明する。説明の便宜上、手前側及び奥側は区画体6に形成された貫通孔6aの方向を基準に(具体的には図4に示す方向を基準に)説明する。また、軸線方向は、耐火区画貫通具1の軸線方向を基準に(具体的には図1に示す方向を基準に)説明する。
【0024】
本発明の耐火区画貫通具1は、建築物の内外又は内部を区画する区画体6に形成された貫通孔6aに挿通され、火災発生時に、貫通孔6aを介した延焼を抑制するために用いられる。
【0025】
図1乃至図3に示すように、耐火区画貫通具1は、貫通孔6aに挿入可能な筒状の形状である。また、耐火区画貫通具1は、図2及び図3に示すような板状体を筒状にして形成される。具体的に、耐火区画貫通具1は、筒状の区画貫通具2と、区画貫通具2の内部に設けられる熱膨張材5と、を備える。また、区画貫通具2は、薄板体で構成され、内部に熱膨張材5を設けることができる熱膨張材取付具3と、熱膨張材取付具3の外周面に設けられる遮蔽部材21と、熱膨張材取付具3の軸線方向一端側(手前側)に設けられる隙間埋め具4と、を備える。
【0026】
図1に示すように、熱膨張材取付具3は、金属製の薄板体から構成される筒状体30を備える。具体的に、熱膨張材取付具3は、鋼製の薄板体で構成される。また、熱膨張材取付具3は、図2及び図3に示すような、展開した状態から図1に示すような筒状体30に手で丸めることができる程度の硬さを有する薄板体である。さらに、熱膨張材取付具3は、熱を受けた際に、少なくとも熱膨張材5が膨張するまでは燃焼又は融解しない程度の耐火性を有する。本実施形態の熱膨張材取付具3は、不燃性であるが、熱膨張材5の性能や、求められる耐火性能に応じて難燃性や準不燃性として構成することもできる。
【0027】
筒状体30は、筒状に形成されて、内部に熱膨張材5が取付けられる。また、筒状体30は、内部に設けられた熱膨張材5が主として内側に膨張するための外壁を構成する。さらに、筒状体30は、熱膨張材5を設けることができる取付部31を備える。具体的に、図2及び図3に示すように、筒状体30(熱膨張材取付具3)は、設けられた熱膨張材5が内側(筒状体30の径内方)へ膨張するための外壁を構成する膨張外壁部32と、設けられた熱膨張材5の一部が外側(筒状に形成された際の径外方)へ延出することを許容する延出許容部33と、熱膨張材5を設けることができる取付部31と、を備える。本実施形態の筒状体30は、内部に設けられた熱膨張材5が内部を閉塞できる程度に内側に膨張するための外壁を構成しつつ、筒状体30と貫通孔6aの内壁との間の空間を閉塞できる程度に径外方への熱膨張材5の延出を許容する。
【0028】
膨張外壁部32は、内部に設けられた熱膨張材5が内側に膨張するための外壁を構成する部位である。具体的に、膨張外壁部32は、内部に熱膨張材5を設けることができる空間が画定し、内部に設けられた熱膨張材5を薄板材で周方向全周に亘って囲う部位である。即ち、膨張外壁部32は、筒状に形成され、径外方への熱膨張材5の膨張を規制する部位である。また、膨張外壁部32は、筒状体30の側壁の軸線方向の一部である。本実施形態の膨張外壁部32は、径方向に貫通する孔が形成されていない筒状の部位である。さらに、膨張外壁部32は、熱膨張材5が膨張する際に、熱膨張材5を径外方から押え、熱膨張材5が径外方に膨張することを抑制するように構成される。即ち、膨張外壁部32は、熱膨張材5が膨張する力によって破断等をしない程度の強度を有する。
【0029】
延出許容部33は、内部に設けられた熱膨張材5が、筒状体30の径外方の外部領域に延出することを許容する部位である。本実施形態の延出許容部33は、熱膨張材5が膨張する際に、その一部が径外方に延出することを許容する。また、延出許容部33は、筒状体30の周方向の1周に亘って設けられる。本実施形態では、延出許容部33は、内部に設けられた熱膨張材5が筒状体30の周方向において間欠的に延出するように構成されるが、熱膨張材5の複数の延出した部分を合わせて、延出した熱膨張材5が筒状体30の径外方に1周に亘って延びるように構成されている。具体的に、本実施形態の各延出許容部33では、軸線方向に離間した2か所から筒状体30の周方向において間欠的に熱膨張材5が延出可能であり、延出した熱膨張材5が軸線方向において隣り合うように位置することで結果として筒状体30の外周に一周に亘って熱膨張材5が延出する。本実施形態の延出許容部33は、筒状体30の軸線方向に離間して2か所に設けられている。即ち、本実施形態の筒状体30の径外方には、熱膨張材5が2周分延出できる。また、延出許容部33は、軸線方向に所定距離だけ間隔をあけて2か所に設けられている。この所定距離は、後述する区画体6(中空壁)の壁体61同士の間隔と略等しく設定される。さらに、延出許容部33の軸線方向の幅(熱膨張材5が延出する領域の軸線方向の幅)は、後述する区画体6を構成する壁体61の厚み以下に設定される。
【0030】
延出許容部33は、筒状体30を構成する薄板体の厚み方向に貫通する孔である延出孔33aが形成された部位である。本実施形態で、延出許容部33には、複数の延出孔33aが形成される。また、本実施形態の延出許容部33は、延出孔33aが軸線方向において隣接するように配置される孔隣接部331を備える。また、延出許容部33は、延出孔33aが周方向の両端部に形成される周方向隣接部332と、延出孔33aが軸線方向の両端部に形成される軸方向隣接部333と、を備える。即ち、周方向隣接部332は、周方向に一端側及び他端側に延出孔33aが形成される部分であり、軸方向隣接部333は、軸線方向の一端側及び他端側に延出孔33aが形成される。また、複数の延出孔33aが周方向隣接部332を介して周方向で隣り合う。さらに、複数の延出孔33aが軸方向隣接部333を介して軸線方向で隣り合う。さらに、周方向隣接部332の軸線方向一端側又は他端側には、延出孔33aが形成されている。
【0031】
延出孔33aは、延出許容部33に形成された熱膨張材5が延出可能な程度の大きさの孔である。具体的に、延出孔33aは、筒状体30(熱膨張材取付具3)の周方向に延びる長孔である。本実施形態の延出孔33aは、筒状体30の周方向に沿って延びる長孔である。また、延出孔33aは、延出許容部33に複数形成される。具体的に、延出孔33aは、他の延出孔33aと周方向においてオーバーラップするように形成されている。即ち、延出孔33aは、軸線方向で離間して隣り合う他の延出孔33aに対し、周方向の一端部が周方向の一方側に、他端部が周方向の他方側に配置されるように形成される。また、延出孔33aは、周方向の一端部及び他端部の少なくとも一方が他の延出孔33aの周方向の一端部及び他端部の少なくとも一方と軸線方向において隣り合うように形成されている。さらに、延出孔33aは、孔隣接部331において他の延出孔33aと軸線方向に所定距離L1だけ離間して隣り合う。孔隣接部331における延出孔33a同士の軸線方向の距離L1は、熱膨張材取付具3が取付けられる貫通孔6aの区画体6(特に区画体6を構成する壁体61)の厚みよりも小さく設定される。具体的に、孔隣接部331における延出孔33a同士の軸線方向の距離L1は、10mm以下に設定される。また、孔隣接部331における延出孔33a同士の軸線方向の距離L1は、孔隣接部331において延出孔33a同士が隣り合う周方向長さよりも小さく設定される。
【0032】
延出許容部33は、内部に設けられた熱膨張材5が熱を受けて膨張する際に熱膨張材5の一部が径外方に膨出することを許容する。また、延出許容部33は、貫通孔6aに設置された状態で、火が軸線方向に沿って貫通できない程度に貫通孔6aの内壁と筒状体30の外周面との間の隙間を閉鎖可能な量だけ熱膨張材5が径外方に延出することを許容する。本実施形態の延出孔33aの短手方向の幅は、1mmから10mmの間で設定される。本実施形態の延出許容部33は、熱膨張材5が熱を受けて膨張する場合に、熱膨張材5が径外方に延出するように膨張することを許容するように構成される。
【0033】
取付部31は、熱膨張材5を取り付け可能な部位である。本実施形態の取付部31は、板状の熱膨張材5を取り付け可能に構成されている。また、取付部31は、熱膨張材5を着脱可能に構成されている。具体的に、取付部31は、筒状体30を構成する薄板体の一部を折り曲げて形成される爪状の部位である。即ち、本実施形態の取付部31は、熱膨張材5に係合して熱膨張材5を取り付ける。さらに、取付部31は、熱膨張材5に対して、少なくとも軸線方向で係合して熱膨張材5を取り付ける。本実施形態で取付部31は、熱膨張材5に対して軸線方向の両端部で係合して熱膨張材5を取り付ける。また、本実施形態の取付部31は、延出許容部33のさらに、本実施形態の取付部31は、熱膨張材5を熱膨張材取付具3の内部に取り付け可能に構成されている。
【0034】
図1乃至図3に示すように、遮蔽部材21は、熱膨張材取付具3の外周面に設けられる部材であり、貫通孔6aの手前側と奥側とを遮蔽する部材である。即ち、遮蔽部材21は、筒状体30の径外方に設けられ、貫通孔6aの内壁の形状に追従して変形可能である。本実施形態の遮蔽部材21は、貫通孔6aの内壁に当接して弾性変形可能な材質で構成される。また、遮蔽部材21は、熱膨張材取付具3の外周面のうち、延出許容部33を覆う位置又は延出許容部33の近傍に設けられる。本実施形態の遮蔽部材21は、延出許容部33を覆う位置に設けられる。具体的に、遮蔽部材21は、延出許容部33の外周面に、延出孔33aの径外方を塞ぐように設けられる。即ち、筒状に形成された熱膨張材取付具3の外周面には、遮蔽部材21が設けられる遮蔽領域3aと、遮蔽部材21が貼り付けられない非遮蔽領域3bと、が形成され、遮蔽領域3aは、軸線方向で延出孔33aが形成される範囲にのみ形成される。さらに、本実施形態の遮蔽部材21は、熱膨張材5が熱を受けた際に、熱で燃焼又は融解するように構成される。本実施形態の遮蔽部材21は、ウレタン製のスポンジ材のような可燃性の弾性部材で構成される。また、本実施形態で、遮蔽部材21は、それぞれの延出許容部33の外周面に設けられる。さらに、遮蔽部材21は、熱膨張材取付具3の外周面から一部のみを取外すことができるように構成されている。本実施形態の遮蔽部材21は、熱膨張材取付具3の外周面に着脱可能に貼り付けられており、周方向の端部を剥がして切り取ることで、熱膨張材取付具3の一部を取外すことができる。
【0035】
隙間埋め具4は、貫通孔6aに挿通される長尺体7の径外方に設けられ、径方向における長尺体7の外周面から熱膨張材取付具3の内周面の間を閉じる部材である。また、隙間埋め具4は、筒状体30の軸線方向一端側に設けられ、長尺体7が貫通することを許容しつつ筒状体30の軸線方向一端側に蓋をする部材である。即ち、隙間埋め具4は、貫通孔6aに挿通された長尺体7の径外側に設けられ、貫通孔6aに挿通された熱膨張材取付具3の径内方において、貫通孔6aの手前側と奥側が連通する隙間が生じることを抑制する。具体的に、隙間埋め具4は、耐火性のあるシート状で、筒状に形成されて長尺体7の径外方を覆う耐火シート部41と、耐火シート部41の径内方に設けられ、長尺体7の外周面の形状に追従して変形可能な隙間遮蔽部42と、隙間遮蔽部42の形状を保持する形状保持部材43と、を備える。また、隙間埋め具4は、熱膨張材取付具3の軸線方向一端部に連結されている。
【0036】
耐火シート部41は、耐火性のあるシート状の部位である。また、耐火シート部41は、貫通孔6aに挿通された長尺体7に巻き付けることができる部位である。即ち、耐火シート部41は、薄板状の耐火性の材料で構成される。具体的に、耐火シート部41は、熱膨張材取付具3の軸線方向一端部に連結され、軸線方向一端側に向かって延びるシート状の部位である。耐火シート部41は、少なくとも熱膨張材5が熱を受けて膨張するまでの間、熱で燃焼又は融解しない程度の耐火性を有する。本実施形態の耐火シート部41は、難燃性であり、アルミガラスクロスで構成されている。さらに、耐火シート部41は、形状の変化を保持できるように構成されている。具体的に、耐火シート部41は、長尺体7に巻き付けた状態で重力を受けても巻き付けられた状態の形状を保持する程度の保形性を有する。
【0037】
隙間遮蔽部42は、耐火シート部41の端部に設けられる変形可能な部材である。本実施形態の隙間遮蔽部42は、耐火性のない材質で構成される。また、本実施形態の隙間遮蔽部42は、ウレタン製のスポンジ材のような可燃性の弾性部材で構成される。さらに、隙間遮蔽部42は、耐火シート部41の内周に1周に亘って設けられる。本実施形態で隙間遮蔽部42は、耐火シート部41の軸線方向一端部に設けられる。また、隙間遮蔽部42は、耐火シート部41の周方向に沿って延びるように設けられる。
【0038】
形状保持部材43は、隙間遮蔽部42の径外方に設けられ、隙間遮蔽部42の形状を保持する部材である。また、形状保持部材43は、耐火シート部41よりも保形性が高く構成されている。本実施形態の形状保持部材43は、耐火シート部41の軸線方向一端部に設けられる金属製の索体又は板状体である。また、本実施形態の形状保持部材43は、耐火シート部41の厚み方向(径方向)中途部分に設けられている。具体的に、形状保持部材43は、耐火シート部41の軸線方向一端部を折り返して形成される空間内に設けられている。さらに、本実施形態の形状保持部材43は、隙間遮蔽部42が長尺体7の外周面に巻きつけられた状態のときに、隙間遮蔽部42が弾性で径外方に広がろうとするのに対抗して、隙間遮蔽部42の内周面が長尺体7の外周面から離れない程度に隙間遮蔽部42を径外方から押えることができる程度の保形性を有する。
【0039】
本実施形態で、耐火シート部41、隙間遮蔽部42、及び形状保持部材43は一体として構成されている。具体的に、隙間遮蔽部42は、耐火シート部41の内周面に貼り付けられており、形状保持部材43は、耐火シート部41の径方向の中途部分に埋められることで、耐火シート部41、隙間遮蔽部42、及び形状保持部材43が一体として構成されている。
【0040】
熱膨張材5は、区画貫通具2の内部に設けられる熱膨張性の部材である。具体的に、熱膨張材5は、通常の火災で発生する熱を受けて、区画貫通具2の内部を閉鎖することができる程度の膨張性能を有する。さらに、本実施形態の熱膨張材5は耐火性を有する。即ち、本実施形態の熱膨張材5は、難燃性、準不燃性、又は不燃性である。本実施形態で、熱膨張材5は、区画貫通具2の内部の複数個所に設けられる。具体的に、熱膨張材5は、熱膨張材取付具3の内部に設けられる第一熱膨張材51と、隙間埋め具4の内部に設けられる第二熱膨張材52と、を備える。
【0041】
第一熱膨張材51は、筒状に形成された熱膨張材取付具3(筒状体30)の内部に設けられる部材である。また、第一熱膨張材51は、少なくとも筒状体30の径内方及び径外方に向かって膨張可能なように構成される。本実施形態で第一熱膨張材51は、筒状体30の内部に一対設けられている。具体的に、第一熱膨張材51は、板状体であり、熱を受けて少なくとも板状体の厚み方向に膨張可能な部材である。本実施形態で、第一熱膨張材51は、取付部31によって、筒状体30の内部に係止されている。さらに、第一熱膨張材51は、膨張外壁部32の内部及び延出許容部33の内部に設けられている。本実施形態で、第一熱膨張材51は、1枚の板状体が膨張外壁部32の内部及び延出許容部33の内部に亘って延びるように熱膨張材取付具3の内部に設けられる。即ち、本実施形態で、取付部31は、第一熱膨張材51を膨張外壁部32の内部及び延出許容部33の内部に亘って延びるように筒状体30の内部に設けることができるように構成されている。
【0042】
第二熱膨張材52は、隙間埋め具4の内部に設けられる部材である。また、第二熱膨張材52は、少なくとも隙間埋め具4の径内方に向かって膨張可能なように構成される。本実施形態で、第二熱膨張材52は、隙間埋め具4の内部に、周方向に1周に亘って設けられている。さらに、第二熱膨張材52は、隙間遮蔽部42と軸線方向において隣り合うように設けられる。本実施形態で、第二熱膨張材52は、隙間遮蔽部42の軸線方向他端側に、隙間遮蔽部42と隣接するように設けられている。また、本実施形態で、第二熱膨張材52は板状体であり、耐火シート部41の内周面に貼り付けられることで隙間埋め具4に設けられている。第二熱膨張材52は耐火シート部41に貼付けられるので、爪などにより係止される場合に比べて、隙間遮蔽部42が長尺体7の外周面に巻き付けられる際に、第二熱膨張材52を設けるための部材が干渉することを抑制できる。
【0043】
以上のような耐火区画貫通具1の使用方法について図4乃至図10を参照して説明する。初めに、耐火区画貫通具1を貫通孔6aに取り付ける方法について図4乃至図7を参照して説明する。
【0044】
図4に示すように、耐火区画貫通具1は、建築物の区画体6に形成された貫通孔6aに挿通して取り付けられる。本実施形態の区画体6は、厚み方向に離間して設けられる2枚の壁体61によって構成され、壁体61同士の間に空間が形成された中空壁である(図5参照)。また、本実施形態では、長尺体7が挿通された貫通孔6aに耐火区画貫通具1が挿通される場合について説明する。長尺体7は、複数(本実施形態では3本)の配管や配線をひとまとめにして構成されている。そのため、長尺体7の外周には、配管や配線によって谷間空間Vが形成される(図6参照)。
【0045】
耐火区画貫通具1を貫通孔6aに取り付ける際には、展開した状態の耐火区画貫通具1を長尺体7の外周面を覆うように丸めて筒状に形成し、筒状に形成した状態で貫通孔6aに挿通する。本実施形態では、それぞれの延出許容部33が貫通孔6aの内壁(壁体61)と対向するまで耐火区画貫通具1を貫通孔6aに挿通する。また、それぞれの遮蔽部材21が貫通孔6aの内壁と筒状体30(熱膨張材取付具3)の間に位置するように耐火区画貫通具1を貫通孔6aに挿通する。耐火区画貫通具1を適切な位置まで挿通してから、長尺体7の周りに隙間埋め具4を巻き付ける。隙間埋め具4の巻付けについての詳細は後述する。以上の工程で耐火区画貫通具1は、貫通孔6aに取り付けられる。また、熱膨張材5が貫通孔6aの内部に配置される。
【0046】
図5に示すように、熱膨張材取付具3は、一方の壁体61から他方の壁体61に亘って延びるように貫通孔6aに挿入される。即ち、熱膨張材取付具3は、区画体6の厚み方向に亘って延びるように貫通孔6aに挿入される。また、熱膨張材取付具3は、それぞれの遮蔽部材21が貫通孔6aの内壁と対向するように貫通孔6aに挿通される。図6に示すように、遮蔽部材21は貫通孔6aの内壁の形状に追従して変形し、熱膨張材取付具3の外周面と貫通孔6aの内周面との間の隙間を埋める。また、熱膨張材取付具3は、薄板体を丸めて筒状に形成されているので、薄板体の弾性で、筒状体が展開する方向に力がかかるので、貫通孔6aに挿通された熱膨張材取付具3の外周面が貫通孔6aの内壁に押し付けられるように力が加わる。よって、遮蔽部材21が貫通孔6aの内壁に押し付けられるので、遮蔽部材21で確実に熱膨張材取付具3の外周面と貫通孔6aの内壁の間の隙間を埋め、貫通孔6aの手前側と奥側とを遮蔽できる。貫通孔6aが遮蔽部材21によって、遮蔽されることで、火災が発生していない通常時には、遮蔽部材21によって、貫通孔6aの手前側から奥側(又は奥側から手前側)が見えないようになる。即ち、遮蔽部材21が、貫通孔6aにおける目隠しとなる。火災の初期段階で、貫通孔6aの近傍に火が回っていない段階においては、貫通孔6aの手前側から奥側(又は奥側から手前側)に、火災によって生じた熱気が貫通することや、有害なガスが流れることを軽減できる。
【0047】
貫通孔6aに取り付けられた熱膨張材取付具3(筒状体30)の内部には、長尺体7と熱膨張材取付具3及び熱膨張材取付具3に設けられた第一熱膨張材51との間に空間がある状態となる。この空間は、火災による熱を受けた場合に第一熱膨張材51が膨張して閉塞される。
【0048】
図7に示すように、貫通孔6aの手前側に位置する長尺体7の外周面に隙間埋め具4が取付けられる。具体的に、貫通孔6aの手前側に位置する長尺体7の外周面に隙間埋め具4が巻き付けられることで、隙間埋め具4は長尺体7の外周面に設けられる。隙間埋め具4を外周面に取り付ける(巻き付ける)際には、長尺体7の外周面に隙間埋め具4の少なくとも一部が密着するように巻き付ける。本実施形態の隙間埋め具4は、隙間埋め具4の軸線方向一端部(貫通孔6aへの挿入時の手前側の端部)が長尺体7の外周面に密着するように長尺体7に巻き付けられる。具体的に、隙間埋め具4のうち、隙間遮蔽部42が長尺体7の外周面に密着するように長尺体7に巻き付けられる。隙間遮蔽部42は、長尺体7の外周面の形状に追従して変形可能であるので、長尺体7に隙間埋め具4を巻き付け、手前側の端部を長尺体7の外周面の形状に沿うように長尺体7に押し当てると、隙間遮蔽部42が長尺体7を構成する配管や配線同士の谷間空間Vの形状に沿い、長尺体7の外周面に密着する。以上の工程で、熱膨張材取付具3(筒状体30)の一端部が閉じられる。このように、貫通孔6aの手前側が隙間埋め具4によって閉じられることで、火災が発生していない通常時には、隙間埋め具4によって、貫通孔6aの手前側から奥側(又は奥側から手前側)が見えないようになる。即ち、隙間埋め具4が、貫通孔6aにおける目隠しとなる。また、火災の初期段階で、貫通孔6aの近傍に火が回っていない段階においては、貫通孔6aの手前側から奥側(又は奥側から手前側)に、火災によって生じた熱気が貫通することや、有害なガスが流れることを軽減できる。特に、隙間遮蔽部42が配線や配管同士の谷間空間Vに沿って密着しているので、火災によって生じた熱気が貫通することや、有害なガスが流れることを軽減できる。
【0049】
隙間遮蔽部42が長尺体7の外周面に沿うように変形した状態は、耐火シート部41及び形状保持部材43によって保持される。具体的に、長尺体7に巻き付けられた隙間埋め具4の手前側の端部を長尺体7の外周面に沿うように変形させることで、耐火シート部41及び形状保形部材が、隙間遮蔽部42の内周面の形状に沿う形状に変形する。ここで、本実施形態の隙間遮蔽部42は弾性体であるので、巻き付けられる前の形状に復元しようとして、長尺体7の外周面から離れる方向に力がかかることがある。しかしながら、隙間遮蔽部42の径外方に設けられる耐火シート部41及び形状保持部材43の保形力で隙間遮蔽部42が復元しないように(径外方に広がらないように)押えられるので、隙間遮蔽部42が長尺体7の外周面に沿う状態を維持できる。
【0050】
次に、区画体6の近傍に火がある場合について図8乃至図10を参照して説明する。本実施形態では、貫通孔6aの手前側から出火した場合について説明する。
【0051】
図8に示すように、貫通孔6aの近傍に火がある場合には、耐火区画貫通具1のうち耐火性のない部材は燃焼又は融解(以下、焼失と称する。)する。本実施形態では、隙間遮蔽部42及び遮蔽部材21が耐火性のない材質で構成されるため、隙間遮蔽部42及び遮蔽部材21は熱によって焼失する。隙間遮蔽部42及び遮蔽部材21が焼失することで、貫通孔6aの内壁と熱膨張材取付具3(筒状体30)の外周面の間、及び、耐火シート部41と長尺体7の外周面との間に隙間が生じる。
【0052】
図9に示すように、遮蔽部材21が焼失して生じる、貫通孔6aの内壁と熱膨張材取付具3(筒状体30)の外周面の間の隙間は、第一熱膨張材51が熱膨張材取付具3から径外方に延出して閉塞される。具体的に、第一熱膨張材51は、熱を受けて径内方及び径外方に延びるように膨張する。ここで、第一熱膨張材51のうち、膨張外壁部32の内部に設けられる部分は、膨張外壁部32によって、径外側への膨張を規制されるため、径内方へのみ膨張して熱膨張材取付具3(筒状体30)の内部を閉鎖する。また、第一熱膨張材51のうち、延出許容部33の内部に設けられる部分は、径内方へ膨張するとともに、一部が熱膨張材取付具3の径外方に延出するように膨張する。即ち、第一熱膨張材51のうち、延出許容部33の内部に設けられる部分の一部は、延出孔33aから径外方に膨出する。延出許容部33から径外方に延出した第一熱膨張材51は、熱を受けて貫通孔6aの内壁に当接するまでさらに膨張する。
【0053】
ところで、第一熱膨張材51は、周方向において間欠的に形成された延出孔33aから延出するので、周方向において第一熱膨張材51が延出しない領域が生じるように思える。局所的に見れば、第一熱膨張材51が延出しない領域では貫通孔6aの内壁と熱膨張材取付具3の外周面の間に隙間が生じるようにも見える。しかしながら、図8に示すように、延出孔33aは、他の延出孔33aと周方向にオーバーラップするように形成されているので、延出孔33aから延出した第一熱膨張材51同士が周方向においてオーバーラップするように延出する。即ち、延出孔33aから延出する第一熱膨張材51のそれぞれは、延出した部分の周方向の一端部及び他端部の少なくとも一方が他の延出した部分と孔隣接部331で軸線方向において隣り合うように延出する。よって、軸線方向に沿って手前側から奥側に貫通しようとする火を、延出孔33aから径外方に延出した第一熱膨張材51のいずれかの部分で止めることができるので、貫通孔6aを介した延焼を抑制できる。また、本実施形態では、図9に示すように、第一熱膨張材51が、貫通孔6aの内壁に当接するまで延出し、さらに内壁に沿って延びるように延出して、貫通孔6aの内壁と熱膨張材取付具3のとの間を塞ぐ。
【0054】
図10に示すように、隙間遮蔽部42が焼失して生じる、長尺体7の外周面と耐火シート部41との間の隙間は、第二熱膨張材52が径内方に膨張して閉塞される。具体的に、第二熱膨張材52は、熱を受けて径内方及び径外方に延びるように膨張しようとする。このとき、第二熱膨張材52の外周面には保形性のある耐火シートが設けられているので、第二熱膨張材52は、径外側から径内方に押えられる状態となるので、ひとまず径内方に向かって膨張する。そして、径内方に向かって膨張し、内周面が長尺体7の外周面に当接してから、更に膨張する場合には、耐火シート部41を径内方から径外方に押し広げるように膨張する場合がある。このように、第二熱膨張材52が膨張して長尺体7の外周面と耐火シート部41の隙間を閉塞するので、長尺体7の外周面と耐火シート部41の隙間を介して火が手前側から奥側に貫通しようとする火を止めることができる。また、第二熱膨張材52は、耐火シート部41に径外方から押えられ、径内方に向かって膨張するので、隙間を素早く閉塞することができ、延焼を抑制できる。
【0055】
なお、貫通孔6aの奥側から出火した場合には、隙間遮蔽部42と熱源がある奥側との間に距離があるので、奥側の火が手前側に位置する隙間遮蔽部42を焼失させる前に、第一熱膨張材51が膨張して、貫通孔6aの手前側と奥側との連通を遮蔽するので、延焼を抑制できる。即ち、隙間埋め具4は、熱膨張材取付具3の軸線方向の一方にのみ設けられているが、隙間埋め具4が設けられる側から出火した場合と隙間埋め具4が設けられない側から出火した場合の両方において延焼を抑制できる。
【0056】
以上のような構成の熱膨張材取付具3によれば、内部に設けられる熱膨張材の外部領域への延出を許容する延出許容部33を備えるので、熱膨張材5が筒状体30の内部で径内方へ膨張するだけでなく、延出許容部33を介して径外方にも延出できる。よって、熱膨張材5によって筒状体30の内部と該筒状体30の外周面及び貫通孔6aの内壁の間の隙間とを閉塞でき、区画体6に形成された貫通孔6aを全体的に塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0057】
また延出許容部33は、筒状体30の周方向の全周に亘って熱膨張材5の径外方への延出を許容するので、熱膨張材5が筒状体30の全周から径外方に向かって延出できるため、筒状体30と貫通孔6aの内壁との間の隙間を全周に亘って熱膨張材5によって確実に閉塞できる。
【0058】
さらに、延出許容部33として筒状体30に延出孔33aが複数形成され、延出孔33aの周方向の一端部は、他の延出孔33aと軸線方向において隣り合うように形成されるので、延出許容部33として略全周に亘って延びるように1つの孔が形成される場合に比べて、筒状体30の強度を高めることができ、かつ、他の延出孔33aと隣り合う部分においては熱膨張材5における前記一端部から延出した部分が他の延出孔33aから延出した部分と隣り合うことで軸線方向に沿った直線状の隙間が生じない。よって、熱膨張材5による熱膨張材取付具3と貫通孔6aの内壁との間の隙間の確実な閉鎖と、熱膨張材取付具3の耐久性の確保と、を両立できる。
【0059】
また、延出許容部33は、軸線方向に離間した2か所に設けられ、それぞれが、中空壁である区画体6を構成する各壁体61に形成された貫通孔6aの内壁と対向するように位置することができるように形成されるので、火災発生時に、熱膨張材5で確実に隙間を閉鎖できる。
【0060】
さらに、孔隣接部331における延出孔33a同士の軸線方向の距離L1は、孔隣接部331において延出孔33a同士が隣り合う周方向の長さよりも短いので、延出孔33a同士が軸線方向に離間していたとしても、延出した熱膨張材5で確実に延焼を抑制できる。
【0061】
また、以上のような区画貫通具2によれば、火災が発生していない通常時には遮蔽部材21によって貫通孔6aの内壁と熱膨張材取付具3との間の隙間を塞ぐことができ、火災が発生した際に、初期段階では、遮蔽部材21で前記隙間を遮蔽して熱気等が貫通することを抑制でき、その後は、径外方に延出した熱膨張材5によって前記隙間を塞いで延焼を抑制できる。
【0062】
さらに、筒状に形成された熱膨張材取付具3(筒状体30)は、外周面に遮蔽部材21が設けられる遮蔽領域3aと、遮蔽部材21が設けられない非遮蔽領域3bと、を備え、遮蔽領域3aは、軸線方向で延出許容部33が設けられる範囲に形成されるので、熱膨張材取付具3を貫通孔6aに挿入する際に、遮蔽部材21が延出許容部33と貫通孔6aの内壁を対向させる際の目印になるため、熱膨張材取付具3の位置合わせがしやすい。
【0063】
また、以上のような隙間埋め具4によれば、隙間埋め具4は、耐火性のあるシート状で、筒状に形成されて長尺体7を覆い、軸線方向の一端部が熱膨張材取付具3に連結される耐火シート部41と、耐火シート部41の内面に設けられ、柔軟性を有し、長尺体7の外面形状に追従して変形可能な隙間遮蔽部42と、隙間遮蔽部42の形状を保持する形状保持部材43と、を備えるので、長尺体7の外面と耐火シート部41の間に形成される隙間を隙間遮蔽部42で埋め、隙間遮蔽部42の形状を形状保持部材43で保持することができる。
【0064】
また、以上のような耐火区画貫通具1によれば、熱膨張材取付具3又は区画貫通具2によって熱膨張材5を貫通孔6aに取り付けることで、確実に延焼を抑制できる。
【0065】
さらに、熱膨張材5は、熱膨張材取付具3の内部に設けられる第一熱膨張材51と、耐火シート部41の内部に設けられる第二熱膨張材52と、を備え、第二熱膨張材52は、軸線方向で隙間遮蔽部42に隣接して設けられる。よって、隙間遮蔽部42が熱により焼失する際に、該熱で第二熱膨張材52が膨張して、長尺体7の外周面と耐火シート部41との間を塞ぐことができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0067】
例えば、熱膨張材取付具3は、区画体6としての中空壁を構成する2枚の壁体61に亘って挿入される場合について説明したが、このような場合に限らず、中空壁でない区画体6に適用することもできる。例えば、1枚の壁体61で構成される区画体6に形成された貫通孔6aに挿入される場合には、延出許容部33の数を1つにすることができるし、3枚の壁体61で構成される区画体6に形成された貫通孔6aに挿入される場合には、延出許容部33の数を3つにすることができる。
【0068】
また、熱膨張材取付具3は、鋼製の薄板体で構成される場合について説明したが、このような場合に限らず、アルミガラスクロスのような鋼製以外の材質で構成することもできる。また、薄板体の厚みも、熱膨張材5を主として径内方に膨張させることができる程度の強度となる範囲内で自由に設定することができ、例えば金属を薄く延ばしたシート状であってもよい。
【0069】
さらに、延出孔33aは、複数形成され、延出孔33aの周方向の一端部及び他端部の少なくとも一方が他の延出孔33aと軸線方向において隣り合う場合について説明したが、このような場合に限らず、他の延出孔33aと軸線方向において隣り合わないように構成することもできる。
【0070】
また、延出許容部33には、筒状体30の周方向において間欠的に形成される複数の延出孔33aが形成される場合について説明したが、このような場合に限らず、筒状体30の略全周に亘って延びるように形成される延出孔33aが1つだけ形成されていてもよい。
【0071】
さらに、筒状体30は、内部に熱膨張材5を取り付けるための部位を備える場合について説明したが、このような構成に限らず、例えばペースト状の熱膨張材5を、その粘性で筒状体30の内部に設けることもできる。
【0072】
また、遮蔽部材21及び隙間遮蔽部42は、それぞれ弾性体で構成される場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、貫通孔6aの内壁や、長尺体7の外周面の形状に追従して塑性変形する部材で構成することもできる。
【0073】
さらに、貫通孔6aに挿通される長尺体7は複数の配管や配線によって構成される場合について説明したが、このような場合に限らず、長尺体7が1つの配管や配線で構成されていてもよい。
【0074】
また、貫通孔6aに長尺体7が挿通された貫通孔6aに耐火区画貫通具1を取り付ける場合について説明したが、このような場合に限らず、長尺体7が挿通されていない貫通孔6a(例えば、過去に長尺体7が挿通されていたが、現在は挿通されていない貫通孔6a)に取り付けることもできる。
【0075】
さらに、遮蔽部材21は延出許容部33(延出孔33a)を覆う位置にのみ設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、延出許容部33の近傍に設けられていてもよい。遮蔽部材21が延出許容部33の近傍に設けられる場合であっても、遮蔽部材21を貫通孔6aの手前側又は奥側に配置することで、貫通孔6aの内壁と筒状体30の外周面との間に形成される隙間を遮蔽できる。即ち、遮蔽部材21は、貫通孔6aの隙間において、手前側と奥側とを遮蔽し、火災が発生していない通常時には遮蔽部材によって貫通孔の内壁と熱膨張材取付具との間の隙間を塞ぎ、貫通孔の一方側から他方側が見えることを抑制することができるように配置することができる。
【0076】
また、熱膨張材取付具3は、板状体を丸めて筒状に形成して挿通される場合について説明したが、あらかじめ筒状に形成されていることもできる。
【0077】
さらに、熱膨張材5は板状である場合について説明したが、このような場合に限らず、ペースト状の熱膨張材5を熱膨張材取付具3に設けることもできる。
【0078】
また、熱膨張材5は、爪で熱膨張材取付具3に設けられる場合について説明したが、このような構成に限らない。例えば、熱膨張材5を熱膨張材取付具3の内周面に接着して設けることもできる。
【0079】
さらに、隙間埋め具4は、熱膨張材取付具3の軸線方向の一方側にのみ設けられる場合について説明したが、このような構成に限らず、軸線方向の両方に設けることもできるし、隙間埋め具4を設けないこともできる。
【0080】
また、延出孔33aは、周方向に沿って延びる孔である場合について説明したが、このような場合に限らず、図11に示すように延出孔33aが周方向及び軸線方向に交差する方向に延びていてもよい。図11に示すように、延出孔33aが軸線方向に対して斜めに延びている場合には、孔が形成される範囲の軸線方向の長さが長くなるので、延出孔33aと貫通孔6aの内壁が対向しやすくなる。
【0081】
さらに、複数の延出孔33aはそれぞれ周方向の長さが等しい場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、図12に示すように、周方向の長さが異なる複数の延出孔33aが形成されることもできる。また、延出孔33aが長孔でなく、軸線方向及び周方向の幅が略等しい孔(例えば、真円形状や正方形状)として形成されることもできる。
【0082】
また、延出許容部33(延出孔33a)は、貫通孔6aの内壁と対向するように貫通孔6aに挿入される場合について説明したが、このような場合に限らず、貫通孔6aから軸線方向に離間した位置に位置するように貫通孔6aに挿入されてもよい。例えば、貫通孔6aの内壁から軸線方向に10mm程度離間していたとしても、貫通孔6aから貫通しようとする火を延出した熱膨張材5で止めることができるので、延焼を抑制できる。
【0083】
さらに、遮蔽部材21が熱によって焼失してできた隙間に熱膨張材5が延出する場合について説明したが、このような場合に限らず、遮蔽部材21が焼失する前に、熱膨張材5が遮蔽部材21を径外方に押し込むように延出するように構成することもできる。
【0084】
また、熱膨張材5は、熱を受けて膨張する際に、延出孔33aから径外方に延出する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、図13及び図14に示すように、膨張していない状態で一部の熱膨張材5が延出孔33aから径外方に延出するように構成することもできる。例えば、ペースト状の熱膨張材5を熱膨張材取付具3の内周面に押し当てることで、熱膨張材5の一部を延出孔33aから径外方に延出させることができる。さらに、膨張しない状態の熱膨張材5が延出孔33aから径外方に延出するように構成する場合において、図13に示すように、熱膨張材5の最も径外側に位置する部分が熱膨張材取付具3の厚み方向の中途部分に位置することもできるし、図14に示すように、熱膨張材5の最も径外側に位置する部分が熱膨張材取付具3の外周面よりも径外方に位置することもできる。いずれの場合であっても、熱を受けた場合に、熱膨張材取付具3の径外方の外部領域に熱膨張材5が膨張できるので、貫通孔6aを閉塞でき、延焼を抑制できる。
【0085】
次に、本発明の他の形態について図15を参照して説明する。上記の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図15に示すように、本実施形態の耐火区画貫通具1は、筒状の熱膨張材取付具3と、熱膨張材取付具3に設けられる熱膨張材5と、を備える。
【0087】
熱膨張材取付具3は、薄板状の耐火性の部材で構成され、該薄板体を筒状にして形成された筒状体30を備え、内部及び外周面に熱膨張材5を設けることができるように構成されている。本実施形態で、熱膨張材取付具3は、外周面に熱膨張材5を取り付け可能な外周取付部34を備える。本実施形態の外周取付部34は、熱膨張材5に係合して熱膨張材5を取り付ける。さらに、外周取付部34は、熱膨張材5に対して、少なくとも軸線方向で係合して熱膨張材5を取り付ける。本実施形態で外周取付部34は、熱膨張材5に対して軸線方向の両端部で係合して熱膨張材5を取り付ける。なお、内部に熱膨張材5を設ける手段は、第一の実施形態と同様に、爪状の取付部により設けることもできるし、内周面に接着により設けることもできる。本実施形態の熱膨張材取付具3は、外周面の軸線方向に離間した2か所に熱膨張材5を設けることができるように構成されている。即ち、本実施形態の外周取付部34は、軸線方向に離間した2か所に熱膨張材5を取り付け可能なように設けられている。さらに、本実施形態の熱膨張材取付具3は、内周面に設けられる熱膨張材5と外周面に設けられる熱膨張材5で熱膨張材取付具3を径内方及び径外方から挟むように熱膨張材5を設けることができるように構成されている。
【0088】
熱膨張材5は、筒状体30(熱膨張材取付具3)の内部に設けられる内部熱膨張材53と、筒状体30の外部に設けられる外部熱膨張材54と、を含む。内部熱膨張材53は、筒状体30の内周面に設けられ、筒状体30を外壁として、径内方に膨張する。内部熱膨張材53は、熱を受け膨張したときに、熱膨張材取付具3の内部を閉塞できるように構成されている。また、外部熱膨張材54は、内部熱膨張材53が設けられる位置の径外方に設けられる。即ち、内部熱膨張材53及び外部熱膨張材54は、熱膨張材取付具3を径方向において挟み込むように設けられる。
【0089】
外部熱膨張材54は、筒状体30(熱膨張材取付具3)の外周面に設けられる、筒状体30を内壁として、径外方に膨張する。外部熱膨張材54は、熱を受け膨張したときに、筒状体30の外周面と貫通孔6aの内周面との間を閉塞可能なように構成されている。本実施形態で、外部熱膨張材54は、筒状体30の外周面に、周方向に1周に亘って設けられている。さらに、外部熱膨張材54は、筒状体30の軸線方向に離間して2か所に設けられている。外部熱膨張材54が軸線方向において離間する距離は、耐火区画貫通具1が取付けられる中空壁である区画体6を構成する2枚の壁体61同士の厚み方向の距離に略等しい。
【0090】
以上のような構成の熱膨張材取付具3によれば、内部だけでなく外周面にも熱膨張材5を設けることができるので、内部を閉塞するだけでなく、貫通孔6aの内壁と筒状体30の外周面との間の隙間も閉塞でき、貫通孔6a全体を塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0091】
また、以上のような耐火区画貫通具1によれば、内部だけでなく外周面にも熱膨張材5を設けることができるので、内部を閉塞するだけでなく、貫通孔6aの内壁と筒状体30の外周面との間の隙間も閉塞でき、貫通孔6a全体を塞いで確実に延焼を抑制できる。
【0092】
さらに、熱膨張材5は、筒状体30(熱膨張材取付具3)を径方向の内外から挟み込むように設けられるので、熱膨張材5が膨張する際に、内外に設けられる熱膨張材5同士が熱膨張材取付具3を挟み込むように膨張するので、火災による熱風等で熱膨張材取付具3が貫通孔6aの軸線方向にずれることを抑制できる。
【0093】
なお、以上のような耐火区画貫通具1において、外部熱膨張材54を、貫通孔6aの内壁の形状に追従して変形可能な材質の熱膨張材5で構成することもできる。以上のような構成の場合、火災の発生していない通常時及び火災発生時の両方で外部熱膨張材54によって熱膨張材取付具3と貫通孔6aの内壁との間の隙間を塞ぐことができる。
【0094】
また、内部熱膨張材53及び外部熱膨張材54がいずれも爪で熱膨張材取付具3(筒状体30)に設けられる場合について説明したが、このような場合に限らず、内部熱膨張材53及び外部熱膨張材54のいずれか又は両方が接着など爪以外の手段で設けられてもよい。
【0095】
さらに、外部熱膨張材54の外部に貫通孔6aの内壁の形状に追従して変形可能な遮蔽部材21を設けることもできる。
【0096】
また、耐火区画貫通具1は、第一の実施形態と同様に、隙間埋め具4を備えることもできる。
【符号の説明】
【0097】
1…耐火区画貫通具、2…区画貫通具、21…遮蔽部材、3…熱膨張材取付具、30…筒状体、31…取付部、32…膨張外壁部、33…延出許容部、33a…延出孔、331…孔隣接部、332…周方向隣接部、333…軸方向隣接部、34…外周取付部、4…隙間埋め具、41…耐火シート部、42…隙間遮蔽部、43…形状保持部材、5…熱膨張材、51…第一熱膨張材、52…第二熱膨張材、53…内部熱膨張材、54…外部熱膨張材、6…区画体、6a…貫通孔、61…壁体、7…長尺体
図1
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