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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】蓄電モジュールおよび蓄電パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20231115BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231115BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20231115BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20231115BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20231115BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20231115BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20231115BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/209
H01G11/78
H01M50/291
H01G11/12
H01M50/507
H01M50/35
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021112113
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008499
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-082439(JP,A)
【文献】特開2019-009086(JP,A)
【文献】特開2021-044183(JP,A)
【文献】特開2019-075226(JP,A)
【文献】特開2020-064795(JP,A)
【文献】特開2018-049803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/50-598
H01G 11/00-86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルを積層方向に挟持しているシームレス環状金属部材と、
前記積層方向において前記シームレス環状金属部材と前記複数の蓄電セルとの間に配置された第1スペーサと
前記複数の蓄電セル上に載置されたバスバープレートと、
前記バスバープレート上に載置されたトップカバーとを備え、
前記シームレス環状金属部材は、前記積層方向に延在する1対の第1辺部と、前記積層方向に直交する方向に延在して前記1対の第1辺部を互いに接続する1対の第2辺部を含み、
前記複数の蓄電セルの各々は、前記積層方向から見て、1対の長辺と1対の短辺とからなる矩形状の主面を有し、
前記1対の第2辺部の各々は、前記積層方向から見て、前記1対の長辺と平行に位置しており、
前記1対の第2辺部の少なくとも一方には、前記積層方向に貫通した孔部が形成されており、
前記第1スペーサは、前記1対の長辺と平行に延在する第1基部と、該第1基部から前記1対の短辺と平行に延出する複数の第1延出部とを含み、
前記複数の第1延出部は、互いに隙間をあけて位置しており、
前記孔部は、前記積層方向から見て、前記隙間と重なっており、
前記第1基部の上面に、前記バスバープレートを位置決めするための突起が形成されており、
前記バスバープレートは、前記第1スペーサの前記突起と係合することにより位置決めされており、
前記トップカバーと前記バスバープレートとの間には、前記複数の蓄電セルから排出された可燃性ガスの流路となるガスダクトエリア、および、前記複数の蓄電セルの各々と電気的に接続された配線が配置される配線エリアを含む、複数の空間が形成されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1スペーサと係合する第2スペーサをさらに備え、
前記第2スペーサは、前記1対の長辺と平行に延在する第2基部と、該第2基部から前記1対の短辺と平行に延出して前記隙間に位置する少なくとも1つの第2延出部とを含む、請求項に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記孔部は、前記第2辺部の延在方向に間隔をあけて複数形成されている、請求項1または請求項に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記1対の第2辺部の各々の厚みは、前記1対の第1辺部の各々の厚みより厚い、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
積層された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルを積層方向に挟持して収容しているケースと、
前記積層方向において前記ケースと前記複数の蓄電セルとの間に配置された第1スペーサと
前記複数の蓄電セル上に載置されたバスバープレートと、
前記バスバープレート上に載置されたトップカバーとを備え、
前記ケースは、前記積層方向に延在する1対の第1辺部と、前記積層方向に直交する方向に延在して前記1対の第1辺部を互いに接続する1対の第2辺部を含み、
前記複数の蓄電セルの各々は、前記積層方向から見て、1対の長辺と1対の短辺とからなる矩形状の主面を有し、
前記1対の第2辺部の各々は、前記積層方向から見て、前記1対の長辺と平行に位置しており、
前記1対の第2辺部の少なくとも一方には、前記積層方向に貫通した孔部が形成されており、
前記1対の第1辺部および前記1対の第2辺部の各々に接続部がなく、
前記第1スペーサは、前記1対の長辺と平行に延在する第1基部と、該第1基部から前記1対の短辺と平行に延出する複数の第1延出部とを含み、
前記複数の第1延出部は、互いに隙間をあけて位置しており、
前記孔部は、前記積層方向から見て、前記隙間と重なっており、
前記第1基部の上面に、前記バスバープレートを位置決めするための突起が形成されており、
前記バスバープレートは、前記第1スペーサの前記突起と係合することにより位置決めされており、
前記トップカバーと前記バスバープレートとの間には、前記複数の蓄電セルから排出された可燃性ガスの流路となるガスダクトエリア、および、前記複数の蓄電セルの各々と電気的に接続された配線が配置される配線エリアを含む、複数の空間が形成されている、蓄電パック。
【請求項6】
前記孔部は、前記第2辺部の延在方向に間隔をあけて複数形成されている、請求項に記載の蓄電パック。
【請求項7】
前記1対の第2辺部の各々の厚みは、前記1対の第1辺部の各々の厚みより厚い、請求項5または請求項に記載の蓄電パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蓄電モジュールおよび蓄電パックに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーモジュールの構成を開示した先行文献として、特開2011-134699号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたバッテリーモジュールは、電池ユニットと、エンドプレートと、固定バンドとを備える。電池ユニットにおいては、複数の電池が連結されている。エンドプレートは、電池ユニットの端部に設置されている。固定バンドは、電池ユニットとエンドプレートとの組立体を取り囲んで固定させる。固定バンドは、熱膨張後に収縮しつつ、電池ユニットとエンドプレートとを引き締める。固定バンドには、閉ループ状をなすように両端を連結した結合部が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-134699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の蓄電セルの拘束部材に接続部がある場合、拘束部材の接続作業が必要になるとともに、拘束部材において接続部が最も強度の弱い部分となり、拘束部材によって得られる複数の蓄電セルの拘束力は接続部の強度によって制限される。
【0005】
本技術は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、拘束部材の接続作業を不要としつつ拘束部材の強度を高めて、高い拘束力で複数の蓄電セルを拘束することができる、蓄電モジュールおよび蓄電パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1局面に基づく蓄電モジュールは、積層された複数の蓄電セルと、シームレス環状金属部材と、第1スペーサとを備える。シームレス環状金属部材は、複数の蓄電セルを積層方向に挟持している。第1スペーサは、上記積層方向においてシームレス環状金属部材と複数の蓄電セルとの間に配置されている。シームレス環状金属部材は、上記積層方向に延在する1対の第1辺部と、上記積層方向に直交する方向に延在して1対の第1辺部を互いに接続する1対の第2辺部を含む。複数の蓄電セルの各々は、上記積層方向から見て、1対の長辺と1対の短辺とからなる矩形状の主面を有する。1対の第2辺部の各々は、上記積層方向から見て、1対の長辺と平行に位置している。1対の第2辺部の少なくとも一方には、上記積層方向に貫通した孔部が形成されている。
【0007】
本技術の第2局面に基づく蓄電パックは、積層された複数の蓄電セルと、ケースと、第1スペーサとを備える。ケースは、複数の蓄電セルを積層方向に挟持して収容している。第1スペーサは、上記積層方向においてケースと複数の蓄電セルとの間に配置されている。ケースは、上記積層方向に延在する1対の第1辺部と、上記積層方向に直交する方向に延在して1対の第1辺部を互いに接続する1対の第2辺部を含む。複数の蓄電セルの各々は、上記積層方向から見て、1対の長辺と1対の短辺とからなる矩形状の主面を有する。1対の第2辺部の各々は、上記積層方向から見て、1対の長辺と平行に位置している。1対の第2辺部の少なくとも一方には、上記積層方向に貫通した孔部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、拘束部材の接続作業を不要としつつ拘束部材の強度を高めて、高い拘束力で複数の蓄電セルを拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る蓄電モジュールの外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る蓄電モジュールのトップカバーおよびシームレス環状金属部材を除いた状態を示す斜視図である。
図3】蓄電セルの構成を示す斜視図である。
図4】側板の外観を示す斜視図である。
図5】シームレス環状金属部材の外観を示す斜視図である。
図6】シームレス環状金属部材の構成を示す平面図である。
図7】第1スペーサの外観を示す斜視図である。
図8】トップカバーの外観を示す斜視図である。
図9】複数の蓄電セルに1対の側板を嵌めた状態を示す正面図である。
図10】シームレス環状金属部材に、1対の側板が嵌められた複数の蓄電セルを挿入した状態を示す断面図である。
図11図10のXI-XI方向から見た断面図である。
図12】複数の蓄電セルを積層方向に圧縮し、シームレス環状金属部材と複数の蓄電セルとの間の隙間に第1スペーサを挿入した状態を示す断面図である。
図13】シリンダによる複数の蓄電セルの押圧を解除した状態を示す断面図である。
図14図13のXIV-XIV線矢印方向から見た断面図である。
図15】複数の蓄電セル上にバスバープレートを載置した状態を示す断面図である。
図16】バスバープレート上にトップカバーを載置した状態を示す断面図である。
図17】本実施形態の変形例に係る蓄電モジュールの第1スペーサおよび第2スペーサの係合関係を示す図である。
図18】実施の形態2に係る蓄電パックの構成を示す平面図である。
図19】ケースの外観を示す斜視図である。
図20】ケース内に複数の蓄電セルを収容した状態を示す斜視図である。
図21】ケースと複数の蓄電セルとの間の隙間に第1スペーサを挿入した状態を示す断面図である。
図22】複数の蓄電セル上にバスバープレートおよびトップカバーを載置した状態を示す斜視図である。
図23】ケースにケースカバーが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図24】本実施形態の第1変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの外観を示す斜視図である。
図25】本実施形態の第2変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの第1延出部の構成を示す斜視図である。
図26】本実施形態の第3変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの第1延出部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0011】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。「集電部」は正極集電部材および負極集電部材を総称し得る。
【0014】
本明細書において、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」なる用語が用いられる場合、「蓄電セル」、「蓄電モジュール」、および「蓄電パック」は電池セル、電池モジュール、および電池パックに限定されず、キャパシタセル等を含み得る。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る蓄電モジュールの外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態1に係る蓄電モジュールのトップカバーおよびシームレス環状金属部材を除いた状態を示す斜視図である。図3は、蓄電セルの構成を示す斜視図である。
【0016】
図1図3に示すように、実施の形態1に係る蓄電モジュール10は、積層された複数の蓄電セル100と、シームレス環状金属部材300と、第1スペーサ400とを備える。蓄電モジュール10は、一対の側板200、バスバープレート500、トップカバー600およびバスバー700をさらに備える。蓄電モジュール10は、いわゆる組電池である。
【0017】
図2および図3に示すように、複数の蓄電セル100は、Y軸方向に並ぶように積層される。これにより、蓄電セル100の積層体が形成される。蓄電セル100同士の間には、図示しないセパレータが介装されている。
【0018】
図3に示すように、蓄電セル100は、電極端子110と、筐体と、ガス排出弁140とを含む。筐体は、開口121を有する外装体120と、開口121を封口する封口板130とから構成されている。
【0019】
筐体は、略直方体形状に形成されている。具体的には、複数の蓄電セル100の各々の筐体は、Y軸方向(積層方向)から見て、1対の長辺123と1対の短辺124とからなる矩形状の主面122を有している。筐体には、図示しない電極体および電解液が収容されている。外装体120の外表面は、図示しない絶縁フィルムで覆われていてもよい。
【0020】
電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。電極端子110は、封口板130上に形成されている。ガス排出弁140は、封口板130上において、正極端子111と負極端子112との中間の位置に形成されている。ガス排出弁140は、筐体内の圧力が閾値以上となった際に破断する。これにより、筐体内の可燃性ガスが筐体外に排出される。
【0021】
図2に示すように、Y軸方向(積層方向)に隣り合う電極端子110同士は、バスバー700によって互いに電気的に接続されている。これにより、複数の蓄電セル100が電気的に直列または並列に接続されている。
【0022】
図4は、側板の外観を示す斜視図である。図2および図4に示すように、1対の側板200は、蓄電モジュール10の幅方向(X軸方向)において互いの間に複数の蓄電セル100を挟むように配置されている。
【0023】
具体的には、1対の側板200の各々は、Y軸方向(積層方向)に延在する側壁部210と、側壁部210の下端から幅方向(X軸方向)の両側に延在する底板部220と、側壁部210の上端から幅方向(X軸方向)の一方側に延在する天板部230とを含む。
【0024】
側壁部210は、複数の蓄電セル100の各々の外装体120の側面と接する。底板部220は、複数の蓄電セル100の各々の外装体120の底面と接する。天板部230は、複数の蓄電セル100の各々の封口板130と接する。側板200は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂で形成されている。
【0025】
図5は、シームレス環状金属部材の外観を示す斜視図である。図6は、シームレス環状金属部材の構成を示す平面図である。図5および図6に示すように、シームレス環状金属部材300は、矩形環状の形状を有している。具体的には、シームレス環状金属部材300は、Y軸方向(積層方向)に延在する1対の第1辺部310と、Y軸方向(積層方向)に直交する幅方向(X軸方向)に延在して1対の第1辺部310を互いに接続する1対の第2辺部320を含む。1対の第2辺部320の各々の厚みT2は、1対の第1辺部310の各々の厚みT1より厚い。
【0026】
1対の第2辺部320の少なくとも一方には、Y軸方向(積層方向)に貫通した孔部321が形成されている。本実施の形態においては、Y軸方向(積層方向)の一方側に位置する第2辺部320に、幅方向(X軸方向)に互いに間隔をあけて3つの孔部321が形成されている。すなわち、孔部321は、第2辺部320の延在方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、一方の第2辺部320に形成される孔部321の数は、3つに限られず、1つでもよい。
【0027】
シームレス環状金属部材300は、無端状の環状部材である。シームレス環状金属部材300は、アルミニウムまたは鉄鋼材料などの金属で形成されている。
【0028】
図7は、第1スペーサの外観を示す斜視図である。図2および図7に示すように、第1スペーサ400は、幅方向(X軸方向)に延在する第1基部410と、第1基部410から上下方向(Z軸方向)に延出する複数の第1延出部420とを含む。複数の第1延出部420は、互いに隙間430をあけて位置している。本実施の形態においては、第1スペーサ400は、4つの第1延出部420を含む。なお、第1延出部420の数は、4つに限られず、2つ以上であればよい。
【0029】
第1基部410の上面に、突起440が形成されている。本実施の形態においては、2つの突起440が第1基部410の幅方向(X軸方向)の両端に配置されている。なお、突起440の数は、2つに限られない。また、突起440は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0030】
第1スペーサ400は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂で形成されている。なお、第1スペーサ400の材料は、樹脂に限られず、アルミニウムまたは鉄鋼材料などの金属であってもよい。
【0031】
図2に示すように、バスバープレート500は、略平板状の形状を有している。本実施の形態においては、バスバープレート500は、幅方向(X軸方向)における、両端部が中央部に比較して上方に位置するように、曲折している。バスバープレート500は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂で形成されている。
【0032】
図8は、トップカバーの外観を示す斜視図である。図1および図8に示すように、トップカバー600とバスバープレート500との間には、機能的に区分けされた複数の空間が形成されている。
【0033】
具体的には、幅方向(X軸方向)の中央部には、ガス排出弁140から排出された可燃性ガスの流路となるガスダクトエリアTGが形成されている。幅方向(X軸方向)において、ガスダクトエリアTGの両側に、複数の蓄電セル100の各々と電気的に接続された配線が配置される配線エリアTLが形成されている。幅方向(X軸方向)において、2つの配線エリアTLの各々の外側に、バスバー700が配置されるバスバーエリアTBが形成されている。
【0034】
トップカバー600において、ガスダクトエリアTGおよび配線エリアTLに位置する天面610は平坦面であり、バスバーエリアTBに位置する天面620は下側に傾斜した傾斜面である。トップカバー600は、絶縁性および耐熱性を有する樹脂で形成されている。
【0035】
ここで、本実施の形態に係る蓄電モジュールの製造方法について説明する。図9は、複数の蓄電セルに1対の側板を嵌めた状態を示す正面図である。図9に示すように、積層された複数の蓄電セル100の両側に側板200が嵌められる。この状態において、複数の蓄電セル100は、1対の側板200によって、両側面と、天面の幅方向(X軸方向)の両端部と、底面の幅方向(X軸方向)の両端部とが覆われる。
【0036】
図10は、シームレス環状金属部材に、1対の側板が嵌められた複数の蓄電セルを挿入した状態を示す断面図である。図11は、図10のXI-XI方向から見た断面図である。
【0037】
図10および図11に示すように、シームレス環状金属部材300に、1対の側板200が嵌められた複数の蓄電セル100が挿入される。この状態において、図9図11に示すように、シームレス環状金属部材300の1対の第2辺部320の各々は、Y軸方向(積層方向)から見て、蓄電セル100の1対の長辺123と平行に位置している。図10に示すように、シームレス環状金属部材300の1対の第1辺部310は、1対の側板200の底板部220上に載置されている。図11に示すように、Y軸方向(積層方向)においてシームレス環状金属部材300と複数の蓄電セル100との間には、隙間が形成されている。
【0038】
図12は、複数の蓄電セルを積層方向に圧縮し、シームレス環状金属部材と複数の蓄電セルとの間の隙間に第1スペーサを挿入した状態を示す断面図である。図12に示すように、3つの孔部321のうちの幅方向(X軸方向)の中央に位置する孔部321に、シリンダ1を外側から挿入することにより、複数の蓄電セル100を1対の第2辺部320のうちの他方の第2辺部320とシリンダ1との間で押圧して圧縮する。その後、Y軸方向(積層方向)におけるシームレス環状金属部材300と複数の蓄電セル100との間の隙間に、第1スペーサ400が挿入される。なお、3つの孔部321の各々にシリンダ1を外側から挿入することにより、複数の蓄電セル100を圧縮してもよい。
【0039】
図13は、シリンダによる複数の蓄電セルの押圧を解除した状態を示す断面図である。図14は、図13のXIV-XIV線矢印方向から見た断面図である。図13および図14に示すように、シリンダ1が孔部321から引き抜かれることにより、圧縮されていた複数の蓄電セル100が元の形状に戻ろうとしてY軸方向(積層方向)に伸長することにより、第1スペーサ400を1対の第2辺部320のうちの一方の第2辺部320との間で押圧する。
【0040】
その結果、シームレス環状金属部材300は、複数の蓄電セル100をY軸方向(積層方向)に挟持する。第1スペーサ400は、Y軸方向(積層方向)においてシームレス環状金属部材300と複数の蓄電セル100との間に配置されている。すなわち、第1スペーサ400は、積層された複数の蓄電セル100におけるY軸方向(積層方向)の一方側に配置されている。この状態において、図1に示すように、シームレス環状金属部材300の3つの孔部321は、Y軸方向(積層方向)から見て、第1スペーサ400の3つの隙間430とそれぞれ重なっている。
【0041】
図15は、複数の蓄電セル上にバスバープレートを載置した状態を示す断面図である。図15に示すように、複数の蓄電セル100上にバスバープレート500が載置される。バスバープレート500には、第1スペーサ400の突起440が挿入される2つの貫通孔510が形成されている。2つの貫通孔510の各々に突起440が挿入されることにより、バスバープレート500が位置決めされている。バスバープレート500には、蓄電セル100の電圧を検出するための配線などが設けられている。
【0042】
図16は、バスバープレート上にトップカバーを載置した状態を示す断面図である。図16に示すように、バスバープレート500上にトップカバー600が載置される。以上の工程により、本実施の形態に係る蓄電モジュール10が製造される。
【0043】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、シームレス環状金属部材300は、積層された状態の複数の蓄電セル100と嵌合し、複数の蓄電セル100をY軸方向(積層方向)に挟持している。シームレス環状金属部材300の1対の第2辺部320の少なくとも一方には、Y軸方向(積層方向)に貫通した孔部321が形成されている。これにより、孔部321に挿入された押圧治具であるシリンダ1によって複数の蓄電セル100を押圧しつつ第1スペーサ400を挿入することができる。また、複数の蓄電セル100の拘束部材であるシームレス環状金属部材300に接続部がないため、接続作業を不要としつつ拘束部材の剪断強度を高めるとともに、第1スペーサ400を挿入していることにより高い拘束力を維持して複数の蓄電セル100を拘束することができる。
【0044】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、シームレス環状金属部材300の孔部321は、Y軸方向(積層方向)から見て、第1スペーサ400の隙間430と重なっている。これにより、孔部321に挿入されたシリンダ1によって複数の蓄電セル100を押圧しつつシリンダ1と干渉しないように第1スペーサ400を上下方向(Z軸方向)に挿入することができる。
【0045】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、孔部321は、第2辺部320の延在方向に間隔をあけて複数形成されている。これにより、複数の孔部321の各々にシリンダ1を挿入して複数の蓄電セル100を安定して圧縮させることができる。
【0046】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、1対の第2辺部320の各々の厚みT2は、1対の第1辺部310の各々の厚みT1より厚い。これにより、複数の蓄電セル100に拘束力を作用させる第2辺部320の剛性を確保しつつ、第1辺部310を薄くして軽量化することができる。
【0047】
ここで、本実施形態の変形例に係る蓄電モジュールについて説明する。図17は、本実施形態の変形例に係る蓄電モジュールの第1スペーサおよび第2スペーサの係合関係を示す図である。
【0048】
図17に示すように、本実施形態の変形例に係る蓄電モジュールは、第1スペーサ400と係合する第2スペーサ800をさらに備える。第2スペーサ800は、幅方向(X軸方向)に延在する第2基部810と、第2基部810から上下方向(Z軸方向)に延出する少なくとも1つの第2延出部820とを含む。本変形例においては、第2スペーサ800は、3つの第2延出部820を含む。なお、第2延出部820の数は、3つに限られず、1つ以上であればよい。3つの第2延出部820は、互いに隙間830をあけて位置している。
【0049】
第2基部810は、蓄電セル100の1対の長辺123と平行に延在している。第2延出部820は、第2基部810から1対の短辺124と平行に延出して、第1スペーサ400の隙間430に位置する。第2スペーサ800の隙間830に、第1スペーサ400の第1延出部420が位置する。図17に示すように、第1スペーサ400の隙間430において、第2延出部820が位置していない部分に、シリンダ1が挿入される。
【0050】
本実施形態の変形例に係る蓄電モジュールにおいては、第1スペーサ400と第2スペーサ800とによって複数の蓄電セル100とシームレス環状金属部材300との間のY軸方向(積層方向)の隙間を埋めることによって複数の蓄電セル100を安定して拘束することができる。
【0051】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る蓄電パックについて図を参照して説明する。実施の形態2に係る蓄電パックは、拘束部材がケースである点が、実施の形態1に係る蓄電モジュールと異なるため、実施の形態1に係る蓄電モジュールと同様の構成については説明を繰り返さない。
【0052】
図18は、実施の形態2に係る蓄電パックの構成を示す平面図である。図18においては、バスバープレート、トップカバーおよびケースカバーを図示していない。図18に示すように、実施の形態2に係る蓄電パック20は、積層された複数の蓄電セル100と、ケース900と、第1スペーサ400とを備える。蓄電パック20は、バスバープレート500、トップカバー600およびバスバー700をさらに備える。
【0053】
図18に示すように、複数の蓄電セル100は、Y軸方向に並ぶように積層される。これにより、蓄電セル100の積層体が形成される。蓄電セル100同士の間には、図示しないセパレータが介装されている。複数の蓄電セル100は、バスバー700によって電気的に直列または並列に接続されている。
【0054】
図19は、ケースの外観を示す斜視図である。図19に示すように、ケース900は、矩形状の4つの収容領域を有している。なお、ケース900は、1つのみの収容領域を有していてもよい。ケース900の各収容領域は、Y軸方向(積層方向)に延在する1対の第1辺部910と、Y軸方向(積層方向)に直交する幅方向(X軸方向)に延在して1対の第1辺部910を互いに接続する1対の第2辺部920を含む。1対の第2辺部920の各々の厚みは、1対の第1辺部910の各々の厚みより厚い。
【0055】
1対の第2辺部920の少なくとも一方には、Y軸方向(積層方向)に貫通した孔部921が形成されている。本実施の形態においては、Y軸方向(積層方向)の一方側に位置する第2辺部920に、幅方向(X軸方向)に互いに間隔をあけて3つの孔部921が形成されている。すなわち、孔部921は、第2辺部920の延在方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、一方の第2辺部920に形成される孔部921の数は、3つに限られず、1つでもよい。
【0056】
ケース900は、アルミニウムまたは鉄鋼材料などの金属で形成されている。ケース900の底面930上には、蓄電セル100を固定するための接着剤が塗布されている。
【0057】
ここで、本実施の形態に係る蓄電パックの製造方法について説明する。図20は、ケース内に複数の蓄電セルを収容した状態を示す斜視図である。図20に示すように、ケース900の各収納領域に、積層された複数の蓄電セル100が収容される。この状態において、ケース900の1対の第2辺部920の各々は、Y軸方向(積層方向)から見て、蓄電セル100の1対の長辺123と平行に位置している。Y軸方向(積層方向)においてケース900と複数の蓄電セル100との間には、隙間が形成されている。
【0058】
図21は、ケースと複数の蓄電セルとの間の隙間に第1スペーサを挿入した状態を示す断面図である。実施の形態1と同様に、3つの孔部921のうちの幅方向(X軸方向)の中央に位置する孔部921に、シリンダ1を外側から挿入することにより、複数の蓄電セル100を1対の第2辺部920のうちの他方の第2辺部920とシリンダ1との間で押圧して圧縮する。その後、Y軸方向(積層方向)におけるケース900と複数の蓄電セル100との間の隙間に、第1スペーサ400が挿入される。なお、3つの孔部921の各々にシリンダ1を外側から挿入することにより、複数の蓄電セル100を圧縮してもよい。
【0059】
シリンダ1が孔部921から引き抜かれることにより、圧縮されていた複数の蓄電セル100が元の形状に戻ろうとしてY軸方向(積層方向)に伸長することにより、第1スペーサ400を1対の第2辺部920のうちの一方の第2辺部920との間で押圧する。
【0060】
その結果、図21に示すように、ケース900は、複数の蓄電セル100をY軸方向(積層方向)に挟持する。第1スペーサ400は、Y軸方向(積層方向)においてケース900と複数の蓄電セル100との間に配置されている。すなわち、第1スペーサ400は、積層された複数の蓄電セル100におけるY軸方向(積層方向)の一方側に配置されている。ケース900の底面930上に塗布されている接着剤は、第1スペーサ400が配置された後、硬化して複数の蓄電セル100および第1スペーサ400をケース900に対して固定する。
【0061】
図22は、複数の蓄電セル上にバスバープレートおよびトップカバーを載置した状態を示す斜視図である。図22に示すように、複数の蓄電セル100上にバスバープレートおよびトップカバー600が載置される。
【0062】
図23は、ケースにケースカバーが取り付けられた状態を示す斜視図である。図23に示すように、ケース900上にケースカバー950が取り付けられる。この状態において、ケース900の3つの孔部921は、Y軸方向(積層方向)から見て、第1スペーサ400の3つの隙間430とそれぞれ重なっている。ケース900には、複数の蓄電セル100と電気的に接続されたコネクタ940が設けられている。
【0063】
図18に示すように、3つの孔部921の各々は、埋め込み部材990によって塞がれる。これにより、ケース900は、密閉される。埋め込み部材990は、溶接または接着剤などにより、孔部921に取り付けられる。埋め込み部材990は、ケース900と同一の材料で形成されていることが好ましい。この場合、ケース900と埋め込み部材990との線膨張係数の違いによって、ケース900の密閉状態が破壊されることを抑制することができる。
【0064】
本実施の形態に係る蓄電パック20においては、ケース900は、積層された状態の複数の蓄電セル100と嵌合し、複数の蓄電セル100をY軸方向(積層方向)に挟持している。ケース900の1対の第2辺部920の少なくとも一方には、Y軸方向(積層方向)に貫通した孔部921が形成されている。これにより、孔部921に挿入された押圧治具であるシリンダ1によって複数の蓄電セル100を押圧しつつ第1スペーサ400を挿入することができる。また、複数の蓄電セル100の拘束部材であるケース900の第1辺部910および第2辺部920に接続部がないため、接続作業を不要としつつ拘束部材の剪断強度を高めるとともに、第1スペーサ400を挿入していることにより高い拘束力を維持して複数の蓄電セル100を拘束することができる。
【0065】
本実施の形態に係る蓄電パック20においては、ケース900の孔部921は、Y軸方向(積層方向)から見て、第1スペーサ400の隙間430と重なっている。これにより、孔部921に挿入されたシリンダ1によって複数の蓄電セル100を押圧しつつシリンダ1と干渉しないように第1スペーサ400を上下方向(Z軸方向)に挿入することができる。
【0066】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、孔部921は、第2辺部920の延在方向に間隔をあけて複数形成されている。これにより、複数の孔部921の各々にシリンダ1を挿入して複数の蓄電セル100を安定して圧縮させることができる。
【0067】
本実施の形態に係る蓄電モジュール10においては、1対の第2辺部920の各々の厚みは、1対の第1辺部910の各々の厚みより厚い。これにより、複数の蓄電セル100に拘束力を作用させる第2辺部920の剛性を確保しつつ、第1辺部910を薄くして軽量化することができる。
【0068】
ここで、本実施形態の変形例に係る蓄電パックについて説明する。図24は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの外観を示す斜視図である。
【0069】
図24に示すように、本実施形態の第1変形例に係る蓄電パックの第1スペーサ400aは、Y軸方向(積層方向)の一方の面に、主面122と当接する突出部450を有している。突出部450は、主面122より小さい。すなわち、Y軸方向(積層方向)から見て、突出部450は、主面122の縁の内側に位置している。第1スペーサ400aは、突出部450を有することにより、複数の蓄電セル100を安定して高い拘束力で拘束することができる。
【0070】
図25は、本実施形態の第2変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの第1延出部の構成を示す斜視図である。図25に示すように、本実施形態の第2変形例に係る蓄電パックの第1スペーサ400bは、第1延出部420の先端面421のY軸方向(積層方向)の両端に、面取り部422が形成されている。これにより、ケース900と複数の蓄電セル100との間に、第1スペーサ400bを容易に挿入することができる。
【0071】
図26は、本実施形態の第3変形例に係る蓄電パックの第1スペーサの第1延出部の構成を示す斜視図である。図26に示すように、本実施形態の第3変形例に係る蓄電パックの第1スペーサ400cは、第1延出部420の先端面421に、幅方向(X軸方向)に延在する溝部423が形成されている。これにより、ケース900の底面930上に塗布された接着剤を、溝部423内を通過させて第1スペーサ400cの幅方向(X軸方向)の外側に流動させることができるため、接着剤によって第1スペーサ400cが浮き上がることを抑制することができる。
【0072】
なお、溝部423は、Y軸方向(積層方向)に延在していてもよい。この場合は、複数の蓄電セル100が圧縮および伸縮する際に第1スペーサ400cが接着剤から受ける抵抗力を低減することができる。
【0073】
上記の実施の形態の各構成において互いに組み合わせ可能な構成を組み合わせてもよい。
【0074】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 シリンダ、10 蓄電モジュール、20 蓄電パック、100 蓄電セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 外装体、121 開口、122 主面、123 長辺、124 短辺、130 封口板、140 ガス排出弁、200 側板、210 側壁部、220 底板部、230 天板部、300 シームレス環状金属部材、310,910 第1辺部、320,920 第2辺部、321,921 孔部、400,400a,400b,400c 第1スペーサ、410 第1基部、420 第1延出部、421 先端面、422 面取り部、423 溝部、430,830 隙間、440 突起、450 突出部、500 バスバープレート、510 貫通孔、600 トップカバー、610,620 天面、700 バスバー、800 第2スペーサ、810 第2基部、820 第2延出部、900 ケース、930 底面、940 コネクタ、950 ケースカバー、990 埋め込み部材、TG ガスダクトエリア、TL 配線エリア。
図1
図2
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