(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231115BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20231115BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20231115BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231115BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20231115BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20231115BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20231115BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20231115BHJP
H01M 50/403 20210101ALN20231115BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/533
H01M50/54
H01M50/538
H01M50/55 101
H01M50/463 Z
H01M10/058
H01M6/02 Z
H01G11/10
H01G11/52
H01G11/74
H01M50/403 C
(21)【出願番号】P 2021177784
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】高松 寛史
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/060010(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057012(WO,A1)
【文献】特開2017-016812(JP,A)
【文献】特開2017-117648(JP,A)
【文献】特開2016-105348(JP,A)
【文献】特開2017-050069(JP,A)
【文献】特開2015-232967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/34
H01M 50/50-50/598
H01M 50/40-50/497
H01M 6/00- 6/22
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極の対極である第2電極とが、セパレータを介在させつつ重なり合って構成された積層構造を有する1つまたは複数の電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースと、
を備えた電池であって、
前記電池ケースは、
底壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、前記底壁に対向する開口部と、を有する外装体と、
前記開口部を封口する封口板であって、前記第1電極と電気的に接続される端子が取り付けられた封口板と、
を備えており、
前記電極体は、
前記一対の第2側壁のうち一方の第2側壁と対向する端部から突出した複数のタブを含む第1電極タブ群と、
前記一対の第2側壁のうち他方の第2側壁と対向する端部から突出した複数のタブを含む第2電極タブ群と、
を備えており、
前記第1電極タブ群および前記端子は、集電部を介して電気的に接続されており、
前記第1電極タブ群は、前記第1電極タブ群の一部が前記一対の第2側壁のうち一方の第2側壁に沿って配置されるように湾曲した状態で、前記集電部と接合されており、
前記タブには、活物質層または保護層が形成された形成領域と、前記タブが露出したタブ露出領域と、の境界部分が存在しており、
前記積層構造を有する電極体を構成するセパレータのうち少なくとも一部のセパレータどうしが接合されており、接合部の少なくとも一部は、前記境界部分に近接している、電池。
【請求項2】
前記接合部が形成されたセパレータは、前記第1電極タブ群の湾曲の緩い方に偏在している、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記接合部の少なくとも一部は、前記境界部分に隣接している、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記タブの根本部分から前記セパレータの前記タブの突出方向における端部に至るまでの最短距離は、前記タブの根元部分から前記境界部分に至るまでの最短距離の2倍以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記接合部の、前記タブの突出方向における長さAと、前記タブの突出方向に直交する方向における長さBの比(B/A)は、1.3以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記接合部が形成されたセパレータの枚数は、3枚以上であり、かつ、前記積層構造を有する電極体を構成するセパレータの全枚数を100%としたときの40%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記接合部の少なくとも一部は、前記タブおよび前記セパレータの重なり部分にも存在しており、前記タブにおける前記重なり部分の少なくとも一部には、前記保護層が具備されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電極体の長手方向の一方の端部に正極タブ群が設けられ、他方の端部に負極タブ群が設けられた電池が開示されている。そして、かかる電極タブ群を折り曲げた状態で電極集電部に接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電極タブ群の損傷が好適に防止された電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を実現するべく、本発明は、第1電極と、上記第1電極の対極である第2電極とが、セパレータを介在させつつ重なり合って構成された積層構造を有する1つまたは複数の電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、を備えた電池を提供する。上記電池ケースは、底壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、上記底壁に対向する開口部と、を有する外装体と、上記開口部を封口する封口板であって、上記第1電極と電気的に接続される端子が取り付けられた封口板と、を備えている。上記電極体は、上記一対の第2側壁のうち一方の第2側壁と対向する端部から突出した複数のタブを含む第1電極タブ群と、上記一対の第2側壁のうち他方の第2側壁と対向する端部から突出した複数のタブを含む第2電極タブ群と、を備えており、上記第1電極タブ群および上記端子は、集電部を介して電気的に接続されており、上記第1電極タブ群は、上記第1電極タブ群の一部が上記一対の第2側壁のうち一方の第2側壁に沿って配置されるように湾曲した状態で、上記集電部と接合されており、上記タブには、活物質層または保護層が形成された形成領域と、上記タブが露出したタブ露出領域と、の境界部分が存在している。ここで、上記積層構造を有する電極体を構成するセパレータのうち少なくとも一部のセパレータどうしが接合されており、接合部の少なくとも一部は、上記境界部分に近接している。
【0006】
本発明者らの検討によると、電極タブにおいて、活物質層または保護層が形成された形成領域と、該電極タブが露出したタブ露出領域との境界部分において、当該電極タブが損傷し易いことが分かった。電極体を構成するセパレータのうち少なくとも一部のセパレータどうしが接合されており、接合部の少なくとも一部がかかる境界部分に近接している電池によると、電極タブにかかる負荷がセパレータへと分散され易くなるため、電極タブ群の損傷を好適に防止できることが分かった。また、かかる境界部分の機械的強度は、接合されたセパレータが存在することで補強されるものと考えられ得る。したがって、電極タブ群の損傷を好適に防止することができる。
【0007】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記接合部が形成されたセパレータは、上記第1電極タブ群の湾曲の緩い方に偏在している。電極タブ群のなかでも特に折り曲げ部分(換言すると、電極タブ群における湾曲が緩い部分)が損傷し易いため、接合部が形成されたセパレータがかかる部分に存在することで、電極タブ群の損傷をより好適に防止することができる。
【0008】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記接合部の少なくとも一部は、上記境界部分に隣接している。セパレータに形成された接合部が境界部分に隣接する位置に存在することで、該境界部分にかかる負荷をセパレータに効率よく分散させることができる。これによって、電極タブ群の損傷をより好適に防止することができる。
【0009】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記タブの根本部分から上記セパレータの上記タブの突出方向における端部に至るまでの最短距離は、上記タブの根元部分から上記境界部分に至るまでの最短距離の2倍以上である。かかる構成の電池によると、接合部の面積を確保し易くなるため、好ましい。
【0010】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記接合部の、上記タブの突出方向における長さAと、上記タブの突出方向に直交する方向における長さBの比(B/A)は、1.3以上である。かかる構成の接合部を備えた電池によると、セパレータどうしの接合強度がより好適に向上するため、好ましい。
【0011】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記接合部が形成されたセパレータの枚数は、3枚以上であり、かつ、上記積層構造を有する電極体を構成するセパレータの全枚数を100%としたときの40%以下である。かかる構成の電池によると、電極タブ群を折り曲げる際に生じる荷重をより適切なものとすることができるため、好ましい。
【0012】
ここで開示される電池の好適な一態様では、上記接合部の少なくとも一部は、上記タブおよび上記セパレータの重なり部分にも存在しており、上記タブにおける上記重なり部分の少なくとも一部には、上記保護層が具備されている。かかる構成の接合部を備えた電池によると、電極タブに加わり得る振動を接合部によって好適に抑制することができるため、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
【
図6】正極第2集電部および負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図8】正極第2集電部および負極第2集電部を取り付ける前の電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図8のIX-IX線に沿う模式的な断面図である。
【
図10】
図8のセパレータ26’および正極22’の構成を示す模式図である。
【
図11】
図8のセパレータ26’および正極22’の構成を示す模式図である。
【
図12】正極端子と負極端子と正極第1集電部と負極第1集電部と正極絶縁部材と負極絶縁部材とが取り付けられた封口板を模式的に示す斜視図である。
【
図14】一実施形態に係る電池が備える接合部の形成方法について説明するための模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、ここに開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。以下の説明は、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下を意味する。したがって、Aを上回りBを下回る場合を包含する。
【0015】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0016】
また、以下では、第1電極を正極とした場合について説明するが、これに限定することを意図したものではない。ここで開示される技術は、例えば、第1電極を負極とした場合についても適用することができる。
【0017】
先ず、本実施形態に係る電池100の構成について説明する。
図1は、電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向(電極体の長手方向ともいう)、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0018】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体(ここでは、電極体群20)と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、電池ケース10と電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る二次電池100は、さらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100の内部抵抗は、例えば0.2~2.0mΩ程度であり得る。
【0019】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。また、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、
図1に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、を備えている。第1側壁12bの面積は、第2側壁12cの面積よりも大きい。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12bと一対の第2側壁12cに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。
【0020】
図1および
図2に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。また、封口板14には、ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材16により封止されている。かかる封止部材16としては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材16を強固に固定できる。
【0021】
図5は、嵌合前の封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の電極体20a、20b、20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。
図2に示すように、各々の電極体の長辺方向Yの一方側(
図2の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(
図2の右側)には負極集電部60が配置される。そして、電極体20a、20b、20cの各々は、並列に接続されている。ただし、電極体20a、20b、20cは、直列に接続されていてもよい。電極体20aは、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図3参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。また、
図5に示すように、本実施形態に係る電池100では、接合部1が形成されたセパレータ26が、正極タブ群23の湾曲が緩い方(換言すると、正極タブ群23の折り曲げ部)に偏在した構成となっている。なお、接合部1が形成されたセパレータ26の詳細については、後述する。
【0022】
図6は、電極体20aを模式的に示す斜視図である。
図7は、電極体20aの構成を示す模式図である。なお、以下では電極体20aを例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0023】
図7に示すように、電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回された捲回電極体である。かかる捲回電極体は、正極22と負極24とが、セパレータ26を介在させつつ複数重なり合って構成された正負極積層構造を有する。ただし、電極体の構造は、ここに開示される技術を限定するものではない。例えば、電極体は、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0024】
電極体20aは、扁平形状を有している。電極体20aは、捲回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、
図3に示すように、電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12cに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12cに沿って延びている。
【0025】
正極22は、
図7に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0026】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部21a(
図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方側(
図7の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の他方(
図7で示すと右側)に設けられていてもよいし、捲回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tは、ここでは矩形状であるが、これに限定されず、例えば台形形状等の種々の形状であってもよい。正極タブ22tには、正極保護層22pが形成された形成領域Qと、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出したタブ露出領域Pとが存在している。また、
図10の境界部分2は、形成領域Qとタブ露出領域Pの境界部分を示している。なお、本実施形態では、正極タブ22t上に正極保護層22pのみが形成されているがこれに限定されず、正極タブ上に正極活物質層および正極保護層が形成されていてもよい。この場合、正極保護層が形成された領域を形成領域とすることができる。
【0027】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは、捲回軸WLの軸方向の一方の端部(
図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。正極タブ群23は、第1側壁12bに沿った面方向(
図2のY方向)に存在する一方の端部21aから突出した複数の正極タブ22tを含む。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。
図2に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23は、該正極タブ群の先端部分の少なくとも一部が、一対の第2側壁12cのうち一方の第2側壁12cに沿って配置されるように湾曲した状態で、正極集電部50と接合されている。正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(
図4参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図7参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0028】
図7に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0029】
正極保護層22pは、
図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部に設けられている。また、
図7に示すように、本実施形態に係る電池100では、正極集電体22cが備える正極タブ22tにおいて、正極保護層22pが形成されている形成領域Qと、正極タブ22tが露出した正極タブ露出領域Pとの境界部分2が存在している。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部(
図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0030】
負極24は、
図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。なお、長辺方向Yにおいて負極集電体と負極活物質層との境界部に、負極保護層がさらに形成されていてもよい。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0031】
負極集電体24cの捲回軸WLの軸方向の一方の端部21b(
図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(
図7の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(
図7の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tは、ここでは矩形状であるが、これに限定されず、例えば台形形状等の種々の形状であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0032】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(
図4の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、第1側壁12bに沿った面方向(
図2のY方向)に存在する端部21aとは異なる端部21bから突出した複数の負極タブ24tを含む。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。
図2に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25は、該負極タブ群の先端部分の少なくとも一部が、一対の第2側壁12cのうち一方の第2側壁12cに沿って配置されるように湾曲した状態で、負極集電部60と接合されている。負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(
図4参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0033】
図7に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0034】
次に、セパレータ26が備える接合部1について説明する。ここで、
図8は、正極第2集電部52および負極第2集電部62を取り付ける前の電極体20aを模式的に示す斜視図である。
図9は、
図8のIX-IX線に沿う模式的な断面図である。
図9に示すように、本実施形態においては、正負極積層構造を有する電極体20aを構成するセパレータ26のうち5枚(5層)のセパレータどうしが接合されている。なお、
図9においては、接合部1が形成されたセパレータ26のうち、最外に存在するセパレータ層から数えて2枚目(2層目)のセパレータを26’としており、かかるセパレータ26’の直下に存在する正極、正極集電体、正極活物質層、正極保護層をそれぞれ22’,22c’,22a’,22p’としている。ここで、本実施形態では、正負極積層構造を有する電極体20aを構成するセパレータ26のうち5枚(5層)のセパレータどうしを接合しているが、接合するセパレータ26の枚数(換言すると、接合部1が形成されたセパレータ26の枚数)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。接合するセパレータ26の枚数(層数)は、正極タブ22tにかかる荷重をセパレータ26へと好適に分散させるという観点から、好ましくは3枚(3層)以上であり、より好ましくは10枚(10層)以上であり、さらに好ましくは20枚(20層)以上である。一方、正極タブ群23を折り曲げる際に生じ得る折り曲げ荷重をより適切なものにするという観点から、接合するセパレータ26の枚数(層数)は、電極体20aを構成するセパレータ26の全枚数(全層数)を100%としたとき、例えば90%以下であり、好ましくは60%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下(例えば、20%以下)である。また、本実施形態に係る電池100では、接合部1が形成されたセパレータ26が、正極タブ群23の湾曲が緩い方に偏在した構成となっているが、これに限定されない。接合部が形成されたセパレータは、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、正負極積層構造における任意の位置に存在させることができる。
【0035】
図10および
図11は、
図8のセパレータ26’および正極22’の構成を示す模式図(平面図)である。
図10に示すように、本実施形態においては、接合部1は、正極タブ22tの根元部分に相当する端部rからセパレータ26(詳しくは、セパレータ26’)の正極タブ22tの突出方向における端部sに至るまでの領域に形成されている。また、本実施形態においては、接合部1の少なくとも一部は、境界部分2に隣接する位置(換言すると、境界部分2に接する位置)に存在している。このように、接合部1の少なくとも一部を境界部分2に隣接する位置に配置することで、境界部分2にかかる負荷をセパレータ26に効率よく分散させることができ、これによって正極タブ群23の損傷をより好適に防止することができる。
【0036】
図11に示すように、端部rから端部sに至るまでの最短距離をp、端部rから境界部分2に至るまでの最短距離をqとしたとき、最短距離pおよび最短距離qの大きさは、ここで開示される限りにおいて特に制限されない。最短距離qに対する最短距離pの比(p/q)は、接合部1の面積を好適に確保するという観点からは、例えば1.5以上であり、好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上である。一方、セパレータのコストの観点から、上記比(p/q)は、例えば5以下であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。
【0037】
また、接合部1の、正極タブ22tの突出方向(
図11のY方向)における長さAと、該突出方向に直交する方向(
図10のZ方向)における長さBの比(B/A)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。上記比(B/A)は、セパレータ26どうしの接合強度を好適に向上させるという観点から、例えば1.1以上であり、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.5以上であり得る。また、上記比(B/A)は、概ね3以下であり、例えば2以下とすることができる。
【0038】
図7に示すように、セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。また、セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。あるいは、セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられる接着層と、を有していてもよい。接着層としては、例えば、PVdFやSBRを含む層が挙げられる。また、上記接着層は、無機フィラー等他の成分をさらに含んでいてもよい。上記無機フィラーの一例としては、上述したようなものを用いることができる。ここで、上記接着層を構成する成分全体を100質量%としたとき、PVdFの含有量は、概ね5質量%以上とすることができ、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることができる。また、PVdFの含有量は100質量%であってもよいし、例えば90質量%以下とすることができ、好ましくは80質量%以下とすることができる。ただし、PVdFの含有量はこれらに限定されない。なお、詳細については後述するが、本実施形態のようにセパレータ26どうしを熱プレスによって接合する場合は、セパレータとして、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に設けられる接着層と、を有するものを好ましく用いることができる。
【0039】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0040】
正極端子30は、
図2に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図2の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、かしめ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0041】
上述したとおり、正極端子30は、
図2に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の電極体20の正極22(
図7参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、
図2に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の電極体の負極24(
図7参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14との間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0042】
<電池の製造方法>
電池100は、上記したような電池ケース10(外装体12および封口板14)と、電極体群20(電極体20a、20b、20c)と、電解液と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50(正極第1集電部51および正極第2集電部52)と、負極集電部60(負極第1集電部61および負極第2集電部62)と、正極内部絶縁部材70と負極内部絶縁部材80と、を用意し、例えば、第1取付工程と、第2取付工程と、挿入工程と、封口工程と、を含む製造方法によって製造することができる。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0043】
第1取付工程では、
図12、
図13に示すような第1合体物を作製する。具体的にはまず、封口板14に、正極端子30と、正極第1集電部51と、正極内部絶縁部材70と、負極端子40と、負極第1集電部61と、負極内部絶縁部材80と、を取り付ける。
【0044】
正極端子30と正極第1集電部51と正極内部絶縁部材70とは、例えば、かしめ加工(リベッティング)によって封口板14に固定する。かしめ加工は、封口板14の外側の表面と正極端子30との間にガスケット90を挟み、さらに封口板14の内側の表面と正極第1集電部51との間に正極内部絶縁部材70を挟んで行われる。なお、ガスケット90の材質は、正極内部絶縁部材70と同様であってもよい。詳しくは、かしめ加工前の正極端子30を、封口板14の上方から、ガスケット90の貫通孔と、封口板14の端子挿入穴18と、正極内部絶縁部材70の貫通孔と、正極第1集電部51の貫通孔51hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように正極端子30の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、正極端子30の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部を形成する。
【0045】
このようなかしめ加工によって、ガスケット90と封口板14と正極内部絶縁部材70と正極第1集電部51とが封口板14に一体に固定されるとともに、端子挿入穴18がシールされる。なお、かしめ部は、正極第1集電部51に溶接接合されていてもよい。これにより、導通信頼性をさらに向上することができる。
【0046】
負極端子40と、負極第1集電部61と、負極内部絶縁部材80との固定は、上記した正極側と同様に行うことができる。すなわち、かしめ加工前の負極端子40を、封口板14の上方から、ガスケットの貫通孔と、封口板14の端子挿入穴19と、負極内部絶縁部材80の貫通孔と、負極第1集電部61の貫通孔61hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように負極端子40の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、負極端子40の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部を形成する。
【0047】
次に、封口板14の外側の表面に、外部絶縁部材92を介して、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付ける。なお、外部絶縁部材92の材質は、正極内部絶縁部材70と同様であってもよい。また、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付けるタイミングは、挿入工程の後(例えば注液孔15を封止した後)であってもよい。
【0048】
第2取付工程では、第1取付工程で作製した第1合体物を用いて、
図5に示すような第2合体物を作製する。すなわち、封口板14と一体化された電極体群20を作製する。先ず、電極体群20が備える、接合部1を具備した電極体20aの作製について説明する。なお、以下では電極体20aの作製方法を例として詳しく説明するが、電極体20b、20cについても同様に作製することができる。
【0049】
先ず、
図7に示すような電極体20aを用意する。かかる電極体20aの作製は、この種の捲回電極体の従来公知の作製方法に基づいて作成することができる。次に、電極体20aを構成するセパレータ26のうち一部のセパレータどうしを接合する。上述したように、ここでは、正負極積層構造を有する電極体20aを構成するセパレータ26のうち、正極タブ群23を折り曲げた際に湾曲が緩い方から数えて5枚目(5層目)までのセパレータ26どうしを接合する。
【0050】
ここで、
図14は、接合部1の形成方法について説明するための模式図である。なお、
図14では、説明し易くするために、正極タブ群23を省略している。
図14に示すように、本実施形態では、上述のとおり作製した電極体20aに対して熱プレスを行うことで、上記5枚(5層)のセパレータ26どうしを接合する。より具体的には、所定の温度に加熱したアンビルS上に電極体20aを配置し、接合部1に対応する部分をホーンTによってプレスすることで、上記5枚(5層)のセパレータ26どうしを接合部1において接合する。なお、接合するセパレータの枚数(層数)は、例えばアンビルSの加熱温度や加熱時間、ホーンTのプレス圧等によって調整することができる。かかる加熱温度や加熱温度、ホーンのプレス圧等の条件は、セパレータを構成する材料等によって適宜調整することが好ましい。そして、かかる条件は、当業者が予備試験等を行うことで適宜決定することができる。
【0051】
続いて、上述したとおり作製した、接合部1を具備した電極体20aに対して、正極第2集電部52および負極第2集電部62の付設された電極体20a(
図6を参照)を3つ用意し、電極体20a、20b、20cとして、短辺方向Xに並べて配置する。このとき、電極体20a、20b、20cは、いずれも、正極第2集電部52が長辺方向Yの一方側(
図5の左側)に配置され、負極第2集電部62が長辺方向Yの他方側(
図5の右側)に配置されるように、並列に並べてもよい。
【0052】
次に、
図4に示すように複数の正極タブ22tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された正極第1集電部51と、電極体20a、20b、20cの正極第2集電部52と、をそれぞれ接合する。また、複数の負極タブ24tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された負極第1集電部61と、電極体20a、20b、20cの負極第2集電部62と、をそれぞれ接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接を用いることができる。特に、レーザ等の高エネルギー線の照射による溶接を用いることが好ましい。このような溶接加工によって、正極第2集電部52の凹部および負極第2集電部62の凹部に、それぞれ接合部を形成する。
【0053】
挿入工程では、第2取付工程で作製した第2合体物を外装体12の内部空間に収容する。具体的には、まず、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げて、電極体ホルダ29を用意する。次に、電極体ホルダ29に電極体群20を収容する。そして、電極体ホルダ29で覆われた電極体群20を、外装体12に挿入する。電極体群20の重量が重い場合、概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合は、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体群20を外装体12に挿入するとよい。
【0054】
封口工程では、外装体12の開口12hの縁部に封口板14を接合して、開口12hを封止する。封口工程は、挿入工程と同時または挿入工程の後に行うことができる。封口工程では、外装体12と封口板14とが溶接接合されることが好ましい。外装体12と封口板14との溶接接合は、例えばレーザ溶接等で行うことができる。その後、注液孔15から電解液を注入し、注液孔15を封止部材16で塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0055】
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。電池100は、複数の電池100を所定の配列方向に複数個並べて、配列方向から拘束機構で荷重を加えてなる組電池としても好適に用いることができる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。特許請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、正極タブ群側のみにおいてセパレータが接合されているが、これに限定されない。負極タブ群側のみにおいてセパレータが接合されていてもよいし、正極タブ群側および負極タブ群側においてセパレータが接合されていてもよい。また、接合されるセパレータの枚数(層数)は、正極タブ群側と負極タブ群側とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、正極タブは、アルミニウム箔等の比較的剛性の低い金属箔から構成されることが多いため、少なくとも正極タブ群側においてセパレータが接合されていることが好ましい。
【0058】
例えば、上記実施形態では、接合部の形状を長方形状としているが、これに限定されない。接合部の形状は、例えば、正方形状、円状、楕円状等の種々の形状とすることができる。また、ここで開示される接合部は、例えば間欠的に形成されていてもよい。なお、上記実施形態では、2箇所の接合部の形状を同じとしているが、これに限定されず、かかる2箇所の接合部の形状は異なっていてもよい。
【0059】
例えば、上記実施形態では、接合部の少なくとも一部が、境界部分に隣接する位置(換言すると、境界部分に接する部分)に存在しているが、これに限定されない。ここで開示される技術においては、接合部の少なくとも一部が境界部分に近接していればよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において「近接」とは、隣接を包含する概念であり、ここで開示される技術の効果が得られる範囲において、対象部分から所定の間隔を空けて存在する態様も包含し得る。即ち、境界部分に近接するとは、境界部分に隣接する態様や、ここで開示される技術の効果が得られる範囲において、境界部分から所定の間隔を空けて存在する態様を含み得る。なお、これに限定されることを意図したものではないが、例えば上記実施形態の場合、セパレータ26(詳しくは、セパレータ26’)のZ方向における長さを100%としたとき、接合部1は、境界部分2から概ね1%~5%の範囲内の間隔を空けて形成することができ、3%以下が好適である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、熱プレスによってセパレータどうしを接合していたが、これに限定されない。加熱を伴う超音波接合、接着剤の塗布等によっても、セパレータどうしを接合することができる。また、例えばセパレータの表面に保護層が具備されている場合、加熱を伴う超音波接合を行うことが好ましい。かかる場合、加熱温度や超音波の周波数等は、当業者が予備試験等を実施することで適宜決定することができる。そして、例えば接着剤を用いてセパレータどうしを接合する場合、かかる接着剤の一例としては、セメダインPPX(登録商標)等が挙げられる。あるいは、ホットメルト系の接着剤を用いることもできる。
【0061】
図15は、第2実施形態に係る
図10対応図である。
図15に示すように、第2実施形態では、接合部101は、境界部分2の両脇に存在している。ここで、接合部101が形成される領域は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されない。接合部101は、例えば、上述した最短距離pを100%としたとき、境界部分2を中心としてY方向に概ね5%~30%(例えば、10%~20%)の領域が包含することが好ましい。また、接合部101の形状は、例えば上記(B/A)を参照して設計することができる。
【0062】
図16は、第3実施形態に係る
図10対応図である。
図16に示すように、第3実施形態では、接合部201は、端部sから境界部分2の脇に至るまでの領域に存在している。また、
図17は、第4実施形態に係る
図10対応図である。
図17に示すように、第4実施形態では、接合部301は、端部sからR方向にかけての一部分と、境界部分2の脇とに存在している。
【0063】
図18は、第5実施形態に係る
図10対応図である。
図18に示すように、第5実施形態では、接合部401は、境界部分2の両脇と、正極タブ22tおよびセパレータ26(詳しくは、セパレータ26’)の重なり部分Wとに存在している。また、正極タブ22tにおける重なり部分Wには正極保護層22pが具備されている。かかる構成の接合部401を備えた電池によると、正極タブ22tに加わり得る振動を接合部401によって好適に抑制することができるため、好ましい。
なお、上記第2~第5実施形態における接合部の形成は、例えばホーンの形状等を調整することによって実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,101,201,301,401 接合部
2 境界部分
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
18、19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 電極体
22 正極
24 負極
26 セパレータ
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池