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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231115BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/16 F
B60K35/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021189589
(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公開番号】P2023076265
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直登志
(72)【発明者】
【氏名】下江 良
(72)【発明者】
【氏名】松岡 雄大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 建
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0304749(US,A1)
【文献】特開2016-197407(JP,A)
【文献】特開2010-123026(JP,A)
【文献】特開2006-221498(JP,A)
【文献】特開2014-211542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60K 35/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
前記車両の少なくとも前方の物体を検出する検出部と、
前記車両のインストルメントパネルに設けられ、前記検出部により検出された前記物体の方向に対応した位置に信号を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、平面視で、車両前後方向において前方に凹となる部分を含み、
前記凹となる部分は、円弧形状の部分を含み、
前記表示部が形成する円弧の中心角は、前記検出部の検出角度範囲に対応する
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記表示部は、前記インストルメントパネルに含まれるメータバイザの上部に設けられる、
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両であって、
前記表示部は、前記円弧の周方向に沿って設けられる複数の発光素子を含み、
前記円弧の中心と、前記複数の発光素子のうちの隣接する二つの発光素子のそれぞれとを結ぶ二つの仮想線分のなす角が、前記検出部の検出誤差角以上である、
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の車両であって、
車両幅方向における前記表示部の両端と、前記車両において設定されたアイポイントとを結ぶ二つの仮想線分のなす角が前記検出角度範囲の五分の一以上、かつ、前記検出角度範囲以下の角度である、
ことを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両であって、
運転者の視線を監視する視線監視部と、
運転者が前記検出部により検出された前記物体を視認しているかどうかを、前記視線監視部の監視結果に基づいて判定する判定部と、
前記表示部は、運転者が前記物体を視認していると前記判定部により判定された場合と、運転者が前記物体を視認していないと前記判定部により判定された場合とで、異なる態様で前記信号を表示する、
ことを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項に記載の車両であって、
前記表示部は、前記判定部により運転者が前記物体を視認していないと判定された場合であっても、最後に前記物体を視認していると前記判定部により判定されてから所定時間経過するまでは、前記運転者が前記物体を視認している場合と同様の態様で前記信号を表示する、
ことを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両であって、
前記車両と前記検出部により検出された前記物体との接触リスクを評価する評価部をさらに備え、
前記表示部は、前記評価部により評価された前記接触リスクに応じた態様で前記信号を表示する、
ことを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項に記載の車両であって、
前記表示部は、前記接触リスクに応じた色の光によって前記信号を表示する、
ことを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項に記載の車両であって、
前記表示部は、前記接触リスクが所定の条件を満たす場合に前記信号を表示する、
ことを特徴とする車両。
【請求項10】
請求項1に記載の車両であって、
運転者が装着するシートベルトのテンションを調整する調整部をさらに備え、
前記調整部により調整される前記シートベルトの前記テンションと、前記表示部により表示される前記信号の表示態様が連動する、
ことを特徴とする車両。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の車両であって、
前記検出部が検出した物体の方向は、前記表示部の対応した方向に表示する際、アイポイントから前記物体を見たときの方向に対応するよう補正される、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両周辺の状況を運転者に知らせる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、歩行者の方向に応じた表示位置及び表示色並びに歩行者と車両との距離に応じたサイズでアイコンを表示画面に表示する車載用表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-182892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の運転支援技術の向上や車両の電動化に伴い、運転者に提供される情報は増加の傾向にある。運転者に提供される情報が増加すると、運転者が煩わしく感じてしまったり、運転者が必要な情報を認識しにくくなってしまったりする場合がある。したがって、交通の安全性を向上させるという観点から、運転者が車両周辺の状況等の必要な情報をより容易に認識できることが望ましい。
【0005】
本発明は、車両周辺の状況を運転者が認識しやすい態様で提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
車両であって、
前記車両の少なくとも前方の物体を検出する検出部と、
前記車両のインストルメントパネルに設けられ、前記検出部により検出された前記物体の方向に対応した位置に信号を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、前記平面視で、車両前後方向において前方に凹となる部分を含み、
前記凹となる部分は、円弧形状の部分を含み、
前記表示部が形成する円弧の中心角は、前記検出部の検出角度範囲に対応する
ことを特徴とする車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両周辺の状況を運転者が認識しやすい態様で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る車両の平面図。
図2】車両の車室内の構成を示す図。
図3】表示装置の外観を示す斜視図。
図4】表示部の構造を示す模式図。
図5】車両における表示部の配置態様を説明する図。
図6】表示装置を搭載した車両Vのハードウェア構成図。
図7】表示装置が動作するシチュエーションの一例を示す図。
図8図7のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図9図7のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図10】ECUの処理例を示すフローチャート。
図11】表示装置が動作するシチュエーションの一例を示す図。
図12図11のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図13図11のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図14】(a)及び(b)は、ECUの処理例を示すフローチャート。
図15】表示装置が動作するシチュエーションの一例を示す図。
図16図15のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図17図15のシチュエーションの各状態における、車両の運転席から前方を見た図。
図18】ECUの処理例を示すフローチャート。
図19】一実施形態に係る運転席用のシートベルトのテンションの調整部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、各図において、X方向は車両Vの前後方向、Y方向は車両Vの車幅方向、Z方向は上下方向を示す。また、本明細書において、前/後、左/右(側方)、上/下等の表現は、車体を基準とした相対的な位置関係を示し、例えば、前、前方等の表現は+X方向に対応し、後、後方等の表現は-X方向に対応する。また例えば、左、左側等の表現は+Y方向に対応し、右、右側等の表現は-Y方向に対応する。同様に、車体内側/車体外側(車内外)等の表現についても車体を基準とする相対的な位置関係を示す。
【0011】
<車両の概要>
図1は、一実施形態に係る車両Vの平面図である。車両Vは、後述する表示装置1を搭載する。ここでは、車両Vとしてセダンタイプの四輪の乗用車が示されているが、車両Vは他のタイプの車両であってもよい。
【0012】
車両Vの少なくとも前方の物体を検出する検出部44を含む。本実施形態では、検出部44はカメラである。検出部44は、車両Vの車室内に設けられ、窓43(フロントウィンドウ)を介して車両Vの前方、より詳細には検出角度範囲DA1を撮影する。なお、検出部44としては、カメラの他、ミリ波レーダやLIDAR(Light Detection and Ranging)等が用いられてもよい。検出部44が検出する物体には、例えば、歩行者、自転車、停止車両、先行車両、縁石又は道路上の落下物等、車両Vの周辺に存在し、車両Vとの接触の可能性があるものが含まれる。また、検出部44は、の他、車両Vが走行する走行車線を画定する白線等を検出し得る。
【0013】
図2は、車両Vの車室内の構成を示す図であり、運転席から前方を見た場合の図である。車両Vの車室内において前側に配置されるインストルメントパネル2には、各種内装部品が設けられる。例えば、インストルメントパネル2には、車両Vの状態又は走行状況等の情報が表示されるメータパネル21、地図情報又はオーディオに関する情報等が表示されるナビ23等が設けられる。本実施形態では、メータパネル21は運転席からみてハンドル41の奥側に設けられ、ナビ23は車両Vの幅方向の中央部に設けられる。また、インストルメントパネル2は、メータパネル21の上方を覆うメータバイザ22を含む。メータバイザ22の上部には、表示装置1が設けられる。表示装置1の構成については後述する。また、車両Vの車室内には、運転者の視線を関する視線監視部45(図6参照)が設けられる。視線監視部45は、窓43の上側又はインストルメントパネル2等に配置されうる。
【0014】
<表示装置>
図2と併せて図3を参照する。図3は、表示装置1の外観を示す斜視図である。表示装置1は、表示部10及び筐体12を含む。
【0015】
表示部10は、車両Vの周辺の物体に関する信号を表示する。詳細には、表示部10は、車両Vのインストルメントパネル2に設けられ、検出部44により検出された物体の方向に対応した位置に信号を表示する。表示部10は車両Vの後方を向くように配置され、運転者に着座した運転者が視認可能となっている。さらに言えば、表示部10は、インストルメントパネル2に含まれるメータバイザ22の上部に設けられる。このような配置により、運転時に運転者の視野に入りやすい位置に表示部10が設けられることとなるので、運転者は表示部10の表示を運転中に容易に確認することができる。また、運転者の視界を遮ることなく、信号を視界の下方に入れることができる。なお、メータバイザ22の上部以外でも、例えば表示部10の半分以上が、車両前後方向に延びる車両Vの中心線よりも運転席側に位置するように表示部10が配置されてもよい。表示部10が車幅方向に置いて運転席側に偏って配置されることにより、表示部10が運転者の視界に入りやすくなる。また、詳しくは後述するが、本実施形態では、表示部10は、複数の発光体103と、これらが配置されるベース部104とを含む。筐体12は、表示部10が車両Vに搭載された状態で表示部10の前方に設けられ、電子回路基板や電気配線等を収容する。
【0016】
<表示部の構造>
図4は、表示部10の構造を示す模式図であり、表示装置1が車両Vに搭載された状態で表示部10を上方から見た図である。表示部10は、以下で示す構成により、検出部44により検出された物体の方向に対応した位置に信号を表示する。なお、図面を見やすくするため、複数設けられる構成要素の一部については参照符号を省略する。
【0017】
ベース部104は、全体として車幅方向に延びるとともに、ベース部104の幅方向内側に向かうにしたがって車両Vの前方にも延びるように形成されている。換言すれば、ベース部104は、平面視で、車両前後において前方に凹となる部分を含む。そして、ベース部104の車両前後方向後方を向く側面である配置面1041に、複数の発光体103が配置される。本実施形態では、ベース部104の配置面1041が前方に凹になる円弧形状に形成されている。したがって、複数の発光体103は仮想の円弧Ar1に沿って所定の間隔で配置される。表示部10が平面視で、車両前後において前方に凹となる部分を含むことにより、物体の方向と、表示部10上の位置の対応が運転者にとって認識しやすくなる。さらに言えば、車両Vから見た物体の方向を、表示部10上の信号の表示により正確に反映することができる。
【0018】
本実施形態では、円弧AR1の中心角CA1は、検出部44の検出角度範囲DA1(図1参照)に対応している。例えば、円弧AR1の中心角CA1及び検出部44の検出角度範囲DA1は90~150度に設定されてもよく、さらに言えば120度であってもよい。なお、中心角CA1と検出角度範囲DA1とが対応するとは、これらの角度が一致するものに限られず、これらの角度の差が所定の範囲内であることも含み得る。例えば、中心角CA1と検出角度範囲DA1との差が5、10、20又は30度以内であってもよい。
【0019】
複数の発光体103は、ベース部104の配置面1041に所定の間隔で配置されている。すなわち、本実施形態では、複数の発光体103は、円弧AR1の周方向に沿って設けられる。複数の発光体103の数や間隔は適宜変更可能であるが、例えば、検出部44の検出誤差に応じて設定されてもよい。例えば、円弧AR1の中心C1と、複数の発光体103のうち隣接する二つの発光体103のそれぞれとを結ぶ二つの仮想線分のなす角が、検出部44の検出誤差角以上となるように、複数の発光体103が配置されてもよい。図4の例で言えば、円弧AR1の中心C1と、隣接する発光体103a、103bのそれぞれとを結ぶ二つの仮想線分VL1、VL2のなす角度θv1が、検出部44の検出誤差以上となるように、複数の発光体103の数や間隔が設定されてもよい。これにより、検出部44の検出誤差の影響で信号の表示がちらつくことを抑制することができる。
【0020】
また、本実施形態では、表示部10は、検出部44により検出された物体の方向に対応した位置に信号を表示する。例えば、検出部44が車両Vの進行方向に対して左に45度の方向にある物体を検知した場合、円弧AR1の中心C1からみて車両Vの進行方向に対して左に45度の方向にある発光体103cが発光する。これにより、運転者は、物体の方向を直感的に認識することができる。
【0021】
図5は、車両Vにおける表示部10の配置態様を説明する図である。本実施形態では、表示部10は、車両Vの車幅方向における表示部10の両端と、車両Vにおいて設定されたアイポイントEPを結ぶ二つの仮想線分のなす角が25~30度となるように配置される。詳細には、平面視で、配置面1041の車幅方向の端部1042、1043と、車両Vにおいて設定されたアイポイントEPとを結ぶ二つの仮想線分VL3、VL4のなす角度θv2が、25~30度となるように表示部10が配置されている。ここで、アイポイントEPは、例えば日本工業規格JIS D1702:1996で規定される基準アイポイントを用いることができる。
【0022】
表示部10の車幅方向のサイズが大きすぎる、すなわち角度θv2が大きすぎる場合、表示部10が表示する信号が運転者の視界に入りにくくなってしまう恐れがある。一方、表示部10の車幅方向のサイズが小さすぎる、すなわち角度θv2が小さすぎる場合、物体の方向と、表示部10上の信号の表示位置の対応が分かりにくくなってしまう恐れがある。角度θv2が上述の角度範囲に収まるように表示部10が配置されることにより、信号の視認性と表示位置の対応の認識の容易性を両立することができる。
【0023】
上記の角度θv2の範囲(25~30度)は、検出部44の検出角度範囲DA1が120度前後の場合の一例である。角度θv2の範囲は、検出部44の検出角度範囲DA1に応じて適宜設定されてもよい。例えば、検出部44の検出角度範囲DA1が比較的小さい場合(例えば検出角度範囲DA1=20度)、角度θv2を検出角度範囲DA1より大きくしても物体の位置を表示部10上に適切に表現できない場合がある。したがって、角度θv2は、検出角度範囲DA1以下となるように設定されてもよい。例えば、検出角度範囲DA1が20度の場合には、角度θv2が15~20度となるように表示部10が設けられてもよい。一方で、角度θv2が検出角度範囲DA1の五分の一より小さい場合、表示部10における信号の表示位置と前方の物体の方向とのマッチングが難しくなる場合がある。したがって、角度θv2は、検出角度範囲DA1の五分の一以上となるように設定されてもよい。例えば、検出角度範囲DA1が90度の場合には、角度θv2が18度以上となるように設定されてもよい。すなわち、角度θv2は、検出角度範囲DA1の五分の一以上、かつ、検出角度範囲DA1以下の角度であってもよい。これにより、表示部10の信号の表示位置と前方の物体の方向の対応づけを適切に行うことができる。
【0024】
<ハードウェア構成例>
図6は、表示装置1を搭載した車両Vのハードウェア構成図である。検出部44及び表示装置1については前述の通りであるため説明を省略する。視線監視部45は、運転者の視線を監視する。視線監視部45は、例えば運転者を撮影するカメラ(ドライバモニタリングカメラ)である。GPSアンテナ46は、車両Vの現在位置を取得するためにGPS衛星から電波を受信する。詳細には、GPSアンテナ46は、GPS衛星から衛星の座標データ及び時刻データを含む電波を受信する。V2P通信部47は、車両と歩行者端末との間で通信を行う歩車間通信(V2P: Vehicle to Pedestrian)により、車両Vの周辺の歩行者の情報処理端末8から情報処理端末8の位置情報等を取得する。
【0025】
制御ユニット3は、車両Vの制御を行うユニットであり、車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU31~35を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。また、各ECUは、これらに代えて各ECUによる処理を実行するためのASIC等の専用の集積回路を備えてもよい。
【0026】
以下、各ECU31~35が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは、統合したりすることが可能である。
【0027】
ECU31は、検出部44の検出結果に基づき、車両Vと検出された物体との距離、及び車両Vから見た物体の方向を特定する。ECU32は、視線監視部45の検出結果に基づき、運転者の視線を特定する。ECU33は、GPSアンテナ46がGPS衛星から受信したデータに基づき、車両Vの位置を特定する。ECU34は、情報処理端末8から受信した情報処理端末8の位置情報及びECU33が特定した車両Vの位置から、車両Vと情報処理端末8との距離、及び車両Vから見た情報処理端末8の方向を特定する。ECU35は、表示装置1の表示を制御する。詳しくは後述するが、例えばECU35は、ECU31から取得した車両Vと物体との距離及び車両Vから見た物体の方向に基づき選択した発光体103を発光させる。また、例えばECU35は、ECU34から取得した情報処理端末8と物体との距離及び車両Vから見た情報処理端末8の方向に基づき選択した発光体103を発光させる。
【0028】
情報処理端末8は、歩行者等が携帯する端末である。情報処理端末8は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス及び外部装置との通信装置を含む。情報処理端末8のプロセッサは、情報処理端末8の通信装置を制御して、短距離通信用の無線信号を、所定の通信範囲内に、宛先を指定しないブロードキャストで送信する。車両VのV2P通信部47は、情報処理端末8の通信装置が送信したこの無線信号を受信する。
【0029】
<表示装置の動作>
(動作例1)
次に、車両Vの走行中の表示装置1の動作例について説明する。図7は、表示装置1が動作するシチュエーションの一例を示す図である。図8図9は、図7のシチュエーションの各状態における、車両Vの運転席から前方を見た図である。ここでは、車両Vが走行する走行車線L1に隣接する隣接車線L2に物体としての工事車両(以下、車両91、92と呼ぶ)が停車しており、車両Vが工事車両の脇を通過するシチュエーションが示されている。
【0030】
状態ST101は、車両Vの前方において検出部44が車両91、92を検出した状態である。このとき、表示装置1の表示部10では、検出した車両91、92の車両Vから見た方向に対応した位置に信号SG1が表示される。すなわち、出した車両91、92の車両Vから見た方向に対応した位置の発光体103が点灯する。
【0031】
状態ST102は、状態ST101から車両Vが少し前方に進んだ状態である。状態ST102とでは、状態ST101と比べて車両Vと車両91、92との車幅方向の距離は変化していないが、車両Vと車両91、92との前後方向の距離が短くなっている。そのため、車両Vから見た車両91、92の方向が進行方向に対してより左側にシフトしている。これに伴い、表示部10では、状態ST101における信号SG1の位置よりも左側の位置において信号SG1が表示されている。
【0032】
状態ST103は、状態ST102から車両Vがさらに前方に進んだ状態である。表示部10では、状態ST102における信号SG1の位置よりもさらに左側の位置において信号SG1が表示されている。
【0033】
状態ST104は、状態ST101から車両Vが少し前方に進んだ状態であり、車両Vが車両91、92を通過した後の状態である。車両91、車両92が検出部44の検出角度範囲DA1から外れたため、表示部10におけるこれらに対応する信号SG1の表示も終了している。
【0034】
このように、表示部10において、車両Vの前方の物体の方向に対応した位置に信号SG1が表示されるので、運転者は前方の物体の存在を容易に認識することができる。
【0035】
(処理例1)
図10は、ECU35の処理例を示すフローチャートであり、上記動作例1の動作を表示装置1が行う際のECU35の処理を示している。例えば、本フローチャートは、ECU35のCPU等のプロセッサが、ECU35の半導体メモリ等の記憶デバイスに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。また例えば、本フローチャートは、車両Vの走行中に所定の周期で繰り返し実行される。なお、以下の説明では、各ステップを単にS101等のように表記する。
【0036】
S101で、ECU35は、物体の検出情報を取得する。具体的には、ECU35は、ECU31から、検出部44の検出結果に基づく情報を物体の検出情報として取得する。物体の検出情報の例としては、車両Vと検出された物体との距離、車両Vから見た物体の方向、車両Vと物体との相対速度等が挙げられる。なお、検出部44が複数の物体(例えば車両91、92)を検出した場合には、ECU35は、それぞれの物体についての情報を取得する。
【0037】
S102で、ECU35は、物体を選択する。ECU35は、S101で取得した情報に複数の物体についての情報が含まれている場合には、複数の物体のいずれかの物体を選択する。
【0038】
S103で、ECU35は、車両Vと選択した物体の接触リスクを評価する。ここでは、車両Vと物体との接触リスクは、「高」「中」「低」の3段階のリスクレベルで表されるものとする。ただし、リスクレベルは、さらに細かく段階分けがされたものであってもよいし、「有」又は「無」のように二値的なものであってもよい。或いは、接触リスクは、パーセンテージのように数値で表されたものであってもよい。
【0039】
また、リスクレベルの評価方法は公知の技術を適宜用いることができるが、ECU35は、車両Vと物体との前後方向又は車幅方向の距離、物体の挙動、車両Vと物体との相対速度、車両V及び物体が存在する車線等の情報に基づきリスクレベルを評価してもよい。例えば、ECU35は、車両Vと物体との距離が所定値以上の場合に、所定値未満の場合と比較してリスクレベルが低くなるように評価してもよい。また例えば、ECU35は、車両Vの前方を走行する車両のように車両Vとの相対速度が比較的小さい物体については、歩行者や車線上の落下物のように車両Vとの相対速度が比較的大きい物体よりもリスクレベルが低くなるように評価してもよい。また例えば、ECU35は、車両Vの走行車線上の物体については、車両Vの走行車線外の物体よりもリスクレベルが高くなるような評価を行ってもよい。すなわち、ECU35は、上述した様々な情報に基づき、リスクレベルを総合的に評価しうる。
【0040】
本実施形態では、例えば車両Vと選択した物体のとの所定距離以上離れていたり、先行車両のように車両Vとの相対速度が小さかったりする物体については、ECU35はリスクレベルを「低」と評価する。すなわち、リスクレベル「低」の物体は、評価が行われた時点では運転者に報知する必要性の低い物体であるといえる。また例えば、車両Vと選択した物体との距離が所定距離未満であるが、その物体が車両Vの走行車線上にはない場合には、ECU35はリスクレベルを「中」と評価する。また例えば、車両Vと選択した物体との距離が所定距離未満であって、その物体が車両Vの走行車線上にある場合には、ECU35はリスクレベルを「高」と評価する。また例えば、車両Vと選択した物体との距離が所定距離未満であって、その物体が車両Vの走行車線上にはないが、歩行者のように物体が移動しており車両Vの走行車線上に進入する可能性のある場合には、ECU35はリスクレベルを「高」と評価する。なお、ここでの所定距離は予め定められた定数値であってもよいし、制動距離を考慮した、車両Vの車速に依存した変数値であってもよい。
【0041】
S104で、ECU35は、接触リスクが条件を満たすかどうかを確認し、条件を満たしていればS105に進み、そうでない場合はS106に進む。条件の例としては、リスクレベルが「高」又は「中」であること等が挙げられる。ECU35は、例えば状態ST101のような状態で、S103において車両91、92のリスクレベルを「中」と評価しているときはS105に進む。
【0042】
S105で、ECU35は、表示部10の表示制御を実行する。さらに言えば、ECU35は、選択した物体の方向に対応する位置の信号を表示する。ECU35は、S101で取得した情報から、S102で選択した物体の方向についての情報を参照する。そして、ECU35は、選択した物体の方向に対応する位置に信号SG1を表示させる。
【0043】
S106で、ECU35は、未選択の物体があればS102に戻り、そうでない場合はフローチャートを終了する。ECU35が上記の処理を行うことにより、図8図9で示すように車両Vから見た車両91、92の方向が変化していくのに合わせて、表示装置1の表示部10に表示される信号の位置が変化する。
【0044】
以上説明したように、本処理例によれば、車両Vの前方に物体がある場合に、表示部10において物体の方向に対応した位置に信号が表示される。したがって、運転者は、車両Vの周辺状況を直感的に認識することができる。
【0045】
(動作例2)
次に、表示装置1の他の動作例について説明する。本動作例は、表示部10において車両Vと物体との接触リスクに応じた態様で信号が表示される点で上記動作例1と異なる。具体的には、表示部10は、車両Vと物体との接触のリスクレベルに応じた色で信号を表示する。さらに言えば、本実施形態では、表示部10は、リスクレベルが「中」の物体に対応するオレンジ色の信号SG2及びリスクレベルが「高」の物体に対応する赤色の信号SG3を表示可能である。なお、各リスクレベルに対応する信号の色については適宜変更可能である。
【0046】
また、本動作例では、検出部44に加えてV2P通信部47が受信する情報によっても車両Vの周囲の物体を検出する。さらに、本動作例では、視線監視部45により監視される運転者の視線も踏まえてリスクレベルを判断する。
【0047】
図11は、表示装置1が動作するシチュエーションの一例を示す図である。図12図13は、図11のシチュエーションの各状態における、車両Vの運転席から前方を見た図である。ここでは、車両Vが走行する走行車線L1に隣接する隣接車線L2に工事車両(車両91、92)が停車しており、それらの間から物体としての歩行者93が道路を横断してくるシチュエーションが示されている。なお、図12図13では、視線監視部45により特定される運転者の視線の方向をマーク451で仮想的に示している。
【0048】
状態ST201は、検出部44が車両91、92を検出するとともに、V2P通信部47が害物93の所持する情報処理端末8から受信した情報等に基づきECU34が歩行者の存在を認識した状態である。詳しくは(処理例2)で説明するが、状態ST201では、車両91、92及び車両93はいずれもリスクレベル「中」と評価されるため、表示部10は対応する位置にオレンジ色の信号SG2を表示する。
【0049】
状態ST202は、状態ST201から車両Vが少し前方に進んだ状態である。車両Vから見た車両91、92及び歩行者93の方向の変化に合わせて、表示装置1の信号の表示位置も変化している。また、詳しくは(処理例2)で説明するが、状態ST202では車両91、92はリスクレベル「中」と認識されるため、表示部10は対応する位置に信号SG2を表示する。一方で、歩行者93はリスクレベル「高」と認識されるため、表示部10は対応する位置に赤色のSG3を表示する。なお、この例では、表示部10において、車両91、92の方向に対応する位置と、歩行者の方向に対応する位置とが一部重複しているが、重複している部分についてはより高いリスクレベルを示す赤色の信号SG3が優先される。
【0050】
状態ST203~状態ST204の状態の遷移は状態ST103~状態ST104と同様である。簡略的に述べると、車両Vが車両91、92及び歩行者93に近づくに従って車両Vから見た車両91、92及び歩行者93の方向がシフトしていくので、それに伴って表示部10における信号の表示位置が変化する。
【0051】
(処理例2)
図14(a)は、ECU35の処理例を示すフローチャートであり、上記動作例2の動作を表示装置1が行う際のECU35の処理を示している。例えば、本フローチャートは、ECU35のCPU等のプロセッサが、ECU35の半導体メモリ等の記憶デバイスに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。また例えば、本フローチャートは、車両Vの走行中に所定の周期で繰り返し実行される。なお、S201~S202及びS206は、S101~S102及びS106とそれぞれ同様のため説明を省略する。
【0052】
S203で、ECU35は、車両Vと選択した物体の接触リスクを評価する。本処理例では、ECU35は、車両Vと物体との相対的な位置関係や速度関係に加えて、運転者が物体を視認しているかどうかも考慮して接触リスクを評価する。図14(b)は、S203の具体的な処理の一例を示している。
【0053】
S231で、ECU35は、車両Vと物体との関係に基づくリスクレベルを算出する。さらに言えば、ECU35は、車両Vと物体との相対的な位置関係や速度関係に基づいてリスクレベルを算出する。具体的には、ECU35は、図10のS103の説明で挙げたような方法でリスクレベルを算出しうる。例えば、状態ST202において、選択された物体が車両91の場合、車両Vと車両91との距離が所定距離未満であるため、ECU35はリスクレベルを「高」と評価する。選択された物体が車両92、歩行者93の場合も同様に、リスクレベルが「高」と評価される。
【0054】
S232で、ECU35は、視認判定処理を行う。視認判定処理は、運転者が物体を視認しているかどうかを判定する処理である。ECU35は、視線監視部45から取得した運転者の視線についての情報と、ECU31から取得した物体の方向についての情報に基づいて、運転者が対象の物体を視認しているかどうかを判定する。例えば、状態ST202において、選択された物体が車両91又は車両92の場合、運転者の視線の方向を示すマーク451が車両91と重なっているため、ECU35は車両91又は92を視認していると判定する。一方で、選択された物体が歩行者93の場合、検出部44により歩行者93が検出されないことから、運転者から見て歩行者93は車両91の死角に位置していると考えられる。したがって、ECU35は、運転者の視線が歩行者93の方向を向いていたとしても、運転者が歩行者93を視認していないと判定する。つまり、V2P通信部47が受信した情報に基づき検出した物体については、検出部44により検出されていなければ運転者が視認できていない可能性が高いので、そのような場合には物体が視認されていないと判断される。
【0055】
S233で、ECU35は、運転者が物体を視認しているとS232で判定された場合はS234に進み、そうでない場合はフローチャートを終了する。S234で、ECU35は、S231で算出したリスクレベルを一段下げる。逆に言えば、選択された物体が運転者により視認されていない場合には、視認されている場合よりもリスクレベルが高くなる。
【0056】
図14(a)に戻り、S204で、ECU35は、S203の評価結果が「高」であればS205に進み、「中」であればS207に進み、「低」であればS206に進む。
【0057】
S205で、ECU35は、選択した物体に対応する位置の信号を赤色で表示する。ECU35は、S201で取得した情報から、S202で選択した物体の方向についての情報を参照する。そして、ECU35は、選択した物体の方向に対応する位置の発光体103を赤色で発光させる。
【0058】
S207で、ECU35は、選択した物体に対応する位置の信号をオレンジ色で表示する。ECU35は、S201で取得した情報から、S202で選択した物体の方向についての情報を参照する。そして、ECU35は、選択した物体の方向に対応する位置の発光体103をオレンジ色で発光させる。
【0059】
本処理例によれば、物体のリスクレベルに応じた態様で表示部10に信号が表示されるので、運転者が周辺状況をより適切に把握することを促すことができる。また、運転者が視認していない物体についてはリスクレベルが相対的に高く評価されるので、運転者が認識していない物体の存在を運転者に効果的に認識させることができる。
【0060】
なお、本処理例では、運転者が物体を視認している場合にはリスクレベルを一段下げる構成としたが、運転者が物体を視認している場合には信号を表示しない構成も採用可能である。例えば、S232で運転者が物体を視認していると判定された場合には、信号表示を行わないリスクレベル「低」までリスクレベルを下げてもよい。これにより、運転者が視認していない物体に絞って信号を表示できるので、信号の煩わしさを低減しつつ、接触リスクの高い物体について効果的に運転者に報知することができる。
【0061】
(動作例3)
次に、表示装置1のさらなる動作例について説明する。本動作例は、接触リスクの評価方法が上記動作例2と異なる。具体的には、動作例2においては運転者が認識していない物体のリスクレベルが相対的に高くなるようにリスクレベルが評価された。結果として、運転者が物体を視認している場合と視認していない場合とで異なる態様で表示部10に信号が表示された。これに対し、本動作例では運転者が物体を視認していない場合であっても、最後に視認してから所定時間は物体を視認している場合と同様の態様で表示部10に信号を表示させる。なお、ここでの所定時間は適宜設定可能であるが、例えば、3~10秒の間の値に設定されてもよい。
【0062】
図15は、表示装置1が動作するシチュエーションの一例を示す図である。図16図17は、図15のシチュエーションの各状態における、車両Vの運転席から前方を見た図である。ここでは、車両Vが交差点を右折する際に、歩行者等が横断歩道を渡るのを待っているシチュエーションが示されている。具体的には、検出部44が検出する物体としての歩行者94が車両Vの前を横断した後に、検出部44が検出する物体としての自転車95が車両Vの前を横断するようなシチュエーションである。
【0063】
状態ST301は、歩行者94が車両Vの前を横断し始めた状態である。このとき、マーク451で示すように運転者の視線は歩行者94を向いており、運転者は歩行者94を認識していると考えられる。よって、ECU35は、歩行者94についてのリスクレベルを「中」と評価し、表示部10の対応する位置にオレンジ色の信号SG2を表示する。
【0064】
状態ST302は、歩行者94が車両Vの前の横断を終えつつあるとともに、自転車95が車両Vの前方を横断し始めた状態である。このとき、マーク451で示すように運転者の視線は歩行者94を向いており、運転者は歩行者94については認識しているものの、自転車95を認識していないと考えられる。よって、ECU35は、歩行者94についてのリスクレベルを「中」と評価して表示部10の対応する位置にオレンジ色の信号SG2を表示し、自転車95についてのリスクレベルを「高」と評価して表示部10の対応する位置に赤色の信号SG3を表示する。
【0065】
状態ST303は、歩行者94が車両Vの前の横断を終え、自転車95が車両Vの前方の横断を継続している状態である。ここでは歩行者94は示されていないが、検出部44の検出角度範囲DA1には歩行者94が存在しているため、表示部10には歩行者94に対応する信号が表示されている。また、マーク451で示すように運転者の視線は歩行者94を向いていないが、最後に運転者が歩行者94を視認してから所定時間が経過する前なので、ECU35は歩行者94のリスクレベルを「中」と評価してオレンジ色の信号SG2を表示している。一方で、運転者が自転車95を未だに視認していないため、ECU35は自転車95についてのリスクレベルを「高」と評価して、表示部10の対応する位置に赤色の信号SG3を表示している。
【0066】
状態ST304は、自転車95が車両Vの前の横断を終えつつある状態である。歩行者94は検出部44の検出角度範囲DA1から外れたため、表示部10には歩行者94に対応する信号は表示されていない。また、マーク451で示すように運転者の視線は自転車95を向いているため、ECU35は自転車95についてのリスクレベルを「中」と評価して表示部10の対応する位置にオレンジ色の信号SG2を表示している。
【0067】
本動作例によると、運転者が物体から視線を外した途端に信号の色が変わったり信号が消えたりするなどして、表示部10の信号表示が頻繁に切り替わってしまうことを抑制できる。よって、信号のちらつきを抑制し、運転者が煩わしさを感じにくくすることができる。また、一旦視認した物体については所定時間はリスクレベルが上がりにくいので、運転者が視認しておらず、より接触リスクの高い物体を運転者により効果的に報知することができる。
【0068】
(処理例3)
図18は、ECU35の処理例を示すフローチャートであり、図14(a)のS203の具体的な処理の一例を示している。すなわち、表示装置1が動作例3の動作を行う際には、ECU35は、図14(a)の処理を実行するが、S203の具体的な処理が動作例2の動作を行う場合と異なる。
【0069】
S331及びS332はそれぞれ、S231及びS232と同様のステップである。例えば、状態ST302において、選択された物体が自転車95の場合、車両Vと自転車95との距離が所定距離未満であり、かつ自転車95が移動しているため、ECU35はリスクレベルを「高」と評価する。
【0070】
S333で、ECU35は、運転者が物体を視認しているとS332で判定された場合はS334に進み、そうでない場合はS335に進む。S335で、ECU35は、運転者が最後に物体を視認してから所定時間が経過したかどうかを確認し、所定時間経過していればフローチャートを終了し、そうでない場合はS334に進む。本フローチャートは所定周期で繰り返し実行されるため、ECU35は、前回以前の制御周期の判定結果を用いて、運転者が物体を最後に視認してからの経過時間を取得しうる。S334で、ECU35は、S331で算出したリスクレベルを一段下げる。
【0071】
S333~S335により、ECU35は、運転者が物体を視認している場合、及び現在は物体を視認していないが最後に視認してから所定時間経過していない場合には、S331で算出したリスクレベルを一段下げる。つまり、運転者が物体を最後に視認してから所定時間経過するまでは、運転者が物体を視認している場合と同様の態様で信号が表示される。
【0072】
運転者が一度物体を視認していれば接触のリスクは低いと考えられる。したがって、運転者が視線を外してから所定時間は運転者が物体を視認している場合と同じ態様で信号を表示することで、信号の表示が頻繁に切り替わってしまうことを抑制でき、運転者が信号を煩わしく感じることをより抑制することができる。
【0073】
<他の実施形態>
表示装置1による信号の表示が、運転席用のシートベルトのテンションと連動する構成も採用可能である。図19は、一実施形態に係る運転席用のシートベルトのテンションの調整部の構成を示す模式図である。
【0074】
車両Vは、運転者が装着するシートベルト48のテンションを調整する調整部49を含む。調整部49は、モータ等の回転駆動力によりシートベルト48を図の矢印方向に引っ張ることでシートベルト48のテンションを増加させる。また、調整部49はモータ等をシートベルト48のテンション増加時と逆方向に回転させることでシートベルト48のテンションを緩める。調整部49の駆動は制御ユニット3に含まれるECUによって制御されうる。
【0075】
このような構成において、表示装置1の信号の表示態様と、調整部49により調整されるシートベルト48のテンションが連動してもよい。例えば、表示部10に信号が表示されないときには調整部49はシートベルト48のテンションを発生させず、表示部10に信号が表示されるときには調整部49はシートベルト48のテンションを発生させてもよい。また例えば、表示部10に物体のリスクレベルに応じた態様の信号が表示される場合には、リスクレベル「高」のときのシートベルト48のテンションが、リスクレベル「中」のときのテンションよりも高くなるように、調整部49によりシートベルト48のテンションが調整されてもよい。或いは、表示部10に信号が表示される場合であって、対象の物体を運転者が視認していない場合に調整部49によりシートベルト48のテンションを発生させてもよい。これにより、運転者が物体との接触リスクをより容易に把握することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、リスクレベルに応じて信号の表示態様を変化させる例として、異なる色の信号で表示させる構成について説明したが、信号の明るさや点滅の仕方等によって信号の表示態様を変化させてもよい。
【0077】
また、表示部10は、複数の発光体103が発光した光を拡散する拡散板を有していてもよい。発光体103のサイズが小さい場合等には、拡散板を設けることで信号のちらつきを抑えることができる。
【0078】
また、表示部10による信号の表示において、信号の幅は、固定値でもよいし、物体の検出角度の幅に対応してもよい。信号の幅を固定値(例えば発光体103一個分)とすることで、複数の物体が同じような方向に存在している場合に、物体が複数あることを運転者が把握しやすくなる。また、信号の幅を物体の検出角度に対応させることで、運転者が物体の存在をより正確に把握することができる。また、信号がある程度幅を持って表示される場合には、中央部と外側部分とで信号の色を変えて表示してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、表示部10において、物体が検出されていない方向や、リスクレベルが低い物体が存在する方向に対応する位置では、信号が表示されないが、このような位置においても信号が表示されてもよい。例えば、表示部10は、リスクレベルが高い物体が存在する方向に対応する位置に赤色やオレンジ色の信号を表示し、物体が検出されていない方向やリスクレベルが低い物体が存在する方向に対応する位置に緑や水色等の信号を表示してもよい。
【0080】
また、表示部10の形状は、円弧形状に限らず、他の形状も採用可能である。例えば、平面視でベース部104の一部が直線状に形成されていてもよいし、複数の直線状の部分が組み合わされてベース部104が形成されてもよい。すなわち、表示部10が、平面視で車両前後方向において前方に凹となる部分を含んでいればよい。
【0081】
また、例えば検出部44(カメラ)が車両の車幅方向中央に設置される場合、表示部10は運転者の正面に設置する必要があるため、検出された物体が車両に近づけは近づくほど、前記物体に対応して表示される信号(LED点灯)の位置が前記物体の位置とずれて見える場合がある。例えば、右ハンドルの車両の場合、検出部44の正面にある物体が、運転者からは左斜め前に見える場合がある。これを補正するために、検出部44が検出した物体の位置を、運転者から見た物体の位置に補正する計算を行い、信号の表示位置を運転者から見た物体の位置と合うように変換しても良い。
【0082】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、以下の車両を少なくとも開示する。
1.上記実施形態の車両(例えばV)は、
車両であって、
前記車両の少なくとも前方の物体を検出する検出部(例えば44)と、
前記車両のインストルメントパネル(例えば2)に設けられ、前記検出部により検出された前記物体の方向に対応した位置に信号を表示する表示部(例えば10)と、を備え、
前記表示部は、前記平面視で、車両前後方向において前方に凹となる部分を含む。
この実施形態によれば、車両周辺の状況を運転者が認識しやすい態様で提供することができる。
【0083】
2.上記実施形態によれば、
前記表示部は、前記インストルメントパネルに含まれるメータバイザ(例えば22)の上部に設けられる。
この実施形態によれば、運転時に運転者の視野に入りやすい位置に表示部が設けられることとなるので、運転者は表示部の表示を運転中に容易に確認することができる。また、運転者の視界を遮ることなく、信号を視界の下方に入れることができる。
【0084】
3.上記実施形態によれば、
前記表示部は、円弧形状の部分を含み、
前記表示部が形成する円弧(例えばAR1)の中心角(例えばCA1)は、前記検出部の検出角度範囲(例えばDA1)に対応する。
この実施形態によれば、車両から見た物体の方向を、表示部上の信号の表示により正確に反映することができる。
【0085】
4.上記実施形態によれば、
前記表示部は、前記円弧の周方向に沿って設けられる複数の発光素子(例えば103)を含み、
前記円弧の中心と、前記複数の発光素子のうちの隣接する二つの発光素子のそれぞれとを結ぶ二つの仮想線分(例えばVL1,VL2)のなす角(例えばθv1)が、前記検出部の検出誤差角以上である。
この実施形態によれば、検出誤差の影響で検出誤差の影響で信号の表示がちらつくことを抑制することができる。
【0086】
5.上記実施形態によれば、
車両幅方向における前記表示部の両端(例えば1042,1043)と、前記車両において設定されたアイポイント(例えばEP)とを結ぶ二つの仮想線分(例えばVL3,VL4)のなす角(例えばθv2)が、前記検出角度範囲の五分の一以上、かつ、前記検出角度範囲以下の角度である
この実施形態によれば、表示部の信号の表示位置と前方の物体の方向の対応づけを適切に行うことができる。
【0087】
6.上記実施形態によれば、
運転者の視線を監視する視線監視部(例えば45)と、
運転者が前記検出部により検出された前記物体を視認しているかどうかを、前記視線監視部の監視結果に基づいて判定する判定部(例えば35,S232)と、
前記表示部は、運転者が前記物体を視認していると前記判定部により判定された場合と、運転者が前記物体を視認していないと前記判定部により判定された場合とで、異なる態様で前記信号を表示する(例えばS233-S234)。
この実施形態によれば、運転者が視認していない物体の存在を認識できるので、車両の周囲の状況をより的確に把握することができる。
【0088】
7.上記実施形態によれば、
前記表示部は、前記判定部により運転者が前記物体を視認していないと判定された場合であっても、最後に前記物体を視認していると前記判定部により判定されてから所定時間経過するまでは、前記運転者が前記物体を視認している場合と同様の態様で前記信号を表示する(例えばS333-S335)。
この実施形態によれば、信号表示が頻繁に切り替わってしまうことを抑制でき、運転者が煩わしさを感じにくくすることができる。
【0089】
8.上記実施形態によれば、
前記車両と前記検出部により検出された前記物体との接触リスクを評価する評価部(例えばS203)をさらに備え、
前記表示部は、前記評価部により評価された前記接触リスクに応じた態様で前記信号を表示する(例えばS204-S205)。
この実施形態によれば、接触リスクに応じた態様で信号が表示されるので、運転者が車両の周囲の状況をより的確に把握することができる。
【0090】
9.上記実施形態によれば、
前記表示部は、前記接触リスクに応じた色の光によって前記信号を表示する(例えばS204-S205)。
この実施形態によれば、物体との接触リスクをより直感的に把握することができる。また、簡易な構造で運転者に接触リスクを報知することができる。
【0091】
10.上記実施形態によれば、
前記表示部は、前記接触リスクが所定の条件を満たす場合に前記信号を表示する(例えばS104)。
この実施形態によれば、接触リスクが低い物体については信号を表示させないことで、運転者により必要な情報のみを報知することができる。
【0092】
11.上記実施形態によれば、
運転者が装着するシートベルト(例えば48)のテンションを調整する調整部(例えば49)をさらに備え、
前記調整部により調整される前記シートベルトの前記テンションと、前記表示部により表示される前記信号の表示態様が連動する。
この実施形態によれば、運転者が車両の周囲の状況をより認識しやすくなる。
【0093】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:表示装置、10:表示部、35:ECU、44:検出部、V:車両
図1
図2
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