(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ空洞におけるゲッタリング材料の製造技術及び構造
(51)【国際特許分類】
H04R 31/00 20060101AFI20231115BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H04R31/00 330
H04R19/00 330
(21)【出願番号】P 2021510705
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053352
(87)【国際公開番号】W WO2020069252
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515244151
【氏名又は名称】バタフライ ネットワーク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ジアンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ,キース,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ルツキー,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ,リンユン
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0232474(US,A1)
【文献】特開平08-330607(JP,A)
【文献】特開2011-029910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0135056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 31/00
H04R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサデバイスを形成する方法であって、
底部電極及びゲッタ材料の上に1つ以上の絶縁層を形成することと、
前記ゲッタ材料から前記1つ以上の絶縁層を除去することと、
メンブレンと基板の間に密閉された空洞を形成するように、前記メンブレンを前記基板に接合すること
と、を含み、
前記密閉された空洞内に位置する
とともに前記密閉された空洞に露出
する面は、
前記ゲッタ材料を含
む、方法。
【請求項2】
前記
密閉された空洞に露出
する面は、前記基板の上面を備える、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ゲッタ材料は、前
記底部電極と同じ材料を備える、請求項1の方法。
【請求項4】
前記ゲッタ材料は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、及びこれらの合金のうち、1つ以上を備える、請求項1の方法。
【請求項5】
前記ゲッタ材料
は、前記底部電極から電気的に隔離されている、請求項
1の方法。
【請求項6】
前記ゲッタ材料は、前記空洞の外周部に配設される、請求項
4の方法。
【請求項7】
前記空洞は、円形形状であり、
前記ゲッタ材料は、前記空洞の外半径に配設される、請求項
4の方法。
【請求項8】
前記ゲッタ材料は、酸素、窒素、アルゴン、又は水蒸気のうち1つ以上を前記空洞から除去するように構成されている、請求項1の方法。
【請求項9】
超音波トランスデューサデバイスであって、
密閉された空洞を介して基板に接合されたメンブレン
であって、前記密閉された空洞内に位置する
とともに前記密閉された空洞に露出
する面
がゲッタ材料を含
む、メンブレンと、
底部電極の上に形成されるが前記ゲッタ材料の上には存在しない1つ以上の絶縁層と、
を備える、デバイス。
【請求項10】
前記
密閉された空洞に露出
する面は、前記基板の上面を備える、請求項9のデバイス。
【請求項11】
前記ゲッタ材料は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、コバルト、ニッケル、及びこれらの合金のうち、1つ以上を備える、請求項9のデバイス。
【請求項12】
前記ゲッタ材料は、前記空洞の前記底部電極から電気的に隔離されている、請求項9のデバイス。
【請求項13】
前記ゲッタ材料は、前記空洞の外周部に配設される、請求項
11のデバイス。
【請求項14】
前記空洞は、円形形状であり、
前記ゲッタ材料は、前記空洞の外半径に配設される、請求項
11のデバイス。
【請求項15】
前記ゲッタ材料は、酸素、窒素、アルゴン、又は水蒸気のうち1つ以上を含む1つ以上のガスを除去するように選択される、請求項9のデバイス。
【請求項16】
前記ゲッタ材料は、前記空洞の前記底部電極と同じ材料を備える、請求項9のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、代理人案件番号B1348.70103US00を付され「FABRICATION TECHNIQUES AND STRUCTURES FOR GETTERING MATERIALS IN ULTRASONIC TRANSDUCER CAVITIES」と題されて2018年9月28日に提出された米国特許出願第62/738,502号の、米国特許法第119条(e)に規定された利益を請求する。同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002] 本開示は概して微細加工超音波トランスデューサに係り、より具体的には、製作時に超音波トランスデューサの空洞内に存在するゲッタリング材料(gettering material)の製造技術及び関連する構造に関する。
【0003】
[0003] 超音波デバイスは、人間に聞こえる波長よりも高い波長の音波を用いて画像診断及び/又は治療を行うために使用され得る。超音波撮像は、例えば病気の原因を見つけるため又は病理を排除するべく、内部の軟組織体構造を見るために使用され得る。超音波のパルスが(例えばプローブを用いることによって)組織内に伝達されると、音波が組織から反射され、異なる組織は様々な程度の音を反射する。これらの反射された音波はその後、記録され、超音波画像としてオペレータに表示される。音信号の強度(振幅)及び波が体内を移動するのにかかる時間は、超音波画像を生成するために用いられる情報を提供する。
【0004】
[0004] 超音波撮像デバイスには、基板の上方に懸垂された可撓性メンブレンを含む微細加工超音波トランスデューサを用いて製造されるものがあり得る。基板の一部とメンブレンとの間には、基板と、空洞と、メンブレンとの組み合わせが可変キャパシタを形成するように、空洞が位置している。適当な電気信号によって作動されると、メンブレンは、振動によって超音波信号を生成する。超音波信号の受信に応答してメンブレンは振動し、その結果、出力電気信号を生成することができる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 一態様において、超音波トランスデューサデバイスを形成する方法は、メンブレンを基板に、両者の間に密閉された空洞を形成するように接合することを含み、密閉された空洞内に位置する露出面はゲッタ材料(getter material)を備え、ゲッタ材料は空洞の底部電極と電気的に隔離されている。
【0006】
[0006] 別の一態様において、超音波トランスデューサデバイスは、基板に接合されたメンブレンを含み、両者の間には密閉された空洞がある。密閉された空洞内に位置する露出面はゲッタ材料を含み、ゲッタ材料は空洞の底部電極と電気的に隔離されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[0007] 本願の様々な態様及び実施形態を、以下の図を参照して説明する。図は必ずしも縮尺に合わせて描かれてはいないことを理解されたい。複数の図に登場する項目は、それらの項目が登場するすべての図において、同一の参照番号によって示される。
【0008】
【
図1】[0008] 一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサの断面図である。
【
図2】[0009] 矢印2-2に沿った、
図1の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図3】[0010] 矢印3-3に沿った、
図1の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図4】[0011] 別の一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサの断面図である。
【
図5】[0012] 矢印5-5に沿った、
図4の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図6】[0013] 矢印6-6に沿った、
図4の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図7】[0014] 別の一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサの断面図である。
【
図8】[0015] 矢印8-8に沿った、
図7の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図9】[0016] 矢印9-9に沿った、
図7の超音波トランスデューサの上面図である。
【
図10】[0017] [0018] CMOS基板上への電極層の形成を図示する(なお、
図10~
図19は、
図1から
図9の超音波トランスデューサの実施形態を形成するための工程フローシーケンスを図示するものである)。
【
図11-1】[0019]
図1の実施形態による、
図10の電極層のパターニングを図示する。
【
図11-2】[0020]
図4の実施形態による、
図10の電極層のパターニングを図示する。
【
図11-3】[0021]
図7の実施形態による、
図10の電極層のパターニングを図示する。
【
図12-1】[0022]
図11-1の構造の上に絶縁層を形成することを図示する。
【
図12-2】[0023]
図11-2の構造の上に絶縁層を形成することを図示する。
【
図12-3】[0024]
図11-3の構造の上に絶縁層を形成することを図示する。
【
図13-1】[0025]
図12-1の構造の絶縁層を平坦化することを図示する。
【
図13-2】[0026]
図12-2の構造の絶縁層を平坦化することを図示する。
【
図13-3】[0027]
図12-3の構造の絶縁層を平坦化することを図示する。
【
図14】[0028]
図13-1の構造の上に絶縁スタックを形成することを図示する。
【
図15】[0029] 絶縁スタックにおいて空洞を形成することを図示する。
【
図16】[0030] ゲッタ材料として機能する隣接する電極材料を露出させるために絶縁スタックの下部絶縁層の一部を除去することを図示する。
【
図17】[0031]
図16の構造に接合されるシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを図示する。
【
図18】[0032]
図16の構造に接合されたSOIウェーハを図示する。
【
図19】[0033] 微細加工超音波トランスデューサのメンブレンを画成するためにSOIウェーハの一部を除去することを図示する。
【
図20】[0034] 本明細書に記載された工程フローシーケンスのいずれかを用いて形成された例示的な超音波トランスデューサデバイスの上面図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0035] 超音波撮像デバイスにおける使用に適したトランスデューサの1つのタイプが微細加工超音波トランスデューサ(MUT)であって、これは例えば、シリコンから製造することができ、超音波エネルギを送信及び受信するように構成され得る。MUTは、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)及び圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)を含み得る。これらには、例えばより少ない製作コスト及び製造時間、並びに/又は周波数帯域幅の増大など、旧来の超音波トランスデューサ設計に対していくつかの利点がある。CMUTデバイスに関しては、基本的な構造は、剛性の底部電極と可撓性メンブレンの上又は中にある頂部電極とを有する平行平板コンデンサである。したがって、空洞は底部電極と頂部電極との間に画成される。設計(例えば本願の譲受人によって生産されたもの等)によっては、CMUTトランスデューサは、トランスデューサの動作を制御する集積回路に直接集積されてもよい。CMUT超音波デバイスを製作する1つの手法は、相補形金属酸化物半導体(CMOS)基板のような集積回路基板にメンブレン基板を接合するというものである。これは、集積回路のデバイスの損壊を防止するために、十分に低い温度で行われるであろう。
【0010】
[0036] しかしながら、メンブレン基板のCMOS基板への接合にあたっては、水蒸気及び他のガス状副生成物並びに接合の広がりに起因して、ダイ及びウェーハの全体にわたる空洞圧力の差が存在し得る。その結果、例えば崩壊電圧のような、特定のCMUTベースの動作パラメータの望ましくない可変性がもたらされ得ると共に、圧力感度が送信/受信され得る。よって、そのようなトランデューサデバイス内の空洞圧力は、デバイスの製作工程の間も全寿命にわたっても、制御することができるのが望ましい。
【0011】
[0037] ここで
図1を参照すると、一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサ100の断面図が示されている。図示されるように、超音波トランスデューサ100は、基板104(例えばシリコンなどのCMOS基板)の上に形成された下部電極102を含む。CMOS基板104は、CMOS回路、配線層、再配線層、及び絶縁/パッシベーション層を含んでいてもよいが、これらに限定されない。例示的な一実施形態においては、下部電極102に適した材料は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、並びにこれらの合金のうち、1つ以上を含む。
【0012】
[0038]
図1に更に示されるように、下部電極102は、やはり基板104上に形成されている隣接金属領域106とは電気的に隔離されている。したがって、隣接金属領域106の露出部は、空洞形成の際にゲッタ材料として機能し得る。隣接金属領域106は、下部電極102と同一の金属材料から形成されていてもよく、絶縁体材料108(例えば酸化シリコン)によって下部電極102と電気的に隔離されている。更なる例証として、
図2は、
図1の矢印2-2に沿った、下部電極、隣接金属領域106及び絶縁体材料108の、見下ろした図である。超音波トランスデューサ100のこの部分の例示的な幾何学的構造は略円形形状であるが、例えば四角形形状、六角形形状、八角形形状、及び他の多辺形状など、他の構成も考えられることを理解されたい。
【0013】
[0039] 再び
図1を参照すると、下部電極102と隣接金属領域106の一部との上には、絶縁体層(例えば、絶縁体スタック110のような1つ以上の個々の絶縁体層)が形成される。スタック110の一部は、スタック110に接合された可動メンブレン112(例えば、表面が酸化されたドープシリコンデバイス層を有するSOIウェーハ)の支持を提供する。図示される実施形態においては、絶縁体スタック110は、第1の酸化物層114(例えば化学気相蒸着(CVD)酸化シリコン)と、第2の酸化物層116(例えば原子層堆積(ALD)酸化アルミニウム)と、第3の酸化物層118(例えばスパッタ堆積酸化シリコン)と、を含む。第3の酸化物層118の適当なリソグラフィパターニング及びエッチングによって、超音波トランスデューサ100の空洞120が画成され得る。また、第2の酸化物層116が第3の酸化物層118に対してエッチング選択比を有する材料から選ばれる実施形態においては、第2の酸化物層116は、空洞120を画成するように第3の酸化物層118の一部を除去するためのエッチング止めとして機能し得る。
【0014】
[0040] 空洞120を画成する第3の酸化物層のエッチングに加え、第2の酸化物層116及び第1の酸化物層114を貫通する開口122を画成するために別のエッチングが用いられ、それによって金属領域106の一部の上面が露出される。
図3には、
図1の矢印3-3に沿った、第2の酸化物層116の残りの部分と金属領域の露出部分とを図示する、空洞120を見下ろした図が示されている。金属領域106の露出部分は、有利なことには、空洞120を密閉するためのメンブレン112の接合動作の際に存在する1つ以上のガスのゲッタ材料として機能する。超音波トランスデューサ100の形成に用いられる追加の例示的な処理動作について、以下に述べる。
【0015】
[0041] ゲッタリング技術及びそれに関連する金属領域106の一部を露出させるための酸化物層116及び114の一部の除去は、いくつかのトランスデューサ電極構造のいずれと併せても実施可能であることが理解されるであろう。例えば、
図4から
図6は、別の一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサ400の断面図及び見下ろした図を示している。説明を容易にするため、各実施形態において同様の要素は同様の参照番号によって指定される。
図4及び(
図4の線5-5に沿った)
図5に特に図示されるように、下部電極102は「ドーナツ」パターンを有するように形成される。すなわち、先に説明した実施形態の電極構造の最も内側の半径に対応する領域が、導電性電極材料ではなく、代わりに、絶縁材料(例えば酸化物108)から形成される。なお、酸化物層116及び114は空洞ジオメトリの外側領域から除去されたのみであるから、
図6の見下ろした図は、
図3の実施形態のものと実質的に類似している。
【0016】
[0042]
図4の電極ジオメトリは、超音波トランスデューサ400の動作の崩壊モードを含め様々な動作モードにおいて採用され得るものであり、ここで、メンブレン112の少なくとも一部は空洞120の底面(例えば、第2の酸化物層116)と物理的に接触する。この場合、下部電極材料の中央部を絶縁体材料に置き換えることは、性能について有意な妥協をせずに超音波トランスデューサ400の寄生容量を低減させるのに役立ち得る。なぜなら、超音波トランスデューサ空洞の底部と物理的に接触する電極の中央部は超音波信号の生成に最小限の寄与を有するからである。このような電極構造の更なる利点は、崩壊の繰り返しによって引き起こされるメンブレン112への負荷の低減であろう。ドーナツ形状の下部電極に関する追加的な情報は、本願の譲受人に譲渡された2018年5月3日提出の米国特許出願第62/666,643号及び本願の譲受人に譲渡された2019年5月2日提出の同時係属中の米国特許出願第16/401,630号において確認されるであろう。両出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0017】
[0043] 次に
図7から
図9を参照すると、更に別の一実施形態による、空洞ゲッタ材料を有する微細加工超音波トランスデューサ700の断面図及び見下ろした図が示されている。ここでも、説明を容易にするため、各実施形態において同様の要素は同様の参照番号によって指定される。
図7及び(
図7の線8-8に沿った)
図8に特に図示されるように、下部電極102は、やはり「ドーナツ」パターンを有するように形成される。しかしながら、
図4から
図6の実施形態とは対照的に、追加的な電極702が空洞領域の中央部に形成される。電極702は、例えば酸化物108によって絶縁されることなどにより、下部電極102と電気的に隔離されるようにパターニングされる。他の実施形態の場合と同様、
図9の見下ろした図は、
図3及び
図6の実施形態のものと実質的に類似している。
【0018】
[0044]
図7に示されるタイプの電極ジオメトリは、先の実施形態に関して説明した利点に加え、メンブレン112と接地との間のバイパス容量にも寄与し得るもので、これはひいてはメンブレン112の電圧のノイズ低減に寄与するであろう。電極702のもう1つの利点は、空洞120の底部に向かってメンブレン112を吸引する電極702によって、超音波トランスデューサ700の低い崩壊電圧に備えるのに役立つということであろう。この電極設計に関する追加的な情報も、先に言及した同時係属中の米国特許出願第62/666,643号及び第16/401,630号において確認できるであろう。
【0019】
[0045] 次に
図10から
図19を全体的に参照すると、上述した超音波トランスデューサの実施形態を形成するための例示的な工程フローシーケンスが示されている。
図10において、電極層1000が、例えばシリコン基板のようなCMOS基板104の上に形成される。ここでも、CMOS基板104は、CMOS回路、配線層、再配線層、及び絶縁/パッシベーション層を含んでいてもよいが、これらに限定されない。やはり先に言及したように、電極層1000に適した材料は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、並びにこれらの合金のうち、1つ以上を含む。
【0020】
[0046] 所望される具体的な下部電極パターンに応じて、工程は
図11-1,
図11-2又は
図11-3のいずれかに進むであろう。例えば、
図11-1においては、フォトリソグラフィ工程を用いて、
図1の電極パターンすなわち下部電極102及び隣接金属領域106を画成するように、電極層1000に開口がパターニング及びエッチングされる。この特定の実施形態においては、下部電極102の中央領域は手つかずのままである。
図11-2は
図4の実施形態の電極層1000のパターニング(すなわち、電極の中央部分が除去されて「ドーナツ」パターンを画成する)を図示しており、
図11-3は
図7の実施形態の電極層1000のパターニング(すなわち、ドーナツパターンの中央部分における追加的な電極702の形成)を図示している。
【0021】
[0047] 電極パターンが画成されると、工程はその後、
図12-1,
図12-2及び
図12-3に図示される絶縁材充填動作に進むであろう。図示されるように、絶縁層1200(例えば酸化シリコン)が、パターニングされた電極材料の上に形成される。絶縁層1200はその後、上述の絶縁体材料108を形成するべく、
図13-1,
図13-2及び
図13-3にそれぞれ示されるように平坦化される。この時点から、図示される電極設計の実施形態の各々の処理は実質的に同一である。したがって、簡潔にするために、残りの図は第1の実施形態(すなわち
図13-1から)の文脈でのみ図示されるが、後続の工程は他の実施形態にも等しく適用されることを理解されたい。
【0022】
[0048] 次に
図14を参照すると、上述した絶縁体スタック110が、
図13-1に図示される下部電極102及び隣接金属領域106のような下部電極層の上に形成される。図示される実施形態においては、絶縁体スタック110は、下部電極102及び隣接金属領域106の上に形成された第1の酸化物層114(例えば、約1~100nmの厚さを有するCVD酸化シリコン)と、第1の酸化物層114の上に形成された第2の酸化物層116(例えば、約5~100nmの厚さを有するALD酸化アルミニウム)と、第2の酸化物層116の上に形成された第3の酸化物層118(例えば、1~300nmの厚さを有するスパッタ堆積酸化シリコン)と、を含む。
【0023】
[0049]
図15において、第2の酸化物層116をエッチング止めとして用いて第3の酸化物層118の一部を除去することにより、空洞120を画成するための第1のリソグラフィパターニング及びエッチング工程が実施される。更なる利点として、空洞1500の底部に存在する第2の酸化物層116の酸化アルミニウム材料は、(後から形成される)頂部メンブレンがデバイス動作時(例えばトランスデューサ動作の崩壊モード時)に第2の酸化物層116と接触する場合に、頂部メンブレンの負荷を低減させるのにも役立ち得る。任意選択的には、酸化アルミニウムの(図示しない)薄層と、ヘプタデカフルオロテトラヒドロデシルトリクロロシラン又はドデシルトリクロロシラン前駆体を有する(図示しない)薄自己組織化単分子膜(SAM)と、がパターニングの後、フォトレジスト除去の前に、第2の酸化物層116上に形成されてもよい。空洞120の底部に形成されたSAMは、先に言及した動作の崩壊モード又は頂部メンブレンが空洞120の底部と物理的に接触する他のモードにおいて空洞120の底部への頂部メンブレンのスティクションを低減させるのに役立ち得る。この時点において、図示される実施形態は単一の空洞を示しているが、任意の適当な数(例えば数百、数千、数万等)の空洞及び対応する電極構造が形成されてもよいことも理解されたい。
【0024】
[0050] 次に
図16を参照すると、空洞120の外周部の隣接金属領域106を露出させるために、第2のリソグラフィパターニング及びエッチング工程が実施される。第2のエッチングは、第2の酸化物層116及び第1の酸化物層114の一部を除去し、ゲッタ材料として機能する隣接金属領域106で止まる。この時点で、
図16に示されるデバイスは、メンブレン接合の用意ができている。第2の酸化物層116及び第1の酸化物層114を貫通して形成される開口の特定のサイズ又はサイズ範囲(及びひいてはその結果もたらされる、露出される隣接金属領域材料の量)は、接合工程にあたってどの程度のガスが消費/ゲッタリングされる必要があるかについての1つ以上の計算に基づいて選択され得る。また、各空洞においてどの程度のゲッタ材料面積が形成されるかの決定は、例えば、接合工程の際にどの程度のガスが放出されるか、デバイス寿命、ゲッタを活性化した後の望ましい空洞内圧力などの要因に依存するであろう。最終的な圧力はゲッタ活性化によって調節されてもよく、これは温度を上げてアニールすることによって達成され得る。実施形態においては、概して、ゲッタ材料が目標の量より少なく露出されるよりも、ゲッタ材料が目標の量より多く露出されるのが好適である。なぜなら、余分のゲッタ材料によってアニール時間が短縮され得るからである。単なる一例として、約0.030cm
2の断面積を有するトランスデューサ空洞の場合、この空洞内における効果的なゲッタリングのためのゲッタ材料面積の範囲の例は、約1×10
-4cm
2から約2.5×10
-4cm
2であろう。実施形態においては、工程変動及び計算されるゲッタ効率を見込んで、ゲッタ材料露出に更に余裕を持たせるのが望ましいであろう。したがって、
図16に示されるこの具体例に関しては、ゲッタ材料(金属領域106)の内半径r
1は約83ミクロン(μm)、ゲッタ材料の外半径r
2は約96ミクロンμm、及びトランスデューサ空洞半径r
3は約98μmである。円形の空洞構成によれば、もたらされるゲッタ面積は約7.3×10
-3cm
2であり、これは、望まれるゲッタリング能力に必要な例示的に計算された範囲のざっと10倍である。ここでも、これらの値は例示的なものに過ぎず、本開示はそのような値及び範囲に限定されないことを理解されたい。
【0025】
[0051]
図17に示されるように、基板1700(例えば絶縁体上シリコン(SOI)基板)は、ハンドル層1702(例えばシリコン層)と、埋め込み酸化物(BOX)層1704と、シリコンデバイス層1706と、を含む。任意選択的には酸化物層1708がハンドル層1702の裏面に提供されてもよい。シリコンデバイス層1706は、単結晶シリコンから形成されてもよく、いくつかの実施形態においてはドープされてもよい。そのようなドーピングは、高度にドープされたP型又は代替的にはN型であってもよく、シリコンデバイス層1706の全体にわたって均一であってもよいし、又は特定の領域における注入によってパターニングされてもよい。また、シリコンデバイス層1706上には酸化物層1710(例えば熱酸化シリコン)が形成される。
【0026】
[0052]
図18に示されるように、基板1700は、基板104及び基板104上に形成された前述の構造に接合される。図示される実施形態においては、層1710の酸化物材料は低温酸化物接合方法(例えば450℃未満)によって酸化物材料118に接合される。これにより、基板104の回路の損壊が防止され得る。上述したように、H
2Oベースの副生成物及び接合の広がりに起因して、ダイ及びウェーハの全体にわたり空洞圧力の差が存在し得る。隣接金属領域106の金属表面は基板1700の接合の間露出されるので、金属は、酸素、窒素、アルゴン、水蒸気等のガスを消費することができ、その結果、超音波デバイスの各空洞120の全体にわたってより均一な圧力がもたらされる。
【0027】
[0053] 接合の後、酸化物層1708及びハンドル層1702は適当な技術(例えばエッチング、研削等)により除去され、それによって上記で述べた
図19に図示されるメンブレン112が画成される。任意選択的には、BOX層1704も、超音波デバイスを製造するべく用いられる最終的な配線、相互接続及び/又は包装のステップを完了するための適当なステップを含み得る追加的な処理の前に、除去されてもよい。
【0028】
[0054]
図20は、本明細書に記載の工程フローシーケンスのいずれかを用いて形成された例示的な超音波トランスデューサデバイス2000の上面図を図示している。図示されるように、トランデューサデバイスは、上述したもののような個々のトランスデューサ100のアレイを含む。
図20に示されるトランスデューサ100の具体的な数は、限定的な意味で解釈されるべきものではなく、例えば数十、数百、数千、数万程度又はそれよりも多くてもよい、所望の撮像用途に適した任意の数を含み得る。上述したゲッタリング技術は、ウェーハ又はダイの全体にわたって均一な空洞圧力を提供する能力を考慮すると、アレイが大きくなるほど特に有益であることが理解されるであろう。
図20は更に、電気信号をトランスデューサ100のメンブレン(上部電極)に分配し得る金属2002の例示的な場所を図示している。
【0029】
[0055] 例示的な実施形態ではメンブレン接合の際にゲッタ材料として使用される同じ底部電極金属材料を図示及び記述しているが、他の非金属又は非金属合金のゲッタ材料も同様に使用され得ることを理解されたい。例えば、黒鉛、リン及び/又は特定の塩類を空洞ゲッタ材料とすることができる。また、ゲッタ材料の具体的な配置に関しては、空洞底部に加えて、他の場所も考えられる。例えば、追加的な工程動作により、メンブレン接合の際のゲッタリングのために空洞側壁及び/又はメンブレン自体(密閉された空洞の頂部)にゲッタ材料を配設させるように層が形成されてもよい。そのような追加的なゲッタ層は、底部電極材料とは異なるレベルにも形成され得る。
【0030】
[0056] 上述の実施形態は、多数の手法のうちいずれでも実現可能である。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせを用いて実現され得る。ソフトウェアで実現されるときには、ソフトウェアコードは、単一の演算装置において提供されるのか又は複数の演算装置の間で分配されるのかに関わらず、任意の適当なプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)又はプロセッサの集合において実行可能である。上述の機能を実施するコンポーネント又はコンポーネントの集合は、一般的に、上述の機能を制御する1つ以上のコントローラと見なされ得ることを理解されたい。1つ以上のコントローラは、専用ハードウェアによって、又は上記で列挙された機能を実施するようにマイクロコード又はソフトウェアを用いてプログラムされた汎用ハードウェア(例えば1つ以上のプロセッサ)によってなど、様々に実現可能である。
【0031】
[0057] 本願の種々の態様は、単独で、組み合わせて、又は先に説明した実施形態においては具体的に述べられていない様々な配置で用いられてもよく、したがって、その適用において、先の説明に記載された又は図面に図示されたコンポーネントの詳細及び配置に限定されない。例えば、ある実施形態において説明された特徴は、他の実施形態において説明された特徴と任意に組み合わせられてもよい。
【0032】
[0058] また、特定の態様は方法として具現化されてもよく、そのうちの一例が提供されている。方法の一部として実施される行為は、任意の適当な順序に並べられてもよい。よって、実施形態は、行為が図示されたものとは異なる順序で実施されるように構築されてもよく、これは、いくつかの行為を、たとえ図示される実施形態においては連続的な行為として示されていても、同時に実施することを含み得る。
【0033】
[0059] 特許請求の範囲における、構成要素を修飾するための「第1」、「第2」、「第3」等のような順序の用語の使用は、それだけではある構成要素の別の構成要素に対する優先、先行若しくは順序、又は方法の行為が実施される時間的順序を何ら暗示するものではなく、構成要素を区別するべく、特定の名前を有する1つの構成要素を(順序の用語の使用を除けば)同じ名前を有する別の1つの構成要素と区別するための標示としてのみ用いられるものである。
【0034】
[0060] 「おおよそ」及び「約」という用語は、いくつかの実施形態においては目標値の±20%以内、いくつかの実施形態においては目標値の±10%以内、いくつかの実施形態においては目標値の±5%以内、及びいくつかの実施形態においては目標値の±2%以内を意味して用いられ得る。「おおよそ」及び「約」という用語は、目標値を含んでもよい。