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特許7385668燃料電池用セパレータのガスケット製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータのガスケット製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0286 20160101AFI20231115BHJP
   H01M 8/028 20160101ALI20231115BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231115BHJP
【FI】
H01M8/0286
H01M8/028
H01M8/10 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021546585
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033026
(87)【国際公開番号】W WO2021054113
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019169232
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】松田 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 茂
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195489(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212775(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188059(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199644(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194573(WO,A1)
【文献】特開2017-054727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0286
H01M 8/028
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有するフレキシブル基材に成形型を用いてガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、
相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、
を備え、
前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記フレキシブル基材から前記成形型を離したとき、前記フレキシブル基材に前記粘着剤が賦形され、
前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する、
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項2】
柔軟性を有するフレキシブル基材に成形型を用いてガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、
相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、
を備え、
前記粘着剤の転写位置は、前記ビードの側面であり、
前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記フレキシブル基材から前記成形型を離したとき、前記フレキシブル基材に前記粘着剤が賦形され、
前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する、
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤の賦形位置は、隣接する二つの前記ビードの間に入り込む前記フレキシブル基材に設けられた突部の側面である、
請求項2に記載の燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項4】
前記フレキシブル基材の突部は、前記成形型に対する前記粘着剤の充填圧による型押しによって成形される、
請求項3に記載の燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項5】
成形型を用いて中間基材にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、
柔軟性を有するフレキシブル基材に対して前記中間基材に賦形された前記粘着剤を転写する中間転写工程と、
相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に転写された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する最終転写工程と、
を備え、
前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記中間基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記中間基材から前記成形型を離したとき、前記中間基材に前記粘着剤が賦形され、
前記中間転写工程では、前記粘着剤に対して、前記中間基材よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記中間基材から前記フレキシブル基材を離したとき、前記粘着剤は、前記フレキシブル基材に粘着したままの状態を維持し、
前記最終転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する、
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤の転写位置は、前記ビードの側面である、
請求項5に記載の燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項7】
前記粘着剤の賦形位置は、前記中間基材に設けられた突部の側面である、
請求項6に記載の燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項8】
上型と下型とを有する成形型の前記下型にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、
相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記下型に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、
を備え、
前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記下型の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記下型から前記成形型を離したとき、前記下型に前記粘着剤が賦形され、
前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記下型よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記下型を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する、
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項9】
上型と下型とを有する成形型の前記下型にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、
相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記下型に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、
を備え、
前記粘着剤の転写位置は、前記ビードの側面であり、
前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記下型の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記下型から前記成形型を離したとき、前記下型に前記粘着剤が賦形され、
前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記下型よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記下型を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する、
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【請求項10】
前記粘着剤の賦形位置は、隣接する二つの前記ビードの間に入り込む前記下型に設けられた突部の側面である、
請求項9に記載の燃料電池用セパレータのガスケット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応ガスを電気化学反応させて発電する燃料電池が急速に普及している。燃料電池は発電効率が高く、環境への影響も少ないことから、好ましいエネルギー源として注目を集めている。
【0003】
燃料電池のうち、固体高分子形のものは、複数枚の燃料電池セルを積層したスタック構造を備えている。個々の燃料電池セルは、膜電極接合体(MEA)を一対のセパレータで挟み込んでいる。膜電極接合体は、電解質膜をアノード電極(陽極)とカソード電極(陰極)とで挟み込んだ構造物であり、それぞれの電極は、触媒層とガス拡散層(GDL)との積層構造を有している。セパレータはガス拡散層に密接し、ガス拡散層との間に水素と酸素の流路を形成する。
【0004】
このような燃料電池セルは、セパレータに形成した流路を利用し、アノード電極には水素を、カソード電極には酸素を供給する。これによって水の電気分解の逆の電気化学反応によって発電を行う。
【0005】
特許文献1の各図に示されているように、膜電極接合体の電解質膜(文献1中、符号55)は端部でシールされている。シールとしては、例えば特許文献1に記載されているようなゴム状弾性体などによって成形されたガスケット(ガスケット本体21、31)が用いられる。ガスケットは、セパレータの面と直交する方向に弾性変形し、一対のセパレータの間で膜電極接合体の電解質膜をシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-143479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電解質膜をシールするガスケットは、射出成型やトランスファー成形によってセパレータに賦形される。このときカーボン製などのような脆性のセパレータは、ガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などによって破壊されてしまう可能性がある。また比較的硬質である金属製のセパレータでも、例えばカーボンコーティングなどが表面に施されている場合には、ガスケット成形時の圧力によってコーティングが損傷してしまう可能性もある。
【0008】
破壊や損傷を生じさせることなくセパレータにガスケットを成形できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法の一態様は、柔軟性を有するフレキシブル基材に成形型を用いてガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、を備え、前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記フレキシブル基材から前記成形型を離したとき、前記フレキシブル基材に前記粘着剤が賦形され、前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する。
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法の別の一態様は、柔軟性を有するフレキシブル基材に成形型を用いてガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、を備え、前記粘着剤の転写位置は、前記ビードの側面であり、前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記フレキシブル基材から前記成形型を離したとき、前記フレキシブル基材に前記粘着剤が賦形され、前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する。
【0010】
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法の別の一態様は、成形型を用いて中間基材にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、柔軟性を有するフレキシブル基材に対して前記中間基材に賦形された前記粘着剤を転写する中間転写工程と、相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記フレキシブル基材に転写された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する最終転写工程と、を備え、前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記中間基材の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記中間基材から前記成形型を離したとき、前記中間基材に前記粘着剤が賦形され、前記中間転写工程では、前記粘着剤に対して、前記中間基材よりも前記フレキシブル基材の方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記中間基材から前記フレキシブル基材を離したとき、前記粘着剤は、前記フレキシブル基材に粘着したままの状態を維持し、前記最終転写工程では、前記粘着剤に対して、前記フレキシブル基材よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記フレキシブル基材を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する。
【0011】
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法のさらに別の一態様は、上型と下型とを有する成形型の前記下型にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記下型に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、を備え、前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記下型の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記下型から前記成形型を離したとき、前記下型に前記粘着剤が賦形され、前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記下型よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記下型を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する。
燃料電池用セパレータのガスケット製造方法のさらに別の一態様は、上型と下型とを有する成形型の前記下型にガスケットとなる粘着剤を賦形する賦形工程と、相手部材を挟んで対面し、前記相手部材に密接してこの相手部材との間に流体の流路を形成するビードを有する一対のセパレータのうちの一方に対して、前記下型に賦形された粘着剤を転写して前記ガスケットを成形する転写工程と、を備え、前記粘着剤の転写位置は、前記ビードの側面であり、前記賦形工程では、前記粘着剤に対して、前記成形型の壁部よりも前記下型の方が強い粘性を発揮するようにされていることで、前記下型から前記成形型を離したとき、前記下型に前記粘着剤が賦形され、前記転写工程では、前記粘着剤に対して、前記下型よりも前記セパレータの方が強い粘着性を発揮するようにされていることで、前記粘着剤から前記下型を剥離したとき、前記粘着剤は、前記セパレータに粘着したままの状態を維持する。
【発明の効果】
【0012】
破壊や損傷を生じさせることなくセパレータにガスケットを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】複数枚の燃料電池セルを積層したスタック構造を概念的に示す模式図。
図2】(A)~(C)は、第1の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図3】(A)~(D)は、第1の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図4】一対のセパレータの間の隙間をシールするシール構造を示す垂直断面図。
図5】(A)~(C)は、第2の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図6】(A)~(D)は、第2の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図7】(A)~(D)は、第3の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図8】(A)~(E)は、第3の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図9】(A)~(C)は、第4の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図10】(A)~(C)は、第4の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の第1段階の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図11】(A)~(D)は、第4の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の第2段階の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図12】(A)~(C)は、第5の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図13】(A)~(D)は、第5の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図14】(A)~(C)は、第6の実施の形態として、粘着剤の賦形に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
図15】(A)~(D)は、第6の実施の形態として、セパレータに対する粘着剤の転写に際して実行される各工程を経時的に示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[燃料電池]
本実施の形態の燃料電池セパレータのガスケット製造方法は、燃料電池に用いられるセパレータに設けるべきガスケットを賦形し、このガスケットをセパレータに転写する方法の一例である。本実施の形態の方法が適用される燃料電池の一例を最初に説明する。
【0015】
図1に示すように、燃料電池1は、燃料電池セル2を複数個積層した積層構造を有している。燃料電池セル2は、燃料電池用の一対のセパレータ11の間にMEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれている膜電極接合体101を設けた電解質膜102を介在させている。このような燃料電池セル2は、冷却面シール201を介して積み重ねられる。図1では燃料電池セル2は二組だけ描かれているが、実際には数百組もの燃料電池セル2が積み重ねられて燃料電池1は構成されている。
【0016】
膜電極接合体101は、電解質膜102の両面中央部分に図示しない電極を設けた構造物である。電極は、電解質膜102上に成膜された触媒層と、触媒層上に成膜されたガス拡散層(GDL)とを有する積層構造を備えている(いずれも図示せず)。このような電極は、電解質膜102の一面側をアノード電極(陽極)とし、その反対面側をカソード電極(陰極)として用いられる。
【0017】
燃料電池用のセパレータ11は、一例としてカーボンなどの樹脂によって成形された平板状の部材である。もっともこのようなカーボン製のような脆性のものに限らず、別の一例として、薄肉のステンレス鋼板などプレス加工可能な平板状の部材をセパレータ11として用いてもよい。
【0018】
セパレータ11は、矩形の平面形状を備え、膜電極接合体101を配置するための配置領域12を設けている。配置領域12から外れた両端側の位置に三つずつ設けられている開口は、発電のために用いられたり、発電によって生じたりする流体を流通させるためのマニホールド13である。マニホールド13を流通させる流体は、燃料ガス(水素)、酸化ガス(酸素)、発電時の電気化学反応によって生成される水や余剰の酸化ガス、冷媒等である。
【0019】
セパレータ11に設けられたマニホールド13に位置を合わされて、電解質膜102にもマニホールド103が設けられている。これらのマニホールド103は、膜電極接合体101から外れた両端側の位置にそれぞれ三つ設けられた開口である。
【0020】
燃料電池1は、マニホールド13、103を利用して、膜電極接合体101を設けた電解質膜102の一面に対面するセパレータ11Aとの間に燃料ガス(水素)を導き、電解質膜102の一面と反対側の面に対面するセパレータ11Bとの間に酸化ガス(酸素)を導く。冷媒として用いられる冷却水は、冷却面シール201によってシールされた二組の燃料電池セル2の間に導かれる。このとき燃料ガス、酸化ガス、及び冷却水は、燃料電池セル2を組み立てる一対のセパレータ11(11A,11B)によって形成されたそれぞれの流路を流れる。
【0021】
一対のセパレータ11は、相手部材としての電解質膜102を挟んで対面し、燃料電池セル2を形成する。セパレータ11は、電解質膜102に密接してこの電解質膜102との間に流体の流路を形成するビード14を備えている。電解質膜102とセパレータ11Aのビード14Aとの間の空間は、燃料ガスの流路を形成する。電解質膜102とセパレータ11Bのビード14Bとの間の空間は、酸化ガスの流路を形成する。一組の燃料電池セル2のセパレータ11Aとこれに重なり合う燃料電池セル2のセパレータ11Bとの間に設けられたそれぞれのビード14A,14Bの間の空間は、冷却水の流路を形成する。
【0022】
燃料電池セル2は、セパレータ11及び膜電極接合体101の外周縁及びマニホールド13、103の周縁に、シール構造を備えている。シール構造は、二組の燃料電池セル2の間に介在する冷却面シール201と、セパレータ11と膜電極接合体101との間に設けられる反応面シール202とを含んでいる。このようなシール構造は、燃料ガス及び余剰の燃料ガスの流路と、酸化ガス及び発電時の電気化学反応によって生成される水の流路と、冷媒である冷却水の流路をそれぞれ独立させ、異なる種類の流体の混合を防止する。
【0023】
シール構造をなす冷却面シール201及び反応面シール202には、セパレータ11に固定されたガスケット203が用いられている。以下、燃料電池セパレータのガスケット製造方法の実施の形態を説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態を図2(A)~(C)及び図3(A)~(D)に基づいて説明する。本実施の形態のガスケット製造方法は、賦形工程と転写工程とを含んでいる。
【0025】
(賦形工程)
賦形工程は、柔軟性を有するフレキシブル基材301、例えば樹脂フィルムにガスケット203となるべき粘着剤211を賦形する工程である。
【0026】
図2(A)に示すように、ベース401の上にフレキシブル基材301を載置し、このフレキシブル基材301を介して成形型411を載置する。成形型411にはゲート412とキャビティ413とが設けられている。キャビティ413はガスケット203を成形するための形状を有している。
【0027】
図2(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。このときの成形手法としては、射出成形又はトランスファー成形が採用される。
【0028】
図2(C)に示すように、ベース401から成形型411を離すことで、フレキシブル基材301の平坦な面に粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0029】
ベース401から成形型411を離すことでフレキシブル基材301に粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりもフレキシブル基材301の方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0030】
腑形工程で用いる粘着剤211としては、例えばブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、天然ゴムなどをベースポリマーとするゴム系粘着剤などを用いることができる。
【0031】
粘着剤211には、添加剤を配合することも可能である。配合することができる添加剤は、例えば架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤などである。
【0032】
(転写工程)
転写工程は、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0033】
図3(A)に示すように、一方のセパレータ11、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。本実施の形態では、セパレータ11Bに設けられたビード14B以外の領域を固定位置としている。
【0034】
本実施の形態の変形例としては、セパレータ11Bに設けられたビード14Bの頂部を固定位置としてもよい。
【0035】
図3(B)に示すように、セパレータ11Bとフレキシブル基材301とを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0036】
図3(C)に示すように、フレキシブル基材301を屈曲させ、粘着剤211から剥離する。このときフレキシブル基材301よりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、粘着剤211からフレキシブル基材301が剥離される。
【0037】
図3(D)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0038】
ガスケット203となる粘着剤211は、架橋してもしなくてもどちらでもよい。粘着剤211の架橋は、フレキシブル基材301に賦形した後、あるいはセパレータ11Bに転写した後に実施する。
【0039】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【0040】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態を図4ないし図6(A)~(D)に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0041】
図4は、本実施の形態のガスケット製造方法の前提となる冷却面シール201及び反応面シール202のシール構造を示している。このシール構造は、セパレータ11のビード14を入れ子状に重なり合せている。一例として、膜電極接合体101を設けた電解質膜102の一面に対面するセパレータ11Aのビード14Aよりも、電解質膜102の一面と反対側の面に対面するセパレータ11Bのビード14Bの方が大きく形成され、ビード14Bは非接触状態でビード14Aに入り込んでいる。
【0042】
一対のセパレータ11のビード14(14A,14B)は、セパレータ11からの立ち上がり角度θを例えば70°程度にしている。このため一対のセパレータ11の互いに対面するビード14(14A,14B)の側壁15(15A,15B)は、セパレータ11に対して傾斜している。
【0043】
このようなシール構造で用いられるガスケット203は、入れ子状に重なり合うことで互いに対面するビード14(14A,14B)同士の側壁15(15A,15B)の間に配置されている。このときセパレータ11からのビード14の立ち上がり角度θは70°程度であることから、ガスケット203は平行四辺形の断面形状をなす。
【0044】
第1の実施の形態と同様に、ガスケット203は粘着剤211によって成形されているので、一対のセパレータ11の互いに対面するビード14(14A,14B)の側壁15(15A,15B)に粘着して固定されている。またガスケット203は、ビード14の側壁15のみならず、側壁15に連絡するセパレータ11の面にも粘着して固定されている。
【0045】
本実施の形態のガスケット製造方法は、以上説明したような冷却面シール201及び反応面シール202のシール構造に適合するガスケット203を生成する。本製造方法は、第1の実施の形態と同様に、賦形工程と転写工程とを含んでいる。
【0046】
(賦形工程)
賦形工程は、柔軟性を有するフレキシブル基材301、例えば樹脂フィルムにガスケット203となるべき粘着剤211を賦形する工程である。
【0047】
図5(A)に示すように、ベース401の上にフレキシブル基材301を載置し、このフレキシブル基材301を介して成形型411を載置する。成形型411にはゲート412とキャビティ413とが設けられている。
【0048】
フレキシブル基材301は、一対のセパレータ11のうちの一方、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに設けられている隣接する二つのビード14Bの間に入り込む突部302を備えている。突部302は、ビード14Bと同様に、フレキシブル基材301から70°程度の立ち上がり角度で立ち上がっている。つまり突部302は、ガスケット203となる粘着剤211が粘着するビード14Bの側壁15Bを模した形状に形成されている。
【0049】
成形型411に設けられたキャビティ413は、フレキシブル基材301の突部302を配置し、ゲート412と連絡する部分にガスケット203を成形するための形状を有している。
【0050】
図5(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。このときの成形手法としては、射出成形又はトランスファー成形が採用される。
【0051】
図5(C)に示すように、ベース401から成形型411を離すことで、突部302に沿うように、フレキシブル基材301に粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0052】
ベース401から成形型411を離すことでフレキシブル基材301に粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりもフレキシブル基材301の方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0053】
(転写工程)
転写工程は、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0054】
図6(A)に示すように、酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。ガスケット203の固定位置は、図4に示すように、燃料ガス(水素)と接する側のセパレータ11Aのビード14Aと入れ子状に重なり合うビード14Bの側壁15Bである。
【0055】
図6(B)に示すように、セパレータ11Bとフレキシブル基材301とを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0056】
図6(C)に示すように、フレキシブル基材301を屈曲させ、粘着剤211から剥離する。このときフレキシブル基材301よりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、粘着剤211からフレキシブル基材301が剥離される。
【0057】
図6(D)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0058】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【0059】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態を図7(A)~(D)及び図8(A)~(E)に基づいて説明する。第2の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0060】
本実施の形態は、予め突部302が設けられたフレキシブル基材301を用いるのではなく、成形型411に対する粘着剤211の材料212の充填圧による型押しによって突部302を形成する一例である。このような製造方法上、フレキシブル基材301としてはより柔軟性の高いフィルム状のものが用いられる。
【0061】
本実施の形態のガスケット製造方法も第2の実施の形態の方法と同様に、図4に示すような冷却面シール201及び反応面シール202のシール構造に適合するガスケット203を生成する。賦形工程と転写工程とを含んでいる点も、第1及び第2の実施の形態のガスケット製造方法と同様である。
【0062】
(賦形工程)
賦形工程は、例えば樹脂フィルムのような柔軟性を有するフレキシブル基材301にガスケット203となるべき粘着剤211を賦形する工程である。本実施の形態では、下型411Lと上型411Uとを用いる。
【0063】
図7(A)に示すように、下型411Lの上にフレキシブル基材301を載置し、このフレキシブル基材301を介して上型411Uを載置する。下型411Lには突部414が設けられ、上型411Uにはゲート412とキャビティ413とが設けられている。
【0064】
下型411Lに設けられた突部414は、第2の実施の形態のフレキシブル基材301に設けられた突部302に相当するもので、ビード14Bと同様に、フレキシブル基材301から70°程度の立ち上がり角度で立ち上がっている。つまり突部302は、ガスケット203となる粘着剤211が粘着するビード14Bの側壁15Bを模した形状に形成されている。
【0065】
上型411Uに設けられたキャビティ413は、下型411Lの突部414を配置し、ゲート412と連絡する部分にガスケット203を成形するための形状を有している。
【0066】
図7(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。
【0067】
図7(C)に示すように、キャビティ413への粘着剤211の材料212の充填圧によって、フレキシブル基材301は突部414の形状に屈曲する。
【0068】
図7(D)に示すように、下型411Lから上型411Uを離すことで、フレキシブル基材301には、突部414に沿うように粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0069】
下型411Lから上型411Uを離すことでフレキシブル基材301に粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりもフレキシブル基材301の方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0070】
(転写工程)
転写工程は、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0071】
図8(A)に示すように、酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、下型411Lごとフレキシブル基材301に賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。ガスケット203の固定位置は、図4に示すように、燃料ガス(水素)と接する側のセパレータ11Aのビード14Aと入れ子状に重なり合うビード14Bの側壁15Bである。
【0072】
図8(B)に示すように、下型411Lに取り付けられたセパレータ11Bとフレキシブル基材301とを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0073】
図8(C)に示すように、フレキシブル基材301から下型411Lを外す。このときセパレータ11Bと粘着剤211との間の粘着力、及び粘着剤211とフレキシブル基材301との間の粘着力よりも、フレキシブル基材301と下型411Lとの間の接合力の方が小さいため、下型411Lはフレキシブル基材301から円滑に外れる。
【0074】
図8(D)に示すように、フレキシブル基材301を屈曲させ、粘着剤211から剥離する。このときフレキシブル基材301よりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、粘着剤211からフレキシブル基材301が剥離される。
【0075】
図8(E)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0076】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【0077】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態を図9(A)~(C)ないし図11(A)~(C)に基づいて説明する。第2の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0078】
本実施の形態は、フレキシブル基材301に粘着剤211を直接賦形するのではなく、中間基材351に賦形し、中間基材351からフレキシブル基材301に転写し、さらにフレキシブル基材301からセパレータ11に転写する。
【0079】
本実施の形態のガスケット製造方法も第2の実施の形態の方法と同様に、図4に示すような冷却面シール201及び反応面シール202のシール構造に適合するガスケット203を生成する。賦形工程と転写工程とを含んでいる点も、第1及び第2の実施の形態のガスケット製造方法と同様である。もっとも前述したとおり、中間基材351からフレキシブル基材301(中間転写工程)、フレキシブル基材301からセパレータ11(最終転写工程)という二段階の転写工程を備えている。
【0080】
(賦形工程)
賦形工程は、中間基材351にガスケット203となるべき粘着剤211を賦形する工程である。中間基材351は柔軟性を有している必要はなく、硬質な材料からなる部材であってもよい。
【0081】
図9(A)に示すように、ベース401の上に中間基材351を載置し、この中間基材351を介して成形型411を載置する。成形型411にはゲート412とキャビティ413とが設けられている。
【0082】
中間基材351は、一対のセパレータ11のうちの一方、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに設けられている隣接する二つのビード14Bの間に入り込む突部352を備えている。突部352は、ビード14Bと同様に、フレキシブル基材301から70°程度の立ち上がり角度で立ち上がっている。つまり突部352は、ガスケット203となる粘着剤211が粘着するビード14Bの側壁15Bを模した形状に形成されている。
【0083】
成形型411に設けられたキャビティ413は、中間基材351に設けられた突部352を配置し、ゲート412と連絡する部分にガスケット203を成形するための形状を有している。
【0084】
図9(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。このときの成形手法としては、射出成形又はトランスファー成形が採用される。
【0085】
図9(C)に示すように、ベース401から成形型411を離すことで、突部352に沿うように、中間基材351に粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0086】
ベース401から成形型411を離すことで中間基材351に粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりも中間基材351の方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0087】
(中間転写工程)
中間転写工程は、中間基材351に賦形された粘着剤211をフレキシブル基材301に転写する工程である。フレキシブル基材301は、第2の実施の形態のような突部302が設けられた形状のものではなく、フラットな形状を有している。
【0088】
図10(A)に示すように、フレキシブル基材301に対して、中間基材351に賦形された粘着剤211を対面させる。
【0089】
図10(B)に示すように、フレキシブル基材301と中間基材351とを近接させ、フレキシブル基材301に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、フレキシブル基材301に粘着する。
【0090】
図10(C)に示すように、中間基材351からフレキシブル基材301を離す。このとき中間基材351よりもフレキシブル基材301の方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はフレキシブル基材301に粘着したままの状態を維持し、粘着剤211からフレキシブル基材301が剥離される。
【0091】
(最終転写工程)
最終転写工程は、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0092】
図11(A)に示すように、酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、フレキシブル基材301に賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。ガスケット203の固定位置は、図4に示すように、燃料ガス(水素)と接する側のセパレータ11Aのビード14Aと入れ子状に重なり合うビード14Bの側壁15Bである。
【0093】
図11(B)に示すように、セパレータ11Bとフレキシブル基材301とを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0094】
図11(C)に示すように、フレキシブル基材301を屈曲させ、粘着剤211から剥離する。このときフレキシブル基材301よりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、粘着剤211からフレキシブル基材301が剥離される。
【0095】
図11(D)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0096】
ガスケット203となる粘着剤211については、架橋してもしなくてもどちらでもよいことは第1~第3の実施の形態と同様である。粘着剤211の架橋は、中間基材351に賦形した後、フレキシブル基材301に転写した後、又はセパレータ11Bに転写した後に実施する。
【0097】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【0098】
本実施の形態の変形例としては、セパレータ11Bのビード14B以外の領域、又はセパレータ11Bに設けられたビード14Bの頂部をセパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置としてもよい。これらの変形例を採用する場合、賦形工程では中間基材351の平坦な面に粘着剤211を賦形し、中間転写工程ではフレキシブル基材301の平坦な面に粘着剤211を中間転写する。
【0099】
これによって最終転写工程では、セパレータ11Bのビード14B以外の領域、又はセパレータ11Bに設けられたビード14Bの頂部に対して、フレキシブル基材301から粘着剤211を転写することができる。
【0100】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態を図12(A)~(C)及び図13(A)~(D)に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0101】
(賦形工程)
本実施の形態の成形型411は、上型411Uと下型411Lとを含んでいる。賦形工程は、ガスケット203となるべき粘着剤211を下型411Lに賦形する工程である。
【0102】
図12(A)に示すように、ベース401の上に成形型411の下型411Lを載置する。成形型411の上型411Uにはゲート412とキャビティ413とが設けられている。キャビティ413はガスケット203を成形するための形状を有している。
【0103】
図12(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。このときの成形手法としては、射出成形又はトランスファー成形が採用される。
【0104】
図12(C)に示すように、ベース401から成形型411を離すことで、下型411Lの平坦な面に粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0105】
ベース401から成形型411を離して下型411Lに粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりも下型411Lの方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0106】
(転写工程)
転写工程は、下型411Lに賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0107】
図13(A)に示すように、一方のセパレータ11、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、下型411Lに賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。本実施の形態では、セパレータ11Bに設けられたビード14B以外の領域を固定位置としている。
【0108】
図13(B)に示すように、セパレータ11Bと下型411Lとを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0109】
図13(C)に示すように、セパレータ11Bを屈曲させ、下型411Lから粘着剤211を剥離する。このとき下型411Lよりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、下型411Lから剥離される。
【0110】
図13(D)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0111】
ガスケット203となる粘着剤211については、架橋してもしなくてもどちらでもよいことは第1~第4の実施の形態と同様である。粘着剤211の架橋は、下型411Lに賦形した後、あるいはセパレータ11Bに転写した後に実施する。
【0112】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【0113】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態を図14(A)~(C)及び図15(A)~(D)に基づいて説明する。第5の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0114】
本実施の形態のガスケット製造方法は、第2の実施の形態の方法と同様に、図4に示すような冷却面シール201及び反応面シール202のシール構造に適合するガスケット203を生成する。第5の実施の形態のガスケット製造方法と同様に、本実施の形態の方法も賦形工程と転写工程とを含んでいる。
【0115】
(賦形工程)
賦形工程は、下型411Lにガスケット203となるべき粘着剤211を賦形する工程である。
【0116】
図14(A)に示すように、ベース401の上に成形型411の下型411Lを載置する。成形型411の上型411Uにはゲート412とキャビティ413とが設けられている。
【0117】
下型411Lは、一対のセパレータ11のうちの一方、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに設けられている隣接する二つのビード14Bの間に入り込む突部414を備えている。突部414は、ビード14Bと同様に、下型411Lから70°程度の立ち上がり角度で立ち上がっている。つまり突部414は、ガスケット203となる粘着剤211が粘着するビード14Bの側壁15Bを模した形状に形成されている。
【0118】
上型411Uに設けられたキャビティ413は、下型411Lの突部414を配置し、ゲート412と連絡する部分にガスケット203を成形するための形状を有している。
【0119】
図14(B)に示すように、ゲート412から粘着剤211の材料212、例えばゴム状弾性材料である未加硫のブチルゴムなどをキャビティ413に導く。このときの成形手法としては、射出成形又はトランスファー成形が採用される。
【0120】
図14(C)に示すように、ベース401から成形型411を離すことで、突部414に沿うように、下型411Lに粘着剤211が賦形される。賦形された粘着剤211は、ガスケット203となる。
【0121】
ベース401から成形型411を離して下型411Lに粘着剤211を賦形できるようにするために、キャビティ413の壁部よりも下型411Lの方が強い粘着性を発揮するようにされている。
【0122】
(転写工程)
転写工程は、下型411Lに賦形された粘着剤211をセパレータ11に転写し、ガスケット203を成形する工程である。
【0123】
図15(A)に示すように、一方のセパレータ11、例えば酸化ガス(酸素)に接する側のセパレータ11Bに対して、下型411Lに賦形された粘着剤211を対面させる。対面させる位置は、セパレータ11Bに対するガスケット203の固定位置である。ガスケット203の固定位置は、図4に示すように、燃料ガス(水素)と接する側のセパレータ11Aのビード14Aと入れ子状に重なり合うビード14Bの側壁15Bである。
【0124】
図15(B)に示すように、セパレータ11Bと下型411Lとを接近させ、ガスケット203を固定すべき位置に粘着剤211を接触させる。粘着剤211は自らの粘着性により、セパレータ11Bに粘着する。
【0125】
図15(C)に示すように、セパレータ11Bを屈曲させ、下型411Lから粘着剤211を剥離する。このとき下型411Lよりもセパレータ11Bの方が強い粘着性を発揮するようにされている。このため粘着剤211はセパレータ11Bに粘着したままの状態を維持し、下型411Lから剥離される。
【0126】
図15(D)に示すように、その結果セパレータ11Bに粘着剤211が固定され、粘着剤211はガスケット203となる。
【0127】
こうしてセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。このときセパレータ11Bにはガスケット成形時の圧力、例えば型押さえによる圧力や射出圧などがかからず、破壊や損傷を生じさせることなくセパレータ11Bにガスケット203を成形することができる。したがってセパレータ11(11A,11B)として、カーボン製のような脆性のものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 燃料電池
2 燃料電池セル
11,11A,11B セパレータ
12 配置領域
13 マニホールド
14,14A,14B ビード
15,15A,15B 側壁
101 膜電極接合体
102 電解質膜(相手部材)
103 マニホールド
201 冷却面シール
202 反応面シール
203 ガスケット
211 粘着剤
212 材料
301 フレキシブル基材
302 突部
351 中間基材
352 突部
401 ベース
411 成形型
411U 上型
411L 下型
412 キャビティ
413 ゲート
414 突部
図1
図2
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