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  • 特許-測定装置、測定方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20231115BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20231115BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231115BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/378
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022038080
(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公開番号】P2023132635
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】加我 正
(72)【発明者】
【氏名】冨永 由騎
(72)【発明者】
【氏名】堀 満央
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-163632(JP,A)
【文献】特開2022-26770(JP,A)
【文献】特開2022-30983(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンバッテリの充放電制御を行う充放電制御部と、
前記リチウムイオンバッテリの放電電圧を計測する電圧計測部と、
前記リチウムイオンバッテリの放電電流を計測する電流計測部と、
前記リチウムイオンバッテリの放電時間を計測する放電時間計測部と、
前記電圧計測部、前記電流計測部及び前記放電時間計測部の計測結果を記憶する記憶部と、
前記リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量を算出する演算部と、
を備え、
前記演算部は、コンピュータが、
前記記憶部から読みだした前記電圧計測部、前記電流計測部、及び前記放電時間計測部の結果に基づいて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、
前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、
前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、
前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、
前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、
負極SEI生成量=A-Zとして算出する、
リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量を測定するための測定装置。
【請求項2】
リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基づいて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、
前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、
前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、
前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、
前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、
負極SEI生成量=A-Zとして算出する、
リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量を測定するための測定方法。
【請求項3】
リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基づいて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、
前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、
前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、
前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、
前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、
負極SEI生成量=A-Zとして算出する、リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量を測定するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリは大容量で小型かつ軽量であるという特長を有し、既にスマートフォンやノートパソコンのようなモバイル機器に広く使用されている。また、近年では、ハイブリッド自動車及び電気自動車用バッテリとしても市販化されるなど、その利用範囲は広がり続けている。そのためにはリチウムイオンバッテリの性能をさらに高める必要があるが、その性能の鍵の一つと考えられているのが電極電解液界面に形成されるSolid Electrolyte Interphase(SEI)被膜である。
リチウムイオンバッテリは、リチウムを含む正極とリチウムを吸蔵する負極とで構成されていて、リチウムが電解液を介して正極から負極へ(又は負極から正極へ)と移動することによって充電(又は放電)が生じる。負極の表面には電解液が分解されることによってSEI被膜と呼ばれる被膜が形成される。このSEI被膜はリチウムイオンを電極中に挿入・脱離をさせる役割を果たしつつ、さらなる電解液の分解を抑制するなどの性能向上に寄与している。一方、SEI被膜が薄すぎると電解液の分解反応が生じたり、逆に厚くなりすぎると電気抵抗が高くなったりと、SEI皮膜がリチウムイオンバッテリの寿命や効率に悪影響を及ぼす場合がある。そのため、負極SEI被膜の生成量を測定することは、リチウムイオンバッテリの劣化を評価する上で重要である。
【0003】
従来、負極SEI被膜の生成量の測定は、リチウムイオンバッテリを解体して誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分析を行い負極SEI被膜中のLi量を測定するなどの解体解析、又はdV/dQ解析を用いて正極・負極Ah-OCPカーブ(放電電力-開回路電位カーブ)を取得し、正極・負極の電位端部の位置変化から負極SEI生成量を測定する非解体解析が行われてきた。
【0004】
特許文献1には、パラメータ推定部、種々の初期値、例えば、正極及び負極の推定容量、二次電池の推定電池充電量、正極及び負極の推定初期充電量、並びに電池温度の初期値をパラメータ記憶部から読み出し、正極容量劣化係数、負極容量劣化係数、負極充電量劣化係数、第1の内部抵抗劣化係数、及び/又は第2の内部抵抗劣化係数を更新することを特徴とする、二次電池の内部状態の推定に関する方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、正極及び負極の容量劣化や副反応によるリチウムの減少を其々検出し、検出した結果に基づき、単電池の劣化を抑制可能なSOC稼働範囲を決定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、正極又は負極における劣化生成物の量を考慮してバッテリの充電率を精度良く推定できる二次電池の状態推定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-109367号公報
【文献】特開2015-230817号公報
【文献】特開2018-084549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところでリチウムイオンバッテリの劣化の主な要因として、負極SEI生成量の増加が知られている。dV/dQ解析を用いて正極及び負極の電位端部の位置変化から負極SEI生成量を算出しようとすると、負極SEI生成量と負極収縮率の両方を合わせたものが算出されてしまい、負極SEI生成量を精度よく取得することができなかった。これまでに、負極SEI生成量の測定に際して負極収縮率を考慮に入れた手法は見当たらない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のための測定装置、測定方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るリチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のための測定装置、測定方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係るリチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のための測定装置は、リチウムイオンバッテリの充放電制御を行う充放電制御部と、前記リチウムイオンバッテリの放電電圧を計測する電圧計測部と、前記リチウムイオンバッテリの放電電流を計測する電流計測部と、前記リチウムイオンバッテリの放電時間を計測する放電時間計測部と、前記電圧計測部、前記電流計測部及び前記放電時間計測部の計測結果を記憶する記憶部と、前記リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量を算出する演算部と、を備え、記演算部は、前記記憶部から読みだした前記電圧計測部、前記電流計測部、及び前記放電時間計測部の結果に基づいて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、負極SEI生成量=A-Zとして算出する、ものである。
【0011】
(2):この発明の一態様によるリチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のための測定方法は、リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基いて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、負極SEI生成量=A-Zとして算出する、ものである。
【0012】
(3):この発明の一態様によるリチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のためのプログラムは、コンピュータが、リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基いて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、負極SEI生成量=A-Zとして算出する、ものである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(3)の態様によれば、負極収縮率を考慮に入れることにより、精度よく負極SEI生成量を測定することができる。その結果、リチウムイオンバッテリの性能をより正確に評価することができるようになり、エネルギー効率の改善及び環境負荷の低減を図ることができる。
本態様は、リチウムイオンバッテリの主要劣化要因のひとつであるSEI生成に伴う正極と負極の相対的な電位の関係のずれを、解体解析をせずに電気化学測定の結果から抽出することができる。そのため、解体解析が必要ない、セル全体の情報が取得できる、SEIの生成による電位ズレを精度良く抽出可能になる等の点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による測定方法を説明するフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態による測定方法においてdV/dQ解析及び充放電曲線フィッティングにより取得した正極及び負極のAh-OCPカーブである。
図4】本発明の一実施形態による測定方法において図3の正極及び負極のAh-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に収縮率を乗じて算出した、収縮率のみ適用した正極及び負極のAh-OCPカーブである。
図5】本発明の一実施形態による測定方法において劣化後の正極及び負極のAh-OCPカーブである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明のリチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定のための測定装置、測定方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
〈測定装置の構成〉
図1は、本発明の一実施形態による測定装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、本実施形態の測定装置1は、充放電制御部10、電流計測部20、電圧計測部30、放電時間計測部40、記憶部50、及び演算部60を備える。このような測定装置1は、充電器CHGから供給される電力を用いてリチウムイオンバッテリBATの充電し、充放電試験を行う。
【0017】
充電器CHGは、測定装置1に対し、リチウムイオンバッテリBATの充電を行うために必要な電力を供給する。
【0018】
充放電制御部10は、リチウムイオンバッテリBATの充放電制御を行う。
記憶部50は、電流計測部20、電圧計測部30、及び放電時間計測部40の計測結果を記憶する。また、記憶部50は、演算部60の演算結果も記憶する。
【0019】
演算部60は、記憶部50に記憶された時系列データを用いて、リチウムイオンバッテリBATの負極SEI生成量を算出する。より詳細には、記憶部50に記憶された時系列データに基いて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、負極SEI生成量=A-Zとして算出する。
【0020】
以上説明した測定装置1の構成要素のうち、充放電制御部10、記憶部50、及び演算部60は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVD又はCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0021】
以上説明した測定装置1は、例えば、電動モータによって走行する移動体に搭載することができる。このような移動体では、電動モータを駆動するための電力を供給するためのリチウムイオンバッテリBATも搭載される。そして、移動体に搭載された測定装置1は、例えば、セルフモニタリングによりリチウムイオンバッテリBATの負極SEI生成量を算出し、リチウムイオンバッテリの性能及び劣化を評価し、修理、交換等の警告を発することができる。なお、リチウムイオンバッテリBATは、移動体に対して着脱自在に装着される、例えば、カセット式等のバッテリパックであってもよい。
【0022】
ここで、上記の移動体は、例えば、リチウムイオンバッテリBATから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行するBEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)であってもよい。または、上記の移動体は、ハイブリッド車両に外部充電機能を持たせたPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。尚、移動体は、例えば、四輪の車両のみならず、鞍乗り型の二輪の車両、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両、アシスト式の自転車、又は、電動船等であってもよい。
【0023】
〈演算部の動作〉
図2は、本発明の一実施形態による測定装置の演算部60の動作例を示すフローチャートである。図3ないし図5は、演算部60により算出されるAh-OCPカーブである。
【0024】
(S11)コンピュータが、リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基づいて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得する(図3)。
(S12)次に、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)が算出される。
(S13)次いで、コンピュータが、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出する(図4)。Ah-OCPカーブは、固定点のみにおいて電極の収縮率の影響を受けない。
(S14)コンピュータが、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出する(図5)。
(S15)コンピュータが、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出する(図5)。
(S16)コンピュータが、負極SEI生成量がA-Zとして算出する。
【0025】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより、
コンピュータが、リチウムイオンバッテリの充放電試験の結果に基いて、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより、初期正極Ah-OCPカーブ及び初期負極Ah-OCPカーブを取得し、前記正極及び前記負極のそれぞれの初期値からの収縮率(%)を算出し、前記初期正極Ah-OCPカーブ及び前記初期負極Ah-OCPカーブから耐久条件で導出した固定点(電位)を基準に前記収縮率(%)を乗じた、収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブ及び負極Ah-OCPカーブを算出し、前記収縮率のみ適用した正極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後正極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれZを算出し、前記収縮率のみ適用した負極Ah-OCPカーブの固定点と、dV/dQカーブ及び充放電曲線フィッティングにより算出した劣化後負極Ah-OCPカーブの固定点のAhのずれAを算出し、負極SEI生成量=A-Zとして算出する、ように構成されている、リチウムイオンバッテリの負極SEI生成量の測定装置。
【0026】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 測定装置
10 充放電制御部
20 電流計測部
30 電圧計測部
40 放電時間計測部
50 記憶部
60 演算部
BAT リチウムイオンバッテリ
CHG 充電器
図1
図2
図3
図4
図5