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特許7385693運転支援装置、車両、運転支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】運転支援装置、車両、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231115BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20231115BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20231115BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/12
B60W30/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022040715
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023135477
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 真也
(72)【発明者】
【氏名】玉置 健
(72)【発明者】
【氏名】小黒 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】守口 順二
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-010938(JP,A)
【文献】特開2006-284414(JP,A)
【文献】特開2019-158778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両の周囲状況を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御手段と
前記車両の走行進路を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定するとともに、前記交差構造物の種類を識別する判定手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記判定手段により前記走行進路に前記交差構造物がある判定され且つ前記交差構造物の種類が識別された場合に、前記交差構造物の種類に応じて、前記検知手段で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記特定手段で特定された前記走行進路を含むエリアの地図情報に基づいて、前記走行進路に前記交差構造物があるか否かを判定する、ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記特定手段で特定された前記走行進路における前記車両と前記交差構造物との間に所定値以上の勾配があるか否かを判定し、
前記制御手段は、前記所定値以上の勾配があると前記判定手段で更に判定された場合に、前記物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記交差構造物の種類として、前記交差構造物が道路であるのか又は線路であるのかを識別し、
前記制御手段は、前記交差構造物の種類が道路である場合より線路である場合の方が前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記車両が前記交差構造物を通過した場合に前記作動条件を元に戻す、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記作動条件は、前記位置関係を示す指標が閾値に達したことを含み、
前記制御手段は、前記検知手段で検知された物標が前記交差構造物であると前記判定手段で判定された場合に、前記物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記閾値を変更する、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転支援は、前記車両の減速支援、および/または、前記車両の減速が必要であることの報知を含む、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記検知手段は、高さ方向の分解能がないセンサで構成される、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記検知手段は、前記車両の前部隅部に設けられている、ことを特徴とする請求項に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記高さ方向の分解能があるセンサで構成されて前記車両の周囲状況を検知する第2検知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第2検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が前記作動条件を満たした場合に前記運転支援を作動させ、
前記制御手段は、前記第2検知手段に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合であっても前記作動条件の変更を行わない、ことを特徴とする請求項又はに記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記第2検知手段は、前記車両の前部中央部に設けられている、ことを特徴とする請求項10に記載の運転支援装置。
【請求項12】
車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両の周囲状況を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御手段と、
前記車両の走行進路を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記作動条件は、前記位置関係を示す指標が閾値に達したことを含み、
前記制御手段は、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合に、前記検知手段で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記閾値を変更する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項13】
車両の運転支援を行う運転支援装置であって、
高さ方向の分解能がないセンサで構成されて前記車両の周囲状況を検知する第1検知手段と、
前記高さ方向の分解能があるセンサで構成されて前記車両の周囲状況を検知する第2検知手段と、
前記第1検知手段および/または前記第2検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に、前記車両の運転支援を作動させる制御手段と、
前記車両の走行進路を特定する特定手段と、
前記特定手段で特定された前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1検知手段で検知された物標に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合に、前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更し、
前記第2検知手段で検知された物標に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合であっても前記作動条件の変更を行わない、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の運転支援装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項15】
車両の運転支援を行う運転支援方法であって、
前記車両の周囲状況を検知する検知工程と、
前記検知工程で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御工程と、
を含み、
前記制御工程では、
前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定するとともに、前記交差構造物の種類を識別し、
前記走行進路に前記交差構造物があると判定され且つ前記交差構造物の種類が識別された場合に、前記交差構造物の種類に応じて、前記検知工程で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する、ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項16】
車両の運転支援を行う運転支援方法であって、
前記車両の周囲状況を検知する検知工程と、
前記検知工程で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御工程と、
を含み、
前記作動条件は、前記位置関係を示す指標が閾値に達したことを含み、
前記制御工程では、
前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定し、
前記走行進路に前記交差構造物があると判定された場合に、前記検知工程で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記閾値を変更する、ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項17】
車両の運転支援を行う運転支援方法であって、
高さ方向の分解能がないセンサで構成された第1検知手段により前記車両の周囲状況を検知する第1検知工程と、
高さ方向の分解能があるセンサで構成された第2検知手段により前記車両の周囲状況を検知する第2検知工程と、
前記第1検知工程および/または前記第2検知工程で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御工程と、
を含み、
前記制御工程では、
前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定し、
前記第1検知工程で検知された物標に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると判定された場合に、前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更し、
前記第2検知工程で検知された物標に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると判定された場合であっても前記作動条件の変更を行わない、ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の運転支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の前方衝突警報システムが開示されている。当該前方衝突警報システムは、前方車両センサにより検出された対象物体が、全地球測位システムにより検知された車両の位置において誤警報のデータベースに蓄積されている対象物体に合致する場合には警報を出力せず、当該データベースに蓄積されている対象物体に合致しない場合には警報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-515227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行道路には、例えば架道橋(跨道橋、歩道橋)や鉄道(例えばモノレール)など、当該走行道路と立体交差する交差構造物が存在する。このような交差構造物に車両が衝突する可能性は非常に低いが、当該交差構造物の下方を通過するための走行道路の形状(勾配など)によっては、当該交差構造物が車両のセンサで検知され、警報等の運転支援が誤作動することがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の運転支援を適切に作動させて車両の安全性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての運転支援装置は、車両の運転支援を行う運転支援装置であって、前記車両の周囲状況を検知する検知手段と、前記検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御手段と前記車両の走行進路を特定する特定手段と、前記特定手段で特定された前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定するとともに、前記交差構造物の種類を識別する判定手段と、を備え、前記制御手段は、前記判定手段により前記走行進路に前記交差構造物がある判定され且つ前記交差構造物の種類が識別された場合に、前記交差構造物の種類に応じて、前記検知手段で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、車両の運転支援を適切に作動させて車両の安全性を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両およびその制御装置のブロック図
図2】各モードで実行される運転支援を示す図
図3】運転支援装置の構成例を示すブロック図
図4】交差構造物としてのモノレールの線路が車両Vの走行道路と立体交差している例を示す図
図5】運転支援処理を示すフローチャート
図6】衝突軽減支援の作動条件の設定方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
本発明に係る一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る車両Vおよびその制御装置CNTのブロック図である。図1では、車両Vの概略が平面図と側面図とで示されている。本実施形態の車両Vは、一例として、セダンタイプの四輪の乗用車であり、例えばパラレル方式のハイブリッド車両でありうる。なお、車両Vは、四輪乗用車に限られるものではなく、鞍乗型車両(自動二輪車、自動三輪車)であってもよいし、トラックやバスなどの大型車両であってもよい。
【0011】
[車両の制御装置の構成]
制御装置CNTは、車両Vの運転支援を含む車両Vの制御を実行する電子回路であるコントローラ1を含む。コントローラ1は、複数のECU(Electronic Control Unit)を備える。ECUは例えば制御装置CNTの機能ごとに設けられる。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスには、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。インタフェースは、入出力インタフェースや通信インタフェースが含まれる。各ECUは、複数のプロセッサ、複数の記憶デバイスおよび複数のインタフェースを備えていてもよい。
【0012】
コントローラ1は、パワーユニット(パワープラント)2を制御することによって車両Vの駆動(加速)を制御する。パワーユニット2は、車両Vの駆動輪を回転させる駆動力を出力する走行駆動部であり、内燃機関、モータおよび自動変速機を含むことができる。モータは、車両Vを加速させる駆動源として利用可能であるとともに、減速時等において発電機としても利用可能である(回生制動)。
【0013】
本実施形態の場合、コントローラ1は、アクセルペダルAPに設けられた操作検知センサ2aやブレーキペダルBPに設けられた操作検知センサ2bにより検知した運転者の運転操作や車速等に対応して、内燃機関やモータの出力を制御したり、自動変速機の変速段を切り替えたりする。なお、自動変速機には車両Vの走行状態を検知するセンサとして、自動変速機の出力軸の回転数を検知する回転数センサ2cが設けられている。車両Vの車速は、回転数センサ2cの検知結果から演算可能である。
【0014】
コントローラ1は、油圧装置3を制御することによって車両Vの制動(減速)を制御する。ブレーキペダルBPに対する運転者の制動操作はブレーキマスタシリンダBMにおいて液圧に変換されて油圧装置3に伝達される。油圧装置3は、ブレーキマスタシリンダBMから伝達された液圧に基づいて、四輪にそれぞれ設けられたブレーキ装置3a(例えばディスクブレーキ装置)に供給する作動油の液圧を制御可能なアクチュエータである。
【0015】
コントローラ1は、油圧装置3が備える電磁弁等の駆動制御を行うことにより、車両Vの制動を制御することができる。また、コントローラ1は、ブレーキ装置3aによる制動力と、パワーユニット2が備えるモータの回生制動による制動力との配分を制御することにより、電動サーボブレーキシステムを構成することもできる。コントローラ1は、制動時にブレーキランプ3bを点灯させてもよい。
【0016】
コントローラ1は、電動パワーステアリング装置4を制御することによって車両Vの操舵を制御する。電動パワーステアリング装置4は、ステアリングホイールSTに対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。電動パワーステアリング装置4は、操舵操作のアシストあるいは前輪を自動操舵するための駆動力(操舵アシストトルクと表記することがある)を発揮するモータを含む駆動ユニット4a、操舵角センサ4b、運転者が負担する操舵トルク(操舵負担トルクと呼び、操舵アシストトルクと区別する。)を検知するトルクセンサ4c等を含む。
【0017】
コントローラ1は、後輪に設けられている電動パーキングブレーキ装置3cを制御する。電動パーキングブレーキ装置3cは、後輪をロックする機構を備える。コントローラ1は電動パーキングブレーキ装置3cによる後輪のロックおよびロック解除を制御可能である。
【0018】
コントローラ1は、車内に情報を報知する情報出力装置5を制御する。情報出力装置5は、例えば、運転者に対して画像により情報を報知する表示装置5a、および/または、運転者に対して音声により情報を報知する音声出力装置5bを含む。表示装置5aは、例えばインストルメントパネル、ステアリングホイールSTに設けられうる。表示装置5aはヘッドアップディスプレイであってもよい。情報出力装置5は、乗員に対して振動や光により情報を報知してもよい。
【0019】
コントローラ1は、入力装置6を介して乗員(例えば運転者)から指示入力を受け付ける。入力装置6は、運転者が操作可能な位置に配置され、例えば、運転者が車両Vに対して指示を行うスイッチ群6a、および/または、方向指示器(ウィンカ)を作動させるウィンカレバー6bを含む。
【0020】
コントローラ1は、車両Vの現在位置および進路(姿勢)を認識・判定する。本実施形態の場合、車両Vには、ジャイロセンサ7aと、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ7bと、通信装置7cとが設けられる。ジャイロセンサ7aは、車両Vの回転運動(ヨーレート)を検知する。GNSSセンサ7bは、車両Vの現在位置を検知する。また、通信装置7cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。本実施形態の場合、コントローラ1は、ジャイロセンサ7aおよびGNSSセンサ7bの検知結果に基づいて車両Vの進路を判定するとともに、当該進路に関する高精度な地図情報を通信装置7cを介してサーバから逐次取得してデータベース7d(記憶デバイス)に格納する。なお、車両Vには、車両Vの速度を検知する速度センサや、車両Vの加速度を検知する加速度センサなど、車両Vの状態を検知するためのセンサが設けられてもよい。
【0021】
コントローラ1は、車両Vに設けられた各種の検知ユニットの検知結果に基づいて車両Vの運転支援を実行する。車両Vには、車両Vの外部(周囲状況)を検知する外界センサである周囲検知ユニット8a~8bと、車内の状況(運転者の状態)を検知する車内センサである車内検知ユニット9a~9bとが設けられている。コントローラ1は、周囲検知ユニット8a~8bの検知結果に基づいて車両Vの周囲状況を把握し、当該周囲状況に応じて運転支援を実行することができる。また、コントローラ1は、車内検知ユニット9a~9bの検知結果に基づいて、運転支援を実行する際に運転者に課される所定の動作義務を運転者が行っているか否かを判定することができる。
【0022】
周囲検知ユニット8aは、車両Vの前方を撮影する撮像装置であり(以下、前方カメラ8aと表記することがある)、例えば車両Vのルーフ前部におけるフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。コントローラ1は、前方カメラ8aで撮影された画像を解析することにより、物標の輪郭抽出や道路上の車線の区画線(白線等)を抽出することができる。
【0023】
周囲検知ユニット8bは、ミリ波レーダであり(以下、レーダ8bと表記することがある)、電波を用いて車両Vの周囲の物標を検知し、物標までの距離や、車両Vに対する物標の方向(方位)を検知(計測)する。図1に示す例では、レーダ8bは5つ設けられており、車両Vの前部の中央に1つ、前部の左右の各隅部に1つずつ、後部の左右の各隅部に1つずつ設けられている。
【0024】
なお、車両Vに設けられる周囲検知ユニットは、上記の構成に限られず、カメラの数およびレーダの数を変更してもよいし、車両Vの周囲の物標を検知するライダ(LIDAR:Light Detection and Ranging)が設けられてもよい。
【0025】
車内検知ユニット9aは、車内を撮影する撮像装置であり(以下、車内カメラ9aと表記することがある)、例えば車内Vのルーフ前部における車室内側に取り付けられる。本実施形態の場合、車内カメラ9aは、運転者(例えば運転者の目や顔)を撮影するドライバーモニタカメラである。コントローラ1は、車内カメラ9aで撮影された画像(運転者の顔画像)を解析することにより、運転者の視線や顔の向きを判定することができる。
【0026】
車内検知ユニット9bは、運転者によるステアリングホイールSTの把持を検知する把持センサであり(以下、把持センサ9bと表記することがある)、例えばステアリングホイールSTの少なくとも一部に設けられる。なお、車内検知ユニットとしては、運転者の操舵トルクを検知するトルクセンサ4cが用いられてもよい。
【0027】
車両Vの運転支援としては、例えば、加減速支援と車線維持支援と車線変更支援とを挙げることができる。加減速支援は、パワーユニット2および油圧装置3を制御することにより、先行車との車間距離を保ちながら所定の車速内で車両Vの加減速を制御する運転支援(ACC:Adaptive Cruise Control)である。車線維持支援は、電動パワーステアリング装置4を制御することにより、車両Vを車線の内側に維持させる運転支援(LKAS:Lane Keeping Assist System)である。車線変更支援とは、電動パワーステアリング装置4を制御することにより、隣接車線へ車両Vの走行車線を変更する運転支援(ALC:Auto Lane Changing、ALCA:Active Lane Change Assist)である。また、コントローラ1で実行される運転支援は、油圧装置3を制御することにより道路上の物標(例えば歩行者や他車両、障害物)との衝突回避を支援する衝突軽減ブレーキ、ABS機能、トラクションコントロール、および/または、車両Vの姿勢制御を含んでもよい。
【0028】
車両Vの運転支援(加減速支援、車線維持支援、車線変更支援)は、手動運転モード、通常支援モードおよび拡張支援モードを含む複数の運転モードで実行される。図2は、本実施形態の手動運転モード、通常支援モードおよび拡張支援モードの各々で実行される運転支援を示している。手動運転モードでは、加減速支援、車線維持支援および車線変更支援が実行されず、運転者によって車両Vの手動運転が行われる。
【0029】
手動運転モードにおいて、加減速支援(ACC)を設定する指示入力が入力装置6(例えばスイッチ群6a)を介して運転者によって行われた場合、加減速支援が開始され、手動運モードから通常支援モードに移行する。通常支援モードでは、加減速支援に加えて、車線維持支援(LKAS)を実行することができる。車線維持支援は、加減速支援の設定中に、車線維持支援を設定する指示入力が入力装置6(例えばスイッチ群6a)を介して運転者によって行われた場合に開始される。加減速支援および車線維持支援は、その設定を解除する指示入力が入力装置6(例えばスイッチ群6a)を介して運転者によって行われた場合に終了する。
【0030】
また、通常支援モードでは、周辺監視やハンドル把持などの所定の動作義務が運転者に課される。車内検知ユニット9bの検知結果に基づいて、運転者が所定の動作義務を行っていないと判定された場合には、所定の動作義務を行うことを促すための通知が情報出力装置5を介して行われる。
【0031】
通常支援モードの実行中に特定道路の走行が開始された場合、高精度な地図情報が通信装置7cによって取得される。そして、高精度な地図情報と前方カメラ8aで撮影された画像とのマッチングが成功した場合、通常支援モードから拡張支援モードに自動的に移行する。特定道路とは、高精度な地図情報の提供を行っている道路であり、例えば高速道路や自動車専用道路などが挙げられる。高精度な地図情報は、特定道路のルートや位置などの通常の情報に加えて、特定道路におけるカーブの有無や曲率、車線の増減、勾配など、特定道路の詳細な形状に関する情報を含む。通常支援モードから拡張支援モードに移行した場合、例えばステアリングホイールSTに設けられた表示装置5aの発光色を変更するなど、情報出力装置5により、拡張支援モードに移行したことを示す通知が行われる。
【0032】
拡張支援モードでは、高精度な地図情報と連携した加減速支援(および車線維持支援)が行われる。例えば、コントローラ1は、高精度な地図情報に基づいて、例えば、カーブの手前や車線が減少する地点の手前で車両Vを減速させたり、カーブの曲率に応じて車両Vの速度を調整したりといった、通常支援モードより高度な加減速支援を行うことができる。なお、拡張支援モードにおいても、通常支援モードと同様に、周辺監視やハンドル把持などの所定の動作義務が運転者に課される。車内検知ユニット9bの検知結果に基づいて、運転者が所定の動作義務を行っていないと判定される場合には、所定の動作義務を行うことを促すための通知が情報出力装置5を介して行われる。
【0033】
また、拡張支援モードでは、車線変更支援を更に実行可能である。本実施形態の場合、車線変更支援は、コントローラ1の判断によって自動的に車線変更を行うシステム主導の車線変更支援(ALC:Auto Lane Changing)と、運転者の指示入力に応じて自動的に車線変更を行う運転者主導の車線変更支援(ALCA:Active Lane Change Assist)とを含む。なお、システム主導の車線変更支援(ALC)および運転者主導の車線変更支援(ALCA)のどちらにおいても、車線変更支援を行う際には、周辺監視やハンドル把持などの所定の動作義務が運転者に課される。
【0034】
システム主導の車線変更支援(ALC)は、拡張支援モードにおいてALCを設定する指示入力が入力装置6(例えばスイッチ群6a)を介して運転者によって行われた場合に開始される。ALCの設定中では、コントローラ1は、高精度な地図情報(車線の増減や分岐などの情報)に基づいて、運転者により事前に設定された目的地に到着するために車線変更を実行する必要があるか否かを逐次判定し、車線変更を実行する必要があると判定した場合に車線変更を自動的に行う。ALCの設定中では、コントローラ1の判定に応じて1回以上の車線変更を実行可能である。ALCは、目的地に到着した場合、或いは特定道路が終了した場合に終了する。ALCは、設定を解除する指示入力が入力装置6(例えばスイッチ群6a)を介して運転者によって行われた場合に終了してもよい。
【0035】
運転者主導の車線変更支援(ALCA)は、運転者の指示入力に応じて1回の車線変更を行うものであり、拡張支援モードにおいてALCAの実行を指示する指示入力が入力装置6(例えばウィンカレバー6b)を介して運転者によって行われた場合に実行される。ALCAでは、運転者は、入力装置6(ウィンカレバー6b)を介して車線変更を要求する方向の指示入力を行うことが可能であり、コントローラ1は、運転者により指示入力された方向の隣接車線への車線変更を自動的に行う。ALCAは、本実施形態では高精度な地図情報に基づいて実行されうるが、それに限られず、高精度な地図情報を用いずに実行されてもよい。また、ALCAは、システム主導の車線変更支援(ALC)の設定中においても実行可能である。
【0036】
[運転支援装置の構成]
以下、本実施形態の運転支援装置10の構成例について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の運転支援装置10の構成例を示すブロック図であり、前述した制御装置CNTから本発明に特に関連する構成・機能を抽出したものである。本実施形態の運転支援装置10は、車両Vの運転支援として衝突軽減支援を行う装置であり、例えば、状況検知部11と、位置検知部12と、情報出力部13と、処理部14とを備えうる。状況検知部11、位置検知部12、情報出力部13および処理部14は、システムバスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0037】
状況検知部11は、図1に示す周囲検知ユニット(前方カメラ8a、レーダ8b)のうち、車両Vの前方における物標(例えば障害物や他車両、歩行者)を検知するように車両Vの前部に設けられたレーダ8bであり、第1状況検知部11aと第2状況検知部11bとを含む。第1状況検知部11aは、車両Vの上下方向(高さ方向)の分解能がないセンサで構成され、例えば図1に示すように車両Vの前部隅部に設けられたレーダ8bである。また、第2状況検知部11bは、車両Vの上下方向(高さ方向)の分解能があるセンサで構成され、例えば図1に示すように車両Vの前部中央部に設けられたレーダ8bである。
【0038】
位置検知部12は、例えば図1に示すGNSSセンサ7bであり、車両Vの現在位置および進行方向を検知する。位置検知部12は、GNSSセンサ7bに加えて、ジャイロセンサ7aを含んでもよい。また、情報出力部13は、例えば図1に示す情報出力装置5であり、表示装置5aおよび/または音声出力装置5bを用いて車両Vの乗員(例えば運転者)に各種情報を報知する。本実施形態の場合、情報出力部13は、進行方向の物標(障害物、他車両)との衝突可能性が高まったことを運転者に警告(報知)するために用いられうる。
【0039】
処理部14は、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含むコンピュータによって構成され、図1に示すコントローラ1(ECU)の一部として機能しうる。記憶デバイスには、車両Vの運転者に運転支援を行うためプログラム(運転支援プログラム)が記憶されており、処理部14は、記憶デバイスに記憶された運転支援プログラムを読み出して実行することができる。本実施形態の処理部14には、支援制御部14aと、特定部14bと、判定部14cとが設けられうる。
【0040】
支援制御部14aは、状況検知部11(第1状況検知部11aおよび/または第2状況検知部11b)で検知された物標と車両Vとの位置関係が作動条件を満たした場合に車両Vの運転支援を作動させる。例えば、支援制御部14aは、状況検知部11で検知された物標と車両Vとの位置関係を示す指標を算出し、当該指標が閾値に達したとの作動条件を満たした場合に運転支援を作動させる。本実施形態の支援制御部14aは、運転支援として、衝突軽減支援を制御する。衝突軽減支援は、衝突警告および/または衝突軽減ブレーキを含む。衝突警告は、状況検知部11で検知された物標との衝突可能性が高まったこと(車両Vの減速が必要であること)を運転者に報知するものである。衝突軽減ブレーキは、状況検知部11で検知された物標との衝突可能性が高まった場合に油圧装置3(ブレーキ装置3a)を制御して車両Vの減速支援を行うものである。また、状況検知部11で検知された物標と車両Vとの位置関係を示す指標としては、衝突余裕時間(TTC;Time-To-Collision)が適用されうる。この場合、支援制御部14aは、衝突余裕時間が閾値に達したとき、即ち、衝突余裕時間が閾値以下になったときに、運転支援としての衝突軽減支援(衝突警告および/または衝突軽減ブレーキ)を作動させる。なお、衝突軽減支援は、前述した複数の運転モード(例えば手動モード、通常支援モード、拡張支援モード)の全てにおいて設定可能な運転支援である。
【0041】
特定部14bは、位置検知部12の検知結果(車両Vの現在位置および進行方向)と地図情報とに基づいて公知のマップマッチング処理を実行することにより、車両Vの走行道路および走行進路を特定する。即ち、特定部14bは、位置検知部12で検知された車両Vの現在位置および進行方向を地図情報に対してマップマッチングを行うことにより、車両Vが走行している道路(走行道路)と、車両Vがこれから走行する進路(走行進路)とを特定する。なお、特定部14bで使用される地図情報は、前述したように特定道路で提供される高精度な地図情報であってもよいが、当該高精度な地図情報に限られるものではない。また、特定部14bで使用される地図情報は、通信装置7cによって取得された地図情報であってもよいし、データベース7dに事前に(既に)格納されている地図情報であってもよい。後述する判定部14cで使用される地図情報についても同様である。
【0042】
判定部14cは、特定部14bで特定された車両Vの走行進路に、車両Vの走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定する。例えば、判定部14cは、特定部14bで特定された車両Vの走行進路と地図情報(車両Vの走行進路を含むエリアの地図情報)とに基づいて、車両Vの走行進路に交差構造物があるか否かを判定する。交差構造物とは、例えば架道橋(跨道橋、歩道橋)および/または鉄道の線路(例えばモノレール)など、車両Vの走行道路の上空(上方)を横切る上空構造物である。図4は、交差構造物を説明するために車両Vのフロントウィンドウから見える景色を示しており、交差構造物としてのモノレール20の線路21が車両Vの走行道路22と立体交差している例を示している。
【0043】
ここで、状況検知部11は、交差構造物の下方を通過するための走行道路の形状(勾配など)によっては、当該交差構造物を物標として検知することがある。このような交差構造物に車両Vが衝突する可能性は非常に低いが、支援制御部14aは、状況検知部11により交差構造物が検知され、且つ、交差構造物と車両Vとの位置関係が作動条件を満たした場合に、衝突軽減支援(衝突警告および/または衝突軽減ブレーキ)を作動させてしまうことがある。つまり、支援制御部14aは、本来であれば衝突軽減支援を作動させる対象にならない物標に対しても、衝突軽減支援を作動させてしまうことがある。特に、第1状況検知部11aは高さ方向の分解能がないため、支援制御部14aは、第1状況検知部11aで交差構造物が物標として検知された場合、当該交差構造物に対して衝突軽減支援を作動させてしまう。
【0044】
そのため、本実施形態の運転支援装置10では、特定部14bで特定された車両Vの走行進路に交差構造物があるか否かを判定する判定部14cが設けられている。そして、支援制御部14aは、車両Vの走行進路に交差構造物があると判定部14cで判定された場合に、第1状況検知部11aで検知された物標に対する運転支援(衝突軽減支援)の作動が制限されるように作動条件を変更する。具体的には、支援制御部14aは、車両Vの走行進路に交差構造物があると判定部14cで判定された場合、車両Vの走行進路に交差構造物がないと判定部14cで判定された場合に比べて衝突軽減支援の作動が制限されるように、第1状況検知部11aで検知された物標に対する衝突軽減支援の作動条件を変更する。これにより、第1状況検知部11aで交差構造物が検知された場合であっても、当該交差構造物に対して衝突軽減支援が誤作動することを低減することができる。なお、本実施形態で用いられる記載「衝突軽減支援の作動を制限する」とは、「衝突軽減支援を作動しにくくする」として理解されてもよいが、衝突回避などの安全性が補償される範囲内で行われることに留意されたい。
【0045】
[運転支援処理]
以下、本実施形態の運転支援処理について説明する。図5は、本実施形態の運転支援処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、運転支援として衝突軽減支援を行うためのフローチャートであり、運転支援装置10において運転支援プログラムが実行されたときに処理部14(支援制御部14a)によって実施されうる。
【0046】
ステップS101において、処理部14は、状況検知部11(第1状況検知部11aおよび/または第2状況検知部11b)で検知された車両Vの周囲状況を示す情報(状況情報)を状況検知部11から取得する。次いで、ステップS102において、処理部14は、ステップS101で取得された状況情報に含まれる物標を特定し、車両Vと当該物標との位置関係を求める。本実施形態の場合、処理部14は、状況検知部11で検知された物標と車両Vとの位置関係を示す指標として、衝突余裕時間(TTC)を求める。
【0047】
ステップS103において、処理部14は、ステップS102で求めた車両Vと物標との位置関係が、運転支援(衝突軽減支援)を作動させるための条件である作動条件を満たすか否かを判断する。例えば、処理部14は、車両Vと物標との位置関係を示す指標として求めた衝突余裕時間が閾値に達したとの作動条件を満たすか否かを判断する。作動条件を満たしていない場合にはステップS101に戻る。一方、作動条件を満たした場合にはステップS104に進み、処理部14は、車両Vの運転支援(衝突軽減支援)を作動させる。本実施形態では、衝突軽減支援として、衝突警告および/または衝突軽減ブレーキが適用される。
【0048】
次に、図5の運転支援処理で用いられる衝突軽減支援の作動条件の設定(変更)について説明する。図6は、衝突軽減支援の作動条件の設定方法を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、運転支援装置10において運転支援プログラムが実行されたときに処理部14によって実施されうる。また、図6のフローチャートは、図5のフローチャートと並行かつ独立して実施されうる。ここで、図6のフローチャートによる衝突軽減支援の作動条件の設定(変更)は、高さ方向の分解能がない第1状況検知部11a(レーダ8b)のみに対して行われ、高さ方向の分解能がある第2状況検知部11bに対しては、車両Vの走行進路に交差構造物があると判定部14cで判定された場合であっても行われないことが、処理部14の処理負荷を低減させる点で好ましい。但し、それに限られるものではなく、図6のフローチャートによる衝突軽減支援の作動条件の設定(変更)が、第2状況検知部11bに対して行われてもよい。
【0049】
ステップS201において、処理部14(特定部14b)は、位置検知部12で検知された車両Vの現在位置および進行方向を示す情報(以下、位置情報と表記することがある)を取得する。次いで、ステップS202において、処理部14(特定部14b)は、ステップS201で取得した位置情報と地図情報とに基づいて公知のマップマッチング処理を実行することにより、車両Vの走行道路および走行進路を特定する。なお、以下では、ステップS202で特定された車両Vの走行道路および走行進路を示す情報を「走行情報」と表記することがある。
【0050】
ステップS203において、処理部14(判定部14c)は、ステップS202で得られた走行情報と地図情報とに基づいて、車両Vの走行進路に、車両Vの走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定する。車両Vの走行進路に交差構造物がないと判定した場合にはステップS204に進み、処理部14は、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第1作動条件に設定する。例えば、作動条件として衝突余裕時間の閾値が適用される場合、第1作動条件としての当該閾値が2秒に設定されうる。一方、車両Vの走行進路に交差構造物があると判定した場合にはステップS205に進む。ここで、第1作動条件は、例えば、車両Vのイグニッションがオンされた場合や、入力装置6(スイッチ群6a)を介して運転者により衝突軽減支援の設定がオンされた場合など、衝突軽減支援を開始するときの初期設定として適用される作動条件である。即ち、これまで第1作動条件が設定されていた場合、本ステップS204では、第1作動条件がそのまま維持されることとなる。
【0051】
ステップS205において、処理部14(判定部14c)は、ステップS202で得られた走行情報とデータベース7dに格納された地図情報とに基づいて、車両Vの走行進路における車両Vと交差構造物との間に所定値以上の勾配(上り勾配、下り勾配)があるか否かを判定する。所定値は、実験やシミュレーション等によって、車両Vが当該勾配を走行している間に第1状況検知部11aから射出された電波が交差構造物に向けられる可能性のある値(角度)に事前に設定されうる。一例として、所定値は、例えば5度(勾配9%)に設定されうる。勾配の上限値としては、30度以下(勾配58%以下)に設定されうる。車両Vの走行進路における車両Vと交差構造物との間に所定値以上の勾配がないと判定した場合にはステップS204に進み、所定値以上の勾配があると判定した場合にはステップS206に進む。
【0052】
ここで、車両Vの走行進路における車両Vと交差構造物との間に所定値以上の勾配がない場合には、第1状況検知部11a(レーダ8b)によって交差構造物が検知される可能性は低い。それに対し、当該勾配がある場合には、第1状況検知部11aから射出された電波が交差構造物に向けられ、第1状況検知部11aによって交差構造物が検知される可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、後述する衝突軽減支援の作動条件の緩和(第2作動条件または第3作動条件への変更)が、第1状況検知部11aによって交差構造物が検知される可能性が比較的高い状況に限って実行されるように、本ステップS205が設けられている。換言すると、衝突軽減支援の作動条件の緩和が、第1状況検知部11aによって交差構造物が検知される可能性が比較的低い状況で実行されないように、本ステップS205が設けられている。なお、勾配の有無に限らずに衝突軽減支援の作動条件を緩和する場合には、本ステップS205を設けなくてもよい。
【0053】
ステップS206において、処理部14(判定部14c)は、地図情報に基づいて交差構造物の種類を識別(判定)する。本実施形態の場合、処理部14は、交差構造物の種類として、交差構造物が、自動車および/または歩行者が通行する道路であるのか、又は、鉄道が通行する線路であるのかを識別する。交差構造物が道路であると識別した場合にはステップS207に進み、処理部14は、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第2作動条件に設定する。本ステップS207では、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第1作動条件から第2作動条件に変更する工程として理解されてもよい。第2作動条件は、第1作動条件より衝突軽減支援の作動が制限されるように設定される。例えば、作動条件として衝突余裕時間の閾値が適用される場合、第2作動条件としての当該閾値は、第1作動条件より衝突軽減支援の作動が制限された1.5秒に設定されうる。
【0054】
一方、ステップS206において交差構造物が線路であると識別した場合にはステップS208に進み、処理部14は、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第3作動条件に設定する。本ステップS208では、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第1作動条件から第3作動条件に変更する工程として理解されてもよい。第3作動条件は、第1作動条件および第2作動条件より衝突軽減支援の作動が制限されるように設定される。例えば、作動条件として衝突余裕時間の閾値が適用される場合、第3作動条件としての当該閾値は、第1作動条件および第2作動条件より衝突軽減支援の作動が制限された1.2秒に設定されうる。
【0055】
このように交差構造物の種類に応じて作動条件を変更することにより、第1状況検知部11aによる交差構造物の検知のし易さ(即ち、交差構造部における電波の反射し易さ)に応じて衝突軽減支援の作動を制限することができる。例えば、図4に示すように、吊り下げ式のモノレール20の線路21が交差構造物として車両Vの走行道路22に立体交差している場合、モノレール20やその線路21は、自動車および/または歩行者が通行する道路に比べて、第1状況検知部11aから射出された電波を反射し易い構造であり、第1状況検知部11aによって検知され易い。つまり、立体構造物が道路である場合より線路である場合の方が衝突軽減支援が誤動作し易い。そのため、本実施形態では、交差構造物が道路である場合より線路である場合の方が衝突軽減支援の作動が制限されるように作動条件(第2作動条件、第3作動条件)を設定することで、衝突軽減支援の誤作動を低減している。
【0056】
ステップS209において、処理部14(特定部14b)は、位置検知部12で検知された車両Vの位置情報を取得する。次いで、ステップS210において、処理部(判定部14c)は、車両Vが交差構造物を通過したか否かを判定する。車両Vが交差構造物を通過していない場合にはステップS209~S210を繰り返し実行する。一方、車両Vが交差構造物を通過した場合にはステップS204に進み、処理部14は、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第1作動条件に設定する。この場合のステップS204は、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を元に戻す工程、即ち、車両Vの衝突軽減支援の作動条件を第2作動条件または第3作動条件から元の第1作動条件に変更する工程として理解されてもよい。
【0057】
ステップS211において、処理部14は、車両Vの衝突軽減支援を終了するか否かを判断する。例えば、処理部14は、運転者により衝突軽減支援の設定がオフされた場合、または、車両Vのイグニッションがオフされた場合に、車両Vの衝突軽減支援を終了すると判断することができる。車両Vの衝突軽減支援を終了しない場合にはステップS201に戻る。
【0058】
上述したように、本実施形態の運転支援装置10は、車両Vの走行進路に交差構造物があるか否かを判定し、車両Vの走行進路に交差構造物があると判定された場合に、第1状況検知部11aで検知された物標に対する運転支援(衝突軽減支援)の作動が制限されるように作動条件を変更する。これにより、第1状況検知部11aで交差構造物が検知された場合であっても、当該交差構造物に対して衝突軽減支援が誤作動することを低減することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
上記実施形態で説明された運転支援プログラムは、ネットワークまたは記憶媒体を介して運転支援装置10に供給され、運転支援装置10のコンピュータ(例えば、処理部14を構成する1以上のプロセッサ)が、このプログラムを読み出して実行することができる。このような態様によっても本発明は実現可能である。
【0060】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の運転支援装置は、
車両(例えばV)の運転支援を行う運転支援装置(例えば10)であって、
前記車両の周囲状況を検知する検知手段(例えば8b、11a)と、
前記検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が作動条件を満たした場合に前記車両の運転支援を作動させる制御手段(例えば14a)と、
前記車両の走行進路を特定する特定手段(例えば14b)と、
前記特定手段で特定された前記車両の走行進路に、前記車両の走行道路と立体交差する交差構造物があるか否かを判定する判定手段(例えば14c)と、
を備え、
前記制御手段は、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合に、前記検知手段で検知された物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する。
この構成によれば、検知手段で交差構造物が検知された場合であっても、当該交差構造物に対して運転支援が誤作動することを低減することができる。
【0061】
2.上記実施形態において、
前記判定手段は、前記特定手段で特定された前記走行進路を含むエリアの地図情報に基づいて、前記走行進路に前記交差構造物があるか否かを判定する。
この構成によれば、車両の走行進路に交差構造物があるか否かを精度よく判定することができる。
【0062】
3.上記実施形態において、
前記判定手段は、前記特定手段で特定された前記走行進路における前記車両と前記交差構造物との間に所定値以上の勾配があるか否かを判定し、
前記制御手段は、前記所定値以上の勾配があると前記判定手段で更に判定された場合に、前記物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する。
この構成によれば、車両の走行進路における車両と交差構造物との間に所定値以上の勾配があり、検知手段によって交差構造物が検知される可能性が比較的高い場合に限って、運転支援の作動条件の緩和を行うことができる。
【0063】
4.上記実施形態において、
前記判定手段は、前記特定手段で特定された前記走行進路にある前記交差構造物の種類を識別し、
前記制御手段は、前記判定手段で識別された前記交差構造物の種類に応じて前記作動条件を変更する。
この構成によれば、検知手段による交差構造物の検知のし易さ(即ち、交差構造部における電波の反射し易さ)に応じて運転支援の作動を適切に制限することができる。
【0064】
5.上記実施形態において、
前記判定手段は、前記交差構造物の種類として、前記交差構造物が道路であるのか又は線路であるのかを識別し、
前記制御手段は、前記交差構造物の種類が道路である場合より線路である場合の方が前記運転支援の作動が制限されるように前記作動条件を変更する。
この構成によれば、交差構造物が道路である場合より線路である場合の方が検知手段によって検知され易いため、それに応じて運転支援の作動を適切に制限することができる。
【0065】
6.上記実施形態において、
前記制御手段は、前記車両が前記交差構造物を通過した場合に前記作動条件を元に戻す。
この構成によれば、車両が交差構造物を通過した後において、運転支援を適切に作動させることができる。
【0066】
7.上記実施形態において、
前記作動条件は、前記位置関係を示す指標が閾値に達したことを含み、
前記制御手段は、前記検知手段で検知された物標が前記交差構造物であると前記判定手段で判定された場合に、前記物標に対する前記運転支援の作動が制限されるように前記閾値を変更する。
この構成によれば、検知手段で検知された物標と車両との位置関係を示す指標に基づいて、運転支援を適切に作動させることができる。
【0067】
8.上記実施形態において、
前記運転支援は、前記車両の減速支援、および/または、前記車両の減速が必要であることの報知を含む。
この構成によれば、運転支援としての衝突軽減支援を適切に作動させることができる。
【0068】
9.上記実施形態において、
前記検知手段は、高さ方向の分解能がないセンサ(例えば8b)で構成される。
この構成によれば、高さ方向の分解能がないセンサによって交差構造物が検知された場合であっても、運転支援を適切に作動させることができる。また、高さ方向の分解能がないセンサを車両に設けることができるため、車両コストの点でも有利になる。
【0069】
10.上記実施形態において、
前記検知手段は、前記車両の前部隅部に設けられている。
この構成によれば、車両の前部隅部に設けられ且つ高さ方向の分解能がないセンサによって交差構造物が検知された場合であっても、運転支援を適切に作動させることができる。
【0070】
11.上記実施形態において、
前記高さ方向の分解能があるセンサ(例えば8b)で構成されて前記車両の周囲状況を検知する第2検知手段(例えば11b)を更に備え、
前記制御手段は、前記第2検知手段で検知された物標と前記車両との位置関係が前記作動条件を満たした場合に前記運転支援を作動させ、
前記制御手段は、前記第2検知手段に対しては、前記走行進路に前記交差構造物があると前記判定手段で判定された場合であっても前記作動条件の変更を行わない。
この構成によれば、運転支援の作動条件を変更するための処理負荷を低減させることができる。
【0071】
12.上記実施形態において、
前記第2検知手段は、前記車両の前部中央部に設けられている。
この構成によれば、車両の前部中央部に設けられたセンサを用いて、運転支援を適切に行うことができる。
【0072】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10:運転支援装置、11:状況検知部、11a:第1状況検知部、11b:第2状況検知部、12:位置検知部、13:情報出力部、14:処理部、14a:支援制御部、14b:特定部、14c:判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6