(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20231115BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20231115BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20231115BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
G01R31/367
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022046656
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】冨永 由騎
(72)【発明者】
【氏名】西本 有里佳
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/261799(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3207998(JP,U)
【文献】特開2015-197363(JP,A)
【文献】特開2012-79582(JP,A)
【文献】特表2008-522350(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104914312(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 31/389
G01R 31/367
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の交流インピーダンスの測定装置であって、インピーダンス演算器と、前記インピーダンス演算器と前記インピーダンス演算器に接続された機器と信号を入出力するための信号入出力インターフェイスと、を備え、前記インピーダンス演算器は次の(S1)~(S5)の処理を実行する測定装置。
(S1)前記インピーダンス演算器は、横軸に周波数f(Hz)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する。ボード線図の作成時に、前記インピーダンス演算器は、インダクタンス成分と拡散成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
(S2)前記インピーダンス演算器は、作成したボード線図上で頂点を抽出して、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする。ただし、測定ノイズと頂点とを見分けるため、棄却するθ値(θ
0)が設定されており、前記インピーダンス演算器は、位相(θ)の値が予め定めたθ
0以上である点から頂点を抽出する。
(S3)前記インピーダンス演算器は、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる。
(S4)前記インピーダンス演算器が、ボード線図上で頂点を抽出しなくなればR/C並列回路数の同定を終了するが、頂点を抽出すれば、前記(S2)及び前記(S3)を繰り返す。ただし、頂点の位相(θ)の大きさは、予め設定した位相(θ)の大きさが予め定めたθ
1以上である。
(S5)前記インピーダンス演算器が、R/C並列回路数の総カウント数を報告する。
【請求項2】
二次電池の交流インピーダンスの測定方法であって、
プロセッサが、横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成するステップS1と、
プロセッサが、作成したボード線図上で頂点を抽出して、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングするステップ2と、
プロセッサが、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、作成したボード線図から減ずるステップS3と、
プロセッサが、ボード線図上で頂点を抽出しなければステップS5に進み、さらに頂点を抽出すれば、ステップS2及びステップS3を繰り返すように処理を選択するステップS4と、
プロセッサが、R/C並列回路数の総カウント数を報告して、R/C並列回路数の同定を終了するステップS5と
を含む、測定方法。
ただし、ステップS1において、ボード線図を作成する際に、インダクタンス成分と拡散成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
また、S2において、測定ノイズと頂点とを見分けるため、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ
0)を予め設定しておき、プロセッサが、θ値がθ
0以上である頂点候補から頂点を抽出する。
さらに、ステップS4において、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ
1)を予め設定しておき、プロセッサが、θ値がθ
1以上である頂点候補を頂点として抽出する。
【請求項3】
二次電池の交流インピーダンスの測定のためのプログラムであって、インピーダンス演算器と前記インピーダンス演算器と前記インピーダンス演算器に接続された機器との間で信号を入出力するための信号入出力インターフェイスと、を備えるインピーダンス測定装置において、前記インピーダンス演算器に搭載されたプロセッサにお以下の(S1)~(S5)の処理を命じるプログラム。
(S1)横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する。
(S2)作成したボード線図上で頂点を抽出し、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする。
(S3)フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減じる。
(S4)ボード線図上で頂点を抽出しなくなればR/C並列回路の総カウント数を報告してR/C並列回路数の同定を終了し、頂点をさらに抽出すれば、(S2)及び(S3)の処理を繰り返す。
(S5)R/C並列回路数の総カウント数を報告する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池が搭載された電動車両の普及が進んでいる。二次電池は、充放電の繰り返しとともに、又は時間の経過とともに劣化する。二次電池の劣化の進行度合いを診断する手法として、交流インピーダンス測定法が公知である。
【0003】
交流インピーダンス測定法では、電極系に印加した交流電圧(電流)に対する応答電流(電圧)を測定し、その比がインピーダンスとなる。その表記法としては、ボード線図とナイキスト図がよく用いられる。ボード線図は、印加した交流電圧の周波数f(Hz)の対数を横軸に、インピーダンスの絶対値|Z|(Ω)の対数と位相差θ(deg)を、それぞれ縦軸にプロットした図である。|Z|は印加した交流電圧と応答電流の振幅の比、θは電圧と電流の位相の差である。ナイキスト図では、横軸にインピーダンスの実数部を、縦軸に虚数部をとりインピーダンスを複素平面上に表記する。実数部Re[Z](抵抗)は、式:Re[Z]=|Z|cosθにより、虚数部Im[Z](リアクタンス)は、式:Im[Z]=|Z|sinθにより、それぞれ計算できる。
【0004】
特許文献1には、複数の二次電池を含む電池モジュールの特性に関する情報を処理する電池情報処理システムであって、前記電池モジュールの交流インピーダンスの測定結果を解析する解析装置と、前記交流インピーダンスを表現する等価回路モデルに含まれる複数の回路定数と、前記特性との間の相関関係が記憶された記憶装置とを備え、前記解析装置は、前記交流インピーダンスの実数成分に関するボード線図である第1の周波数特性図上と、前記交流インピーダンスの虚数成分に関するボード線図である第2の周波数特性図上とに、前記交流インピーダンスの測定結果をプロットし、前記第1の周波数特性図上のプロット結果に対するフィッティング処理により第1の多項式曲線を取得するとともに、前記第2の周波数特性図上のプロット結果に対するフィッティング処理により第2の多項式曲線を取得し、前記第1及び第2の多項式曲線を、前記交流インピーダンスの実数成分と虚数成分とに関するナイキスト図上のインピーダンス曲線に変換し、前記インピーダンス曲線から前記複数の回路定数を抽出し、前記相関関係を参照することによって、抽出された前記複数の回路定数から前記特性を評価する、電池情報処理システムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、複数個の電池セルが直列に接続され、実負荷を高周波域を含む負荷変動を生じる状態で駆動する電池モジュールをリアルタイムで測定監視する電池監視装置に用いられるインピーダンス測定装置であって、前記各セルの電圧波形データ及び電流波形データを離散フーリエ変換し、電圧波形データの離散フーリエ変換結果を電流波形データの離散フーリエ変換結果で除算することによりインピーダンスを演算するDFT演算部と、このDFT演算部で演算されたインピーダンスデータの特徴に基づいて最適な等価回路モデルを選択する回路モデル選択部と、この回路モデル選択部で選択された等価回路モデルにおいて定数フィッティングを行う回路定数推定演算部、とで構成されている電池インピーダンス測定装置が記載され、さらに前記電池インピーダンス測定装置において、前記回路モデル選択部は、等価回路モデルの具体的な構成について、1)ワールブルグ素子の有無、2)LR並列回路の有無、3)RC並列回路の段数の手順で順次決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-191030号公報
【文献】特開2013-029412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
交流インピーダンス測定では、交流の入力信号(電圧又は電流)に対する出力信号(電圧又は電流)の比|Z|と位相遅れθを測定する。入力信号の周波数fを変えることによって異なる律速過程の|Z|及びθが得られる。すなわち、(1)微弱な交流信号を入力する、(2)応答を時間場から周波数場へ高速フーリエ変換する、(3)出力/入力インピーダンス比|Z|及び位相遅れθを算出する(ボード線図)、(4)インピーダンス実部、虚部を複素平面上に表示する(ナイキスト図)、という手順で測定が行われる。インピーダンススペクトルは、横軸に実部(Z’)、縦軸に虚部(Z”)をプロットしたナイキスト図で表現される。二次電池の等価回路として、抵抗RとキャパシタCを並列接続したR/C並列回路が用いられる。二次電池の交流インピーダンス測定においては、測定対象の二次電池の等価回路を決める必要があるが、理想的には、1つのR/C並列回路が、ナイキスト図上で独立した半円弧として現れる。しかし、実際の二次電池では複数の円弧が重なり合って現れるため、正しく分離することが難しい。特に、他と比較して小さい円弧成分は目視確認が難しく、詳細な抵抗成分を見落としていた。すなわち、R/C並列回路で表現される円弧成分が何個あるかを見極めるのが困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、二次電池の交流インピーダンス測定において、等価回路におけるR/C並列回路数をより精確にカウントできる、測定装置、測定方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る測定装置、測定方法、及びプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る測定装置は、インピーダンス演算器と、前記インピーダンス演算器と信号を入出力するための信号入出力インターフェイスと、を備え、前記インピーダンス演算器は次の(S1)~(S5)の処理を実行する測定装置である。
(S1)前記インピーダンス演算器は、横軸に周波数f(Hz)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する。
(S2)前記インピーダンス演算器は、作成したボード線図上で頂点を抽出して、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする。
(S3)前記インピーダンス演算器は、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる。
(S4)前記インピーダンス演算器が、ボード線図上で頂点を抽出しなくなればR/C並列回路数の同定を終了するが、頂点を抽出すれば、前記(S2)及び前記(S3)を繰り返す。ただし、頂点の位相(θ)の大きさは、予め設定した位相(θ)の大きさが予め定めたθ1以上である。
(S5)前記インピーダンス演算器が、R/C並列回路数の総カウント数を報告する。
ただし、(S1)において、前記インピーダンス演算器は、ボード線図を作成する際に、インダクタンス成分と拡散成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
また、(S2)において、測定ノイズと頂点とを見分けるため、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ0)を予め設定しておき、前記インピーダンス演算器は、θ値がθ0以上である頂点候補から頂点を抽出する。
さらに、ステップS4において、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ1)を予め設定しておき、前記インピーダンス演算器は、θ値がθ1以上である頂点候補を頂点として抽出する。
【0010】
(2):この発明の一態様に係る測定方法は、
プロセッサが、横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成するステップS1と、
プロセッサが、作成したボード線図上で頂点を抽出して、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングするステップ2と、
プロセッサが、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、作成したボード線図から減ずるステップS3と、
プロセッサが、ボード線図上で頂点を抽出しなければステップS5に進み、さらに頂点を抽出すれば、ステップS2及びステップS3を繰り返すように処理を選択するステップS4と、
プロセッサが、R/C並列回路数の総カウント数を報告して、R/C並列回路数の同定を終了するステップS5と
を含む。
ただし、ステップS1において、ボード線図を作成する際に、インダクタンス成分と拡散成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
また、S2において、測定ノイズと頂点とを見分けるため、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ0)を予め設定しておき、プロセッサが、θ値がθ0以上である頂点候補から頂点を抽出する。
さらに、ステップS4において、頂点の位相(θ)の大きさの下限値(θ1)を予め設定しておき、プロセッサが、θ値がθ1以上である頂点候補を頂点として抽出する。
【0011】
(3):この発明の一態様に係るプログラムは、
インピーダンス測定装置が備えるインピーダンス演算器に搭載されたプロセッサが、
横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成して、作成したボード線図上で頂点を抽出し、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングし、
フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減じ、
ボード線図上で頂点を抽出しなくなればR/C並列回路の総カウント数を報告してR/C並列回路数の同定を終了し、頂点をさらに抽出すれば、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングし、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減じることを繰り返す、
プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
(1)~(3)の態様によれば、合成インピーダンスを表すボード線図では区別できなかった円弧成分を区別することが可能となり、等価回路におけるR/C並列回路数をより精確にカウントできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】測定装置の使用形態を説明するブロック図である。
【
図2】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図3】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図4】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図5】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図6】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図7】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図8】本実施形態のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図9】従来のインピーダンス測定装置によるR/C等価回路数のカウントを説明するためのボード線図である。
【
図10】本実施形態のインピーダンス測定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の測定装置、測定方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
本発明において、二次電池は特に限定されないが、リチウムイオン二次電池が好ましい態様である。
【0015】
[測定装置]
本実施形態の測定装置100は、後述するインピーダンス演算器80及びインピーダンス演算器80と信号を入出力するための信号入出力インターフェイス(図示せず)を備える。インピーダンス演算器80は、また、交流電圧モニタ60及び交流電流モニタ70からの信号を入力するためのインターフェイスを備える。測定装置100はインピーダンス演算器80からなるものでもよいが、交流電圧モニタ60、交流電流モニタ、電流センサ12、掃引信号発生器50を統合していてもよい。
【0016】
測定装置100の使用形態を示す
図1では、二次電池10と電流センサ12の直列回路の両端には、掃引信号発生器50が接続されている。掃引信号発生器50は、出力周波数が掃引変化する交流信号を、二次電池10と電流センサ12の直列回路に出力する。
【0017】
交流電圧モニタ60は、二次電池10の両端の交流電圧を測定してインピーダンス演算器80に入力する。交流電流モニタ70は、電流センサ12に流れる交流電流を測定してインピーダンス演算器80に入力する。
【0018】
インピーダンス演算器80は、掃引信号発生器50の出力信号の各周波数における交流電圧モニタ60の測定電圧と交流電流モニタ70の測定電流との比である二次電池10の複素インピーダンスを算出する。
【0019】
インピーダンス演算器80におけるR/C並列回路数の同定は以下のように行われる。
(1)インピーダンス演算器80は、横軸に掃引信号発生器50の出力信号の周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する(
図2)。この際、インダクタンス(L)成分と拡散(例えば、CPE)成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
【0020】
(2)次に、インピーダンス演算器80は、作成したボード線図上で極大かつ最大の点(以下「頂点」ともいう。)T1を抽出し、R/C並列回路数として1をカウントする。インピーダンス演算器80は、点T1を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする(
図3)。なお、測定ノイズと極大かつ最大の点とを見分けるため、棄却するθ値(θ
0)が設定されており、インピーダンス演算器80は、位相(θ)の値が予め定めたθ
0以上である点から極大かつ最大の点を抽出する。
【0021】
(3)インピーダンス演算器80は、次に、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる(
図4)。すなわち、インピーダンス演算器80は、同じ周波数(Hz)の位相(θ)の値を引き算する。
【0022】
(4)インピーダンス演算器80が、ボード線図上で極大かつ最大の点(頂点)を抽出しなくなればインピーダンス演算器80によるR/C並列回路数の同定を終了するが、まだ、極大かつ最大の点(頂点)を抽出すれば、(2)及び(3)を繰り返す。
ボード線図上の頂点の高さが予め設定した位相(θ)の大きさが予め定めたθ1(例えば、0.5)以下になったところでR/C並列回路数のカウント増加を止める。
【0023】
(2-2)インピーダンス演算器80は、ボード線図上でさらに頂点T2を抽出し、R/C並列回路数として2をカウントする。頂点T2を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする(
図5)。
【0024】
(3-2)インピーダンス演算器80は、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる(
図6)。
【0025】
(4-2)インピーダンス演算器80が、ボード線図上で極大かつ最大の点(頂点)を抽出しなくなればインピーダンス演算器80によるR/C並列回路数の同定を終了するが、まだ、極大かつ最大の点を抽出すれば、さらに(2)及び(3)を繰り返す。
【0026】
(2-3)インピーダンス演算器80は、ボード線図上で頂点T3を抽出し、R/C並列回路数として3をカウントする。頂点T3を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする(
図7)。
【0027】
(3-3)インピーダンス演算器80は、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる(
図8)。
【0028】
(4-3)インピーダンス演算器80が、ボード線図上で極大かつ最大の点(頂点)を抽出しなくなればインピーダンス演算器80によるR/C並列回路数の同定を終了するが、まだ、極大かつ最大の点を抽出すれば、さらに(2)及び(3)を繰り返す。
図8では、インピーダンス演算器80はさらに頂点を抽出しなくなるので、ここでR/C並列回路数の同定を終了する。
【0029】
(5)インピーダンス演算器80は、R/C並列回路数の総カウント数を報告する。本実施形態のインピーダンス演算器80は、
図2に示すボード線図から3つの頂点を抽出できる。すなわち、本発明のインピーダンス測定装置100は、
図2に示すボード線図から、R/C並列回路数を3と同定することができる。
【0030】
従来のインピーダンス測定装置によるR/C並列回路数の同定結果を
図9に示す。従来のインピーダンス測定装置は、
図2と同一のボード線図から、R/C並列回路数を2と同定することができる。
したがって、本発明のインピーダンス測定装置は、従来、合成されたインピーダンスデータでは抽出できず見落としていた円弧成分(R/C並列回路)を抽出することができ、より精確なインピーダンス測定が可能となる。
【0031】
本実施形態のインピーダンス測定装置は、インピーダンス演算器及び信号入出力インターフェイスを備える。この構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0032】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成し、
作成したボード線図上で極大かつ最大の点(以下「頂点」ともいう。)T1を抽出して、R/C並列回路数として1をカウントし、点T1を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングし、
フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減じ、
ボード線図上で極大かつ最大の点(頂点)を抽出しなくなればR/C並列回路数の同定を終了してR/C並列回路数の総カウント数を報告し、さらに極大かつ最大の点(頂点)を抽出すれば、(ステップS2)及び(ステップS3)を繰り返す、
装置。
【0033】
[測定方法]
本実施形態の測定方法は、以下のステップS1~S5を備える。
本実施形態の測定方法の説明では、
図10に示すフローチャート、
図1の構成図、及び
図2~4のボード線図を参照する。また、交流電圧モニタ60及び交流電流モニタ70は、測定データをインピーダンス演算器80に入力しているものとする。
【0034】
(ステップS1)インピーダンス演算器80に搭載されたプロセッサ(以下、単に「プロセッサ」という。)が、横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する(
図2)。この際、インダクタンス(L)成分と拡散(例えば、CPE)成分のフィッティングを行い、測定結果のボード線図から除去する。
【0035】
(ステップS2)プロセッサが、作成したボード線図上で極大かつ最大の点(以下「頂点」ともいう。)T1を抽出し、R/C並列回路数として+1をカウントする。プロセッサが、点T1を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする(
図3)。なお、測定ノイズと極大かつ最大の点とを見分けるため、棄却するθ値(θ
0)が設定されており、プロセッサは、θ値がθ
0以上である点から極大かつ最大の点(頂点)を抽出する。
【0036】
(ステップS3)プロセッサが、次に、フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減ずる(
図4)。すなわち、プロセッサが、同じ周波数(Hz)の位相(θ)の値を引き算する。
【0037】
(ステップS4)プロセッサが、ボード線図上で極大かつ最大の点(頂点)を抽出しなくなればステップS5に進む。インピーダンス演算器80が、さらに極大かつ最大の点(頂点)を抽出すれば、(ステップS2)及び(ステップS3)を繰り返す。
【0038】
(ステップS5)プロセッサが、R/C並列回路数の総カウント数を報告して、R/C並列回路数の同定を終了する。
【0039】
[プログラム]
本実施形態のプログラムは、上述したインピーダンス演算器に搭載されたプロセッサに以下の(S1)~(S5)の処理を命じるプログラムである。
(S1)横軸に周波数f(Hz)(対数軸)、縦軸に位相θ(度)をプロットしてボード線図を作成する。
(S2)作成したボード線図上で頂点を抽出し、R/C並列回路数として+1をカウントし、前記頂点を中心にR/C並列回路で表すことができる山の形状をフィッティングする。
(S3)フィッティングしたR/C並列回路で表現できるボード線図成分を、測定結果のボード線図から減じる。
(S4)ボード線図上で頂点を抽出しなくなればR/C並列回路の総カウント数を報告してR/C並列回路数の同定を終了し、頂点をさらに抽出すれば、(S2)及び(S3)の処理を繰り返す。
(S5)R/C並列回路数の総カウント数を報告する。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0041】
10…二次電池
12…電流センサ
50…掃引信号発生器
60…交流電圧モニタ
70…交流電流モニタ
80…インピーダンス演算器
100…インピーダンス測定装置