(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】抗BCMA CAR T細胞組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20231115BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231115BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231115BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K9/08 ZNA
A61P7/00
A61P35/02
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N5/0783
(21)【出願番号】P 2022098069
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2019523634の分割
【原出願日】2017-11-03
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス クイグリー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ロス
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/094304(WO,A2)
【文献】Guidance for Industry, Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER),2005年,pp. 1-27
【文献】「新医薬品の臨床評価に関する一般指針について」(薬新薬第四三号)各都道府県衛生主管部局長あて厚生省薬務局新医薬品課長通知,1992年,第1-12頁
【文献】History of Changes for Study: NCT02658929,ClinicalTrials.gov archive[online],2016年08月17日,[令和3年10月5日検索], インターネット <URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02658929?V_6=View#StudyPageTop>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/12-35/55
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫を有する対象を処置するための医薬組成物であって、抗BCMA CARをコードするレンチウイルスで形質導入されたT細胞の集団を含み、前記T細胞の集団は、15.0×10
7細
胞~45.0×10
7細胞±20%の抗BCMA CAR T細胞を含み、ここで、前記抗BCMA CARが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列のアミノ酸22~493を含み、前記T細胞の集団は、CD8
+およびCD4
+T細胞を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗BCMA CARが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗BCMA CARが、配列番号10に記載されるヌクレオチド配列によりコードされたものである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
15.0×10
7~45.0×10
7の抗BCMA CAR T細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記T細胞が、CD4
+CD8
+T細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記細胞がヒト細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
再発性/難治性多発性骨髄腫と診断された対象、または、再発性/難治性多発性骨髄腫を有する対象の処置における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(a)前記多発性骨髄腫が、プロテアソーム阻害薬および免疫調節剤を含む少なくとも3つの治療計画に対して難治性であった;
(b)前記多発性骨髄腫が、1つ以上の治療計画に対して二重難治性であった;または
(c)前記多発性骨髄腫が、ダラツムマブ、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、および/またはカルフィルゾミブに対して難治性であった、
請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記対象が、前
記医薬組成物が投与される以前に自家造血幹細胞移植で治療されていることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記対象が、前
記医薬組成物が投与される以前に、シクロホスファミド300mg/m
2およびフルダラビン30mg/m
2でリンパ枯渇されていることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記細胞が前記対象から得られたものである、請求項8~11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
凍結防止剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)下で、2017年6月2日出願の米国仮出願第62/514,401号および2016年11月4日出願の米国仮出願第62/417,840号の利益を主張し、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、ハードコピーの代わりにテキスト形式で提供され、本明細書に参照により組み込まれる。配列表を含むテキストファイル名は、BLBD_079_02WO_ST25.txtである。テキストファイルは、27KBであり、2017年11月3日に作成され、明細書の出願と同時に、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
背景
【0003】
本発明は、改善された組成物およびB細胞関連疾患を治療するための方法に関する。より具体的に、本発明は、再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するための治療用量の抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を含む改善された組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、所望の抗原に対する抗体系特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特定の抗癌免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。CARは、癌細胞を認識し、直接消す能力を患者自身のT細胞に与える。CAR T細胞技術は、迅速に開発してきたが、さらにその治療可能性を実現化しなければならない。いくつかの課題が、血液悪性腫瘍に対するCAR T細胞の臨床応用に残っている。
【0005】
血液悪性腫瘍に適用されるほとんどのCAR T細胞療法は、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームに関連する。CRSは、養子細胞性免疫療法に対して特異的であり、敗血症性ショック様症状と共に発症し、最終的には患者の死亡をもたらす場合がある。実際には、多くの臨床試験が、CAR T細胞試験におけるCRS関連の死亡のために、FDAによって一時的に停止された。CRSは、迅速で、予測不可能であり得、現在は、CRSの予防および管理に対する合意が存在しない。しかしながら、CRSの一因となる1つの特徴は、治療用細胞用量のCAR T細胞である。
【0006】
CAR T細胞は、インビボで注入後に増殖する能力を有する「生薬」であり、骨髄が存在する。例えば、2011年に公開されたペンシルベニア大学からの影響力の大きい症例研究では、慢性リンパ性白血病(CLL)患者に与えられた最低で1.5×105のCAR T細胞が、経時的にインビボで1000倍以上に増殖した。したがって、CAR T細胞療法は、投与量に関して特有の課題を提示する。CAR T細胞注入投与量、ならびに腫瘍量、有効性、および副作用を含む影響要因に対して一様な合意は存在しない。少量注入は、理想的な治療効果を得ないかもしれないが、代わりに、腫瘍抗原欠失および抗原エスケープを誘導するかもしれない。大量注入およびかなりの腫瘍量は、CRSおよび腫瘍崩壊症候群を増加させることになる。それは、生薬であるため、正確な治療用量を決定することは、予想不可能である。CAR T細胞が動的で、生きている、持続性の薬であるため、薬力学および薬物動態学の従来の薬と体の相互作用の概念は、CAR T細胞療法に容易に適用することはできない。
【0007】
用量選択に対するいくつかの課題としては、これらに限定されないが、相関動物モデルの不足、ファーストインヒューマンの生成物は「先験的」情報が限定されていること、ヒト細胞のインビボ増殖は予想不可能であること、第一世代CAR T生成物から安全データを「借りる」ことにおける制限、関連する生成物(TIL、「同様の」TCR転嫁細胞、「同様の」クラスのCAR T生成物から安全データを推定すること、および組織学的に異なる腫瘍型(複数可)の同じ生成物を用いて安全データを推定することが挙げられる。
【0008】
その結果、CAR T細胞の投薬に対する現在の取り組み方は、同じ適応症に使用するための異なるCARを内部に有するT細胞の中、および異なる適応症に使用するための同じCAR T細胞の中で、治療上有効なCAR T細胞用量を予測するのに十分に成熟していないように思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、概して、改善された抗BCMA CAR T細胞組成物、および再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するための同じ生成物を使用する方法を提供する。
【0010】
様々な実施形態では、組成物は、治療上有効な量の抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を含むことを意図し、治療上有効な量とは、約5.0×107を超える抗BCMA CAR T細胞であり、抗BCMA CARは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
特定の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0012】
ある実施形態では、組成物は、50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液中で配合される。
【0013】
様々な実施形態では、治療上有効な量は、少なくとも約15.0×107の抗BCMA
CAR T細胞である。
【0014】
特定の実施形態では、治療上有効な量は、少なくとも約45.0×107の抗BCMA
CAR T細胞である。
【0015】
いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、少なくとも約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0016】
ある実施形態では、治療上有効な量は、少なくとも約12.0×10の抗BCMA CAR T細胞である。
【0017】
特定の実施形態では、治療上有効な量は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0018】
様々な実施形態では、治療上有効な量は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0019】
いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、約5.0×107の抗BCMA CAR
T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0020】
特定の実施形態では、治療上有効な量は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞である。
【0021】
ある実施形態では、治療上有効な量は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0022】
いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である。
【0023】
様々な実施形態では、治療上有効な量は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞である。
【0024】
特定の実施形態では、抗BCMA CAR T細胞は、抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入される。
【0025】
ある実施形態では、レンチウイルスベクターコピー数(VCN)は、1つの抗BCMA
CAR T細胞当たり約2.0コピーである。
【0026】
ある実施形態では、レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)ベクターである。
【0027】
特定の実施形態では、医薬組成物は、抗BCMA CARをコードするレンチウイルスで形質導入されたT細胞の集団を含むことを意図し、T細胞の集団は、約5.0×107を超える抗BCMA CAR T細胞を含み、抗BCMA CARは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、治療上許容される担体をさらに含む。
【0029】
様々な実施形態では、組成物は、少なくとも約15.0×107の抗BCMA CAR
T細胞を含む。
【0030】
特定の実施形態では、組成物は、少なくとも約45.0×107の抗BCMA CAR
T細胞を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0032】
ある実施形態では、組成物は、少なくとも約12.0×10の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0033】
様々な実施形態では、組成物は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0034】
特定の実施形態では、組成物は、約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、組成物は、約80.0×107抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0036】
ある実施形態では、組成物は、約12.0×10の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0037】
特定の実施形態では、組成物は、約5.0×107抗BCMA CAR T細胞~約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0038】
様々な実施形態では、組成物は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0039】
特定の実施形態では、組成物は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、組成物は、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0041】
様々な実施形態では、組成物は、約15.0×107抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0042】
ある実施形態では、組成物は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物は、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0044】
特定の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞を含む。
【0045】
様々な実施形態では、再発性/難治性多発性骨髄腫と診断された対象を治療する方法が提供され、本明細書で意図される組成物を対象に投与することを含む。
【0046】
特定の実施形態では、再発性/難治性多発性骨髄腫を有する対象を治療する方法が提供され、本明細書で意図される組成物を対象に投与することを含む。
【0047】
ある実施形態では、組成物は、単一用量で投与される。
【0048】
ある実施形態では、組成物は、静脈内投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫は、組成物の投与前に、プロテアソーム阻害薬および免疫調節剤を含む少なくとも3つの治療計画に対して難治性であった。
【0050】
特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、組成物の投与前に、1つ以上の治療計画に対して二重難治性であった。
【0051】
いくつかの実施形態では、対象は、組成物の投与前に、ダラツムマブ、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、および/またはカルフィルゾミブで治療された。
【0052】
ある実施形態では、対象は、組成物の投与前に、自家造血幹細胞移植を受けた。
【0053】
特定の実施形態では、対象は、シクロホスファミド300mg/m2およびフルダラビン30mg/m2でリンパ枯渇された。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
治療上有効な量の抗B細胞成熟抗原(BCMA)キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を含む組成物であって、前記治療上有効な量が、約5.0×107を超える抗BCMA CAR T細胞であり、前記抗BCMA CARが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む、組成物。
(項目2)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液中に配合される、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記治療上有効な量が、少なくとも約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記治療上有効な量が、少なくとも約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記治療上有効な量が、少なくとも約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記治療上有効な量が、少なくとも約12.0×10の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記治療上有効な量が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記治療上有効な量が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記治療上有効な量が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
前記治療上有効な量が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
前記治療上有効な量が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
前記治療上有効な量が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
前記治療上有効な量が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
前記抗BCMA CAR T細胞が、前記抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターで形質導入される、項目1~14のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
前記レンチウイルスベクターコピー数(VCN)が、1つの抗BCMA CAR T細胞当たり約2.0コピーである、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)ベクターである、項目15または項目16に記載の組成物。
(項目18)
抗BCMA CARをコードするレンチウイルスで形質導入されたT細胞の集団を含む医薬組成物であって、T細胞の集団が、約5.0×107を超える抗BCMA CAR T細胞を含み、前記抗BCMA CARが、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む、医薬組成物。
(項目19)
治療上許容される担体をさらに含む、項目18に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記組成物が、少なくとも約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記組成物が、少なくとも約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記組成物が、少なくとも約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記組成物が、少なくとも約12.0×10の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記組成物が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記組成物が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記組成物が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記組成物が、約5.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記組成物が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約45.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記組成物が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約80.0×107の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目30)
前記組成物が、約15.0×107の抗BCMA CAR T細胞~約12.0×108の抗BCMA CAR T細胞を含む、項目18または項目19に記載の医薬組成物。
(項目31)
前記T細胞が、CD8+T細胞を含む、項目18~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目32)
再発性/難治性多発性骨髄腫と診断された対象を治療する方法であって、項目1~31のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目33)
再発性/難治性多発性骨髄腫を有する対象を治療する方法であって、項目1~31のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目34)
前記組成物が、単一用量で投与される、項目32または項目33に記載の方法。
(項目35)
前記組成物が、静脈内投与される、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記多発性骨髄腫が、前記組成物の前記投与前に、プロテアソーム阻害薬および免疫調節剤を含む少なくとも3つの治療計画に対して難治性であった、項目32~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記多発性骨髄腫が、前記組成物の前記投与前に、1つ以上の治療計画に対して二重難治性であった、項目32~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記対象が、前記組成物の前記投与前に、ダラツムマブ、レナリドミド、ポマリドミド、ボルテゾミブ、および/またはカルフィルゾミブで治療された、項目32~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記対象が、前記組成物の前記投与前に、自家造血幹細胞移植を受けた、項目32~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記対象が、シクロホスファミド300mg/m2およびフルダラビン30mg/m2でリンパ枯渇された、項目32~39のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】ネズミB細胞成熟抗原(muBCMA)CAR構成概念の模式図を示す。
【
図2A】形質導入されていないドナーT細胞の同等の培養物と比較した、11個人のドナーのPBMCから製造された抗BCMA CAR T細胞の同程度のレベルの増殖を示す。
【
図2B】11個人のドナーのPBMCから製造された抗BCMA CAR T細胞における、同程度のレベルのレンチウイルス形質導入効率(VCN)を示す。
【
図2C】11個人のドナーのPBMCから製造された抗BCMA CAR T細胞における、フローサイトメトリーによる同程度の抗BCMA CAR発現を示す。
【
図2D】11個人のドナーのPBMCから製造された抗BCMA CAR T細胞が、BCMA発現K562細胞に曝された時の、同程度のレベルのIFNγ放出を示す。
【
図3】抗BCMA CAR T細胞で治療された再発性/難治性多発性骨髄腫患者の経時的な臨床応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
配列番号の簡単な説明
配列番号1~3は、本明細書で意図されるBCMA CARに対する例示的な軽鎖CDR配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号4~6は、本明細書で意図されるBCMA CARに対する例示的な重鎖CDR配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、本明細書で意図されるBCMA CARに対する例示的な軽鎖配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、本明細書で意図されるBCMA CARに対する例示的な重鎖配列のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、本明細書で意図される例示的なBCMA CARのアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、本明細書で意図される例示的なBCMA CARをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号11は、ヒトBCMAのアミノ酸配列を示す。
配列番号12~22は、様々なリンカーのアミノ酸配列を示す。
配列番号23~35は、プロテアーゼ切断部位および自己切断型ポリペプチド切断部位のアミノ酸配列を示す。
配列番号36は、BCMA CARをコードするベクターのポリヌクレオチド配列を示す。
【0056】
A.概説
当技術分野では、特定のCARおよびその標的適応症に関する治療上有効なCAR T細胞用量を予測することに対する重大な課題が存在する。本開示は、概して、改善された抗BCMA CAR T細胞組成物、および再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するための方法に関する。
【0057】
B細胞成熟抗原(BCMA、CD269または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー17;TNFRSF17としても知られている、は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである(例えば、Thompson et al.,J.Exp.Medicine,192(1):129-135,2000、およびMackay
et al.,Annu.Rev.Immunol,21:231-264,2003を参照されたい。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)および増殖誘導リガンド(APRIL)を結合させる(例えば、Mackay et al.,2003およびKalled et al.,Immunological Reviews,204:43-54,2005を参照されたい)。非悪性細胞の中では、BCMAは、ほとんどが形質細胞および成熟B細胞のサブセットにおいて発現されると報告されている(例えば、Laabi et al.,EMBO J.,77(1):3897-3904,1992;Laabi et al.,Nucleic Acids Res.,22(7):1147-1154,1994;Kalled et al.,2005;O’Connor
et al.,J.Exp.Medicine,199(1):91-97,2004;およびNg et al.,J.Immunol.,73(2):807-817,2004を参照されたい。BCMAが欠損しているマウスは、健康であり、正常な数のB細胞を有するが、長寿の形質細胞の生存は、低い(例えば、O’Connor et al.,2004;Xu et al.,Mol.Cell.Biol,21(12):4067-4074,2001;およびSchiemann et al.,Science,293(5537):2 111-21 14,2001を参照されたい)。BCMA
RNAは、多発性骨髄腫細胞において、および他のリンパ腫において広く検出されており、BCMAタンパク質は、数人の治験責任医師によって多発性骨髄腫患者からの形質細胞の表面で検出されている(例えば、Novak et al.,Blood,103(2):689-694,2004;Neri et al.,Clinical Cancer Research,73(19):5903-5909,2007;Bellucci et al.,Blood,105(10):3945-3950,2005;およびMoreaux et al.,Blood,703(8):3148-3157,2004を参照されたい。
【0058】
様々な実施形態では、本明細書で意図される改善された養子細胞治療組成物は、重篤なサイトカイン放出症候群CRSの非存在下で予期せず増殖し、インビボで臨床応答を引き起こす、治療上有効な用量の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書で意図される治療上有効な用量の抗BCMA CAR T細胞を含む改善された組成物は、再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するために使用される。
【0060】
本発明の実施は、特にそうでないと示さない限り、本技術分野内にある化学、生物化学、有機化学、分子生物学、微生物学、遺伝子組み換え技術、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来の方法を使用し、それらの多くは、説明の目的で以下に記述される。そのような技術は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John WileyおよびSons、2008年7月更新);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985);Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins,Eds.,1984);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);HarlowおよびLane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.ShevachおよびW.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびにジャーナルにおける研究論文、例えば、Advances in Immunologyを参照されたい。
【0061】
B.定義
特に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと同様または同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、組成物、方法、および材料の好ましい実施形態が本明細書で説明される。本発明の目的で、次の用語が以下に定義される。
【0062】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」が、論文の文法的な物体の1つを、または2つ以上を(すなわち、少なくとも1つを、または1つ以上を)指すために本明細書で使用される。例として、「ある要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0063】
代替物の使用(例えば、「または」)は、代替物の1つ、両方、またはその任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0064】
用語「および/または」は、代替物の1つまたは両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量、または長さに対して20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%でも変化する数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、用語「約」または「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量、または長さについて、数量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量、または長さの±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の範囲を指す。
【0066】
本明細書にわたって、文脈上別段の要求がない限り、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」は、述べられる工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の包括を明示することが理解され、任意の他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の除外を明示するものではない。「からなる」とは、語句「からなる」に続くものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が、必要であるか、または必須であり、他の要素は存在しなくてもよいということを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙される任意の要素を含み、かつ列挙された要素に対する本開示で特定された活性または活動を妨げないか、またはその一因とならない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が、必要であるか、または必須であるが、列挙された要素の活性または活動に実質的に影響を与える他の要素が存在することを示す。
【0067】
本明細書にわたって、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特色、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書にわたる様々な箇所における前述の語句の登場は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされてもよい。一実施形態における特色の肯定的な記載は、特定の実施形態における特色を除外するための根拠としての役割を果たすこともまた理解される。
【0068】
「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、特に断りのない限り、同じ意味で、および従来の意味、すなわち、アミノ酸の配列として使用される。ポリペプチドは、特定の長さに限定されていなく、例えば、それらは、完全長タンパク質配列、または完全長タンパク質配列の断片を含み、かつポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、および当技術分野で知られている他の修飾を含んでもよく、両方とも自然発生および非自然発生である。様々な実施形態では、本明細書で意図されるCARポリペプチドは、タンパク質のN末端にシグナル(またはリーダー)配列を含み、それは、タンパク質の移転を同時翻訳で、または翻訳後に指示する。本明細書に開示されるCARにおいて有用な適切なシグナル配列の実例としては、これらに限定されないが、IgG1重鎖シグナル配列およびCD8αシグナル配列が挙げられる。ポリペプチドは、任意の多様な周知の組み換えおよび/または合成技術を用いて調製され得る。本明細書で意図されるポリペプチドは、本開示のCAR、または本明細書に開示されるように、CARの1つ以上のアミノ酸から欠失、それへの追加、および/もしくはその置換を有する配列を包含する。特定の実施形態では、用語「ポリペプチド」は、異形、断片、および融合ポリペプチドをさらに含む。
【0069】
「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、本明細書で使用される場合、細胞環境から、ならびに細胞の他の成分との関連からのペプチドまたはポリペプチド分子のインビトロ単離および/または精製を指し、すなわち、それは、インビボ物質とはあまり関連していない。同様に、「単離細胞」は、インビボ組織または臓器から得られた細胞を指し、細胞外マトリックスを実質的に含まない。
【0070】
ポリペプチド異形は、1つ以上の置換、欠失、追加、および/または挿入において自然発生ポリペプチドとは異なってもよい。そのような異形は、自然発生であってもよいか、または例えば、上記のポリペプチド配列のうちの1つ以上を修飾することによって合成的に生成されてもよい。例えば、特定の実施形態では、それは、1つ以上の置換、欠失、追加および/または挿を、CARポリペプチドの結合ドメイン、ヒンジ、TMドメイン、同時刺激シグナル伝達ドメインまたはプライマリシグナル伝達ドメインに導入することによってCARの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましいかもしれない。 好ましくは、本発明のポリペプチドは、それと少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含む。
【0071】
ポリペプチドは、「ポリペプチド断片」を含む。ポリペプチド断片は、ポリペプチドを指し、それは、単量体または多量体であり得、かつ自然発生または組み換え技術によって生成されたポリペプチドのアミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、および/または内部欠失または置換を有する。ある実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約500個のアミノ酸の長さのアミノ酸鎖を含み得る。ある実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450個のアミノ酸の長さであることが認識されるであろう。
【0072】
融合ポリペプチドおよび融合タンパク質は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上のポリペプチド区分を有するポリペプチドを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、または組み換えDNAを指す。ポリヌクレオチドには、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドが含まれる。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書で説明される任意の参照配列(例えば、配列表を参照されたい)と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたは異形を含み、典型的には、異形は、参照配列の少なくとも1つの生物活性を維持する。様々な実例のための実施形態では、本発明は、一部では、発現ベクター、ウイルスベクター、および移転プラスミドを含むポリヌクレオチド、組成物、ならびに同じものを含む細胞を意図する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドを指し、それは、自然発生の状態でそれの側面に位置する配列から精製されていて、例えば、通常は断片に隣接する配列から取り除かれたDNA断片である。「単離ポリヌクレオチド」はまた、相補的DNA(cDNA)、組み換えDNA、または自然には存在しなく、人間の手で作製された他のポリヌクレオチドを指す。
【0075】
発現ベクターに存在する「制御要素」または「調節配列」は、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を実行するベクターのそれらの非翻訳領域、複製の起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列またはKozak配列)イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域、である。そのような要素は、それらの強度および特異性において異なってもよい。使用されるベクター系および宿主によって、ユビキタスプロモーターおよび誘導プロモーターを含む、任意の数の適切な転写および翻訳要素が使用されてもよい。
【0076】
「内因性」制御配列は、ゲノムにおける規定の遺伝子と自然に連結される制御配列である。「外因性」制御配列は、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的手法)によって遺伝子と並ぶように配置され、それにより、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって指示される制御配列である。「異種」制御配列は、遺伝子操作されている細胞とは異なる種からの外因性配列である。
【0077】
用語「プロモーター」は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチドの(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドを開始し、転写する。特定の実施形態では、哺乳類細胞において操作的なプロモーターは、転写が開始される部位から上流に25~30個の塩基に位置づけられるATリッチ領域および/または転写の開始から上流に70~80個の塩基で見出される別の配列、Nが任意のヌクレオチドであってもよいCNCAAT領域を含む。
【0078】
用語「エンハンサー」は、強化された転写を提供することが可能な配列を含有し、場合によっては、他の制御配列に関連するそれらの配向とは無関係に機能することができるDNAの区分を指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサー要素と協力的または追加的に機能することができる。用語「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサーの両方に機能を提供することが可能な配列を含有するDNAの区分を指す。
【0079】
用語「操作可能に連結される」は、説明される成分が、それらの意図する様式でそれらが機能することを可能にする関係にある並置を指す。一実施形態では、用語は、核酸発現制御配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と、第2のポリヌクレオチド配列、例えば、対象のポリヌクレオチドとの間の機能的連結を指し、そこで、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0080】
用語「ベクター」は、本明細書において、他の核酸分子を移転または輸送することが可能な核酸分子を指すために使用される。
【0081】
用語「レンチウイルスベクター」は、主にレンチウイルス由来のLTRを含む、構造的および機能的遺伝要素、またはそれらの一部を含有するウイルスベクターまたはプラスミドを指す。
【0082】
特定の実施形態では、用語「レンチウイルスベクター」、「レンチウイルス発現ベクター」は、レンチウイルス移転プラスミドおよび/または感染性レンチウイルス粒子を指すために使用されてもよい。本明細書において、クローニング部位、プロモーター、調節要素、異種核酸などの要素が言及される場合、それは、これらの要素の配列が、レンチウイルス粒子においてはRNA型で存在し、DNAプラスミドにおいてはDNA型で存在することが理解されるためである。
【0083】
「自己不活性化」(SIN)ベクターは、複製欠損ベクター、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを指し、それは、U3領域として知られる右の(3’)LTRエンハンサープロモーター領域が、1回目のウイルス複製を超えるウイルス転写を防止するように修飾されている(例えば、欠失または置換によって)。自己不活性化は、好ましくは、ベクターDNA、すなわち、ベクターRNAを精鋭するために使用されるDNAの3’LTRのU3領域における欠失の導入において介して達成される。したがって、逆転写の間、この欠失は、プロウイルスDNAの5’LTRに移転される。特定の実施形態では、LTRの転写活性を大いに減少させるか、または完全に消滅させるように十分なU3配列を排除し、それによって、形質導入された細胞における完全長ベクターRNAの生成を大いに減少させるか、または消滅させることが望ましい。HIV系レンチベクターの場合、そのようなベクターは、ベクター力価における有意な減少を伴わずに、LTR TATAボックスの除去(例えば、-418~-18からの欠失)を含む、有意なU3欠失に耐えることが発見されている。
【0084】
C.抗BCMAキメラ抗原受容体
様々な実施形態では、概して、T細胞の細胞毒性をBCMA発現細胞へ方向転換する人工受容体が提供される。これらの遺伝し操作された人工受容体は、本明細書において、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)と称される。
【0085】
特定の実施形態で意図される抗BCMA CARは、シグナルペプチド、抗BCMA scFv、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、4-1BB同時刺激ドメイン、およびCD3ζプライマリシグナル伝達ドメインを含む。
【0086】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、一本鎖ポリペプチドにおいて、いずれかの配向(例えば、VL-VHまたはVH-VL)で存在する。概して、scFvポリペプチドはさらに、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間に含む。
【0087】
「VH」または「VH」は、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。様々な実施形態では、scFvは、配列番号7に記載される軽鎖配列および配列番号8に記載される重鎖配列を含む。
【0088】
軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域を含有する。特定の実施形態では、scFv軽鎖は、配列番号1~3に記載されるCDRL1-3配列を含み、scFv重鎖は、配列番号4~6に記載されるCDRH1-3配列を含む。
【0089】
ある実施形態では、本明細書で意図されるCARは、例えば、適当な間隔および分子の配座のために添加されたリンカー残渣を様々なドメインの間に含んでもよい。特定の実施形態では、リンカーは、以下のアミノ酸配列を含む:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号22)(Cooper et al.,Blood,101(4):1637-1644(2003))。
【0090】
特定の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。
【0091】
「膜貫通ドメイン」は、細胞外結合部分および細胞内シグナル伝達を融合し、CARをT細胞のプラズマ膜に固定するCARの部分である。特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通領域を含む。
【0092】
特定の実施形態では、本明細書で意図されるCARは、「同時刺激シグナル伝達ドメイン」および「プライマリシグナル伝達ドメイン」を含む。本明細書で使用される場合、用語「同時刺激シグナル伝達ドメイン」または「同時刺激ドメイン」は、同時刺激分子の細胞内シグナル伝達を指す。プライマリシグナル伝達ドメインは、TCR複合体のプライマリ活性化を刺激的な方法または阻害的な方法のいずれかで調節する。刺激的な様式で作動するプライマリシグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナリングモチーフを含有してもよい。特定の実施形態では、抗BCMA CARは、CD137同時刺激シグナル伝達ドメインおよびCD3ζプライマリシグナル伝達ドメインを含む。
【0093】
好ましい実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0094】
特定の実施形態では、配列番号9に記載される抗BCMA CARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0095】
特定の実施形態で意図されるポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書の他の箇所で開示されるか、または本技術分野で知られている他のDNA配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、Kozak配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、および部位)、終止コドン、転写終止シグナル、ならびに自己切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープ標識と組み合わされてもよく、それにより、それらの全体の長さが大幅に変化してもよい。そのため、ほとんどいかなる長さのポリヌクレオチドが使用されてもよく、全長が調製の容易性および目的とする組み換えDNAプロトコルでの使用によって制限されることが好ましいことが意図される。
【0096】
特定の実施形態では、本明細書で意図される抗BCMA CARをコードするベクターは、ウイルスベクターであり、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの外因性、内因性、または異種制御配列を含むであろう。
【0097】
特定の実施形態では、ベクターは、本明細書で意図される抗BCMA CARをコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,J Virol.69(2):748-55(1995))を含む。
【0098】
特定の実施形態では、細胞(例えば、T細胞)は、本明細書で意図される抗BCMA CARをコードするレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターで形質導入される。好ましい実施形態では、レンチウイルスベクターは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型を含む)である。特定の好ましい実施形態では、レンチウイルスベクターは、SIN HIV-1ベクターである。
【0099】
D.抗BCMA CAR T細胞
本開示は、特定の実施形態において、抗BCMA CARを含むT細胞、例えば、抗BCMA CAR T細胞を意図する。用語「T細胞」または「Tリンパ球」は、当該技術分野において承認されていて、胸腺細胞、未熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことを目的とする。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)CD4+T細胞、細胞毒性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであり得る。特定の実施形態で使用するための適切なT細胞の他の実例のための集団は、未感作T細胞および記憶T細胞を含む。
【0100】
本発明のT細胞は、自家/自源(「自己」)または非自家(「非自己」、例えば、同種、同系、または異種)であり得る。「自家」は、本明細書で使用される場合、同じ対象からの細胞を指す。「同種」は、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは遺伝子学的に異なる同じ種の細胞を指す。「同系」は、本明細書で使用される場合、比較する細胞と遺伝子学的に同一である異なる対象の細胞を指す。「異種」は、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、本発明の細胞は、同種である。
【0101】
T細胞は、これらに限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺問題、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む多数のソースから得られ得る。ある実施形態では、T細胞は、沈降、例えば、FICOLL(登録商標)分離などの当業者に周知のかなり多数の技術を用いて対象から採取された血液の単位から得られ得る。一実施形態では、個人の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むリンパ球を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって採取された細胞は、プラズマ分画を除去し、細胞を、後続する処理のために適当な緩衝剤または培地に配置するために洗浄されてもよい。細胞は、PBS、またはカルシウム、マグネシウム、および他のすべてではない場合、ほとんどの二価陽イオンが欠乏している別の適切な溶液で洗浄され得る。当業者によって理解されるように、洗浄ステップは、半自動フロースルー遠心分離機を使用することによってなど、当業者に知られている方法によって遂行されてもよい。例えば、Cobe2991細胞プロセッサー、the Baxter CytoMateなど。洗浄後、細胞は、多様な生体適合性緩衝剤、または緩衝剤を有する、または有さない他の食塩水中で再懸濁されてもよい。ある実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分は、細胞の直接再懸濁された養培地で除去されてもよい。
【0102】
T細胞は、知られている方法を用いて単離の後に遺伝子操作され得るか、またはT細胞は、遺伝子操作される前に、インビトロで活性化され、増殖(または、前駆細胞の場合、分化)され得る。特定の実施形態では、T細胞は、本明細書で意図されるキメラ抗原受容体で遺伝子操作され(例えば、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターで形質導入され)、その後、インビトロで活性化され増殖される。様々な実施形態では、T細胞は、CARを発現するために、遺伝子修飾の前または後で活性化され、増殖され得る。
【0103】
一実施形態では、抗BCMA CARを発現するT細胞は、細胞が解凍時に実行可能なままであるように、凍結保存される。本明細書で使用される場合、「凍結保存」は、氷点下温度、例えば、(典型的には)77Kまたは-196℃(液体窒素の沸点)に冷却することによる細胞の保存を指す。凍結防止剤は、しばしば、低温での冷凍または室温への温度上昇による損傷から保存されている細胞を防ぐために、氷点下温度で使用される。凍結保存剤および最適な冷却速度が、T細胞の負傷から保護し得る。使用され得る凍結防止剤としては、これらに限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)(LovelockおよびBishop,Nature,1959;183:1394-1395;Ashwood-Smith,Nature,1961;190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニルピロリジン(Rinfret,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1960;85:576)、およびポリエチレングリコール(SloviterおよびRavdin,Nature,1962;196:48)が挙げられる。好ましい冷却速度は、1℃~3℃/分である。少なくとも2時間後、T細胞は、-80℃の温度に到達し、長期用極低温貯蔵容器内などでの永久貯蔵のために液体窒素(-196℃)に直接配置され得る。
【0104】
E.組成物および配合物
本明細書で意図される組成物は、治療上有効な量の抗BCMA CAR T細胞を含む。組成物は、これらに限定されないが、医薬組成物を含む。「医薬組成物」は、単独、または1つ以上の他の様式の療法を組み合わせて、細胞または動物への投与のために、薬学的に許容される、または生理学的に許容される溶液中で配合された組成物を指す。必要に応じて、組成物は、他の薬剤、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法、プロドラッグ、薬物、抗体、または他の様々な薬学的に活性な薬剤などと組み合わせて投与されてもよい。追加の薬剤が、目的とする療法を送達する組成物の能力に悪影響を与えないことを条件として、組成物中に含まれてもよい他の成分に事実上制限はない。
【0105】
語句「薬学的に許容される」は、妥当な利益/リスク比に見合う、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題、または合併症を伴わない、ヒトおよび動物の組織に接触する使用に対して健全な医学的判断の範囲内で適切である、それらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために本明細書において使用される。
【0106】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ヒトまたは家畜に使用するために許容されているとして、米国食品医薬品局によって認可されている任意の補助剤、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、保存料、染料/着色料、調味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、または乳化剤を制限なしに含む。例示的な薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびサッカロース;でんぷん、例えば、コーンスターチおよびジャガイモでんぷん;セルロースおよびそれの誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテート;トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、獣脂および植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ごま油、オリーブ油、コーン油、および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;エステル、例えば、エチルオレエートおよびエチルラウレート;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および薬学的配合物に使用される任意の他の相溶性物質が挙げられる。
【0107】
特定の実施形態では、組成物は、ある量、およびより好ましくは、治療上有効な量の本明細書で意図される抗BCMA CAR発現T細胞を含む。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「量」または「用量」は、臨床結果を含む、有利な、または所望の予防的または治療的結果を得るのに十分な抗BCMA CAR T細胞の「有効な量」、「有効な用量」、「有効量」、または「有効用量」を指す。
【0109】
「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」の抗BCMA CAR T細胞はまた、抗BCMA CAR T細胞の任意の毒性または有害作用、例えば、CRSを治療上有益な効果が上回るものである。用語「治療上有効な量」は、対象(例えば、患者)を「治療」するのに有効である量を含む。一実施形態では、治療上有効な用量は、対象における多発性骨髄腫を治療するための抗BCMA CAR T細胞の最低限の有効な用量(MED)である。一実施形態では、治療上有効な用量は、対象において解決不可能なCRSを引き起こさない抗BCMA CAR T細胞の最大耐用量(MTD)である。
【0110】
特定の実施形態では、組成物は、好ましくは、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)投与のために配合される。好ましい実施形態では、本明細書で意図される組成物は、単一用量で対象に静脈内に注入される。
【0111】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、少なくとも約5.0×107の細胞、少なくとも約15.0×107の細胞、少なくとも約45.0×107の細胞、少なくとも約80.0×107の細胞、または少なくとも約12.0×108の細胞である。
【0112】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、約5.0×107の細胞を超え、約15.0×107の細胞を超え、約45.0×107の細胞を超え、約80.0×107の細胞を超え、または約12.0×108の細胞を超える。
【0113】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、約5.0×107の細胞~約15.0×107の細胞、約5.0×107の細胞~約45.0×107の細胞、約5.0×107の細胞~約80.0×107の細胞、または約5.0×107の細胞~約12.0×108の細胞である。
【0114】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、約15.0×107の細胞~約45.0×107の細胞、約15.0×107の細胞~約80.0×107の細胞、または約15.0×107の細胞~約12.0×108の細胞である。
【0115】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、少なくとも5.0×107の細胞±20%、少なくとも15.0×107の細胞±20%、少なくとも45.0×107の細胞±20%、少なくとも80.0×107の細胞、±20%、または少なくとも12.0×108の細胞±20%である。
【0116】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、5.0×107の細胞±20%を超える、少なくとも15.0×107の細胞±20%を超える、少なくとも45.0×107の細胞±20%を超える、少なくとも80.0×107の細胞±20%を超える、または少なくとも12.0×108の細胞±20%を超える。
【0117】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、5.0×107の細胞±20%~15.0×107の細胞±20%、5.0×107の細胞±20%~45.0×107の細胞±20%、5.0×107の細胞±20%~80.0×107の細胞±20%、または5.0×107の細胞±20%~12.0×108の細胞±20%である。
【0118】
一実施形態では、対象に投与される組成物における抗BCMA CAR+T細胞の量は、15.0×107の細胞±20%~45.0×107の細胞±20%、15.0×107の細胞±20%~80.0×107の細胞±20%、または15.0×107の細胞±20%~12.0×108の細胞±20%である。
【0119】
本明細書で提供される使用のために、細胞は、概して、1リットル以下の体積であり、500mL以下、さらに250mLまたは100mL以下であり得る。
【0120】
特定の実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的にか、または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて治療上有効な量の抗BCMA CAR T細胞を含む。
【0121】
治療上有効な用量の抗BCMA CAR T細胞を含む医薬組成物は、緩衝剤、例えば中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、サッカロース、またはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン;酸化防止剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;補助剤(例えば、水酸化アルミニウム);および保存料を含んでもよい。
【0122】
液体医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液、または他の同様の形態にかかわらず、以下のうちの1つ以上を含んでもよい:無菌の希釈剤、例えば、注入用の水、食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンガー溶液、生理食塩液、固定油、例えば、溶媒または懸濁化剤として機能を果たし得る合成モノグリセリドまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、アセテート、クエン酸塩、またはリン酸、および張度の調節のための薬剤、例えば、デキストロース。非経口調合液は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数回投与用バイアルに収納され得る。注入可能な医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0123】
一実施形態では、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞組成物は、薬学的に許容される細胞養培地内で配合される。そのような組成物は、ヒトの対象への投与に適切である。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞養培地は、無血清培地である。
【0124】
無血清培地は、簡素化され、かつより良く定義された組成物、低い程度の汚染物、感染体の潜在的源の除去、および低コストを含む、血清含有培地と比較していくつかの利点を有する。様々な実施形態では、無血清培地は、動物質を含まず、任意的にタンパク質を含まなくてもよい。任意的に、培地は、バイオ医薬的に許容される組み換えタンパク質を含有してもよい。「動物質を含まない」培地は、成分が非動物源由来である培地を指す。組み換えタンパク質は、動物質を含まない培地における天然の動物タンパク質に取って代わり、栄養物は、合成、植物、または微生物起源から得られる。対照的に、「タンパク質を含まない」培地は、タンパク質を実質的に含まないと定義される。
【0125】
特定の組成物に使用される無血清培地の実例としては、これらに限定されないが、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、およびX-VIVO10が挙げられる。
【0126】
好ましい一実施例では、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、PlasmaLyte Aを含む溶液中で配合される。
【0127】
他の好ましい一実施例では、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、凍結保存培地を含む溶液中で配合される。例えば、凍結保存剤を有する凍結保存培地は、解凍後に高い細胞生存結果を維持するために使用されてもよい。特定の組成物に使用される凍結保存培地の実例としては、これらに限定されないが、CryoStor
CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられる。
【0128】
より好ましい実施形態では、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、50:50のPlasmaLyte A対CryoStor CS10を含む溶液中で配合される。
【0129】
F.治療方法
本明細書で意図される多発性骨髄腫を治療するための方法は、抗BCMA CARを発現する治療上有効な量のT細胞を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0130】
本明細書で使用される場合、用語「個人」および「対象」は、しばしば、同じ意味で使用され、多発性骨髄腫を有するヒトを指す。好ましい実施形態では、対象は、再発性/難治性多発性骨髄腫を有するヒトを指す。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、多発性骨髄腫、より好ましくは、再発性/難治性多発性骨髄腫と診断された対象を指す。
【0132】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」は、多発性骨髄腫、より好ましくは、再発性/難治性多発性骨髄腫の症状または病状に対する任意の有益な、または望ましい効果を含み、多発性骨髄腫、より好ましくは、再発性/難治性多発性骨髄腫の1つ以上の推測可能なマーカーにおける最小の低下でさえも含む場合がある。治療は、多発性骨髄腫の症状の低下もしくは改善、または多発性骨髄腫の進行の遅延のいずれかを任意的に含む。「治療」は、必ずしも、多発性骨髄腫またはその関連する症状の完全な根絶もしくは治癒を示すわけではない。
【0133】
本明細書で使用される場合、「予防する」、および同様の語、例えば、「予防された」、「予防している」などは、多発性骨髄腫の再発の可能性を予防する、阻止する、または低減するための手段を示す。
【0134】
多発性骨髄腫は、成熟形質細胞形態のB細胞悪性腫瘍であり、これらの種類の細胞の単一クローンの腫瘍性形質変化によって特徴付けられる。これらの形質細胞は、BMにおいて増殖し、隣接する骨、および時々、血液を侵す場合がある。異型の多発性骨髄腫は、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫(例えば、Braunwald,et al.(eds),Harrison’s Principles of Internal Medicine,15th Edition(McGraw-Hill2001)を参照されたい)が挙げられる。
【0135】
特定の実施形態では、治療上有効な量の抗BCMA CAR T細胞を含む組成物は、再発性/難治性多発性骨髄腫を治療するために対象に投与される。「再発する」は、向上または寛解期間の後に癌の再来、またそのは再来の兆候および症状の診断を指す。「難治性」は、特定の治療剤での療法に耐性を示す、または応答しない癌を指す。癌は、治療の開始から難治性である(すなわち、治療剤への最初の暴露に応答しない)か、または第1の治療期間にわたって、もしくは後続する治療期間の間のいずれかに治療剤への耐性を発現させた結果として難治性であり得る。
【0136】
特定の実施形態では、本明細書で意図される組成物は、少なくとも1つのプロテアソーム阻害薬および/または免疫調節薬剤(IMiD)を含む、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の治療で不成功であった再発性/難治性多発性骨髄腫を有する対象に投与される。一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、少なくとも1つのプロテアソーム阻害薬およびIMiDを含む、3つの治療計画に対して難治性である。一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、1つ以上の治療計画に対して二重難治性である。
【0137】
対象の多発性骨髄腫が難治性であるプロテアソーム阻害薬の実例としては、これらに限定されないが、ボルテゾミブおよびカルフィルゾミブが挙げられる。
【0138】
対象の多発性骨髄腫が難治性であるIMiDの実例としては、これらに限定されないが、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドが挙げられる。
【0139】
多発性骨髄腫が難治性であり得る他の治療の実例としては、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ならびにエロツズマブ、ダラツムマブ、MOR03087、イサツキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、エルシリモマブ、アジントレル、リツキシマブ、トシツモマブ、ミラツズマブ、ルカツムマブ、ダセツズマブ、フィギツムマブ、ダロツズマブ、AVE1642、タバルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、およびニボルマブからなる群から選択される抗体系療法が挙げられる。
【0140】
一実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、ダラツムマブを有する治療に対して難治性である。
【0141】
特定の実施形態では、対象の多発性骨髄腫は、IMiD、プロテアソーム阻害薬、およびデキサメタゾンを有する治療に対して難治性である。
【0142】
本明細書で意図される方法は、抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前に、再発性/難治性多発性骨髄腫を有する対象を自家造血幹細胞移植で治療することをさらに含んでもよい。
【0143】
本明細書で意図される方法は、例えば、リンパ枯渇化学療法が投与の1~4日(例えば、1、2、3、または4日)前に終了するなど、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前に対象をリンパ枯渇することをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、リンパ枯渇は、メルファラン、サイトキサン、シクロホスファミド、およびフルダラビンの1つ以上を投与することを含む。一実施形態では、対象は、本明細書で意図される抗BCMA CAR T細胞組成物の投与前に、シクロホスファミド300mg/m2およびフルダラビン30mg/m2でリンパ枯渇される。
【0144】
本明細書に挙げられているすべての出版物、特許出願、および発行された特許は、各個々の出版物、特許出願、および発行された特許が、参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために説明および実施例を手段として詳述されているが、ある変更および修正が、添付の請求項の要旨および範囲を逸脱することなく、本発明になされてもよいことは、本発明の教示の観点から当業者は、すぐに分かるであろう。以下の実施例は、限定を目的としているのではなく、説明のみを目的として提供される。当業者は、ほぼ同様の結果を得るために変更または修正され得る多様な重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0146】
実施例1
BCMA CARの構造
ネズミ抗BCMA scFv抗体を含有するCARは、抗BMCA scFvに操作可能に連結されたMNDプロモーター、CD8αからのヒンジおよび膜貫通ドメイン、およびCD3ζ鎖の細胞内シグナル伝達が続くCD137同時刺激ドメインを含有するように設計した。例えば、
図1を参照されたい。
図1に示される抗BMCA CARは、T細胞の表面発現のためのCD8αシグナルペプチド(SP)配列を含む。例示的な抗BMCA
CARのポリヌクレオチド配列は、配列番号10に記載され、抗BMCA CARの例示的なポリペプチド配列は、配列番号9に記載され、例示的なCAR構成概念のベクター地図は、
図1に示される。表3は、抗BMCA CARレンチウイルスベクターの様々なヌクレオチド区分に対する同一性、ジェンバンク基準、ソース名、および引用を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0147】
実施例2
抗BCMA CAR T細胞製造プロセス
固有の抗BCMA02CAR T細胞生成物を各患者の治療に製造する。抗BCMA02CAR T細胞生成物の製造プロセスの信頼性を、11個人の正常ドナーPBMCから抗BCMA02CAR T細胞を生成することによって評価した。各ドナーからの抗BCMA02CAR T細胞の増殖は、同時に行われた同等の形質導入されていない培養物と同程度であった(
図2A)。
【0148】
培養期間(10日目)の最後に、T細胞導入効率を、qPCRで統合されたレンチウイルスの数、およびレンチウイルス特異的プライマセット(ベクターコピー数、VCN)を定量化することによって評価した。11人のドナーからの抗BCMA02CAR T細胞培養は、同程度のレンチウイルス形質導入効率を示した(
図2B)。抗BCMA02CAR陽性T細胞の振動数をフローサイトメトリーによって測定し、BCMA発現が、すべてのドナーで同程度であることが分かった(
図2C)。
【0149】
各抗BCMA02CAR T細胞生成物の活性を、BCMAを発現するように操作されたK562細胞との共培養の後のIFNγ放出によって評価した。すべての抗BCMACAR02T細胞生成物は、BCMA発現K562細胞に曝されたとき、治療的に適切なレベルのIFNγ放出を示した(
図2D)。
【0150】
実施例3
抗BCMA02CAR T細胞は、再発性/難治性多発性骨髄腫のヒト臨床試験において療活性を示す。
序論
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、いくつかの血液学的悪性腫瘍で見られる堅固で持続的な臨床応答を証明した。しかしながら、CD19以外では、CAR T細胞の有望さを支持する臨床データは、制限されている。CAR T細胞安全性および有効性の可能性を、再発性/難治性多発性骨髄腫(MM)、制限された治療選択肢を有する患者集団において試験した。T細胞をMMに向け直すために、細胞成熟抗原(BCMA)、悪性骨髄腫細胞、形質細胞、およびいくつかの成熟B細胞のみによってほぼ均一に発現される腫瘍壊死因子スーパーファミリーの一員を標的にした。抗BCMA活性の初期の裏付けが、最近、CD28同時刺激ドメインで抗BCMACARをコードするガンマ-レトロウイルスベクターで形質導入されたT細胞を用いて証明されたが、有意なサイトカイン放出症候群が、高い病気の負担を有する患者において生じた(Ali et al.,Blood2016)。ヒトにおける治療上有効な用量の抗BCMA02CAR T細胞は、予測不可能であるため、用量漸増試験を実行した。
【0151】
方法
抗BCMA02CAR T細胞を、プロテアソーム阻害薬および免疫調節剤を含む少なくとも3つの事前レジメンを受けた、再発性および/または難治性BCMA陽性MMを有するか、または二重難治性である患者に投与した。簡潔に言うと、末梢血単核細胞を、白血球除去輸血を介して採取し、形質導入および増殖のために集中製造施設へ移転した。患者は、研究-5日目、-4日目、および-3日目にシクロホスファミド300mg/m2およびフルダラビン30mg/m2でリンパ枯渇し、その後、0日目に抗BCMA02CAR T細胞の単一注入を受けた。
【0152】
CAR T細胞の平均ベクターコピー数(VCN)を9人の患者に対して決定した。表4.
【表4】
【0153】
結果
9人の患者は、5.0×107のCAR+T細胞、15.0×107のCAR+T細胞、および45.0×107のCAR+T細胞の3つの用量コホートにおいて抗BCMA02CAR T細胞を注入された。細胞を採取し、すべての患者において製造および放出が成功した。9人の注入された対象の登録時の平均年齢は、58歳(43~68)であり、67%が男性であった。診断からの平均期間は、6年(1.3~8.6)であった。事前の治療ラインの平均数は、6(4~10)であり、100%の患者が少なくとも1つの事前の自家幹細胞移植を受け、67%が事前のダラツムマブまたはCD38マブを受け、89%が事前のレナリドミドを受け、78%が事前のポマリドミドを受け、100%が事前のボルテゾミブを受け、78%が事前のカルフィルゾミブを受けた。
【0154】
現在まで、用量制限毒性、神経毒性>グレード2、またはグレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は、観察されていない。また、昇圧剤、トシリルズマブ、またはコルチコステロイドでの理療を必要とした患者はいなかった。グレード1またはグレード2のCRSが、6/9人(67%)の治療を受けた患者において報告された。CRSに加えて、最も多い治療中に発生した有害事象は、好中球減少(89%)、白血球減少(67%)、および貧血(44%)であった。
【0155】
臨床応答は、すべての容量コホートで観察された。最初のコホートの後、すべての患者は、研究に残り、15.0×10
7以上のCAR+T細胞で治療された6人の患者における全奏効率は、2つの厳密完全奏功(CR)を含んで、83%であった(表5を参照されたい)。驚くことに、5.0×10
7のCAR+T細胞を上回る用量レベルでは、ベースライン時に骨髄障害を有するすべての患者は、14日後以降のいずれの時点においても骨髄疾患を検出しなかった。
【表5】
【0156】
CAR+T細胞増殖は、一貫して証明され、他の出版されたCAR T細胞試験と同様である。データが利用可能であった、>5.0×107のCAR+T細胞で治療された5人の患者において、フローサイトメトリーによるピークCAR+T細胞の範囲は、末梢血において10~686のCAR+細胞/μLおよび骨髄において4~527のCAR+細胞/μLであり、末梢血におけるピークコピー/μgゲノムDNAの範囲は、PCRによって34,231~860,204であった。
【0157】
結論
抗BCMA02CAR T細胞は、2つのCRおよび6か月での進行中の臨床応答を含み、5.0×107のCAR+T細胞を上回る用量レベルで顕著な有効性を示した。他のCAR T細胞療法での結果とは対照的に、抗BCMA02CAR T細胞の有効性は、意外と軽度で対処可能なCRSを伴い、≧50%の骨髄障害を有する患者におけるものを含む。これらのデータは、再発性/難治性多発性骨髄腫に対する抗BCMA02CAR T細胞の治療有効性を支持する。
【0158】
追加の用量コホートは、80.0×107および12.0×108のCAR+T細胞の容量レベルで計画する。
【0159】
実施例4
抗BCMA02CAR T細胞は、再発性/難治性多発性骨髄腫のヒト臨床試験において治療活性を示し続ける。
21人の患者を、5.0×107のCAR+T細胞(3人の患者)、15.0×107のCAR+T細胞(6人の患者)、45.0×107のCAR+T細胞(9人の患者)、および80.0×107のCAR+T細胞(3人の患者)の3つの用量コホートにおいて抗BCMA02CAR T細胞で注入した。細胞を採取し、すべての患者において製造および放出が成功した。9人の注入された対象の登録時の平均年齢は、58歳(37~74)であり、62%が男性であった。診断からの平均期間は、5年(1.0~16.0)であった。事前の治療ラインの平均数は、7(3~14)であり、100%の患者が少なくとも1つの事前の自家幹細胞移植を受け、100%が以前にレナリドミドおよびボルテゾミブで治療され、91%が以前にポマリドミドおよびカルフィルゾミブで治療され、71%が以前にダラツムマブで治療され、29%の患者がペンタ難治性(ボルテゾミブ、レナリドミド、カルフィルゾミブ、ポマリドミド、ダラツムマブ)であった。
【0160】
活性用量コホートにおけるすべての患者が最大54週の期間で客観的応答に到達した。
図3.CAR T細胞用量、評価可能な患者の数、全奏効率、最良の応答、平均事前治療ライン、および各コホートの安全性が表6に提示される。
【表6-1】
【表6-2】
【0161】
一般的に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲で開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲に得る権利がある等価物の全範囲と共にすべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。その結果、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】