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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022202779
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2019561692の分割
【原出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2023024572
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2017249174
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018151066
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】日野 賢樹
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2019/131585(JP,A1)
【文献】特表2015-512703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に形成された開口部から皮膚まで延びる穿刺穴を閉塞する止血器具であって、
延伸方向に延びる延伸部、及び、前記延伸部の先端部に設けられ、膨張状態と収縮状態とに切り替え可能であり、前記膨張状態において前記開口部に係合可能であり、前記収縮状態において前記血管から引き抜くことが可能な第1係合部を有する位置決め部材と、
前記位置決め部材の前記第1係合部よりも基端側に配置された止血剤と、
前記止血剤よりも前記基端側に位置する押し出し先端を有し、前記位置決め部材に対して先端側に相対移動した時、前記押し出し先端によって前記止血剤を前記先端側に移動させることが可能な押し出し部材と、
前記位置決め部材に対する前記押し出し部材の前記先端側への相対移動を規制可能な規制部材と、
前記規制部材の状態を、前記押し出し部材の相対移動を規制した規制状態と、前記押し出し部材の相対移動を規制しない許可状態とに切り替え可能であり、前記位置決め部材の前記延伸部と接続する切替部材と、
前記位置決め部材に対する前記押し出し部材の相対移動に応じ、前記規制部材に対して第1移動領域内で相対移動し、且つ、前記押し出し部材と接続する第1移動部材と、
前記位置決め部材、前記押し出し部材、前記規制部材、及び前記切替部材の少なくとも一部を収容する筐体と
を備え、
前記規制部材は、
前記規制状態において、前記第1移動領域に配置され、前記第1移動部材の相対移動を規制することで、前記第1移動部材に接続された前記押し出し部材の相対移動を規制し、前記許可状態において、前記第1移動領域に配置されず、前記第1移動部材の相対移動を許可することで、前記第1移動部材に接続された前記押し出し部材の相対移動を許可する制限部を備え、
前記切替部材は、
前記制限部よりも前記基端側に位置し、前記制限部に向けて延びる延部を有し、
前記第1移動部材は、
前記制限部が前記第1移動領域に配置された状態で前記制限部に係合し、前記制限部が前記第1移動領域に配置されない状態で前記制限部に係合しない第2係合部を備え、
前記規制部材は、
前記第2係合部に前記制限部が係合された状態から、前記第2係合部に前記制限部が係合されない状態に向けて、前記制限部を付勢する付勢部を更に備え、
前記規制部材が前記規制状態のときに前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動した場合、前記位置決め部材に接続した前記切替部材が前記第1移動部材に対して前記先端側に相対移動することで、前記切替部材の前記延部が前記先端側に相対移動して前記制限部を前記第2係合部に対して前記先端側に移動させることで前記第2係合部に前記制限部が係合された状態から係合されない状態に切り替え、前記付勢部は、前記第2係合部に係合されない状態の前記制限部を、前記第1移動領域に配置された状態から、前記第1移動領域に配置されない状態に切り替えることによって、前記規制部材を前記規制状態から前記許可状態に切り替え、前記第1移動部材が前記第1移動領域内で相対移動可能となることにより、前記第1移動部材に接続した前記押し出し部材は相対移動可能となり、
前記規制部材は、前記規制状態から前記許可状態に切り替えられた後、前記筐体に対する前記位置決め部材の相対移動に依らず、前記許可状態で維持されることを特徴とする止血器具。
【請求項2】
前記付勢部は、バネであることを特徴とする請求項に記載の止血器具。
【請求項3】
前記筐体に対する前記位置決め部材の前記先端側への相対移動量に応じた態様を通知する通知部であって、
前記筐体に設けられた開口を含み、
前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動することに応じて前記筐体に対して前記先端側に相対移動し、且つ前記切替部材に接続する第2移動部材の前記筐体に対する相対位置に応じ、前記開口を介して前記第2移動部材の露出部を目視可能な状態と目視不可能な状態に切り替える前記通知部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記切替部材は、
前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動することに応じ、前記筐体に対して前記先端側に相対移動し、
前記切替部材は、第1磁石を備え、
前記筐体は、
前記切替部材が前記規制部材を前記許可状態としたときに前記第1磁石に対向する第2磁石を備えたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載の止血器具。
【請求項5】
前記筐体は、
前記第2磁石に対して前記先端側に配置された第3磁石を更に備え、
前記第1磁石と前記第2磁石とが互いに対向する場合における前記第1磁石と前記第2磁石との間の磁力が、前記第1磁石と前記第3磁石とが互いに対向する場合における前記第1磁石と前記第3磁石との間の磁力よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の止血器具。
【請求項6】
前記第1係合部は、前記膨張状態と前記収縮状態とに切り替え可能なバルーンであることを特徴とする請求項1からの何れかに記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管に形成された開口部を閉塞して止血する止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
穿刺により形成された穿刺穴を介して血管にアクセスして実施される医療処置が知られている。このような医療処置の一例として、血管の狭窄した箇所をバルーンカテーテルにより拡張する処置がある。医療処置の終了後、穿刺により血管に形成された開口部を閉塞して止血することが必要となる。
【0003】
特許文献1は、脈管穿刺を閉塞する器具を開示する。器具は、位置決め要素を含む位置決め部材、プッシャ部材、送達シース、及び栓装置(「止血剤」ともいう。)を有する。器具の使用方法は次の通りである。はじめに、位置決め部材は、位置決め要素が折り畳まれた状態で、穿刺により皮膚に形成された穿刺穴に挿通される(第1工程)。次に、位置決め要素は、血管中に配置された状態で拡張される(第2工程)。次に、穿刺穴から引き出される向きに位置決め部材が移動し、血管の内壁に位置決め要素が接触する(第3工程)。次に、プッシャ部材、送達シース、及び止血剤は、位置決め要素に沿って穿刺穴に挿通される(第4工程)。次に、送達シースに対してプッシャ部材を先端側に移動させることにより、位置決め要素に対して止血剤が基端側から押し付けられる(第5工程)。止血剤は、血管の近傍に留置される。これにより、止血剤は、血管の開口部を閉塞することで止血を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-231542号公報
【発明の概要】
【0005】
上記の器具において、各工程が順番に行われない場合、血管の開口部を止血剤により適切に閉塞できない可能性がある。特に、第4工程が終了する前に第5工程が実行された場合、止血剤が位置決め要素に近接する前に送達シースから露出し、好ましくない。このため、特に器具の使用に慣れていない使用者であっても、所定動作を順番に行う操作を容易且つ確実に実行できる器具が要求されている。
【0006】
本発明の目的は、血管の開口部を止血剤により閉塞して止血するための操作を、使用者が容易且つ適切に実行できる止血器具を提供することである。
【0007】
本発明の第1態様に係る止血器具は、血管に形成された開口部から皮膚に延びる穿刺穴を閉塞する止血器具であって、延伸方向に延びる第1筒状部材と、前記第1筒状部材の内部に少なくとも一部が設けられた位置決め部材であって、前記延伸方向に延びる延伸部、及び、前記延伸部の先端部に設けられ、前記開口部に係合可能な係合部を有する位置決め部材と、前記位置決め部材の前記係合部よりも基端側に配置された止血剤と、前記止血剤よりも前記基端側に位置する押し出し先端を有し、前記第1筒状部材に対して先端側に相対移動した時、前記押し出し先端によって前記第1筒状部材の先端部から前記止血剤を押し出すことが可能な押し出し部材と、前記第1筒状部材、前記位置決め部材、及び前記押し出し部材のそれぞれの少なくとも一部を収容する筐体と、前記筐体及び前記位置決め部材に対して、前記第1筒状部材及び前記押し出し部材を前記先端側に相対移動させる第1先端動作、前記筐体及び前記位置決め部材に対して、前記押し出し部材を前記先端側に相対移動させる第2先端動作のそれぞれを実行するために操作される第1操作部と、少なくとも前記第1先端動作が終了するまでの間、前記第2先端動作を規制し、前記第1先端動作が終了したことに応じ、前記第2先端動作の規制を解除して実行可能とする切替機構と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
第1先端動作では、第1筒状部材及び押し出し部材が先端側に相対移動する。このため押し出し部材は、止血剤を、第1筒状部材内に保持された状態で先端側に移動させ、位置決め部材の係合部に近接させることができる。又、第2先端動作では、押し出し部材が先端側に相対移動する。このため押し出し部材は、止血剤を、第1筒状部材内から先端側に押し出し、止血剤により血管の開口部を閉塞できる。ここで、止血器具では、第1先端動作が終了するまでの間、第2先端動作が規制される。これによって、止血器具は、第1先端動作の終了前に第2先端動作が実行されることを規制する。このため、止血器具が誤って操作された場合でも、止血剤が係合部に近接する前に第1筒状部材から止血剤が押し出されることを防止できる。このため、使用者は、血管の開口部を止血剤により閉塞して止血するための止血器具の操作を、容易且つ確実に実行できる。
【0009】
第1態様において、前記切替機構は、前記第1筒状部材に連結した第1切替部、及び、前記押し出し部材に連結した第2切替部を有し、前記第1先端動作では、互いに接触した状態の前記第1切替部及び前記第2切替部が、前記第1操作部に対する操作に応じて相対移動することにより、前記第1筒状部材及び前記押し出し部材は前記先端側に相対移動し、前記第2先端動作では、前記第1切替部から離隔した状態の前記第2切替部が、前記第1操作部に対する操作に応じて相対移動することにより、前記押し出し部材は前記先端側に相対移動してもよい。止血器具は、第1先端動作が完了するまで第2先端動作を規制するための構成、及び、第1先端動作の完了後に第2先端動作の規制を解除するための構成を、第1切替部及び第2切替部により容易に実現できる。
【0010】
第1態様において、前記第1操作部は、前記筐体に対して前記延伸方向に相対移動可能であり、前記筐体に対して前記延伸方向の一方側に相対移動することに応じて前記第1先端動作が実行され、前記筐体に対して前記延伸方向の一方側に更に相対移動することに応じて前記第2先端動作が実行されてもよい。使用者は、延伸方向の一方側に第1操作部を移動させる操作を行うだけで、第1先端動作及び第2先端動作を止血器具に実行させることができる。従って使用者は、止血器具を容易に操作して第1先端動作及び第2先端動作を実行させることができる。
【0011】
第1態様において、前記第1操作部は、前記筐体、前記位置決め部材、及び前記押し出し部材に対して、前記第1筒状部材を前記基端側に相対移動させる筒基端動作を実行するために更に操作され、前記第2先端動作では、前記押し出し部材に加えて前記第1筒状部材を更に前記先端側に相対移動させ、前記切替機構は、前記第1先端動作が終了するまでの間、前記筒基端動作を規制し、前記第1先端動作が終了したことに応じ、前記筒基端動作の規制を解除して実行可能とし、且つ、前記筒基端動作が終了するまでの間、前記第2先端動作を規制し、前記筒基端動作が終了したことに応じ、前記第2先端動作の規制を解除して実行可能としてもよい。止血器具は、第1先端動作、筒基端動作、及び第2先端動作を順番に実行することにより、止血剤を、第1筒状部材内に保持された状態で先端側に移動させる。次いで、止血器具は、第1筒状部材内から先端側に止血剤を押し出して、血管の開口部を止血剤により閉塞できる。ここで止血器具は、第1先端動作が終了するまでの間、筒基端動作を規制し、且つ、筒基端動作が終了するまでの間、第2先端動作を規制する。これによって、止血器具は、第1先端動作の終了前に第2先端動作が実行されることを規制する。このため、使用者は、第1先端動作及び第2先端動作の順で止血器具を容易に操作できる。
【0012】
第1態様において、前記切替機構は、前記第1筒状部材に連結した第1切替部、及び、前記押し出し部材に連結した第2切替部を有し、前記第1先端動作及び前記第2先端動作では、互いに接触した状態の前記第1切替部及び前記第2切替部が、前記第1操作部に対する操作に応じて相対移動することにより、前記第1筒状部材及び前記押し出し部材は前記先端側に相対移動し、前記筒基端動作では、前記第2切替部から離隔した状態の前記第1切替部が、前記第1操作部に対する操作に応じて相対移動することにより、前記第1筒状部材は前記基端側に相対移動してもよい。止血器具は、第1先端動作が完了するまで筒基端動作を規制するための構成、及び、筒基端動作が完了するまで第2先端動作を規制するための構成を、第1切替部及び第2切替部により容易に実現できる。
【0013】
第1態様において、前記第1操作部は、前記筐体に対して前記延伸方向に相対移動可能であり、前記筐体に対して前記延伸方向の一方側に所定量相対移動することに応じて前記第1先端動作が実行され、前記筐体に対して前記延伸方向の他方側に前記所定量相対移動することに応じて前記筒基端動作が実行され、前記筐体に対して前記延伸方向の一方側に前記所定量相対移動することに応じて前記第2先端動作が実行されてもよい。使用者は、第1操作部を延伸方向に所定量ずつ往復移動させる操作を行うだけで、第1先端動作、筒基端動作、及び第2先端動作を止血器具に実行させることが可能となる。
【0014】
第1態様において、前記第1筒状部材、前記位置決め部材、及び前記押し出し部材のそれぞれの少なくとも一部が内部を挿通する第2筒状部材に連結する連結部と、前記筐体、前記第1筒状部材、前記位置決め部材、及び前記押し出し部材に対して前記連結部を前記基端側に移動させる連結基端動作を実行するために操作される第2操作部とを更に有し、前記切替機構は、更に、前記第2先端動作が終了するまでの間、前記連結基端動作を規制し、前記第2先端動作が終了したことに応じ、前記連結基端動作の規制を解除して実行可能としてもよい。止血器具は、第2先端動作において、血管の開口部を止血剤によって閉塞した後、第2筒状部材を基端側に相対移動させることが可能となる。この動作により、第2筒状部材の先端部から止血剤を脱離させることができる。従って、止血器具は、第2筒状部材の先端部から止血剤を脱離させた状態で、穿刺穴から第2筒状部材を引き抜くことができる。
【0015】
第1態様において、前記連結部が移動可能な場合に前記連結部の移動領域に配置されず、前記連結部が移動不能な場合に前記移動領域に配置される制限部を備え、前記切替機構は、前記第2先端動作において前記押し出し部材が前記先端側に相対移動したことに伴い、前記制限部を、前記移動領域に配置された状態から前記移動領域に配置されない状態に切り替え、前記連結部が移動不可能な状態から前記基端側に移動可能な状態とすることによって、前記連結基端動作の規制を解除して実行可能としてもよい。止血器具は、使用者による簡単な操作で、連結部の移動が規制された状態を第2先端動作により解除できる。
【0016】
第1態様において、前記筐体、前記第1筒状部材、及び前記押し出し部材に対して、前記位置決め部材を前記基端側に相対移動させる位置決め基端動作を更に実行するために操作される第3操作部を更に有してもよい。止血器具は、第1筒状部材、第2筒状部材、及び押し出し部材と独立して位置決め部材を相対移動させることが容易に可能となる。
【0017】
第1態様において、前記延伸方向の一方側は前記基端側であり、前記延伸方向の他方側は前記先端側であってもよい。使用者は、第2先端動作を実行する場合において、位置決め部材の係合部を開口部に密着させるために筐体を基端側に引っ張りながら、第1操作部を基端側に相対移動させ、血管の開口部に止血剤を押し出す。つまり、止血器具は、第1先端動作及び第2先端動作が実行される場合において筐体に作用させる力の方向と、第1操作部の操作方向とを同一にできる。従って、止血器具は、第2先端動作が実行される場合における使用者の操作を容易化できる。
【0018】
第1態様において、前記係合部は、膨張状態と収縮状態とに切り替え可能なバルーンであり、前記バルーンは、前記膨張状態で前記開口部に係合してもよい。止血器具は、収縮状態のバルーンを、開口部を介して血管内に導入できる。一方、止血器具は、血管内に導入されたバルーンを膨張状態とすることによって、血管の内側から開口部にバルーンを係合させることができる。
【0019】
又、上記の器具の使用態様によっては、第3工程において穿刺穴から引き出される向きに位置決め部材を移動させる操作が不十分な状態で、第5工程により止血剤が位置決め要素に押し付けられる可能性がある。この場合、血管と位置決め要素との間に隙間が形成される場合がある。従って、第5工程において止血剤が位置決め要素に押し付けられた場合に、血管と位置決め要素との間の隙間を介して止血剤が血管内に流入する可能性がある。
【0020】
本発明の別の目的は、止血剤が血管内に流入することを防止できる止血器具を提供することである。
【0021】
本発明の第2態様に係る止血器具は、血管に形成された開口部から皮膚まで延びる穿刺穴を閉塞する止血器具であって、延伸方向に延びる延伸部、及び、前記延伸部の先端部に設けられ、前記開口部に係合可能な第1係合部を有する位置決め部材と、前記位置決め部材の前記第1係合部よりも基端側に配置された止血剤と、前記止血剤よりも前記基端側に位置する押し出し先端を有し、前記位置決め部材に対して先端側に相対移動した時、前記押し出し先端によって前記止血剤を先端側に移動させることが可能な押し出し部材と、前記位置決め部材に対する前記押し出し部材の前記先端側への相対移動を規制可能な規制部材と、前記規制部材の状態を、前記押し出し部材の相対移動を規制した規制状態と、前記押し出し部材の相対移動を規制しない許可状態とに切り替え可能な切替部材と、前記位置決め部材、前記押し出し部材、前記規制部材、及び前記切替部材の少なくとも一部を収容する筐体とを備え、前記切替部材は、前記規制部材が前記規制状態のときに前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動した場合、前記規制部材を前記許可状態に切り替え、前記規制部材は、前記規制状態から前記許可状態に切り替えられた後、前記筐体に対する前記位置決め部材の相対移動に依らず、前記許可状態で維持されることを特徴とする。
【0022】
止血器具は、血管の開口部に位置決め部の第1係合部が係合した状態で、押し出し部材が先端側に移動することにより、第1係合部近傍に向けて止血剤が移動する。これによって、第1係合部が係合した開口部を含む穿刺穴を止血剤で閉塞し、止血する。規制部材は、押し出し部材の先端側への移動を規制した規制状態と、先端側への移動を規制しない許可状態とに切り替え可能である。
【0023】
位置決め部の第1係合部が血管の開口部に係合した状態で位置決め部が血管に対して基端側に移動した場合、第1係合部は、血管の内側から開口部に密着する。又、位置決め部材に対して先端に向かう方向の力が相対的に作用し、位置決め部材は筐体に対して先端側に相対移動する。切替部材は、規制部材が規制状態のときに筐体に対して位置決め部材が先端側に相対移動した場合、規制部材を許可状態に切り替える。つまり、第1係合部が開口部に密着した状態で押し出し部材の先端側への移動が可能となる。このため、この状態で押し出し部材が先端側に移動して止血剤が先端側に移動した場合、止血剤は穿刺穴を適切に閉塞して止血できる。更に、第1係合部が開口部に密着した状態であるため、止血器具は、第1係合部と開口部との間の隙間を通って止血剤が血管内に流入することを防止できる。
【0024】
なお、規制部材は、規制状態から許可状態に切り替えられた後、筐体に対する位置決め部材の相対移動に依らず、前記許可状態で維持される。このため、止血器具は、規制部材が規制状態から許可状態に切り替わった後、規制部材が元の規制状態に戻ることを抑制できる。従って使用者は、位置決め部材に対して筐体を基端側に相対移動させて第1係合部を開口部に密着させた後、押し出し部材を先端側に移動させる操作を確実に実行することができる。このため、止血器具は、押し出し部材を先端側に移動させる操作を適切に実行できる。
【0025】
第2態様において、前記位置決め部材に対する前記押し出し部材の相対移動に応じ、前記規制部材に対して第1移動領域内で相対移動する第1移動部材を備え、前記規制部材は、前記規制状態において前記第1移動領域に配置され、前記許可状態において前記第1移動領域に配置されない制限部を備え、前記切替部材は、前記制限部を、前記第1移動領域に配置された状態から、前記第1移動領域に配置されない状態に切り替えることによって、前記規制部材を前記規制状態から前記許可状態に切り替えてもよい。この場合、規制部材は、筐体に対して押し出し部材が先端側に相対移動することを、簡易な構成で適切に規制できる。一方、切替部材は、筐体に対して位置決め部材が先端側に相対移動したことに応じ、制限部が第1移動領域に配置された状態から配置されない状態に容易に切り替えることができる。このため、切替部材は、規制部材を規制状態から許可状態に容易に切り替えることができる。
【0026】
第2態様において、前記第1移動部材は、前記制限部が前記第1移動領域に配置された状態で前記制限部に係合し、前記制限部が前記第1移動領域に配置されない状態で前記制限部に係合しない第2係合部を備え、前記規制部材は、前記第2係合部に前記制限部が係合された状態から、前記第2係合部に前記制限部が係合されない状態に向けて、前記制限部を付勢する付勢部を更に備え、前記切替部材は、前記第2係合部に前記制限部が係合された状態から係合されない状態に切り替えることによって、前記切替部材を前記規制状態から前記許可状態に切り替えてもよい。この場合、止血器具は、付勢部の付勢力を利用して、制限部が第1移動領域に配置された状態から、制限部が第1移動領域に配置されない状態に切り替えることができる。従って、切替部材は、付勢部の付勢力を利用して、規制部材を規制状態から許可状態に容易に切り替えることができる。又、止血器具は、規制部材を規制状態から許可状態に切り替えた後、元の規制状態に戻らないようにするための構成を、付勢部により簡易に実現できる。
【0027】
第2態様において、前記切替部材は、前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動することに応じ、前記第1移動部材に対して前記先端側に相対移動することによって、前記第2係合部に前記制限部が係合された状態から係合されない状態に切り替えてもよい。この場合、切替部材は、第2係合部に制限部が係合された状態から係合されない状態への切り替えを、位置決め部の相対移動に応じて適切に実行できる。
【0028】
第2態様において、前記付勢部は、バネであってもよい。この場合、付勢部は、第2係合部に制限部が係合された状態からされない状態に向けて、制限部を容易に付勢できる。
【0029】
第2態様において、前記筐体に対する前記位置決め部材の前記先端側への相対移動量に応じた態様を通知する通知部を備えてもよい。この場合、止血器具は、位置決め部に対して筐体を基端側に相対移動させることに応じて位置決め部に作用する力の強さを、使用者に通知できる。
【0030】
第2態様において、前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動することに応じ、前記筐体に対して前記先端側に相対移動する第2移動部材を備え、前記通知部は、前記第2移動部材の移動量に応じた態様を通知してもよい。この場合、止血器具は、位置決め部に作用する力の強さを通知する機能を、簡易な構成で実現できる。
【0031】
第2態様において、前記筐体に対して前記位置決め部材が前記先端側に相対移動することに応じ、前記筐体に対して前記先端側に相対移動する第3移動部材を備え、前記第3移動部材は、第1磁石を備え、前記筐体は、前記切替部材が前記規制部材を前記許可状態としたときに前記第1磁石に対向する第2磁石を備えてもよい。この場合、切替部材によって規制部材が規制状態から許可状態に切り替わった場合において、第3移動部材の移動は、第1磁石と第2磁石との間に作用する磁力によって抑制される。従って、使用者は、規制部材が許可状態となって押し出し部材の先端側への相対移動が可能となった状態を認識できる。
【0032】
第2態様において、前記筐体は、前記第2磁石に対して前記先端側に配置された第3磁石を更に備え、前記第1磁石と前記第2磁石とが互いに対向する場合における前記第1磁石と前記第2磁石との間の磁力が、前記第1磁石と前記第3磁石とが互いに対向する場合における前記第1磁石と前記第3磁石との間の磁力よりも大きくてもよい。この場合、止血器具は、押し出し部材の移動が可能となった後、位置決め部材に対して筐体が基端側に過剰に相対移動することを抑制できる。このため、例えば、位置決め部材に対して筐体を基端側に相対移動させる力が大きすぎて、血管の開口部から第1係合部が外れてしまうことを抑制できる。
【0033】
第2態様において、前記第1係合部は、膨張状態と収縮状態とに切り替え可能なバルーンであり、前記バルーンは、前記膨張状態で前記開口部に係合してもよい。この場合、止血器具は、収縮状態のバルーンを、開口部を介して血管内に導入できる。一方、止血器具は、血管内に導入されたバルーンを膨張状態とすることによって、血管の内側から開口部にバルーンを係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】止血器具10の斜視図である。
図2】止血器具10の内部構造を示す斜視図である。
図3】止血器具10の内部構造を示す斜視図である。
図4】切替部材72Bの斜視図である。
図5】規制状態における規制部材72Aの周辺を示す斜視図である。
図6】許可状態における規制部材72Aの周辺を示す斜視図である。
図7】レバーモジュール51の分解斜視図である。
図8図7のA-A線を矢印方向から見た断面図である。
図9】移動部材73Aの斜視図である。
図10】規制部材72Aの斜視図である。
図11】移動部材73Bの斜視図である。
図12】移動部材74Bの斜視図である。
図13】連結部材71Cの斜視図である。
図14】止血動作の初期状態を示す斜視図である。
図15図14の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図16】規制部材72Aを許可状態とした場合を示す斜視図である。
図17】第1先端動作を示す斜視図である。
図18図17の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図19】第2先端動作を示す斜視図である。
図20図19の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図21】連結基端動作を示す斜視図である。
図22】位置決め基端動作を示す斜視図である。
図23】止血器具20の斜視図である。
図24】止血器具20の内部構造を示す斜視図である。
図25】止血器具20の内部構造を示す斜視図である。
図26】切替部材2Bの斜視図である。
図27】第2移動部材4Aの斜視図である。
図28】第1移動部材3Aの斜視図である。
図29】規制部材2Aの斜視図である。
図30】第4移動部材3Bの斜視図である。
図31】第5移動部材3Cの斜視図である。
図32】連結部1Cの斜視図である。
図33】第6移動部材4Bの斜視図である。
図34】規制状態における制限機構4Cの側面図である。
図35】許可状態における制限機構4Cの側面図である。
図36】止血動作の初期状態を示す斜視図である。
図37図36の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図38】規制部材2Aを許可状態とした場合を示す斜視図である。
図39図38の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図40】第1先端動作を示す斜視図である。
図41図40の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図42】筒基端動作を示す斜視図である。
図43図42の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図44】第2先端動作を示す斜視図である。
図45図44の状態における各移動部材の状態を示す斜視図である。
図46】連結基端動作を示す斜視図である。
図47】位置決め基端動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態に係る止血器具10(第1実施形態、図1図22参照)、20(第2実施形態、図23図47参照)について、図面を参照して説明する。止血器具10、20は、止血剤Sにより穿刺穴を閉塞する。穿刺穴は、例えば周知のカテーテルによる治療が行われる場合において、専用の針によって手首や太ももの付け根に形成される。穿刺穴は、皮膚表面から、血管に形成された開口部までの間に亘って延びる。止血器具10、20は、血管の開口部から穿刺穴を介して皮膚の外部に血液が流出することを、止血剤Sで穿刺穴を閉塞することによって抑制する。
【0036】
以下の説明において、図1の上側、下側、左上側、右下側、左下側、及び右上側を、それぞれ、止血器具10の上側、下側、左側、右側、先端側、及び基端側と定義する。図23の上側、下側、左上側、右下側、左下側、及び右上側を、それぞれ、止血器具20の上側、下側、左側、右側、先端側、及び基端側と定義する。止血器具10、20の先端部と基端部との間に亘って延びる方向を、延伸方向という。
【0037】
<第1実施形態>
図2に示すように、止血器具10は、筐体71、位置決め部材8A、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、第2筒状部材8D、止血剤S、規制部材72A、切替部材72B、移動部材73A、73B、74B、連結部71C、制限機構74C、レバーモジュール51等を有する。特段の限定のない限り、各部材の「延伸方向の移動」「基端側への移動」「先端側への移動」とは、それぞれ、筐体71を基準とした場合の相対的な移動を示す。
【0038】
<筐体71>
図1に示すように、筐体71は、延伸方向に長い略箱状を有する。筐体71は、左側半分の部位に対応する左筐体71Aと、右側半分の部位に対応する右筐体71Bとを組み合わせることによって形成される。筐体71は、突出部711A、711Bを有する。突出部711Aは、筐体71の基端部近傍の上側から上方に突出する突出部711Aは、筐体71の延伸方向中央の下側から下方に突出する。図2に示すように、筐体71内には、後述する位置決め部材8A、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、規制部材72A、切替部材72B、移動部材73A、73B、74B、制限機構74C、レバーモジュール51のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0039】
図1に示すように、筐体71の上面のうち突出部711Aよりも先端側に、第1操作部510が設けられる。第1操作部510は、使用者により指で操作されるスライドレバーである。第1操作部510は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第1操作部510は、後述する移動部材51B、73A、73B、74Bを延伸方向に移動させる。又、第1操作部510は、移動部材51Bに接続する押し出し部材8B、及び、移動部材73Bに接続する第1筒状部材8Cを延伸方向に移動させる。
【0040】
筐体71の右面のうち延伸方向において第1操作部510よりも基端側に、第2操作部520が設けられる。第2操作部520は、使用者により指で操作されるスライドレバーである。第2操作部520は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第2操作部520は、後述する連結部71C、及び、連結部71Cに接続する第2筒状部材8Dを延伸方向に移動させる。
【0041】
筐体71の基端側に第3操作部530が設けられる。第3操作部530は、使用者が把持して操作するためのハンドルである。第3操作部530は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第3操作部530は、後述する切替部材72B、及び、切替部材72Bに接続する位置決め部材8Aを延伸方向に移動させる。
【0042】
<位置決め部材8A>
位置決め部材8Aは、穿刺穴に対する止血器具10の各部位の位置決めを行う。位置決め部材8Aは、所謂バルーンカテーテルである。図1図3に示すように、位置決め部材8Aは、延伸部81及び第1係合部82を有する。延伸部81は、延伸方向に沿って延びる筒状の部材であり、カテーテルに対応する。延伸部81の基端部は、後述する切替部材72B(図4参照)に接続される。延伸部81は、切替部材72Bから筐体71の内部を通って先端側に延び、筐体71の先端部から先端側に突出する。延伸部81は延伸方向に移動可能である。
【0043】
第1係合部82は、延伸部81の先端部の外周面に設けられる。第1係合部82はバルーンに対応する。第1係合部82は、切替部材72Bに接続される非図示のハブから延伸部81の内腔に圧縮流体が注入された場合、収縮状態から膨張状態に切り替わる。図1図3は、膨張した状態の第1係合部82が示されている。
【0044】
<押し出し部材8B>
押し出し部材8Bは、後述する止血剤Sを先端側に移動させることによって、後述する第1筒状部材8C及び第2筒状部材8Dから止血剤Sを押し出す。図1図3に示すように、押し出し部材8Bは、延伸方向に沿って延びる筒状の部材である。押し出し部材8Bの内径は、位置決め部材8Aの延伸部81の外径よりも大きい。押し出し部材8Bの基端部は、後述する移動部材51B(図7参照)に接続される。押し出し部材8Bは延伸方向に移動可能である。押し出し部材8Bは、移動部材51Bから筐体71の内部を通って先端側に延び、筐体71の先端部から先端側に突出する。押し出し部材8Bの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81(図4参照)が挿通される。
【0045】
位置決め部材8Aの延伸部81は、押し出し部材8Bの先端部(「押し出し先端84」という。)から先端側に突出する。位置決め部材8Aの第1係合部82は、押し出し部材8Bの押し出し先端84よりも先端側に配置される。
【0046】
<第1筒状部材8C>
第1筒状部材8Cは、後述する止血剤Sを収容する収容シースである。図1図3に示すように、第1筒状部材8Cは、延伸方向に沿って延びる筒状の部材である。第1筒状部材8Cの内径は、押し出し部材8Bの外径よりも僅かに大きい。第1筒状部材8Cの基端部は、後述する移動部材73B(図11参照)に接続される。第1筒状部材8Cは延伸方向に移動可能である。第1筒状部材8Cは、移動部材73Bから筐体71の内部を通って先端側に向けて延び、筐体71の先端部から先端側に突出する。第1筒状部材8Cの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81、及び押し出し部材8Bが挿通される。つまり、位置決め部材8A及び押し出し部材8Bのそれぞれの一部は、第1筒状部材8Cの内部に配置される。位置決め部材8Aの延伸部81は、第1筒状部材8Cの先端部(「第1先端85」という。)から先端側に突出する。位置決め部材8Aの第1係合部82は、第1筒状部材8Cの第1先端85よりも先端側に配置される。
【0047】
第1筒状部材8Cの第1先端85に対する押し出し部材8Bの押し出し先端84の位置は、第1筒状部材8Cに対して押し出し部材8Bが延伸方向に相対移動することに応じ、基端側に配置された状態(図1図3参照)と、先端側に配置された状態とに切り替わる。
【0048】
<第2筒状部材8D>
第2筒状部材8Dは、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cを穿刺穴に挿入するための挿入シースである。第2筒状部材8Dは、延伸方向に沿って延びる筒状の部材である。第2筒状部材8Dの内径は、第1筒状部材8Cの外径よりも大きい。第2筒状部材8Dの基端部は、後述する連結部71Cに接続される。第2筒状部材8Dは延伸方向に移動可能である。
【0049】
第2筒状部材8Dの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cが挿通される。つまり、位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cのそれぞれの一部は、第2筒状部材8Dの内部に配置される。押し出し部材8Bの押し出し先端84、及び、第1筒状部材8Cの第1先端85は、第2筒状部材8Dの先端部(「第2先端86」という。)よりも基端側に配置される。位置決め部材8Aの第1係合部82は、第2筒状部材8Dの第2先端86よりも先端側に配置される。
【0050】
<止血剤S>
止血剤Sは、穿刺穴に貯留して血管の開口部を閉塞する。止血剤Sの材料として、ゲル状のポリエチレングリコール(PEG)、セラチン、コラーゲン等が用いられる。止血剤Sは、第1筒状部材8Cの第1先端85に対して押し出し部材8Bの押し出し先端84が基端側に配置された状態で、第1筒状部材8Cの内部に配置される。この場合、止血剤Sは、位置決め部材8Aの第1係合部82よりも基端側、且つ、押し出し部材8Bの押し出し先端84よりも先端側の部分に配置される。止血剤Sは、位置決め部材8Aの延伸部81の外周面に付着する。止血剤Sは、第1筒状部材8Cに対して押し出し部材8Bが先端側に相対移動した場合、押し出し先端84によって先端側に移動する。これによって止血剤Sは、第1筒状部材8Cの内部から第1先端85を介して外部に押し出される。
【0051】
<切替部材72B>
図3に示すように、筐体71の内部のうち基端部近傍に、切替部材72Bが配置される。切替部材72Bは、後述する規制部材72A(図10参照)の状態を切り替える。切替部材72Bは、位置決め部材8Aに力が作用した場合、延伸方向に移動する。又、切替部材72Bは、第3操作部530の操作に応じて延伸方向に移動し、位置決め部材8Aを延伸方向に移動させる。図4に示すように、切替部材72Bは、基部725、延設部726、727を有する。
【0052】
基部725は略直方体状である。基部725は、先端側の面と基端側の面との間に亘って延伸方向に貫通する貫通孔725Aを有する。位置決め部材8Aの延伸部81の基端部は、基部725の先端側の面に接続する。延伸部81の内腔は、基部725の貫通孔725Aに連通する。
【0053】
延設部726、727は、それぞれ板状を有する。延設部726は、基部725の上端部から先端側に向けて延びる。以下、延設部726の先端側の端部を、「延設部726の先端部」という。延設部727は、第1部分727A、第2部分727B、第3部分727C、及び、突出部727Dを有する。第1部分727Aは、基部725の上端部から基端側に向けて延びる。第2部分727Bは、第1部分727Aの基端部から上側に向けて延びる。第3部分727Cは、第2部分727Bの上端部から先端側に向けて延びる。第1部分727Aと第3部分727Cとは、上下方向に間隔を空けて対向する。突出部727Dは、第3部分727Cの先端部から上側に突出する。延設部726の先端部は、後述する移動部材73Aの第2係合部730(図9参照)に基端側から挿通する。
【0054】
基部725の基端側の面に第3操作部530が接続される。第3操作部530は円筒状を有し、基部725の基端側の面から基端側に延びる。第3操作部530の内腔は、基部725の貫通孔725Aに連通する。図1図3に示すように、第3操作部530は、筐体71の基端部から基端側に突出する。第3操作部530の基端部に、非図示のチューブを介して非図示のハブが接続される。ハブは、第3操作部530の内腔及び基部725の貫通孔725Aを介して、位置決め部材8Aの延伸部81の内腔に圧縮流体を注入する。延伸部81に注入された圧縮流体は、位置決め部材8Aの第1係合部82を膨らませることによって、第1係合部82を収縮状態から膨張状態に切り替える。
【0055】
切替部材72Bは、延伸方向の位置がそれぞれ異なる第1基端位置、第1先端位置、及び、第1中間位置に亙って移動可能である。図5図6に示すように、切替部材72Bが第1中間位置に配置された場合、筐体71の内壁のうち突出部711Aよりも基端側に形成された規制壁710Aが、切替部材72Bの突出部727Dに対して基端側から接触する。第1先端位置は、第1中間位置よりも先端側の位置である。切替部材72Bが第1先端位置に配置された場合、後述する移動部材73Aの延設部734の先端が、切替部材72Bの第2部分727Bに対して先端側から接触する。第1基端位置は、第1中間位置よりも基端側の位置である。切替部材72Bが第1基端位置に配置された場合、筐体71の内壁の基端部に対応する基端壁710Bが、切替部材72Bの基部725に対して基端側から接触する。なお、切替部材72Bは、止血器具10が使用されていない初期状態において、第1中間位置に配置される。
【0056】
<レバーモジュール51>
図2図3に示すように、筐体71の内部の上端部近傍にレバーモジュール51が設けられる。レバーモジュール51は、移動部材51A、51B、及びピニオンギア51Cを有する。移動部材51A、51Bは、それぞれ、延伸方向に長い略棒状を有し、上下方向に並ぶ。移動部材51Bは、移動部材51Aの下側に配置される。移動部材51A、51Bは、それぞれ、互いに平行に延びる。ピニオンギア51Cは、移動部材51A、51Bによって上下両側から挟まれる。ピニオンギア51Cの回転軸は、左右方向に延びる。
【0057】
図7に示すように、移動部材51Aの延伸方向中央よりも先端側の部分に、上下方向に貫通するスリット状の貫通孔511が形成される。図8に示すように、貫通孔511の内部にラックギア512が設けられる。図7に示すように、移動部材51Aの上端部のうち、貫通孔511よりも基端側の部分に、第1操作部510が設けられる。移動部材51Aのうち第1操作部510よりも基端側に延びる部分を、「基端部518」という。移動部材51Bの上面に、延伸方向に延びる溝513が設けられる。図8に示すように、溝513の内部にラックギア514が設けられる。
【0058】
ピニオンギア51Cは、移動部材51Aの貫通孔511及び移動部材51Bの溝513の内部に配置される。ピニオンギア51Cの回転軸519は、移動部材51A、51Bによって上下方向から挟まれ、回転可能に支持される(図2図3参照)。ピニオンギア51Cの歯は、ラックギア512、514に噛み合う。ピニオンギア51Cは、第1操作部510に対する操作に応じて移動部材51Aが延伸方向に移動することにより、回転する。ピニオンギア51Cが回転することに応じ、移動部材51Bは、延伸方向に沿って移動部材51Aと反対方向に移動する。このため、第1操作部510を先端側に移動させる操作が行われた場合、移動部材51Bは基端側に移動する。第1操作部510を基端側に移動させる操作が行われた場合、移動部材51Bは先端側に移動する。
【0059】
移動部材51Bの下面のうち基端部近傍に、下方に突出する突出部517が設けられる。突出部517には、延伸方向に延びる貫通孔517Aが形成される。押し出し部材8Bの基端部は、突出部517の先端側の面のうち貫通孔517Aの周辺に接続される。押し出し部材8Bは、突出部517から先端側に延びる。切替部材72B(図6参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81は、貫通孔517Aに基端側から挿通する。位置決め部材8Aは、貫通孔517Aを通過して突出部517よりも先端側に延び、押し出し部材8Bの内腔を通過する。
【0060】
第1操作部510に対する操作に応じて移動部材51Bが延伸方向に移動した場合、押し出し部材8Bも延伸方向に移動する。以下、基端側に最も移動した移動部材51Bの位置を「第2基端位置」(図14図16参照、後述)といい、先端側に最も移動した移動部材51Bの位置を「第2先端位置」(図19図22参照、後述)という。第2基端位置と第2先端位置との間の中間位置を、「第2中間位置」(図17図18参照、後述)という。移動部材51Bは、止血器具10が使用されていない初期状態において、第2基端位置に配置される。
【0061】
図7に示すように、移動部材51Bの右面の延伸方向略中央に、右方に突出する突出部515が設けられる。移動部材51Bの左面の延伸方向略中央に、左方に突出する突出部516(図20参照)が設けられる。突出部515は磁石515A(図7参照)を内蔵し、突出部516は磁石516A(図20参照)を内蔵する。
【0062】
<移動部材73A>
図2図3に示すように、筐体71の内部のうち切替部材72Bの先端側に、移動部材73Aが配置される。移動部材73Aは、レバーモジュール51の移動部材51Bの基端側の端部に接続する。移動部材73Aは、第1操作部510に対する操作に応じて移動部材51Bが延伸方向に移動する場合、連動して延伸方向に移動する。
【0063】
以下、移動部材51Bが第2基端位置に配置された場合における移動部材73Aの位置を「第3基端位置」(図14、~図16参照、後述)といい、移動部材51Bが第2先端位置に配置された場合における移動部材73Aの位置を「第3先端位置」(図19図22参照、後述)という。第3基端位置と第3先端位置との間の中間位置を、「第3中間位置」(図17、~図18参照、後述)という。移動部材73Aは、止血器具10が使用されていない初期状態において、第3基端位置に配置される。移動部材73Aが延伸方向に移動する場合に通過する領域を、「第1移動領域」という。
【0064】
図9に示すように、移動部材73Aは、基部731、732、架設部733、及び、延設部734を有する。
【0065】
基部731、732は、それぞれ、複数の直方体が連結した形状を有する。基部731は、先端側の面と基端側の面との間に亘って延伸方向に貫通する貫通孔である第2係合部730を上端部に有する。基部731のうち第2係合部730の上側から基端側に向けて、板状の延設部734が延びる。基部732は、基部731に対して先端側に離隔して配置される。基部732の上端部は、レバーモジュール51の移動部材51Bの基端部の下面に接続する(図5参照)。架設部733は板状を有し、延伸方向に延びる。架設部733の基端部は、基部731の先端側の面に接続する。架設部733の先端部は、基部732の基端側の面に接続する。
【0066】
図5に示すように、移動部材73Aが第3基端位置に配置された状態で、第2係合部730には、第1中間位置に配置された切替部材72Bの延設部726が基端側から挿通する。又、第2係合部730には、後述する規制部材72Aの制限部723が先端側から挿通して係合可能である。更に、移動部材73Aの延設部734は、切替部材72Bの延設部727の第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間に先端側から挿通する。なお、切替部材72Bは、第1中間位置から先端側に向けて、移動部材73Aの延設部734の先端に第2部分727Bが接触するまで移動することにより、第1中間位置から第1先端位置に切り替わる。
【0067】
図6に示すように、移動部材73A(図5参照)が第3先端位置に配置された状態で、移動部材73Aは、切替部材72Bに対して先端側に離隔する。この場合、切替部材72Bの延設部726は、移動部材73Aの第2係合部730に挿通しない。又、移動部材73Aの延設部734(図5参照)は、切替部材72Bの延設部727の第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間に挿通しない。切替部材72Bは、この状態で第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間が小さくなるように弾性変形し、規制壁710Aから突出部727Dが脱離可能となる。切替部材72Bは、規制壁710Aから突出部727Dが脱離した状態で、第1中間位置から基端側に向けて、筐体71の基端壁710Bに基部725が接触するまで移動する。これにより、切替部材72Bは第1中間位置から第1基端位置に切り替わる。
【0068】
<規制部材72A>
図2図3に示すように、筐体71の突出部711Aの下方に規制部材72Aが配置される。規制部材72Aは、後述する付勢部724(図10参照)の付勢力に応じて上下方向に移動する。図10に示すように、規制部材72Aは、基部721、延設部722、制限部723、及び付勢部724を有する。
【0069】
基部721は、第1部分721A、第2部分721B、721C、及び第3部分721Dを有する。第1部分721Aは、延伸方向と直交する面を基端側に有する。第2部分721Bは、第1部分721Aの右端部から先端側に延び、左右方向と直交する面を右側に有する。第2部分721Cは、第1部分721Aの左端部から先端側に延び、左右方向と直交する面を右側に有する。第3部分721Dは、第2部分721B、721Cのそれぞれの先端部の間に亙って設けられる。付勢部724は引張コイルバネである。付勢部724の下端部は、第1部分721A、第2部分721B、721C、及び第3部分721Dのそれぞれの面で囲まれた孔の内部で、基部721に接続される。付勢部724の上端部は、筐体71の突出部711A(図1図3参照)の上側の内壁に接続される。規制部材72Aには、付勢部724の弾性力に応じて上向きに付勢力が作用する。延設部722は、基部721から下方に延びる。制限部723は板状を有し、延設部722の下端部から基端側に突出する。
【0070】
図5に示すように、制限部723は、付勢部724の付勢力に抗して基部721が下方に移動した状態で、移動部材73Aの第1移動領域に配置される。この状態で、制限部723は、第3基端位置に配置された移動部材73Aの第2係合部730に先端側から挿通して係合する。制限部723が移動部材73Aに係合した場合、付勢部724の付勢力に応じた規制部材72Aの上方への移動は制限される。又、この状態で、移動部材73Aの第3基端位置から第3先端位置に向けた移動は、制限部723によって規制される。このため、移動部材73Aと接続する移動部材51Bの第2基端位置から第2中間位置に向けた移動も規制され、更に、移動部材51Bに接続した押し出し部材8B(図7参照)の移動も規制される。以下、制限部723が移動部材73Aの第2係合部730に係合して移動部材51Bの移動を規制した状態を、「規制状態」という。
【0071】
規制部材72Aが規制状態のときに、切替部材72Bが第1中間位置から第1先端位置に向けて先端側に移動した場合、切替部材72Bの延設部726は、移動部材73Aの第2係合部730から先端側に突出する。これにより、移動部材73Aの第2係合部730に対して制限部723が係合した状態は解除される。この場合、付勢部724の付勢力に応じて規制部材72Aの基部721は上方に移動する(図6参照)。これによって、規制部材72Aの制限部723は、移動部材73Aの第1移動領域に配置されなくなる。この状態で、移動部材73Aの移動は制限部723によって規制されないため、移動部材73Aは第1移動領域を延伸方向に移動可能となる。これにより、移動部材73Aに接続する移動部材51Bも、延伸方向に移動可能となる。以下、制限部723が移動部材73Aの第2係合部730に係合せず、移動部材51Bの移動が規制されない状態を、「許可状態」という。
【0072】
<移動部材73B>
図3に示すように、筐体71の内部のうちレバーモジュール51の下側に、移動部材73Bが配置される。移動部材73Bは、第1操作部510に対する操作に応じて延伸方向に移動し、第1筒状部材8Cを延伸方向に移動させる。以下、基端側に最も移動した移動部材73Bの位置を「第4基端位置」(図14図16参照)といい、先端側に最も移動した移動部材73Bの位置を「第4先端位置」(図17図22参照)という。移動部材73Bは、止血器具10が使用されていない初期状態において、第4基端位置に配置される。図11に示すように、移動部材73Bは、基部736、及び、延設部737、738を有する。
【0073】
基部736は、左右方向に長い略直方体状である。延設部737は、基部736の上端部の左右方向中央から上方に向けて突出する。延設部738は、基部736の下端部の左右方向中央から下方に向けて突出する。延設部738は、筐体71の突出部711B(図1図3参照)の内部空間に配置され、内部空間に沿って延伸方向に移動する。移動部材73Bが第4基端位置に配置された場合、延設部738は、突出部711Bの内部空間の基端部に配置される。移動部材73Bが第4先端位置に配置された場合、延設部738は、突出部711Bの内部空間の先端部に配置される。基部736は、延設部737、738よりも右側の部分736Aに磁石739Aを内蔵し、延設部737、738よりも左側の部分736Bに磁石739Bを内蔵する。
【0074】
基部736の中心に、延伸方向に延びる貫通孔736Cが形成される。第1筒状部材8Cの基端部は、基部736の先端側の面のうち貫通孔736Cの周辺に接続する。第1筒状部材8Cは、基部736から先端側に延びる。切替部材72B(図6参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81、及び、移動部材51B(図7参照)から先端側に延びる押し出し部材8Bは、貫通孔736Cに基端側から挿通する。位置決め部材8Aの延伸部81及び押し出し部材8Bは、貫通孔736Cを通過して基部736よりも先端側に延び、第1筒状部材8Cの内腔を通過する。
【0075】
<移動部材74B>
図2図3に示すように、移動部材74Bは、筐体71の内部のうち移動部材73Bよりも先端側に配置される。移動部材74Bは、第1操作部510に対する操作に応じて延伸方向に移動し、後述する制限機構74C(図13参照)の状態を切り替える。以下、基端側に最も移動した移動部材74Bの位置を「第5基端位置」(図14図18参照)といい、先端側に最も移動した移動部材74Bの位置を「第5先端位置」(図19図22参照)という。移動部材74Bは、止血器具10が使用されていない初期状態において、第5基端位置に配置される(図14図18参照)。図12に示すように、移動部材74Bは、基部745及び延伸部746を有する。
【0076】
基部745は、左右方向に長い略直方体状である。基部745の上端部のうち左右方向中央に、下方に凹んだ凹部が設けられる。基部745は、凹部よりも右側の部分745Aに磁石740Aを内蔵し、凹部よりも左側の部分745Bに磁石740Bを内蔵する。延伸部746は板状を有し、基部745の左端部から先端側に延びる。延伸部746の上端部は、第1部分746A、第2部分746B、及び第3部分746Cを有する。第1部分746Aは、延伸部746の先端部から基端側に向けて、延伸方向に延びる。第2部分746Bは、第1部分746Aの基端部から基端側に向けて、斜め上側に傾斜して延びる。第3部分746Cは、第2部分746Bの基端部から基端側に向けて、延伸方向に延びる。
【0077】
基部745のうち凹部の下側に、延伸方向に延びる貫通孔745Cが形成される。切替部材72B(図6参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81、移動部材51B(図7参照)から先端側に延びる押し出し部材8B、及び、移動部材73B(図11参照)から先端側に延びる第1筒状部材8Cは、貫通孔745Cに基端側から挿通する。位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、貫通孔745Cを通過して基部745よりも先端側に延びる。
【0078】
<連結部71C>
図3に示すように、筐体71の先端部に連結部71Cが設けられる。連結部71Cは、第2操作部520に対する操作に応じて移動し、第2筒状部材8Dを延伸方向に移動させる。以下、基端側に最も移動した連結部71Cの位置を「第6基端位置」(図14図20参照)といい、先端側に最も移動した連結部71Cの位置を「第6先端位置」(図21図22参照)という。連結部71Cの移動は、後述する制限機構74C(図13参照)により規制可能である。図3に示すように、連結部71Cは、筒部716、延設部717、及び突出部718を有する。
【0079】
筒部716は、延伸方向に延びる内腔を有する筒状の部材である。筒部716は、延伸方向に並ぶ先端筒部716A、及び基端筒部716Bを有する。先端筒部716Aは、基端筒部716Bに対して先端側に配置される。先端筒部716Aの径は、基端筒部716Bの径よりも大きい。先端筒部716Aの先端部には、コネクタ88(図14参照)を介して第2筒状部材8Dが着脱可能に接続される。位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、第2筒状部材8Dの内腔を通過して先端側に延びる。
【0080】
延設部717は、細長い板状を有する。延設部717は、先端筒部716Aの上端部から基端側に延びる。突出部718は、基端筒部716Bの基端部から右側に突出する。延設部717の基端部は、突出部718に接続する。基端筒部716B及び延設部717のそれぞれの基端部は、筐体71の先端部に設けられた貫通孔に対して先端側から挿通する。連結部71Cが先端側に移動した場合、筐体71の内壁に突出部718が引っ掛かる。これによって、筐体71から連結部71Cが脱離することが抑制される。
【0081】
図2に示すように、突出部718の右端部に、板状の架設部52が接続される。架設部52は、突出部718から基端側に延びる。架設部52の基端部に第2操作部520が接続される。第2操作部520に対する操作に応じた力は、架設部52を介して連結部71Cに伝達され、連結部71Cを延伸方向に移動させる。
【0082】
<制限機構74C>
図13に示すように、制限機構74Cは、筐体71の内部のうち連結部71Cの基端筒部716B(図1図3参照)よりも左側、且つ、移動部材74Bの延伸部746(図12参照)の上側に配置される。制限機構74Cは、制限部747及び付勢部748を有する。制限部747は略直方体状である。付勢部748は、制限部747の上側に配置される。付勢部748は圧縮コイルバネである。付勢部748の上端部は、筐体71の内壁に接続される。付勢部748の下端部は、制限部747の上端部に接続される。制限部747には、付勢部748の弾性力に応じて下向きに付勢力が作用する。
【0083】
図13は、移動部材74Bが第5基端位置に配置された状態を示す。この状態で、制限機構74Cの制限部747は、移動部材74Bの延伸部746の第1部分746Aに接触する。制限部747は、付勢部748の付勢力に応じ、延伸部746の第1部分746Aに上側から押し付けられる。以下、移動部材74Bの延伸部746の第1部分746Aに接触した状態における制限部747の上下方向の位置を、「規制位置」という。規制位置に配置された状態の制限部747は、第6先端位置に配置された状態の連結部71Cの突出部718の基端側の面に接触する。この場合、連結部71Cの突出部718の延伸方向の移動領域(以下、「第2移動領域」という。)に制限部747が配置されることになるので、連結部71Cの基端側への移動は、制限部747により規制される。なお、制限部747は、止血器具10が使用されていない初期状態において規制位置に配置される。
【0084】
移動部材74Bが第5基端位置から第5先端位置まで移動する過程で、制限機構74Cの制限部747は、移動部材74Bの延伸部746の第1部分746A、第2部分746B、第3部分746Cに順番に接触し、付勢部748の付勢力に抗して上側に移動する。移動部材74Bが第5先端位置に配置された場合、制限機構74Cの制限部747は、移動部材74Bの延伸部746の第3部分746Cに接触する。以下、移動部材74Bの延伸部746の第3部分746Cに接触した状態における制限部747の上下方向の位置を、「許可位置」という。許可位置に配置された制限部747は、規制位置に配置された制限部747よりも上側に配置される。許可位置に配置された状態の制限部747は、第2移動領域よりも上側に配置される。この場合、連結部71Cの延伸方向への移動は、制限部747により規制されない。
【0085】
<止血動作>
図14図22を参照し、止血器具10を用いて止血剤Sにより穿刺穴を止血する動作について説明する。穿刺穴61(図14等参照)を介した治療時、穿刺穴61を介して血管6(図14等参照)内にガイドワイヤが挿通される。次に、ガイドワイヤに沿って第2筒状部材8Dが穿刺穴61に挿通される。第2筒状部材8Dの第2先端86は、血管6に形成された開口部6A(図14等参照)を介して血管6内に配置される。
【0086】
治療の終了後、図14図15に示すように、規制部材72Aが規制状態であり、切替部材72Bが第1中間位置、レバーモジュール51の移動部材51Bが第2基端位置、移動部材73Aが第3基端位置、移動部材73Bが第4基端位置、移動部材74Bが第5基端位置、及び、連結部71Cが第6先端位置にそれぞれ配置された止血器具10が準備される。
【0087】
レバーモジュール51の移動部材51Bの突出部515の下側に、移動部材73Bの部分736Aが配置される。突出部515に内蔵された磁石515A(図7参照)と、部分736Aに内蔵された磁石739A(図11参照)との間に、互いに引き合う向きの磁力が作用する。同様に、図示されていないが、レバーモジュール51の移動部材51Bの突出部516(図20参照)の下側に、移動部材73Bの部分736B(図11参照)が配置される。突出部516に内蔵された磁石516A(図20参照)と、部分736Bに内蔵された磁石739B(図11参照)との間に、互いに引き合う向きの磁力が作用する。
【0088】
図15に示すように、止血器具10を上記の状態とした場合、規制部材72Aが規制状態とされるため、規制部材72Aの制限部723(図10参照)は、移動部材73Aの第2係合部730(図9参照)に先端側から係合し、移動部材73Aの第1移動領域に配置される。このため、移動部材73Aの延伸方向の移動は制限部723によって規制される。従って、移動部材73Aを介して移動部材51Bに接続した押し出し部材8B(図7参照)の移動も規制される。又、移動部材74Bが第5基端位置に配置されるため、制限機構74Cの制限部747は規制位置に配置される。このため、第6先端位置に配置された連結部71Cの基端側への移動は、制限機構74Cにより規制される。
【0089】
<前動作>
図14に示すように、止血器具10の位置決め部材8A、止血剤S、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、穿刺穴61に配置された状態の第2筒状部材8Dに挿通される。その後、第2筒状部材8Dのコネクタ88が止血器具10の連結部71Cに接続される。位置決め部材8Aの第1係合部82は、第2筒状部材8Dの第2先端86から先端側に突出し、血管6内に配置される。止血剤S、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、第2筒状部材8D内に配置される。位置決め部材8Aの第1係合部82から基端側に向けて、第2筒状部材8Dの第2先端86、第1筒状部材8Cの第1先端85、止血剤S、及び、押し出し部材8Bの押し出し先端84がこの順番で配列される。
【0090】
次に、ハブから圧縮流体が供給されることに応じ、位置決め部材8Aの第1係合部82が血管6内で膨張する。この状態で、使用者は止血器具10の筐体71を所持して力を加え、穿刺穴61から第2筒状部材8Dが引き抜かれる側(基端側)に筐体71を移動させる。これにより、血管6内で膨張した第1係合部82は、血管6に形成された開口部6Aに内側から係合する。更に使用者は筐体71を基端側に移動させる。これにより、位置決め部材8Aは筐体71に対して先端側に移動し、図14図15に示すように、位置決め部材8Aが接続する切替部材72Bも、移動部材73Aに対して先端側に移動する(図14図15の矢印Y11)。
【0091】
切替部材72Bが第1中間位置から第1先端位置まで移動した場合、切替部材72Bの延設部726(図4参照)は、移動部材73Aの第2係合部730(図9参照)から先端側に突出する。これにより、移動部材73Aの第2係合部730に対する制限部723の係合は解除される。この場合、図16に示すように、付勢部724(図10参照)の付勢力に応じて規制部材72Aは上方に移動し(矢印Y12)、規制部材72Aは規制状態から許可状態に切り替わる。制限部723は、移動部材73Aの第1移動領域に配置されなくなり、移動部材73Aは第1移動領域を移動可能な状態になる。
【0092】
なお、規制部材72Aの位置は、一旦規制状態から許可状態に切り替わった後、使用者による筐体71への力の付与が解除された場合でも、元の規制状態に戻らない。つまり、移動部材73Aに対する制限部723の係合が一旦解除されて規制部材72Aが許可状態となった場合、規制部材72Aは許可状態で維持され、元の規制状態に戻らない。
【0093】
<第1先端動作>
止血器具10において、規制部材72Aが許可状態となった場合、移動部材73Aは延伸方向に移動可能となる。図17に示すように、使用者は、この状態で、第1操作部510を基端側に移動させる操作を行う(矢印Y13参照)。レバーモジュール51のピニオンギア51Cが回転することに応じ、移動部材51Bは第2基端位置から第2中間位置まで先端側に移動する(矢印Y14)。又、磁石515A(図7参照)、739A(図11参照)の間、及び、磁石516A(図20参照)、739B(図11参照)の間には、互いに引き合う向きの磁力が作用している。このため移動部材73Bは、移動部材51Bの移動に応じ、移動部材51Bに接触しながら第4基端位置から第4先端位置まで先端側に移動する(矢印Y15)。
【0094】
移動部材51Bが先端側に移動することに応じ、突出部517(図7参照)に接続した押し出し部材8Bは先端側に移動する。又、移動部材73Bが先端側に移動することに応じ、基部736(図11参照)に接続した第1筒状部材8Cは、先端側に移動する。なお、切替部材72Bは第1先端位置で維持されるので、基部725に接続した位置決め部材8Aは、第1操作部510が操作されても移動しない。つまり、押し出し部材8B及び第1筒状部材8Cは、筐体71及び位置決め部材8Aに対して先端側に相対移動する。以下、第1操作部510の操作に伴う上記の動作を、「第1先端動作」という。第1先端動作では、移動部材51B、73Bの脱離が磁石515A、516A、739A、739Bにより規制されるので、位置決め部材8Aのみ先端側に移動することが規制される。第1先端動作により、止血剤Sは、第1筒状部材8C内の第1先端85近傍に配置された状態で押し出し部材8Bによって先端側に押され、第2筒状部材8Dの第2先端86近傍に移動する。
【0095】
移動部材73Bが第4基端位置から先端側に移動することに応じ、延設部738は、筐体71の突出部711Bの内部空間に沿って基端部近傍から先端側に移動する。移動部材73Bが第4先端位置まで移動した場合、突出部711Bの内部空間の先端部近傍に延設部738が配置される。図18に示すように、移動部材51Bの突出部515、516、及び、移動部材73Bは、第5基端位置に配置された移動部材74Bの基端側に接触する。なお、移動部材73Bの更なる先端側への移動は、突出部711Bの内壁の先端部に延設部738が基端側から接触することにより抑制される(図17参照)。
【0096】
レバーモジュール51の移動部材51Aのうち第1操作部510よりも基端側の基端部518は、許可状態の規制部材72Aの下側に配置される。基端部518は、規制部材72Aが許可状態から下側に移動して元の規制状態に戻ることを抑制する。
【0097】
移動部材73Aは、移動部材51Bの移動に応じて第3基端位置から第3中間位置まで移動する。移動部材73Aの延設部734は、切替部材72Bの延設部727の第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間に挿通した状態から、挿通しない状態に切り替わる。切替部材72Bの延設部727の第2部分727Bは、第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間が狭くなるように弾性変形可能となる。
【0098】
<第2先端動作>
図19に示すように、次に使用者は、第1操作部510を更に基端側に移動させる操作を行う(矢印Y16参照)。レバーモジュール51のピニオンギア51Cが回転することに応じ、移動部材51Bは第2中間位置から第2先端位置まで先端側に移動する(矢印Y17参照)。なお、移動部材73Bの先端側への移動は、突出部711Bの内壁に延設部738が基端側から接触することにより抑制される。移動部材73Bは第4先端位置で維持される。このため、移動部材51Bは、移動部材73Bから離隔し、第1操作部510の操作に応じて先端側に移動する。又、移動部材51Bの移動に応じ、移動部材51Bに接続した移動部材73Aも、第3中間位置から第3先端位置に移動する。
【0099】
移動部材51Bが先端側に移動することに応じ、突出部517(図7参照)に接続した押し出し部材8Bは先端側に移動する。一方、移動部材73Bの基部736(図11参照)に接続した第1筒状部材8Cは先端側に移動しない。又、切替部材72Bは第1先端位置で維持されるので、基部725(図4参照)に接続した位置決め部材8Aは先端側に移動しない。つまり、押し出し部材8Bは、筐体71、位置決め部材8A、及び第1筒状部材8Cに対して先端側に相対移動する。以下、第1操作部510の操作に伴う上記の動作を、「第2先端動作」という。第2先端動作では、移動部材51B、73Bの脱離が許可されるので、位置決め部材8Aのみ先端側に移動可能となる。つまり、移動部材51B、73Bは、第1先端動作が終了するまでの間、第2先端動作を規制し、第1先端動作が終了したことに応じ、第2先端動作の規制を解除して実行可能とする。
【0100】
第2先端動作により、止血剤Sは、押し出し部材8Bの押し出し先端84によって第1筒状部材8Cの第1先端85よりも先端側に押し出される。止血剤Sは、第2筒状部材8Dの第2先端86近傍で、位置決め部材8Aの第1係合部82に基端側から押し付けられる。これにより、止血剤Sは、第1係合部82が係合する血管6の開口部6Aを閉塞する。
【0101】
図20に示すように、第2先端動作によって移動部材51Bが第2先端位置に移動することに応じ、移動部材74Bは、移動部材51Bの突出部515、516によって先端側に押され、第5基端位置から第5先端位置まで先端側に移動する(矢印Y18、図19参照)。これにより、制限機構74Cの制限部747は、規制位置(図13参照)から許可位置(図20参照)に移動する。この場合、制限部747は第2移動領域に配置された状態から配置されない状態になる。このため、連結部71Cは、第6先端位置から第6基端位置に向けて移動可能となる。つまり、連結部71Cは、第2先端操作において押し出し部材8Bが先端側に移動したことに応じ、筐体71、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cに対して基端側に相対移動可能な状態になる。
【0102】
<連結基端動作>
図21に示すように、次に使用者は、第2操作部520を基端側に移動させる操作を行う(矢印Y19参照)。なお、第2操作部520は、架設部52を介して連結部71Cに接続する。更に連結部71Cは、第2先端動作により、第6先端位置から第6基端位置に向けて基端側に移動可能な状態となっている。従って、第2操作部520に対する操作に応じ、連結部71Cは、第6先端位置から第6基端位置まで移動する(矢印Y20参照)。以下、第2操作部520の操作に伴う上記の動作を、「連結基端動作」という。つまり、連結基端動作は、第2先端動作が終了するまでの間、制限部747が規制位置に配置されることで規制される。一方、第2先端動作が終了することで制限部747が許可位置に切り替えられることに応じ、連結基端動作は規制が解除されて実行可能となる。
【0103】
連結基端動作により、連結部71Cに連結する第2筒状部材8Dは基端側に移動する。一方、切替部材72Bに接続する位置決め部材8A、移動部材51Bに接続する押し出し部材8B、移動部材73Bに接続する第1筒状部材8Cは、移動しない。つまり、第2筒状部材8Dは、筐体71、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cに対して基端側に相対移動する。この場合、第2筒状部材8Dの第2先端86は、血管6の開口部6Aを閉塞した状態の止血剤Sから基端側に離隔する。
【0104】
<位置決め基端動作>
次に使用者は、第1係合部82に供給された圧縮流体を、ハブを介して引き抜き、第1係合部82を収縮させる。次に使用者は、図22に示すように、筐体71に対して第3操作部530を基端側に移動させる操作を行う(矢印Y21参照)。なお、第3操作部530は切替部材72Bに接続する。移動部材73Aの延設部734は、切替部材72Bの第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間に挿通しない状態となっている。従って、第3操作部530に対する操作に応じ、切替部材72Bは、第1部分727Aと第3部分727Cとの間の隙間が小さくなるように弾性変形し、規制壁710A(図5図6参照)から突出部727D(図5図6参照)が脱離可能となる。切替部材72Bは、規制壁710Aから突出部727Dが脱離した状態で、第1中間位置から基端側に向けて、筐体71の基端壁710Bに基部725が接触するまで移動する。これにより、切替部材72Bは第1中間位置から第1基端位置まで基端側に移動し、切替部材72Bに接続する位置決め部材8Aも基端側に移動する。一方、移動部材51Bに接続する押し出し部材8B、移動部材73Bに接続する第1筒状部材8C、及び、連結部71Cに接続する第2筒状部材8Dは移動しない。つまり、位置決め部材8Aは、筐体71、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、及び第2筒状部材8Dに対して基端側に相対移動する。以下、第3操作部530の操作に伴う上記の動作を、「位置決め基端動作」という。
【0105】
位置決め基端動作により、位置決め部材8Aの第1係合部82は、押し出し部材8Bの押し出し先端84よりも基端側に移動し、押し出し部材8B内に配置される。その後、位置決め部材8A、止血剤S、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、及び第2筒状部材8Dは、穿刺穴61から引き抜かれる。
【0106】
<第1実施形態の作用、効果>
以上のように、止血器具10では、血管6の開口部6Aに位置決め部材8Aの第1係合部82が係合した状態で第1先端動作が実行される。第1先端動作では、第1筒状部材8C及び押し出し部材8Bが筐体71に対して先端側に相対移動する。これによって、止血器具10は、止血剤Sを、第1筒状部材8C内に保持された状態で先端側に移動させ、位置決め部材8Aの第1係合部82に近接させることができる。第2先端動作では、押し出し部材8Bが筐体71及び第1筒状部材8Cに対して先端側に相対移動する。これによって、止血器具10は、押し出し部材8Bによって第1筒状部材8Cから止血剤Sを押し出し、第1係合部82近傍に露出させる。更に第2先端動作では、押し出し部材8Bによって、第1係合部82に接触する位置まで止血剤Sを押し進め、血管6の開口部6Aを含む穿刺穴61を止血剤Sによって閉塞する。
【0107】
止血器具10では、第1先端動作が終了するまでの間、第2先端動作を規制する。これによって、止血器具10は、第1先端動作の終了前に第2先端動作が実行されることを規制する。このため、止血器具10は、誤って操作された場合でも、止血剤Sが第1係合部82に近接する前に第1筒状部材8Cから止血剤Sが押し出されることを防止できる。このため、使用者は、血管6の開口部6Aを止血剤Sにより閉塞して止血するための止血器具10の操作を、容易且つ確実に実行できる。
【0108】
止血器具10は、第1筒状部材8Cに接続した移動部材73B、及び、押し出し部材8Bに接続した移動部材51Bを有する。第1先端動作において、移動部材51B、73Bは互いに接触した状態で先端側に移動する。これにより、押し出し部材8B及び第1筒状部材8Cも先端側に移動する。一方、第2先端動作において、移動部材51Bは、移動部材73Bから離隔した状態で先端側に移動する。これにより、押し出し部材8Bは先端側に移動する。このため止血器具10は、第1先端動作が完了するまで第2先端動作を規制する機能を実現するための構成、及び、第1先端動作の完了後に第2先端動作の規制を解除する機能を実現するための構成を、移動部材51B、73Bにより容易に実現できる。
【0109】
止血器具10では、延伸方向の一方側(基端側)に第1操作部510を移動させる操作に応じて、第1先端動作が実行される。又、止血器具10では、延伸方向の一方側(基端側)に更に第1操作部510を移動させる操作に応じて、第2先端動作が実行される。このため使用者は、共通する方向(延伸方向の一方側(基端側))に第1操作部510を移動させる操作を行うだけで、第1先端動作及び第2先端動作を止血器具10に実行させることができる。従って使用者は、止血器具10を容易に操作して第1先端動作及び第2先端動作を実行させることができる。
【0110】
筐体71の先端部に設けられた連結部71Cには、第2筒状部材8Dが連結される。第2筒状部材8Dの内部に、位置決め部材8A、押し出し部材8B、第1筒状部材8Cがそれぞれ挿通される。第2先端動作が実行された場合、血管6の開口部6Aが止血剤Sによって閉塞される。同時に、連結部71Cは、筐体71、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cに対して基端側に相対移動可能な状態となる。この場合、止血器具10は、連結基端動作が次いで実行されることに応じて、第2筒状部材8Dを基端側に移動させることが可能となる。なお、連結基端動作により、第2筒状部材8Dの第2先端86から止血剤Sから脱離する。従って、止血器具10は、第2筒状部材8Dの第2先端86から止血剤Sを脱離させた状態で、穿刺穴61から第2筒状部材8Dを引き抜くことができる。
【0111】
制限機構74Cの制限部747は、連結部71Cの第2移動領域に配置された状態で連結部71Cの移動を規制する。制限機構74Cの制限部747は、連結部71Cの第2移動領域に配置されない状態で連結部71Cの移動を可能とする。制限機構74Cは、第2先端動作において押し出し部材8Bが先端側に移動したことに伴い、制限部747を、第2移動領域に配置された状態から第2移動領域に配置されない状態に切り替える。これにより、連結部71Cは、基端側への移動が不可能な状態から、基端側への移動が可能な状態に切り替えられる。このため止血器具10は、押し出し部材8Bを移動させるための第2先端動作に連動して、連結部71Cの移動の規制を解除できる。
【0112】
止血器具10は、第3操作部530に対する操作に応じて実行される位置決め基端動作において、第1筒状部材8C、第2筒状部材8D、及び押し出し部材8Bに対して位置決め部材8Aを基端側に相対移動させる。これによって、止血剤Sによる血管6の開口部6Aの閉塞後、位置決め部材8Aの第1係合部82を、止血剤Sよりも基端側に移動させる。止血器具10は、第1筒状部材8C、第2筒状部材8D、及び押し出し部材8Bと独立して位置決め部材8Aを基端側に移動させることができる。従って、止血器具10は、血管6から第1係合部82を引き抜くことが容易に可能となる。
【0113】
第1先端動作及び第2先端動作が実行される場合において、第1操作部510は基端側に移動される。このため使用者は、第2先端動作を実行する場合において、位置決め部材8Aの第1係合部82を血管6の開口部6Aに密着させるために筐体71を基端側に引っ張りながら、第1操作部510を基端側に移動させ、開口部6Aに止血剤Sを押し出すことができる。つまり、止血器具10は、位置決め部材8Aを血管6に密着させるために筐体71に作用させる力の方向と、第1操作部510の操作方向とを同一にできる。従って、止血器具10は、第1先端動作及び第2先端動作が実行される場合における使用者の操作を容易化できる。
【0114】
位置決め部材8Aの第1係合部82は、膨張状態と収縮状態とに切り替え可能なバルーンである。バルーンは、膨張状態で開口部6Aに係合する。この場合、止血器具10は、収縮状態のバルーンを、開口部6Aを介して血管6内に導入できる。止血器具10は、血管6内に導入されたバルーンを膨張状態とすることによって、血管6の内側から開口部6Aにバルーンを係合させることができる。
【0115】
<第2実施形態>
本発明の一実施形態に係る止血器具20について、図面を参照して説明する。第1実施形態と共通する構成(位置決め部材8A、押し出し部材8B)についての説明は、省略又は簡略化する。
【0116】
<筐体1>
図23に示すように、筐体1は、延伸方向に長い略箱状を有する。筐体1は、左側半分の部位に対応する左筐体1Aと、右側半分の部位に対応する右筐体1Bとを組み合わせることによって形成される。筐体1は、基端部近傍の上側から上方に突出する突出部11Aを有する。図24に示すように、筐体1内には、後述する位置決め部材8A、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、規制部材2A、切替部材2B、第1移動部材3A、第2移動部材4A、第4移動部材3B、第5移動部材3C、第6移動部材4B、制限機構4C(図34図35参照)のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0117】
図23に示すように、筐体1の上面のうち突出部11Aよりも先端側に、第1操作部12が設けられる。第1操作部12は、使用者が指で操作するためのスライドレバーである。第1操作部12は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第1操作部12は、後述する第1移動部材3A(図28参照)、第4移動部材3B(図30参照)、第5移動部材3C(図31参照)、及び第6移動部材4B(図33参照)を延伸方向に移動させる。又、第1操作部12は、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8B、及び、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8Cを延伸方向に移動させる。
【0118】
筐体1の右面のうち延伸方向において第1操作部12と略同一位置に、第3操作部13が設けられる。第3操作部13は、使用者が指で操作するためのスライドレバーである。第3操作部13は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第3操作部13は、後述する連結部1C(図32参照)、及び、連結部1Cに接続する第2筒状部材8Dを延伸方向に移動させる。
【0119】
筐体1の基端側に第2操作部14が設けられる。第2操作部14は、使用者が把持して操作するためのハンドルである。第2操作部14は、使用者による操作に応じて延伸方向に移動可能である。第2操作部14は、後述する切替部材2B(図26参照)及び、切替部材2Bに接続する位置決め部材8Aを延伸方向に移動させる。
【0120】
筐体1は、上面のうち第1操作部12よりも前側に通知部15を有する。通知部15は、筐体1の上面に設けられた開口である。使用者は、通知部15を介して筐体1内を目視可能となる。
【0121】
筐体1のうち基端部近傍の下側に、下方に突出した突出部11Bが設けられる。図24に示すように、突出部11Bの内部に収容部14A~14Cが形成される。収容部14A~14Cは、それぞれ、略直方体状の空間である。収容部14A~14Cは、延伸方向に沿って順番に並ぶ。収容部14Aと収容部14Bとは延伸方向に隣接し、収容部14Bと収容部14Cとは延伸方向に離隔する。又、収容部14A~14Cのそれぞれと、筐体1の内部空間とを隔てる壁部(以下、「隔離壁」という。)の厚さは、それぞれ相違する。具体的には、収容部14B、14Cのそれぞれの上側の隔離壁の厚さよりも、収容部14Aの上側の隔離壁の厚さの方が大きい。図25に示すように、収容部14Aに磁石141が収容される。収容部14Bに磁石142が収容される。収容部14Cに磁石143が収容される。磁石141~143は、後述する切替部材2B(図26参照)の延伸方向の移動を磁力によって制限する。なお、図24において磁石141~143は省略されている。
【0122】
<位置決め部材8A、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、第2筒状部材8D>
図23図25に示すように、位置決め部材8Aの延伸部81の基端部は、後述する切替部材2B(図26参照)に接続される。延伸部81は、切替部材2Bから筐体1の内部を通って先端側に延び、筐体1の先端部から先端側に突出する。押し出し部材8Bの基端部は、後述する第1移動部材3A(図28参照)に接続される。押し出し部材8Bは、第1移動部材3Aから筐体1の内部を通って先端側に延び、筐体1の先端部から先端側に突出する。押し出し部材8Bの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81が挿通される。第1筒状部材8Cの基端部は、後述の第4移動部材3B(図30参照)に接続される。第1筒状部材8Cは、第4移動部材3Bから筐体1の内部を通って先端側に向けて延び、筐体1の先端部から先端側に突出する。第1筒状部材8Cの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81、及び押し出し部材8Bが挿通される。第2筒状部材8Dの基端部は、後述する連結部1C(図32参照)に接続される。第2筒状部材8Dの内腔には、位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cが挿通される。
【0123】
<切替部材2B>
図25に示すように、筐体1の内部のうち突出部11Bの上側に切替部材2Bが配置される。切替部材2Bは、後述する規制部材2A(図29参照)の状態を切り替える。切替部材2Bは、第2操作部14に対する操作に応じて延伸方向に移動し、位置決め部材8Aを延伸方向に移動させる。図26に示すように、切替部材2Bは、基部25、突出部26A、26B、接続部27、及び円筒部28を有する。
【0124】
基部25は略直方体状である。基部25は、先端側の面と基端側の面との間に亘って延伸方向に貫通する非図示の貫通孔を有する。位置決め部材8Aの延伸部81の基端部は、基部25の先端側の面に接続する。延伸部81の内腔は、基部25の貫通孔に連通する。基部25は、下端部に磁石25Aを内蔵する。磁石25Aは、切替部材2Bが延伸方向に移動することに応じ、筐体1の磁石141~143(図25参照)の何れかに対して上側に対向する。以下、基部25の磁石25Aが筐体1の磁石141の上側に対向した状態における切替部材2Bの位置を、「第1切替位置」という。基部25の磁石25Aが筐体1の磁石142の上側に対向した状態における切替部材2Bの位置を、「第2切替位置」という。基部25の磁石25Aが筐体1の磁石143の上側に対向した状態における切替部材2Bの位置を、「第3切替位置」という。基部25の磁石25Aが、筐体1の磁石142、143の間の離隔部分の上側に対向した状態における切替部材2Bの位置を、「初期切替位置」という。切替部材2Bは、止血器具20が使用されていない初期状態において、初期切替位置に配置される(図36図37参照)。
【0125】
なお、図24図25を参照して説明したように、磁石142、143が収容される筐体1の収容部14B、14Cの上側の隔離壁の厚さは、磁石141が収容される収容部14Aの上側の隔離壁の厚さよりも小さい。このため、切替部材2Bが第2切替位置又は第3切替位置に配置された場合、切替部材2Bの磁石25Aと筐体1の磁石142、143との間に作用する磁力は相対的に大きくなる。一方、切替部材2Bが第1切替位置に配置された場合、切替部材2Bの磁石25Aと筐体1の磁石141との間に作用する磁力は相対的に小さくなる。
【0126】
図26に示すように、突出部26A、26Bはそれぞれ棒状を有し、基部25の先端側の面から先端側に突出する。突出部26A、26Bは左右方向に並ぶ。突出部26Aは、突出部26Bに対して左側に配置される。図25に示すように、突出部26A、26Bは、後述する第1移動部材3Aの第2係合部311、312(図28参照)に基端側から挿通する。
【0127】
図26に示すように、接続部27は、基部25の右面から右方に延びる板状の第1延設部27A、及び、第1延設部27Aから上方に延びる2つの棒状の第2延設部27Bを有する。2つの第2延設部27Bは延伸方向に並ぶ。図24に示すように、接続部27には、後述する第2移動部材4Aが接続される。図26に示すように、円筒部28は円筒状を有し、基部25の基端側の面から基端側に突出する。円筒部28の内腔は、基部25の非図示の貫通孔に連通する。円筒部28の基端部に第2操作部14が接続される。
【0128】
図23図25に示すように、円筒部28は、筐体1の基端部から基端側に突出する。円筒部28の基端部に、非図示のチューブを介して非図示のハブが接続される。ハブは、円筒部28の内腔及び基部25の非図示の貫通孔を介して、位置決め部材8Aの延伸部81の内腔に圧縮流体を注入する。延伸部81に注入された圧縮流体は、位置決め部材8Aの第1係合部82を膨らませることによって、収縮状態から膨張状態に切り替える。
【0129】
<第2移動部材4A>
図24に示すように、切替部材2Bの接続部27(図26参照)に第2移動部材4Aが接続される。第2移動部材4Aは、筐体1に対する切替部材2Bの相対位置を、筐体1の通知部15(図23参照)を介して使用者に通知する。図27に示すように、第2移動部材4Aは、棒部41、接続部42、及び露出部43を有する。
【0130】
棒部41は略棒状であり、延伸方向に沿って延びる。接続部42は、棒部41の基端部に設けられ、上下方向に貫通する2つの貫通孔を有する。接続部42の2つの貫通孔に、切替部材2Bの接続部27の2つの第2延設部27B(図26参照)が下側から挿通する。これによって、第2移動部材4Aは基端部で切替部材2Bに接続する。第2移動部材4Aが切替部材2Bに接続した状態で、棒部41は、切替部材2Bから先端側に延びる。第2移動部材4Aは、切替部材2Bの移動に伴って延伸方向に移動可能である。
【0131】
露出部43は、棒部41の先端部に接続し、左側に延びる。露出部43は、切替部材2Bが初期切替位置又は第3切替位置に配置された状態で、筐体1の通知部15よりも基端側に配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できない。露出部43は、切替部材2Bが第2切替位置に配置された状態で、筐体1の通知部15の下側に配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できる。露出部43は、切替部材2Bが第1切替位置に配置された状態で、筐体1の通知部15よりも先端側に配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できない。このように、止血器具20は、筐体1に対する第2移動部材4Aの相対位置に応じ、通知部15を介して露出部43を目視可能な状態と目視不可能な状態とに切り替わる。
【0132】
<第1移動部材3A>
図25に示すように、筐体1の内部のうち切替部材2Bの先端側に、第1移動部材3Aが配置される。第1移動部材3Aは、第1操作部12に対する操作に応じて延伸方向に移動する。以下、基端側に最も移動した第1移動部材3Aの位置を「第1基端位置」(図36図39参照、後述)といい、先端側に最も移動した第1移動部材3Aの位置を「第1先端位置」(図44図47参照、後述)という。第1基端位置と第1先端位置との間の中間位置を、「第1中間位置」(図40図43参照、後述)という。第1移動部材3Aは、止血器具20が使用されていない初期状態において、第1基端位置に配置される(図36図37参照)。第1移動部材3Aが延伸方向に移動する場合に通過する領域を、「第1移動領域」という。図28に示すように、第1移動部材3Aは、第1基部31、第2基部32、及び架設部33を有する。
【0133】
第1基部31は略直方体状である。第1基部31は、先端側の面と基端側の面との間に亘って延伸方向に貫通する貫通孔である第2係合部311、312、及び、貫通孔313を有する。第2係合部311、312は、第1基部31の上端部に設けられ、左右方向に並ぶ。第2係合部311は、第2係合部312に対して左側に配置される。図25に示すように、第1移動部材3Aが第1基端位置に配置された状態で、第2係合部311には、初期離切替位置に配置された切替部材2Bの突出部26A(図26参照)が基端側から挿通し、第2係合部312には、切替部材2Bの突出部26B(図26参照)が基端側から挿通する。又、第2係合部311、312には、後述する規制部材2Aの制限部23A、23B(図29参照)が先端側から挿通して係合可能である。
【0134】
図28に示すように、貫通孔313は、第1基部31のうち第2係合部311、312の下側に設けられる。切替部材2B(図26参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81は、貫通孔313を基端側から先端側に通過する。押し出し部材8Bの基端部は、第1基部31の先端側の面に接続する。押し出し部材8Bの内腔は、貫通孔313に連通する。位置決め部材8Aの延伸部81は、貫通孔313から先端側に延び、押し出し部材8Bの内腔を通過する。第1基部31は、左端部に磁石31Aを内蔵する。
【0135】
第2基部32は、第1基部31に対して先端側に離隔して配置される。第2基部32は、下方に凹んだ凹部32Bを有する略直方体状である。位置決め部材8Aの延伸部81及び押し出し部材8Bは、凹部32Bの内側を通過する。架設部33は板状を有し、延伸方向に延びる。架設部33の基端部は、第1基部31の下端部に接続する。架設部33の先端部は、第2基部32の下端部に接続する。
【0136】
<規制部材2A>
図25に示すように、筐体1の突出部11Aの内部に規制部材2Aが配置される。規制部材2Aは、後述する付勢部24(図29参照)の付勢力に応じて、突出部11A内を上下方向に移動する。図29に示すように、規制部材2Aは、基部21、延設部22A、22B、制限部23A、23B、及び付勢部24を有する。
【0137】
基部21は、第1部分21A、第2部分21B、21C、及び第3部分21Dを有する。第1部分21Aは、延伸方向と直交する面を基端側に有する。第2部分21Bは、第1部分21Aの右端部から先端側に延び、左右方向と直交する面を左側に有する。第2部分21Cは、第1部分21Aの左端部から先端側に延び、左右方向と直交する面を右側に有する。第3部分21Dは、第1部分21Aの下端部から先端側に延び、上下方向と直交する面を上側に有する。付勢部24は、第1部分21A、第2部分21B、21C、及び第3部分21Dのそれぞれの面で囲まれた凹部に配置される。付勢部24は引張コイルバネである。付勢部24の上端部は、筐体1の突出部11A(図23図25参照)の上側の内壁に接続される。付勢部24の下端部は、規制部材2Aの基部21の第3部分21Dの上面に接続される。規制部材2Aには、付勢部24の弾性力に応じて上向きに付勢力が作用する。
【0138】
延設部22Aは、基部21の第3部分21Dの左端部から下方に延びる。制限部23Aは、延設部22Aの下端部から基端側に突出する。延設部22Bは、基部21の第3部分21Dの右端部から下方に延びる。制限部23Bは、延設部22Bの下端部から基端側に突出する。
【0139】
制限部23A、23Bは、付勢部24の付勢力に抗して基部21が下方に移動した状態(図25参照)で、第1移動部材3Aの第1移動領域に配置される。この状態で、制限部23A、23Bは、第1基端位置に配置された第1移動部材3Aの第2係合部311、312(図28参照)に先端側から挿通して係合する。制限部23A、23Bが第1移動部材3Aに係合した場合、付勢部24の付勢力に応じた規制部材2Aの上方への移動は制限される。又、この状態で、第1移動部材3Aの第1基端位置から第1先端位置に向けた移動は、制限部23A、23Bによって規制される。このため、第1移動部材3Aと接続する押し出し部材8Bの移動も規制される。以下、制限部23A、23Bが第1移動部材3Aの第2係合部311、312に係合して第1移動部材3Aの移動を規制した状態を、「規制状態」という。
【0140】
規制部材2Aが規制状態のときに、切替部材2B(図26参照)が初期切替位置から先端側に向けて移動した場合、切替部材2Bの突出部26A、26B(図26参照)は、第1移動部材3Aの第2係合部311、312(図28参照)から先端側に突出する。これにより、第1移動部材3Aの第2係合部311、312に対して制限部23A、23Bが係合した状態は解除される。この場合、付勢部24の付勢力に応じて基部21は上方に移動する。これによって、規制部材2Aの制限部23A、23Bは、第1移動部材3Aの第1移動領域に配置されなくなる。この状態で、第1移動部材3Aの移動は制限部23A、23Bによって規制されないため、第1移動部材3Aは第1移動領域を延伸方向に移動可能となる。以下、制限部23A、23Bが第1移動部材3Aの第2係合部311、312に係合せず、第1移動部材3Aの移動が規制されない状態を、「許可状態」という。
【0141】
<第4移動部材3B>
図25に示すように、筐体1の内部のうち第1移動部材3Aの先端側、且つ、第1操作部12の下側に、第4移動部材3Bが配置される。第4移動部材3Bは、第1操作部12に対する操作に応じて延伸方向に移動し、第1筒状部材8Cを延伸方向に移動させる。以下、基端側に最も移動した第4移動部材3Bの位置を「第4基端位置」(図36図39図42図43参照)といい、先端側に最も移動した第4移動部材3Bの位置を「第4先端位置」(図40図41図44図47参照)という。第4移動部材3Bは、止血器具20が使用されていない初期状態において、第4基端位置に配置される(図36図37参照)。図30に示すように、第4移動部材3Bは、第1基部34、第2基部35、及び架設部36を有する。
【0142】
第1基部34は、上下方向に長い略直方体状である。第1基部34は、上端部に磁石34Aを内蔵し、下端部に磁石34Bを内蔵する。第2基部35は、第1基部34に対して基端側に離隔して配置される。第2基部35は、左右方向に長い略直方体状である。第2基部35は、左端部に磁石35Aを内蔵する。架設部36は延伸方向に延び、第1基部34と第2基部35とを連結する。架設部36の先端部は、第1基部34の基端側の面のうち上下方向中央に接続する。架設部36の基端部は、第2基部35の先端側の面のうち右側に接続する。
【0143】
第1基部34、架設部36、及び第2基部35に亘って、延伸方向に延びる貫通孔34Cが形成される。第1筒状部材8Cの基端部は、第2基部35の基端側の面に接続する。第1筒状部材8Cは、基端部から先端部に向けて貫通孔34Cを通過し、第1基部34よりも先端側に延びる。切替部材2B(図26参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81、及び、第1移動部材3A(図28参照)から先端側に延びる押し出し部材8Bは、貫通孔34Cに基端側から挿通する。位置決め部材8Aの延伸部81及び押し出し部材8Bは、第1筒状部材8Cの内腔を通過し、第1基部34よりも先端側に延びる。後述する第5移動部材の筒部38B(図31参照)は、貫通孔34Cに基端側から挿通する。
【0144】
架設部36の上面に、延伸方向に延びる溝部36Aが設けられる。溝部36Aの底面に、ラックギア36Bが形成される。図25に示すように、筐体1の内部且つ第1操作部12の下側に設けられたピニオンギア12Aは、ラックギア36Bに噛み合う。ピニオンギア12Aは、第1操作部12に対する操作に応じて回転する。第4移動部材3Bは、ピニオンギア12Aの回転に応じて、延伸方向に移動する。より詳細には、第1操作部12を先端側に移動させる操作が行われた場合、第4移動部材3Bは基端側に移動する。第1操作部12を基端側に移動させる操作が行われた場合、第4移動部材3Bは先端側に移動する。
【0145】
図25に示すように、第4移動部材3Bの第2基部35は、第1移動部材3Aの第2基部32よりも基端側に配置される。第4移動部材3Bの架設部36は、第1移動部材3Aの第2基部32に設けられた凹部32B(図28参照)に上側から嵌る。
【0146】
<第5移動部材3C>
図25に示すように、筐体1の内部のうち第4移動部材3Bの先端側に、第5移動部材3Cが配置される。第5移動部材3Cは、第1操作部12に対する操作に応じて延伸方向に移動する。以下、基端側に最も移動した第5移動部材3Cの位置を「第5基端位置」(図42図43参照)といい、先端側に最も移動した第5移動部材3Cの位置を「第5先端位置」(図36図41図44図47参照)という。第5移動部材3Cは、止血器具20が使用されていない初期状態において、第5先端位置に配置される(図36図37参照)。図31に示すように、第5移動部材3Cは、基部37、及び筒部38A、38Bを有する。
【0147】
基部37は、上下方向に長い略直方体状である。基部37は、上下方向中央から左側に突出する突出部371を有する。基部37は、上端部に磁石37Aを内蔵し、下端部に磁石37Bを内蔵する。基部37は、突出部371に磁石37Cを内蔵する。基部37は、上下方向中央に、延伸方向に延びる非図示の貫通孔を有する。筒部38Aは、基部37の先端側の面のうち貫通孔が形成された部分から、先端側に延びる。筒部38Bは、基部37の基端側の面のうち貫通孔が形成された部分から、基端側に延びる。筒部38A、38Bのそれぞれの内腔は、基部37の貫通孔に連通する。
【0148】
図25に示すように、筒部38Bは、第4移動部材3Bの貫通孔34C(図30参照)に先端側から挿通する。図31に示すように、切替部材2B(図26参照)から先端側に延びる位置決め部材8Aの延伸部81、第1移動部材3A(図29参照)から先端側に延びる押し出し部材8B、及び、第4移動部材3B(図30参照)から先端側に延びる第1筒状部材8Cは、筒部38Bに基端側から挿通する。位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、筒部38A、38Bの内腔を通過し、筒部38Aの先端部から先端側に延びる。
【0149】
<連結部1C>
図25に示すように、筐体1の先端部に連結部1Cが設けられる。連結部1Cは、第3操作部13(図23参照)に対する操作に応じて移動し、第2筒状部材8Dを延伸方向に移動させる。以下、基端側に最も移動した連結部1Cの位置を「連結基端位置」(図35図46図47参照)といい、先端側に最も移動した連結部1Cの位置を「連結先端位置」(図34図36図45参照)という。連結部1Cの移動は、後述する制限機構4C(図34図35参照)により規制可能である。図32に示すように、連結部1Cは、筒部16、延設部17A、17B、及び突出部18を有する。
【0150】
筒部16は、延伸方向に延びる内腔を有する筒状の部材である。筒部16は、延伸方向に並ぶ先端筒部16A、及び基端筒部16Bを有する。先端筒部16Aは、基端筒部16Bに対して先端側に配置される。先端筒部16Aの径は、基端筒部16Bの径よりも大きい。先端筒部16Aの先端部には、コネクタ88を介して第2筒状部材8Dが着脱可能に接続される。位置決め部材8Aの延伸部81、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cは、第2筒状部材8Dの内腔を通過して先端側に延びる。
【0151】
延設部17A、17Bは、細長い板状を有する。延設部17Aは、先端筒部16Aの上端部から基端側に延びる。延設部17Aの基端部に幅広部171が接続される。幅広部171は、延設部17Aよりも左右方向の幅が大きい。延設部17Bは、基端筒部16Bの下端部から基端側に延びる。突出部18は、基端筒部16Bの基端部から左側に突出する。
【0152】
図25に示すように、基端筒部16B及び延設部17A、17Bのそれぞれの基端部は、筐体1の先端部に設けられた貫通孔に対して先端側から挿通する。連結部1Cが先端側に移動した場合、筐体1の内壁に幅広部171が引っ掛かる。これによって、筐体1から連結部1Cが脱離することが抑制される。
【0153】
図24に示すように、突出部18の右端部に、板状の架設部13Bが接続される。架設部13Bは、突出部18から基端側に延びる。架設部13Bの基端部に第3操作部13が接続される。第3操作部13に対する操作に応じた力は、架設部13Bを介して連結部1Cに伝達され、連結部1Cを延伸方向に移動させる。
【0154】
<第6移動部材4B>
図23図25に示すように、第6移動部材4Bは、筐体1の内部のうち第5移動部材3C及び連結部1Cの左側に配置される。第6移動部材4Bは、第1操作部12に対する操作に応じて延伸方向に移動し、後述する制限機構4C(図34図35参照)の状態を切り替える。以下、基端側に最も移動した第6移動部材4Bの位置を「第6基端位置」(図36図43参照)といい、先端側に最も移動した第6移動部材4Bの位置を「第6先端位置」(図44図47参照)という。第6移動部材4Bは、止血器具20が使用されていない初期状態において、第6基端位置に配置される(図36図37参照)。図33に示すように、第6移動部材4Bは、基部45及び延伸部46を有する。
【0155】
基部45は、左右方向に長い略直方体状である。基部45は、第5移動部材3Cの突出部371(図31参照)に対して基端側に配置される(図37図39図41図43図45参照)。基部45は、磁石45Aを内蔵する。延伸部46は板状を有し、基部45の左端部から先端側に延びる。延伸部46の上端部は、第1部分461、第2部分462、及び第3部分463を有する。第1部分461は、延伸部46の先端部から基端側に向けて、延伸方向に延びる。第2部分462は、第1部分461の基端部から基端側に向けて、斜め上側に傾斜して延びる。第3部分463は、第2部分462の基端部から基端側に向けて、延伸方向に延びる。
【0156】
<制限機構4C>
図34図35に示すように、制限機構4Cは、筐体1の内部のうち連結部1Cの基端筒部16Bよりも左側、且つ、第6移動部材4Bの延伸部46の上側に配置される。制限機構4Cは、制限部47及び付勢部48を有する。制限部47は略直方体状である。付勢部48は、制限部47の上側に配置される。付勢部48は圧縮コイルバネである。付勢部48の上端部は、筐体1の内壁に接続される。付勢部48の下端部は、制限部47の上端部に接続される。制限部47には、付勢部48の弾性力に応じて下向きに付勢力が作用する。
【0157】
図34は、第6移動部材4Bが第6基端位置に配置された状態を示す。この状態で、制限機構4Cの制限部47は、第6移動部材4Bの延伸部46の第1部分461に接触する。制限部47は、付勢部48の付勢力に応じ、延伸部46の第1部分461に上側から押し付けられる。以下、第6移動部材4Bの延伸部46の第1部分461に接触した状態における制限部47の上下方向の位置を、「規制位置」という。規制位置に配置された状態の制限部47は、連結先端位置に配置された状態の連結部1Cの突出部18の基端側の面に接触する。この場合、連結部1Cの突出部18の延伸方向の移動領域(以下、「第2移動領域」という。)に制限部47が配置されることになるので、連結部1Cの基端側への移動は、制限部47により規制される。なお、制限部47は、止血器具20が使用されていない初期状態において規制位置に配置される。
【0158】
第6移動部材4Bが第6基端位置から第6先端位置まで移動する過程で、制限機構4Cの制限部47は、第6移動部材4Bの延伸部46の第1部分461、第2部分462、第3部分463に順番に接触し、付勢部48の付勢力に抗して上側に移動する。図35に示すように、第6移動部材4Bが第6先端位置に配置された場合、制限機構4Cの制限部47は、第6移動部材4Bの延伸部46の第3部分463に接触する。以下、第6移動部材4Bの延伸部46の第3部分463に接触した状態における制限部47の上下方向の位置を、「許可位置」という。許可位置に配置された制限部47は、規制位置に配置された制限部47よりも上側に配置される。許可位置に配置された状態の制限部47は、第2移動領域よりも上側に配置される。この場合、連結部1Cの延伸方向への移動は、制限部47により規制されない。
【0159】
<止血動作>
図36図47を参照し、止血器具20を用いて止血剤Sにより穿刺穴を止血する動作について説明する。第1実施形態と同様の動作については、説明を省略又は簡略化する。
【0160】
穿刺穴61を介した治療の終了後、図36図37に示すように、規制部材2Aが規制状態であり、切替部材2Bが初期切替位置、第1移動部材3Aが第1基端位置、第4移動部材3Bが第4基端位置、第5移動部材3Cが第5先端位置、第6移動部材4Bが第6基端位置、及び、連結部1Cが連結先端位置にそれぞれ配置された止血器具20が準備される。
【0161】
図37に示すように、止血器具20を上記の状態とした場合、規制部材2Aが規制状態とされるため、規制部材2Aの制限部23A、23Bは、第1移動部材3Aの第2係合部311、312(図28参照)に先端側から係合し、第1移動部材3Aの第1移動領域に配置される。このため、第1移動部材3Aの延伸方向の移動は制限部23A、23Bによって規制されるので、第1移動部材3Aに接続した押し出し部材8Bの移動も規制される。第6移動部材4Bが第6基端位置に配置されるため、制限機構4Cの制限部47(図34参照)は規制位置に配置される。このため、連結先端位置に配置された連結部1Cの基端側への移動は、制限機構4Cにより規制される(図34参照)。
【0162】
第1実施形態と同様の前動作が実行される。図36に示すように、前動作においてハブから圧縮流体が供給されることに応じ、位置決め部材8Aの第1係合部82が血管6内で膨張する。この状態で、使用者は止血器具20の筐体1を所持して力を加え、穿刺穴61から第2筒状部材8Dが引き抜かれる側(基端側)に筐体1を移動させる。これにより、血管6内で膨張した第1係合部82は、血管6に形成された開口部6Aに内側から係合する。更に使用者は筐体1を基端側に移動させる。これにより、位置決め部材8Aは筐体1に対して先端側に移動する。図37に示すように、位置決め部材8Aが接続する切替部材2Bも、第1移動部材3Aに対して先端側に移動する(図37の矢印Y31)。
【0163】
切替部材2Bが初期切替位置から第2切替位置まで移動した場合、切替部材2Bの突出部26A、26Bは、第1移動部材3Aの第2係合部311、312(図28参照)から先端側に突出する。これにより、第1移動部材3Aの第2係合部311、312に対する制限部23A、23Bの係合は解除される。この場合、図38に示すように、付勢部24の付勢力に応じて規制部材2Aは上方に移動し(矢印Y32)、規制部材2Aは規制状態から許可状態に切り替わる。図39に示すように、制限部23A、23Bは、第1移動部材3Aの第1移動領域に配置されなくなり、第1移動部材3Aは第1移動領域を移動可能な状態になる。
【0164】
規制部材2Aの位置は、一旦規制状態から許可状態に切り替わった後、使用者による筐体1への力の付与が解除された場合でも、元の規制状態に戻らない。つまり、第1移動部材3Aに対する制限部23A、23Bの係合が一旦解除されて規制部材2Aが許可状態となった場合、規制部材2Aは許可状態で維持され、元の規制状態に戻らない。
【0165】
図39に示すように、使用者が止血器具20の筐体1を基端側に移動させたことに応じて切替部材2Bが初期切替位置から第2切替位置まで移動した時、切替部材2Bに内蔵された磁石25Aは、筐体1の磁石142(図38参照)に上側から対向する。ここで、図38に示すように、磁石142、143が収容される収容部14B、14C(図24参照)の上側の隔離壁の厚さは、収容部14A(図24参照)の上側の隔離壁の厚さよりも小さい。このため、切替部材2Bが第2切替位置に配置された場合、切替部材2Bの磁石25Aと筐体1の磁石142との間に作用する磁力は、切替部材2Bが第1切替位置に配置された場合よりも相対的に大きくなる。このため、磁石25A、142間に作用する磁力も相対的に大きくなるので、切替部材2Bの先端側への移動は磁力によって抑制される。従って、使用者が筐体1を基端側に移動させたことによって規制部材2Aが規制状態から許可状態に切り替わった後、切替部材2Bの第2切替位置から先端側への更なる移動は、磁石142により規制される。
【0166】
切替部材2Bが第2切替位置に配置された状態で、筐体1の通知部15の下側に第2移動部材4Aの露出部43が配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できる。従って、使用者は、切替部材2Bが第2切替位置まで移動したことに応じて規制部材2Aが規制状態から許可状態に切り替わったことを、通知部15を介して露出部43を目視することによって認識できる。
【0167】
使用者が筐体1を更に基端側に移動させる力が大きい場合、切替部材2Bは第2切替位置を超えて第1切替位置まで先端側に移動する可能性がある。この場合、切替部材2Bの磁石25Aは、筐体1の磁石141(図38参照)に上側から対向する。切替部材2Bの先端側への移動は、磁石25A、141間の磁力によって抑制される。切替部材2Bが第1切替位置まで移動した場合、第2移動部材4Aの露出部43は、筐体1の通知部15から露出しなくなる。このため使用者は、筐体1を基端側に移動させる力が過剰であることを、通知部15を介して露出部43が目視できなくなることによって認識できる。
【0168】
<第1先端動作>
止血器具20において、規制部材2Aが許可状態となった場合、第1移動部材3Aは延伸方向に移動可能となる。図40に示すように、使用者は、この状態で、第1操作部12を基端側に所定量L分移動させる操作を行う(矢印Y33参照)。第1操作部12の下側に設けられたピニオンギア12Aは回転し、第4移動部材3Bは第4基端位置から第4先端位置まで先端側に移動する(矢印Y34、図41参照)。
【0169】
図41に示すように、第4移動部材3Bが先端側に移動することに応じ、第4移動部材3Bの第1基部34は、第5先端位置に配置された第5移動部材3Cの基部37に基端側から接触する。第4移動部材3Bの磁石34A、34Bと、第5移動部材3Cの磁石37A、37Bとの間の磁力によって、第4移動部材3Bと第5移動部材3Cとは吸着する。又、第4移動部材3Bの第2基部35の先端側に第1移動部材3Aの第2基部32が接触して配置されている。第1移動部材3Aは、第4移動部材3Bの移動に応じて先端側に移動する。これにより、第1移動部材3Aは、第1基端位置から第1中間位置まで先端側に移動する(矢印Y35参照)。つまり、第1移動部材3Aと第4移動部材3Bとは、互いに接触した状態で、第1操作部12の操作により先端側に移動する。以下、第1操作部12の操作に伴う上記の動作を、「第1先端動作」という。
【0170】
図40に示すように、第1先端動作により、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8B、及び、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8Cは、先端側に移動する。一方、切替部材2Bに接続する位置決め部材8A、及び、連結部1Cに接続する第2筒状部材8Dは移動しない。つまり、押し出し部材8B及び第1筒状部材8Cは、筐体1、位置決め部材8A、及び第2筒状部材8Dに対して先端側に相対移動する。これにより、止血剤Sは、第1筒状部材8C内の第1先端85近傍に配置された状態で押し出し部材8Bによって先端側に押され、第2筒状部材8D内の第2先端86近傍に移動する。
【0171】
<筒基端動作>
図42に示すように、次に使用者は、第1操作部12を先端側に所定量L分移動させる操作を行う(矢印Y36参照)。第1操作部12の下側に設けられたピニオンギア12Aは回転し、第4移動部材3Bは第4先端位置から第4基端位置まで基端側に移動する(矢印Y37、図43参照)。
【0172】
図43に示すように、第4移動部材3Bの第1基部34には、磁石34A、34Bと磁石37A、37Bとの間の磁力によって吸着した第5移動部材3Cの基部37が接触している。第4移動部材3Bが基端側に移動することに応じ、第5移動部材3Cは、第5先端位置から第5基端位置まで基端側に移動する(矢印Y38参照)。第5移動部材3Cの突出部371は、第6移動部材4Bの基部45に先端側から接触する。第5移動部材3Cの磁石37Cと、第6移動部材4Bの磁石45A(図33参照)との間の磁力によって、第5移動部材3Cと第6移動部材4Bとは吸着する。
【0173】
一方、第4移動部材3Bが基端側に移動した場合でも、第1移動部材3Aは移動せず、第1中間位置のまま維持される。このため、第4移動部材3Bの移動に応じ、第4移動部材3Bの第2基部35と第1移動部材3Aの第2基部32とは離隔する。第4移動部材3Bの第1基部34は、第1移動部材3Aの第2基部32に先端側から接触し、第4移動部材3Bの第2基部35は、第1移動部材3Aの第1基部31に先端側から接触する。第4移動部材3Bの磁石35Aと、第1移動部材3Aの磁石31Aとの間の磁力によって、第4移動部材3Bと第1移動部材3Aとは吸着する。以下、第1操作部12の操作に伴う上記の動作を、「筒基端動作」という。第1移動部材3A、第4移動部材3Bは、第1先端動作が終了するまでの間、筒状基端動作を規制し、第1先端動作が終了したことに応じ、筒状基端動作の規制を解除して実行可能とする。
【0174】
図42に示すように、筒基端動作により、第4移動部材3Bは、第1移動部材3Aから離隔した状態で基端側に移動する。これにより、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8Cは基端側に移動する。一方、切替部材2Bに接続する位置決め部材8A、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8B、及び、連結部1Cに接続する第2筒状部材8Dは、移動しない。つまり、第1筒状部材8Cは、筐体1、押し出し部材8B、位置決め部材8A、及び第2筒状部材8Dに対して基端側に相対移動する。これにより、押し出し部材8Bの押し出し先端84が止血剤Sの基端側の位置を保持した状態で、第1筒状部材8Cは、第1先端85が止血剤Sよりも基端側に配置するまで移動する。これにより止血剤Sは、第1筒状部材8Cから露出する。止血剤Sは、押し出し部材8Bの押し出し先端84及び第1筒状部材8Cの第1先端85よりも先端側、且つ、第2筒状部材8D内に配置される。
【0175】
<第2先端動作>
図44に示すように、次に使用者は、第1操作部12を所定量L分基端側に移動させる操作を行う(矢印Y39参照)。第1操作部12の下側に設けられたピニオンギア12Aが回転することに応じ、第4移動部材3Bは第4基端位置から第4先端位置まで基端側に移動する(矢印Y40、図45参照)。
【0176】
図45に示すように、第4移動部材3Bの第2基部35には、磁石31A、35Aの間の磁力によって吸着した第1移動部材3Aの第1基部31が接触している。第4移動部材3Bが先端側に移動することに応じ、第1移動部材3Aは、第1中間位置から第1先端位置まで先端側に移動する(矢印Y41参照)。
【0177】
第4移動部材3Bの第1基部34には、磁石34A、34Bと、磁石37A、37Bとの間の磁力によって吸着した第5移動部材3Cの基部37が接触している。第4移動部材3Bが先端側に移動することに応じ、第5移動部材3Cは、第5基端位置から第5先端位置まで左記端側に移動する(矢印Y42参照)。第5移動部材3Cの突出部371には、磁石37A、45Aの間の磁力によって吸着した第6移動部材4Bの基部45が接触している。第5移動部材3Cが先端側に移動することに応じ、第6移動部材4Bは、第6基端位置から第6先端位置まで先端側に移動する(矢印Y43参照)。以下、第1操作部12の操作に伴う上記の動作を、「第2先端動作」という。第1移動部材3A、第4移動部材3B、第6移動部材4Bは、筒状基端動作が終了するまでの間、第2先端動作を規制し、筒状基端動作が終了したことに応じ、第2先端動作の規制を解除して実行可能とする。
【0178】
図44に示すように、第2先端動作により、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8C、及び、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8Bは、先端側に移動する。一方、切替部材2Bに接続する位置決め部材8A、及び、連結部1Cに接続する第2筒状部材8Dは、移動しない。つまり、第1筒状部材8C、及び押し出し部材8Bは、筐体1、位置決め部材8A、及び第2筒状部材8Dに対して先端側に相対移動する。これにより、止血剤Sは、押し出し部材8Bの押し出し先端84及び第1筒状部材8Cの第1先端85よりも先端側に配置された状態で、押し出し部材8Bによって先端側に移動する。止血剤Sは、第2筒状部材8Dの第2先端86近傍で、位置決め部材8Aの第1係合部82に基端側から押し付けられる。これにより、止血剤Sは、第1係合部82が係合する血管6の開口部6Aを閉塞する。
【0179】
第2先端動作によって第6移動部材4Bが第6先端位置に移動することに応じ、制限機構4Cの制限部47(図34図35参照)は、規制位置(図34参照)から許可位置(図35参照)に移動する。この場合、制限部47は第2移動領域に配置された状態から配置されない状態になる。このため、連結部1Cは、連結先端位置から連結基端位置に向けて移動可能となる。つまり、連結部1Cは、第2先端動作において押し出し部材8Bが先端側に移動したことに応じ、筐体1、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cに対して基端側に相対移動可能な状態になる。
【0180】
<連結基端動作>
図46に示すように、次に使用者は、第3操作部13を基端側に移動させる操作を行う(矢印Y44参照)。第3操作部13は、架設部13Bを介して連結部1Cに接続する。連結部1Cは、第2先端動作により、連結先端位置から連結基端位置に向けて基端側に移動可能な状態となっている。従って、第3操作部13に対する操作に応じ、連結部1Cは、連結先端位置から連結基端位置まで移動する(矢印Y45参照)。以下、第3操作部13の操作に伴う上記の動作を、「連結基端動作」という。つまり、連結基端動作は、第2先端動作が終了するまでの間、制限部47が規制位置に配置されることで規制される。一方、第2先端動作が終了することで制限部47が許可位置に配置されることに応じ、連結基端動作は規制が解除されて実行可能となる。
【0181】
連結基端動作により、連結部1Cに連結する第2筒状部材8Dは基端側に移動する。一方、切替部材2Bに接続する位置決め部材8A、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8B、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8Cは、移動しない。つまり、第2筒状部材8Dは、筐体1、位置決め部材8A、押し出し部材8B、及び第1筒状部材8Cに対して基端側に相対移動する。この場合、第2筒状部材8Dの第2先端86は、血管6の開口部6Aを閉塞した状態の止血剤Sから基端側に離隔する。
【0182】
<位置決め基端動作>
次に使用者は、第1係合部82に供給された圧縮流体を、ハブを介して引き抜き、第1係合部82を収縮させる。次に使用者は、図47に示すように、第2操作部14を基端側に移動させる操作を行う(矢印Y46参照)。第2操作部14は切替部材2Bに接続する。従って、第2操作部14に対する操作に応じて切替部材2Bは基端側に移動し、切替部材2Bに接続する位置決め部材8Aも基端側に移動する。一方、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8B、第4移動部材3Bに接続する第1筒状部材8C、及び、連結部1Cに接続する第2筒状部材8Dは移動しない。つまり、位置決め部材8Aは、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、及び第2筒状部材8Dに対して基端側に相対移動する。以下、第2操作部14の操作に伴う上記の動作を、「位置決め基端動作」という。
【0183】
位置決め基端動作により、位置決め部材8Aの第1係合部82は、押し出し部材8Bの押し出し先端84よりも基端側に移動し、押し出し部材8B内に配置される。その後、位置決め部材8A、止血剤S、押し出し部材8B、第1筒状部材8C、及び第2筒状部材8Dは、穿刺穴61から引き抜かれる。
【0184】
なお、使用者が第2操作部14を基端側に移動させたことに応じ、切替部材2Bは第3切替位置まで移動する。切替部材2Bに内蔵された磁石25A(図39参照)は、筐体1の磁石143(図38参照)に上側から対向する。磁石25A、磁石143の間に作用する磁力は、切替部材2Bが第3切替位置よりも基端側に移動することを抑制する。
【0185】
<第2実施形態の作用、効果>
第1実施形態と同様の効果を奏する。又、第2実施形態特有の次の効果を奏する。止血器具20では、血管6の開口部6Aに位置決め部材8Aの第1係合部82が係合した状態で、第1先端動作が実行される。第1先端動作では、第1筒状部材8C及び押し出し部材8Bが筐体1に対して先端側に相対移動する。これによって、止血器具20は、止血剤Sを、第1筒状部材8C内に保持された状態で先端側に移動させ、位置決め部材8Aの第1係合部82に近接させることができる。又、筒状基端動作では、第1筒状部材8Cが筐体1に対して基端側に相対移動する。これによって、押し出し部材8Bによって第1筒状部材8Cから止血剤Sが押し出され、第1係合部82近傍に止血剤Sが露出する。又、第2先端動作では、押し出し部材8Bが筐体1に対して先端側に相対移動する。これによって、押し出し部材8Bは、止血剤Sを、第1筒状部材8Cから露出した状態で第1係合部82に接触する位置まで押し進める。止血器具20は、血管6の開口部6Aを含む穿刺穴61を止血剤Sによって閉塞する。
【0186】
止血器具20は、第1先端動作が終了するまでの間、筒基端動作を規制する。又、止血器具20は、筒基端動作が終了するまでの間、第2先端動作を規制する。これによって、止血器具20は、第1先端動作の終了前に第2先端動作が実行されることを規制する。このため、止血器具20が誤って操作された場合でも、止血剤Sが第1係合部82に近接する前に第1筒状部材8Cから止血剤Sが押し出されることを防止できる。従って、使用者は、第1先端動作及び第2先端動作の順で止血器具を容易に操作できる。
【0187】
止血器具20では、第1筒状部材8Cに接続した第4移動部材3B、及び、押し出し部材8Bに接続した第1移動部材3Aを有する。第1先端動作及び第2先端動作では、第1移動部材3A及び第4移動部材3Bは互いに接触した状態で、第1操作部12に対する操作に応じて先端側に移動し、第1筒状部材8C及び押し出し部材8Bは先端側に移動する。筒基端動作では、第1移動部材3Aから第4移動部材3Bが離隔し、第1操作部12に対する操作に応じて第4移動部材3Bが基端側に相対移動することにより、第1筒状部材8Cは基端側に移動する。このため止血器具20は、第1先端動作が完了するまで筒基端動作を規制するための構成、及び、筒基端動作が完了するまで第2先端動作を規制するための構成を、第1筒状部材8C及び押し出し部材8Bにより容易に実現できる。
【0188】
第1先端動作及び第2先端動作は、第1操作部12が基端側に所定量L分移動することに応じて実行される。一方、筒基端動作は、第1操作部12が先端側に所定量L分移動することに応じて実行される。このため、使用者は、第1操作部12を延伸方向に所定量Lずつ往復移動させる操作を行うだけで、第1先端動作、筒基端動作、及び第2先端動作を止血器具20に実行させることが可能となる。
【0189】
止血器具20は、血管6の開口部6Aに位置決め部材8Aの第1係合部82が係合した状態で、押し出し部材8Bが先端側に相対移動することにより、第1係合部82近傍に向けて止血剤Sが移動する。これによって、第1係合部82が係合した開口部6Aを含む穿刺穴61を、止血剤Sで閉塞して止血できる。規制部材2Aは、押し出し部材8Bの先端側への相対移動を規制した規制状態(図36図37参照)と、先端側への相対移動を規制しない許可状態(図38図39参照)とに切り替え可能である。
【0190】
位置決め部材8Aの第1係合部82が血管6の開口部6Aに係合した状態で、使用者は、筐体1を基端側に移動させる。この場合、位置決め部材8Aは開口部6Aに対して基端側に移動し、第1係合部82は、血管6の内側から開口部6Aに密着する。又、この場合、位置決め部材8Aに対して先端に向かう方向の力が相対的に作用し、位置決め部材8Aは先端側に相対移動する。切替部材2Bは、規制部材2Aが規制状態のときに位置決め部材8Aが先端側に相対移動した場合(図36図37参照)、規制部材2Aを許可状態に切り替える(図38図39参照)。つまり、第1係合部82が開口部6Aに内側から密着した状態で、押し出し部材8Bの先端側への移動が可能となる。このため、この状態で押し出し部材8Bが先端側に相対移動して止血剤Sが先端側に移動した場合、止血剤Sは穿刺穴61を適切に閉塞して止血できる。更に、第1係合部82が開口部6Aに密着した状態であるため、第1係合部82と開口部6Aとの間の隙間を通って止血剤Sが血管6内に流入することを防止できる。
【0191】
規制部材2Aは、規制状態から許可状態に切り替えられた後、位置決め部材8Aの相対移動に依らず、許可状態で維持される。つまり、規制部材2Aは、一旦許可状態に切り替わった後、元の規制状態に戻らない。このため、使用者は、第1係合部82を開口部6Aに係合させるために位置決め部材8Aに対して筐体1を基端側に移動させる操作を解除した後で、押し出し部材8Bを先端側に相対移動させる操作を実行できる。従って、使用者は、押し出し部材8Bを先端側に相対移動させる操作を容易に実行できる。
【0192】
第1移動部材3Aは第1移動領域内で相対移動である。規制部材2Aの制限部23A、23Bは、規制状態において第1移動領域に配置される。この場合、規制状態の規制部材2Aは、第1移動部材3Aが第1移動領域内で移動することを制限部23A、23Bによって抑制できる。従って、規制部材2Aは、押し出し部材8Bが先端側に相対移動して止血剤Sを押し出すことを、簡易な構成で適切に規制できる。一方、切替部材2Bは、位置決め部材8Aが先端側に相対移動したことに応じ、規制部材2Aの制限部23A、23Bが第1移動領域に配置された規制状態から、第1移動領域に配置されない許可状態に切り替える。従って、切替部材2Bは、第1移動部材3Aが第1移動領域を移動可能な状態から移動不能な状態に切り替える動作を、規制部材2Aの制限部23A、23Bの移動により容易に実行できる。
【0193】
第1移動部材3Aは、第2係合部311、312を備える。規制部材2Aの制限部23A、23Bは、第1移動領域に配置された状態で第2係合部311、312に係合し、規制状態となる。切替部材2Bは、第2係合部311、312に制限部23A、23Bが係合された状態から係合されない状態に切り替える。規制部材2Aの付勢部24は、第2係合部311、312に対する制限部23A、23Bの係合が解除された場合、付勢力により制限部23A、23Bを移動させ、規制部材2Aを許可状態とする。このように、止血器具20は、付勢部24の付勢力を利用して、規制部材2Aを規制状態から許可状態に切り替えることができる。又、止血器具20は、規制部材2Aを規制状態から許可状態に切り替えた後、元の規制状態に戻らないようにするための構成を、付勢部24により簡易に実現できる。
【0194】
切替部材2Bは、位置決め部材8Aが先端側に相対移動することに応じ、第1移動部材3Aに対して先端側に相対移動する。これによって、切替部材2Bは、第1移動部材3Aの第2係合部311、312に規制部材2Aの制限部23A、23Bが係合した状態から、係合しない状態に切り替える。この場合、切替部材2Bは、第2係合部311、312に対する制限部23A、23Bの係合状態の切り替えを、位置決め部材8Aの相対移動に応じて実行できる。又、規制部材2Aの付勢部24をバネとすることによって、規制部材2Aを規制状態から許可状態に向けて付勢するための力の付与を、容易に実現できる。
【0195】
第2移動部材4Aの露出部43は、筐体1に対する切替部材2Bの相対位置に応じて、通知部15からの露出状態を切り替えることができる。このため止血器具20は、切替部材2Bに接続する位置決め部材8Aに作用する力の強さを、通知部15を介して使用者に通知できる。
【0196】
露出部43は、切替部材2Bが第2切替位置に配置された場合、筐体1の通知部15の下側に配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できる。一方、露出部43は、切替部材2Bが第1切替位置に配置された場合、筐体1の通知部15よりも先端側に配置される。この場合、使用者は、通知部15を介して露出部43を目視できない。つまり、止血器具20は、使用者が筐体1を基端側に移動させたときに位置決め部材8Aに作用する力の大きさに応じて、通知部15を介して露出部43が目視可能な状態と目視不可能な状態とに切り替えられる。このため通知部15は、位置決め部材8Aに作用する力の強さを示す情報を、通知部15を介して容易に通知できる。
【0197】
切替部材2Bは磁石25Aを備える。筐体1には、切替部材2Bが第2切替位置に配置された状態で磁石25Aに対向する磁石142を備える。この場合、磁石25A、142間に作用する磁力に基づき、切替部材2Bが第2切替位置に配置された状態を安定化できる。従って、止血器具20は、位置決め部材8Aに作用する力に応じて切替部材2Bが先端側に相対移動した場合、規制部材2Aを規制状態から許可状態に適切に切り替えることができる。又、止血器具20は、切替部材2Bが初期切替位置から第2切替位置を経由して第1切替位置まで移動することを、磁石25A、142間に作用する磁力によって抑制できる。
【0198】
切替部材2Bが第2切替位置に配置された場合の磁石25A、142間の磁力は、切替部材2Bが第1切替位置に配置された場合の磁石25A、141間の磁力よりも大きい。このため、止血器具20は、切替部材2Bが初期切替位置から第2切替位置を経由して第1切替位置まで移動することを、磁石25A、142間に作用する磁力によって更に効果的に抑制できる。
【0199】
筐体1は更に、磁石142に対して先端側に配置された磁石141を備える。切替部材2Bが第1切替位置に配置された場合、磁石25A、141は対向する。この場合、止血器具20は、切替部材2Bが規制部材2Aを規制状態から許可状態に切り替えた後、切替部材2Bが先端側に過剰に移動することを、磁石25A、141間に作用する磁力によって抑制できる。従って、切替部材2Bが先端側に過剰に移動することに応じて、位置決め部材8Aから血管6の開口部6Aに対して作用する力が過剰となり、血管6の開口部6Aから第1係合部82が外れてしまうことを抑制できる。
【0200】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。止血器具10において、第1先端動作が終了するまでの間第2先端動作を規制し、第1先端動作が終了したことに応じて第2先端動作の規制を解除するための機構は、移動部材51B、73Bにより実現されなくてもよく、他の機構により実行されてもよい。止血器具10は、第1操作部510が先端側に移動するように操作されることで、第1先端動作及び第2先端動作が実行されてもよい。又、止血器具10は、第1操作部510が先端側に移動するように操作されることで第1先端動作が実行され、次いで、第1操作部510が基端側に移動するように操作されることで第2先端動作が実行されてもよい。
【0201】
止血器具20において、第1先端動作が終了するまでの間筒基端動作を規制し、第1先端動作が終了したことに応じて筒基端動作の規制を解除するための機構、及び、筒基端動作が終了するまでの間第2先端動作を規制し、筒基端動作が終了したことに応じて第2先端動作の規制を解除するための機構は、第1移動部材3A及び第4移動部材3Bにより実行されなくてもよく、他の機構により実行されてもよい。止血器具20は、第1操作部12が基端側に移動するように操作されることで、第1先端動作、筒基端動作、及び第2先端動作が実行されてもよい。又、止血器具20は、第1操作部12が先端側に移動するように操作されることで第1先端動作が実行され、第1操作部12が基端側に移動するように操作されることで筒基端動作が実行され、第1操作部12が先端側に移動するように操作されることで第2先端動作が実行されてもよい。
【0202】
止血器具10の連結部71Cは、筐体71に対して常に移動可能であってもよいし、逆に、筐体71に対して常に移動不能であってもよい。連結部71Cは、使用者による操作に応じ、第1先端動作、第2先端動作の実行の要否とは独立して、延伸方向に移動可能な状態と移動不能な状態とに切り替えられてもよい。第2筒状部材8Dは、連結部71Cを介して第2筒状部材8Dに連結しなくてもよく、筐体71に直接接続されてもよい。止血器具20に対しても同様である。
【0203】
止血器具10の連結部1Cは、第1先端動作によって、延伸方向に移動不能な状態から移動可能な状態に切り替えられてもよい。止血器具20の連結部1Cは、筒基端動作によって、延伸方向に移動不能な状態から移動可能な状態に切り替えられてもよい。
【0204】
第1操作部510、12及び第3操作部530、13はスライドレバーに限定されない。例えば第1操作部510、12及び第3操作部530、13はボタンによって構成され、押下によって各動作が実行されてもよい。又、例えば第1操作部510、12及び第3操作部530、13は、ダイヤルによって構成され、ダイヤルの回転によって各動作が実行されてもよい。第1先端動作及び第2先端動作をそれぞれ実行させるための操作部(スライドレバー、ボタン、ダイヤル等)が、それぞれ個別に設けられていてもよい。
【0205】
止血器具10において、連結部71Cは、制限機構74Cと異なる機構によって、第6先端位置から第6基端位置への移動が規制されてもよい。同様に、止血器具20において、連結部1Cは、制限機構74Cと異なる機構によって、連結先端位置から連結基端位置への移動が規制されてもよい。例えば止血器具10、20は、第2先端動作に応じて操作が可能となる操作部(例えば、ボタン)を有してもよい。連結部71Cは、この操作部に対する操作に応じて第6先端位置から第6基端位置への移動が許可されてもよい。連結部1Cは、この操作部に対する操作に応じて連結先端位置から連結基端位置への移動が許可されてもよい。
【0206】
止血器具10は、第2操作部520を有していなくてもよい。同様に、止血器具20は、第2操作部14を有していなくてもよい。例えば止血器具10、20は、位置決め基端動作において、第1操作部510、12に対する操作に応じて位置決め部材8Aを基端側に相対移動させてもよい。
【0207】
ピニオンギア51C、12Aは、複数の歯車により構成されていてもよい。複数の歯車のそれぞれの歯数の比を相違させてもよい。この場合、第1操作部510に対する僅かな操作により、移動部材51Bを延伸方向に大きく移動させることができる。又は、第1操作部12に対する僅かな操作により、第4移動部材3Bを延伸方向に大きく移動させることができる。第1操作部510と移動部材51Bとは、直接連結されていてもよい。第1操作部12と第4移動部材3Bとは、直接連結されていてもよい。この場合、第1操作部510、12の移動方向と、移動部材51B、第4移動部材3Bの移動方向とを一致させることができる。従って、使用者は、第1操作部510、12に対する操作から、止血器具10、20における動作を容易に認識できる。
【0208】
第1係合部82は、バルーンに限定されず、血管6の開口部6Aに係合可能な他の部材であってもよい。
【0209】
止血器具20の切替部材2Bは、規制部材2Aの制限部23A、23Bが第1移動部材3Aの第1移動領域に配置された状態から、第1移動領域に配置されない状態に切り替えることによって、規制部材2Aを規制状態から許可状態に切り替えていた。例えば規制部材2Aは、第1移動部材3Aに基端側から係合することにより、第1移動部材3Aの移動を規制していてもよい。切替部材2Bは、第1移動部材3Aに対する規制部材2Aの係合状態を解除することによって、第1移動部材3Aに接続する押し出し部材8Bの移動を許可してもよい。この場合、規制部材2Aは、規制状態において第1移動部材3Aの第1移動領域に配置されていなくてもよい。規制部材2Aは、押し出し部材8Bの移動の移動を直接的に規制可能な構成であってもよい。この場合、止血器具20は第1移動部材3Aを有していなくてもよい。
【0210】
止血器具20の付勢部24は、制限部23A、23Bを下方に付勢する圧縮ばねでもよい。切替部材2Bは、端面カムを有していてもよい。端面カムは、切替部材2Bの移動に応じ、付勢部24の付勢力に抗して規制部材2Aを上方に移動させることによって、規制部材2Aを規制状態から許可状態に切り替えてもよい。付勢部24はバネに限定されず、制限部23A、23Bに付勢力を付与できる他の部材(弾性ゴム等)であってもよい。
【0211】
止血器具20の切替部材2Bが初期切替位置に配置された場合、筐体1の通知部15の下側に露出部43が配置されてもよい。切替部材2Bが第1切替位置、第2切替位置に配置された場合、露出部43は通知部15よりも先端側に配置されてもよい。この場合、露出部43は、切替部材2Bが初期切替位置に配置された状態で、通知部15を介して目視可能となるので、切替部材2Bが初期切替位置に配置されていることを認識できる。切替部材2Bが第3切替位置に配置された場合、通知部15の下側に露出部43が配置されてもよい。切替部材2Bが第1切替位置、第2切替位置、及び初期切替位置に配置された場合、通知部15よりも先端側に露出部43が配置されてもよい。この場合、露出部43は、切替部材2Bが第3切替位置まで移動した時、通知部15を介して目視可能となる。これにより、止血器具20は、位置決め部材8Aが基端側に過剰に移動していることを、通知部15から露出部43を露出させることにより通知できる。
【0212】
止血器具20の通知部15は、切替部材2Bの上側に設けられていてもよい。これにより、通知部15を介して切替部材2Bを直接目視可能としてもよい。この場合、切替部材2Bに第2移動部材4Aは設けられていなくてもよい。
【0213】
止血器具20の切替部材2Bは、磁石25Aを有していなくてもよい。筐体1は、磁石141~143を有していなくてもよい。筐体1は、切替部材2Bが第2切替位置から第1切替位置まで移動することを規制する第1規制部を有していてもよい。これによって、切替部材2Bが第1切替位置まで過剰に移動することを防止してもよい。又、筐体1は、切替部材2Bが第3切替位置よりも基端側に移動することを規制する第2規制部を有していてもよい。これによって、切替部材2Bが第3切替位置よりも基端側に過剰に移動することを防止してもよい。又、筐体1は、磁石141、143を有さず、磁石142のみ有していてもよい。
【0214】
止血器具20の収容部14Bの上側の隔離壁の厚さよりも、収容部14Cの上側の隔離壁の厚さの方が大きくてもよい。収容部14A、14Cのそれぞれの上側の隔離壁の厚さは略同一でもよい。収容部14Bの上側の隔離壁の厚さよりも、収容部14A、14Cの上側の隔離壁の厚さの方が大きくてもよい。又、止血器具20の収容部14Bの上側の隔離壁の厚さよりも、収容部14A、14Cの上側の隔離壁の厚さの方が小さくてもよい。止血器具20の収容部14Aの上側の隔離壁の厚さよりも収容部14Bの上側の隔離壁の厚さが小さく、且つ、止血器具20の収容部14Bの上側の隔離壁の厚さよりも収容部14Cの上側の隔離壁の厚さが小さくてもよい。即ち、止血器具20の収容部14A、14B、14Cのそれぞれの上側の隔離壁の厚さは、この順で小さくなってもよい。
【0215】
<その他>
第1係合部82は、本発明の「係合部」の一例である。第1実施形態における移動部材51B、73B、及び、制限機構74Cは、本発明の「切替機構」の一例である。第2実施形態における第1移動部材3A、第4移動部材3B、及び、制限機構4Cは、本発明の「切替機構」の一例である。第1実施形態における移動部材73Bは、本発明の「第1切替部」の一例である。第1実施形態における移動部材51Bは、本発明の「第2切替部」の一例である。第2実施形態における第4移動部材3Bは、本発明の「第1切替部」の一例である。第2実施形態における第1移動部材3Aは、本発明の「第2切替部」の一例である。第2実施形態における切替部材2Bは本発明の「切替部材」の一例である。磁石25Aは、本発明の「第1磁石」の一例である。磁石142は、本発明の「第2磁石」の一例である。磁石141は、本発明の「第3磁石」の一例である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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