IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セトラスホールディングス株式会社の特許一覧

特許7385734中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体
<>
  • 特許-中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体 図1
  • 特許-中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体 図2
  • 特許-中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体 図3A
  • 特許-中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体 図3B
  • 特許-中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231115BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20231115BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231115BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C08L101/00
C01B33/18 Z
C08K3/36
C08K7/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022503168
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002364
(87)【国際公開番号】W WO2021171858
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020033946
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】レ ティ ノック タン
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輔
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108483451(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0086616(KR,A)
【文献】特開2006-143487(JP,A)
【文献】特開2019-183005(JP,A)
【文献】特開2006-256310(JP,A)
【文献】特開2007-025329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C01B 33/18
C08K 3/36
C08K 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含み、アスペクト比が2以上、且つ100以下で、殻の厚みが10nm以上100nm以下で、細孔容積が1.5cm /g以下の板状の中空粒子と、樹脂とを含む、樹脂組成物
【請求項2】
前記中空粒子の長径が0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項3】
前記中空粒子の厚みが0.01μm以上5μm以下である、請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物
【請求項4】
前記中空粒子の中空率が20%以上95%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される、樹脂成形体。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
コア粒子にシェル形成材料を被覆してコアシェル粒子を得ること、および、前記コアシェル粒子から前記コア粒子を除去すること、により前記中空粒子を得ること、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記コア粒子は、水酸化マグネシウム若しくはハイドロタルサイトである、請求項6に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記シェル形成材料は、水ガラスである、請求項6又は請求項7に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記中空粒子は、前記コア粒子を除去した後に焼成される、請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子、樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物を用いた樹脂成形体および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、情報通信機器の分野では、高周波数帯での通信に対応すべく、電子部材(代表的には、樹脂部材)の低誘電率化、低誘電正接化が求められている。これを実現すべく、例えば、比誘電率の低い空気を部材に含有させることが提案されている。具体的には、中空粒子を用いて空気を導入することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように、空気を含有させることで、部材の軽量化にも寄与し得る。
【0003】
一方で、部材の耐久性(例えば、曲げ弾性率等の機械的強度、寸法安定性)を確保することも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-56158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐久性を確保しながら、低誘電率化、軽量化を達成し得ることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの局面によれば、中空粒子が提供される。この中空粒子は、シリカを含み、アスペクト比が2以上で板状である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子の長径は0.1μm以上10μm以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子の厚みは0.01μm以上5μm以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子の殻の厚みは10nm以上100nm以下である。
1つの実施形態においては、上記中空粒子の中空率は20%以上95%以下である。
【0007】
本発明の別の局面によれば、樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は、樹脂、および、上記中空粒子を含む。
【0008】
本発明のさらに別の局面によれば、樹脂成形体が提供される。この樹脂成形体は、上記樹脂組成物から形成される。
【0009】
本発明のさらに別の局面によれば、積層体が提供される。この積層体は、上記樹脂組成物から形成される樹脂層を有する。
1つの実施形態においては、上記樹脂層の厚みは25μm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板状の中空粒子を用いることで、耐久性を確保しながら、低誘電率化、軽量化を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】長径および厚みを説明する模式図である。
図2】本発明の1つの実施形態における積層体の概略断面図である。
図3A】実施例1の中空粒子のTEM観察写真(10000倍)である。
図3B】実施例1の中空粒子のTEM観察写真(100000倍)である。
図4】実施例1で用いたコア粒子のSEM観察写真(20000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0013】
(用語の定義)
本明細書における用語の定義は、下記の通りである。
1.粒子の長径
走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定した値であり、無作為に選んだ一次粒子の長径(例えば、図1のL)の平均値である。なお、一次粒子とは、SEMまたはTEMにより観察される最小の粒子であって、凝集している粒子(二次粒子)とは区別される。
2.粒子の厚み
SEMまたはTEM観察により測定した値であり、無作為に選んだ一次粒子の厚み(例えば、図1のT)の平均値である。
3.アスペクト比(長径/厚み)
上記粒子の長径から上記粒子の厚みを除して算出した値である。
4.粒径
粒径は、粒度分布測定における平均粒径である。
【0014】
A.中空粒子
本発明の1つの実施形態における中空粒子は、代表的には、シリカで形成される。中空粒子のシリカの含有量は、例えば95重量%以上であり、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上である。
【0015】
上記中空粒子の形状は、板状である。板状を採用することにより、上述の耐久性と、低誘電率化、軽量化を同時に達成し得る。また、用いられる部材の小型化(薄膜化)にも十分対応することができる。さらには、高い中空率と中空粒子の強度との両立も図りやすい。
【0016】
上記中空粒子のアスペクト比は、2以上であり、好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上である。一方、中空粒子のアスペクト比は、例えば100以下であり、好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下である。このようなアスペクト比によれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得る。
【0017】
中空粒子の長径は、好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。このような長径によれば、後述の中空率を十分に満足し得る。一方、中空粒子の長径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。このような長径によれば、上記小型化(薄膜化)に大きく寄与し得る。
【0018】
中空粒子の厚みは、好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。このような厚みによれば、後述の中空率を十分に満足し得る。一方、中空粒子の厚みは、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下である。このような厚みによれば、上記小型化(薄膜化)に大きく寄与し得る。
【0019】
中空粒子の殻の厚みは、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。このような厚みによれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際に、中空粒子が壊れるのを効果的に防止し得る。一方、中空粒子の殻の厚みは、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。このような厚みによれば、後述の中空率を十分に満足し得、低誘電率化、軽量化に大きく寄与し得る。なお、殻の厚みは、TEM観察により測定することができる。例えば、無作為に選んだ中空粒子の殻の厚みを測定し、その平均値を算出することにより求められる。
【0020】
中空粒子の中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。このような中空率によれば、例えば、低誘電率化、軽量化に大きく寄与し得る。一方、中空粒子の中空率は、好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。このような中空率によれば、例えば、後述の樹脂組成物を作製する際に、中空粒子が壊れるのを効果的に防止し得る。なお、中空率は、後述のコア粒子の体積と中空粒子の体積から算出することができる。
【0021】
中空粒子の細孔容積は、好ましくは1.5cm/g以下、さらに好ましくは1.0cm/g以下である。
【0022】
中空粒子の粒径は、好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。一方、中空粒子の粒径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0023】
中空粒子のBET比表面積は、例えば10m/g以上であってもよく、30m/g以上であってもよい。一方、中空粒子のBET比表面積は、好ましくは250m/g以下、さらに好ましくは200m/g以下である。
【0024】
1つの実施形態においては、上記中空粒子は、任意の適切な表面処理剤による表面処理が施されている。表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤、多価アルコールと脂肪酸とのエステル類、アクリル系ポリマーおよびシリコーン処理剤からなる群から選択される少なくとも1つが用いられる。
【0025】
上記中空粒子の製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、中空粒子の製造方法は、コア粒子にシェル形成材料を被覆してコアシェル粒子を得ること、および、コアシェル粒子からコア粒子を除去することを含む。
【0026】
上記コア粒子としては、上記中空粒子を製造し得る限り、任意の適切な粒子が採用され得る。具体的には、コア粒子の形状は、板状であることが好ましい。コア粒子のアスペクト比は、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。一方、コア粒子のアスペクト比は、好ましくは100以下であり、さらに好ましくは70以下である。
【0027】
コア粒子の長径は、好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。一方、コア粒子の長径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。コア粒子の厚みは、好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、である。一方、コア粒子の厚みは、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
【0028】
コア粒子の形成材料としては、例えば、後述する酸性溶液に溶解し得る材料が用いられる。この場合、コア粒子の形成材料としては、例えば、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイトの酸化物、酸化亜鉛、酸化カルシウム等の酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩化合物が挙げられる。これらの中でも、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトが好ましく用いられ、水酸化マグネシウムが特に好ましく用いられる。例えば、水系において安定に存在し得るからである。また、後述の酸性溶液に溶解させる際に、ガス(例えば、炭酸ガス)が発生せず、得られる中空粒子に欠陥が生じるのを抑制し得るからである。
【0029】
上記シェル形成材料としては、例えば、水ガラス(NaO・nSiO)、テトラエトキシシラン(Si(OCHCH)に代表されるアルコキシシランが用いられる。
【0030】
シェル形成材料による被覆量は、任意の適切な方法により調整され得る。例えば、水ガラスを含むシェル形成材料でコア粒子を被覆する際のpH値を制御することで、被覆量を調整する。具体的には、上記水ガラスは、高pH領域(例えば、pH11以上)において安定であり得る。したがって、例えば、pH調整剤を用いてpH値を下げることで(例えば、pH7以下に)、水ガラス分子を縮合させて、シリカを効率的にコア粒子上に析出させ得る。pH調整剤としては、好ましくは、酸性の溶液が用いられる。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸等の強酸の溶液、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の弱酸の溶液が好ましく用いられる。pH調整剤の添加量は、例えば、水ガラスに対する中和率で85%~98%とすることが好ましい。中和率が高すぎると、コア粒子上にシリカが析出するだけでなく、単独のシリカ粒子も生成してしまうおそれがある。また、シェル形成材料による被覆の際に、コア粒子を溶解させるおそれがある。なお、シェル形成材料でコア粒子を被覆する際に加熱(例えば、80℃~90℃に)することによっても、シェルの形成(具体的には、シェルの析出および形成速度)を促進し得る。
【0031】
上記コア粒子の除去は、代表的には、酸性溶液にコア粒子を溶解させることにより行う。酸性溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸が用いられる。溶解させる温度は、例えば、30℃~90℃であり、好ましくは50℃~70℃である。このような温度によれば、シェルが壊れやすくなる等の不具合を抑制しながら効率的にコア粒子を溶解させ得る。1つの実施形態においては、例えば、コア粒子と反応して得られる物質(例えば、塩)を再利用する観点から、酸性溶液として塩酸を用いる。
【0032】
好ましくは、上記中空粒子の製造方法は、シェルを焼成(例えば、大気雰囲気下で)することをさらに含む。焼成を行うことにより、例えば、シェルの疎水性を向上させて(具体的には、シェルのシラノール基をシロキサンに変化させて)、得られる中空粒子の誘電特性を向上させ得る。焼成は、任意の適切なタイミングで行い得る。好ましくは、コアシェル粒子からコア粒子を除去した後に行う。焼成の温度は、例えば、300℃~1300℃である。焼成時間は、例えば、1時間~20時間である。
【0033】
本発明の1つの実施形態においては、上記中空粒子は樹脂材料の機能付与剤として用いられる。以下、上記中空粒子を含む樹脂組成物について説明する。
【0034】
B.樹脂組成物
本発明の1つの実施形態における樹脂組成物は、樹脂および上記中空粒子を含む。
【0035】
上記樹脂は、例えば、得られる樹脂組成物の用途等に応じて、任意の適切な樹脂が選択され得る。例えば、樹脂は熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、変性ポリイミドが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。
【0036】
上記樹脂組成物における上記中空粒子の含有割合は、好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.5重量%以上である。一方、上記含有割合は、好ましくは90重量%以下であり、さらに好ましくは85重量%以下である。
【0037】
樹脂組成物において、樹脂100重量部に対し、中空粒子を0.5重量部以上含有させることが好ましく、さらに好ましくは1重量部以上である。一方、樹脂100重量部に対し、中空粒子を300重量部以下含有させることが好ましく、さらに好ましくは200重量部以下である。
【0038】
樹脂組成物における中空粒子の体積比率は、好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。一方、樹脂組成物における中空粒子の体積比率は、好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。例えば、樹脂組成物を作製する際の加工性に優れ得るからである。
【0039】
上記樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分としては、例えば、硬化剤(具体的には、上記樹脂の硬化剤)、低応力化剤、着色剤、密着向上剤、離型剤、流動調整剤、脱泡剤、溶剤、充填剤が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。1つの実施形態においては、樹脂組成物は硬化剤を含む。硬化剤の含有量は、樹脂100重量部に対し、例えば、1重量部~150重量部である。
【0040】
上記樹脂組成物の作製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、上記樹脂中に、任意の適切な分散方法により、上記中空粒子を分散させることにより、樹脂組成物を得る。分散方法としては、例えば、ホモミキサー、ディスパー、ボールミル等の各種攪拌機による分散、自転公転ミキサーによる分散、3本ロールを用いた剪断力による分散、超音波処理による分散が挙げられる。
【0041】
上記樹脂組成物は、代表的には、所望の形状に成形された樹脂成形体とされる。例えば、モールドを用いて所望の形状に成形された樹脂成形体とされる。樹脂成形体の成形に際し、樹脂組成物は、任意の適切な処理(例えば、硬化処理)が施され得る。
【0042】
本発明の1つの実施形態においては、上記樹脂組成物は、積層体に含まれる樹脂層とされる。以下、上記樹脂組成物で形成される樹脂層を有する積層体について説明する。
【0043】
C.積層体
図2は、本発明の1つの実施形態における積層体の概略断面図である。積層体10は、樹脂層11と金属箔12とを有する。樹脂層11は、上記樹脂組成物から形成される。具体的には、樹脂層11は、上記樹脂と上記中空粒子とを含む。樹脂層11において、樹脂層11の面内方向に、板状の中空粒子の面内方向が配向していることが好ましい。樹脂層の薄膜化に寄与し得るからである。図示しないが、積層体10は、その他の層を含み得る。例えば、樹脂層11の片側(金属箔12が配置されない側)に積層される基材(代表的には、樹脂フィルム)が挙げられる。積層体10は、代表的には、配線回路基板として用いられる。
【0044】
上記樹脂層の厚みは、例えば5μm以上、好ましくは10μm以上である。一方、樹脂層の厚みは、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。このような厚みによれば、例えば、近年の電子部材の小型化に十分に対応することができる。
【0045】
上記金属箔を形成する金属としては、任意の適切な金属が用いられ得る。例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用い得る。金属箔の厚みは、例えば、2μm~35μmである。
【0046】
上記積層体の作製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、上記基材上に上記樹脂組成物を塗工して塗工層を形成し、この塗工層上に上記金属箔を積層して積層体を得る。別の具体例としては、上記金属箔に上記樹脂組成物を塗工して塗工層を形成して積層体を得る。代表的には、任意の適切なタイミングで、塗工層に加熱や光照射等の処理を施し、塗工層を硬化させる。塗工に際し、上記樹脂組成物を、任意の適切な溶剤に溶解させて用いてもよい。
【実施例
【0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は、断りがない限り、下記の通りである。
1.粒子の長径
SEM観察またはTEM観察により長径を算出した。具体的には、粒子のSEM写真またはTEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子の長径を測定し、得られた測定値の算術平均(平均長径)を求めた。なお、コア粒子のSEM観察の倍率は20000倍、中空粒子のTEM観察の倍率は10000倍とした。
2.厚み
SEM観察またはTEM観察により粒子の厚みおよび粒子の殻の厚みを算出した。具体的には、粒子のSEM写真またはTEM写真の中から無作為に選んだ100個の一次粒子の厚みを測定し、得られた測定値の算術平均(平均厚み)を求めた。なお、コア粒子のSEM観察の倍率は50000倍、中空粒子のTEM観察の倍率は10000倍および10000倍とした。
3.アスペクト比
SEM観察またはTEM観察によりアスペクト比を算出した。具体的には、上記粒子の平均長径を上記粒子の平均厚みで除してアスペクト比を算出した。
4.中空率
コア粒子の体積と中空粒子の体積から算出した。具体的には、(コア粒子1粒子当たりの体積)/(中空粒子1粒子当たりの体積)×100から算出した。なお、コア粒子および中空粒子の1粒子当たりの体積は、実際の形状を円柱における体積で近似し、上記長径を円の直径とし、上記厚みを円柱の高さとして算出した。
5.粒径
大塚電子製の「ELSZ-2」を用いて、動的光散乱法により粒径(平均二次粒子径)を測定した(解析条件は散乱強度分布)。測定用試料は、水70mLに粒子0.05gを加えた後、300μAで3分間超音波処理を施すことにより調製した。
6.細孔容積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-max」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BJH法による解析で細孔容積を求めた。
7.BET比表面積
マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-mini」で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BET多点法による解析で比表面積を求めた。
【0048】
[実施例1]
長径0.8μm、厚み0.2μm、アスペクト比4の板状の水酸化マグネシウム粒子を、イオン交換水を用いて固形分濃度60g/Lに調整し、水酸化マグネシウムのスラリーを得た。
【0049】
次いで、得られた水酸化マグネシウムのスラリー6.7Lを撹拌しながら80℃に加温し、これに、0.57mol/Lの3号水ガラス(NaO・3.14SiO、富士フィルム和光純薬製)268mlを10分かけて加えた。その後、さらに、3号水ガラス1340mlと0.5Nの塩酸3.25Lを同時に加え始めた。ここで、3号水ガラスは50分かけて加え、塩酸は60分かけて加えた。こうして得られたスラリーを30分間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子前駆体のケーキを得た。
【0050】
次いで、得られたコアシェル粒子前駆体のケーキをイオン交換水で固形分濃度60g/Lに調整し、撹拌しながら80℃に加温し、これに、0.57mol/Lの3号水ガラス268mlを10分かけて加えた。その後、さらに、3号水ガラス670mlと0.5Nの塩酸1.9Lを同時に加え始めた。ここで、3号水ガラスは25分かけて加え、塩酸は35分かけて加えた。こうして得られたスラリーを30分間熟成させた後、脱水・水洗し、コアシェル粒子のケーキを得た。
ここで、FT-IR(JASCO製の「FT/IR-4100」)を用いて得られたコアシェル粒子についてATR法で測定したところ、水酸化マグネシウムの3500~3800cm-1付近のOH由来のピークだけでなく、1000~1300cm-1付近のSi-O-Si由来のピークが確認された。
【0051】
次いで、得られたコアシェル粒子に0.7Nの塩酸21.6Lを加え、室温撹拌下で再懸濁し、コアシェル粒子の固形分濃度が25g/Lとなるように調整した後、これを60℃に加温し、1時間熟成させてコア粒子を溶解させ、中空シリカのスラリーを得た。
得られた中空シリカのスラリーを脱水・水洗して中空シリカのケーキとし、この中空シリカのケーキを60℃で28時間乾燥させて中空シリカ粒子(長径:0.86μm、厚み:0.26μm、アスペクト比:3.3、殻の厚み:30nm、中空率:66%、粒径:0.95μm、細孔容積:0.67cm/g、BET比表面積:123m/g)を得た。
【0052】
FT-IR(JASCO製の「FT/IR-4100」)を用いて得られた中空シリカ粒子についてATR法で測定したところ、水酸化マグネシウム粒子の3500~3800cm-1付近のOH由来のピークは確認されず、1000~1300cm-1付近のSi-O-Si由来のピークのみが確認された。また、X線回折(PANalytical製の「EMPYRIAN」)で中空シリカ粒子を分析したところ、水酸化マグネシウムのピークは確認されず、アモルファスシリカであった。なお、得られた中空シリカ粒子の重量から、上記コアシェル粒子中のシリカの割合は26重量%であった。
【0053】
[実施例2]
コアシェル粒子の形成に際し、塩酸の濃度を0.5Nから0.52Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、中空粒子(長径:0.88μm、厚み:0.28μm、アスペクト比:3.1、殻の厚み:40nm、中空率:59%、粒径:1.20μm、細孔容積:0.50cm/g、BET比表面積:81m/g)を得た。
【0054】
[実施例3]
長径0.8μm、厚み0.2μm、アスペクト比4の板状の水酸化マグネシウム粒子のかわりに長径0.2μm、厚み0.07μm、アスペクト比2.9の板状のハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製の「DHT4」)を用いたこと、および、コアシェル粒子の形成に際し、塩酸の濃度を0.5Nから0.49Nにしたこと以外は実施例1と同様にして、中空粒子(長径:0.246μm、厚み:0.116μm、アスペクト比:2.1、殻の厚み:23nm、中空率:53%、粒径:0.94μm、細孔容積:0.85cm/g、BET比表面積:135m/g)を得た。
【0055】
<TEM観察>
実施例1の中空粒子について透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の「JEM-2100PLUS」)による観察結果を図3に示す。図3から、殻(シリカ層)の厚みが30nmの板状の中空粒子であることが確認された。なお、図4にコア粒子として用いた水酸化マグネシウム粒子のSEM写真を示すが、図3および図4から、コア粒子の板状形状を保った中空粒子であることが確認された。
【0056】
<樹脂組成物>
(1)超音波処理による混合
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製の「JER806」)1g、硬化剤(三菱ケミカル株式会社製の「LV11」)0.38gおよび実施例1で得られた中空粒シリカ粒子0.04gを混合し、樹脂組成物1を得た。混合は、株式会社日本精機製作所製の「NS-200-60」による超音波処理を1分間施すことにより行った。
(2)ホモジナイザーによる混合
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製の「JER806」)5g、硬化剤(三菱ケミカル株式会社製の「LV11」)1.9gおよび実施例1で得られた中空粒シリカ粒子0.2gを混合し、樹脂組成物2を得た。混合は、ハンディホモジナイザー(IKAジャパン株式会社製の「T10ベーシック」)を用いて8000rpm、5分の条件で行った。
(3)自転公転ミキサーによる混合
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製の「JER806」)5g、硬化剤(三菱ケミカル株式会社製の「LV11」)2.5gおよび実施例1で得られた中空粒シリカ粒子0.875gを混合し、樹脂組成物3を得た。混合は、自転公転ミキサー(株式会社写真化学製の「カクハンターSK-300SVII」)を用いて1700rpm、3分の条件で行った。
【0057】
<樹脂成形体>
上記樹脂組成物1-3を、それぞれ、厚み2mmのシリコーン樹脂製のモールドに流し込み、80℃で3時間の条件で硬化させて、樹脂成形体1-3を得た。
【0058】
得られた成形体をクロスセクションポリッシャー(JEOL製の「IB-09010CP」)で切断し、断面をSEM(JEOL製の「JSM-7600F」)で観察したところ、樹脂成形体1-3のいずれにおいても、中空粒子の破壊は確認されなかった。また、樹脂成形体1-3のいずれにおいても、中空粒子内部への樹脂の侵入は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の中空粒子は、代表的には、電子材料に好適に用いられ得る。他にも、例えば、断熱材料、防音材料、衝撃緩衝材料、応力緩衝材料、光学材料、軽量化材料に用いられ得る。
【符号の説明】
【0060】
L 長径
T 厚み
10 積層体
11 樹脂層
12 金属箔
図1
図2
図3A
図3B
図4