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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20231115BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/44 301Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022505789
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2021000058
(87)【国際公開番号】W WO2021181845
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2020041303
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】栗原 拓哉
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158934(JP,A)
【文献】特開2016-186536(JP,A)
【文献】特開2012-215708(JP,A)
【文献】特開2012-103513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058300(US,A1)
【文献】米国特許第10396523(US,B1)
【文献】国際公開第2018/207872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
G02B 6/02 - 6/036
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を増幅可能な増幅用光ファイバであって、希土類元素が添加された増幅用コアを含む増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバに供給する励起光を生成可能な少なくとも1つの励起光源と、
前記増幅用光ファイバにより増幅されたレーザ光を伝搬する第1のコアであって、少なくとも1つの第1の融着接続部を介して前記増幅用光ファイバの前記増幅用コアと光学的に結合される第1のコアと、前記第1のコアよりも低い屈折率を有し、前記第1のコアの周囲を覆う第1のクラッドとを含む出力光ファイバと、
少なくとも1つの第2の融着接続部を介して前記出力光ファイバの前記第1のコアと光学的に結合される第2のコアと、前記第2のコアよりも低い屈折率を有し、前記第2のコアの周囲を覆う第2のクラッドとを含むデリバリファイバと、
前記増幅用光ファイバ及び前記出力光ファイバを内部に収容する第1の収容ユニットと
を備え、
前記デリバリファイバの前記第2のクラッドの外径は、前記出力光ファイバの前記第1のクラッドの外径よりも大きく、
前記デリバリファイバは、前記第1の収容ユニットの内部から前記第1の収容ユニットの外部に延び、少なくとも一部に曲げられた部分を含む
ファイバレーザ装置。
【請求項2】
クラッドモード光を除去するクラッドモード除去部を内部に収容する第2の収容ユニットであって、前記第1の収容ユニットとは別体の第2の収容ユニットをさらに備え、
前記デリバリファイバは、前記第1の収容ユニットの内部から前記第1の収容ユニットの外部に延び、前記第2の収容ユニットの前記クラッドモード除去部に接続される、
請求項1に記載のファイバレーザ装置。
【請求項3】
前記第1の収容ユニットと前記第2の収容ユニットとは隣接して配置されている、請求項2に記載のファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記第2の収容ユニットは、前記第1の収容ユニットの上方又は下方に隣接して配置されている、請求項3に記載のファイバレーザ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの励起光源は、前記増幅用光ファイバの下流側に設けられる複数の後方励起光源を含み、
前記ファイバレーザ装置は、
前記複数の後方励起光源で生成される前記励起光を伝搬する複数の後方励起光ファイバと、
前記複数の後方励起光源により生成された前記励起光を結合して前記増幅用光ファイバに導入する後方光コンバイナであって、前記複数の後方励起光ファイバと前記出力光ファイバとが光学的に結合される端面を有する後方光コンバイナと
をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの励起光源を内部に収容する第3の収容ユニットであって、前記第1の収容ユニットとは別体の第3の収容ユニットをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項7】
前記第1の収容ユニットと前記第3の収容ユニットとは隣接して配置されている、請求項6に記載のファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ装置に係り、特に励起光を用いて高出力のレーザ光を生成するファイバレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から金属切断のために用いられてきた炭酸ガスレーザと比べると、ファイバレーザ装置は、そのビーム品質が良く、ビームスポットを小さくすることができ、またパワー密度も大きいため、近年、金属材料の切断や溶接などの加工を行うために用いられることが多くなってきている。このようなファイバレーザ装置においては、希土類元素が添加されたコアを含む増幅用光ファイバに励起光を供給し、増幅用光ファイバのコアに励起光を吸収させることでレーザ光が増幅される。増幅用光ファイバに供給された励起光によって増幅されたレーザ光は、デリバリファイバを伝搬して出射端部から出力される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のファイバレーザ装置では、増幅用光ファイバと出射端部とは互いに異なる収容ユニットに収容されているため、増幅用光ファイバから出射端部に延びるデリバリファイバは、増幅用光ファイバが収容される収容ユニットから外部に出され、所望の経路で取り回された後、出射端部が設けられる収容ユニットに導入されることとなる。このようにデリバリファイバを取り回す際には、スペース上の制約からデリバリファイバを曲げて配置せざるを得ない。曲げられたデリバリファイバのコアには側圧が作用するため、その内部を伝搬するレーザ光のビーム品質が悪化し得る。また、曲げられたデリバリファイバの形状が変化しやすく、レーザ光のビーム品質も安定しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-168772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、出力されるレーザ光のビーム品質の悪化を抑制し、安定したビーム品質を得ることができるファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、出力されるレーザ光のビーム品質の悪化を抑制し、安定したビーム品質を得ることができるファイバレーザ装置が提供される。このファイバレーザ装置は、レーザ光を増幅可能な増幅用光ファイバであって、希土類元素が添加された増幅用コアを含む増幅用光ファイバと、上記増幅用光ファイバに供給する励起光を生成可能な少なくとも1つの励起光源と、上記増幅用光ファイバにより増幅されたレーザ光を伝搬する第1のコアであって、少なくとも1つの第1の融着接続部を介して上記増幅用光ファイバの上記増幅用コアと光学的に結合される第1のコアと、上記第1のコアよりも低い屈折率を有し、上記第1のコアの周囲を覆う第1のクラッドとを含む出力光ファイバと、少なくとも1つの第2の融着接続部を介して上記出力光ファイバの上記第1のコアと光学的に結合される第2のコアと、上記第2のコアよりも低い屈折率を有し、上記第2のコアの周囲を覆う第2のクラッドとを含むデリバリファイバと、上記増幅用光ファイバ及び上記出力光ファイバを内部に収容する第1の収容ユニットとを備える。上記デリバリファイバの上記第2のクラッドの外径は、上記出力光ファイバの上記第1のクラッドの外径よりも大きい。上記デリバリファイバは、上記第1の収容ユニットの内部から上記第1の収容ユニットの外部に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるファイバレーザ装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示すファイバレーザ装置における増幅用光ファイバを模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示すファイバレーザ装置における前方光コンバイナ及び前方励起光ファイバを模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1に示すファイバレーザ装置における後方光コンバイナ及び後方励起光ファイバを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の実施形態について図1から図4を参照して詳細に説明する。図1から図4において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図4においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態におけるファイバレーザ装置1の全体構成を模式的に示す図である。図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、上下に積層された複数の収容ユニット11~14を含んでいる。図1では、理解を容易にするため、これらの収容ユニット11~14が互いに離間した状態で示されているが、実際には、収容ユニット11~14は互いに接するように上下に積層されている。
【0010】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、レーザ光を増幅可能な増幅用光ファイバ20と、所定の波長帯の光を高い反射率で反射する高反射部21と、この波長帯の光を高反射部21よりも低い反射率で反射する低反射部22と、増幅用光ファイバ20の一端側(前方)から増幅用光ファイバ20に励起光を供給する複数の前方励起光源30と、前方励起光源30から出力される励起光を結合して増幅用光ファイバ20に導入する前方光コンバイナ31と、増幅用光ファイバ20の他端側(後方)から増幅用光ファイバ20に励起光を供給する複数の後方励起光源40と、後方励起光源40から出力される励起光を結合して増幅用光ファイバ20に導入する後方光コンバイナ41と、増幅用光ファイバ20に供給された励起光によって増幅されたレーザ光を出力するビーム出力端50とを備えている。なお、本明細書では、特に言及がない場合には、増幅用光ファイバ20からビーム出力端50に向かう方向を「下流側」といい、それとは逆の方向を「上流側」ということとする。
【0011】
前方励起光源30及び後方励起光源40としては、例えば、波長975nmの高出力マルチモード半導体レーザ(LD)を用いることができる。前方励起光源30で生成されるレーザ光の波長と後方励起光源40で生成されるレーザ光の波長は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、高反射部21及び低反射部22は、例えば、周期的に光ファイバの屈折率を変化させて形成したファイバブラッググレーディングやミラーにより構成される。
【0012】
上から2段目の収容ユニット12には、増幅用光ファイバ20、高反射部21、低反射部22、前方光コンバイナ31、及び後方光コンバイナ41が収容されている。この収容ユニット12の内部では、高反射部21が、融着接続部23で増幅用光ファイバ20に接続され、融着接続部25で前方光コンバイナ31に接続されている。また、低反射部22が、融着接続部24で増幅用光ファイバ20に接続され、融着接続部26で後方光コンバイナ41に接続されている。
【0013】
図2は、増幅用光ファイバ20を模式的に示す断面図である。図2に示すように、増幅用光ファイバ20は、例えばダブルクラッドファイバによって構成され、例えばイッテルビウム(Yb)やエルビウム(Er)、ツリウム(Tr)、ネオジム(Nd)などの希土類元素が添加されたコア201と、コア201の周囲に形成された内側クラッド202と、内側クラッド202の周囲に形成された外側クラッド203とを有する。内側クラッド202は、コア201の屈折率よりも低い屈折率の材料(例えばSiO2)から構成され、コア201の内部はレーザ光(信号光)が伝搬する光導波路となっている。また、外側クラッド203は、内側クラッド202の屈折率よりも低い屈折率の樹脂(例えば低屈折率ポリマー)から構成され、コア201及び内側クラッド202の内部は励起光Pが伝搬する光導波路となっている。
【0014】
上から3段目の収容ユニット13(第3の収容ユニット)には前方励起光源30が収容されている。3段目の収容ユニット13内の前方励起光源30から2段目の収容ユニット12内の前方光コンバイナ31まで前方励起光ファイバ33がそれぞれ延びている。また、最下段の収容ユニット14(第3の収容ユニット)には後方励起光源40が収容されている。最下段の収容ユニット14内の後方励起光源40から2段目の収容ユニット12内の後方光コンバイナ41まで後方励起光ファイバ43がそれぞれ延びている。
【0015】
図3は、前方光コンバイナ31及び前方励起光ファイバ33を模式的に示す断面図である。図3に示すように、前方励起光ファイバ33は、コア331と、コア331の周囲を覆うクラッド332と、クラッド332の周囲を覆う被覆(図示せず)とを含んでおり、クラッド332の屈折率はコア331の屈折率よりも低くなっている。したがって、前方励起光ファイバ33のコア331の内部は前方励起光源30からの励起光が伝搬する光導波路となっている。
【0016】
前方光コンバイナ31は、コア311と、コア311の周囲を覆うクラッド312と、クラッド312の周囲を覆う被覆313とを有している。クラッド312の屈折率はコア311の屈折率よりも低くなっており、コア311の内部には励起光が伝搬する光導波路が形成されている。それぞれの前方励起光ファイバ33は、前方励起光ファイバ33のコア331が前方光コンバイナ31のコア311の領域内に位置するように前方光コンバイナ31に融着接続されている。前方励起光ファイバ33と前方光コンバイナ31との融着接続部の近傍では、前方励起光ファイバ33の被覆と前方光コンバイナ31の被覆313が除去されている。これにより、前方励起光源30で生成された励起光が、前方励起光ファイバ33のコア331を伝搬して前方光コンバイナ31のコア311に導入され、前方光コンバイナ31のコア311を伝搬する。なお、前方光コンバイナ31のコア311の周囲に空気の層を形成し、この空気の層をクラッド312として用いてもよい。
【0017】
本実施形態における高反射部21は、ファイバブラッググレーディングが形成されたダブルクラッドファイバにより構成されている。すなわち、高反射部21は、コアと、コアの周囲を覆う内側クラッドと、内側クラッドの周囲を覆う外側クラッドとを有している。融着接続部25(図1参照)では、前方光コンバイナ31のコア311(図3参照)と高反射部21の内側クラッドとが光学的に結合されている。また、融着接続部23(図1参照)では、増幅用光ファイバ20のコア201(図2参照)と高反射部21のコアとが光学的に結合され、増幅用光ファイバ20の内側クラッド202(図2参照)と高反射部21の内側クラッドとが光学的に結合されている。
【0018】
図4は、後方光コンバイナ41及び後方励起光ファイバ43を模式的に示す断面図である。図4に示すように、後方励起光ファイバ43は、コア431と、コア431の周囲を覆うクラッド432と、クラッド432の周囲を覆う被覆(図示せず)とを含んでおり、クラッド432の屈折率はコア431の屈折率よりも低くなっている。したがって、後方励起光ファイバ43のコア431の内部は後方励起光源40からの励起光が伝搬する光導波路となっている。
【0019】
後方光コンバイナ41は、コア411と、コア411の周囲を覆う内側クラッド412と、内側クラッド412の周囲を覆う外側クラッド413と、外側クラッド413の周囲を覆う被覆414とを有している。内側クラッド412の屈折率はコア411の屈折率よりも低くなっており、コア411の内部は信号光が伝搬する光導波路となっている。また、外側クラッド413の屈折率は内側クラッド412の屈折率よりも低くなっており、コア411及び内側クラッド412の内部は励起光が伝搬する光導波路となっている。それぞれの後方励起光ファイバ43は、後方励起光ファイバ43のコア431が後方光コンバイナ41の内側クラッド412の領域内に位置するように後方光コンバイナ41に融着接続されている。後方励起光ファイバ43と後方光コンバイナ41との融着接続部の近傍では、後方励起光ファイバ43の被覆と後方光コンバイナ41の被覆414が除去されている。なお、後方光コンバイナ41の内側クラッド412の周囲に空気の層を形成し、この空気の層を外側クラッド413として用いてもよい。
【0020】
本実施形態における低反射部22は、ファイバブラッググレーディングが形成されたダブルクラッドファイバにより構成されている。すなわち、低反射部22は、コアと、コアの周囲を覆う内側クラッドと、内側クラッドの周囲を覆う外側クラッドとを有している。融着接続部26(図1参照)では、後方光コンバイナ41のコア411(図4参照)と低反射部22のコアとが光学的に結合され、後方光コンバイナ41の内側クラッド412と低反射部22の内側クラッドとが光学的に結合されている。また、融着接続部24(図1参照)では、増幅用光ファイバ20のコア201(図2参照)と低反射部22のコアとが光学的に結合され、増幅用光ファイバ20の内側クラッド202(図2参照)と低反射部22の内側クラッドとが光学的に結合されている。
【0021】
図4に示すように、後方光コンバイナ41の端面中央部には出力光ファイバ60が接続されている。この出力光ファイバ60は、コア601(第1のコア)と、コア601の周囲を覆うクラッド602(第1のクラッド)とを含んでいる。クラッド602の屈折率はコア601の屈折率よりも低くなっており、コア601の内部は信号光が伝搬する光導波路となっている。例えば、出力光ファイバ60のコア601の外径は40μmであり、クラッド602の外径は125μmである。出力光ファイバ60は、後方光コンバイナ41のコア411が出力光ファイバ60のコア601の領域内に位置するように後方光コンバイナ41に融着接続されている。この出力光ファイバ60は、後方光コンバイナ41とともに収容ユニット12(図1参照)に収容されている。
【0022】
図4に示すように、出力光ファイバ60の端部にはデリバリファイバ70が接続されている。このデリバリファイバ70は、コア701(第2のコア)と、コア701の周囲を覆うクラッド702(第2のクラッド)と、クラッド702の周囲を覆う被覆703とを有している。クラッド702の屈折率はコア701の屈折率よりも低くなっており、コア701の内部は信号光が伝搬する光導波路となっている。例えば、デリバリファイバ70のコア701の外径は40μmであり、クラッド702の外径は400μmである。デリバリファイバ70は、出力光ファイバ60のコア601がデリバリファイバ70のコア701の領域内に位置するように出力光ファイバ60に融着接続されている。出力光ファイバ60とデリバリファイバ70との融着接続部の近傍では、デリバリファイバ70の被覆703が除去されている。
【0023】
デリバリファイバ70の出力光ファイバ60側の端部は収容ユニット12(第1の収容ユニット)に収容されているが、このデリバリファイバ70は収容ユニット12から外部に延び、所定の経路で取り回された上で収容ユニット11(第2の収容ユニット)に導入される。なお、デリバリファイバ70の損傷を低減するために、デリバリファイバ70が収容ユニット11及び12から外部に出ている部分では被覆703を有することが好ましい。
【0024】
収容ユニット11には、クラッドモード光を除去するクラッドモード除去部としてのクラッドモードストリッパ80が収容されており、収容ユニット11に導入されたデリバリファイバ70の端部が融着接続部81でクラッドモードストリッパ80に接続される。このクラッドモードストリッパ80としては様々な種類の公知のクラッドモード除去構造を採用することができ、このクラッドモードストリッパ80によりデリバリファイバ70のクラッド702を伝搬する不要なクラッドモード光が除去される。収容ユニット11内のクラッドモードストリッパ80は、融着接続部82で光ファイバ83に接続されている。この光ファイバ83はビーム出力端50まで延びている。
【0025】
このような構成において、それぞれの前方励起光源30で生成された励起光は、前方励起光ファイバ33のコア331を伝搬して前方光コンバイナ31のコア311に導入される。前方光コンバイナ31のコア311に導入された励起光は高反射部21を通って増幅用光ファイバ20の内側クラッド202に導入される。また、それぞれの後方励起光源40で生成された励起光は、後方励起光ファイバ43のコア431を伝搬して後方光コンバイナ41の内側クラッド412に導入される。後方光コンバイナ41の内側クラッド412に導入された励起光は低反射部22を通って増幅用光ファイバ20の内側クラッド202に導入される。
【0026】
図2に示すように、前方励起光源30及び後方励起光源40から増幅用光ファイバ20に導入された励起光Pは、増幅用光ファイバ20の内側クラッド202及びコア201の内部を伝搬する。この励起光Pがコア201を通過する際に希土類元素イオンに吸収され、この希土類元素イオンが励起されて自然放出光が生じる。この自然放出光が高反射部21と低反射部22との間で再帰的に反射され、特定の波長(例えば1064nm)の光が増幅されてレーザ発振が生じる。このようにして増幅されたレーザ光(信号光)は、増幅用光ファイバ20のコア201の内部を伝搬し、その一部が低反射部22を透過する。低反射部22を透過した信号光は、後方光コンバイナ41のコア411を伝搬し、出力光ファイバ60のコア601を通ってデリバリファイバ70のコア701に導入される。この信号光は、デリバリファイバ70のコア701を伝搬して収容ユニット11内のクラッドモードストリッパ80に至り、このクラッドモードストリッパで不要なクラッドモード光が除去された後、信号光がビーム出力端50から例えば加工対象物に向けて出射される。
【0027】
ここで、信号光の損失を低減するために、デリバリファイバ70のコア701の外径(例えば40μm)は、出力光ファイバ60のコア601の外径(例えば40μm)に等しいことが好ましい。一方、デリバリファイバ70のクラッド702の外径(例えば400μm)は、出力光ファイバ60のクラッド602の外径(例えば125μm)よりも大きくなっている。デリバリファイバ70のコア701の外径に対してクラッド702の外径は4倍以上25倍以下であることが好ましく、5倍以上14倍以下であることがより好ましく、約10倍であることがさらに好ましい。また、デリバリファイバ70の取り回しを考慮すると、デリバリファイバ70のクラッド702の外径は1mm以下であることが好ましい。
【0028】
一般に、光ファイバのクラッドの外径が大きくなるほど、光ファイバの曲げに対するビーム品質の悪化の度合いが小さくなる。本実施形態では、デリバリファイバ70のクラッド702の外径が出力光ファイバ60のクラッド602の外径よりも大きくなっているため、デリバリファイバ70が収容ユニット12の外部で曲げられた状態で配置されても、デリバリファイバ70のコア701を伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化が抑えられ、ビーム品質が安定する。
【0029】
特に、本実施形態におけるファイバレーザ装置1は後方光コンバイナ41を有しているが、この後方光コンバイナ41には出力光ファイバ60に加えて複数の後方励起光ファイバ43も接続されている。このため、出力光ファイバ60のクラッド602の外径は後方光コンバイナ41の内側クラッド412に比べて小さくなる。したがって、上述のように、出力光ファイバ60を外径の大きなクラッド702を有するデリバリファイバ70に接続することで、デリバリファイバ70のコア701を伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化を効果的に抑えることができる。
【0030】
また、本実施形態では、デリバリファイバ70が収容ユニット12から収容ユニット11に向かって延びているため、収容ユニット12と収容ユニット11との間でデリバリファイバ70が曲げられることが多くなる。特に本実施形態のように、収容ユニット11と収容ユニット12とを上下方向に積層した場合はデリバリファイバ70を曲げて取り回す必要が生じる。このように、デリバリファイバ70を収容ユニット12と収容ユニット11との間で曲げた状態で配置しても、上述したようにデリバリファイバ70のクラッド702の外径が出力光ファイバ60のクラッド602の外径よりも大きくなっているため、デリバリファイバ70のコア701を伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化が抑えられる。また、メンテナンスや装置の移動に伴って振動等の外乱が生じた場合であっても、デリバリファイバ70のクラッド702の外径が出力光ファイバ60のクラッド602の外径よりも大きくなっているため、ビーム品質が変動しづらく、外乱に強い構造となっている。
【0031】
また、本実施形態のように、収容ユニット11~14を上下方向に隣接して配置することで、収容ユニット11~14のフットプリントを低減することができる。さらに、収容ユニット11~14を上下方向に隣接して配置しているため、例えばこれらの収容ユニット11~14を筐体内に引出可能に配置することなどにより、これらの収容ユニット11~14のメンテナンスを行いやすくすることができる。さらに、光ファイバの長さを短くすることで誘導ラマン散乱を低減できることが知られているが、本実施形態のように収容ユニット11と収容ユニット12とを隣接して配置することで、出力光ファイバ60からクラッドモードストリッパ80までの光ファイバの長さを短くすることができるため、誘導ラマン散乱を低減することができる。
【0032】
上述した収容ユニット11~14を別個の冷却系統により冷却してもよい。このようにすることで、それぞれの収容ユニット11~14に収容されている構成要素を互いに独立して冷却することができる。したがって、これらの構成要素の温度変化による光学特性の変化を効果的に低減することが可能となり、ファイバレーザ装置の効率も向上する。
【0033】
また、本実施形態のファイバレーザ装置1は複数の後方励起光源40と後方光コンバイナ41とを有しているが、後方励起光源40と後方光コンバイナ41とを省略することも可能である。この場合には、低反射部22と出力光ファイバ60とが互いに接続される。
【0034】
また、図示した例では、収容ユニット11~14が上下方向に積層されているが、収容ユニット11~14を水平方向に積層してもよいことは言うまでもない。
【0035】
ファイバレーザ装置としては、シード光源からのシード光を励起光源からの励起光を用いて増幅するMOPAファイバレーザ装置も知られているが、本発明はこのようなMOPAファイバレーザ装置にも適用することができる。
【0036】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0037】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、出力されるレーザ光のビーム品質の悪化を抑制し、安定したビーム品質を得ることができるファイバレーザ装置が提供される。このファイバレーザ装置は、レーザ光を増幅可能な増幅用光ファイバと、上記増幅用光ファイバに供給する励起光を生成可能な少なくとも1つの励起光源と、上記増幅用光ファイバにより増幅されたレーザ光を伝搬する第1のコアと、上記第1のコアよりも低い屈折率を有し、上記第1のコアの周囲を覆う第1のクラッドとを含む出力光ファイバと、上記出力光ファイバの上記第1のコアと光学的に結合される第2のコアと、上記第2のコアよりも低い屈折率を有し、上記第2のコアの周囲を覆う第2のクラッドとを含むデリバリファイバと、上記増幅用光ファイバ及び上記出力光ファイバを内部に収容する第1の収容ユニットとを備える。上記デリバリファイバの上記第2のクラッドの外径は、上記出力光ファイバの上記第1のクラッドの外径よりも大きい。上記デリバリファイバは、上記第1の収容ユニットの内部から上記第1の収容ユニットの外部に延びる。
【0038】
本発明の一態様によれば、デリバリファイバの第2のクラッドの外径が出力光ファイバの第1のクラッドの外径よりも大きくなっているため、デリバリファイバが第1の収容ユニットの外部で曲げられた状態で配置されても、デリバリファイバの第2のコアを伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化が抑えられ、ビーム品質が安定する。
【0039】
上記ファイバレーザ装置は、クラッドモード光を除去するクラッドモード除去部を内部に収容する第2の収容ユニットをさらに備えていてもよい。この第2の収容ユニットは、上記第1の収容ユニットとは別体である。上記デリバリファイバは、上記第1の収容ユニットの内部から上記第1の収容ユニットの外部に延び、上記第2の収容ユニットの上記クラッドモード除去部に接続されていてもよい。このような構成では、第1の収容ユニットと第2の収容ユニットとの間でデリバリファイバが曲げられることが多くなるが、上述したように、デリバリファイバが第1の収容ユニットと第2の収容ユニットとの間で曲げられた状態で配置されても、デリバリファイバの第2のコアを伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化が抑えられ、ビーム品質が安定する。
【0040】
この場合において、上記第1の収容ユニットと上記第2の収容ユニットとを隣接して配置してもよい。光ファイバの長さを短くすることで誘導ラマン散乱を低減できることが知られているが、このように第1の収容ユニットと第2の収容ユニットとを隣接して配置することで、出力光ファイバからクラッドモード除去部までの光ファイバの長さを短くすることができるため、誘導ラマン散乱を低減することができる。
【0041】
また、上記第2の収容ユニットは、上記第1の収容ユニットの上方又は下方に隣接して配置されていてもよい。このように第1の収容ユニットと第2の収容ユニットとを上下方向に隣接して配置すれば、例えばこれらの収容ユニットを筐体内に引出可能に配置することなどにより、これらの収容ユニットのメンテナンスを行いやすくすることができる。
【0042】
上記少なくとも1つの励起光源は、上記増幅用光ファイバの下流側に設けられる複数の後方励起光源を含んでいてもよい。上記ファイバレーザ装置は、上記複数の後方励起光源で生成される上記励起光を伝搬する複数の後方励起光ファイバと、上記複数の後方励起光源により生成された上記励起光を結合して上記増幅用光ファイバに導入する後方光コンバイナとをさらに備えていてもよい。上記後方光コンバイナは、上記複数の後方励起光ファイバと上記出力光ファイバとが光学的に結合される端面を有する。このような構成によれば、後方光コンバイナには出力光ファイバに加えて複数の後方励起光ファイバも接続されるため、出力光ファイバの第1のクラッドの外径は後方光コンバイナの上流側の光ファイバに比べて小さくなる。したがって、上述のように、出力光ファイバを外径の大きな第2のクラッドを有するデリバリファイバに接続することで、デリバリファイバの第2のコアを伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化を効果的に抑えることができる。
【0043】
上記ファイバレーザ装置は、上記少なくとも1つの励起光源を内部に収容する第3の収容ユニットをさらに備えていてもよい。この第3の収容ユニットは、上記第1の収容ユニットとは別体である。第1の収容ユニットと上記第3の収容ユニットとを隣接して配置してもよい。また、第3の収容ユニットは上記第2の収容ユニットと別体であってもよい。このような構成によれば、第1の収容ユニットと第3の収容ユニットの冷却系統を別個にすることができるので、第1の収容ユニットに収容される増幅用光ファイバ及び出力光ファイバと、第3の収容ユニットに収容される励起光源とを互いに独立して冷却することができる。したがって、これらの構成要素の温度変化による光学特性の変化を低減することができ、ファイバレーザ装置の効率も向上する。
【0044】
本発明の一態様によれば、デリバリファイバの第2のクラッドの外径が出力光ファイバの第1のクラッドの外径よりも大きくなっているため、デリバリファイバが第1の収容ユニットの外部で曲げられた状態で配置されても、デリバリファイバの第2のコアを伝搬するレーザ光のビーム品質の悪化が抑えられる。
【0045】
本出願は、2020年3月10日に提出された日本国特許出願特願2020-041303号に基づくものであり、当該出願の優先権を主張するものである。当該出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、励起光を用いて高出力のレーザ光を生成するファイバレーザ装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
1 ファイバレーザ装置
11 (第2の)収容ユニット
12 (第1の)収容ユニット
13 (第3の)収容ユニット
14 (第3の)収容ユニット
20 増幅用光ファイバ
21 高反射部
22 低反射部
30 前方励起光源
31 前方光コンバイナ
33 前方励起光ファイバ
40 後方励起光源
41 後方光コンバイナ
43 後方励起光ファイバ
50 ビーム出力端
60 出力光ファイバ
70 デリバリファイバ
80 クラッドモードストリッパ(クラッドモード除去部)
201,311,331,411,431 コア
202,412 内側クラッド
203,413 外側クラッド
312,332,432 クラッド
601 (第1の)コア
602 (第1の)クラッド
701 (第2の)コア
702 (第2の)クラッド
図1
図2
図3
図4