(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】複合フィルタを用いる、スキューおよびチャネル非対称性に起因するチャネル障害の除去
(51)【国際特許分類】
H04B 3/06 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H04B3/06 A
(21)【出願番号】P 2022507779
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020040358
(87)【国際公開番号】W WO2021066912
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508041127
【氏名又は名称】シスコ テクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲン,ジョエル,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】サポージニコフ,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ノザゼ,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】コール,アメンドラ
(72)【発明者】
【氏名】カレティ,ウペンドラナド,レッディ
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089950(JP,A)
【文献】特開昭59-189786(JP,A)
【文献】特表2018-524855(JP,A)
【文献】特表2010-505363(JP,A)
【文献】特表2010-508739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0164802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/06
H04L 25/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送システムであって、
送信機と、
受信機と、
チャネル障害を除去するために前記送信機および前記受信機のうちの1つにおいて動作可能なフィルタと、を備え、
前記フィルタが、ガウシアン関数とコサイン関数の逆数との和に従って動作可能であり、前記ガウシアン関数と前記コサイン関数の逆数が、スキューおよびチャネル非対称性を考慮するための調整可能なパラメータを含む、伝送システム。
【請求項2】
前記スキューが、時間遅延スキュー、上昇および下降時間スキュー、ならびに振幅スキューを含む、請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記フィルタが、等化で使用するための整形を有するバンドパスフィルタを備える、請求項1または2に記載の伝送システム。
【請求項4】
前記調整可能なパラメータが、周波数、ガウシアン変数、標準偏差変数、およびスキュー変数を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の伝送システム。
【請求項5】
前記ガウシアン関数と前記コサイン関数の逆数との前記和が、以下のように定義され、
【数1】
式中、fが、周波数であり、f
i
0が、調整可能な周波数パラメータであり、σ
iが、調整可能なガウシアン変数であり、μ
iが、前記ガウシアン関数の調整可能な標準偏差変数であり、t
skewが、調整可能なスキューパラメータである、請求項1~4のいずれか一項に記載の
伝送システム。
【請求項6】
前記調整可能なパラメータの少なくとも一部が、前記受信機におけるインパルス応答に基づいて定義される、請求項1~5のいずれか一項に記載の
伝送システム
。
【請求項7】
前記フィルタが前記受信機において動作する、請求項1~6のいずれか一項に記載の伝送システム。
【請求項8】
前記フィルタが前記送信機において動作する、請求項1~7のいずれか一項に記載の伝送システム。
【請求項9】
前記伝送システムが、パルス振幅変調シリアライザ/デシリアライザで動作し、前記伝送システムが、前記フィルタの後に位置付けられた連続時間線形等化器をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の伝送システム。
【請求項10】
方法であって、
送信機からの送信信号を受信機において受信
してデータを出力することと、
チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いて前記データをフィルタリングすることと、
スキューおよびチャネル非対称性を考慮するために、前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの調整可能なパラメータを調整することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記スキューが、時間遅延スキュー、上昇および下降時間スキュー、ならびに振幅スキューを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタが、等化で使用するための整形を有するバンドパスフィルタを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記調整可能なパラメータが、周波数、ガウシアン変数、標準偏差変数、およびスキュー変数を含み、前記調整可能なパラメータが、挿入損失偏差に基づいて定義される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの、ガウシアンとコサイン関数の逆数とが、以下に従って動作し、
【数2】
式中、fが、周波数であり、f
i
0が、調整可能な周波数パラメータであり、σ
iが、調整可能なガウシアン変数であり、μ
iが、前記ガウシアン関数の調整可能な標準偏差変数であり、t
skewが、調整可能なスキューパラメータである、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記調整可能なパラメータの少なくとも一部が、前記受信機におけるインパルス応答に基づいて定義される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
方法であって、
送信データを送信機において受信することと、
チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いて前記送信データをフィルタリングすることと、
スキューを考慮するために、前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの調整可能なパラメータを調整することと、
フィルタリングされた前記送信データに基づいて送信信号を生成することと、
前記送信信号を受信機に送信することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記スキューが、時間遅延スキュー、上昇および下降時間スキュー、ならびに振幅スキューを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタが、等化で使用するための整形を有するバンドパスフィルタを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記調整可能なパラメータが、周波数、ガウシアン変数、標準偏差変数、およびスキュー変数を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタが、連続時間線形等化器との組み合わせで動作する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
装置であって、
送信機からの送信信号を受信
してデータを出力するための手段と、
チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いて前記データをフィルタリングするための手段と、
スキューおよびチャネル非対称性を考慮するために、前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの調整可能なパラメータを調整するための手段と、を備える、装置。
【請求項22】
請求項11~15のいずれか一項に記載の方法を実装するための手段をさらに備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
装置であって、
送信データを受信するための手段と、
チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いて前記送信データをフィルタリングするための手段と、
スキューを考慮するために、前記複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの調整可能なパラメータを調整するための手段と、
フィルタリングされた前記送信データに基づいて送信信号を生成するための手段と、
前記送信信号を受信機に送信するための手段と、を備える、装置。
【請求項24】
請求項17~20のいずれか一項に記載の方法を実装するための手段をさらに備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに、請求項10~
15のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項26】
コンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、通信ネットワークに関し、より具体的には、チャネル障害の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
チャネル障害は、差動信号のチャネル応答へのアーチファクト、特にチャネルが周波数に関してそれを通過する信号に対してどのように振る舞うかの伝達関数として機能するチャネル挿入損失をもたらし得る。速度が上がるにつれて、チャネルの小さい障害は、応答の感度を引き起こす場合があり、リンクへの損失マージンの影響が急速に上がる可能性があるため、リンクのパフォーマンスに影響を与える場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】一実施形態による、チャネル障害を除去するためのフィルタを備える伝送システムの簡略化された概略図である。
【
図2】
図1のフィルタ有りのおよび無しのチャネル応答の例を示す。
【
図3A】
図1の伝送システム内のフィルタによって除去され得る1つのタイプのチャネル障害を示す、プリント回路基板内のストリップライン伝送ラインにおける時間遅延P/Nスキューの例を示す。
【
図3B】
図1の伝送システム内のフィルタによって除去され得る別のタイプのチャネル障害を示す、プリント回路基板内のマイクロストリップ伝送ラインにおける上昇時間P/Nスキューの例を示す。
【
図3C】
図1の伝送システム内のフィルタによって除去され得る別のタイプのチャネル障害を示す、ケーブルにおける振幅スキューの例を示す。
【
図4A】
図1のフィルタ有りのおよび無しのストリップライン伝送ラインにおける挿入損失の例を示す。
【
図4B】
図1のフィルタ有りのおよび無しのストリップライン伝送ラインにおける例示的なパルス応答を示す。
【
図5A】ストリップラインケースのためにフィルタを用いない、等化および不等化されたパルス応答を示す。
【
図5B】ストリップラインケースのためにフィルタを用いる、等化および不等化されたパルス応答を示す。
【
図6A】フィルタ有りのおよび無しのマイクロストリップ伝送ラインにおける挿入損失の例を示す。
【
図6B】
図1のフィルタ有りのおよび無しの、マイクロストリップ伝送ラインにおける例示的なパルス応答を示す。
【
図7A】フィルタを用いない、
図6Aおよび6Bに示されるスキューシミュレーションを用いるマイクロストリップの等化を示す。
【
図7B】
図1のフィルタを用いる、
図6Aおよび6Bに示されるスキューシミュレーションを用いるマイクロストリップの等化を示す。
【
図8A】
図1のフィルタを調整するために使用され得るインパルス応答の例を示す。
【
図8B】シミュレートされたチャネル挿入損失と、
図8Aのインパルス応答から再構築されたおよびチャネル挿入損失との比較を示す。
【
図9A】一実施形態による、調整可能なパラメータ値を識別する際に使用するための、
図8Bに対応する挿入損失の挿入損失偏差の例を示す。
【
図9B】一実施形態による、調整可能なパラメータ値を識別する際に使用するための、フィルタを用いない
図6Aに対応する挿入損失の挿入損失偏差の例を示す。
【
図10A】一実施形態による、受信機において実装されたフィルタを用いてチャネル障害を除去するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【
図10B】一実施形態による、送信機において実装されたフィルタを用いてチャネル障害を除去するためのプロセスの例を示すフローチャートである。
【
図11】本明細書に記載される実施形態を実装する際に有用なネットワークデバイスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0005】
例示的な実施形態の説明
概要
本発明の態様は、独立請求項に記載され、好ましい特徴は、従属請求項に記載される。一態様の特徴は、各態様に単独で、または他の態様と組み合わせて適用され得る。
【0006】
一実施形態では、伝送システムは、一般に、送信機と、受信機と、チャネル障害を除去するために送信機および受信機のうちの1つにおいて動作可能なフィルタと、を備える。フィルタは、ガウシアン関数とコサイン関数の逆数との和に従って動作可能であり、ガウシアンとコサイン関数の逆数は、スキューおよびチャネル非対称性を考慮するための調整可能なパラメータを含む。
【0007】
1つ以上の実施形態では、スキューは、時間遅延スキュー、上昇および下降時間スキュー、ならびに振幅スキューを含む。
【0008】
1つ以上の実施形態では、フィルタは、等化で使用するための整形を有するバンドパスフィルタを備える。
【0009】
1つ以上の実施形態では、調整可能なパラメータは、周波数、ガウシアン変数、標準偏差変数、およびスキュー変数を含む。
【0010】
1つ以上の実施形態では、調整可能なパラメータの少なくとも一部は、受信機におけるインパルス応答に基づいて定義され得る。
【0011】
1つ以上の実施形態では、フィルタは、受信機において動作する。
【0012】
1つ以上の実施形態では、フィルタは、送信機において動作する。
【0013】
1つ以上の実施形態では、伝送システムは、パルス振幅変調シリアライザ/デシリアライザで動作し、伝送システムは、連続時間線形等化器をさらに備える。
【0014】
別の実施形態では、方法は、概して、送信機からの送信信号を受信機において受信することと、チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いてデータをフィルタリングすることと、スキューを考慮するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタの調整可能なパラメータを調整することと、を含む。
【0015】
さらに別の実施形態では、方法は、概して、送信データを送信機において受信することと、チャネル障害を除去するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタを用いて送信データをフィルタリングすることと、スキューを考慮するために、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタで調整可能なパラメータを調整することと、送信信号を生成することと、送信信号を受信機に送信することと、を含む。
【0016】
本明細書に記載される実施形態の特徴および利点のさらなる理解は、本明細書および添付図面の残りの部分を参照することによって実現され得る。
【0017】
例示的な実施形態
以下の説明は、当業者が実施形態を作成し使用することを可能にするために提示される。特定の実施形態および用途の説明は、例としてのみ提供され、様々な修正は、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に記載の一般的原理は、実施形態の範囲から逸脱することなく、他の用途に適用され得る。したがって、実施形態は、示されるものに限定されるべきではないが、本明細書に記載される原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。明確にするために、実施形態に関連する技術分野で知られている技術的材料に関する詳細は、詳細には説明されていない。
【0018】
チャネル障害は、差動信号のチャネル応答へのアーチファクト、特にチャネルが周波数に関してそれを通過する信号に対してどのように振る舞うかの伝達関数として機能するチャネル挿入損失をもたらし得る。スキューなどの効果は、スキューが増加するにつれてチャネル損失の増加を引き起こす。周期的な負荷効果は、差動対のP(正トレース)信号とN(負トレース)信号との間の伝送ラインの任意の非対称性からも見ることができる。チャネル障害による周期的な負荷効果は、挿入損失に影響を与えることも示されている。他の反射およびチャネル障害は、チャネルに挿入損失偏差を生じさせ、その結果、アイ閉鎖高さ(アイダイアグラムの垂直開口部)および幅(アイダイアグラムの水平開口部)をもたらす可能性がある。データレートが増加し続けると、チャネルの小さい障害は応答の感度を引き起こす可能性があるため、リンクへのアイおよびマージンの影響も増加する。例えば、非対称性が増加するにつれて、アイの高さは非常に速く閉鎖する。高スキューによって生じる非対称性は、インパルス応答の幅および高さに影響を及ぼし、したがって、チャネルの伝達関数に影響を及ぼす。これらの効果の多くは、プリント回路基板材料およびケーブル構造の異方性から生じるものであり、ランダムかつ制御されていない可能性があるため、物理的レイアウトへの適用のための補正を困難にする。
【0019】
スキューの増加は、様々なデータレートでの挿入損失の増加をもたらし、モード変換にも影響を及ぼす。したがって、非対称性は、損失およびモード変換に関連している。この知識により、より高いシグナリング速度(例えば、56Gbps超)でより感度が高くなる、アイの高さ(損失)およびアイの幅(ジッタースキューからアイの幅への影響)の観点で失われつつあるバックマージンを買い戻すことが可能であり得る。
【0020】
本明細書に記載の実施形態は、フィルタ(本明細書では挙動フィルタまたは複合フィルタとも呼ばれる)の使用によるチャネル障害の除去(例えば、低減、部分除去、完全除去)を提供する。フィルタは、チャネル障害を除去するために追加され、それにより、より堅牢な等化が可能になる。以下に詳細に説明されるように、P/Nミスマッチは、線形フィルタリングで補償され得、実施形態は、1つ以上のチャネル非対称ケース(例えば、時間遅延スキュー、上昇/下降時間スキュー、振幅スキュー、またはそれらの任意の組み合わせ)に対処するために実装され得る。1つ以上の実施形態では、ガウシアンとコサイン関数の逆数とによって表される伝達関数を使用して、P/Nミスマッチから生じる損失を補償する。一例では、マッチングフィルタ(整形を有するバンドパスフィルタ)を使用して、固有の非対称性によって引き起こされる「吸い出し」を等化することができる。本明細書に記載される実施形態の1つ以上は、モード変換を増加させることなく、または深刻なPVT(プロセス、電圧、温度)変動影響を生成することなく、チャネル障害を低減するフィルタを提供する。
【0021】
図1は、一実施形態による、送信チャネル14を介して送信信号を送信するための送信機10および受信機12を有する簡略化された伝送システム(Tx-Rxリンク)を示す。スキューによるチャネル障害を除去するために、調整可能なフィルタ(本明細書では、挙動フィルタ、複合フィルタ、マッチングフィルタ、または複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタとも呼ばれる)16を備えるアクティブ回路を伝送システムに追加し得る。送信機10は、ソース入力11と、任意の数の機能(例えば、符号化、変調、パルス整形、フィルタリング、マッピングなど)を実行し得る1つ以上の機能ブロック13aとを備える。また、受信機12は、フィルタ16の前または後のいずれかで様々な機能(例えば、復号、復調など)を実行するように構成された1つ以上の機能ブロック13b、13cと、出力20とを含んでもよい。
図1に示される例では、受信機12は、可変ゲイン増幅器15、連続時間線形等化器(CTLE)17、フィードフォワード等化器(FFE)18、および判定フィードバック等化器(DFE)19をさらに備える。
【0022】
図1に示される簡略化されたブロック図は単なる例であり、本明細書に記載される実施形態は、異なる構成要素または構成要素の配置を備える伝送システムに実装され得ることを理解されたい。例えば、
図1は、受信機に実装されたフィルタ16を示し、フィルタはまた、送信機に実装されてもよい。
【0023】
フィルタ16は、ガウシアン関数とコサイン関数との和(例えば、ガウシアン関数と、コサイン関数の逆数との和)を使用し、より少ない挿入損失偏差(ILD)を有するチャネル応答を作成するために調整可能なパラメータを有する。以下は、調整可能なパラメータf
i
0、μ
i、σ
i、およびt
skewとともにガウシアン関数のn個の数値を有する周波数(f)の関数であるフィルタ16の伝達関数(T)の一例である。
【数1】
式中:
fは、周波数であり、
f
i
0は、調整可能な周波数パラメータであり、
σ
iは、同調可能なガウシアン変数であり、
μ
iは、ガウシアン関数の調整可能な標準偏差変数であり、
t
skewは、調整可能なスキューパラメータである。
【0024】
コサイン関数の逆数のための入力調整可能パラメータt
skew値を取得するためのフィルタ応答を調整する方法の一例は、
図8Aおよび8Bに関して以下に説明する。SerDesにおけるビットエラー率を低減するための調整可能なパラメータ値を見つけるための調整アルゴリズムの例は、
図9Aおよび9Bに関して以下に説明する。
【0025】
図2は、フィルタ16が設置され(トレース24)、フィルタが設置されていない(トレース26)挿入損失対周波数の例を示すグラフ21を示す(
図1および2)。トレース28は、フィルタ応答を示す。フィルタ16が設置されていない場合、チャネル応答26は、前述のように、良好な品質のアイを達成するために有害である。チャネル応答24に示され、以下に説明されるように、調整可能な複合フィルタ16は、可変周波数点における振幅補正で調整されてもよく、それにより、改善された補正された応答が提供される。1つ以上の実施形態では、フィルタ16は、例えば、NRZ(非ゼロ復帰)およびPAM4(4レベルのパルス振幅変調)シグナリング技術の両方のためのBER(ビットエラーレート)またはアイの高さおよび幅に関して買い戻されたマージンの観点から見ることができる効果を伴う改善されたチャネル応答を生成するように調整可能なパラメータに基づいて動作する挙動フィルタである。
【0026】
図3A~3Cは、フィルタ16を使用して対処することができる、異なるタイプのP/Nスキューをもたらすチャネル非対称性の効果を示す。グラフ30、32、34は、差動信号のP/Nに関する異なるスキュー条件の電圧対時間を示す。
図3Aのグラフ30は、差動モード速度と共通モード速度が同じであるときの時間遅延スキューを示す。これは通常、PCB(プリント回路基板)のストリップライン伝送ラインにおいて生じる。
図3Bのグラフ32は、差動モードが共通モードよりも速く移動するときに生じる上昇時間スキューを示す。これは通常、PCBのマイクロストリップ伝送ラインにおいて生じる。
図3Cのグラフは、共通モードが差動モードよりも速く移動するときの振幅スキューの例を示す。これは通常、ケーブルに存在する。スキューに起因するチャネル障害は、例えば、SerDes(シリアライザ/デシリアライザ)の受信機において高速信号品質を劣化させる。これらの非対称性およびチャネル障害は、本明細書に記載される複合フィルタ16を使用して補正(例えば、除去、最小化、低減)される。1つ以上の実施形態では、フィルタ16は、時間遅延スキュー、上昇/下降時間スキュー、および振幅スキューという、これらの3つの異なるチャネル非対称ケースに具体的に対処する。
【0027】
図4Aおよび4Bは、50psのスキューを有するストリップラインシミュレーションの例を示す。挿入損失対周波数は、
図4Aのグラフ40に示され、パルス応答(電圧対時間)は、
図4Bのグラフ42に示される。従来の受信機等化アーキテクチャは、一般的に、パルス応答への影響に対処することができない。したがって、
図4Bに示されるフィルタ16無しのパルス応答を等化することができない。フィルタ関数のコサイン部分の逆数は、
図4Aおよび4Bに示される改善を提供することに留意されたい。
【0028】
図5Aおよび5Bは、
図4Aおよび4Bに示されるストリップラインシミュレーションのために、CTLEのみを利用した(
図5Aのグラフ50)、およびフィルタ16とCTLEの両方を利用した(
図5Bのグラフ52)、等化および不等化されたメインタップ電圧に対する電圧対時間のグラフ50、52を示す。CTLEのみでは、等化されたメインタップ電圧は、0.09ボルトである。フィルタ16では、等化されたメインタップ電圧は、0.2ボルトである。グラフ50、52に示されるように、フィルタ16とCTLEの両方の使用は、改善された等化を提供する。フィルタのコサイン関数部分の逆数は、
図5Aおよび5Bに示される改善を提供することに留意されたい。
【0029】
図6Aおよび6Bは、60psのスキューを有するマイクロストリップシミュレーションの例を示す。フィルタ16の有りでおよび無しで、グラフ60は、挿入損失対周波数を示し、グラフ62は、パルス応答(電圧対時間)を示す。スキュー効果は
図6Bに示される。
図6Bに示されるように、マイクロストリップ伝送ラインのスキューは、ILDタイプの挙動をもたらし、フィルタ16(例えば、フィルタのガウシアン関数)は、パルス応答に対するこの影響に対処する。
【0030】
図7Aは、
図6Aおよび6Bに示されるマイクロストリップシミュレーションのために、CTLEのみを利用する(
図7Aのグラフ70)、およびフィルタ16とCTLEの両方を利用する(
図7Bのグラフ72)、等化および不等化されたメインタップ電圧に対する電圧対時間のグラフ70、72を示す。CTLEのみを用いる等化されたメインカーサ電圧は、0.075ボルトである。フィルタ16およびCTLEでは、等化されたメインカーサ電圧は、0.125ボルトである。グラフ70、72に示されるように、フィルタ16とCTLEの両方の使用は、改善された等化を提供する。この例では、フィルタ16は、メインカーサ振幅の60%の改善を提供する。
【0031】
図3Cに示す振幅スキュー(ケーブルのスキュー)は、ILDタイプの挙動をもたらす。これはまた、マイクロストリップシミュレーションのためのフィルタ16を用いて、上述したものと同様に対処され得る。
【0032】
図8Aおよび8Bは、インパルス応答を使用してチャネル挿入損失(IL)および時間遅延スキューの「ディップ」周波数を識別するための例を示す。これは、フィルタ応答の調整に使用するためのt
skew(上記のコサイン関数の逆数のための調整可能なパラメータ)を取得するために使用されてもよい。インパルス応答は、例えば、SerDes受信機からのダンプから取得されてもよい。
図8A(グラフ80)は、65psの時間遅延スキューを有するチャネルのインパルス応答(電圧対時間)の例示的なシミュレーションを示す。
【0033】
図8B(グラフ82)は、スキュー計算で使用するためのチャネル挿入損失に対するインパルス応答の(FFTを使用する)変換を示す。グラフ82は、元のILおよび再構築されたILの挿入損失(IL)対周波数を示す。点線は、インパルス応答から再構築されたチャネルILを表す。
図8Bに示される例では、スキューは、ディップ周波数f
skew=7.7Ghzを使用して計算されてもよい:
t
skew=1/(2*f
skew)=65ps、
これは、チャネル内のスキューの値に一致する。プロセスは、チャネルの挿入損失(実線)をプロットし、再構築された挿入損失と比較することによって検証されてもよく、これは、
図8Bに示されるようによく一致する。
【0034】
以下で、SerDesのBER(ビットエラーレート)を低減する(例えば、最も低いBERを提供する)ための調整可能なパラメータ値を見つけるための調整アルゴリズムの一例を説明する。一例では、上記の式(1)の調整可能なパラメータの初期値は、
【数2】
のフィルタ関数(ゲインまたは減衰なし)を提供するように設定される。
【数3】
【0035】
SerDes受信機では、インパルス応答EFTが識別されて、伝達関数(挿入損失)が取得される。取得された挿入損失の適合された挿入損失および挿入損失偏差関数は、例えば、IEEE802.bj、条項93Aに記載された方法を利用して見出され得る。
【0036】
図9Aは、
図8Bに対応する挿入損失のためのILDの例を示すグラフ90を示す。挿入損失の急激なディップ(例えば、ILD<-20dB)は、
図9Aに示すように識別され、対応する周波数が記録され得る。次に、パラメータt
skewは、次式に従って計算され得る。
t
skew=1/(2*f
skew)
【0037】
図9Bは、
図6Aに対応する挿入損失のためのILDの例を示すグラフ92を示す(フィルタ無し)。このグラフは、例えば、ILDが-0.2dB未満である挿入損失曲線の領域があるかどうかを判定するために使用されてもよい。次いで、ガウシアンフィルタ式におけるnは、そのような領域の数として定義されてもよい。この例では、n=2である。関数Fは、f
i
0、μ
i、σ
iのシード値を見つけるためにこれらの領域に適合され、Fは次のように定義され得る。
【数4】
【0038】
一例では、最終調整ステップは、5%および監視BER値のステップで、fi
0、μi、σi、およびtskewを+/-20%以内に掃引することを含んでもよい。調整パラメータの最終値は、最も低いBERをもたらす値である。
【0039】
上述の調整プロセスが単なる例であり、他のプロセスは、実施形態の範囲から逸脱することなく、調整可能なパラメータ値を取得するために使用され得ることを理解されたい。
【0040】
図10Aは、一実施形態による、(
図1に示すような)受信機12における複合フィルタ16を使用してスキューによるチャネル障害を除去するためのプロセスを示す。ステップ100において、送信機10は、送信データを受信する(
図1および10A)。送信機は、送信信号を生成し(ステップ101)、受信機12は、送信信号を受信する(ステップ102)。データを、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタ(ガウシアン関数とコサイン関数の逆数との和のフィルタ)16を用いてフィルタリングする(ステップ103)。前述のように、フィルタ関数のパラメータは、必要に応じて調整されてもよい(ステップ104)。
【0041】
図10Bは、一実施形態による、送信機における複合フィルタを使用してスキューによるチャネル障害を除去するためのプロセスを示す。送信データは、送信機において受信される(ステップ105)。データを、複合ガウシアンおよびコサインの逆数のフィルタ16を用いてフィルタリングする(ステップ106)。フィルタパラメータは、必要に応じて調整されてもよい(ステップ107)。送信機は、送信信号を生成し(ステップ108)、受信機は、送信信号を受信する(ステップ109)。
【0042】
図10Aおよび10Bに示されるプロセスは単なる例であり、ステップは、実施形態の範囲から逸脱することなく、追加、除去、再順序付け、組み合わせ、または修正されてもよいことを理解されたい。
【0043】
図1、10A、および10Bに関して上述したように、実施形態は、送信ライン(伝送システム)内のトランシーバまたは受信機に実装されてもよい。実施形態は、DSP(デジタル信号処理)を使用して実装されてもよく、またはアナログ実装として実装されてもよく、これは、より大きいダイエリアを必要とし、コストの増加、または混合論理およびアナログをもたらす場合がある。一例では、実施形態は、PAM4 SerDesとともに使用するために実装されてもよい。
【0044】
実施形態は、例えば、データ通信ネットワーク内のネットワークデバイスにおいて実装されてもよい。ネットワークは、ネットワーク内のデータの通過を容易にする任意の数のノード(例えば、ルータ、スイッチ、ゲートウェイ、コントローラ、エッジデバイス、アクセスデバイス、集約デバイス、コアノード、中間ノード、または他のネットワークデバイス)を介して通信する任意の数のネットワークデバイスを含んでもよい。
【0045】
図11は、本明細書に記載される実施形態を実装し得るネットワークデバイス110の例を示す。一実施形態では、ネットワークデバイス110は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得るプログラム可能な機械である。ネットワークデバイス100は、1つ以上のプロセッサ112、メモリ114、ネットワークインターフェース(ポート)116、および調整可能なフィルタ(例えば、コード、ソフトウェア、論理、デバイス)118を含む。
【0046】
メモリ114は、プロセッサ112による実行および使用のための様々なアプリケーション、オペレーティングシステム、モジュール、およびデータを記憶する、揮発性メモリまたは不揮発性ストレージであってもよい。ネットワークデバイス110は、任意の数のメモリ構成要素を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、フィルタ118の1つ以上の構成要素は、メモリ114に記憶されてもよい。
【0047】
論理は、プロセッサ112による実行のために、1つ以上の有形媒体内で符号化されてもよい。例えば、プロセッサ112は、メモリ114などのコンピュータ可読媒体に記憶されたコードを実行してもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子媒体(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み取り専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ))、磁気媒体、光学媒体(例えば、CD、DVD)、電磁媒体、半導体技術媒体、または任意の他の好適な媒体であってもよい。一例では、コンピュータ可読媒体は、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。ネットワークデバイス110は、任意の数のプロセッサ112を含んでもよい。
【0048】
ネットワークインターフェース116は、データを受信するための、またはデータを他のデバイスに送信するための任意の数のインターフェース(ラインカード、ポート)を備えてもよい。ネットワークインターフェース116は、例えば、コンピュータまたはネットワークに接続するためのイーサネットインターフェースまたは光学インターフェースを含んでもよい。
【0049】
図11に示され、上記に記載されたネットワークデバイス110が単なる例であり、ネットワークデバイスの異なる構成が使用され得ることを理解されたい。例えば、ネットワークデバイス110は、本明細書に記載の能力を容易にするために動作可能なハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、プロセッサ、デバイス、構成要素、または要素の任意の好適な組み合わせをさらに含み得る。
【0050】
要約すると、一実施形態では、伝送システムは、送信機と、受信機と、チャネル障害を除去するために送信機および受信機のうちの1つにおいて動作可能なフィルタと、を含む。フィルタは、ガウシアン関数とコサイン関数の逆数との和に従って動作可能であり、ガウシアンとコサイン関数の逆数は、スキューおよびチャネル非対称性を考慮するための調整可能なパラメータを含む。
【0051】
方法および装置は、示される実施形態に従って説明されてきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に変形が行われる可能性があることを容易に認識するであろう。したがって、上記の明細書に含まれ、添付の図面に示されるすべての内容は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈されるべきであることが意図される。