(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20231115BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20231115BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
H05B33/14 B
(21)【出願番号】P 2022529691
(86)(22)【出願日】2020-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2020116335
(87)【国際公開番号】W WO2021103770
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】201911161573.1
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】▲焉▼ 亮亮
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0315222(US,A1)
【文献】特開2016-076696(JP,A)
【文献】特開2016-015468(JP,A)
【文献】特表2014-516965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C09K
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)の構造を有する
化合物。
(nは、2
であり、
X-YはOO型、又はCN型配位子であり、Aは、CR
0
であり、R
0~R
4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C8のアルキル基、又はヘテロアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のアラルキル基、置換もしくは無置換のC3~C30のシリル基、C1~C4のアルキル基で置換もしくは無置換のC1~C8のアリール基、又はC1~C4のアルキル基で置換もしくは無置換のC1~C8のヘテロアリール基から選ばれ、かつ、R
1及びR
2の少なくとも1つは置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基であり、前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基又はホスフィノ基による置換であり、前記置換は、モノ置換から可能な最大数の置換であり、
ZはOである。)
【請求項2】
前記置換は、重水素、F、C3~C6のシクロアルキル基、又は一部もしくは完全に重水素もしくはFで置換されるC1~C4のアルキル基による置換である請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
R
4はHではない請求項
1に記載の化合物。
【請求項4】
R
4の置換基の位置は金属Ir-炭素結合に隣接する位置又は金属Ir-炭素結合に対向する位置である請求項
3に記載の化合物。
【請求項5】
X-Y配位子は、式(II)中のIrの左側の配位子と異なる請求項
4に記載の化合物。
【請求項6】
X-Yは、1,3-ジケトン類化合物である請求項
5に記載の化合物。
【請求項7】
式(II)は、下記のいずれか1つである請求項
1に記載の化合物。
【請求項8】
R
1~R
4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のアラルキル基、C1~C4のアルキル基で置換もしくは無置換のC1~C8のアリール基、又はC1~C4のアルキル基で置換もしくは無置換のC1~C8のヘテロアリール基から選ばれ、かつ、R
1及びR
2の少なくとも1つは置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基であり、前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基又はホスフィノ基による置換であり、前記置換はモノ置換から可能な最大数の置換である、請求項
7に記載の化合物。
【請求項9】
R
3~R
4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、フェニル基で置換されているC1~C4のアルキル基、又はC1~C4のアルキル基で置換されているフェニル基から選ばれ、前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基又はホスフィノ基による置換である、請求項
8に記載の化合物。
【請求項10】
式(II)は、以下のいずれか1つである請求項
1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の化合物の、有機エレクトロルミネッセンス素子への使用。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれかに記載の化合物の、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層におけるリン光ホスト材料のドーパント材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス技術分野に関し、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子に適した有機発光材料に関し、とりわけ、化合物及びその有機エレクトロルミネッセンス素子への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次世代の表示技術としての有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)は、表示及び照明技術においてますます注目され、利用可能性が非常に広い。しかし、市場の応用要求と比べて、OLED素子の発光効率、駆動電圧、使用寿命などの性能について、強化及び改進し続ける必要がある。
【0003】
一般的に、OLED素子の基本構造は、金属電極間に各種の異なる機能を持つ有機機能材料薄膜をサンドイッチの構造となるように介在させ、電流の駆動により、陰極、陽極にそれぞれ正孔及び電子を注入し、正孔及び電子が一定距離移動した後、発光層において複合し、光又は熱の形で放出することにより、OLEDの発光を発生する。しかしながら、有機機能材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の中核組成部分であり、材料の熱安定性、光化学的安定性、電気化学的安定性、量子収率、成膜安定性、結晶性、色飽和度などは、いずれも素子性能に影響を及ぼす主な要素である。
【0004】
一般的に、有機機能材料は、蛍光材料及びリン光材料である。蛍光材料は、通常、有機小分子材料であり、一般的に25%の一重項発光しか利用できないので、発光効率が比較的低い。リン光材料は、重原子効果によるスピン軌道結合作用により、25%の一重項を利用できる他、75%三重項励起子のエネルギーをも利用できるので、発光効率を向上させることができる。しかし、蛍光材料と比べて、リン光材料の始発が遅く、かつ材料の熱安定性、寿命、色飽和度などに改善の余地があり、これは難題となっている。現在、各種の化合物がリン光材料として開発されている。例えば、特許文献CN107973823には、キノリン類イリジウム化合物が開示されているが、このような化合物の色飽和度及び素子性能、特に発光効率及び素子寿命のいずれも改善の余地がある。特許文献CN106459114には、β-ジケトン配位子で配位したイリジウム化合物が開示されているが、このような化合物の昇華温度が高く、色飽和度が悪く、特に素子性能が理想的なものではなく、改進する余地がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的の1つは、リン光化合物を提供することにあり、このような化合物は昇華温度が低く、光、電気化学的安定性が高く、色飽和度が高く、発光効率が高く、素子寿命が長いなどの利点を有し、有機エレクトロルミネッセンス素子に利用可能である。特に、赤色光発光ドーパントとして、OLED産業へ利用可能である。
【0006】
式Iで示される構造式を有する化合物。
[式中、A1~A4のうちの1つはE環に連結するC-C結合であり、1つは金属Mに連結するC-M結合であり、1つはCR
4であり、もう1つはCR
0又はNである。A5~A8のうちの1つはCR
3であり、残りの3つは独立にCR
0又はNを表す。Mは原子量が40超えの金属である。
R
0~R
4は独立に、水素、重水素、ハロゲン元素、置換もしくは無置換のC1~C10のアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C10のヘテロアルキル基、置換もしくは無置換のC6~C30のアラルキル基、置換もしくは無置換のC1~C10のアルコキシ基、置換もしくは無置換のC6~C30のアリールオキシ基、アミノ基、置換もしくは無置換のC3~C30のシリル基、置換もしくは無置換のC6~C30のアリール基、置換もしくは無置換のC1~C8のヘテロアリール基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基、ホスフィノ基から選ばれ、かつ、R
1、R
2の少なくとも1つは置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基である。
Zは独立に、O、S、Se、C(R)
2、Si(R)
2、NR、BR、PORから選ばれる。Rは独立に、置換もしくは無置換のC1~C10のアルキル基又はアルコキシ基、置換もしくは無置換のC2~C30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC6~C30のアリール基、置換もしくは無置換のC1~C18のヘテロアリール基から選ばれる。
前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基、ホスフィノ基による置換である。前記置換は、モノ置換から最大数の置換である。
X-Yは、モノアニオン性二座配位子であり、aとbとの和が金属Mの原子価に等しい。]
【0007】
好ましくは、X-YはOO型、CN型配位子であり、MはOs、Ir、Pt、Pd、Ru、Rh、Au金属のうちの1種である。
【0008】
好ましい化合物として、下記式IIの構造を有する。
[nは、1~2の正整数である。Aは、CR
0又はNである。R
0~R
4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C8のアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のヘテロアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のアラルキル基、置換もしくは無置換のC3~C30のシリル基、C1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のアリール基又はヘテロアリール基から選ばれる。かつ、R
1、R
2の少なくとも1つは置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基である。前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基、ホスフィノ基による置換であり、前記置換は、モノ置換から最大数の置換である。]
【0009】
好ましい化合物として、R1は置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基である。
【0010】
好ましい化合物として、R2は置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基である。
【0011】
好ましい化合物として、R1及びR2はいずれも置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基である。
【0012】
好ましい化合物として、前記置換はDであり、特に好ましくは、一部又は全部がD置換のC1~C4のアルキル基である。
【0013】
好ましい化合物として、前記置換はFであり、特に好ましくは、一部又は全部がF置換のC1~C4のアルキル基である。
【0014】
好ましい化合物として、前記置換はC3~C6のシクロアルキル基である。
【0015】
好ましい化合物として、ZはO、S、NR、C(R)2であり、Rは独立に置換もしくは無置換のC1~C8のアルキル基から選ばれる。
【0016】
好ましい化合物として、R4はHではなく、特に好ましくは、R4置換基の位置が金属-炭素結合(C-M結合)の隣接する位置又は対向する位置である。
【0017】
好ましい化合物として、X-Yは、左側の配位子と異なる。
【0018】
好ましい化合物として、X-Yは、1,3-ジケトン類化合物である。
【0019】
【0020】
好ましくは、Zは、Oであり、R1~R4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のC1~C8のアラルキル基、C1~C4のアルキル基置換もしくは無置換のC1~C8のアリール基又はヘテロアリール基から選ばれ、かつ、R1、R2の少なくとも1つは置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基であり、前記置換は重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基、ホスフィノ基による置換であり、前記置換はモノ置換から最大数の置換である。
【0021】
R3~R4は独立に、水素、重水素、置換もしくは無置換のC1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のC3~C20のシクロアルキル基、フェニル基で置換されているC1~C4のアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されているフェニル基から選ばれる。前記置換は、重水素、F、Cl、Br、C1~C4のアルキル基、C1~C4のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C1~C4のアルキル基で置換されるアミノ基、シアノ基、ニトリル基、イソニトリル基、ホスフィノ基による置換である。
【0022】
【0023】
本発明の目的の1つは、さらに、上記化合物を含有するOLEDリン光材料を提供することにある。
【0024】
本発明の目的の1つは、さらに、上記化合物を含有するOLED素子を提供することにある。
【0025】
本発明の材料は、昇華温度が低く、光、電気化学的安定性が高く、色飽和度が高く、発光効率が高く、素子寿命が長いなどの利点を有する。本発明の材料はリン光材料であり、三重項励起状態を光に変換できるので、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させることにより、エネルギー消耗を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の実施例は、技術発明への理解に寄与するものに過ぎず、本発明を具体的に制限するものと見なされるべきではない。
【0027】
本発明における化合物の合成に係る原料及び溶媒などは、いずれもAlfa、Acros等、当業者によく知られているサプライヤーから購入される。
【0028】
実施例1(CPD 7/9/12の合成)
共通中間体化合物Bの合成:
1つの3Lの三つ口フラスコに、化合物A(98g、375.3mmol、1.0eq)と、ビス(ピナコラト)ジボロン(114.3g、450.3mmol、1.2eq)と、Pd(dppf)Cl
2(5.49g、7.51mmol、0.02eq)と、KOAc(73.67g、750.6mmol、2.0eq)と、ジオキサン(1L)と、を順次に添加し、真空引きし、窒素ガスで3回置換し、油浴で約100℃に加熱し、16h撹拌し、サンプルを取って原料Aが反応し切るまでTLCでモニタリングした。室温まで降温し、複数回に分けて、1Lの1つ口フラスコに移送して回転蒸発によりほとんどのジオキサンを除去し、さらにトルエン(600ml)を添加して、加熱溶解し、脱イオン水を添加して水で3回洗浄し(200ml/回)、分液し、有機相をシリカゲルでろ過し(200~300メッシュ、50g)、さらに100mlのトルエンで洗脱した。有機相を約150ml残るとなるまで濃縮し、300mlのn-ヘキサンを添加し、常温で撹拌しながら4h結晶析出した。ろ過し、ろ過ケーキを80mlのn-ヘキサンで洗脱し、得られた製品を乾燥させた後、90.8gの類白色固体化合物Bを得、収率が78.5%であった。質量スペクトル:309.2(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3 ) δ 7.93 (d,J = 7.7 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.75 (s,1H),7.57 (d,J = 8.2 Hz,1H),7.46 (t,J = 7.7 Hz,1H),7.36 (t,J = 7.4 Hz,1H),2.31 (s,3H),1.14 (s,12H).
【0029】
共用配位子化合物1の合成:
化合物1-3の合成:
1つの1Lの三つ口フラスコに、化合物1-1(25g、103.09mmol、1.0eq)と、化合物1-2(13.85g、123.71mmol、1.2eq)と、Pd-132(1.46g、2.06mmol、0.02eq)と、K
3PO
4(43.77g、206.19mmol、2.0eq)と、トルエン(375ml)と、を順次に添加し、真空引きし、窒素ガスで3回置換し、油浴で約60℃に加熱し、16h撹拌し、サンプルを取って原料1-1がほぼ反応し切るまでTLCでモニタリングした。室温まで降温し、反応フラスコに酢酸エチル(300ml)を添加し、脱イオン水を添加して水で3回洗浄し(150ml/回)、分液し、有機相を固体となるように減圧濃縮した。粗品をカラムクロマトグラフィー分離し(EA:Hex=1:10)、得られた製品を乾燥させた後、18.4gの類白色固体化合物1-3を得、収率が77.7%であった。質量スペクトル:230.1(M+H)
【0030】
化合物1-4の合成:
1つの500mlの三つ口フラスコに、化合物1-3(18.02g、78.46mmol、1.24eq)と、化合物B(19.5g、63.27mmol、1.0eq)と、Pd-132(0.45g、0.632mmol、0.01eq)と、Na2CO3(13.41g、126.5mmol、2.0eq)と、テトラヒドロフラン(180ml)と、脱イオン水(90ml)と、を添加し、真空引きし、窒素ガスで3回置換し、油浴で約60℃に加熱し、2h撹拌し、サンプルを取って原料1-3がほぼ反応し切るまでTLCでモニタリングした。室温まで降温し、反応フラスコに酢酸エチル(300ml)を添加し、脱イオン水を添加して水で3回洗浄し(150ml/回)、分液し、有機相を固体となるように減圧濃縮した。粗品をトルエン/メタノールで再結晶させ(粗品:トルエン:メタノール=1:5:40)、得られた製品を乾燥させた後、17.1gの白色固体化合物1-4を得、収率が72%であった。質量スペクトル:376.2(M+H)
【0031】
化合物1の合成:
1つの250mlの1つ口フラスコに、化合物1-4(17g、45.28mmol、1.0eq)と、10%のパラジウム/炭素(7.23g、6.79mmol、0.15eq)と、テトラヒドロフラン(34ml)とエタノール(51ml)との混合溶媒と、を添加し、反応フラスコにH2を導入し、油浴で約60℃に加熱し、24h撹拌し、サンプルを取って原料1-4がほぼ反応し切るまでTLCでモニタリングした。室温まで降温し、反応液を直接にろ過し、ろ液を収集し、濃縮乾燥した。粗品をカラムクロマトグラフィー分離し(EA:Hex=1:8)、得られた製品を乾燥させた後、14.63gの類白色固体化合物1を得、収率が85.6%であった。質量スペクトル:378.2(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 8.65 (d,J = 5.7 Hz,1H),7.94 (d,J = 7.4 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.72 (d,J = 7.9 Hz,2H),7.69 - 7.56 (m,2H),7.52 (s,1H),7.44 - 7.25 (m,3H),2.96 (s,1H),2.31 (s,3H),1.96 (s,2H),1.72 (t,J = 25.0 Hz,6H).
【0032】
共通中間体化合物2の合成:
化合物1(22.6g、0.06mol、3.0eq)と、IrCl
3 3H
2O(7.04g、0.02mol、1.0eq)とを1つのフラスコに放置し、2-エトキシエタノール(133.4ml)及び脱イオン水(66.7ml)の中に添加し、混合液をN
2保護作用により、110℃で撹拌しながら16時間還流した。室温に冷却した後、ろ過し、ろ滓を順次にメタノール(100ml×3)、n-ヘキサン(100ml×3)で洗浄し、乾燥して化合物3(25.26g、64.5%)を得た。得られた化合物は、精製されずにそのまま次の工程に用いられる。
【0033】
CPD 7の合成
化合物2(5.88g、3mmol、1.0eq)をグリコールモノエチルエーテル(30ml)に溶解し、無水炭酸ナトリウム(6.36g、60mmol、20.0eq)とアセチルアセトン(3g、30mmol、10.0eq)とを順次に添加し、添加終了後、混合液をN
2保護作用により、40℃で16時間撹拌した後に室温に冷却した。反応液に2gのケイ藻土と300mlのジクロロメタンを添加し、その後、混合液をケイ藻土及びシリカゲルでろ過し、得られたろ液を回転させてジクロロメタンを除去し、残存液に40mlのイソプロパノールを添加し、赤色光固体を析出させ、ろ過した。固体を酢酸エチルパルプ化処理して目標化合物CPD 7(3.92g、62.6%)を得た。3.92グラムのCPD 7粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 7(2.98g、76.2%)を得た。質量スペクトル:1045.35(M+H)
【0034】
CPD 9の合成
化合物3(5.88g、3mmol、1.0eq)をグリコールモノエチルエーテル(30ml)に溶解し、無水炭酸ナトリウム(6.36g、60mmol、20.0eq)と3,7-ジエチル-4,6-ノナンジケトン(6.36g、30mmol、10.0eq)とを順次に添加し、添加終了後、混合液をN
2保護作用により、40℃で16時間撹拌した後に室温に冷却した。反応液に2gのケイ藻土と300mlのジクロロメタンを添加し、その後、混合液をケイ藻土とシリカゲルでろ過し、得られたろ液を回転させてジクロロメタンを除去し、残存液に40mlのイソプロパノールを添加し、赤色光固体を析出させ、ろ過した。固体を酢酸エチルパルプ化処理して目標化合物CPD 9(4.09g、58.9%)を得た。4.09グラムのCPD 9粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 9(2.96g、72.3%)を得た。質量スペクトル:1157.47(M+H)
【0035】
CPD 12の合成
化合物3の合成:
化合物2(19.6g、0.01mol、1.0eq)をDCM(500ml)に溶解し、反応液に、トリフルオロメタンスルホン酸銀(5.25g、0.02mol、2.0eq)とメタノール(50ml)とを順次に添加し、添加終了後、混合液をN
2保護作用により、30℃で16時間撹拌した。反応液をシリカゲル及びケイ藻土により不溶性固体を除去し、ろ液を回転乾燥させて、化合物3(22.6g)を得、得られた生成物をそのまま次工程の反応に用いる。
【0036】
CPD 12の合成:
化合物3(3.47g、3mmol、1.0eq)と2-フェニルピリジン(1.4g、9mmol、3.0eq)とを無水エタノール(100ml)に溶解し、添加終了後、混合液をN2保護作用により、80℃で16時間還流しながら撹拌した後、室温に冷却した。ろ過し、ろ滓を順次にメタノール、n-ヘキサンで3回洗浄した。乾燥して目標化合物CPD 12(1.74g、52.8%)を得た。1.74グラムのCPD 12粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 12(1.16g、66.4%)を得た。質量スペクトル:1100.37(M+H)
【0037】
実施例2(CPD 31/33/36の合成)
共通中間体化合物5の合成:
化合物4の合成:
1つの250mlの1つ口フラスコに、化合物1(14.3g、37.88mmol、1.0eq)と、tert-ブチルオキシナトリウム(10.92g、113.65mmol、3eq)と、DMSO-d6(172ml)とを順次に添加し、真空引きして、窒素ガスで3回置換し、油浴で75℃に加熱し、24h撹拌した。室温まで降温し、重水(35ml)を添加して10min撹拌し、黄色固体が析出し、さらに、脱イオン水(350ml)を添加して10min撹拌し、吸引濾過し、黄色固体を収集した。固体を酢酸エチル(450ml)で溶解し、さらに脱イオン水を添加して水で3回洗浄し(200ml/回)、分液し、水相を合併して少量の酢酸エチルで1回抽出し、有機相を合併して、濃縮乾燥した。粗品をカラムクロマトグラフィー分離し(EA:Hex=1:8)、得られた製品を乾燥させた後、12.8gの白色固体化合物4を得、収率が88.6%であった。質量スペクトル:382.5(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 8.65 (d,J = 5.7 Hz,1H),7.94 (d,J = 7.4 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.72 (d,J = 7.9 Hz,2H),7.69 - 7.56 (m,2H),7.52 (s,1H),7.44 - 7.25 (m,3H),1.99 (m,2H),1.89 - 1.58 (m,6H).
【0038】
化合物5の合成:
化合物2の合成及び後処理条件を参照して、化合物5(30.34g、77.3%)を得た。得られた化合物は、精製せずにそのまま次の工程に用いられる。
【0039】
CPD 31の合成:
CPD 7の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 31(2.82g、81.2%)を得た。2.82グラムのCPD 31粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 31(1.93g、68.4%)を得た。質量スペクトル:1041.4(M+H)
【0040】
CPD 33の合成:
CPD 9の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 33(3.37g、79.5%)を得た。3.37グラムのCPD 33粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 33(2.55g、75.6%)を得た。質量スペクトル:1165.5(M+H)
【0041】
【0042】
CPD 12の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 36(4.37g、45.6%)を得た。4.37グラムのCPD 36粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 36(2.89g、66.1%)を得た。質量スペクトル:1108.4(M+H)
【0043】
実施例3(CPD 61/63/66の合成)
共通中間体化合物7の合成:
【0044】
化合物7-2の合成:
化合物1-3の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0045】
化合物7-3の合成:
化合物1-4の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0046】
化合物7-4の合成:
1つの500mlの1つ口フラスコに、化合物7-3(25g、64.19mmol、1.0eq)と、ジクロロメタン(150ml)とを順次に添加し、反応系の温度を約0℃に降温し、ビス(2-メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(BAST、35.51ml,192.58mmol、3.0eq)をゆっくり滴下し、滴下終了後、室温で16h撹拌し、サンプルを取って原料7-3がほぼ反応し切るまでTLCでモニタリングした。反応液を飽和炭酸ナトリウム溶液(450ml)に添加して0.5h撹拌し、静置して分液し、水層にさらにジクロロメタン(150ml)を添加して1回抽出し、有機相を合併して、さらに脱イオン水を用いて水で3回洗浄し(100ml/回)、分液し、有機相を濃縮乾燥した。粗品をカラムクロマトグラフィー分離し(EA:Hex=1:10)、得られた製品を乾燥させた後、19.28gの白色固体化合物7-4を得、収率が73%であった。質量スペクトル:412.4(M+H)
【0047】
化合物7の合成:
化合物1の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。質量スペクトル:414.2(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 8.65 (d,J = 5.7 Hz,1H),7.94 (d,J = 7.4 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.72 (d,J = 7.9 Hz,2H),7.69 - 7.56 (m,2H),7.52 (s,1H),7.44 - 7.25 (m,3H),3.26 (d,1H),2.44 (m,1H),2.32 (s,3H),2.03 (m,J = 28.1,24.1 Hz,4H),1.76 (m,1H).
【0048】
共通中間体化合物8の合成:
化合物2の合成及び後処理条件を参照して、化合物8(28.6g、68.6%)を得た。得られた化合物を精製せずにそのまま次の工程に用いられる。
【0049】
CPD 61の合成:
CPD 7の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 61(2.81g、79.1%)を得た。2.81グラムのCPD 61粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 61(1.84g、65.4%)を得た。質量スペクトル:1117.2(M+H)
【0050】
CPD 63の合成:
CPD 9の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 63(2.92g、76.7%)を得た。2.92グラムのCPD 63粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 63(2.04g、69.8%)を得た。質量スペクトル:1233.5(M+H)
【0051】
CPD 66の合成:
CPD 12の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 66(3.51g、42.1%)を得た。3.51グラムのCPD 66粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 66(1.97g、56.1%)を得た。質量スペクトル:1172.3(M+H)
【0052】
実施例4(CPD 67/69/72の合成)
共通中間体化合物10の合成:
【0053】
化合物10-2の合成:
化合物1-3の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0054】
化合物10-3の合成:
化合物1-4の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0055】
化合物10-4の合成:
化合物7-4の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0056】
化合物10の合成:
化合物1の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。質量スペクトル:396.2(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 8.65 (d,J = 5.7 Hz,1H),7.94 (d,J = 7.4 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.72 (d,J = 7.9 Hz,2H),7.69 - 7.56 (m,2H),7.52 (s,1H),7.44 - 7.25 (m,3H). 4.75 (m,1H),3.29 (m,1H),2.51 (m,1H),2.31 (s,3H),2.06 - 1.48 (m,5H).
【0057】
共通中間体化合物11の合成:
化合物11の合成:
化合物2の合成及び後処理条件を参照して、化合物11(30.32g、69.2%)を得た。得られた化合物を精製せずにそのまま次の工程に用いられる。
【0058】
CPD 67の合成:
CPD 7の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 67(3.11g、81.2%)を得た。3.11グラムのCPD 67粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 67(2.33g、74.9%)を得た。質量スペクトル:1081.2(M+H)
【0059】
CPD 69の合成:
CPD 9の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 69(2.72g、73.2%)を得た。2.72グラムのCPD 69粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 69(2.12g、77.9%)を得た。質量スペクトル:1193.5(M+H)
【0060】
CPD 72の合成:
CPD 12の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 72(4.7g、57.6%)を得た。4.7グラムのCPD 72粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 72(2.83g、60.2%)を得た。質量スペクトル:1136.3(M+H)
【0061】
実施例5(CPD 133/135/138の合成)
共通中間体化合物13の合成:
【0062】
化合物13-2の合成:
化合物1-3の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0063】
化合物13-3の合成:
化合物1-4の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。
【0064】
化合物13の合成:
化合物1の合成方式及び処理方法を参照し、対応する原料を変更すればよい。質量スペクトル:406.2(M+H),1H NMR (400 MHz,CDCl3) δ 8.65 (d,J = 5.7 Hz,1H),7.94 (d,J = 7.4 Hz,1H),7.86 (s,1H),7.72 (d,J = 7.9 Hz,2H),7.69 - 7.56 (m,2H),7.52 (s,1H),7.44 - 7.25 (m,3H) ,3.04 (d,1H),2.31 (s,3H),1.99 (d,J = 1.6 Hz,2H),1.75 (m,1H),1.51 (m,1H),1.34 (m,1H),1.26 (m,1H),0.87 (s,6H).
【0065】
共通中間体化合物14の合成:
化合物2の合成及び後処理条件を参照して、化合物14(28.75g、65.2%)を得た。得られた化合物を精製せずにそのまま次の工程に用いられる。
【0066】
CPD 133の合成:
CPD 7の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 133(2.45g、76.2%)を得た。2.45グラムのCPD 133粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 133(1.85g、75.5%)を得た。質量スペクトル:1101.3(M+H)
【0067】
CPD 135の合成:
CPD 9の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 135(2.81g、73.3%)を得た。2.81グラムのCPD 135粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 135(2.01g、71.5%)を得た。質量スペクトル:1213.5(M+H)
【0068】
CPD 138の合成:
CPD 12の合成及び精製と同様の方法により、目標化合物CPD 138(3.85g、46.7%)を得た。3.85
グラムのCPD 138粗品を昇華精製した後、昇華精製CPD 138(2.11g、54.8%)を得た。質量スペクトル:1156.5(M+H)
【0069】
対応する材料を選択し、類似する方法により合成、昇華して他の化合物を得ることができる。
【0070】
適用例:有機エレクトロルミネッセンス素子の調製
50mm×50mm×1.0mmの、ITO(100nm)透明電極を有するガラス基板をエタノール中で10分間超音波洗浄し、さらに150℃で乾燥した後にN
2 Plasmaで30分間処理した。洗浄後のガラス基板を真空蒸着装置の基板支持具に取り付け、まず、透明電極線を有する側の面に、透明電極を覆うように化合物HATCNを蒸着し、膜厚5nmの薄膜を形成してから、1層のHTM1を蒸着して膜厚60nmの薄膜を形成し、さらに、HTM1薄膜上に1層のHTM2を蒸着して膜厚10nmの薄膜を形成し、その後、HTM2膜層上に共蒸着の方式でホスト材料CBPとドーパント化合物(比較化合物X、CPD X)とを、膜厚30nmとなるように蒸着し、ホスト材料とドーパント材料との割合が90%:10%であった。発光層上にAlQ3膜層(25nm)とLiF膜層(1nm)とをさらに蒸着し、最後に1層の金属Al(100nm)を電極として蒸着した。
【0071】
評価:
上記素子に対して素子性能測定を行い、各実施例及び比較例において、定電流電源(Keithley 2400)を用い、所定の電流密度で発光素子を流れ、分光放射輝度計(CS 2000)で発光スペクトルを測定した。同時に、電圧値、及び輝度が初期輝度の90%である時間(LT90)を測定した。結果を以下に示す。
表1
【0072】
上記の表格におけるデータの比較から明らかなように、本発明の化合物をドーパント剤とした用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、比較化合物よりも、駆動電圧、発光効率、素子寿命のいずれも優れている。
【0073】
昇華温度の比較:昇華温度の定義は、10
-7Torrの真空度での蒸着速度1A
。/秒に対応する温度である。測定結果を以下に示す。
表2
【0074】
上記の表中のデータの比較から明らかなように、本発明の化合物は、低い昇華温度を有し、産業化への利用に有利である。
【0075】
本発明は、置換基の特別な組み合わせにより、意外に、より良い素子発光効率及び改善された寿命を提供し、また、従来技術に対して、意外に、低い昇華温度を提供する。上記結果から明らかなように、本発明の化合物は、昇華温度が低く、光、電気化学的安定性が高く、色飽和度が高く、発光効率が高く、素子寿命が長いなどの利点を有し、有機エレクトロルミネッセンス素子へ使用できる。特に赤色光発光ドーパントとして、OLED産業へ利用可能である。