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特許7385761設備レイアウト異常判定装置及び設備レイアウト異常判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】設備レイアウト異常判定装置及び設備レイアウト異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231115BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20231115BHJP
   B66B 3/00 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
B66B3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547368
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034731
(87)【国際公開番号】W WO2022054285
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正康
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 渉
(72)【発明者】
【氏名】前原 知明
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-072682(JP,A)
【文献】特開2017-215692(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030816(WO,A1)
【文献】特開2014-010659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルのBIMモデルのデータを記憶するデータベース部と、
前記データベース部に記憶されたBIMモデルで示されたビル内での交通流をシミュレーションする人流シミュレータ部と、
前記ビルに設置される昇降機の運行を、昇降機の設定データに基づいてシミュレーションする昇降機シミュレータ部と、
前記人流シミュレータ部がシミュレーションした交通流で、前記昇降機シミュレータ部で昇降機の運行をシミュレーションする際の、前記ビルの特定の領域の人流の評価指標を算出するシミュレーション評価部と、
前記シミュレーション評価部が算出した前記評価指標が、予め設定された閾値を超えた場合にアラートを出力する異常判定部と、を備え、
前記シミュレーション評価部が算出する前記ビルの特定の領域の人流の評価指標は、該当する領域での単位面積当たりの滞在した人の密度と、その密度が継続する時間とを変化させて、複数段階に設定したサービス水準の指標であり、
前記異常判定部は、前記シミュレーション評価部が算出したサービス水準が、予め設定された閾値の段階を超えたときアラートを出力する
設備レイアウト異常判定装置。
【請求項2】
前記異常判定部がアラートを出力する際には、シミュレーションした前記特定の領域で人が滞在した様子を示す画像を付加する
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項3】
前記人が滞在した様子を示す画像は、前記特定の領域の流入人数又は滞在人数が最大となるときの様子である
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項4】
前記異常判定部が予め設定された閾値を超えない場合にも、前記特定の領域の流入人数又は滞在人数が最大となるときの様子の前記人が滞在した様子を示す画像のデータを出力する
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項5】
前記特定の領域で人が滞在した様子を示す画像は、シミュレーションした前記特定の領域での流入人数又は滞在人数の変化の様子を示す動画である
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項6】
前記特定の領域は、前記昇降機の乗場近傍の領域である
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項7】
さらに、前記シミュレーション評価部は、前記交通流のシミュレーション結果から、前記昇降機の乗場近傍の領域での各利用者の平均の前記昇降機の待ち時間を算出し、前記異常判定部が出力するアラートに、算出した各利用者の平均の前記昇降機の待ち時間のデータを加える
請求項に記載の設備レイアウト異常判定装置。
【請求項8】
ビルのBIMモデルで示されたビル内での交通流をシミュレーションする人流シミュレーション処理と、
前記ビルに設置される昇降機の運行を、昇降機の設定データに基づいてシミュレーションする昇降機シミュレーション処理と、
前記人流シミュレーション処理でシミュレーションした交通流を使って、前記昇降機シミュレーション処理で昇降機の運行をシミュレーションする際の、前記ビルの特定の領域の人流の評価指標を算出するシミュレーション評価処理と、
前記シミュレーション評価処理で算出した特定の領域の前記評価指標が、予め設定された閾値を超えた場合にアラートを出力する異常判定処理と、を含み、
前記シミュレーション評価処理で算出する前記ビルの特定の領域の人流の評価指標は、該当する領域での単位面積当たりの滞在した人の密度と、その密度が継続する時間とを変化させて、複数段階に設定したサービス水準の指標であり、
前記異常判定処理では、前記シミュレーション評価処理により算出したサービス水準が、予め設定された閾値の段階を超えたときアラートを出力する
設備レイアウト異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備レイアウト異常判定装置及び設備レイアウト異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターが設置されたビルの設計や、ビル内のエレベーターをリニューアルする際には、ビル内の各階の人の流れである交通流を予測することが重要である。ビル内の交通流の予測が適正であると、その予測に基づいて、エレベーターの適正な規模での設置や、エレベーターの稼働状態の適正な設定が可能になる。例えば、ビル内の交通流の予測に基づいて、ビル内に設置するエレベーターの台数が適正であると、そのビルの利用者が、エレベーターホールでの待ち時間を、比較的短い時間に収めることができるようになる。
【0003】
ビル内の交通流を算出する場合には、ビル(建築物)の設計図などからBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)の手法を使って、ビル内の各階のオフィスやエレベーターなどの設備レイアウトを示すBIMモデルを作成して、そのBIMモデルから算出することが知られている。
特許文献1には、BIMモデルを使ってビル内のエレベーターの交通流を求める手法についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-9073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、ビルの設計図などからBIMモデルを作成し、BIMモデルで示された各階のオフィスなどの在室人数を適正に設定することで、ビル内の交通流を予測することができる。
しかしながら、ビル内の各階の間の交通流を予測して、その交通流からビルに設置するエレベーターの台数(号機数)や、各号機の乗りかごのサイズや走行速度などを決めるだけでは、ビルの利用者にとって良好な環境が得られているかどうかは判断できないという問題がある。
【0006】
例えば、BIMモデルを使ったシミュレーションで、ある時間帯の10分間に、1階から他の階に100人の交通流が発生するとの結果が得られたとする。このとき、エレベーターの設置計画上では、ビルが備えるエレベーターとしては、基本的には、10分間に100人を各階に輸送できる能力があるものを設置すれば十分である。
【0007】
ところが、シミュレーション上は単位時間当たりのエレベーターの輸送能力が適切であっても、設置されたエレベーターの運行計画が適切でなかったり、エレベーターへ向かう途中の動線計画に誤りがあり、輸送能力を発揮する以前にエレベーターの乗り場への流入人数が当初計画していた輸送能力よりも低い等の理由で、一時的に乗場での待ち人数が非常に多くなったり、待ち時間が長くなったりするケースは多々ある。このような乗場での待ち人数が非常に多くなったり、待ち時間が長くなったりすることは、ビルを運用する上で極力避けたい事項であるが、実際のシミュレーションで適切か適切でないかを判断することは困難であった。
【0008】
本発明は、BIMモデルを使ったシミュレーションを行う際に、エレベーター乗場などの特定箇所で、人数が多いなどの異常を警告することができる設備レイアウト異常判定装置及び設備レイアウト異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明の設備レイアウト異常判定装置は、ビルのBIMモデルのデータを記憶するデータベース部と、データベース部に記憶されたBIMモデルで示されたビル内での交通流をシミュレーションする人流シミュレータ部と、ビルに設置される昇降機の運行を、昇降機の設定データに基づいてシミュレーションする昇降機シミュレータ部と、人流シミュレータ部がシミュレーションした交通流で、昇降機シミュレータ部で昇降機の運行をシミュレーションする際の、ビルの特定の領域の人流の評価指標を算出するシミュレーション評価部と、シミュレーション評価部が算出した特定の領域の前記評価指標が、予め設定された閾値を超えた場合にアラートを出力する異常判定部と、を備え、シミュレーション評価部が算出するビルの特定の領域の人流の評価指標は、該当する領域での単位面積当たりの滞在した人の密度と、その密度が継続する時間とを変化させて、複数段階に設定したサービス水準の指標であり、異常判定部は、シミュレーション評価部が算出したサービス水準が、予め設定された閾値の段階を超えたときアラートを出力するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シミュレーションしたビル内の交通流で、特定の領域に一時的な異常が発生したことが判り、その異常発生を確認したシミュレーション作業者は、昇降機の運行計画の変更などの異常となることをなくすための対処が可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態例によるビル内交通流設定装置(設備レイアウト異常判定装置)の例を示す構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例によるビル内交通流設定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態例によるBIMモデルの例を示す図である。
図4図3のBIMモデルの2階のレイアウトデータの例を示す図である。
図5図3のBIMモデルの1階のレイアウトデータの例を示す図である。
図6】本発明の一実施の形態例によるレイアウトデータに設定する評価用の領域の例(例1)を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態例によるレイアウトデータに設定する評価用の領域の例(例2)を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態例による在館人員データベースの例を示す図である。
図9】本発明の一実施の形態例による移動需要分布データベースの例を示す図である。
図10】本発明の一実施の形態例による移動需要データの例を示す図である。
図11】本発明の一実施の形態例によるエレベーターの設定例を示す図である。
図12】本発明の一実施の形態例による在館人員のサービス水準の例を示す図である。
図13】本発明の一実施の形態例によるシミュレーションデータ保存例(例1)を示す図である。
図14】本発明の一実施の形態例によるシミュレーションデータ保存例(例2)を示す図である。
図15】本発明の一実施の形態例によるシミュレーションデータ保存例(例3)を示す図である。
図16】本発明の一実施の形態例によるシミュレーション結果の報告画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態例について、添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の一実施の形態例を本例と称する。
【0013】
[ビル内交通流設定装置の構成]
図1は、本例のビル内交通流設定装置100の構成を示す。本例のビル内交通流設定装置100は、設備レイアウト異常判定装置としての機能を持つ。
ビル内交通流設定装置100は、データベース部10、人流シミュレータ部20、昇降機シミュレータ部40、及びインタフェース部50を備える。
【0014】
データベース部10は、BIMデータ記憶部11、在館人員データベース12、移動需要分布データベース13、移動需要データ記憶部14、在館人員データ記憶部15、エレベーター設定データ記憶部16、経由需要発生率データ記憶部17、及び経由地滞在時間分布データ記憶部18を有する。
【0015】
BIMデータ記憶部11は、本例のビル内交通流設定装置100が交通流を算出するビル(建築物)についてのBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)データである。なお、以下の説明では、BIMデータは、BIMモデルとも称する。
BIMモデルデータ記憶部11では、お客様より提供いただいたBIMモデル、或いは自社で作成したBIMモデルを読み込み、記憶する処理部である。提供元は、ある任意のサーバーに格納されたデータにアクセスし、当該領域にコピーする方式か、或いは、当該データベース領域に外部から読み込ませる方式でも良い。
在館人員データベース12は、BIMモデルで示される各階の在館可能人数のデータベースである。具体的には、BIMモデルに基づいて、在館人員計算部23、在館人員評価部24、在館人員補正部25より算出されたデータを一時的に保存する在館人員データ記憶部15から、当該BIMモデルにおける最終的な演算データを格納するデータベースである。
移動需要分布データベース13は、ビル内での移動需要の分布を格納するデータベースである。具体的には、BIMモデルに基づいて、移動需要計算部26、経由需要計算部27より算出されたデータを一時的に保存する移動需要データ記憶部14、経由需要発生率データ記憶部17から、当該BIMモデルにおける最終的な演算データを格納するデータベースである。
移動需要データ記憶部14は、ビル内での移動需要のデータを記憶する。移動需要計算部26より在館人員計算部23によって算出された、得られた建屋の在館人員に対して、例えば入力部51から得られたユーザーによって入力された建屋の各出入口からの利用状況比率値を記憶する。当該利用状況は例えば時間帯別や、交通需要別に設定されることを想定する。
在館人員データ記憶部15は、ビル内の在館人員のデータを記憶する。在館人員データ記憶部15は、在館人員計算部23から算出された在館人員を記憶する。
エレベーター設定データ記憶部16は、ビルに設置されたエレベーターについてのデータを記憶する。こちらでは、例えば入力部51にて、号機模擬部41や運行模擬部42を駆動するためのパラメータを利用者に入力させ、当該パラメータを記憶する形態でも良い。パラメータとは例えばエレベーター定格速度、定員数、ドア幅や停止階等である。また入力部51からの入力以外にもBIMモデルに含まれるエレベーターモデルから各パラメータを読み取る形でも良い。ただし、BIMモデルの運用によっては、必要なパラメータが入力されていない場合もあるため、その場合には、入力部51にて足りないパラメータを利用者に当該パラメータを入力し、補正する形態でもよい。
経由需要発生率データ記憶部17は、ビル内での移動需要の内で、ビル出入口と居室とを直接移動する移動需要でない、経由地を経由して移動する経由需要の発生率のデータである経由需要発生率データを記憶する。ここで、経由地としては、ビル内のトイレ、売店などが含まれる。ここでは、経由需要計算部27によって算出された経由需要発生率データを記憶する。
経由地滞在時間分布データ記憶部18は、経由地に滞在する時間の分布のデータである経由地滞在時間分布データを記憶する。この経由地滞在時間分布データ記憶部18は、入力部51によって入力された各経由地の滞在時間を記憶する。経由地滞在時間分布データ記憶部18が記憶する経由地滞在時間分布データとして、ビルの経由地(トイレ、売店など)に設置した人感センサが検出した滞在時間のデータを使用してもよい。
【0016】
人流シミュレータ部20は、レイアウトデータ変換部21、位置属性生成部22、在館人員計算部23、在館人員評価部24、在館人員補正部25、移動需要計算部26、経由需要計算部27、人流制御部28、シミュレーション評価部29、及び異常判定部30を備える。
レイアウトデータ変換部21は、入力されたBIMモデルからシミュレータが持つレイアウトデータフォーマットに変換する。具体的には、BIMモデルの各パーツのプロパティから、床、壁、ドア等の情報を解析し、取り込む。また、シミュレータの解像度によっては、BIMモデルよりも粗くなる場合や、その逆も想定される。この場合は、BIMモデルからレイアウトデータフォーマットの解像度に合わせてデータを変換する。この時、壁やドア情報が損失しないよう、データ変換を行うことを留意する。
位置属性生成部22は、BIMモデルで示されるそれぞれの位置の属性(位置属性)を生成する位置属性生成処理を行う。なお、位置属性の具体的な例については後述する。
【0017】
在館人員計算部23は、BIMモデルで示されるビル内の在館人員を計算する。在館人員は、各階の部屋の面積と使用形態などを使って計算される。使用形態とは、事務所や、病院、マンションなどによって、単位面積当たりの人数を変換することで、在館人員が算出可能となる。
在館人員評価部24は、在館人員計算部23での計算結果が適正か否かを評価する。この在館人員評価部24は、設定された手法で自動的に行ってもよいが、シミュレーション作業を行う操作者が計算結果を見て評価してもよい。設定された手法とは、例えば、過去の案件データベースから、案件の規模(全体の停止階、建屋平面面積、エレベーターの設置台数が保存されているデータ)から、類似の建屋情報と比較し、当該規模における在館人員との比率が±10%を超える、或いは下回る場合にNGと評価するものである。
またシミュレーション作業を行う操作者が計算結果を見て評価する方式としては、算出された在館人員の他に在館人員を算出するために建屋利用者が在籍するエリアを明確にしないと視覚的に評価できないため、各階の平面における在籍するエリアを視覚的に理解できるよう描写して、利用者に確認いただく。なお視覚的に理解できるとは、建屋利用者が在籍するエリアを色分けする方式などでも良い。また、評価にて利用する在館人員との比率は過去の実績からの精度から得られるもので、当該数値に限らない。
在館人員補正部25は、在館人員評価部24での評価結果に基づいて、在館人員計算部23での計算結果を補正する。上記の在館人員評価部24によってNGと評価された場合、こちらも自動方式と手動方式が想定される。自動方式の場合では、再度BIMモデルからレイアウトデータへの変換を解析し、利用者の在籍エリアに過不足がないか解析し、NGとなった値が+10%を超えた場合は、従来よりも多めの人数が算出されていることとなり、建屋利用者の在籍エリアが大きめに設定されていることを指し、余分なエリアが在籍エリアに設定されていないか解析する。NGとなった値が―10%を下回った場合は、建屋利用者の在籍エリアが小さめに設定されていることを指し、在籍エリアの設定漏れがないか解析する。手動方式の場合には、在館人員評価部24同様、在籍するエリアを視覚的に理解できるよう描写して、利用者に確認いただく。
【0018】
移動需要計算部26は、BIMモデルで示されるビル内の各階での移動需要分布データを作成する。移動需要計算部26では、入力部51によって、分布種別を選択することで、時間帯別にどのような割合で各階の建屋利用者がエレベーターを利用するかの割合である階別交通需要発生率を入手可能となる。階別交通需要発生率と各階の在館人員より、各階のエレベーター利用人数が算出可能となる。また各出入口別の流入率/流出率を入力することで、各階のエレベーター利用人数から、各出入口の流入人数、流出人数が算出可能となる。これより、各出入口から各出入口への分布が算出可能となる。各出入口や各階(各部屋)の流入人数や在館人員(在館人数)は、ビル内の人流が適正か否かを判断するための評価指標になる。
経由需要計算部27は、ビル内の移動需要の内で、経由地を経由した移動である経由需要データを作成する。なお、経由地としては、例えばビル内の売店やトイレなどである。経由方法については、自動と手動の両方の方式が存在する。例えば、自動方式であれば、類似する建屋の実測値をもとに売店やトイレの利用率を求める方式でも良い。また、利用率のみ入力部51で入力し、各売店やトイレが設置されている階の利用人数に対して、当該利用率をかけた人数を経由人数としても良い。手動方式であれば、各階から、各売店/トイレの経由人数を入力する方式でも良い。
人流制御部28は、上記より算出された建屋内の交通需要や、経由情報、建屋のレイアウトに基づいて、各出入口から人を疑似的に発生させ、人の制御モデルに応じて利用者を目的の出口までエレベーターや建屋ビル設備を経由して、目的地まで移動する間の制御を実施する。
【0019】
シミュレーション評価部29は、ビル内の交通流のシミュレーション結果を評価する処理(シミュレーション評価処理)を行う。このシミュレーション評価処理としては、例えば、ビル内の特定の領域を評価用の領域として設定し、その評価用の領域での、時間帯別の流入人数又は滞在人数などの人流についての評価指標からビル内の交通流の評価を行う。評価用の領域としては、例えばエレベーター乗り場(エレベーターホール)などの、流入人数や滞在人数の変動が大きい場所や、ビル設備の適正位置の評価を可能とするような位置とする。
【0020】
異常判定部30は、シミュレーション評価部29での評価で、評価用の領域の流入人数又は滞在人数が、予め設定された閾値を超えたとき、異常であると判定し、アラートを出力する。アラートの出力形態としては、表示装置107(図2)を用いた警告表示などが考えられる。一例を挙げると、後述するシミュレーション結果の報告画面(図16)に、アラートに関する情報を含めること、また、アラートを出力した際に、シミュレーション評価部29が、アラート出力時の評価用の領域での流入人数や滞在人数の様子をアニメーションなどで示す画像(動画又は静止画)を作成して、その画像をアラートの情報に付加することなどが考えられる。本閾値は、例えば通常エレベーターの設置計画で利用する交通計算の値から5分間輸送能力や、各ビル設備の単位時間当たりの流入人数を利用してもよい。または、人数評価でなく、待ち時間や、停止時間が閾値を超えた場合でもよい。
【0021】
昇降機シミュレータ部40は、号機模擬部41と運行模擬部42とを備える。
号機模擬部41は、BIMモデルで示されるビル内に設置された昇降機であるエレベーターの各号機の運行をシミュレーションする。
運行模擬部42は、BIMモデルで示されるビル内に設置されたエレベーター(昇降機)全体の運行をシミュレーションする昇降機シミュレーション処理を行う。
号機模擬部41と運行模擬部42とは、人流シミュレータ部20でシミュレーションした交通流に基づいて、エレベーターの運行をシミュレーションする。このシミュレーション時には、号機模擬部41と運行模擬部42は、エレベーター設定データ記憶部16に記憶されたエレベーターの設定データを参照して、エレベーターの規模や輸送能力などのシミュレーションに必要なデータを設定する。
これにより、各号機の稼働状況や、各階のエレベーターホールでの待ち人数などのシミュレーションを行うことができる。
【0022】
インタフェース部50は、入力部51と出力部52とを備える。
入力部51には、BIMモデルなどのデータや、ビルの使用用途などのデータが入力される。
出力部52は、ビル内交通流設定装置100でシミュレーションした結果を出力する。シミュレーション結果の出力形態としては、例えばビル内交通流設定装置100に設置された表示装置107(図2)での表示による形態の他に、他の端末にシミュレーション結果のデータを出力する形態がある。
なお、異常判定部30がアラートを出力したときにも、表示装置107での表示などでそのアラートを、シミュレーション作業者に告知する。
【0023】
[ビル内交通流設定装置のハードウェア構成例]
ビル内交通流設定装置100は、例えば、図2に示すコンピュータにより構成することができる。
図2に示すビル内交通流設定装置(コンピュータ)100は、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103を備える。さらに、ビル内交通流設定装置(コンピュータ)100は、不揮発性ストレージ104、ネットワークインタフェース105、入力装置106、及び表示装置107を備える。
【0024】
CPU101は、ビル内交通流設定装置100が行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM102から読み出して実行する演算処理部である。
RAM103には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0025】
入力装置106には、例えば、キーボード、マウスなどが用いられる。ビル内交通流設定装置100の場合、交通流をシミュレーションする操作者が入力装置106を使って入力操作を行う。
表示装置107は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、この表示装置107によりコンピュータの実行で得たシミュレーション結果などが表示される。
【0026】
不揮発性ストレージ104には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ104には、ビル内交通流設定装置100が行う処理機能を実行するプログラムが記録される。
ネットワークインタフェース105には、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられる。ネットワークインタフェース105は、LAN(Local Area Network)、専用線などを介して外部と各種情報の送受信を行う。
【0027】
なお、ビル内交通流設定装置100を図2に示すコンピュータで構成するのは一例であり、コンピュータ以外のその他の演算処理装置で構成してもよい。例えば、ビル内交通流設定装置100が行う機能の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現してもよい。
【0028】
[BIMモデルと位置属性の例]
図3は、データベース部10のBIMデータ記憶部11に記憶されるBIMデータ(BIMモデル)の例を示す。
図3に示すBIMモデルは、ビル内の複数の階(出発基準階と一般階)を示している。ここでは、出発基準階は1階、一般階は2階とする。3階以上の一般階が、2階と同一の形状である場合であれば、3階以上の階も2階のBIMモデルと同じデータとなる。
【0029】
図3に示すように、1階には、ビル入口1111と、通路1112と、部屋1113とが設置されている。また、2階には、通路1101と、部屋1102と、ドア1103とが設置されている。ドア1103は3つのドアを備える。
さらに、各階の間を昇降する昇降機としてのエレベーター1104が設置されている。エレベーター1104は、1階では通路1112と接する箇所に設置され、2階では通路1101と接する箇所に設置される。したがって、通路1101,1112の一部は、エレベーターホールとして利用される。
【0030】
図4は、図3に示すBIMモデルの2階に位置属性を設定した例を示す。
図4は2階の平面図であり、2階を一定面積の格子で分割して示している。図4の例では、各格子の位置属性として、通行可能格子、通行不可格子、エレベーター格子、端点格子の4種類が設定されている。
【0031】
それぞれの格子について説明すると、通行可能格子は、図3に示す通路1101の箇所と部屋1102である。
通行不可格子は、ビルの壁に相当する箇所である。
エレベーター格子は、エレベーター1104が設置された箇所である。
端点格子は、交通流をシミュレーションする際の終端又は始端となる箇所である。
【0032】
図5は、図3に示すBIMモデルの1階に位置属性を設定した例を示す。
図5は1階の平面図であり、1階を一定面積の格子で分割して示している。図5の例についても、図4の2階の例と同様に、各格子の位置属性として、通行可能格子、通行不可格子、エレベーター格子、端点格子の4種類が設定されている。
【0033】
[評価用の領域の例]
図6及び図7は、シミュレーション評価部29が評価を行う際の領域の設定例を示す。
図6は、5×5の25個の格子を、評価用の領域とした例を示す。この図6に示す形状の評価用の領域を用意した場合には、図4又は図5に示すBIMモデルの格子の中で、通行状態などを監視したい特定の箇所の25個の格子が、シミュレーション評価部29が評価を行う際の領域に設定される。
【0034】
図7は、8×8の64個の格子を、評価用の領域とした例を示す。この図7に示す形状の評価用の領域を用意した場合には、図4又は図5に示すBIMモデルの格子の中で、通行状態などを監視したい特定の箇所の64個の格子が、シミュレーション評価部29が評価を行う際の領域に設定される。
本実施の形態例では、シミュレーション評価部29は、図4又は図5に示す格子状の平面図の中のエレベーターホールの箇所の中の図6に示す25個の格子又は図7に示す64個の格子を、評価用の領域として設定する。
シミュレーション評価部29は、シミュレーションの実行で、その評価用の領域内に流入する時間ごとの人数、又は評価用の領域内に滞在する人数を判断する。
なお、図6図7に示す評価用の領域の設定は一例であり、図6図7に示す形状以外の複数個の格子を、評価用の領域としてもよい。
【0035】
[在館人員データベースの例]
図8は、在館人員データベース12の構成例を示す。
在館人員データベース12には、在館人員密度1201と部屋名称1202を対応させたデータが記憶されている。
例えば、在館人員密度が高(ここでは0.25人/m2)の部屋として、「営業統括部」、「業務部」などが割当てられている。
また、在館人員密度が中(ここでは0.10人/m2)の部屋として、「コンプライアンス管理部」、「経営企画部」などが割当てられている。
また、在館人員密度が低(ここでは0.05人/m2)の部屋として、「秘書室」、「監事室」などが割当てられている。
【0036】
また、在館人員密度が固定(ここでは1人/部屋)の部屋として、「役員室」、「理事長室」などが割当てられている。
また、在館人員が無しの部屋として、「会議室」、「トイレ」などが割当てられている。
さらに、在館人員を計算する対象外の箇所として、「エレベーターホール」、「廊下(通路)」などが割当てられている。
【0037】
図8に示す在館人員密度1201と部屋名称1202とを対応させたデータが参照されて、BIMモデルで示される各部屋の部屋名称1202のデータが取得され、それぞれの部屋の広さ(面積)と在館人員密度に基づいて在館人員が算出されて、在館人員データベース12に記憶される。
【0038】
[移動需要分布データベースの例]
図9は、移動需要分布データベース13の構成例を示す。移動需要分布データベース13は、図4に示すBIMモデルの内のエレベーター1104の移動需要を示す。
移動分布としては、出勤時、退勤時、昼食時、などの分布種別1301があり、それぞれの種別ごとに移動需要分布1302の欄に示された分布1、分布2、分布3などの値が設定される。
分布1,2,3ごとに、図9の下側に示すように、詳細な移動需要分布が作成されて、移動需要分布データベース13として登録される。
【0039】
図9の下側に示す出勤時(分布1)の移動需要分布としては、移動の種別1311として、出発階から一般階への移動1331、一般階から出発階への移動1332、一般階から上の階への移動1333、一般階から下の階への移動1334の4つに分けられる。
そして、移動の種別1311の区分ごとの移動について、交通需要の時間帯別の割合1312が算出される。
【0040】
交通需要の時間帯別の割合1312は、「-30分~-25分」、「-25分~-20分」、「-20分~-15分」、「-15分~-10分」、「-00分~-5分」、「-5分~0分」の6つの時間帯に分けてある。ここでは、0分が、勤務開始時刻や勤務終了時刻などのイベント発生時刻であり、図9は、そのイベント発生時刻よりも30分前からの交通需要の変化を示している。
【0041】
なお、図9の例では、勤務開始時刻などのイベント発生時刻よりも前の交通需要の変化を示すが、勤務終了時刻の場合には、イベント発生時刻よりも後の一定時間の交通需要の変化とする。また、昼食時については、昼食時間の開始から終了までの時間帯の交通需要の変化とするのが好ましい。
【0042】
[移動需要分布の算出例]
図10は、移動需要計算部26が、ビル内での時間帯別の具体的な移動需要データを算出した例を示す。移動需要計算部26が算出した移動需要データは、移動需要データ記憶部14に記憶される。
移動需要データは、時間帯1401ごとに、出発地1402と目的地1403との間の移動需要を示している。図10に示す移動需要の数値は、利用者の人数である。
例えば、移動需要計算部26は、8時15分から8時20分までの間に、1階の出入口から2階の部屋2-1への移動需要が9人、1階の出入口から2階の部屋2-2への移動需要が23人のように、それぞれの移動需要を算出する。
【0043】
[エレベーター設定データの例]
図11は、エレベーター設定データ記憶部16に記憶された、ビルに設置された各エレベーターの設定データの例を示す。
エレベーターの設定データは、図11の上側に示すように、ビル内に設置された全てのエレベーターデータ161として、エレベーターID1611、タイプ1612、かごの定員1613、かごのドア幅1614、かごの定格速度1615、かごの定格加速度1616、及びドア開閉時間1617の情報を持つ。
【0044】
また、エレベーターの設定データは、図11の下側に示すように、サービス階データ162として、階床1621、各階床1621の高さ1622、サービス階1623のデータを持つ。
【0045】
昇降機シミュレータ部40は、エレベーター設定データ記憶部16に記憶されたこれらのエレベーターの設定データと、人流シミュレータ部20の移動需要計算部26で計算された移動需要に基づいて、各号機のエレベーターの運行状態をシミュレーションする。
【0046】
[在館人員のサービス水準の例]
図12は、移動需要計算部26が移動需要分布を算出した際における、ビル内の各領域での在館人員から判断したサービス水準A~Fの例を示す。このサービス水準A~Fは、シミュレーション評価部29で判定される。
ここでは、シミュレーション評価部29は、シミュレーションした移動需要から、各領域での在館人員の密度1211と連続時間1212とを求め、その在館人員からサービス水準A,B,C,D,E,Fの6種類のサービス水準を設定する。
【0047】
サービス水準Aは、1m2当たりの密度が3.5人以上で、その状態が20秒連続した状態を示す。
サービス水準Bは、1m2当たりの密度が2.5人~3.5人で、その状態が35秒連続した状態を示す。
サービス水準Cは、1m2当たりの密度が1.5人~2.5人の状態を示す。
サービス水準Dは、1m2当たりの密度が1.0人~1.5人の状態を示す。
サービス水準Eは、1m2当たりの密度が0.5人~1.0人の状態を示す。
サービス水準Fは、1m2当たりの密度が0.5人以下の状態を示す。
なお、サービス水準C~Fでは、連続時間1212は考慮されていない。
【0048】
異常判定部30は、シミュレーション評価部29で判定された特定領域でのサービス水準を監視する。そして、予め設定された閾値を超えたときに相当する、サービス水準A又はBとなったとき、異常判定部30は、該当領域の滞在人数が異常であると判定し、アラートを出力する。
なお、ここでは、サービス水準A,Bでは、連続時間を設定し、その連続した時間、該当する密度であるとき、アラートを出力するようにしたが、サービス水準C~Fと同様に、連続時間は設定せず、一時的でも、各水準の密度を超えたとき、該当領域の滞在人数が異常であると判定し、アラートを出力するようにしてもよい。
【0049】
[異常判定時の保存データの例]
異常判定部30がアラートを出力した際には、異常を判定した際のシミュレーション結果の様子が、動画又は静止画としてデータベース部10に記録されて、表示装置107に表示される。
例えば、図13に示すように、一日のビル内の交通流をシミュレーションしたとき、シミュレーション評価部29で評価した特定の領域でのサービス水準が、サービス水準A又はBとなることが、時間t11と時間t12で検出されたとする。
【0050】
このとき、データベース部10は、特定の領域でサービス水準A又はBの密度で多数の人が滞在する様子の動画(又は静止画)を、保存データA及び保存データBとして記録する。なお、サービス水準A又はBの密度で多数の人が滞在する様子の動画(又は静止画)は、例えばシミュレーション評価部29により作成される。
【0051】
また、データベース部10に記録される異常を判定した際のシミュレーション結果の様子は、一部ではなくそのシミュレーション結果全体を保存してもよい。
例えば、図14に示すように、保存データCとして、一日のビル内の交通流をシミュレーションした際の、特定の領域での人の滞在人数の変化を、シミュレーションの始まりから終わりまでの動画として記録する。その上で、異常判定部30が、サービス水準A又はBの密度で多数の人が滞在することを検出したタイミングt21及びt22の箇所に、アラートのデータを付加するようにしてもよい。
【0052】
また、異常判定部30がシミュレーション結果から異常を判定しない場合に、異常判定部30は、特定の領域での人の滞在人数が最大となるタイミングのデータを、動画に付加してもよい。
すなわち、異常判定部30は、図15に示すように、保存データDとして、一日のビル内の交通流をシミュレーションした際の、特定の領域での人の滞在人数の変化を、シミュレーションの始まりから終わりまでの動画として記録する。ここで、保存データDに示される動画には、サービス水準A又はBとなる異常な状態がないが、シミュレーション結果の内で、タイミングt31で、特定領域の滞在人数が最も多いものとする。このとき、異常判定部30は、この最大値が検出されたタイミングt31のデータを、最大値個所として動画に付加する。
【0053】
[表示される報告画面の例]
図16は、表示装置107に表示される、アラートのデータが含まれる報告画面の例を示す。
報告画面には、BIMデータによるビルのレイアウト表示501と、移動需要分布表示502と、ビル内のエレベーター仕様表示503と、エレベーターのサービス階表示504と、在館人員密度表示505と、待ち時間最大時の様子の画像表示510と、平均待ち時間表示520とが含まれる。
【0054】
レイアウト表示501と、移動需要分布表示502と、ビル内のエレベーター仕様表示503と、エレベーターのサービス階表示504と、在館人員密度表示505には、図3図12で説明した内容が、そのまま又は一部を省略して表示される。
待ち人数最大時の様子の画像表示510には、図13図15で説明したアラート発生時の特定の領域でのシミュレーション結果をアニメーションで示す画像(動画又は静止画)が表示される。
【0055】
図16の例では、待ち人数最大時の様子の画像表示510は、レイアウト表示501で表示したビル全体のレイアウトを示した上で、各階のエレベーターホール511,512での交通流のシミュレーション結果を動画又は静止画で表示している。この例では、異常判定を行う特定の領域(図6又は図7に示す領域)を、各階のエレベーターホールとした例である。
図16の表示例では、1階のエレベーターホール511に、閾値を超えた多数の人が滞留している状態の中で、最大人数となったときの様子を示す。最大人数以外で、値を超えた多数の人が滞留している状態の別の画像がある場合には、例えば表示画像を見ている作業者(ユーザ)の操作で、画像表示510として、別の画像を表示させる。あるいは、閾値を超えた多数の人が滞留している状態が複数存在する場合に、それぞれのタイミングでのアラート発生状況の画像を順に表示させてもよい。
また、アラートが発生していない場合(図15の例)には、画像表示510として、最大人数となる様子が表示される。
【0056】
また、平均待ち時間表示520は、エレベーターホールに待っている人数と、人数ごとの発生率を円グラフで示している。
この平均待ち時間表示520は、シミュレーション評価部29での評価に基づいて行われる。すなわち、シミュレーション評価部29は、交通流のシミュレーション結果から、エレベーターホールの領域での各利用者の平均のエレベーターの待ち時間を算出する。そして、シミュレーション評価部29は、異常判定部30が出力するアラートに基づいて表示される報告画面に、算出した各利用者の平均のエレベーターの待ち時間のデータを加える処理を行う。
【0057】
以上説明したように、本例の設備レイアウト異常判定装置によると、ビル内の交通流をシミュレーションした結果で、監視する特定領域の人数が、閾値を超えるような異常状態となったとき、そのことが、画像などで警告されるようになる。したがって、シミュレーション結果に問題がある場合に、シミュレーション作業者に適切な警告ができるようになる。
この場合、警告する画面に、シミュするようにレーションした交通流を、アニメーション画像などによる動画又は静止画で表示することで、非常にわかりやすい表示形態となり、確実に異常を警告できるようになる。
また、閾値を超えるような異常でない場合にも、監視する特定領域の人数が最大となる状況を、画像で表示することで、シミュレーションした交通流でのビル内の状況が適切に理解できるようになる。
【0058】
また、監視する特定領域の報告画面に、エレベーターホールなどの昇降機の乗り場として、各利用者の平均の昇降機の待ち時間のデータを加えることで、シミュレーション作業者は、シミュレーションした交通流が適正か否かを、報告画面から容易に判断することができる。具体的には、シミュレーション作業者は、画像で示された異常状態が、どの程度の頻度で発生しているのか、又は平均的な待ち時間がどの程度かを、報告画面から容易に判断できるようになる。
【0059】
[変形例]
本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。
例えば、図16に示す報告画面は、一例を示すものであり、その他の形態でシミュレーション結果の異常を警告するようにしてもよい。例えば、設備レイアウト異常判定装置は、特定箇所の交通流について異常を判定したタイミングや人数などの数値を示す一覧表を作成して、その一覧表を報告画面に表示するようにしてもよい。
また、図16に示す報告画面は、表示を行う他に、印刷装置で印刷してもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態例では、異常を判定する特定の領域を、昇降機の乗り場であるエレベーターホールに適用した例としたが、設備レイアウト異常判定装置は、ビル内のその他の領域について異常を判定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態例では、シミュレーション評価部29が特定の領域の時間帯別の流入人数や滞在人数を評価指標として、アラートの出力などの評価を行うようしたが、時間帯別の流入人数や滞在人数とするのは一例である。例えば、シミュレーション評価部29は、時間帯別で分けていない流入人数や滞在人数を評価指標としてもよい。あるいは、シミュレーション評価部29は、流入人数や滞在人数以外の評価指標で評価してもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、図1などの構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態例で説明した構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラムなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0063】
10…データベース部、11…BIMデータ記憶部、12…在館人員データベース、13…移動需要分布データベース、14…移動需要データ記憶部、15…在館人員データ記憶部、16…エレベーター設定データ記憶部、17…経由需要発生率データ記憶部、18…経由地滞在時間分布データ記憶部、20…人流シミュレータ部、21…レイアウトデータ変換部、22…位置属性生成部、23…在館人員計算部、24…在館人員評価部、25…在館人員補正部、26…移動需要計算部、27…経由需要計算部、28…人流制御部、29…シミュレーション評価部、30…異常判定部、40…昇降機シミュレータ部、41…号機模擬部、42…運行模擬部、50…インタフェース部、51…入力部、52…出力部、100…ビル内交通流設定装置、101…CPU、102…ROM、103…RAM、104…不揮発性ストレージ、105…ネットワークインタフェース、106…入力装置、107…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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