(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】浮体
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20231115BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20231115BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20231115BHJP
F02B 43/00 20060101ALI20231115BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20231115BHJP
F02B 43/10 20060101ALI20231115BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63H21/14
B63B25/16 Z
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02B43/10 Z
F02D19/02 A
(21)【出願番号】P 2023091220
(22)【出願日】2023-06-01
【審査請求日】2023-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-507703(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0035223(KR,A)
【文献】特開2011-245995(JP,A)
【文献】特表2018-508690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
B63H 21/14
B63B 25/16
F02B 43/00
F02M 21/02
F02B 43/10
F02D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体本体と、
前記浮体本体に設けられたオットーサイクルエンジンと、
前記浮体本体に設けられて、天然ガスを貯留可能な天然ガスタンクと、
前記天然ガスタンクから前記天然ガスを前記オットーサイクルエンジンに供給する燃料供給ラインと、
前記浮体本体に設けられ、前記オットーサイクルエンジンに供給する前記天然ガスに二酸化炭素を供給するメタン価改善部と、
前記浮体本体に設けられて、前記オットーサイクルエンジンの排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、
を備え
、
前記メタン価改善部は、
前記オットーサイクルエンジンの負荷が所定の基準負荷以上となった場合にのみ、前記二酸化炭素回収部で回収された前記二酸化炭素を、前記オットーサイクルエンジンに供給する前記天然ガスに混合する
浮体。
【請求項2】
前記オットーサイクルエンジンは、発電機用エンジンである
請求項1に記載の浮体。
【請求項3】
前記浮体本体が、船体であり、
前記オットーサイクルエンジンは、前記船体を推進させるための駆動力を発生させる主機である
請求項1に記載の浮体。
【請求項4】
前記メタン価改善部は、二酸化炭素を貯留可能な二酸化炭素タンクを備える
請求項1に記載の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液化天然ガスを燃料として用いる内燃機関を備えた浮体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液化天然ガスを燃料とする内燃機関(エンジン)が、オットーサイクルエンジンである場合、液化天然ガスのメタン価が低いと、負荷が高くなったときに、ノッキング、失火といった現象が生じやすくなる。このため、液化天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、液化天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることができる浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る浮体は、浮体本体と、オットーサイクルエンジンと、液化天然ガスタンクと、燃料供給ラインと、メタン価改善部と、二酸化炭素回収部と、を備えている。前記オットーサイクルエンジンは、前記浮体本体に設けられている。前記液化天然ガスタンクは、前記浮体本体に設けられて、液化天然ガスを貯留可能である。前記燃料供給ラインは、前記液化天然ガスタンクから前記液化天然ガスを前記オットーサイクルエンジンに供給する。前記メタン価改善部は、前記浮体本体に設けられている。前記メタン価改善部は、前記オットーサイクルエンジンに供給する前記液化天然ガスに二酸化炭素と窒素との少なくとも一方を供給する。前記二酸化炭素回収部は、前記浮体本体に設けられて、前記オットーサイクルエンジンの排ガス中の二酸化炭素を回収する。前記メタン価改善部は、前記オットーサイクルエンジンの負荷が所定の基準負荷以上となった場合にのみ、前記二酸化炭素回収部で回収された前記二酸化炭素を、前記オットーサイクルエンジンに供給する前記天然ガスに混合する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の浮体によれば、液化天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る浮体を備えた浮体の側面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態における、オットーサイクルエンジンに供給する液化天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【
図3】オットーサイクルエンジンにおける、空気と燃料ガス(液化天然ガス)との混合比である空燃比と、エンジンの負荷と、ノッキング、及び早期失火が生じる領域との相関を示す図である。
【
図4】本開示の第二実施形態における、オットーサイクルエンジンに供給する液化天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態の第一変形例における、オットーサイクルエンジンに供給する液化天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態の第二変形例における、オットーサイクルエンジンに供給する液化天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
以下、本開示の実施形態に係る浮体について、
図1~
図6を参照して説明する。
(浮体の構成)
図1に示すように、本開示の実施形態の浮体1は、浮体本体2と、上部構造6と、主機7と、発電機用エンジン8と、液化天然ガスタンク10と、メタン価改善部20Aと、を少なくとも備えている。なお、この実施形態の浮体1は、主機等により航行可能な船舶を一例として説明する。浮体1の船種は、特定の船種に限られない。浮体1の船種としては、バルク船、自動車運搬船(PCTC:Pure Car and Truck Carrier)、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、客船等を例示できる。この実施形態では浮体1が船舶である場合について説明するが、浮体1は船舶に限られず、主機等による航行が不能なFSU(Floating Storage Unit)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)等であってもよい。
【0010】
浮体本体2は、船体であり、その外殻をなす一対の舷側3A、3Bと、船底4と、上甲板5と、を有している。舷側3A、3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備えている。船底4は、これら舷側3A、3Bを接続する船底外板を備えている。これら一対の舷側3A、3B及び船底4により、浮体本体2の外殻は、船首尾方向FAと垂直な断面においてU字状を成している。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。浮体本体2には、例えば船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造6が形成されている。
【0011】
図2は、本実施形態における、オットーサイクルエンジンに供給する液化天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
主機7、及び発電機用エンジン8は、浮体本体2内に設けられている。
主機7は、船舶である浮体1を推進させるためのスクリュー2sを回転駆動させる。
図2に示すように、本実施形態における主機7は、例えば、液化天然ガスタンク10に貯留された液化天然ガスを燃料とする、2サイクル、又は4サイクルのオットーサイクルエンジンEgである。
発電機用エンジン8は、発電機9を回転駆動させる。本実施形態における発電機用エンジン8は、例えば、例えば、液化天然ガスタンク10に貯留された液化天然ガスを燃料とする、4サイクルのオットーサイクルエンジンEgである。
【0012】
液化天然ガスタンク10は、液化天然ガスを貯留可能である。
図1に示すように、本実施形態の液化天然ガスタンク10は、例えば、浮体本体2内に収容されている。本実施形態で例示する液化天然ガスタンク10は、水平方向に延びる円筒状をなし、船首尾方向FAに延びるように設けられている。なお、液化天然ガスタンク10は、浮体本体2内に収容されたものに限られず、例えば上甲板5上に設けられていてもよい。さらに、液化天然ガスタンク10の浮体本体2における設置数、配置については何ら限定するものではない。また、液化天然ガスタンク10の形状は、円筒状に限られず、例えば液化天然ガスタンク10は球形、方形等であってもよい。また、液化天然ガスタンク10は、燃料用のタンクに限られない。例えば、液化天然ガス輸送船の場合、液化天然ガスタンク10は、カーゴタンク等であってもよい。
【0013】
(液化天然ガス供給部の構成)
図2に示すように、液化天然ガスタンク10に貯留されている液化天然ガスは、液化天然ガス供給部11を介して、主機7、及び発電機用エンジン8に供給される。液化天然ガス供給部11は、浮体本体2に設けられている。液化天然ガス供給部11は、燃料供給ライン12と、液化天然ガス気化部13と、を備えている。
【0014】
燃料供給ライン12は、液化天然ガスタンク10から液化天然ガスを、主機7、及び発電機用エンジン8に供給する。燃料供給ライン12は、第一供給ライン12Aと、第二供給ライン12Bと、第三供給ライン12Cと、を有している。
【0015】
第一供給ライン12Aの一部は、液化天然ガスタンク10内に挿入されている。第一供給ライン12Aの一端は、液化天然ガスタンク10内の下部に配置されている。第一供給ライン12Aの一端には、液化天然ガスタンク10内の液化天然ガスを送り出すポンプ15が設けられている。液化天然ガス気化部13は、第一供給ライン12Aの途中に設けられている。第一供給ライン12Aの他端は、第二供給ライン12Bの一端と第三供給ライン12Cの一端とにそれぞれ接続されている。つまり、第一供給ライン12Aは、液化天然ガス気化部13の下流側で、第二供給ライン12Bと、第三供給ライン12Cとに分岐している。第二供給ライン12Bの他端は発電機用エンジン8に接続されている。第三供給ライン12Cの他端は、主機7に接続されている。
【0016】
液化天然ガス気化部13は、液化天然ガスタンク10内からポンプ15で送り出された液化天然ガスを気化させる蒸発器(図示せず)を有している。液化天然ガス気化部13を経た気体の天然ガスは、第二供給ライン12Bと第三供給ライン12Cとに分流する。
【0017】
第二供給ライン12Bの途中には、発電機用エンジン8に供給する天然ガスの流量を調整するガスバルブユニット14Aが設けられている。ガスバルブユニット14Aを経た天然ガスは、第二供給ライン12Bを通して、発電機用エンジン8に供給される。
【0018】
第三供給ライン12Cの途中には、主機7に供給する天然ガスの流量を調整するガスバルブユニット14Bが設けられている。ガスバルブユニット14Bを経た天然ガスは、第三供給ライン12Cを通して、主機7に供給される。
【0019】
(メタン価改善部の構成)
メタン価改善部20Aは、浮体本体2に設けられている。メタン価改善部20Aは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7に供給する天然ガス(気化された液化天然ガス)に、二酸化炭素と窒素との少なくとも一方を供給する。本実施形態では、メタン価改善部20Aが二酸化炭素を供給する場合を一例にして説明する(第二実施形態及び各変形例も同様)。本実施形態において、メタン価改善部20Aは、二酸化炭素タンク21と、気化部22と、を備えている。
【0020】
二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素を貯留可能である。本実施形態において、二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素として、液化二酸化炭素を貯留可能である。二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素ガスを貯留するものであってもよいが、液化二酸化炭素を貯留可能とすることで、限られた容積内で、より多くの二酸化炭素を貯留できる。二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素供給ライン23を介して、燃料供給ライン12に接続されている。
【0021】
気化部22は、熱交換器であり、二酸化炭素タンク21から供給される液化二酸化炭素を気化させる。気化部22は、二酸化炭素供給ライン23の途中に設けられている。
【0022】
二酸化炭素供給ライン23は、第一ライン23Aと、第二ライン23Bと、第三ライン23Cと、を有している。第一ライン23Aの一端は、二酸化炭素タンク21に接続されている。気化部22は、第一ライン23Aの途中に設けられている。第一ライン23Aの他端は、第二ライン23Bの一端と第三ライン23Cの一端とにそれぞれ接続されている。つまり、第一ライン23Aは、第二ライン23Bと第三ライン23Cとに分岐している。気化部22で気化された液化二酸化炭素、つまり二酸化炭素ガスは、第一ライン23Aから第二ライン23Bと第三ライン23Cとに分流する。
【0023】
第二ライン23Bの他端は、第一混合部24Aに接続されている。第一混合部24Aは、燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに接続されている。第一ライン23Aから第二ライン23Bに流れ込んだ二酸化炭素ガスは、第一混合部24Aで、第二供給ライン12B内を流れる天然ガスに供給される。
【0024】
第三ライン23Cの他端は、第二混合部24Bに接続されている。第二混合部24Bは、燃料供給ライン12の第三供給ライン12Cに接続されている。第一ライン23Aから第三ライン23Cに流れ込んだ二酸化炭素ガスは、第二混合部24Bで、第三供給ライン12Cを流れる天然ガスに供給される。
【0025】
第二ライン23Bの途中には、調整弁25Aが設けられている。第三ライン23Cの途中には、調整弁25Bが設けられている。調整弁25A、25Bの各々は、制御部26の制御によって開閉される。
本実施形態において、気化部22の下流側には、気化部22で気化された二酸化炭素ガスの流量を検出する流量計27が備えられている。制御部26は、オペレータの操作により、流量計27で検出される二酸化炭素ガスの流量に基づいて、調整弁25A、25Bの各々の開度が調整可能とされている。
【0026】
本実施形態におけるメタン価改善部20Aは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7の負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。オペレータは、発電機用エンジン8、主機7の各々の負荷を、発電機用エンジン8、主機7の作動状態を示す、例えば回転計、馬力計等の計器で監視することができる。
【0027】
オペレータは、例えば、発電機用エンジン8の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、調整弁25Aを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第一混合部24Aから燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、発電機用エンジン8に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。
【0028】
また、オペレータは、例えば、主機7の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、調整弁25Bを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第二混合部24Bから燃料供給ライン12の第三供給ライン12Cに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、主機7に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。ここで、発電機用エンジン8において二酸化炭素ガスの供給を開始する基準負荷と、主機7において二酸化炭素ガスの供給を開始する基準負荷とは、異なっていてもよい。
【0029】
本実施形態におけるメタン価改善部20Aは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7の負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、負荷の大きさに応じて、二酸化炭素ガスの供給量を調整するようにしてもよい。具体的には、オペレータは、例えば、発電機用エンジン8の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、予め設定された、発電機用エンジン8の負荷の大きさと、調整弁25Aの開度との相関を示すマップ等に基づいて、調整弁25Aの開度を調整し、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第一混合部24Aから燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに供給する。これにより、発電機用エンジン8の負荷に応じた流量の二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合される。
【0030】
オペレータは、例えば、主機7の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、予め設定された、主機7の負荷の大きさと、調整弁25Bの開度との相関を示すマップ等に基づいて、調整弁25Bの開度を調整し、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第二混合部24Bから燃料供給ライン12の第三供給ライン12Cに供給する。これにより、主機7の負荷に応じた流量の二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合される。
【0031】
図3は、オットーサイクルエンジンにおける、空気と燃料ガス(天然ガス)との混合比である空燃比と、エンジンの負荷と、ノッキング、及び失火が生じる領域との相関を示す図である。
図3に示すように、オットーサイクルエンジンにおいては、エンジンの負荷(出力)が高まると、空燃比が小さく、混合気に含まれる空気量が少なくなった場合に、ノッキングが生じやすい領域A1が存在する。また、オットーサイクルエンジンにおいては、エンジンの負荷(出力)が高まると、空燃比が大きく、混合気に含まれる空気量が多くなった場合に、失火が生じやすい領域A2が存在する。
【0032】
このため、本実施形態では、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、主機7において、ノッキング、失火が生じやすくなる領域A1,A2と、負荷の大きさと、に応じて、基準負荷を予め設定しておく。そして、発電機用エンジン8、主機7の負荷が、基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを混合気に混合させることで、天然ガスのメタン価を上昇させ、領域A1,A2の無い空燃比の領域を拡大して、ノッキング、及び失火の発生を抑えている。
【0033】
(作用効果)
上記実施形態の浮体1では、メタン価改善部20Aで、天然ガスに二酸化炭素を供給する。これにより、天然ガスのメタン価が上昇する。メタン価が上昇した天然ガスをオットーサイクルエンジンEgに供給することにより、オットーサイクルエンジンEgの負荷を高めた状態でも、ノッキングや失火が生じにくくなる。その結果、天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、オットーサイクルエンジンEgの負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。これにより、負荷が高い状態で生じやすいノッキングや失火を、より有効に抑えることができる。
【0035】
さらに、上記実施形態では、オットーサイクルエンジンEgは、発電機用エンジン8である。
これにより、オットーサイクルエンジンEgからなる発電機用エンジン8において、負荷を高めた状態で、ノッキングや失火を抑えることができる。したがって、天然ガスを燃料として用いた発電機用エンジン8を、安定して動作させることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、オットーサイクルエンジンEgは、主機7である。
これにより、主機7としてオットーサイクルエンジンEgを用いた場合において、負荷を高めた状態で、ノッキングや失火を抑えることができる。したがって、天然ガスを燃料として用いた主機7を、安定して動作させることができる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、メタン価改善部20Aは、二酸化炭素を貯留可能な二酸化炭素タンク21を備えている。
これにより、メタン価改善部20Aで、天然ガスに二酸化炭素を供給するに際し、二酸化炭素タンク21から、二酸化炭素タンク21に貯留された二酸化炭素を供給できる。
【0038】
また、上記実施形態では、二酸化炭素タンク21は、液化二酸化炭素を貯留可能であり、メタン価改善部20Aは、気化部22をさらに備えている。
これにより、二酸化炭素タンク21で液化二酸化炭素を貯留している場合、二酸化炭素タンク21から供給される液化二酸化炭素を気化部22で気化させて、天然ガスに供給できる。その結果、二酸化炭素ガスで貯留する場合と比較して二酸化炭素タンク21をより小型のものとすることができる。
【0039】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る浮体の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と、二酸化炭素回収部を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図4は、本開示の第二実施形態における、オットーサイクルエンジンに供給する天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、この第二実施形態の浮体1のメタン価改善部20Bは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7に供給する天然ガスに、二酸化炭素を供給する。第二実施形態において、メタン価改善部20Bは、二酸化炭素タンク21と、気化部22と、二酸化炭素回収部30と、を備えている。
【0041】
二酸化炭素回収部30は、例えば、主機7で燃料として天然ガスを燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素を回収する。すなわち、本実施形態における主機7は、燃料を燃焼させる燃焼装置Bでもある。二酸化炭素回収部30は、二酸化炭素回収ライン31の途中に設けられている。二酸化炭素回収ライン31は、第一回収ライン31aと、第二回収ライン31bと、を有している。第一回収ライン31aの一端は、燃焼装置Bとしての主機7の排ガス排出口に接続されている。第一回収ライン31aの他端は、二酸化炭素回収部30に接続されている。これにより、主機7で生成された排ガスが、二酸化炭素回収部30に送り込まれる。第二回収ライン31bの一端は、二酸化炭素回収部30に接続されている。第二回収ライン31bの他端は、二酸化炭素タンク21に接続されている。
【0042】
二酸化炭素回収部30は、主機7で発生した排ガス中の二酸化炭素を分離する。二酸化炭素の分離方法としては、特に限定されず、例えば、化学吸収法、膜分離法、圧力変動吸着法などが挙げられる。化学吸収法では、排ガス中の二酸化炭素をアミン吸収液に吸収させた後、加熱して二酸化炭素をアミン吸収液から分離する。膜分離法では、排ガスを無機分離膜に透過して選択的に二酸化炭素を分離する。圧力変動吸着法では、吸着されるガスの分圧に応じて吸着容量が異なることを利用し、圧力を上下させることで吸着しやすいガスを除去するなどして、二酸化炭素を分離する。
排ガスから分離した二酸化炭素は、第二回収ライン31bを通して、二酸化炭素タンク21に送られる。
【0043】
本実施形態における二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素を貯留可能である。本実施形態において、二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素が液体状態である場合、そのまま、液化二酸化炭素を貯留する。また、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素が気体である場合、二酸化炭素タンク21は、そのまま、気体状態の二酸化炭素ガスを貯留してもよい。この場合、気化部22を省略することができる。
【0044】
本実施形態において、メタン価改善部20Bは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7の負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。
【0045】
オペレータは、例えば、発電機用エンジン8の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、調整弁25Aを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第一混合部24Aから燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、発電機用エンジン8に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。
【0046】
また、オペレータは、例えば、主機7の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数)以上となった場合に、調整弁25Bを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第二混合部24Bから燃料供給ライン12の第三供給ライン12Cに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、主機7に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。
【0047】
ここで、メタン価改善部20Bは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7の負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、負荷の大きさに応じて、二酸化炭素ガスの供給量を調整するようにしてもよい。
【0048】
(作用効果)
上記第二実施形態の浮体1では、上記第一実施形態と同様、メタン価改善部20Bで、液化天然ガスに二酸化炭素を供給する。これにより、天然ガスを燃料として用いた場合において、発電機用エンジン8を安定して動作させることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、オットーサイクルエンジンEgの負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。これにより、負荷が高い状態で生じやすいノッキングや失火を、より有効に抑えることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、燃焼装置Bとしての主機7で燃料を燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素が、二酸化炭素回収部30で回収される。メタン価改善部20Bは、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素を供給する。これにより、排ガスから回収した二酸化炭素を有効利用しつつ、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8を安定して動作させることができる。
【0051】
(第二実施形態の変形例)
上記第二実施形態では、燃焼装置Bとして主機7で燃料を燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素を、二酸化炭素回収部30で回収するようにしたが、これに限られない。二酸化炭素回収部30では、燃焼装置Bとして発電機用エンジン8で燃料を燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素を回収するようにしてもよい。また、二酸化炭素回収部30では、燃焼装置Bとして、主機7、及び発電機用エンジン8の双方で燃料を燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素を回収するようにしてもよい。
【0052】
また、上記第二実施形態では、二酸化炭素回収部30で回収した二酸化炭素を、主機7、及び発電機用エンジン8に供給する天然ガスに混合するようにしたが、これに限られない。二酸化炭素回収部30で回収した二酸化炭素は、主機7、及び発電機用エンジン8のいずれか一方に供給する天然ガスに、混合させるようにしてもよい。
【0053】
<実施形態の第一変形例>
上記第一、第二実施形態では、発電機用エンジン8、及び主機7の負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給するようにしたが、これに限られない。
図5は、本開示の実施形態の第一変形例における、オットーサイクルエンジンに供給する天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【0054】
図5に示すように、浮体1のメタン価改善部20Cは、液化天然ガスタンク10からオットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が、定められた基準メタン価未満である場合に、二酸化炭素ガスを供給するようにしてもよい。この場合、発電機用エンジン8、及び主機7に対して供給される液化天然ガスのメタン価を取得するための分析装置40を、例えば、燃料供給ライン12(第二供給ライン12B、第三供給ライン12C)に設けるようにしてもよい。このような分析装置40を設けることで、例えば、液化天然ガスタンク10内に貯留された液化天然ガスの重質化により、液化天然ガスのメタン価が基準メタン価以上の状態から基準メタン価未満の状態になったことも検出できる。分析装置40は、第一供給ライン12A、又は液化天然ガスタンク10等に設けてもよい。
【0055】
本実施形態の第一変形例におけるメタン価改善部20Aは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が、基準メタン価未満となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。オペレータは、発電機用エンジン8、主機7に供給される液化天然ガスのメタン価を、分析装置40の分析結果から取得する。オペレータは、例えば、発電機用エンジン8に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が、基準メタン価未満となった場合に、調整弁25Aを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第一混合部24Aから燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、発電機用エンジン8に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。
【0056】
また、オペレータは、例えば、主機7に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が、基準メタン価未満となった場合に、調整弁25Bを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、第二混合部24Bから燃料供給ライン12の第三供給ライン12Cに供給する。これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、主機7に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。
ここで、オペレータは、例えば、発電機用エンジン8、主機7に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が、予め設定した基準メタン価未満となった場合に、予め設定された、液化天然ガスのメタン価の大きさと、調整弁25A、25Bの開度との相関を示すマップ等に基づいて、調整弁25A、25Bの開度を調整するようにしてもよい。
【0057】
このような構成により、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8、及び主機7に向けて供給される液化天然ガスのメタン価が基準メタン価未満である場合に、二酸化炭素ガスを供給することで、液化天然ガスのメタン価が低い状態で生じやすいノッキングや失火を、より有効に抑えることができる。
上記したような構成は、上記第一実施形態(二酸化炭素回収部30を備えない構成)においても、同様に適用可能である。
【0058】
<実施形態の第二変形例>
上記実施形態では、二酸化炭素を、主機7、及び発電機用エンジン8に供給する天然ガスに混合するようにしたが、これに限られない。
図6は、本開示の実施形態の第二変形例における、オットーサイクルエンジンに供給する天然ガスに二酸化炭素を混合させるための構成を示すブロック図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態の第二変形例では、浮体1に備えられた主機7Dが、例えば、液化天然ガスタンク10に貯留された液化天然ガスを燃料とする2サイクルのディーゼルサイクルエンジンEdである。ディーゼルサイクルエンジンEdである主機7Dにおいては、ポンプ19等により高圧に昇圧された燃料(天然ガス)が供給される。このように、供給される燃料が高圧であるディーゼルサイクルエンジンEdにおいては、負荷が高くなっても、ノッキングや失火が生じにくい。
【0060】
このような構成の本変形例において、メタン価改善部20Dは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8に供給する液化天然ガスに、二酸化炭素を供給する。本変形例において、メタン価改善部20Dの二酸化炭素タンク21は、二酸化炭素供給ライン23Dを介して、燃料供給ライン12に接続されている。
【0061】
二酸化炭素供給ライン23Dの一端は、二酸化炭素タンク21に接続されている。気化部22は、二酸化炭素供給ライン23Dの途中に設けられている。二酸化炭素供給ライン23Dの他端は、混合部24Dに接続されている。混合部24Dは、燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに接続されている。二酸化炭素供給ライン23Dを流れる二酸化炭素ガスは、混合部24Dで、第二供給ライン12B内を流れる気化された液化天然ガス(言い換えれば、天然ガス)に混合される。
【0062】
二酸化炭素供給ライン23Dの途中には、調整弁25Dが設けられている。調整弁25Dは、制御部26の制御によって開閉することができる。
【0063】
本実施形態の第二変形例におけるメタン価改善部20Dは、オットーサイクルエンジンEgである発電機用エンジン8の負荷が、基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスを供給する。オペレータは、発電機用エンジン8の負荷を、発電機用エンジン8の作動状態を示す、例えば回転計、馬力計等の計器で監視する。オペレータは、例えば、発電機用エンジン8の負荷が、予め設定した基準負荷(基準回転数、基準馬力)以上となった場合に、調整弁25Dを開き、気化部22で気化された二酸化炭素ガスを、混合部24Dから燃料供給ライン12の第二供給ライン12Bに供給する。
【0064】
これにより、二酸化炭素ガスが、天然ガスに混合され、発電機用エンジン8に供給される天然ガスのメタン価が上昇する。メタン価が上昇した天然ガスをオットーサイクルエンジンEgに供給することにより、オットーサイクルエンジンEgの負荷を高めた状態でも、ノッキングや失火が生じにくくなる。その結果、天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることができる。
【0065】
なお、上記実施形態の第二変形例では、主機7Dが、例えば、液化天然ガスタンク10に貯留された液化天然ガスを燃料にするようにしたが、これに限られない。主機7Dは、液化天然ガスタンク10とは別に設けられた燃料タンクに貯留された、液化天然ガス以外の燃料を燃焼させるようにしてもよい。
また、上記実施形態の第二変形例では、主機7Dに供給される天然ガスに二酸化炭素を供給しない場合について説明したが、例えば回収した二酸化炭素を処理することを目的として、主機7Dに供給される天然ガスに二酸化炭素を供給するようにしてもよい。
【0066】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、オットーサイクルエンジンEgに供給される天然ガスに、二酸化炭素を混合させる第一混合部24A、第二混合部24B、混合部24Dの位置は、適宜変更可能であり、例えば、ドライアイス生成が抑えられるのであれば、液化天然ガスタンク10内に二酸化炭素を供給してもよい。また、オットーサイクルエンジンEgの燃焼室、予混合室(副室)内などに、二酸化炭素を直接供給し、燃焼室内で、天然ガスのメタン価を高めるようにしてもよい。
【0067】
さらに、第一変形例では分析装置40を備える場合について説明した。しかし、分析装置40は、必要に応じて設ければよい。例えば、液化天然ガスタンク10内に液化天然ガスを収容してからの経過時間等に基づいて液化天然ガスタンク10内の液化天然ガスのメタン価を予測するようにしてもよい。
【0068】
さらに、上記各実施形態及び各変形例においては、主機7によりスクリュー2sを回転駆動させる場合について説明したが、主機7にスクリュー2sを直結する場合に限られない。例えば、発電機用エンジン8の回転エネルギーを用いて発電した電力により電気推進モーターを駆動してスクリュー2sを回転駆動させてもよい。
また、上記各実施形態及び各変形例においては、液化天然ガスタンク10内に貯留されている液化天然ガスを気化させてオットーサイクルエンジンに供給する場合について説明したが、気体の天然ガスを貯留した天然ガスタンクから天然ガスをオットーサイクルエンジンに供給してもよい。また、液化天然ガスタンク10内で発生したボイルオフガスを気体の天然ガスとしてオットーサイクルエンジンに供給するようにしてもよい。
さらに、上記各実施形態及び各変形例においては、メタン価改善部20A~20Dが二酸化炭素を供給する場合について説明したが、例えば、二酸化炭素に代えて窒素を供給したり、二酸化炭素及び窒素を同時に供給したりしてもよい。このように窒素を供給する場合には、窒素(液体又は気体)を貯留可能な窒素タンクを浮体本体2に設けるようにすればよい。また、浮体本体2に窒素を製造する製造装置を設けて、浮体1にて製造した窒素を用いるようにしてもよい。
【0069】
<付記>
各実施形態に記載の浮体1は、例えば以下のように把握される。
【0070】
(1)第1の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、前記浮体本体2に設けられたオットーサイクルエンジンEgと、前記浮体本体2に設けられて、天然ガスを貯留可能な天然ガスタンク10と、前記天然ガスタンク10から前記天然ガスを前記オットーサイクルエンジンEgに供給する燃料供給ライン12と、前記浮体本体2に設けられ、前記オットーサイクルエンジンEgに供給する前記天然ガスに二酸化炭素と窒素との少なくとも一方を供給するメタン価改善部20A~20Dと、を備える。
浮体1の例としては、バルク船、自動車運搬船(PCTC:Pure Car and Truck Carrier)、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、客船等の船舶、FSU(Floating Storage Unit)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)等が挙げられる。天然ガスの例としては、液体の天然ガス(液化天然ガス)、気体の天然ガス、ボイルオフガス等が挙げられる。天然ガスタンク10の例としては、液化天然ガスタンクが挙げられる。
【0071】
この浮体1は、メタン価改善部20A~20Dで、天然ガスに二酸化炭素と窒素との少なくとも一方を供給すると、天然ガスのメタン価が上昇する。メタン価が上昇した天然ガスをオットーサイクルエンジンEgに供給することにより、オットーサイクルエンジンEgの負荷を高めた状態でも、ノッキングや失火が生じにくくなる。その結果、天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させることができる。
【0072】
(2)第2の態様に係る浮体1は、(1)の浮体1であって、前記浮体本体2に設けられ、燃料を燃焼させる燃焼装置Bと、前記浮体本体2に設けられて、前記燃焼装置Bの排ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部30と、をさらに備え、前記メタン価改善部20Bは、前記二酸化炭素回収部30で回収された前記二酸化炭素を供給する。
【0073】
これにより、燃焼装置Bで燃料を燃焼させることで生成される排ガス中の二酸化炭素が、二酸化炭素回収部30で回収される。メタン価改善部20Bは、二酸化炭素回収部30で回収された二酸化炭素を供給する。これにより、排ガスから回収した二酸化炭素を有効利用することができる。
【0074】
(3)第3の態様に係る浮体1は、(1)又は(2)の浮体1であって、前記メタン価改善部20A、20B、20Dは、前記オットーサイクルエンジンEgの負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスと窒素ガスとの少なくとも一方を供給する。
【0075】
これにより、オットーサイクルエンジンEgの負荷が、所定の基準負荷以上となった場合に、二酸化炭素ガスと窒素ガスとの少なくとも一方を供給することで、負荷が高い状態で生じやすいノッキングや失火を、より有効に抑えることができる。
【0076】
(4)第4の態様に係る浮体1は、(1)から(3)の何れか一つの浮体1であって、前記メタン価改善部20Cは、前記天然ガスタンク10から前記オットーサイクルエンジンEgに供給される前記天然ガスのメタン価が、定められた基準メタン価未満である場合に、二酸化炭素ガスと窒素ガスとの少なくとも一方を供給する。
【0077】
これにより、オットーサイクルエンジンEgに供給される天然ガスのメタン価が、定められた基準メタン価未満である場合に、二酸化炭素ガスと窒素ガスとの少なくとも一方を供給することで、天然ガスのメタン価が低い状態で生じやすいノッキングや失火を、より有効に抑えることができる。
【0078】
(5)第5の態様に係る浮体1は、(1)から(4)の何れか一つの浮体1であって、前記オットーサイクルエンジンEgは、発電機用エンジン8である。
【0079】
これにより、オットーサイクルエンジンEgからなる発電機用エンジン8において、負荷を高めた状態で、ノッキングや失火を抑えることができる。したがって、天然ガスを燃料として用いた発電機用エンジン8を、安定して動作させることができる。
【0080】
(6)第6の態様に係る浮体1は、(1)から(5)の何れか一つの浮体1であって、前記浮体本体2が、船体であり、前記オットーサイクルエンジンEgは、前記船体を推進させるための駆動力を発生させる主機7である。
【0081】
これにより、主機7としてオットーサイクルエンジンEgを用いた場合において、負荷を高めた状態で、ノッキングや失火を抑えることができる。したがって、天然ガスを燃料として用いた主機7を、安定して動作させることができる。
【0082】
(7)第7の態様に係る浮体1は、(1)から(6)の何れか一つの浮体1であって、前記メタン価改善部20A~20Dは、二酸化炭素を貯留可能な二酸化炭素タンク21を備える。
【0083】
これにより、メタン価改善部20A~20Dで、天然ガスに二酸化炭素を供給するに際し、二酸化炭素タンク21から、二酸化炭素タンク21に貯留された二酸化炭素を供給できる。
【符号の説明】
【0084】
1…浮体 2…浮体本体 2b…船尾 2s…スクリュー 3A、3B…舷側 4…船底 5…上甲板 6…上部構造 7、7D…主機 8…発電機用エンジン 9…発電機 10…液化天然ガスタンク 11…液化天然ガス供給部 12…燃料供給ライン 12A…第一供給ライン 12B…第二供給ライン 12C…第三供給ライン 13…液化天然ガス気化部 14A、14B…ガスバルブユニット 15…ポンプ 19…ポンプ 20A~20D…メタン価改善部 21…二酸化炭素タンク 22…気化部 23、23D…二酸化炭素供給ライン 23A…第一ライン 23B…第二ライン 23C…第三ライン 24A…第一混合部 24B…第二混合部 24D…混合部 25A、25B、25D…調整弁 26…制御部 27…流量計 30…二酸化炭素回収部 31…二酸化炭素回収ライン 31a…第一回収ライン 31b…第二回収ライン 40…分析装置 A1、A2…領域 B…燃焼装置 Ed…ディーゼルサイクルエンジン Eg…オットーサイクルエンジン FA…船首尾方向
【要約】
【課題】天然ガスを燃料として用いた場合において、エンジンを安定して動作させること。
【解決手段】浮体は、浮体本体と、浮体本体に設けられたオットーサイクルエンジンと、浮体本体に設けられて、天然ガスを貯留可能な天然ガスタンクと、天然ガスタンクから天然ガスをオットーサイクルエンジンに供給する燃料供給ラインと、浮体本体に設けられ、オットーサイクルエンジンに供給する天然ガスに二酸化炭素と窒素との少なくとも一方を供給するメタン価改善部と、を備える。
【選択図】
図2