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特許7385796加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20231116BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20231116BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20231116BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231116BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231116BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20231116BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231116BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J131/04
C09J133/02
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/02
C09J7/38
C08J7/043 Z CER
C08J7/043 CEZ
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023006320
(22)【出願日】2023-01-19
【審査請求日】2023-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠太郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-184630(JP,A)
【文献】特開2015-105353(JP,A)
【文献】特開2012-062416(JP,A)
【文献】特開2011-026425(JP,A)
【文献】特開2012-77177(JP,A)
【文献】特開2017-154410(JP,A)
【文献】特開2018-058915(JP,A)
【文献】特開2010-241864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024618(WO,A1)
【文献】特開平6-287526(JP,A)
【文献】特開2011-245689(JP,A)
【文献】特開2013-234322(JP,A)
【文献】特開2018-70746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08J 7/04- 7/06
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、
モノマー混合物は、2-エチルヘキシルアクリレートカルボキシ基を有するモノマー(a)および酢酸ビニルを含有し、
2-エチルヘキシルアクリレートの含有率が、モノマー混合物100質量%中0~85質量%であり、
カルボキシ基を有するモノマー(a)の含有率が、モノマー混合物100質量%中2~20質量%であり、
酢酸ビニルの含有率が、モノマー混合物100質量%中5~40質量%であり、
架橋後のゲル分率が50%以上であることを特徴とする、
真空成形法または真空圧空成形法による被着体への貼り付けに用いる加飾シート用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマー混合物が、さらにアルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)を含有し、
モノマー混合物100質量%中、アルキル(メタ)アクリレート(b)の含有率が1~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が、20万~150万である、請求項1に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(B)は、エポキシ系硬化剤および金属キレート系硬化剤のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と、請求項1~4いずれか一項に記載の加飾シート用粘着剤組成物からなる粘着層を備える、加飾シート。
【請求項6】
被着体と、請求項5に記載の加飾シートとを備えることを特徴とする加飾構造体。
【請求項7】
請求項5に記載の加飾シートを真空成形法または真空圧空成形法により被着体と一体化させて加飾構造体を形成することを特徴とする、加飾構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の外観品位を向上させる手段として、成形品の外観表面を意匠性のあるフィルム(加飾シート)によって装飾することが行われている。自動車の内装品や外装品などの三次元形状を有する成形品を、加飾シートを用いて装飾する方法としては、インサート成形法、インモールド成形法、真空成形法および真空圧空成形法などが知られている。
【0003】
インサート成形法は、予め加飾シートを所定形状に賦形して金型に挿入した後、加熱溶融樹脂を加圧して金型へ流し込み射出成形し、冷却固化させて、加飾シートと成形品を一体化させた加飾構造体を作製する方法である。
また、インモールド成形法は、離型層を介して意匠印刷のあるフィルムを金型内にセットし、加熱溶融樹脂を射出成形して冷却固化させた後、このフィルムを剥がすことによって意匠を転写させて、加飾構造体を作製する方法である。
このように、インサート成形法およびインモールド成形法は、成形品の成形と同時に成形品が加飾され、成形品の外観表面に意匠が形成される。
【0004】
一方、真空成形法は、加飾シートに熱をかけて軟化させ、加飾シートと成形品の間の空気を成形品側から引き抜くことで真空に近い状態を作り、成形品に加飾シートを密着させる方法である。
また、真空圧空成形法は、同様に真空に近い状態を作り、さらに、成形品の上部の加飾シート側から空気圧をかけて、成形品に加飾シートを密着させる方法である。
このように、真空成形法および真空圧空成形法は、成形品の完成後、常温で加飾シートを貼り合わせ、加熱することによって、成形品を加飾する方法である。すなわち、成形品の成形とは別途の作業で、成形品の外観表面へ加飾シートが貼り付けられるため、一台の装置で、様々な形状の成形品に対して加飾シートを貼り付けることができる。また、真空成形法および真空圧空成形法では、インモールド成形法などでは困難である、成形品端部において表面から裏面にかけての連続的な被覆、すなわち巻き込み被覆も可能であるため、多用されている。
【0005】
特許文献1には、カルボキシ基を特定の割合で含有し、かつガラス転移温度が25℃以下である(メタ)アクリルポリマー、及び、アミノ基を特定の割合で含有し、かつガラス転移温度が75℃以上である(メタ)アクリルポリマーを含む接着層を有する接着フィルムを加熱圧着により接着した成形体が開示されている。
【0006】
特許文献2には、特定の範囲のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル重合体2種類を特定の割合で含有する粘着剤組成物が開示されている。
【0007】
特許文献3には、メチルアクリレートと炭素数が4のアルコキシ基を含むアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、及び、ガラス転移温度が115℃以下であり、かつ重量平均分子量が5千~10万である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを前記共重合体100重量部に対して1~40重量部含有することを特徴とする粘着層を含む加飾成形用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-035588号公報
【文献】国際公開第2021/049480号
【文献】特開2017-132205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、真空成形法または真空圧空成形法で加飾シートを成形品に貼り付ける場合、加熱成形後に貼り直しができないため、成形前に貼り直しを行うことが多い。このため容易に貼り直しが可能であることが必須である。また、自動車の内装品及び外装品等は様々な環境下で使用されることが想定されるため、曲面や凹凸部を有する複雑な形状に追従するとともに、高温環境下でも粘着層との接着界面で浮きや剥がれといった外観不良を生じない耐久性も重要であり、このような各性能をバランス良く満足し得る加飾シート用粘着剤組成物が求められている。
【0010】
特許文献1に記載の接着層は、高温での接着性に優れるものの、ガラス転移温度が高く、真空成形又は真空圧空成形前に、加飾シートを被着体に仮接着できないという課題があった。
【0011】
特許文献2の粘着剤組成物は、貼り直し性や塗膜外観に優れる一方、高温環境下での耐久性等に言及されておらず、実用性能の点において十分ではない。
【0012】
特許文献3の加飾成形用フィルムは、接着性や寸法安定性、曲面部への追従性が80℃環境下までは達成されているものの、100℃以上の高温環境下や、より複雑な凹凸部へ貼着した試料に浮きや剥がれが発生し、外観不良となる場合があった。
【0013】
すなわち、加熱前の貼り直し性や高温(100℃以上)での耐久性、凹凸追従性、成形品に優れた外観を付与できる、加飾シート用粘着剤組成物はこれまで開発されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、モノマー混合物は、2-エチルヘキシルアクリレートおよびカルボキシ基を有するモノマー(a)を含有し、2-エチルヘキシルアクリレートの含有率が、モノマー混合物100質量%中40~97質量%であり、カルボキシ基を有するモノマー(a)の含有率が、モノマー混合物100質量%中2~20質量%であることを特徴とする加飾シート用粘着剤組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、成形品の加飾において、加熱前の貼り直し性や凹凸追従性、高温(100℃以上)での耐久性、成形品に優れた外観を付与でき、かつ凹凸追従性に優れる、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法の提供をすることが可能となる。
所定のモノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)を含有する粘着剤組成物で粘着剤層を形成するとき、加熱前の貼り直し性や高温環境下での耐久性、優れた外観、凹凸追従性といった各性能を高度に発現させることができることを知得した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示に係る加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体および加飾構造体の製造方法は、下記[1]~[9]の構成を有する。
[1](メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、
モノマー混合物は、モノマー混合物は、2-エチルヘキシルアクリレートおよびカルボキシ基を有するモノマー(a)を含有し、
2-エチルヘキシルアクリレートの含有率が、モノマー混合物100質量%中40~97質量%であり、カルボキシ基を有するモノマー(a)の含有率が、モノマー混合物100質量%中2~20質量%であることを特徴とする、
加飾シート用粘着剤組成物。
[2]前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマー混合物が、さらにアルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)を含有し、
モノマー混合物100質量%中、アルキル(メタ)アクリレート(b)の含有率が1~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
[3]前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、20万~150万である、[1]または[2]に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
[4]前記硬化剤(B)は、エポキシ系硬化剤および金属キレート系硬化剤のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]~[3]いずれかに記載の加飾シート用粘着剤組成物。
[5]架橋後のゲル分率が50%以上であることを特徴とする、[1]~[4]いずれかに記載の加飾シート用粘着剤組成物。
[6]真空成形法または真空圧空成形法による被着体への貼り付けに用いる、[1]~[5]いずれかに記載の加飾シート用粘着剤組成物。
[7]基材と、[1]~[6]いずれかに記載の加飾シート用粘着剤組成物からなる粘着層を備える、加飾シート。
[8]被着体と、[7]に記載の加飾シートとを備えることを特徴とする加飾構造体。
[9][7]に記載の加飾シートを真空成形法または真空圧空成形法により被着体と一体化させて加飾構造体を形成することを特徴とする、加飾構造体の製造方法。
【0017】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。
【0018】
なお、本開示において、「シート」とは、可撓性を有する積層体を意味し、「フィルム」と呼ばれる薄い積層体も包含するものである。
【0019】
本開示において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれか一方または両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」のいずれか一方または両方を意味する。モノマーとは、エチレン性不飽和基含有単量体である。
【0020】
本開示において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0021】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0022】
また、以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0023】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、モノマー混合物は、モノマー混合物は、2-エチルヘキシルアクリレートおよびカルボキシ基を有するモノマー(a)を含有し、2-エチルヘキシルアクリレートの含有率が、モノマー混合物100質量%中40~97質量%であり、カルボキシ基を有するモノマー(a)の含有率が、モノマー混合物100質量%中2~20質量%であることを特徴とする。
【0024】
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)>
本発明の粘着剤組成物が含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(以降、共重合体(A)とも記す)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーの混合物の全部または一部を重合して得られる共重合体である。
【0025】
モノマー混合物100質量%中、2-エチルヘキシルアクリレートの含有率は、40~97質量%であり、50~85質量%がより好ましい。上記の範囲内とすることで、2-エチルヘキシルアクリレートの適度な炭素数と分岐構造に由来する高い流動性から、柔軟性に富んだ粘着層を形成でき、優れた凹凸追従性を付与できる。
【0026】
モノマー混合物100質量%中、カルボキシ基を有するモノマー(a)の含有率は、2~20質量%であり、5~15質量%がより好ましい。上記の範囲内とすることで粘着力、高温環境下での耐久性および凹凸追従性を高度に両立することができる。
【0027】
カルボキシ基を有するモノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0028】
他成分との相溶性、他成分の分散性、基材および被着体に対する接着性、及び架橋性等の調整の目的に応じて、共重合体(A)の合成には、2-エチルヘキシルアクリレートおよびカルボキシ基を有するモノマー(a)以外のその他モノマーを用いることができる。
より具体的には、本発明の粘着剤組成物では、共重合体(A)を構成するモノマー混合物は、さらにアルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)(以降、アルキル(メタ)アクリレート(b)とも記す)を含むことが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0029】
アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも貼り直し性の観点からメチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0030】
モノマー混合物100質量%中、アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)の含有率は、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。上記の範囲内とすることで粘着力、高温環境下における耐久性および凹凸追従性を高度に両立することができる。
【0031】
さらに、共重合体(A)を構成するモノマー混合物に含むことができるアルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)を除くその他モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0032】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、ラウリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ノナン酸ビニル等のビニル系モノマー;
ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートイソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシエル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニルアクリレート、エイコサニル(メタ)アクリレート、ヘキサコサニル(メタ)アクリレート等の炭素数5~26のアルキル基を有する(メタ)アクリレート(ただし、2-エチルヘキシルアクリレートを除く);
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
2-メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-エトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエーテル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、及びN-ビニル-3,5-モルホリンジオン等のN-ビニル環状アミド系モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及びN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2)-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、及びN-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、及び2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート等のカルボキシ基を除く酸性基を有するモノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー並びに、ポリアルキレングリコールアリルエーテル等の水酸基を有するアリルエーテル系モノマー等が挙げられる。
これらは必要に応じて、共重合体(A)を構成するモノマー混合物に含んでも含まなくても良いが、モノマー混合物に含む場合は、粘着剤組成物の塗工性等の観点から酢酸ビニルを用いることがより好ましい。
【0033】
共重合体(A)を構成するモノマー混合物中の、アルキル基の炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)を除くその他モノマーの含有率は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。上記の範囲内とすることで粘着力、高温環境下での耐久性および凹凸追従性を高度に両立することができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、その重合形態は特に限定されない。すなわち、共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む各モノマーの交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれであってもよい。たとえば、ブロック共重合体は、ジブロックであってもよいし、トリブロックであってもよい。
【0035】
共重合体(A)の合成には、従来公知の手法を用いることができ、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の重合方法で製造することができる。また、共重合体(A)の合成には、リビングラジカル重合法や活性エネルギー線重合法などの公知の重合法を適宜使用できる。その際、共重合体(A)合成用のモノマー混合物には、光重合開始剤や従来公知の添加剤を含むことができる。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、X線、ガンマ線、又は電子線等を用いることができる。また、紫外線の照射には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、LED等の光源を使うことができる。
【0036】
共重合体(A)の各構成単位(モノマー成分)の配合率は、核磁気共鳴分析(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)などの種々の機器を用いて特定できる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、20万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、50万以上であることがさらに好ましい。また、共重合体(A)の重量平均分子量は、150万以下であることが好ましく、130万以下であることがより好ましく、120万以下であることがさらに好ましい。
共重合体(A)のMwが上記下限値を満たす場合、成形品の加飾後に、加飾シート部分がずれ、加飾構造体の外観劣化が生じることを容易に防ぐことができる。また、共重合体(A)のMwが上記上限値を満たす場合、塗工に適した粘度を確保しやすい。
【0038】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は、硬化剤(B)を含む。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に架橋基を持たせて硬化剤(B)で架橋させることで、粘着層の凝集力や粘着力、高温下での耐久性を高めることができる。
【0039】
本発明の粘着剤組成物が含有する硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート、アミン化合物、アクリレート化合物等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレートが好ましく、高温環境下における耐久性の観点からエポキシ化合物がより好ましい。
【0040】
イソシアネート化合物(イソシアネート系硬化剤)としては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、及びポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0041】
エポキシ化合物(エポキシ系硬化剤)としては、例えばビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N、N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0042】
アジリジン化合物としては、例えば、β-アジリジニルプロピオナト)、トリメチロールプロパントリス(β-アジリジニルプロピオナト)等が挙げられる。また、市販品でいうと、例えば、「TAZO」、「TAZM」相互薬工社製、「ケミタイトPZ-33」日本触媒社製等が挙げられる。
【0043】
金属キレート(金属キレート系硬化剤)としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0044】
アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメチレン樹脂などが挙げられる。
【0045】
アクリレート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールアクリレート等の多官能アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
硬化剤(B)の含有量は、共重合体(A)の種類や架橋度など所望する物性などに応じて適宜変更すればよいが、粘着力や貼り直し性、高温下での耐久性の観点から、共重合体(A)100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.02~10質量部がより好ましく、0.03~5質量部がさらに好ましく、0.05~3質量部が特に好ましい。中でも硬化剤としてのエポキシ化合物の含有量を上記範囲内とすることで、150℃までの高温環境下における密着性と耐熱性を高度に両立することができる。
【0047】
本発明の粘着剤組成物の架橋度は、ゲル分率で示され、その測定方法は実施例に示す通りである。ゲル分率が高いほど貼り直し性、高温環境下での耐久性に優れるため、本発明の粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、50%以上であることが好ましい。ゲル分率は100%であってもよい。本発明の粘着剤組成物の架橋度は、硬化剤(B)の配合量等を変更することで適宜調整できる。
【0048】
<有機溶剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、有機溶剤(C)を含む。有機溶剤(C)を含むことで本発明の粘着剤組成物を被貼付物に塗工するために好適な粘度に容易にしやすく塗工性を向上させることができる。また、一般に粘着剤組成物を無溶剤で塗工・硬化させる紫外線硬化系は酸素阻害や紫外線ランプ距離などの影響で塗膜架橋度が不均一になりやすいのに対して、有機溶剤(C)を含む熱硬化系は、塗膜中で均一に架橋反応が起きるため凹凸追従性などの性能を容易に発現させることが可能である。
有機溶剤(C)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合時の溶剤をそのまま利用してもよく、また、更に溶剤を追加してもよく、任意の溶剤を適宜使用できる。
【0049】
有機溶剤(C)としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種で以上を併用してもよい。これら有機溶剤を添加して、粘着剤組成物の粘度を調整することもできるし、粘着剤組成物を加温して粘度を低下させることもできる。
溶解性、乾燥性の観点ではSP値が9以上の有機溶剤を用いることが好ましい。SP値が9以上の有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの中でも酢酸エチルを用いることがより好ましい。
一方、粘着剤組成物の粘度を下げる観点では、SP値が9未満の有機溶剤を用いることが好ましい。SP値が9未満の有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
【0050】
本発明の粘着剤組成物は、共重合体(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)の他に、必要に応じて、粘着付与剤、共重合体(A)以外の樹脂、可塑剤、シランカップリング剤、レベリング剤、無機及び又は有機微粒子、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の任意の添加剤を含んでもよい。これら添加剤の添加量は、本開示の効果が得られる範囲で適宜選択でき、例えば、上記共重合体(A)の含有量が上記範囲内を満たす範囲で適宜設定することが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)以外の樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低結晶(アモルファス)ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリ酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン共重合体、並びに、ポリオレフィン変性ポリマー等のオレフィン系共重合体、並びに、ブタジエン系エラストマー、エステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、スチレン-ブタジエン系エラストマー、スチレン-イソプレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、並びに、熱可塑性ポリエステル、並びに、ポリアミド系共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン系樹脂、セロファン、ポリアクリロニトリル、並びに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリ塩ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。これらのその他の樹脂の含有率は、本発明の粘着剤組成物の固形分中、10質量%未満であることが好ましい。これらの樹脂の含有率が10質量%未満であれば、良好な相溶性が得やすく、適度な粘着力を容易に得ることができる。
【0052】
本発明の粘着剤組成物には、粘着力を調整する目的で、粘着付与剤(粘着付与樹脂)を使用できる。粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、合成炭化水素系樹脂等が挙げられる。
【0053】
ロジン系樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂、天然ロジン等が挙げられる。
【0054】
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂、及びスチレン-脂肪族炭化水素系共重合体樹脂等が挙げられる。
【0055】
合成炭化水素系樹脂は、例えば、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0056】
被着体に対する良好な粘着力を得る観点から、粘着付与剤としては中でもロジン系樹脂、テルペン系樹脂を用いることが好ましい。粘着付与剤は、1種単独で、または2種以上混合して用いてもよい。
【0057】
粘着付与剤の含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、30質量部未満であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤の含有量を30質量部未満とすることで、良好な相溶性を得やすく、適度な貼り直し性、優れた成形品外観を得やすい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を主成分として含有することが好ましい。なお、主成分とは、本発明の粘着剤組成物が含む不揮発分のうち、最も配合量の多い成分のことを言う。
具体的には、本発明の粘着剤組成物の固形分100質量%中の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の含有率は、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~99質量%である。本発明の粘着剤組成物の固形分100質量%中に(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が70質量%以上含まれていれば、常温で貼り直し可能で、且つ気泡巻き込み及び異物混入がない、適度な粘着力を容易に得ることができる。
【0059】
<加飾シート>
以上説明した本発明の粘着剤組成物は、加飾シート用として好ましく用いることができる。本発明に係る加飾シート(以降、本加飾シートとも記す)は、基材と、本発明の粘着剤組成物からなる粘着層とを備える。必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離シートで被覆することができる。なお、剥離シートは、粘着シートを被着体に貼着する際に剥離される。
基材としては、特に制限されず、樹脂シート、紙、および金属箔等が挙げられる。基材は、これら基材の少なくとも一方の面に任意の1つ以上の層が積層された積層シートであってもよい。基材の任意の粘着層を形成する側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理およびアンカーコート剤塗布等の易接着処理が施されていてもよい。
剥離シートとしては、特に制限されず、樹脂シートまたは紙等の基材シートの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを用いることができる。
【0060】
粘着層を有する加飾シートの製造方法については、従来公知の方法を適宜使用でき、特に限定されない。例えば、表面層と加飾層とが形成されたシート上に、必要に応じて溶剤で希釈した本発明の粘着剤組成物を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによってコーティングし、塗膜を形成する。次いで、必要に応じて加熱して乾燥、養生することにより、当該シート上に粘着層(固化物)を形成することができる。
なお、本発明の粘着剤組成物に含まれる共重合体(A)が活性エネルギー線による架橋が必要な場合には、シート上に本発明の粘着剤組成物を塗工した後、加熱乾燥し、活性エネルギー線を照射することにより、当該シート上に粘着剤層(架橋物)を形成することができる。その際、例えば、ベルトコンベア式の紫外線照射装置を用いて、シート上に塗工した粘着剤組成物に、紫外線照射を行って粘着剤層を得ることができる。紫外線照射量は、例えば、500mJ/cm以上、5000mJ/cm以下とすることができる。
本発明の加飾シートは、常温(例えば、25℃)において適度な粘着力を有するとともに、高温(例えば、100~130℃)での接着時には優れた接着性を有し、さらに高温において長期間(例えば100℃7日間)性質を維持できる。したがって、本発明の加飾シートは、例えば、真空圧空成形による、航空機、自動車、建材の内外装、介護および医療分野、電化製品などの加飾に適用できる。
【0061】
<加飾構造体およびその製造方法>
本開示に係る加飾構造体(以下、本構造体とも記す)は、被着体に本発明の加飾シートを貼り付けることで形成できる。被着体としては、特に限定されず、様々な形状の被貼付物(例えば、三次元形状の成形品)を用いることができる。また、本発明の加飾シートは真空成形法および真空圧空成形法による被着体への貼り付けに好ましく用いることができる。真空成形法および真空圧空成形法は従来公知の手法を適宜適用できる。真空圧空成形法の一例としては、3次元表面加飾(Three Dimension Overlay Method:TOM成形)が挙げられる。
【0062】
加飾シートを貼り付ける被着体としては、より具体的には、例えば、表面層と加飾層の積層構成物を挙げることができる。
表面層は、加飾成形構造体の表面となる層であり、加飾シートの分野で従来公知のものを適宜使用できる。表面層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂およびポリ塩化ビニルなど、様々な樹脂から構成されることができる。また、表面層の露出面にエンボス加工を施してもよい。
加飾層は、加飾対象物を加飾するためのものであり、使用用途に応じて、様々な材料を用いることができる。加飾層は、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂および塩化ビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことができる。また、加飾層は、任意の要素として、意匠層、バルク層、接合層等の他の層を更に含んでいてもよい。加飾シートの層数、各層の種類、配置、厚み等は、適宜選択でき、特に限定されない。
【実施例
【0063】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本開示は、これらの例によって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。また、表中の配合量は、質量部である。
【0064】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のMwは、以下の方法により測定した。テトラヒドロフラン(THF)に溶解した共重合体(A)をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーに供し、Mwを特定した。測定装置は島津製作所製GPCのLC-GPCシステム「Prominence」(商品名)を用いた。重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。カラムは、東ソー社製、商品名:GMHXL4本、東ソー社製、商品名:HXL-H1本を直列に連結し、流量は1.0ml/分とし、カラム温度は40℃で測定を行った。
【0065】
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造例]
<共重合体(A-1)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記す)に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート40部、アクリル酸10部、酢酸ビニル50部、酢酸エチル65部、メチルエチルケトン(MEK)20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量70万の共重合体(A-1)溶液を得た。
【0066】
<共重合体(A-2)~(A-16)、(A-22)、(A’-1)~(A’-6)>
共重合体(A-2)~(A-16)、(A-22)、(A’-1)~(A’-6)の製造においては、表1および表2に記載した2-エチルヘキシルアクリレートの配合比、カルボキシ基を有するモノマー(a)、アルキル基の炭素数1~4のアルキル(メタ)アクリレート(b)、その他モノマーの種類およびこれらの配合比を変更した以外は共重合体(A-1)と同様の操作で、共重合体(A-2)~(A-16)、(A-22)、(A’-1)~(A’-6)を得た。
【0067】
<共重合体(A-17)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記す)に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート60部、アクリル酸10部、メチルアクリレート30部、酢酸エチル30部、MEK55部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量15万の共重合体(A-17)溶液を得た。
【0068】
<共重合体(A-18)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート60部、アクリル酸10部、メチルアクリレート30部、酢酸エチル40部、MEK45部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量30万の共重合体(A-18)溶液を得た。
【0069】
<共重合体(A-19)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート60部、アクリル酸10部、メチルアクリレート30部、酢酸エチル85部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量130万の共重合体(A-19)溶液を得た。
【0070】
<共重合体(A-20)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート60部、アクリル酸10部、メチルアクリレート30部、酢酸エチル65部、アセトン20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量150万の共重合体(A-20)溶液を得た。
【0071】
<共重合体(A-21)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート60部、アクリル酸10部、メチルアクリレート30部、酢酸エチル55部、アセトン30部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、酢酸エチルを加えて不揮発分40%に調節して、重量平均分子量180万の共重合体(A-21)溶液を得た。
【0072】
例示化合物は以下の表1、表2に具体的に示すが、これらに限られるものではない。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1、2の略号を以下に記載する。
[カルボキシ基を有するモノマー(a)]
AA:アクリル酸
βCEA:2-カルボキシエチルアクリレ―ト
[アルキル(メタ)アクリレート(b)]
MA:メチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
[その他のモノマー]
VAc:酢酸ビニル
STA:ステアリルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
NOA:n-オクチルアクリレート
【0076】
(実施例1)
前記製造例で得られた共重合体(A-1)100部(不揮発分換算)に対し、硬化剤(B)としてTETRAD-X(三菱ガス化学株式会社製)0.1部(不揮発分換算)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分30%に調整して、実施例1の粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を以下に示す測定方法および評価方法に従い、評価した。
ただし、実施例1は参考例である。
【0077】
<ゲル分率>
(シートサンプルの作製)
得られた粘着剤組成物を、片面に剥離処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に乾燥後の厚さが25μmになるよう塗布した。続いて、105℃で2分間乾燥させた後、当該塗膜を市販の厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り合わせ、23℃-相対湿度50%(50%RH)の雰囲気下で7日間養生し、シートサンプルを作製した。
(測定方法)
得られたシートサンプルから幅3mm長さ100mmの試験片を切り出して重量を測定した。試験片から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を300メッシュのステンレススチール製金網に貼り付け、試験片が剥がれないように金網を折りたたみ、試験片を包んだ状態で抽出液として酢酸エチルンに浸漬し、50℃ で24 時間静置した。浸漬後、金網を取り出し、少量の酢酸エチルで洗浄し、100 ℃ で30分間乾燥した後、重量を測定した。ゲル分率は下記式(1)により算出した。
(ゲル分率)={(W2-W0-W3)/(W1-W0-W3)}×100 (式1)
W0:金網の重量
W1:金網+試験片の重量
W2;金網+試験片の乾燥後の重量
W3:試験片の基材の重量
【0078】
<薄膜塗工性>
得られた粘着剤組成物を、片面に剥離処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に乾燥後の厚さが10μmになるよう塗布した際の、本発明の粘着剤組成物の塗工性を以下の評価基準に基づき、評価した。
AA:塗工速度30m/分および50m/分で塗工した際において、いずれも塗工面が平滑でスジの発生が無かった。非常に良好。
A:塗工速度30m/分で塗工した際は塗工面が平滑でスジの発生が無いが、塗工速度50m/分で塗工した際は塗工面に1個または2個のスジが発生した。良好。
B:塗工速度30m/分で塗工した際において、塗工面に1個以上3個未満のスジが発生した。実用可。
C:塗工速度30m/分で塗工した際において、塗工面に3個以上のスジが発生した。実用不可。
【0079】
<加飾シートの作製方法>
得られた粘着剤組成物を、片面に剥離処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に乾燥後の厚さが25μmになるよう塗布した。続いて、105℃で2分間乾燥させた後、市販の塩化ビニルフィルムに貼り合わせ、23℃-相対湿度50%(50%RH)の雰囲気下で7日間養生し、加飾シートを作製した。
【0080】
<貼り直し性>
前記で得られた加飾シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、TOM成形機(布施真空株式会社製、NGF成形機)の型枠に取り付けた際のアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂板への貼り直し性を以下の評価基準に基づき、評価した。
(評価基準)
AA:ABS樹脂版に剥離跡が残らず、剥離音も無かった。非常に良好。
A:ABS樹脂版に剥離跡は残っていないが、剥離音があった。良好。
B:ABS樹脂版に剥離跡が部分的に残った。実用可。
C:ABS樹脂版に剥離跡が全面残った。実用不可。
【0081】
<成形後の耐久性>
前記で得られた加飾シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、TOM成形機(布施真空株式会社製、NGF成形機)の型枠に取り付けた後、枠内に10cm×7cm×厚み5mmのABS樹脂板をセットした。その後、130℃でABS樹脂版を加飾シートで覆うように成形し、成形物を得た。その後、得られた成形物を23℃-50RH%雰囲気下で24時間放置後、成形物表面に5cm長さの切り込みを十字に入れ、高温(100℃および150℃)でそれぞれ168時間放置した後、浮きやズレについて以下の評価基準に基づき、評価した。
(評価基準)
AA:浮きや剥がれはなかったものの、1mm未満のズレが発生。非常に良好。
A:浮きや剥がれはなかったものの、1mm以上3mm未満のズレが発生。良好。
B:浮きや剥がれはなかったものの、3mm以上10mm未満のズレが発生。実用可。
C:浮きや剥がれが発生または、浮きや剥がれはなかったものの10mm以上のズレが発生。実用不可。
【0082】
<凹凸追従性>
前記で得られた加飾シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、TOM成形機(布施真空株式会社製、NGF成形機)の型枠に取り付けた後、枠内に幅7cm×長さ15cmのメラミン板をセットし、その上に幅30mm×高さ20mm×奥行40mmのABS樹脂板をセットした。その後、メラミン板およびABS樹脂板を加飾シートで覆うように成形し、成形物を得た。この成形後の表面状態について以下の評価基準に基づき、評価した。なお、下記評価基準における凹凸面とは、メラミン板の上にABS板を置くことで生じる段差部分を指す。
(評価基準)
AA: 全ての面で浮き、剥がれが見られない。非常に良好。
A:凹凸面で浮きは見られないが、端部で一部剥がれ発生。良好。
B:一部凹凸面で浮きが見られ、端部も剥がれ発生。実用可。
C:全ての凹凸面で浮きが発生し、全面で剥がれが発生。実用不可。
【0083】
(実施例2~30、比較例1~7)
粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および(A’)ならびに硬化剤(B)、粘着付与剤の種類や配合量を表3、表4に記載する内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~30、比較例1~7の粘着剤組成物および粘着シートを得た。評価結果を表3、4に示す。なお、例示化合物は表3、表4に具体的に示すが、これらに限られるものではない。
ただし、実施例4、12~30は参考例である。
【0084】
(比較例8)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記す)に、窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート90部およびアクリル酸10部を仕込んだ。さらに、光重合開始剤としてIrg651(Irgacure651、BASFジャパン株式会社製、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)を0.04部添加し、10分間攪拌しながら窒素置換した後、紫外線を照射してアクリル酸エステル部分共重合物を得た。得られたアクリル酸エステル部分共重合物に1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを0.08部、Irg651を0.1部添加し、有機溶剤(C)を含まない粘着剤組成物(A’-7)を調整した。
得られた当該粘着剤組成物(A’-7)を、架橋後の厚さが25μmとなるように剥離処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布後、更に剥離処理PETフィルムを貼り合わせ、続いて紫外線を照射し架橋させて、厚さ25μmの粘着層を得た。
当該粘着層から剥離処理PETフィルムの一方を剥離し、市販の厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り合わせてゲル分率測定用のシートサンプルを作製した。得られたシートサンプルを用いて前述のゲル分率測定方法と同様に、ゲル分率を測定した。
また、得られた粘着層から剥離処理PETフィルムの一方を剥離し、当該塗膜を市販の塩化ビニルフィルムに貼り合せ、加飾シートを得た。得られた加飾シートは前述の評価基準に基づき、評価した。結果は表5に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
表3、表4の略号を以下に記載する。
[硬化剤(B)]
TETRAD-X:エポキシ系硬化剤(三菱ガス化学株式会社製、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)
TETRAD-C:エポキシ系硬化剤(三菱ガス化学株式会社製、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン)
TDI-TMP:イソシアネート系硬化剤(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)
アルミキレートA:金属キレート系硬化剤(川研ファインケミカル社製、アルミニウムトリスアセチルアセトネート)
[粘着付与剤]
T-130:ヤスハラケミカル株式会社製テルペン系樹脂
D-125:荒川化学工業株式会社製ロジン系樹脂
FTR6100:三井化学株式会社製芳香族系炭化水素樹脂
【0089】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
【0090】
本発明の加飾シート用粘着剤組成物は、表3の実施例1~30に示すように、塗工性、貼り直し性、高温環境下での耐久性、凹凸追従性および成形品の外観に優れていた。これに対して表4および表5の比較例1~8は上述の物性が劣ることが分かった。
以上のように優れた性質を有する本発明の粘着剤組成物は、例えば、航空機、自動車、鉄道、建材内外装、介護および医療分野、電化製品などの加飾にも好適に使用でき、その使用用途は特に限定されない。
【要約】
【課題】成形品の加飾において、加熱前の貼り直し性や高温環境下における耐久性、凹凸追従性、成形品に優れた外観を付与できる、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、モノマー混合物は、2-エチルヘキシルアクリレート(a)およびカルボキシ基を有するモノマー(b)を含有し、2-エチルヘキシルアクリレート(a)の含有率が、モノマー混合物100質量%中40~97質量%であり、カルボキシ基を有するモノマー(b)の含有率が、モノマー混合物100質量%中2~20質量%であることを特徴とする、加飾シート用粘着剤組成物。ならびに、それを用いた加飾シート、加飾構造体および加飾構造体の製造方法。
【選択図】なし