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特許7385798ドーパオリゴペプチドの中間体の合成方法及びその使用、組成物及び製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ドーパオリゴペプチドの中間体の合成方法及びその使用、組成物及び製剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/46 20060101AFI20231116BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 47/51 20170101ALI20231116BHJP
   C07K 5/06 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
C07D317/46
A61K31/36
A61K38/05
A61P25/16
A61K45/00
A61K47/51
C07K5/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021548217
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2020075639
(87)【国際公開番号】W WO2020169012
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】201910119642.6
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521362302
【氏名又は名称】海南大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】劉中強
(72)【発明者】
【氏名】張小燕
(72)【発明者】
【氏名】胡碧煌
(72)【発明者】
【氏名】熊楓
(72)【発明者】
【氏名】範麗霞
(72)【発明者】
【氏名】何延▲みぃお▼
(72)【発明者】
【氏名】寧東華
(72)【発明者】
【氏名】傅開忠
(72)【発明者】
【氏名】陳思康
(72)【発明者】
【氏名】鐘仕博
(72)【発明者】
【氏名】万影
(72)【発明者】
【氏名】姚蕊
(72)【発明者】
【氏名】李夢迪
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102718739(CN,A)
【文献】国際公開第2013/017974(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0087622(US,A1)
【文献】特開昭50-082944(JP,A)
【文献】特表2015-505297(JP,A)
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2017年,Vol.129,p.110-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物IIを出発原料とし、有機化合物aを助溶媒とし、環化試薬及び強酸bの触媒作
用で化合物Iを得、反応式が下記の通りであるドーパオリゴペプチドの中間体の合成方法
であって、
【化1】

前記方法は、有機化合物aと化合物IIを反応溶媒に加え、不活性ガスの保護下で加熱還
流させた後、環化試薬及び強酸bを加え、吸収剤を加えて水及び揮発性生成物を吸収させ
、最終的に化合物Iを得る工程を含み、
うちに、前記有機化合物aは、アセトン、ベンゼン、トルエン、ジメチルベンゼン、エ
ーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ピリジン、無水アセトンと無水
ベンゼンの混合物を含み、
前記強酸bは、カカンフルスルホン酸、ベンゼン-1、2、3、4、5、6-ヘキサカルボン酸
、ハロゲン化水素、酢酸、及び強酸性イオン交換樹脂からなる群から選択される少なくと
も1種であり、
Rは、アミノ保護基であり
前記環化試薬は、アセトン、2,2-ジメトキシプロパン、2-メトキシプロペンからな
る群から選択される1種または複数種である、
ことを特徴とするドーパオリゴペプチドの中間体の合成方法。
【請求項2】
前記吸収剤は、無水塩化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、及
びモレキュラーシーブからなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項1に
記載の合成方法。
【請求項3】
前記化合物IIと2,2-ジメトキシプロパンとのモル比は、0.8~20であり、溶
媒の還流温度は、80~120℃であることを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の合成方法により得られた化合物Iの、ドーパの脂
肪酸誘導体、ドーパの脂肪酸複合体、パーキンソン病治療用徐放性プロドラッグの製造の
ための使用。
【請求項5】
パーキンソン病の患者に栄養を補充し且つドーパ薬を提供するための医薬組成物の合成
方法であって、1種または複数種の薬学的に許容される医薬賦形剤と、請求項1~3のい
ずれか一項に記載の合成方法により得られた化合物Iと、及び請求項1~3のいずれか一
項に記載の合成方法により得られた化合物Iを用いて合成した中間生成物又は最終生成物
又はこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1種または複数種とを含有
することを特徴とする医薬組成物の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品分野に属し、具体的にアセトニドで保護されたL-DOPA中間体の合
成方法の改良、並びにその生成物、使用及び組成物に関し、特にアセトニドで保護された
L-DOPA中間体と脂肪酸を用いたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体の製造及びパ
ーキンソン病治療用プロドラッグ製剤の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、人間の健康を深刻に脅かす2番目の神経変性疾患である。レボドー
パ(L-DOPA)は、半世紀以上にわたってパーキンソン病の治療のゴールドスタンダ
ードとなっている。新たなパーキンソン病治療薬の多くは、L-DOPAの構造改良に基
づいて開発される。また、L-DOPAは、希少な天然アミノ酸で、L-DOPAを含有
するオリゴペプチド、ポリペプチド又は高分子材料などは、幅広い医療用途がある。
【0003】
しかしながら、L-DOPAは、いくつかの欠点を有する。例えば、L-DOPAのカ
テコール基が空気中の酸素やその他の酸化剤で酸化されやすいため、L-DOPAの化学
誘導体化の製造において、適切な保護基(PG)でそのカテコールを保護する必要がある
。多くの文献では、アセトニド(acetonide)がドーパへ非常に適切な保護基で
あると示されている。
【0004】
Fmocによるポリペプチドの固相合成法は、汎用性が良く、操作が容易であり、価格
が低く、幅広い用途に適用できるという利点により、ポリペプチド製造の一般的な手段と
なっている。Fmoc-DOPA(acetonide)-OHは、固相法を用いてドー
パを含有するオリゴペプチド、ポリペプチド及び複合体を合成するための最も重要中間体
である。L-DOPAは、生体利用度が低すぎ(1~3%)、有効血中濃度の維持時間が
短く(50min)、また長期間の大量投与により毒性と副作用が発生することから、そ
の1日の投与量を減らし、その生体利用率を上げるための様々な手段が使用されている。
例えば、代謝酵素阻害剤を含有する複合製剤とする。例えば、マドパー、シネメット(L
-DOPAの半減期が約90min)およびエンタカポン(135min)がある。L-
DOPA含有オリゴペプチド誘導体がドーパを適切に保護することから、ドーパの消化管
と血液循環中での代謝が抑えられ、またオリゴペプチドが小腸壁上のオリゴペプチドチャ
ネルから直接吸収されることから、ドーパの吸収率が向上する。研究によると、異なるア
ミノ酸で変性されたドーパ直鎖ジペプチドは、肝臓ホモジネート中での抗分解能が大きく
異なる。例えば、H-DOPA-Asp-OHの半減期は約174minであるが、H-
DOPA-Met-OHの半減期はわずか16minである。
【0005】
タンパク質、脂質及び糖質は人体に欠かせない3つの栄養素である。パーキンソン病の
患者は、長期間の薬物投与により栄養不良になりやすく、栄養不良がさらに薬物治療の効
果を弱める。よって、どうやってパーキンソン病の患者に栄養バランスを取らせるか非常
に重要である。研究によると、人間の小腸に素早く吸収できるオリゴペプチドチャネルが
ある。よって、患者に様々なアミノ酸で構成されるドーパ含有オリゴペプチドを投与すれ
ば、薬物投与と共にタンパク類栄養の補充もでき、一石二鳥のこととなる。脂肪酸及びそ
の誘導体は、コール酸とカイロミクロンを形成する或いは自由に拡散することにより、小
腸の絨毛膜を通過して人体に吸収される。特許WO2006119758A2、WO20
10103273A3などには、L-DOPAと脂肪酸及びその類似物とから複合体を形
成することが提案され、マウスの脳中のドーパミンの濃度・持続時間が対照群よりも優れ
ることは実験により発見されたが、ドーパ含有オリゴペプチドと脂肪酸の複合体について
の研究していない。直鎖ジペプチドは、最も小さいオリゴペプチドであり、性質が単一の
アミノ酸とは大きく異なる。一部のジペプチドは、自己組織化して規則正しい構造を形成
する。ヤン・ヨンガンの研究グループのリン・シューウェイ博士は、脂肪酸とオリゴペプ
チドによって形成された脂肪酸ジペプチドおよび脂肪酸トリペプチドが水相または有機相
の中で自己組織化してゲル化できると指摘している。脂肪酸とドーパオリゴペプチドで構
成される医薬品を投与することで、患者への薬物投与と共に脂肪酸とアミノ酸を補充する
ことができる。
【0006】
ドーパ複合製剤の経口投与は、1日中のL-DOPAの血中濃度に大きな変動を引き起
こすため、パーキンソン病の病状を安定に制御することができない。また、当該ドーパミ
ン作動性ニューロンへのパルス的な刺激は、そのアポトーシスの主な原因となる。特に、
パーキンソン病後期の患者は、運動性が悪く嘔吐が抑えられない障害期にいるので、経口
投与による治療効果が不良となる。そのため、アッヴィ社のゲル製剤Duopaは非常に
有利である。当該製剤は、高分子材料であるカルボキシメチルセルロース(ナトリウム)
でL-DOPAとカルビドーパ(4:1)を分散し包んで形成したヒドロゲルである。ゲ
ル形成後、L-DOPAの血中濃度を安定に維持するように、胃から小腸へのチューブを
介して注射ポンプでゲル剤をゆっくりで持続的に投与する(16h)。
【0007】
よって、シネメットまたはDuopa中のドーパの代わりにドーパを含有するオリゴペ
プチド又は脂肪酸オリゴペプチド誘導体を用いて複合製剤又はゲル製剤を形成することで
、生体利用度がより高く、血中濃度がより安定する新規のパーキンソン病治療薬を得るこ
とができる。
【0008】
L-DOPAのカテコール基が酸化されやすいため、L-DOPAの化学誘導体化の製
造において、適切な保護基(PG)で側鎖を保護する必要がある。Fmoc-DOPA(
acetonide)-OH(4)は、Fmocによりドーパ含有オリゴペプチドを固相
合成するための重要中間体である。
【0009】
米国特許US8227628には、L-DOPAをアセトニドで保護している時にPi
ctet-Spenglerと呼ばれる競合反応を伴うことが開示され、Fmoc-DO
PA(acetonide)-OHの合成方法が2つ提案されている。当該特許の利点は
、アセトニドで保護されるドーパ及びドーパミン系誘導体の多くを製造できる系統的で汎
用な方法を提供し、各工程の反応収率が比較的に高く、生成物、特に完全に保護された中
間体の分離精製が簡単であり、例えば、Tfa-ドーパ(acetonide)-Ome
は、構造が安定し、精製が容易であり(単純な再結晶)、様々な有用な中間体に変換でき
る点である。当該特許の欠点は、アセトニドで保護されるL-DOPA誘導体を製造する
系統的で汎用な方法を提供しようとするが、特定の目的化合物の合成に最適な方法でない
場合がある点である。例えば、当該方法でFmoc-DOPA(acetonide)-
OHを製造する場合、アミノ保護基を置き換える必要がある。これは4~5つの工程で完
了する。まず、Tfa-又はPhth-でL-DOPAのアミノ基を保護し、メチルエス
テルでL-DOPAのカルボキシ基をカバーし、次いで、TsOHを触媒とし、ベンゼン
中で還流させ、2,2-ジメトキシプロパン(DMP)でアセトニド環化反応を行い、最
終的にPhth-又はTfaを除去し、Fmoc-OSu試薬でFmoc保護基に置き換
え、目的最終生成物を得る。
【0010】
特許US8227628には、酸・塩基との直交による水素化脱保護の方法で、ベンジ
ル基でドーパのカルボキシ基を保護することが提案されている。特許WO2013/16
8021A1には、アセトニド環化に類似する方法(即ち、TsOHを触媒とし、ベンゼ
ン中で還流させ、塩化カルシウムでMeOHを吸収する方法)を用いて、アセトニドで保
護されたカルビドーパ(carbidopa)誘導体を製造し、これを医薬品中間体又は
変性神経疾患の潜在的な治療薬として使用することが開示されている。
【0011】
中国特許CN102718739Aには、米国特許出願US2010/0087622
A1に基づいて、2つの工程でFmoc-DOPA(acetonide)-OHを製造
することが提案されている。当該方法の利点は、最初の工程でFmoc-DOPA-OH
を合成した後、同様にDMPでアセトニド官能基を提供するが、TsOHピリジン塩(T
sOH-Pyr)を触媒とし、THF中での長時間還流によりアセトニド環化反応を行う
とのたった2つの工程の反応で合成できる点である。当該方法の欠点は、適切な化学平衡
移動技術を使用しないため、アセトニド反応が不完全であり、大量の反応物Fmoc-D
OPA-OHが残され、収率があまり良くなく、製品の分離精製が困難である点である。
【0012】
アルデヒド/ケトンとカテコールからアセタール/アセトニドを形成する反応は、可逆
反応であり、その順反応と逆反応の反応速度に大きな差がなく、平衡定数値が高くないた
め、収率を上げて精製の困難さを下げるために、反応系から副生成物である水/MeOH
を素早く効果的に除去することが非常に重要である。水-ベンゼン、MeOH-ベンゼン
、水-THF、MeOH-THFの2相の相図を比較すると、ベンゼンは、THFよりも
MeOH/水を運ぶ能力が高く、低濃度のMeOH/水であっても反応系から素早く留出
されることができるため、反応物の残留量が低減され、目的生成物の收率が上がる。カテ
コールにアセトニド基を提供する一般的な試薬としては、アセトン(反応活性が最も低い
)、DMP(活性が適切)、2-メトキシプロペン(2MT、活性が最も高い)が挙げら
れる。また、DMPは水と反応してアセトンとMeOHを生成するため、DMPでアセト
ニド環化反応を行う場合、可能な限りに水を除去する必要がある。無水塩化カルシウムは
、水とMeOHの両方を吸収できるため、副生成物を除去するための最良の吸着剤となる
【0013】
従来技術における多くの問題点に鑑みて、反応条件が穏和であり、操作プロセスが簡単
であり、製品の收率が高く、製品の純度が高く、製造コストが低く、産業規模に適するレ
ボドーパ含有重要な医薬品中間体の製造方法を開発することは、現在解決すべき課題であ
る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の1つの目的は、重要な医薬品中間体の合成方法、即ちドーパ含有オリゴペプチ
ドの重要中間体(例えば、Fmoc-DOPA(acetonide)-OH、Fmoc
-DOPA(cyclohexanonide)-OH)の合成方法を提供することであ
る。本発明の利点は、たった2つの工程で完了することである。しかも、収率が高く、工
業的に製造することが可能となる。
【0015】
本発明の別の目的は、ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体である中間体の使用を提供
することである。新たな反応工程でパーキンソン病治療用徐放性プロドラッグ、具体的に
ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体およびドーパの脂肪酸誘導体を合成する。
【0016】
本発明のさらなる別の目的は、ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体及びドーパの脂肪
酸誘導体の製剤的特性に関する研究を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の技術手段は、具体的に下記の通りである。
【0018】
化合物IIを出発原料とし、有機化合物aを助溶媒とし、酸bの接触還元で化合物Iを
得る、反応式が下記の通りであるドーパオリゴペプチドの重要中間体の合成方法。
【0019】
【化1】
【0020】
有機化合物aと化合物IIを反応溶媒に加え、不活性ガスの保護下で加熱還流させた後
、環化試薬及び強酸bを加え、吸収剤を加えて水及び揮発性生成物を吸収させ、最終的に
Fmoc-DOPA(acetonide)-OHである化合物Iを得る。
【0021】
前記有機化合物aは、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジ
クロロベンゼン、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルブチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン又はピリジンなどの無水溶媒であり、好ましくは無水アセトンと無水ベン
ゼンの混合物である。
【0022】
前記酸bは、TsOH、カンファースルホン酸、メリット酸、ハロゲン化水素、トリフ
ルオロ酢酸、酢酸、及び強酸性イオン交換樹脂からなる群から選択される1種または複数
種であり、好ましくはTsOHである。
【0023】
前記環化試薬は、アセトン、2,2-ジメトキシプロパン(DMP)、2-メトキシプ
ロペン(2MT)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノンなどのケトア
ルデヒド誘導体からなる群から選択される1種または複数種であり、好ましくはDMP、
シクロヘキサノンである。
【0024】
Rとして、アミノ保護基が挙げられるが、これに限定されない。Rとして、Phth-
、TCP-、Dts-、Tfa-、Ac-、Aloc-、MeCO-、EtCO-、
Boc-、Fmoc-、Teoc-、Troc-、SES-、Tr-が挙げられるが、こ
れらに限定されない。好ましくはFmoc-である。以下、Fmoc-を例とする。
【0025】
揮発性副生成物の吸収剤として、主に、水とMeOHを素早く吸収できる無水塩化カル
シウム(CaCl)を使用するが、その他の吸収剤を添加してもよい。その他の吸収剤
として、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブなどが挙げら
れるが、これらに限定されない。吸収剤を収容する装置は、ソックスレー抽出器のサンプ
ルシリンダー、砂コアを備えた定圧滴下漏斗のいずれでもよい。揮発性副生成物の除去は
、常圧蒸留又は減圧蒸留によって行ってもよく、流体ポンプで無水溶媒及び環化試薬を追
加することで行う。好ましくは、ソックスレー抽出器のサンプルシリンダーに無水塩化カ
ルシウムを充填することである。
【0026】
前記化合物IIとDMPとのモル比は、0.8~20であり、好ましくは2.5である
。前記化合物IIとシクロヘキサノンとのモル比は、1~50であり、好ましくは10で
ある。反応温度は、溶媒の還流温度、即ち80~120℃の範囲に制御する。
【0027】
前記化合物IIの製造プロセスは下記の通りである。
【0028】
(1)Na・10HO及び水を1000mlの三口フラスコに加え、均一
に攪拌する。
【0029】
(2)窒素、アルゴンなどの不活性ガスを30分間流した後、L-DOPA及びNa
COを加え、次いでFmoc-OSuを含有するTHFを滴下し、攪拌を続ける。2N
のHClで溶液をpH=3に調整し、Naを加え、回転蒸発で濃縮した後、E
tOAcで抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、
少量になるまで回転蒸発し、石油エーテルを加え、化合物IIを得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、従来技術に比べて、下記の技術的効果を奏する。
【0031】
2つの工程でFmoc-DOPA(acetonide)-OHを合成できることから
、カルボキシ基の保護と脱保護の2つの工程の反応を避けることができる。
【0032】
(1)Fmoc-DOPA-OHのベンゼン中での溶解度が低いため、無水アセトンと
無水ベンゼンを溶媒とする。これにより、ベンゼンの優れた水とMeOHを運ぶ能力を十
分利用できると共に、アセトンを助溶媒とすることで反応物の溶解度を向上させることが
できる。
【0033】
(2)弱酸性のTsOHトリメチルピリジン塩の代わりに、TsOHやカンファースル
ホン酸などの強酸を触媒とすることで、反応速度を上げ、反応時間を短縮し、副生成物の
生成を低減することができる。
【0034】
(3)CaClを用いて反応系中の水及びMeOHを吸収することで、反応物Fmo
c-DOPA-OHが完全に反応することができ、生成物に混入されることがないため、
生成物の分離が易くなる。本発明では、本方法による主な副生成物を分離して同定したと
ころ、Fmoc-DOPA(acetonide)-Omeであると確認され、ポリペプ
チドの固相合成に影響を与えず除去されなくても良いから、製品の精製がより易くなる。
【0035】
(4)本発明の利点は、たった2つの工程で完了できることである。しかも、收率が高
く、コストが低減され、反応が穏和であり、高圧や高温などの厳しい反応条件を必要とせ
ず操作が簡単であり、後処理プロセスで結晶を繰り返すなどの工程を必要としない。
【0036】
本発明の別の目的は、ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体である中間体の使用を提供
することである。前記化合物Iを用いて新たな中間生成物又は最終生成物を合成すること
で、新たな反応工程及び合成方法を提供でき、またパーキンソン病治療用徐放性プロドラ
ッグ、具体的にドーパ含有オリゴペプチド、ドーパオリゴペプチドと脂肪酸の複合体(脂
肪酸オリゴペプチド)及びドーパの脂肪酸誘導体を合成できる。
【0037】
前記最終生成物の1つは、ドーパ含有脂肪酸誘導体である。
【0038】
【化3】
【0039】
式中、Rは、C12~C30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸を表し、好まし
くはパルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸
、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸であり、より好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸
、ミリスチン酸からなる群から選択される1種である。
【0040】
具体的な工程は、下記の通りである。
a)CTC樹脂をSOCl/DCMに加えて活性化した後、DCMで洗浄する。
b)Fmoc-DOPA(acetonide)-OHをDCMに溶かし、DIEAを
加え、混ぜた後、固相合成管に注ぐ。
c)DIEA/MeOH/DCMでキャッピングした後、20%の4-メチルピペリジ
ン/DMFでFmocを除去する。
d)ステアリン酸クロリドを適量のDCMに溶かし、DIEAを加え、混ぜた後、固相
合成管に注ぎ、5~16h揺り動かす。
e)ニンヒドリンで反応が完了したことを確認した後、2%のTFA/DCM溶液で樹
脂を濯ぎ、保護されたドーパ-ステアリン酸複合体を得る。
f)使用時に、TFA/TIS/HO(95/2.5/2.5)でアセトニド保護を
除去し、ステアリン酸とL-DOPAの複合体を製造する。
【0041】
前記最終生成物の1つは、ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体である。
【0042】
【化2】
【0043】
式中、Rは、C12~C30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸を表し、例えば
、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、リノール酸、
オレイン酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸であり、より好ましくはパルミチン酸、ス
テアリン酸、及びミリスチン酸からなる群から選択される1種である。Rは、人体と良
好な適合性を有するL型またはD型アミノ酸の側鎖であり、20種類の一般的なアミノ酸
、β-アラニン、タウリン、シトルリンが挙げられるが、これらに限定されない。好まし
くはAspである。L-DOPAは、ジペプチドのN末端に位置してもよく、ジペプチド
のC末端に位置してもよい。下記図では、N末端を例とする。Fmoc-によるポリペプ
チドの固相合成法により目的生成物を製造し、合成スキームが下記図に示される。
【0044】
[化4]













【0045】
工程は、下記ようにまとめる。
【0046】
CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体Fmoc-DO
PA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OHを反応物とし
、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFmoc-の脱保
護剤とし、酸クロリド、酸無水物または活性化エステル(BOP/HOBt)を活性化さ
れた脂肪酸とし、2%のTFAを用いて合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体
を樹脂から切り出し、側鎖が保護された中間生成物を得る。使用時に、95%のTFAを
用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複合体を得る。
【0047】
前記技術により、本発明の前記C12~C30の直鎖または分岐鎖の脂肪酸を合成する
。具体な前記化合物は下記の通りである。
【0048】
[表1]脂肪酸による変性したL-DOPA含有アミノ酸誘導体の略語
【0049】
本発明のさらなる別の目的は、医薬組成物を提供することである。かかる医薬組成物は
、前記化合物Iまたはそれを用いて合成した脂肪酸誘導体、脂肪酸複合体、或いは化合物
Iを用いて合成した新たな中間生成物又は最終生成物又はこれらの薬学的に許容される塩
と、1種または複数種の薬学的に許容される医薬賦形剤とを含有する。
【0050】
本発明のさらなる別の目的は、パーキンソン病の患者に栄養を補充し且つドーパ薬を提
供するための医薬品の組み合わせを提供することである。かかる医薬品の組み合わせは、
ドーパ含有オリゴペプチド、脂肪酸、ドーパアミノ酸複合体、脂肪酸オリゴペプチドの如
何なる組み合わせであり、好ましくは化合物I、ドーパジペプチド、脂肪酸、ドーパアミ
ノ酸複合体を含有する如何なる組み合わせ、又は、脂肪酸とドーパ含有オリゴペプチドの
複合体、化合物Iを用いて合成した中間生成物又は最終生成物又はこれらの薬学的に許容
される塩と、1種または複数種の薬学的に許容される医薬賦形剤とを含有する組み合わせ
である。
【0051】
本発明のさらなる別の目的は、製剤を提供することである。かかる製剤は、ドーパ含有
オリゴペプチド、脂肪酸オリゴペプチドをそれ自体で、又は医薬品用高分子材料との複合
により形成されたパーキンソン病治療用プロドラッグ製剤であり、ドーパ代謝酵素阻害剤
を配合してもよいパーキンソン病治療用プロドラッグ製剤である。
【0052】
前記製剤は、好ましくはゲル剤、注射剤又は経口剤のいずれかである。
【0053】
本発明は、従来技術に比べて、下記の顕著な効果を奏する。
【0054】
(1)ゲル検出を行ったところ、下記のことが分かる。パーキンソン病治療薬の設計に
新たなアイデアを提供することができる。開発された最終生成物について、FDD-12
はゲル化できず、FDD-16、FDD-18、FDD-14のいずれも安定的にゲル化
できる。特に、FDD-16とFDD-14は、ゲル化の濃度範囲がより広く、更なる製
剤の実験に適する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】FDD-16のゲル化状態の同定図を示す。
図2】FDD-18のゲルの電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3】FDD-14のゲルの電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明者らは、本発明の技術手段の実現可能性を検証するために、重要中間体、最終生
成物の合成方法及び検出手段に関する研究を行った。なお、本発明の重要中間体、最終生
成物の合成方法及び検出手段は、本発明の代表的な最終生成物、合成方法及び検出手段で
ある。本発明に含まれるその他の最終生成物、合成方法及び検出手段は、スペースの制限
でここで省略する。
【実施例
【0057】
実施例1 Fmoc-DOPA(Acetonide)-OHの合成は下記の通りである。
【0058】
【化5】

【0059】
a.14.3gのNa・10HO(37.5mmol)、200mlの水
、磁気攪拌子を1000mlの三口フラスコに加えた。アルゴンガスを30分間流した後
、14.8gのL-DOPA(75mmol)と8.0g(75mmol)のNaCO
を加えた。次いで、200mlのFmoc-OSu(27.8g、90mmol)TH
F液を滴下し、さらに12時間の攪拌を続けた。2NのHClで溶液をpH=3に調整し
、10~20gのNaを加え、回転蒸発で濃縮した後、EtOAcで抽出した
。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、少量になるまで回
転蒸発し、石油エーテルを加え、化合物5(白色の粉末、28.9g、91%)を得た。
HRMS:[M+H]+ Calcd. 420.1442、Found420.144
8。
【0060】
100mlの二口フラスコに、2.1g(5mmol)の化合物5を反応物とし、Ca
Clを吸収剤とし、HPLCを検出方法とし、工程bの最適な反応条件、即ち、主溶媒
、助溶媒、アセトニド提供用試薬、DMPのモル数、反応温度、反応時間、触媒をスクリ
ーニングした。実験によると、ベンゼン、トルエン、アセトン、THF又はDMFを溶媒
とする場合、ベンゼン中での反応効果が一番良く(副生成物:不純物6)、トルエン中で
の反応効果が二番目良く(副生成物:不純物7)、THFとDMFの中では化合物Iが殆
ど検出されなかったことがわかる。化合物5はベンゼン中での溶解度が低いため、助溶媒
であるアセトンを添加すると、化合物Iの収率が一倍上がるが、THFとDMFを添加す
る場合は検出されないと確認した。触媒について、強酸性・低酸化性触媒の効果が良く、
TsOH>カンファースルホン酸>TFA>HOAcであると確認した。アセトニド基の
提供について、アセトンの活性が低すぎ、DMPの活性が適切であり、2MTの活性が高
すぎて低温でもドーパのカルボキシ基をメチルエステル(不純物8)に変換させることが
できる。DMPの使用量について、2倍未満の当量では、反応が完全に進行できず、10
倍以上の当量では、ドーパのカルボキシ基がメチルエステル化される割合は高くなり、2
.5倍のモル当量が最適である。
【0061】
【化6】
【0062】
b.100mlの二口フラスコに、2.1g(5mmol)の化合物5、5mlの無水
アセトン及び70mlの無水ベンゼンを加えた。アルゴンガス下で、15分間加熱還流し
た後、1.5mL(12.5mmol)のDMP及び20mgのTsOHを加え、無水C
aCl(ソックスレー抽出器、又は砂コアを備えた定圧滴下漏斗に充填されたもの)で
反応系中のHO/MeOHを吸収した。塩化第二鉄による検出法で反応の進行をモニタ
ーし、約1~2時間で反応が完了した。冷却後、短いシリカゲルカラムで溶液を濾過し、
DCM/EtOAcでシリカゲルカラムを洗浄し、ろ過液を合わせ、回転蒸発した後、淡
黄色の固体が得られ、EtOAc/石油エーテルで再結晶し、目的化合物4を得た(2.
0g、89%)。
【0063】
化合物6:HRMS [M+H]+ Calcd. 474.1911、Found 474.1912. 1HNMR δ 7.89-7.84 (m、
2H)、7.64 (m、2H)、7.43-7.39(m、2H)、7.34-7.27(m,2H)、6.765(d、J= 1.7Hz、1H)、6.
698 (d、J=3.9Hz、1H)、6.647(dd、J=3.9Hz、J’=1.7Hz、1H)、4.242-4.180(m、4H)、3.6
2 (s、3H)、2.954(dd、J=13.8、J’=4.9Hz、1H)、2.791(dd、J=13.8、J’’=10.4Hz、1H)
、1.577(s、6H). 13CNMR δ 172.35、155.89、146.71、145.48、143.70、140.70、140.67
、130.53、127.61、127.04、125.22、125.16、121.65、120.10、117.60、109.25、107.75
、65.63、55.70、51.90、36.11、25.48.
【0064】
化合物7:HRMS [M+H]+ Calcd. 500.2068、Found 500.2063. 1HNMR δ 7.88(d、2H)、7
.66(m、2H)、7.65(s、1H)、7.40(m,2H)、7.30(m,2H)、6.79(s、1H)、6.71(m、2H)、5.46(
m、1H)、4.16(m、4H)、2.99(dd、J= 13.9、4.4Hz、1H)、2.77(dd、J= 13.9、10.6Hz)、1.
73(m、3H)、1.68(m、3H)、1.63(d、J=5.1Hz、3H) . 13CNMR δ 173.38、155.93、146.53
、145.26、143.76、143.72、140.68、140.65、139.23、131.15、127.60(CH)、127.06(CH)
、125.32(CH)、125.21(CH)、124.59(CH)、121.72(CH)、120.08(CH)、116.10、109.22(CH)
、107.68(CH)、65.64(CH2)、55.74(CH)、46.58(CH2)、36.21(CH2)、26.12(CH3)、26.10(C
H3)、26.06(CH3)、18.87(CH3). HSQC: 120.08(7.88)、125.32(7.66)、125.21(7.66)、127
.60(7.40)、127.06(7.30)、109.22(6.79)、121.72(6.71)、107.68(6.71)、124.59(5.46)
、18.87(1.73)、26.12(1.68)、26.10(1.68)、26.06(1.63). HMBC 5.46(116.10、26.12-10
、18.87)、1.73(26.12-10、124.59、139.23)、1.68(18.87、139.37)、1.63(116.10)
【0065】
化合物8:HRMS [M+H]+ Calcd. 434.1598、Found 434.1603. 1HNMR δ 8.78(1H)、8.24
(1H)、7.88(s,1H)、7.87(s、1H)、7.82(1H)、7.66(m、2H)、7.41(m,2H)、7.32(m,2H)、6.
64(d、J= 2.0Hz、1H)、6.62(s、1H)、6.49(dd、J= 8.0、2.0Hz、1H)、4.25-4.12(m、4H
)、3.61(s、3H、OCH3)、2.86(dd、J=13.8、5.3Hz、1H)、2.72(dd、J=13.8、9.8Hz、1H).
13CNMR δ 172.60、155.95、145.01、143.96、143.77、140.73、128.17、127.68、127.14
、125.32、125.27、120.15、119.85、116.43、115.40、65.71、55.98、51.89 (OCH3),46.
60、36.06.
【0066】
(削除)
【0067】
(削除)
【0068】
(削除)
【0069】
(削除)
【0070】
(削除)
【0071】
(削除)
【0072】
(削除)
【0073】
(削除)
【0074】
(削除)
【0075】
(削除)
【0076】
(削除)
【0077】
(削除)
【0078】
実施例6 ドーパの脂肪酸誘導体の製造(ラウリン酸とL-DOPAの複合体の合成)
【0079】
合成スキームは、下記図に示される。
【0080】
【化7】
【0081】
a)5gのCTC樹脂をSOCl/DCM(33ml、1:10)に加えて5~16
h活性化した後、DCMで5回洗浄した。Fmoc-DOPA(acetonide)-
OH(4.14g、9mmol)をDCMに溶かし、6.6mlのDIEAを加え、混ぜ
た後、固相合成管に注いだ。
【0082】
b)DIEA/MeOH/DCM(5:15:80)でキャッピングした後、20%の
4-メチルピペリジン/DMFでFmocを除去した。1.24mLのラウリン酸クロリ
ドを適量のDCMに溶かし、1.29mLのDIEAを加え、混ぜた後、固相合成管に注
ぎ、5~16h揺り動かした。ニンヒドリンで反応が完了したことを確認した後、2%の
TFA/DCM溶液で樹脂を濯ぎ、保護されたドーパ-ラウリン酸複合体を得た。
【0083】
c)使用時に、TFA/TIS/HO(95/2.5/2.5)でアセトニド保護を
除去し、ラウリン酸とL-DOPAの複合体であるFD-12を製造した。HRMS [
M+H]、計算値380.2431、実験値380.2435。
【0084】
実施例7 ドーパの脂肪酸誘導体の製造(ステアリン酸とL-DOPAの複合体の合成
【0085】
【化8】
【0086】
a)5gのCTC樹脂をSOCl/DCM(33ml、1:10)に加えて5~16
h活性化した後、DCMで5回洗浄した。Fmoc-DOPA(acetonide)-
OH(4.14g、9mmol)をDCMに溶かし、6.6mlのDIEAを加え、混ぜ
た後、固相合成管に注いだ。
【0087】
b)DIEA/MeOH/DCM(5:15:80)でキャッピングした後、20%の
4-メチルピペリジン/DMFでFmocを除去した。1.24mLのステアリン酸クロ
リドを適量のDCMに溶かし、1.29mLのDIEAを加え、混ぜた後、固相合成管に
注ぎ、5~16h揺り動かした。ニンヒドリンで反応が完了したことを確認した後、2%
のTFA/DCM溶液で樹脂を濯ぎ、保護されたドーパ-ステアリン酸複合体を得た。
【0088】
c)使用時に、TFA/TIS/HO(95/2.5/2.5)でアセトニド保護を
除去し、ステアリン酸とL-DOPAの複合体であるFD-18を製造した。HRMS
[M+H]、計算値464.3371、実験値464.3373。
【0089】
実施例8 ドーパの脂肪酸誘導体の製造(ラウリン酸とL-DOPA-L-Aspの複
合体の合成)
【0090】
Fmoc-によるポリペプチドの固相合成法を用いて目的生成物を製造した。合成スキ
ームは、下記図に示される。
【0091】
【化9】
【0092】
まとめると、CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体F
moc-DOPA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OH
を反応物とし、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFm
oc-の脱保護剤とし、ラウリン酸クロリドを活性化された脂肪酸とし、2%のTFAを
用いて合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体を樹脂から切り出し、側鎖が保護
された中間生成物を得た。
95%のTFAを用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複
合体であるFDD-12を得た。HRMS [M+H]、計算値495.2700、実
験値495.2701。
【0093】
実施例9 ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体の製造(パルミチン酸とL-DOPA
-L-Aspの複合体の合成)
【0094】
Fmoc-によるポリペプチドの固相合成法を用いて目的生成物を製造した。合成スキ
ームは、下記図に示される。
【0095】
【化10】
【0096】
CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体Fmoc-DO
PA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OHを反応物とし
、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFmoc-の脱保
護剤とし、BOP/HOBt/DIEAを用いてパルミチン酸を活性化し、2%のTFA
を用いて合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体を樹脂から切り出し、側鎖が保
護された中間生成物を得た。
【0097】
95%のTFAを用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複
合体であるFDD-16を得た。HRMS [M+H]、計算値551.3317、実
験値551.3327。
【0098】
実施例10 ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体の製造(ミリスチン酸とL-DOP
A-L-Aspの複合体の合成)
【0099】
Fmoc-によるポリペプチドの固相合成法を用いて目的生成物を製造した。合成スキ
ームは、下記図に示される。
【0100】
【化11】
【0101】
CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体Fmoc-DO
PA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OHを反応物とし
、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFmoc-の脱保
護剤とし、BOP/HOBt/DIEAを用いてミリスチン酸を活性化し、2%のTFA
を用いて合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体を樹脂から切り出し、側鎖が保
護された中間生成物を得た。
【0102】
95%のTFAを用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複
合体であるFDD-14を得た。HRMS [M+H]、計算値523.3014、実
験値523.3015。
【0103】
実施例11 ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体の製造(ステアリン酸とL-DOP
A-L-Aspの複合体の合成)
【0104】
Fmoc-によるポリペプチドの固相合成法を用いて目的生成物を製造した。合成スキ
ームは、下記図に示される。
【0105】
【化12】

【0106】
まとめると、CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体F
moc-DOPA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OH
を反応物とし、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFm
oc-の脱保護剤とし、ステアリン酸クロリドを活性化された脂肪酸とし、2%のTFA
を用いて合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体を樹脂から切り出し、側鎖が保
護された中間生成物を得た。
【0107】
95%のTFAを用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複
合体であるFDD-18を得た。HRMS [M+H]、計算値579.3640、実
験値579.3635。
【0108】
実施例12 ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体の製造(オレイン酸とL-DOPA
-L-Aspの複合体の合成)
【0109】
Fmoc-によるポリペプチドの固相合成法を用いて目的生成物を製造した。合成スキ
ームは、下記図に示される。
【0110】
【化13】
【0111】
まとめると、CTC樹脂を固相材料とし、アセトニドで保護されたレボドーパ中間体F
moc-DOPA(acetonide)-OHとFmoc-Asp(OtBu)-OH
を反応物とし、4-メチルピペリジン(4-methylpiperidine)をFm
oc-の脱保護剤とし、酸無水物を活性化されたオレイン酸とし、2%のTFAを用いて
合成されたドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体を樹脂から切り出し、側鎖が保護された
中間生成物を得た。
95%のTFAを用いて中間生成物の側鎖保護基を素早く除去し、目的脂肪酸ドーパ複
合体UFDD-18を得た。HRMS [M+H]、計算値563.3460、実験値
563.3435。
【0112】
検証用実施例
【0113】
ア、有機溶媒中でのドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体及びドーパ含有脂肪酸誘導体
のゲル化の検出
【0114】
1.ドーパ含有ジペプチドの脂肪酸複合体のゲル化の検出
【0115】
1.1 FDD-16のゲル化濃度の考察と検出
【0116】
1)6本の2mLの遠心管にそれぞれ40mgのFDD-16を加え、各遠心管に1m
Lの有機溶媒(それぞれ、MeOH、エタノール、トルエン、THF、DMSO、DMF
)を加えて母液を調製した。
【0117】
2)9本の2mlの遠心管にそれぞれ50μLの母液を加え、各遠心管に有機溶媒(そ
れぞれ、MeOH、エタノール、トルエン、THF、DMSO、DMF)と蒸留水の体積
比がそれぞれ1:9、2:8、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3、8:2、9:
1となるように対応体積の蒸留水を加え、ゲル化の速度と濃度を観察した。各体積比の実
験は、それぞれ3回行った。
【0118】
1.2 その他の脂肪酸ジペプチドのゲル化濃度の考察と検出
【0119】
FDD-16のゲル化濃度の考察と検出の方法に従って行った。
【0120】
1.3 実験結果
【0121】
その結果、FDD-12はゲル化できないため、炭素数が12個未満の脂肪酸でゲル化
できないと推定され、FDD-16、FDD-18、FDD-14のいずれも安定的にゲ
ル化でき、FDD-16とFDD-14がゲル化の濃度範囲が広いことがわかった。具体
的には、以下の通りである。
【0122】
[表1]ドーパ含有脂肪酸ジペプチドのゲル化(1)
【0123】
[表2]ドーパ含有脂肪酸ジペプチドのゲル化(2)
【0124】
表1と表2の結果から、UFDD-18とU2FDD18は、有機溶媒(MeOH、エ
タノール、トルエン、THF、DMSO、DMF)の中でゲル化できないが、今後の開発
でその他の有機溶媒の中でゲル化することを発見する可能性があり、FDD-16、FD
D-14はMeOH、エタノール、THF、DMSO、DMFの中でゲル化でき、FDD
-18はMeOH、エタノール、DMSO、DMFの中でゲル化でき、本発明で選んだ有
機溶媒の中で、FDD-18のゲル化範囲がFDD-16、FDD-14よりも狭いこと
が判明した。
【0125】
(削除)
【0126】
(削除)
【0127】
(削除)
【0128】
(削除)
【0129】
(削除)
【0130】
イ、FDD-16のゲル化の同定
【0131】
FDD-16のゲル化状況について考察し、逆立ちによりその安定性を調べたところ、
FDD-16のゲル化状況は良好であり、依然として底部に保持されている。これは、M
eOH、エタノール、THF、DMSO、DMFなどの溶媒をFDD-16の更なる製剤
の実験に使用できると示唆している。具体なゲル逆立実験は、図1に示される。
【0132】
ウ、FDD-18とFDD-14のゲルの電子顕微鏡(SEM)による観察
【0133】
ゲル化実験によると、FDD-18、FDD-14がゲル化できる可能性は依然として
高い。FDD-18、FDD-14のゲル化性能を電子顕微鏡で観察した結果は、具体的
図2図3に示される。
図1
図2
図3