(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20231116BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231116BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20231116BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20231116BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H04N1/60
G03G15/00 303
G03G15/01
B41J2/525
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2019211871
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】村本 秀也
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268857(JP,A)
【文献】特開2005-303569(JP,A)
【文献】特開2016-096434(JP,A)
【文献】特開2019-041173(JP,A)
【文献】特開2005-159576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-62
G03G 15/00
G03G 15/01
B41J 2/525
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色補正のために所定色空間内に配置された各格子点について入力階調値と出力階調値とを関連付けた色補正データに基づいて、
対象画像内の各画素の階調値に対応する入力階調値の格子点を選択し選択した前記格子点の出力階調値を使用することで、対象画像の前記色補正を行う色補正処理部と、
色補正の対象画像の背景色を特定する背景色特定部と、
特定された前記背景色と所定の基準色との差に基づいて特定格子点の入力階調値を調整する格子点調整部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記格子点調整部は、前記基準色に対応する基準格子点および前記基準格子点の周辺の所定範囲の格子点を第1調整階調領域とし、前記第1調整階調領域内の格子点の入力階調値を、特定された前記背景色と所定の基準色との差に基づいて調整することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記格子点調整部は、入力階調値を調整しない格子点の固定階調領域と前記第1調整階調領域との間の領域を第2調整階調領域とし、前記第2調整階調領域内の格子点の入力階調値を、調整量が前記固定階調領域に近づくほど小さくなり、かつ調整量が前記第1調整階調領域に近づくほど前記差に近づくように、調整することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記格子点調整部は、
入力階調値を調整しない格子点の固定階調領域と前記第1調整階調領域との間の領域を第2調整階調領域とし、前記第1調整階調領域と前記固定階調領域との間を所定次数の多項式でフィッティングして、前記第2調整階調領域内の格子点の入力階調値を調整することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記格子点調整部は、最大輝度に対応する格子点の入力階調値を調整しないことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記背景色特定部は、前記対象画像の端部領域における階調値のヒストグラムを導出し、前記ヒストグラムにおける最頻値の階調値を前記背景色として特定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像処理装置は、色補正のために所定の色空間内に配置された格子点のうち、ハイライト部分およびシャドー部分における格子点が密になるようにして、各格子点の入力階調値と出力階調値とに基づいて、色補正の対象画像におけるハイライト部分およびシャドー部分の色補正を適切に行うようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
別の画像処理装置は、色補正のために所定の色空間内に配置された格子点のうち、低濃度領域の格子点が密になるようにして、各格子点の入力階調値と出力階調値とに基づいて、対象画像の色補正を行っている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-328114号公報
【文献】特開2006-74809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の画像処理装置では、色補正の対象画像に拘わらず、固定的に配置された格子点を使用して色補正を行っているため、対象画像によっては適切に色補正が行われない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、対象画像に応じて適切に色補正が行われる画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、色補正のために所定色空間内に配置された各格子点について入力階調値と出力階調値とを関連付けた色補正データに基づいて、対象画像内の各画素の階調値に対応する入力階調値の格子点を選択し選択した前記格子点の出力階調値を使用することで、対象画像の前記色補正を行う色補正処理部と、色補正の対象画像の背景色を特定する背景色特定部と、特定された前記背景色と所定の基準色との差に基づいて特定格子点の入力階調値を調整する格子点調整部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象画像に応じて適切に色補正が行われる画像形成装置が得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1における背景色特定部21により生成される入力画像の階調値ヒストグラムを説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1における格子点調整部22による格子点の調整について説明する図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す画像形成装置は、例えばコピー機、複合機などである。
【0013】
図1に示す画像形成装置は、画像入力部1、画像処理部2、画像出力部3、および記憶装置4を備える。画像入力部1は、例えばスキャナーを有し、1ページずつ、原稿画像を光学的に読み取り、その原稿画像の画像データを生成し、画像処理部2に出力する。画像処理部2は、画像入力部1から入力された画像データに対して各種画像処理を行い、画像処理後の画像データを画像出力部3に出力する。画像出力部3は、例えば電子写真方式のカラープリントエンジンを有し、画像処理部2からの画像データに基づく画像をプリント用紙にプリントする。記憶装置4は、フラッシュメモリーなどの不揮発性記憶装置であって、データやプログラムを記憶している。
【0014】
画像処理部2は、後述の処理を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路、後述の処理を記述した所定のプログラムを実行するコンピューターなどである。このコンピューターは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROMや記憶装置4からRAMにプログラムをロードしCPUで実行する。
【0015】
画像処理部2は、色補正部11と、出力画像処理部12とを備える。
【0016】
色補正部11は、記憶装置4における色補正データ4aを使用して、入力される画像データに基づく入力画像(対象画像)の色補正を実行する。色補正データ4aは、色補正のために所定色空間(ここでは、CMY色空間)内に離散的に配置された各格子点について入力階調値と出力階調値とを関連付けたデータ(例えば、格子間隔が所定のm(m>1階調値)である3次元ルックアップテーブル)である。
【0017】
色補正部11は、背景色特定部21、格子点調整部22、および色補正処理部23を備える。
【0018】
背景色特定部21は、色補正の対象画像の背景色を特定する。
【0019】
図2は、
図1における背景色特定部21により生成される入力画像の階調値ヒストグラムを説明する図である。この実施の形態では、背景色特定部21は、CMYの色プレーンについてそれぞれ、例えば
図2に示すように、対象画像の端部領域(例えば余白部分)における画素の階調値のヒストグラムを導出し、ヒストグラムにおける最頻値の階調値Xmを上述の背景色として特定する。
【0020】
格子点調整部22は、各色プレーンについて、特定された背景色Xmと所定の基準色Xrefとの差DELTAに基づいて特定格子点(ここでは、後述の領域#2,#3における格子点)の入力階調値を調整する。この実施の形態では、特定された背景色と所定の基準色との差に基づく所定値(例えば、CMYの各色プレーンの差に基づく輝度差など)が所定閾値THDを超えたときに、格子点調整部22は、特定格子点の入力階調値を調整し、そうではないときには、格子点調整部22は、特定格子点の入力階調値(つまり、すべての格子点の入力階調値)を調整しない。なお、格子点調整部22は、特定格子点の入力階調値を調整する場合、例えば、特定格子点の各色プレーンについての入力階調値を調整する。
【0021】
なお、基準色Xrefは、基準となる背景色(例えば所定輝度の白色)の各色プレーンの階調値を示す。
【0022】
図3は、
図1における格子点調整部22による格子点の調整について説明する図である。
【0023】
具体的には、例えば
図3に示すように、格子点調整部22は、最大輝度に対応する格子点(つまり、最も明るい出力階調値の格子点#0)(これを領域#1とする)の入力階調値を調整しない。
【0024】
また、例えば
図3に示すように、格子点調整部22は、上述の基準色Xrefに対応する基準格子点およびその基準格子点の周辺の所定範囲(例えば2格子点)の格子点を第1調整階調領域(領域#2)とし、第1調整階調領域内の格子点の入力階調値を、特定された背景色と所定の基準色Xrefとの差DELTAに基づいて(例えば
図3における黒点から白点へ)調整する(ここでは、入力階調値をその差DELTAだけ増加させる)。
【0025】
さらに、例えば
図3に示すように、格子点調整部22は、入力階調値を調整しない格子点の固定階調領域(領域#3)と第1調整階調領域(領域#2)との間の領域を第2調整階調領域(領域#4)とし、第2調整階調領域内の格子点の入力階調値を、調整量(ここでは増加量)が固定階調領域に近づくほど小さくなり、かつ調整量が第1調整階調領域に近づくほど上述の差DELTAに近づくように、(例えば
図3における黒点から白点へ)調整する。なお、固定階調領域(領域#3)は、第1調整階調領域(領域#2)より入力階調値が高く、かつ入力階調値が所定値(ここでは200)を超えている格子点の領域である。
【0026】
例えば、格子点調整部22は、第1調整階調領域と固定階調領域との間を所定次数の多項式(N次多項式;例えばN>2)でフィッティング(内挿補間)して第2調整階調領域内の各格子点の入力階調値を特定し、第2調整階調領域内の格子点の入力階調値を調整する。
【0027】
色補正処理部23は、色補正データ4aに基づいて、対象画像内の各画素の階調値に対応する入力階調値の格子点を選択し選択した格子点の出力階調値を使用することで、対象画像の色補正を行う。
【0028】
例えば、色補正処理部23は、(a)対象画像内の各画素の階調値と同一の入力階調値の格子点があれば、その格子点を選択し、選択した格子点の出力階調値を、補正後の階調値としたり、(b1)対象画像内の各画素の階調値と同一の入力階調値の格子点がない場合、各画素の階調値に最も近い1つの格子点を選択し、選択した格子点の出力階調値を、補正後の階調値としたり、(b2)対象画像内の各画素の階調値と同一の入力階調値の格子点がない場合、各画素の階調値に最も近い2つの格子点を選択しそれらの格子点の出力階調値の平均(あるいは距離(入力階調差)に基づく加重平均)を補正後の階調値とする。
【0029】
そして、出力画像処理部12は、色補正処理、黒生成/UCR(Under Color Removal)処理、中間調処理などを行う。色補正部11および出力画像処理部12により処理された対象画像は、例えば画像出力部3によりプリントされる。
【0030】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
図4は、
図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【0031】
まず、画像入力部1が、イメージスキャナーにて読み取った原稿画像(つまり、対象画像)のビットマップ画像データを生成し、図示せぬメモリーなどに格納する(ステップS1)。
【0032】
次に、背景色特定部21は、CMYの色プレーンについてそれぞれ、対象画像の端部領域(例えば先端余白部分)における画素の階調値のヒストグラムを導出し、ヒストグラムにおける最頻値の階調値Xmを背景色として特定する(ステップS2)。
【0033】
そして、格子点調整部22は、上述のようにして、背景色と所定の基準色との差が大きいか否かを判定し(ステップS3)、背景色と所定の基準色との差が大きい場合には、色補正データ4aの示すLUT(つまり、基準格子点)における特定格子点を上述のように調整し(ステップS4)、特定格子点の調整後のLUTを色補正処理部23にセットし(ステップS5)、そうではない場合、基準格子点のLUTを色補正処理部23にセットする(ステップS6)。
【0034】
その後、色補正処理部23は、セットされたLUTを使用して、対象画像の色補正を行う(ステップS7)。
【0035】
さらに、出力画像処理部12は、色補正後の対象画像に対して上述の画像処理を実行し(ステップS8)、画像処理後の対象画像のプリントを画像出力部3に実行させる(ステップS9)。
【0036】
以上のように、上記実施の形態によれば、色補正処理部23は、色補正のために所定色空間内に配置された各格子点について入力階調値と出力階調値とを関連付けた色補正データ4aに基づいて、対象画像内の各画素の階調値に対応する入力階調値の格子点を選択し選択した格子点の出力階調値を使用することで、対象画像の色補正を行う。そして、背景色特定部21は、補正の対象画像の背景色を特定し、格子点調整部22は、特定された背景色と所定の基準色との差に基づいて特定格子点の入力階調値を調整する。
【0037】
これにより、対象画像に応じてLUTが調整され、適切に色補正が行われる。ここでは、スキャンした原稿の下地色などに対応する対象画像の背景色が基準色に近づくようにLUTが調整され、適切に色補正が行われる。
【0038】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば、プリンター、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
4a 色補正データ
21 背景色特定部
22 格子点調整部
23 色補正処理部