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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】吊り架台
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20231116BHJP
   E03C 1/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E04H1/12 301
E03C1/20 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045568
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021147778
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】丹上 秀弘
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-276064(JP,A)
【文献】特許第5486200(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E03C 1/12 - 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築躯体の土台間に架け渡され、設備ユニットを支持するための吊り架台であって、
前記土台の一側に固定される第1固定部と、
前記土台の他側に固定される第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部との間に設けられ前記設備ユニットを支持する支持部と、
を備え、
前記第1固定部は、
前記土台に取り付けられる第1係合部と、
前記第1係合部から前記支持部に向けて延びる第1アーム部と、
前記第1係合部に隣接して設けられ前記土台から上方に延びる柱部材の挿入を可能にする第1挿入部と、を有することを特徴とする吊り架台。
【請求項2】
前記第1係合部の幅の中心線は、前記支持部の幅の中心線から前記支持部の長手方向に直交する横方向にずれていることを特徴とする請求項1に記載の吊り架台。
【請求項3】
前記第2固定部は、
前記土台に取り付けられ長手方向で前記第1係合部と対向する位置に設けられた第2係合部と、
前記第2係合部から前記支持部に向けて延びる第2アーム部と、
長手方向で前記第1挿入部と対向する位置に設けられ前記土台から上方に延びる柱部材の挿入を可能にする第2挿入部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の吊り架台。
【請求項4】
前記支持部は、前記柱部材が前記第1挿入部に挿入された状態で、前記土台間の空間のうち前記柱部材に対向する対向部分に入り込んでいることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の吊り架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に吊り架台に関する。
【背景技術】
【0002】
建築躯体の土台間に架け渡して固定され、浴室ユニットなどの設備ユニットを支持する吊り架台がある。この吊り架台は、設備ユニットを支持する支持部と、支持部の両端に設けられ土台に固定される一対の固定部と、を備えている。
【0003】
土台には、間柱などの柱部材が設けられている。例えば、間柱の下方に吊り架台を架け渡したい場合には、柱部材が障害物となるので、固定部を土台に固定するのが困難となる。そこで、浴室ユニットなどの設備ユニットを支持する受け部を支持部の長手方向と直交する方向にずらした吊り架台が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5486200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受け部を支持部の長手方向と直交する方向にずらした構成では、柱部材などの障害物を回避するために、柱部材除けの受け部を有する専用の吊り架台を手配する必要が発生する。また、柱部材除けの受け部を有する専用品だけで多様な現場に対応させようとすると、現場環境によっては受け部の幅が支持部の幅よりも大きく設けられているため、土台などと干渉する虞がある。
【0006】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、現場環境に依存することを抑制し、柱部材などの障害物があったとしても対応できる可能性を高めた吊り架台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、建築躯体の土台間に架け渡され、設備ユニットを支持するための吊り架台であって、前記土台の一側に固定される第1固定部と、前記土台の他側に固定される第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部との間に設けられ前記設備ユニットを支持する支持部と、を備え、前記第1固定部は、前記土台に取り付けられる第1係合部と、前記第1係合部から前記支持部に向けて延びる第1アーム部と、前記第1係合部に隣接して設けられ前記土台から上方に延びる柱部材の挿入を可能にする第1挿入部と、を有することを特徴とする吊り架台である。
【0008】
この吊り架台によれば、吊り架台の固定部を土台に吊り掛ける場合に、建築現場により吊り架台を固定したい所定の位置に柱部材(例えば、間柱)などの障害物が干渉する形で存在したとしても、例えば、柱部材を土台から取り外す作業が不要となる。また、柱部材などの障害物との干渉を避けるために、例えば浴室ユニットなどの設備ユニットを支えるための受け部を柱部材などの障害物が存在する同一線上からずらした専用の吊り架台を手配することが不要となる。従って、現場環境に依存することを抑制し、柱部材などの障害物があったとしても対応できる吊り架台を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1係合部の幅の中心線は、前記支持部の幅の中心線から前記支持部の長手方向に直交する横方向にずれていることを特徴とする吊り架台である。
【0010】
この吊り架台によれば、柱部材などの障害物との干渉を避けるための調整幅を大きく確保することが可能であり、より柱部材などの障害物に対して対応可能となる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第2固定部は、前記土台に取り付けられ長手方向で前記第1係合部と対向する位置に設けられた第2係合部と、前記第2係合部から前記支持部に向けて延びる第2アーム部と、長手方向で前記第1挿入部と対向する位置に設けられ前記土台から上方に延びる柱部材の挿入を可能にする第2挿入部と、を有することを特徴とする吊り架台である。
【0012】
この吊り架台によれば、吊り架台を180度回転させることで、柱部材などの障害物に対して左右方向問わず設置することが可能となる。従って、現場の環境により適した設置を行うことができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記支持部は、前記柱部材が前記第1挿入部に挿入された状態で、前記土台間の空間のうち前記柱部材に対向する対向部分に入り込んでいることを特徴とする吊り架台である。
【0014】
この吊り架台によれば、土台内の空間のうち、柱部材により支持部が配設できない部分を低減させることができる。従って、土台に設けられた柱部材や吊り架台の設計変更を行うことなく、土台内の空間の広い範囲に吊り架台を設置できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、現場環境に依存するのを抑制し、柱部材などの障害物があったとしても対応できる可能性を高めた吊り架台が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る吊り架台が土台間に架け渡された状態を示す斜視図である。
図2】吊り架台上に浴室ユニットが載置された状態を示す平面図である。
図3図1中に示す吊り架台の第1固定部を拡大して示す平面図である。
図4】吊り架台を単体で示す斜視図である。
図5】吊り架台の第1固定部と第2固定部とを拡大して示す平面図である。
図6】土台、吊り架台を図2中の矢示A-A方向からみた断面図である。
図7】第1変形例に係る吊り架台の第1固定部を示す平面図である。
図8】第2変形例に係る吊り架台の第1固定部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る吊り架台が土台間に架け渡された状態を示す斜視図である。
図2は、吊り架台上に浴室ユニットが載置された状態を示す平面図である。
図3は、図1中に示す吊り架台の第1固定部を拡大して示す平面図である。
図4は、吊り架台を単体で示す斜視図である。
図5は、吊り架台の第1固定部と第2固定部とを拡大して示す平面図である。
図6は、土台、吊り架台を図2中の矢示A-A方向からみた断面図である。
図1図6に示すように、吊り架台10は、第1固定部12と、第2固定部13と、支持部14と、を備える。
【0018】
吊り架台10は、建築躯体の土台2間に架け渡され、土台2に固定されて使用される。吊り架台10は、例えば金属製である。吊り架台10には、例えば鉄、ステンレス、またはアルミニウムなどの金属材料が用いられる。なお、土台2には、例えば1階の床を構築する大引きや、2階の床を構築する床梁なども含まれる。柱部材3は、土台2から上方に向けて延びている。この柱部材3は、例えば通し柱、管柱、および間柱からなり、土台2上に立設している。
【0019】
吊り架台10は、土台2間に架け渡され、土台2に固定された状態で、浴室ユニット4などの設備ユニットを支持する。設備ユニットは、浴室ユニット4に限ることなく、例えば浴室、トイレ、洗面所、およびキッチンなどの衛生設備室に用いられる任意のユニットでもよい。
【0020】
土台2には、複数の吊り架台10が並べて固定される。浴室ユニット4は、複数の吊り架台10によって支持される。このように、使用状態においては、複数の吊り架台10が合わせて用いられる。図1図2では、3つの吊り架台10を合わせて用いる例を示している。合わせて用いる吊り架台10の数は、3つに限ることなく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0021】
浴室ユニット4などの設備ユニットは、吊り架台10の支持部14に支持される。図2に示すように、浴室ユニット4は、例えば浴槽4a、洗い場床4b、および浴槽4aや洗い場床4bと支持部14との間に設けられる脚部4cを有し、支持部14上に載置されている。
【0022】
支持部14は、1つの方向(対面する土台2間)に延びる長尺状である。支持部14の延びる方向は、水平方向である。以下では、支持部14の延びる方向を、「長手方向」と称す。また、長手方向および上下方向と直交する方向を、「幅方向または横方向」と称す。
【0023】
第1固定部12は、土台2の一側に固定されている。第2固定部13は、土台2の他側に固定されている。すなわち、第1固定部12と第2固定部13とは、支持部14の両端にそれぞれ設けられ、支持部14よりも上方に延び、土台2にそれぞれ固定される。
【0024】
第1固定部12と第2固定部13とは、同様の構成、形状となっているので、以下では第1固定部12を具体的に説明し、第2固定部13の説明は省略する。そして、第1固定部12は、土台2に取り付けられる第1係合部12aと、第1係合部12aの内側端部から支持部14に向けて延びる第1アーム部12bと、を有している。
【0025】
第1係合部12aは、例えば板状に形成され、土台2の上に係合する。第1係合部12aには、例えばねじを挿通するための貫通孔が設けられている。第1固定部12は、第1係合部12aを土台2の上に係合させた状態で、第1係合部12aを土台2にねじ止めすることにより、土台2に固定される。第1固定部12の固定方法は、これに限ることなく、任意の方法でよい。
【0026】
第1アーム部12bは、第1係合部12aと支持部14との間を上下方向に延びている。第1アーム部12bは、例えば途中部位が屈曲した板状に形成され、下端側に支持部14が溶接などにより固着されている。すなわち、吊り架台10は、第1固定部12と支持部14とが一体となっている。なお、吊り架台10は、支持部14が第1固定部12とは別体で形成されて第1アーム部12bにねじ止めされていてもよい。
【0027】
第1挿入部12cは、第1係合部12aの幅方向に隣接して設けられている。図3図5に示すように、第1挿入部12cは、第1アーム部12bと第1係合部12aとの間に形成された切欠きとして形成されている。第1挿入部12cは、柱部材3の挿入が可能な部分となっている。
【0028】
吊り架台10は、例えば第1係合部12aの幅L1が支持部14の幅L2よりも短くなっている。また、第1挿入部12cの幅L3は、柱部材3の幅に対応して形成されている。第1挿入部12cの幅L3は、柱部材3の一部が挿入可能な寸法に形成されていてもよいし、柱部材3の全てが挿入可能な寸法に形成されていてもよい。本実施形態では、第1挿入部12cの幅L3は、柱部材3の幅とほぼ同じ寸法に形成されている。吊り架台10は、第1挿入部12cにより、柱部材3に影響を受けることなく、土台2の任意の位置に設置可能となっている。
【0029】
第2固定部13は、第1固定部12と同様に、第2係合部13a、第2アーム部13b、および第2挿入部13cを有している。第2係合部13a、第2アーム部13b、および第2挿入部13cは、それぞれ第1係合部12a、第1アーム部12b、および第1挿入部12cと同様の形状、構成となっている。
【0030】
図5に示すように、第2固定部13の第2係合部13aは、第1固定部12の第1係合部12aと長手方向で対向する位置に設けられている。従って、第2固定部13の第2挿入部13cも第1固定部12の第1挿入部12cと長手方向で対向する位置に設けられる。これにより、吊り架台10は、180度回転させることで、柱部材3の幅方向の両側位置で第1係合部12aおよび第2係合部13aを固定させることができる。
【0031】
例えば、図1に示すように、紙面右側に配設された吊り架台10aと紙面左側に配設された吊り架台10bとは、180度回転させて土台2に取り付けられている。すなわち、図1中の吊り架台10aは、柱部材3の左側で第1係合部12aを固定させている。一方、吊り架台10bは、柱部材3の右側で第2係合部13aを固定させている。
【0032】
図5に示すように、第1係合部12aおよび第2係合部13aの幅の中心線O1-O1は、支持部14の幅の中心線O2-O2から支持部14の長手方向に直交する横方向にずれている。これにより、第1挿入部12cおよび第2挿入部13cの幅寸法を大きく形成することができるので、柱部材3などの障害物との干渉を避けるための調整幅を大きく確保することが可能であり、より柱部材3などの障害物に対して対応可能となる。
【0033】
支持部14は、第1固定部12と第2固定部13との間に設けられている。この支持部14は、浴室ユニット4を支持する。支持部14の長手方向の長さは、第1固定部12の第1係合部12aおよび第2固定部13の第2係合部13aを土台2の上に係合させた状態で、所定間隔で並べて配設される大引きや床梁などの土台2の間に架け渡される長さに設定される。これにより、第1固定部12と第2固定部13とを土台2に固定した状態で、支持部14に浴室ユニット4を支持させることができる。
【0034】
支持部14は、第1固定部12と第2固定部13との間を延びる上板15と、上板15に上下方向で対面する下板16と、上板15と下板16との間に位置して第1固定部12と第2固定部13との間を延びる一対の側板17と、を有している。すなわち、支持部14は、中空な筒状体となっている。換言すれば、支持部14は、角パイプ状となっている。これにより、支持部14は、浴室ユニット4を支持するのに十分な強度を有している。
【0035】
上板15および下板16は、水平な板状である。上板15および下板16は、水平に配設された平行平板である。上板15および下板16は、誤差程度の傾きを有していてもよい。「水平」とは、例えば完全な水平を基準(0°)とした時に、各方向の傾きが、±2°以下の状態である。
【0036】
図1図3に示すように、支持部14は、柱部材3が第1挿入部12cに挿入された状態で、土台2の空間Sのうち柱部材3に対向する対向部分S1に入り込んでいる。具体的には、図4図5に示すように、上板15は、幅方向で第1係合部12aと第1挿入部12cとにわたって延びている。すなわち、上板15は、長手方向で第1係合部12aと同じ位置にある延出部15aと、長手方向で第1挿入部12cと同じ位置にあり、延出部15aに幅方向で連接する連接部15bと、を有している。換言すると、支持部14は、第1係合部12aから幅方向にずれた位置に連接部15bを有している。
【0037】
図3に示すように、柱部材3が第1挿入部12cに挿入された状態で、支持部14は、連接部15bの幅方向の端部15cが柱部材3の幅方向の中心線O3-O3以上外側に延びているのが好ましい。これにより、吊り架台10を180度回転させて取り付けることにより、対向部分S1の全体に支持部14を配設させることができる。
【0038】
受け皿18は、支持部14の上板15の上面に設けられている。図6に示すように、受け皿18は、浴室ユニット4の脚部4cを受ける。受け皿18は、例えばねじ止めなどによって支持部14の上板15に固定される。支持部14には、例えば複数の受け皿18が設けられる。本実施形態では、4つの受け皿18が支持部14に設けられている。受け皿18の数は、任意の数でよい。また、受け皿18は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0039】
本実施形態による吊り架台10は、上述の如き構成を有するもので、次に吊り架台10を土台2に取り付ける作業について説明する。
【0040】
まず、図1に示すように、第1固定部12の第1係合部12aを土台2の一側にねじ止めする。また、第2固定部13の第2係合部13aを土台2の他側にねじ止めする。これにより、吊り架台10は、土台2間(土台2の空間S)に架け渡される。
【0041】
ところで、土台2には、間柱などの柱部材3が設けられている。例えば、柱部材3に対向する対向部分S1に吊り架台を架け渡したい場合には、柱部材3が障害物となるので、各固定部を土台2に固定するのが困難となる。そこで、上述した従来技術による吊り架台は、浴室ユニットなどの設備ユニットを支持する受け部を支持部の長手方向と直交する方向にずらしている。これにより、土台内のうち柱部材に対向する対向部分(デッドスペース)に浴室ユニットの脚部を配設している。
【0042】
しかしながら、このような構成では、柱部材などの障害物を回避するために、柱部材除けの受け部を有する専用の吊り架台を手配する必要が発生する。また、柱部材除けの受け部を有する専用品だけで多様な現場に対応させようとすると、現場環境によっては受け部の幅が支持部の幅よりも大きく設けられているため、土台などと干渉する虞がある。さらに、受け部が支持部とずれているので、受け部に載置された浴室ユニットの脚部から支持部に伝わる荷重が片寄ることになり、浴室ユニットの支持が不安定になる虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態に係る吊り架台10は、土台2の一側に固定される第1固定部12と、前記土台の他側に固定される第2固定部13と、第1固定部12と第2固定部13との間に設けられ設備ユニット(浴室ユニット4)を支持する支持部14と、を備えている。
【0044】
そして、第1固定部12は、土台2に取り付けられる第1係合部12aと、第1係合部12aから支持部14に向けて延びる第1アーム部12bと、第1係合部12aに隣接して設けられ土台2から上方に延びる柱部材3の挿入を可能にする第1挿入部12cと、を有している。
【0045】
これにより、吊り架台10の固定部12、13を土台2に吊り掛ける場合に、建築現場により吊り架台10を固定したい所定の位置に柱部材3(例えば、間柱)などの障害物が干渉する形で存在したとしても、柱部材3などの障害物を土台2から取り外す作業が不要となる。また、柱部材3などの障害物との干渉を避けるために、例えば浴室ユニット4などの設備ユニットを支えるための受け部を柱部材3などの障害物が存在する同一線上からずらした専用の吊り架台を手配することが不要となる。従って、現場環境に依存するのを抑制して、柱部材3などの障害物があったとしても対応できる可能性を高めた吊り架台10を提供できる。
【0046】
また、第1係合部12aの幅の中心線O1-O1は、支持部14の幅の中心線O2-O2から支持部14の長手方向に直交する横方向(幅方向)にずれている。これにより、柱部材3などの障害物との干渉を避けるための調整幅を大きく確保することが可能であり、より柱部材3などの障害物に対して対応可能となる。
【0047】
また、第2固定部13は、土台2に取り付けられ長手方向で第1係合部12aと対向する位置に設けられた第2係合部13aと、第2係合部13aから支持部14に向けて延びる第2アーム部13bと、長手方向で第1挿入部12cと対向する位置に設けられ土台2から上方に延びる柱部材3が挿入される第2挿入部13cと、を有している。
【0048】
これにより、吊り架台10を180度回転させることで、柱部材3などの障害物に対して左右方向問わず設置することが可能となる。従って、現場の環境により適した設置を行うことができる。
【0049】
図1図2に示すように、土台2には、柱部材3などの障害物に応じて3つの態様で吊り架台10が取り付けられる。1つ目の態様は、柱部材3の幅方向の一側に固定される吊り架台10aである。2つ目の態様は、柱部材3の幅方向の他側に固定される吊り架台10bである。すなわち、吊り架台10bは、吊り架台10aを180度回転させた状態で固定される。そして、3つ目の態様は、柱部材3が障害物とならない位置に固定される吊り架台10cである。このように、吊り架台10は、第1固定部12と第2固定部13とを長手方向で対称に形成することにより、柱部材3などの障害物の位置に応じて適切に対応することができる。
【0050】
また、支持部14は、柱部材3が第1挿入部12cに挿入された状態で、土台2の空間Sのうち柱部材3に対向する対向部分S1に入り込んでいる。これにより、土台2内の空間Sのうち、柱部材3により支持部14が配設できない部分を低減させることができる。従って、土台2に設けられた柱部材3や吊り架台10の設計変更を行うことなく、土台2内の空間Sの広い範囲に吊り架台10を設置できる。
【0051】
また、支持部14の上板15は、端部15cが柱部材3の幅方向の中心線O3-O3から突出する位置まで幅方向(横方向)に延びている。これにより、柱部材3の幅方向の一側に吊り架台10を固定する場合と、吊り架台10を180度回転させて柱部材3の幅方向の他側に吊り架台を固定させる場合とを選択することで、柱部材3に対向する対向部分S1の全体に支持部14を配設させることができる。従って、吊り架台10は、土台2に設けられた柱部材3などの障害物に影響を受けることなく、土台2の空間S内の任意の位置に支持部14を配設させることができる。
【0052】
このようにして吊り架台10が土台2に架け渡された後には、図6に示すように、支持部14の上板15に固定された受け皿18に浴室ユニット4の脚部4cを載置する。次に、脚部4cの高さを調節することで、浴室ユニット4のレベル調整(高さ調整)を行う。そして、図示しない接着剤により脚部4cを受け皿18に接着させる。最後に、浴槽4aや洗い場床4bを脚部4c上に取り付けることにより、土台2上に浴室ユニット4を組付けることができる。
【0053】
支持部14は、柱部材3の下方に位置する対向部分S1に入り込んでいる。また、受け皿18は、支持部14の上板15の上面に固定されている。その結果、吊り架台10は、脚部4cを対向部分S1の上方に配設させることができる。換言すると、脚部4cは、長手方向で柱部材3と重畳するように配設される。従って、吊り架台10は、柱部材3の影響を受けずに、土台2内の任意の位置に浴室ユニット4の脚部4cを配設させることができる。
【0054】
そして、支持部14は、脚部4cを介して浴槽4aや洗い場床4bなどの荷重を鉛直方向に受けることができる。従って、支持部14は、安定して浴室ユニット4を支持することができる。
【0055】
図7は、第1変形例に係る吊り架台の第1固定部を示す平面図である。
上述した実施形態では、第1係合部12aの幅方向の中心線O1-O1が支持部14の幅方向の中心線O2-O2から横方向にずれている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図7に示す第1変形例のように、吊り架台20は、第1係合部21の幅方向の中心線O4-O4が支持部22との幅方向の中心線と同一線上となっていてもよい。このような場合には、第1係合部21の幅方向の両側に第1挿入部23が設けられる。このことは、第2係合部についても同様である。
【0056】
図8は、第2変形例に係る吊り架台の第1固定部を示す平面図である。
上述した実施形態では、第1係合部12aの幅L1が支持部14の幅L2よりも短い場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図8に示す第2変形例のように、吊り架台30は、第1係合部31の幅L4が支持部32の幅L5よりも長くてもよい。これにより、吊り架台30を安定して土台2に固定させることができる。このことは、第2係合部についても同様である。
【0057】
また、上述した実施形態では、吊り架台10は、第1固定部12に第1挿入部12cを設け、第2固定部13にも第2挿入部13cを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2固定部には第2挿入部を設けていなくてもよい。すなわち、支持部の長手方向の両側に位置する固定部のうち、少なくとも一方の固定部に柱部材が挿入する挿入部が設けられていてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、第1係合部12aに長手方向で対向する位置に第2係合部13aを設け、第1挿入部12cに長手方向で対向する位置に第2挿入部13cを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1係合部に長手方向で対向する位置に第2挿入部を設け、第1挿入部に長手方向で対向する位置に第2係合部を設けてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、支持部14が角パイプ状に形成された場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば支持部は、下板を有していなくてもよい、すなわち、支持部は、下方が開口した門形状となっていてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、吊り架台10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0061】
2 土台、 3 柱部材、 4 浴室ユニット、 4a 浴槽、 4b 洗い場床、 4c 脚部、 10 吊り架台、 12 第1固定部、 12a 第1係合部、 12b 第1アーム部、 12c 第1挿入部、 13 第2固定部、 13a 第2係合部、 13b 第2アーム部、 13c 第2挿入部、 14 支持部、 15 上板、 15a 延出部、 15b 連接部、 15c 端部、 16 下板、 17 側板、 18 受け皿、 20 吊り架台、 21 第1係合部、 22 支持部、 23 第1挿入部、 30 吊り架台、 31 第1係合部、 32 支持部、 S 空間、 S1 対向部分
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8