(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20231116BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231116BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B28B1/30 101
B32B27/00 L
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2021183284
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2020536299の分割
【原出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019120950
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重野 健斗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充晴
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073003(JP,A)
【文献】特開2016-060158(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208468(WO,A1)
【文献】特開2000-158597(JP,A)
【文献】特開2018-115224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B32B 27/00,27/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材の一方の表面を形成している層を表面層Aとし、他の一方の表面を形成している層を表面層Bとするとき、前記表面層Aに直接、離型層が積層された離型フィルムであって、
前記離型層と表面層Bを接触させて、50℃雰囲気下、10kPaの圧力下で48時間保持した後、前記離型層と前記表面層Bを剥離した際の離型層の帯電量が±5kV以下であり、
前記表面層Bは、
バインダー樹脂と粒子を含む易滑塗布層であり、
前記表面層Bは、前記粒子としてシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を含み、
表面層A及び表面層Bの表面に帯電防止層が設けられておらず、表面層A及び表面層Bが帯電防止剤を含有しておらず、
前記離型層は、離型層形成用組成物を硬化してなるものであり
前記離型層形成用組成物は、離型剤としてカルボキシル基を有するポリオルガノシロキサンを含み、
離型剤の使用量が離型層中の0.05-5質量%であり
前記離型層形成用組成物は、メラミン系化合物を含み、
前記メラミン系化合物の重量平均重合度が1.0を超え1.7以下である
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項2】
前記離型層と前記表面層Bを重ね合わせた時の静摩擦係数μsが0.30未満である請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
前記セラミックグリーンシートは、0.2μm~1.0μmの厚みを有する、請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層形成用組成物が帯電防止剤を含有しておらず、
前記メラミン系化合物の前記離型層中の含有率が前記離型層形成用組成物の固形分に対し80質量%以上である請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
前記メラミン系化合物の重量平均分子量が400以上1000以下である請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項6】
表面層Aが無機粒子を実質的に含有していない請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項7】
表面層Bの質量に対する
前記粒子の合計含有率が5000~15000ppmである請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項8】
易滑塗布層が
前記バインダー樹脂と、
前記粒子と、架橋剤を少なくとも含む易滑塗布液の硬化物であり、
前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、架橋剤がメラミン系、オキサゾリン系、カルボジイミド系架橋剤から選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法であって、成型されたセラミックグリーンシートが0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものであり、更に詳しくは超薄層のセラミックグリーンシート製造時に平面不良や剥離不良などの工程不良の発生を抑制でき、かつ離型フィルムを低帯電量とすることで離型フィルムへの異物付着を低減し、セラミックグリーンシートへの異物の混入を抑制することのできる超薄層のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックグリーンシート成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みも薄膜化する傾向にある。セラミックグリーンシートは、離型フィルムに、チタン酸バリウムなどのセラミック成分とバインダー樹脂を含有したスラリーを塗工し乾燥することで成型される。成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷し離型フィルムから剥離したのち、セラミックグリーンシートを積層、プレスし、焼成、外部電極を塗布することで積層セラミックコンデンサが製造される。ポリエステルフィルムの離型層表面にセラミックグリーンシートを成型する場合、離型層表面の微小な突起が成型したセラミックグリーンシートに影響を与え、ハジキやピンホール等の欠点を生じやすくなるといった問題点があった。そのため、優れた平坦性を有する離型層表面を実現するための手法が種々開発されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら近年、さらなるセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、1.0μm以下、より詳しくは0.2μm~1.0μmの厚みのセラミックグリーンシートが要求されるようになってきた。そのため、離型層表面に存在する極僅かな凹凸が成型したセラミックグリーンシートにも転写することで厚みムラとなり、不良につながるおそれがあった。
【0004】
そこで近年、離型層の平滑化を達成するための手法が種々開発されてきている。例えば、離型層と基材の間に平滑化層を設けることで基材に含まれる粒子によって生じる凹凸を埋め、離型層表面の平滑性を向上させる手法がある(例えば、特許文献2)。また、離型層を設ける側の基材表面を、実質的に粒子を含有しない層とすることで、離型層表面の平滑性を高めることが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
しかしながら、特許文献2や3の手法では、離型層が平滑になったことで、離型フィルムが帯電しやすくなるという課題があった。より具体的に述べると、フィルムをロール状に巻き取った際に、離型層と反対側の面(裏面)との接触面積が大きくなるため、フィルムの巻締まりや、輸送時の振動などによって、離型層と反対側の面(裏面)が擦り合され、より帯電しやすくなる傾向にあった。離型フィルムが帯電すると、工程中の極微小な環境異物やスリット時に生じるフィルム屑が静電気により付着しやすくなり、セラミックグリーンシートへ混入し、不良につながるおそれがあった。
【0006】
離型フィルムの帯電を抑制する方法としては、離型層に帯電防止剤を含有させる方法や、離型層とは反対側の面や離型層と基材フィルムの中間層に帯電防止塗布層を設ける方法などが挙げられる(例えば、特許文献4、5)。しかしながら、特許文献4のように離型層中に帯電防止剤を含有させると、離型成分と相溶性が悪い帯電防止剤は凝集して粗大突起となるおそれがあった。また。表面特性や硬化性に悪影響が及び、超薄層のセラミックグリーンシートの剥離性が不十分となるおそれがあった。また、特許文献5のように離型層とは反対側の面や離型層と基材フィルムの中間層に帯電防止層を設ける場合は、加工工程が増えること、帯電防止剤が一般的に高価であることからコストアップとなり経済面に大きな課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-117899号公報
【文献】特開2009-208236号公報
【文献】特開2015-033811号公報
【文献】特開2014-189007号公報
【文献】国際公開第2016/133092号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、離型フィルムの離型層表面の高い平滑性を維持しつつ、剥離力が低く均一であり、さらに離型フィルムの帯電量が低く、厚みが1μm以下の超薄層品でも欠陥が少ないセラミックグリーンシートを成型できるセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムを用い、ポリエステルフィルムの表面層Aに直接又は他の層を介して、特定の離型剤とメラミン系化合物を含む組成物を硬化させてなる離型層を設けることで、平滑性とセラミックグリーンシートの剥離性に優れ、かつ帯電量が少ないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムを基材とし前記基材の一方の表面を形成している層を表面層Aとし、他の一方の表面を形成している層を表面層Bとするとき、前記表面層Aに直接又は他の層を介して離型層が積層された離型フィルムであって、前記離型層と表面層Bを接触させて、50℃雰囲気下、10kPaの圧力下で48時間保持した後、前記離型層と前記表面層Bを剥離した際の離型層の帯電量が±5kV以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
2. 前記離型層と前記表面層Bを重ね合わせた時の静摩擦係数μsが0.30未満である上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
3. 表面層A及び表面層Bの表面に帯電防止層が設けられておらず、表面層A及び表面層Bが帯電防止剤を含有していない上記第1または第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
4. 前記離型層が、少なくとも離型剤及びメラミン系化合物を含む組成物が硬化されてなるものであり、前記離型層形成用組成物が帯電防止剤を含有しておらず、前記メラミン系化合物の重量平均重合度が1.7以下であり、かつ前記メラミン系化合物の前記離型層中の含有率が前記離型層形成用組成物の固形分に対し80質量%以上である上記第1~第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
5. 前記離型層形成用組成物に含まれる離型剤がカルボキシル基を含有したポリオルガノシロキサンである上記第1~第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
6. 表面層Aが無機粒子を実質的に含有していない上記第1~第5のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
7. 表面層Bが粒子を含有し、前記粒子の少なくとも一部がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、表面層Bの質量に対する粒子の合計含有率が5000~15000ppmである上記第1~第6のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
8. 上記第1~第7のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法であって、成型されたセラミックグリーンシートが0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法。
9. 上記第8に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超薄層のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、帯電量が少なく、離型層の表面が平滑であり、かつセラミックグリーンシートの剥離性に優れるため、セラミックグリーンシートへの異物混入や欠陥の発生を抑制することができ、0.2~1.0μmの超薄層のセラミックグリーンシートを効率的に製造することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、基材となるポリエステルフィルムの表面層Aに直接もしくは他の層を介して離型層が積層されており、表面層Aおよび表面層Aとは反対側の表面層Bには帯電防止層が設けられていないことが好ましい。そして、離型層は帯電防止剤を含有せずに、少なくともメラミン系化合物及びポリオルガノシロキサンを含む組成物を硬化させてなることが好ましい。
【0014】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、帯電しづらい離型層を有していることが好ましい。帯電についてより具体的に述べると、離型フィルム製造工程において離型層加工後にフィルムを巻き取り、ロール状で保管している際に経時で増加する帯電が問題となることがある。例えば、ロール状のフィルムの帯電量が大きいと、スリット工程やセラミックグリーンシート成型工程において、工程中の極微小な環境異物やスリット時に生じるフィルム屑がフィルムに付着しやすくなる。フィルムに付着したこれらの異物がセラミックグリーンシートに混入することで不良につながるおそれがあるため、帯電しづらい離型層を有する離型フィルムであることが好ましい。
【0015】
帯電のしづらさを評価する一例としては、離型層と表面層Bを接触させ、荷重をかけて一定時間保持した後の離型層の帯電量を評価することで確認することができる。本評価方法では、ロール状でフィルムを保管している際に経時で増加する帯電量をモデル的に評価することができる。詳細な評価方法については後述する。
【0016】
後述の評価方法で測定した離型層の帯電量は±5kV以下であることが好ましく、例えば±3.4以下であり、±3kV以下であることが更に好ましく、絶対値の値が小さいほど好ましい。離型層の帯電量を±5kV以下とすることで、ロール状でフィルムを保管している時の経時での帯電量の増加が少なく、フィルムに異物が付着しづらくすることができるため好ましい。離型層の帯電量は小さいほど好ましいが、0.1kV以上であってもよく、0.3kV以上であってもよい。
【0017】
なお、本発明において帯電防止剤とは、イオン導電性の高分子化合物、π電子共役系の高分子化合物などのほか、導電性フィラー、金属層、金属酸化物層等の導電性付与を目的として使用される物質を意味している。イオン導電性の高分子化合物としては、アンモニウム基含有化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられる。π電子共役系の高分子化合物ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェン等が挙げられる。導電性フィラーとしては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、鉄、亜鉛、スズなどの金属類やこれらの合金類のフィラーや繊維、金属酸化物フィラー(シリカ、チタニア等の専ら滑り性等、導電性以外の目的で使用されるものを除く)、金属被覆合成繊維、カーボンナノチューブなどの導電性炭素繊維等が挙げられる。また、本発明において帯電防止層とは、前記のような帯電防止剤を含有して帯電防止効果を奏する層のことを意味している。
【0018】
(ポリエステルフィルム)
本発明における基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0019】
上記ポリエステルフィルムの固有粘度は0.50~0.70dl/gが好ましく、0.52~0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料ペレットは十分に真空乾燥することが好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを一軸又は二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0021】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1~8倍、特に2~6倍の延伸をすることが好ましい。
【0022】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12~50μmであることが好ましく、さらに好ましくは15~38μmであり、より好ましくは、19μm~33μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や離型層の加工工程、セラミックグリーンシートなどの成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
【0023】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であってもよいが、2層以上の多層であることが好ましい。前記ポリエステルフィルム基材の一方の表面を形成している層を表面層Aとし、他の一方の表面を形成している層を表面層Bとし、表面層A上に離型層を積層する態様について、以下の説明をする。表面層Aは実質的に無機粒子を含まないことが好ましい。一方、表面層Bは粒子などを含有することが好ましい。離型フィルムの積層構成としては、離型層を塗布する側の層を表面層A、その反対面の層を表面層B、これら以外の中間層を層Cとすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながら層Cは複数の層構成であっても構わない。
【0024】
表面層Bは、所謂共押出し法によって、表面層Aと共にポリエステルを主たる構成樹脂として形成される層であってもよいが、ポリエステルフィルムの表面層Aとは反対表面上に塗布層として設けられたものであってもよい。表面層Bが前記の塗布層である場合、表面層Bは、バインダー樹脂と粒子を含んで構成されていることが好ましく、この場合、表面層Bは易滑塗布層とも言えるものである。
【0025】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層する超薄層セラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。ここで、表面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲に入ることが好ましい。本発明において、「無機粒子を実質的に含有しない」とは、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0026】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される粒子含有量は、表面層B中に粒子の合計で5000~15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシート製造時に品質が安定し好ましい。
【0027】
上記表面層Bに含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができる。透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0028】
上記表面層Bに添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面の粗大粒子によるセラミックグリーンシートにピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
【0029】
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0030】
表面層Aの反対側の面に表面層Bとして上述の易滑塗布層を設ける場合は、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工するインラインコートで設けることが好ましい。易滑塗布層を設ける場合でも、易滑塗布層による表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)は上記と同様の理由により、領域表面平均粗さ(Sa)が1~40nmの範囲であることが好ましい。
【0031】
前記易滑塗布層による表面層Bの膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングが生じるおそれがなく好ましい。
【0032】
易滑塗布層を構成するバインダー樹脂としては特に限定されないが、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも粒子の保持、密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。また、易滑塗布層の硬度を考慮した場合、アクリル樹脂が特に好ましい。また、ポリエステル基材フィルム上の易滑塗布層を構成する他の好ましいバインダー樹脂としてはポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、共重合ポリエステルであることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂はポリウレタン変性されていても良い。ウレタン樹脂としてはポリカーボネートポリウレタン樹脂が挙げられる。さらに、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂は併用しても良く、上記の他のバインダー樹脂を併用してもよい。
【0033】
本発明において、表面層Bを形成する易滑塗布層中に架橋構造を形成させるために、易滑塗布層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、易滑塗布層の硬度を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。特に架橋密度を向上させることができる点で、オキサゾリン系、カルボジイミド系架橋剤が特に好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0034】
表面層Bを形成する易滑塗布層は、表面にすべり性を付与するために、滑剤粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0035】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0036】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、共押出しによる表面層Bや上述の中間層Cにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さくなり好ましい。
【0037】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50~90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、表面層Bに含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0038】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させるなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。
【0039】
但し、表面層Aや表面層B上には、帯電防止層を有しないことが好ましく、表面層Aや表面層Bに帯電防止剤が含まれていないことが好ましい。中間層Cを有する場合には、中間層Cも帯電防止剤を含まないことがこのましい。帯電防止層や帯電防止剤を有しない構成とすることで、安価に剥離力の小さい離型フィルムを提供することができる。
【0040】
(離型層の構造)
本発明における離型層には、帯電防止剤が含有されておらず、少なくともメラミン系化合物及びポリオルガノシロキサンを含む組成物が硬化されてなることが好ましい。
【0041】
本発明における離型層は、剥離時に生じる離型層の変型を抑制し、剥離力を低く均一にするために架橋密度が大きく高弾性率にすることが好ましい。ここで、離型層の弾性率とは、圧縮方向の弾性率を指す。また、架橋密度が大きく高弾性率の離型層とすることで、ロール状でフィルムを保管した際の経時での帯電量の増加が抑えられるため好ましい。離型層の弾性率を高めると、ロール保管時に離型層と接触する表面層Bとの滑り性が向上する(すべりやすくなる)。離型層が滑りやすくなると、フィルム面に対して垂直方向に加わる圧力が水平方向に逃げやすくなるため、ロール状で保管した際の表面層Bとの密着力を低減することができ、帯電を抑制できるため好ましい。
【0042】
また、帯電量を抑えるために、離型層の架橋密度を高めることが重要であることを見出した。離型層の架橋密度を高めることで、離型層内に存在するメラミン樹脂間での電子移動が容易になり、帯電しづらくなるため好ましい。離型層の架橋密度を高めるためには、メラミン系化合物の反応性を高めることが好ましい。反応性の高いメラミン系化合物について詳しく後述する。
【0043】
本発明における離型層に用いるメラミン系化合物としては、一般的なものを使用でき特に限定されないが、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られ、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基及び/又はアルコキシメチル基をそれぞれ1つ以上有していることが好ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。1種類を用いても2種類以上も用いても構わない。
【0044】
メラミン系化合物の反応性を高め、離型層の弾性率を高めるためには、1分子中により多くの架橋点をもつヘキサメチロールメラミンやヘキサアルコキシメチルメラミンを用いることが好ましいが、反応性により優れるヘキサアルコキシメチルメラミンがより好ましく、特にヘキサメトキシメチルメラミンを用いることが好ましい。この時、ヘキサメチロールメラミンとは、下記式(a)中、Xがメチロール基(-CH2-OH)であるものである。ヘキサアルコキシメチルメラミンとは、メチロールメラミン誘導体にアルコールを用いて脱水縮合反応させたものであり、Xが(-CH2-OR、Rは炭素数1~4のアルキル基)であるものである。ヘキサメトキシメチルメラミンとは、Xが(-CH2-OMe)であるものである。
【0045】
【0046】
上記(a)中のXはそれぞれ同じであってもよいし、異なっていても良い。また上記Rは、それぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。また、Xは(-H)でも良い。
【0047】
本発明で用いるメラミン系化合物は、単一の化合物ではなく、複数の化合物の混合体であることが好ましい。メラミン系化合物中の主成分となる化合物の構造から、フルエーテル型(X=-CH2-OR、Rは炭素数1~4のアルキル基)、メチロール型(X=-CH2-OH)、イミノ型(X=-H)に大別することができる。反応性の観点から、フルエーテル型、メチロール型を用いることが好ましく、フルエーテル型がより好ましく、フルエーテル型の中でもRがメチル基であるヘキサメトキシメチルメラミン(CAS番号3089-11-0)を用いることが最も好ましい。このヘキサメトキシメチルメラミンの含有率が高いメラミン系化合物を用いるほど、反応性が高く高弾性率な離型層とすることができる。
【0048】
本発明における離型層に用いるメラミン系化合物において、重量平均分子量が250以上、1000以下であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が300以上、900以下、更に好ましくは400以上、800以下である。重量平均分子量が1000以下であれば、架橋反応が進行しやすく、より架橋密度が大きい膜が形成でき、軽剥離かつ低帯電量な離型層となるため好ましい。重量平均分子量が250以上であれば、架橋密度が過剰に大きくなりすぎずカールが悪化しないため好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0049】
メラミン系化合物の重量平均分子量が250~1000であるということは、本発明において用いるメラミン系化合物には単核体が多く含まれていることを意味する。単核体は、2個以上のメラミン誘導体が縮合してなる多核体よりも架橋点が多く反応性に優れるため、架橋密度が大きく剥離性に優れる離型層とすることができる。単核体の含有量は多いほど好ましく、単核体のみからなるメラミン系化合物を用いることが最も好ましい。
【0050】
重量平均分子量は重量平均重合度で表すこともできる。用いるメラミン系化合物の重量平均重合度は1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることが更に好ましく、小さいほど好適に用いることができる。重量平均重合度が1.7以下であると、メラミン系化合物に含まれる単核体の含有量が多くなることで反応性に優れ、剥離性に優れ、帯電しづらい離型層とすることができるため好ましい。なお、本明細書における重量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量に基づいて算出した値である。
【0051】
メラミン系化合物はその合成過程において、イミノ基(-NH2-)を含有するものや、多核体が混入することがある。これらメラミン誘導体が混合していても、メラミン系化合物の重量平均分子量(すなわち重量平均重合度)が上記範囲内であれば反応性に優れ、それぞれ好適に用いることができる。
【0052】
本発明における離型層には、メラミン系化合物が離型層形成用組成物の固形分に対して、80質量%以上99.9質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは90質量%以上99.9質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上99.9質量%以下である。メラミン系化合物を80質量%以上含むことで離型層がメラミン系化合物の自己架橋により、高い架橋密度を得ることができ、高弾性率な離型層となるため好ましい。このとき、離型層形成用組成物の固形分とは、溶媒や酸触媒は乾燥過程で相当部分蒸発してしまうため、実質的にメラミン系化合物と離型剤の固形分の合計した値とみなして差し支えない。
【0053】
本発明における離型層には、メラミン系化合物の架橋反応を促進するために酸触媒を添加することが好ましく、離型層形成用組成物に酸触媒を添加して塗布し、硬化させることが好ましい。用いる酸触媒としては、スルホン酸系触媒を用いることが好ましい。
【0054】
スルホン酸系触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などを好適に使用することができるが、反応性の観点からp-トルエンスルホン酸が特に好適に使用することができる。
【0055】
本発明において使用するスルホン酸系触媒は市販されているものを用いることもできる。市販品の例としては、ドライヤー(登録商標)900(p-トルエンスルホン酸、日立化成社製)、NACURE(登録商標) DNNDSAシリーズ(ジノニルナフタレンジスルホン酸、楠本化成社製)、同DNNSAシリーズ(ジノニルナフタレン(モノ)スルホン酸、楠本化成社製)、同DDBSAシリーズ(ドデシルベンゼンスルホン酸、楠本化成社製)、同p-TSAシリーズ(p-トルエンスルホン酸、楠本化成社製)などが挙げられる。
【0056】
スルホン酸系触媒は、カルボン酸系などの他の酸触媒と比較し酸性度が高く反応性に優れるため、より低温で離型層を加工することができる。そのため、加工時の熱によるフィルムの平面性の低下や、巻き外観の悪化を抑制することができるため好ましい。
【0057】
酸触媒の添加量は、離型層に含まれるメラミン系化合物に対して0.1~10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5~8質量%である。さらに好ましくは0.5~5質量%である。0.1質量%以上であると、硬化反応が進みやすくなり好ましい。一方10質量%以下であると成型するセラミックグリーンシートへ酸触媒が移行するおそれがなく、悪影響を及ぼすおそれがないことから好ましい。
【0058】
本発明における離型層に用いる離型剤(離型層の離型性を向上させる添加剤)としては、特に制限なく一般的なものが使用できるが、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基といった、メラミン系化合物と反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。中でも、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることがより好ましく、剥離性と帯電防止の観点からカルボキシル基を含有したポリオルガノシロキサンを用いることが最も好ましい。ポリオルガノシロキサン構造の中でもポリジメチルシロキサン構造(略称、PDMS)を有するものを好適に使用することができる。
【0059】
離型剤であるポリオルガノシロキサンがカルボキシル基を含有することで、離型剤が乾燥工程でメラミン系化合物と強い相互作用を示さず、離型層表面に配向しやすくなり、良好な剥離性が得られる。そのため、カルボキシル基を含有するポリオルガノシロキサンを用いることで、離型剤の添加量が少なくても剥離性を満足することができ好ましい。また、離型層表面に配向しやすくなることで、離型層表面の滑り性が向上し、帯電しづらくなるため好ましい。
【0060】
カルボキシル基はポリオルガノシロキサンの片末端に導入されていてもよいし、両末端でも側鎖でも構わない。また、導入される位置は1つでもよいし、複数でも構わない。
【0061】
カルボキシル基変性のポリオルガノシロキサンについては、ポリオルガノシロキサンのケイ素原子に直接カルボキシル基が結合したものであってもよいが、アルキル基又はアリール基を介してポリオルガノシロキサンにカルボキシル基が結合したものであってもよい。しかし、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン等の繰り返し構造を有する有機基を介してポリオルガノシロキサンにカルボキシル基が結合したものはあまり好ましくない。
【0062】
離型剤であるポリオルガノシロキサンに導入する官能基としては、1分子中にカルボキシル基以外の別の官能基を有してもよいが、カルボキシル基のみの方が好ましい。カルボキシル基以外の官能基を含むとメラミン系化合物との分子間相互作用が必要以上に増大し離型層表面へ配向しにくくなるおそれがあるため好ましくない。
【0063】
メラミン系化合物と強い相互作用を示すヒドロキシル基などで変性されたポリオルガノシロキサンは、乾燥工程でメラミン系化合物と迅速に反応するため、離型層表面に配向しにくく離型性が発現しにくい場合がある。そのため十分な離型性を持たせるために添加量を増やす必要があるが、その場合離型層の弾性率が低下し剥離力が高くなるおそれがある。また、ポリオルガノシロキサンの添加量を増やす場合、セラミックグリーンシート成形時の塗工性が悪化するおそれがあり好ましくない。
【0064】
本発明において用いるカルボキシル基を含有したポリオルガノシロキサンは、重量平均分子量が40000以下であることが好ましい。より好ましくは、30000以下である。重量平均分子量が40000以下であるとカルボキシル基を含有したポリオルガノシロキサンが離型層表面に偏析しやすく剥離性や帯電量の観点から好ましい。
【0065】
前述のように、カルボキシル基を含有したポリオルガノシロキサンは、カルボキシル基を含有したポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。カルボキシル基を含有したポリジメチルシロキサンとしては、X22-3701E(側鎖カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、信越化学工業社製)、X22-3710(片末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、信越化学工業社製)、X22-162C(両末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、信越化学工業社製)、BY16-750(両末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、東レダウコーニング社製)、BY16-880(側鎖カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、東レダウコーニング社製)、Magnasoft 800L(両末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、モメンティブ社製)などを使用することができる。
【0066】
本発明におけるカルボキシル基を含有したポリジメチルシロキサンとしては、カルボキシル基を含有するアクリル主鎖にポリジメチルシロキサンが側鎖に導入されたアクリル樹脂であっても構わない。カルボキシル基を含有するアクリル主鎖にポリジメチルシロキサンが側鎖に導入されたアクリル樹脂としては、サイマック(登録商標)US-350、US-352、US-380(以上、東亞合成社製)などを使用することができる。また、一分子中にカルボキシル基とヒドロキシル基を含有するアクリル主鎖にポリジメチルシロキサンが側鎖に導入されたアクリル樹脂であっても構わない。一分子中にカルボキシル基とヒドロキシル基を含有するアクリル主鎖にポリジメチルシロキサンが側鎖に導入されたアクリル樹脂としては、サイマック(登録商標)US-450、US-480(以上、東亞合成社製)などを使用することができる。
【0067】
本発明における離型層には、離型剤が離型層形成用組成物の固形分に対して0.05質量%以上、5質量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上、3質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以上、1質量%以下である。0.05質量%以上であると、剥離性が向上するだけでなく、離型層が滑りやすくなり、帯電しづらくなるため好ましい。一方、5質量%以下であると、離型層全体の弾性率が低下し過ぎることがなく好ましい。また、5質量%以下であると、セラミックグリーンシート成形時の塗工性が悪化するおそれがない点からも好ましい。このとき、離型層形成用組成物の固形分とは、溶媒や酸触媒は乾燥過程で相当部分蒸発してしまうため、実質的にメラミン系化合物と離型剤の固形分の合計した値とみなして差し支えない。
【0068】
本発明における離型層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子など突起を形成するものは含有しないほうが好ましい。
【0069】
本発明における離型層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の添加剤などを添加してもよいが、帯電防止剤は含有しないことが好ましい。帯電防止剤を含有しない離型層とすることで、離型剤やメラミン系化合物との相溶性が悪くなり、凝集物が生じて離型層の平滑性を損なうおそれがなくなるため好ましい。また、より経済的に離型層を形成することができるため好ましい。
【0070】
(その他の特性)
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層重量が0.01~1.0μmとなる範囲がよく、より好ましくは、0.05~0.8μmであり、さらに好ましくは0.1~0.6μmであり、0.1~0.4μmであればより好ましい。離型層の厚みが0.01μm以上であると剥離性能が得られ好ましい。また、1.0μm以下であると、硬化時間を短くでき、離型フィルムの平面性が保たれてセラミックグリーンシートの厚みムラを抑制できて好ましい。また、離型層の厚みを小さくするほど帯電しづらくなるため好ましい。
【0071】
本発明の離型フィルムの離型層面は、その上で塗布・成型するセラミックグリーンシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下かつ最大突起高さ(P)が100nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ80nm以下であることがより好ましい。
例えば、最大突起高さ(P)は45nm以下であってもよい。
領域表面粗さが7nm以下、且つ、最大突起高さが100nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0072】
本発明の離型フィルムは、表面層Aが高度に平坦化された基材フィルムを用いることが好ましく、離型層の厚みが0.5μmより薄く、さらには0.2μmより薄くしても離型層表面を平滑にすることができる。そのため、反応性の高いメラミン系化合物を用いた離型層であっても、カールの発生を抑制することができる。また、使用する溶剤量や樹脂量を少なくすることができ環境にやさしく、安価に超薄層セラミックグリーンシート成型用の離型フィルムを作成することができる。
【0073】
本発明の離型フィルムは、セラミックグリーンシートを剥離するときの剥離力が0.5mN/mm以上、2.0mN/mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5mN/mm以上、1.5mN/mm以下である。剥離力が0.5mN/mm以上であると、剥離力が軽すぎず搬送時にセラミックグリーンシートが浮き上がるおそれがなく好ましい。剥離力が2.0mN/mm以下であると剥離時にセラミックグリーンシートがダメージを受けるおそれがなく好ましい。例えば、要求されるセラミックグリーンシートの厚みが0.2~1.0μmの極薄品である場合であっても、本発明の離型フィルムは、良好にセラミックグリーンシートを剥離できる。
【0074】
本発明の離型フィルムは、離型層と表面層Bを重ね合わせた時の静摩擦係数が0.30未満であることが好ましく、例えば、0.25以下であり、0.25未満であることがより好ましい。静摩擦係数が0.30未満であると、離型層と表面層Bとの密着力が低下するため、ロール状でフィルムを保管している際に生じる巻締まりや輸送中の振動などによって生じる帯電が抑制できるため好ましい。静摩擦係数は小さいほど帯電が抑制できるため好ましいが、0.01以上であることが巻取り性から好ましく、0.03以上であることがより好ましい。
【0075】
本発明の離型フィルムは、張力をかけずに80℃で5分加熱したあとのカールが3mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。もちろん、全くカールしないことも好ましい。3mm以下にすることでセラミックグリーンシートを成型し電極を印刷するときにカールが少なく印刷精度を高めることができるため好ましい。
【0076】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、100℃以上、180℃以下であることが好ましく、100℃以上、160℃以下であることがより好ましく、100℃以上、140℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。140℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。100℃よりも低いとメラミンの硬化反応が十分に進行せず離型層の弾性率が低下してしまうため好ましくない。
【0077】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜がレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0078】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0079】
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0080】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。セラミックグリーンシートの厚みは、0.2~1.0μmの極薄品が求められてきている。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を用いて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0082】
(表面粗さ)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は7回測定し最大値と最小値を除いた5回の最大値を使用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 936μm×702μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0083】
(セラミックスラリーの塗工性評価)
下記、材料からなるスラリー組成物Iを10分間攪拌混合し、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間分散し1次分散体を得た。その後下記材料からなるスラリー組成物IIを(スラリー組成物I):(スラリー組成物II)=3.4:1.0の比率になるように1次分散体に加え、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間2次分散し、セラミックスラリーを得た。
(スラリー組成物I)
トルエン 22.3質量部
エタノール 18.3質量部
チタン酸バリウム(平均粒径100nm) 57.5質量部
ホモゲノールL-18(花王社製) 1.9質量部
(スラリー組成物II)
トルエン 39.6質量部
エタノール 39.6質量部
フタル酸ジオクチル 3.3質量部
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBM-S) 16.3質量部
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート 0.5質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが1.0μmになるように塗工し60℃で1分乾燥後、以下の基準で塗工性を評価した。
○:ハジキなどがなく全面に塗工できている。
×:ハジキなどのシート欠陥が見られる。
【0084】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
前記セラミックスラリーの塗工性評価と同様にして離型フィルムの離型面に厚さ1μmのセラミックグリーンシートを成型した。次いで、成型したセラミックグリーンシート付き離型フィルムから離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし
△:ピンホールの発生がほぼなし
×:ピンホールの発生が多数あり
【0085】
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなるスラリー組成物Iを10分間攪拌混合し、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間分散し1次分散体を得た。その後下記材料からなるスラリー組成物IIを(スラリー組成物I):(スラリー組成物II)=3.4:1.0の比率になるように1次分散体に加え、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間2次分散し、セラミックスラリーを得た。
(スラリー組成物I)
トルエン 22.3質量部
エタノール 18.3質量部
チタン酸バリウム(平均粒径100nm) 57.5質量部
ホモゲノールL-18(花王社製) 1.9質量部
(スラリー組成物II)
トルエン 39.6質量部
エタノール 39.6質量部
フタル酸ジオクチル 3.3質量部
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBM-S) 16.3質量部
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート 0.5質量部
【0086】
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが1.0μmの厚みになるように塗布し60℃で1分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に剥離試験機(協和界面科学社製、VPA-3、ロードセル荷重0.1N)を用いて、剥離角度90度、剥離温度25℃、剥離速度10m/minで剥離した。剥離する向きとしては、剥離試験機付属のSUS板上に両面接着テープ(日東電工社製、No.535A)を貼りつけ、その上にセラミックグリーンシート側を両面テープと接着する形で離型フィルムを固定し、離型フィルム側を引っ張る形で剥離した。得られた測定値のうち、剥離距離20mm~70mmの剥離力の平均値を算出し、その値を剥離力とした。測定は計5回実施し、その剥離力の平均値の値を採用し、評価を行った。得られた剥離力の数値から下記の基準で判定した。
◎:0.5mN/mm以上、1.5mN/mm以下
○:1.5mN/mmより大きく、2.0mN/mm以下
×:0.5mN/mm未満、2.0mN/mmより大きい
【0087】
(離型フィルムのカール評価)
離型フィルムサンプルを10cm×10cmサイズにカットし、離型フィルムに張力がかからないようにして熱風オーブンで80℃5分間熱処理を行った。その後、オーブンから取り出し室温まで冷却したのち、離型面が上になるようにガラス板の上に離型フィルムサンプルを置いて、4隅のガラス板から浮いている部分の高さを測定した。この時測定した4隅の浮き量の平均値をカール量とした。以下の基準でカール性の評価を行った。
◎:カールが1mm以下であり、ほとんどカールしていない
○:カールが1mmよりも大きく、3mm以下であり、少しカールが見られた。
×:カールが3mmよりも大きく、カールが見られた。
【0088】
(重量平均重合度の測定方法)
分析条件
試料16mgを秤量し、クロロホルム8mlに溶解させた。0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、得られた試料溶液のGPC分析を以下の条件で実施した。
装置:TOSOH HLC-8320GPC
カラム:K-G+ K-802(排除限界分子量5×103)+ K-801(排除限界分子量1.5×103)(Shodex)、
溶媒:クロロホルム100%
流速:1.0ml/min
濃度:0.2%
注入量:50μL
温度:40℃
検出器:RI
【0089】
重量平均分子量をポリスチレン換算で算出し、その値を基に重量平均重合度を算出した。ポリスチレンは、PStQuickシリーズのPStQuick C(TOSOH)を使用した。PStQuick C(TOSOH)に添加されているポリスチレンのうち、カラムの排除限界分子量を大きく超えているポリスチレンMw2110000、427000、37900については、検量線作成から外した。
【0090】
(帯電量)
離型フィルムを10cm×10cmにカットした評価用サンプルを2枚用意した。評価用サンプル2枚を除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電し、0kVであることを確認した後、離型層が上側になる向きで、離型層と表面層Bを接触させた。接触させた2枚のサンプルを薬包紙で挟み込み、その上から10.2Kgの荷重(圧力10kPa)をかけ、50℃で48時間保持した。48時間後、温度を室温(25℃)に戻した後、接触させていた2枚の評価用サンプルを剥離し表面層Bと接触していた離型層の帯電量をデジタル静電電位測定器(KSD-1000、春日電機社製)を用いて測定した。この時測定した帯電量について、以下の基準で評価を行った。
◎:帯電量の絶対値が3kV未満
○:帯電量の絶対値が3kV以上、5kV以下
×:帯電量の絶対値が5kVを超える
【0091】
(静摩擦係数)
離型フィルムロールから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。 これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ4.4kgの金属製直方体底面に、表面層Bが表に現れるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
【0092】
次いで、同じ離型フィルムロールから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り 出し、離型層表面が表に現れるように、平らな金属板上に長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード100mm/分、23℃、65%RH条件下で測定した。測定は3回行い、平均値の値を静摩擦係数(μs)として採用した。なお、測定はエー・アンド・デイ社製テンシロン万能試験機RTG-1210を用いて行った。
【0093】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET (I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0094】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PET(I)チップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0095】
(積層フィルムX1の製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(I)を表面層B(反離型面側層)、PET(II)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60質量%/40質量%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX1を得た。得られたフィルムX1の表面層AのSaは1nm、表面層BのSaは28nmであった。
【0096】
(積層フィルムX2の製造)
積層フィルムX2としては、厚み25μmのE5101(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)を使用した。E5101は、表面層A及び表面層Bに粒子を含有した構成になっている。積層フィルムX2の表面層AのSaは24nm、表面層BのSaは24nmであった。
【0097】
(積層フィルムX3の製造)
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ無機粒子を実質的に含有していないPET樹脂ペレット(PETII)を、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0098】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0099】
次いで、下記に示す組成の易滑塗布液をバーコーターでPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸、乾燥後の塗布量が0.1μmになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ31μmの積層フィルムX3を得た。積層フィルムX3は、表面層Aは無機粒子を実質的に含有しておらず、表面層Aとは反対側の面に易滑塗布層を有する構成である。前記易滑塗布層が表面層Bである。表面層AのSaは1nm、表面層BのSaは2nmであった。
【0100】
(易滑塗布液の組成)
水 41.86質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂(固形分濃度20質量%) 16.57質量部
オキサゾリン系架橋剤(固形分濃度25質量%) 5.68質量部
コロイダルシリカ 0.59質量部
(日産化学製、商品名MP2040、平均粒径200nm、固形分濃度40質量%)
フッ素系界面活性剤(固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0101】
(前記アクリルポリオール樹脂の製造)
撹拌機、還流式冷却器、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート(MMA)77質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)100質量部、メタクリル酸(MAA)33質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)490質量部を仕込み、撹拌を行いながら80℃までフラスコ内を昇温した。フラスコ内を80℃に維持したまま3時間の撹拌を行い、その後、2,2-アゾビス-2―メチル-N-2-ヒドロキシエチルプロピオンアミドを0.5質量部フラスコに添加した。フラスコ内を120℃に昇温しながら窒素置換を行った後、120℃で混合物を2時間撹拌した。
次いで、120℃で1.5kPaの減圧操作を行い、未反応の原材料と溶媒を除去し、アクリルポリオールを得た。フラスコ内を大気圧に戻して室温まで冷却し、IPA水溶液(水含量50質量%)840質量部を添加混合した。その後、撹拌しながら滴下ロートを用いて、トリエチルアミンを加え、溶液のpHが5.5~7.5の範囲になるまでアクリルポリオールの中和処理を行い、固形分濃度が20質量%のアクリルポリオールを得た。
【0102】
(上記オキサゾリン系架橋剤の製造)
撹拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN-E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
【0103】
(実施例1)
以下組成の離型層形成物(固形分として換算した量で記載、以下同じ)をメチルエチルケトンとトルエンとイソプロピルアルコールの混合溶剤にて混合することで塗布液を調製した。この塗布液を積層フィルムX1の表面層A上に、リバースグラビアを用いて乾燥後の離型層膜厚が0.5μmになるように塗工し、130℃で15秒乾燥することで超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムについて、離型層の帯電量、滑り性、表面粗さ、セラミックシート剥離性、セラミックシート塗工性、カール、ピンホールを評価したところ、良好な評価結果が得られた。
メラミン系化合物 99.7質量部
(フルエーテル型メチル化メラミン、三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMW-30M、重量平均重合度1.3、主成分がヘキサメトキシメチルメラミン)
離型剤 0.3質量部
(片末端カルボキシル変性PDMS、信越化学工業社製、商品名:X22-3710、ジメチルシロキサンとカルボキシル基の間にアルキル基が介在)
p-トルエンスルホン酸 2.0質量部
【0104】
(実施例2、3)
メラミン系化合物と片末端カルボキシル変性PDMSの含有量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0105】
(実施例4)
離型剤を両末端カルボキシル変性PDMS(信越化学工業製、商品名:X22-162C、ジメチルシロキサンとカルボキシル基の間にアルキル基が介在)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0106】
(実施例5)
メラミン系化合物の含有量を99.9質量部、離型剤を両末端カルボキシル変性PDMS(信越化学工業製、商品名:X22-162C、ジメチルシロキサンとカルボキシル基の間にアルキル基が介在)0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0107】
(実施例6)
離型剤を側鎖カルボキシル変性PDMS(信越化学工業製、商品名:X22-3701E、ジメチルシロキサンとカルボキシル基の間にアルキル基が介在)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0108】
(実施例7)
離型剤をCOOH変性共重合アクリルシリコーン(東亞合成社製、商品名:サイマックUS-352)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0109】
(実施例8)
メラミン系化合物をフルエーテル型メチル化メラミン(三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMW-30、重量平均重合度1.5、主成分がヘキサメトキシメチルメラミン)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0110】
(参考例9)
メラミン系化合物をフルエーテル型メチル化メラミン(三和ケミカル製、商品名:ニカラックMW-390、重量平均重合度1.0、主成分がヘキサメトキシメチルメラミン)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。なお、表1Aおよび1Cにおいても、「実施例9」を「参考例9」と読み替える。
【0111】
(実施例10)
実施例1のメラミン系化合物(MW-30M)をイソプロパノール中で再結晶させて得たフルエーテル型メチル化メラミン(重量平均重合度1.1、主成分がヘキサメトキシメチルメラミン)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0112】
(実施例11、12)
離型層の膜厚を表1に示す膜厚に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0113】
(実施例13)
積層フィルムX2の表面層A上に塗工した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0114】
(実施例14)
積層フィルムX3の表面層A上に塗工した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0115】
(実施例15)
離型剤に、片末端ヒドロキシル基変性PDMSを用いたこと以外は、表1Bに示す条件で、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの帯電量は、3.5kV、静摩擦係数0.28、浮き量0.7であり、その上、良好なセラミックシート塗工性を有していた。また、得られた離型フィルムは、実施例7で得られた離型フィルムと同程度の剥離力を示し、ピンホールの発生がほぼなかった。
【0116】
(実施例16)
離型剤に、片末端アミノ基変性PDMSを用いたこと以外は、表1Bに示す条件で、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。表1Bに示す条件で、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの帯電量は、3.9kV、静摩擦係数0.26、浮き量0.7であり、良好なセラミックシート塗工性を有していた。また、得られた離型フィルムは、実施例7で得られた離型フィルムと同程度の剥離力を示し、ピンホールの発生がほぼなかった。
【0117】
(比較例1)
メラミン系化合物をイミノ型メラミン樹脂(三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMX-730、重量平均重合度2.4)99.5質量部、離型剤をポリエーテル変性水酸基含有PDMS(ビッグケミー・ジャパン社製、商品名:BYK-377)0.5質量部に変更し、膜厚を1.0μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0118】
(比較例2)
メラミン系化合物をイミノ型メラミン樹脂(三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMX-730、重量平均重合度2.4)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0119】
(比較例3)
メラミン系化合物と片末端カルボキシル変性PDMSの含有量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0120】
(比較例4)
メラミン系化合物をメチロール型メラミン樹脂(三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMS-11、重量平均重合度1.8)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0121】
(比較例5)
メラミン系化合物をイミノ・メチロール型メラミン樹脂(三和ケミカル社製、商品名:ニカラックMS-001、重量平均重合度5.7)に変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
比較例で得られた離型フィルムは、いずれも帯電量が本発明の範囲外であった。このため、工程中の極微小な環境異物が離型フィルムに付着する傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、離型層表面が高平滑であり、セラミックグリーンシートを均一で低い力で剥離できるだけでなく、離型層が帯電しづらいために、フィルムに異物が付着しづらく、厚み1μm以下の超薄層セラミックグリーンシート製造時に異物起因で発生する不良を事実上生じることがなく製造することができる。