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特許7385827化合物、樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、回路パターン形成方法及び樹脂の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】化合物、樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、回路パターン形成方法及び樹脂の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/295 20060101AFI20231116BHJP
   C07C 41/18 20060101ALI20231116BHJP
   C07C 41/34 20060101ALI20231116BHJP
   C07C 315/04 20060101ALI20231116BHJP
   C07C 317/22 20060101ALI20231116BHJP
   C07C 319/20 20060101ALI20231116BHJP
   C07C 321/30 20060101ALI20231116BHJP
   C08G 4/00 20060101ALI20231116BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20231116BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20231116BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231116BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20231116BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C07C43/295 C
C07C43/295 Z CSP
C07C41/18
C07C41/34
C07C315/04
C07C317/22
C07C319/20
C07C321/30
C08G4/00
G03F7/023 511
G03F7/11 503
G03F7/20 501
G03F7/26 511
H01L21/30 573
H01L21/30 574
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019569550
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003400
(87)【国際公開番号】W WO2019151400
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2018015520
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158674(WO,A1)
【文献】特開2009-062398(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185335(WO,A1)
【文献】特開平08-087110(JP,A)
【文献】特開平08-328243(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188297(WO,A1)
【文献】特開2005-134434(JP,A)
【文献】米国特許第03281465(US,A)
【文献】特開2016-199472(JP,A)
【文献】特開平11-029621(JP,A)
【文献】特開平04-344286(JP,A)
【文献】特表2009-538943(JP,A)
【文献】特開平08-127552(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
G03F
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1c)で表される化合物。
【化1】
(式(1c)中、Aは、硫黄原子、酸素原子、又はスルホニル基であり、R1aは、水素原子であり、R1bは、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基であり、R6、R7、R8及びR9は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、
前記架橋性基とは、炭素数1~20のアルコキシ基、アリル基を有する基、(メタ)アクリロイル基を有する基、エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基、水酸基を有する基、ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基、グリシジル基を有する基、含ビニルフェニルメチル基を有する基、各種アルキニル基を有する基を有する基、炭素-炭素二重結合を有する基、炭素-炭素三重結合を有する基、及びこれらの基を含む基、のいずれかであり、
前記解離性基とは、フェノール性水酸基を有する基、カルボキシル基を有する基、スルホン酸基を有する基、及びヘキサフルオロイソプロパノール基を有する基、のいずれかであり、
10、R11、R12及びR13は、各々独立して水素原子であり、
6 及び7 各々独立して、0~3の整数であり、
8及びm9は、各々独立して、0~4の整数であり、
nは、1~4の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物をモノマーとして得られる樹脂。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物及び請求項2に記載の樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する組成物。
【請求項4】
溶媒をさらに含有する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
酸発生剤をさらに含有する請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
架橋剤をさらに含有する請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
リソグラフィー用膜形成に用いられる請求項3~6のいずれか1項に記載の組成物
【請求項8】
フォトレジスト層の形成に用いられる請求項7に記載のリソグラフィー用膜形成組成物。
【請求項9】
レジスト下層膜の形成に用いられる請求項7に記載のリソグラフィー用膜形成組成物。
【請求項10】
光学部品形成に用いられる、請求項3~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
形成されたレジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項12】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の化合物及び/又は樹脂の1種類以上である成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有する感放射線性組成物であって、
前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して20~99質量%であり、前記溶媒以外の成分の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して1~80質量%である、感放射線性組成物。
【請求項13】
前記成分(A)と、前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、前記感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))が、前記感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%である、請求項12に記載の感放射線性組成物。
【請求項14】
請求項12又は13のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成された前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項15】
レジスト永久膜の形成方法である、請求項14に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項16】
基板上に、請求項9に記載の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項17】
基板上に、請求項9の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、
該中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、
該中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、
該下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程とを含む、回路パターン形成方法。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物又は請求項2に記載の樹脂の精製方法であって、
前記化合物又は樹脂、及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、回路パターン形成方法及び樹脂の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、LSI(大規模集積回路)の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。また、レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されており、極端紫外光(EUV、13.5nm)の導入も見込まれている。
【0003】
しかしながら、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、その分子量が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広いため、パターン表面にラフネスが生じパターン寸法の制御が困難となり、微細化に限界がある。そこで、これまでに、より解像性の高いレジストパターンを与えるために、種々の低分子量レジスト材料が提案されている。低分子量レジスト材料は分子サイズが小さいことから、解像性が高く、ラフネスが小さいレジストパターンを与えることが期待される。
【0004】
現在、このような低分子量レジスト材料として、様々なものが知られている。例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されており、高耐熱性を有する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3及び非特許文献1参照)も提案されている。また、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノール化合物が、低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネスの改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するレジスト組成物(特許文献4を参照。)を提案している。
【0006】
また、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になっている。
【0007】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(特許文献5参照)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献6参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献7参照)。
【0008】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたChemical Vapour Deposition(CVD)によって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料が求められている。
【0009】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、耐熱性が高く、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(特許文献8を参照。)を提案している。
【0010】
なお、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(特許文献9参照)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(特許文献10参照)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(特許文献11及び12参照。)。
【0011】
さらに光学部品形成組成物として、様々なものが提案されている。例えば、特許文献13には、イオン性液体と、所定のポリアルキレンオキサイド構造及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、所定の(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含む光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。特許文献14には、特定の構造単位を有する共重合体と、特定の硬化促進触媒と、溶剤とを含有する樹脂組成物は、マイクロレンズ用又は平坦化膜用に好適に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-326838号公報
【文献】特開2008-145539号公報
【文献】特開2009-173623号公報
【文献】国際公開第2013/024778号
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2013/024779号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【文献】特開2010-138393号公報
【文献】特開2015-174877号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【文献】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として、有機溶媒に対する溶解性、エッチング耐性、及びレジストパターン形成性を高い次元で同時に満たすことが依然として求められている。
【0015】
そこで、本発明は、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として特に有用な新規化合物及びこの新規化合物をモノマーとして得られる樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、絶縁膜の形成方法、回路パターン形成方法並びに上記化合物又は樹脂の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する新規化合物が、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として特に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される化合物。
【0018】
【化1】
【0019】
(式(1)中、Aは、ヘテロ原子を含む基であり、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1~30の2n価の基であり、R2~R5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、R4の少なくとも1つ及び/又はR5の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、m2及びm3は、各々独立して0~8の整数であり、m4及びm5は、各々独立して0~9の整数であり、nは、1~4の整数であり、p2~p5は各々独立して0~2の整数である。)
[2]
前記式(1)中、R2の少なくとも1つ及び/又はR3の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基である[1]の化合物。
[3]
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物である[1]又は[2]の化合物。
【0020】
【化2】
【0021】
(式(1a)中、A、R2~R5及びnは、それぞれ前記式(1)中のA、R2~R5及びnと同義であり、R1aは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~10の1価の基であり、R1bは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の2n価の基であり、m2及びm3は、各々独立して、0~4の整数であり、m4及びm5は、各々独立して、0~5の整数である。)
[4]
前記式(1a)で表される化合物が、下記式(1b)で表される化合物である[3]の化合物。
【0022】
【化3】
【0023】
(式(1b)中、A、R4、R5、R1a、R1b、m4及びm5並びにnは、それぞれ前記式(1a)中のA、R4、R5、R1a、R1b、m4及びm5並びにnと同義であり、R6及びR7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、m6及びm7は、各々独立して、0~4の整数であり、R10及びR11は、水素原子である。)
[5]
下記式(1c)で表される[4]の化合物。
【0024】
【化4】
【0025】
(式(1c)中、A、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、m6及びm7並びにnは、それぞれ、前記式(1b)中のA、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、m6及びm7並びにnと同義であり、R8及びR9は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、R12及びR13は、各々独立して、水素原子であり、m8及びm9は、各々独立して、0~4の整数である。)
[6]
[1]~[5]のいずれかの化合物をモノマーとして得られる樹脂。
[7]
下記式(2)で表される構造を有する、[6]の樹脂。
【0026】
【化5】
【0027】
(式(2)中、A、R1~R5、m2~m5、n、及びp2~p5は、それぞれ、前記式(1)中のA、R1~R5、m2~m5、n、及びp2~p5と同義であり、Lは、単結合又は連結基である。)
[8]
[1]~[5]のいずれかの化合物及び[6]又は[7]の樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する組成物。
[9]
溶媒をさらに含有する[8]の組成物。
[10]
酸発生剤をさらに含有する[8]又は[9]の組成物。
[11]
架橋剤をさらに含有する[8]~[10]のいずれかの組成物。
[12]
リソグラフィー用膜形成に用いられる[8]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]
フォトレジスト層の形成に用いられる[12]に記載のリソグラフィー用膜形成組成物。
[14]
レジスト下層膜の形成に用いられる[12]に記載のリソグラフィー用膜形成組成物。
[15]
光学部品形成に用いられる、[8]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[16]
[13]の組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
形成されたレジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[17]前記[1]~[7]のいずれかに記載の化合物及び/又は樹脂の1種類以上である成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有する感放射線性組成物であって、
前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して20~99質量%であり、前記溶媒以外の成分の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して1~80質量%である、感放射線性組成物。
[18]前記成分(A)と、前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、前記感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))が、前記感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%である、前記[17]に記載の感放射線性組成物。
[19]前記[17]又は[18]のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成された前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する工程を含む、レジストパターン形成方法。
[20]
レジスト永久膜の形成方法である、[19]に記載のレジストパターン形成方法。
[21]
基板上に、[14]の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
[22]
基板上に、[14]の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、
該中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、
該中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、
該下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程とを含む、回路パターン形成方法。
[23]
[1]~[5]のいずれかの化合物又は[6]又は[7]の樹脂の精製方法であって、
前記化合物又は樹脂、及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、リソグラフィー用膜形成材又は光学部品形成用材料として特に有用な新規化合物及びこの新規化合物をモノマーとして得られる樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、絶縁膜の形成方法、回路パターン形成方法並びに上記化合物又は樹脂の精製方法を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0030】
[化合物]
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表される化合物である。本実施形態の化合物は、例えば、下記(1)~(4)の特性を有する。
(1)本実施形態の化合物は、有機溶媒(特に安全溶媒)に対する優れた溶解性を有する。このため、例えば、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによりリソグラフィー用膜を形成できる。
(2)本実施形態の化合物では、炭素濃度が比較的高く、酸素濃度が比較的低い。また、本実施形態の化合物は、分子中にフェノール性水酸基及び/又はフェノール性チオール基を有するため、硬化剤との反応による硬化物の形成に有用であるが、単独でも高温ベーク時にフェノール性水酸基及び/又はフェノール性チオール基が架橋反応することにより硬化物を形成できる。これらに起因して、本実施形態の化合物は、高い耐熱性を発現でき、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。
(3)本実施形態の化合物は、上記のように、高い耐熱性及びエッチング耐性を発現できるとともに、レジスト層やレジスト中間層膜材料との密着性に優れる。このため、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、レジストパターン形成性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。なお、ここでいう「レジストパターン形成性」とは、レジストパターン形状に大きな欠陥が見られず、解像性及び感度ともに優れる性質をいう。
(4)本実施形態の化合物は、芳香環密度が高いため高屈折率であり、加熱処理しても着色が抑制され、透明性に優れる。
【0031】
【化6】
【0032】
式(1)中、Aは、ヘテロ原子を含む基であり、R1は、置換基を有していても良い炭素数1~30の2n価の基であり、R2~R5は、各々独立して、置換基を有していても良い炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数6~30のアリール基、置換基を有していても良い炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、R4の少なくとも1つ及び/又はR5の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、m2及びm3は、各々独立して0~8の整数であり、m4及びm5は、各々独立して0~9の整数であり、nは、1~4の整数であり、p2~p5は各々独立して0~2の整数である。
【0033】
式(1)中、Aは、ヘテロ原子を含む基であり、炭素原子及び水素原子以外の酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも一つの原子を含む二価の基である。Aに含まれるヘテロ原子は、例えば、原料の入手が容易なヘテロ原子であり、硫黄原子、酸素原子が挙げられる。
【0034】
式(1)中、R1は、炭素数1~30の2n価の基であり、このR1を介して各々の芳香環が結合している。2n価の基の具体例については後述する。
【0035】
式(1)中、R2~R5は、各々独立して、置換基を有していても良い炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数6~30のアリール基、置換基を有していても良い炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していても良い炭素数2~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。但し、R4の少なくとも1つ及び/又はR5の少なくとも1つは水酸基及び/又はチオール基である。
【0036】
式(1)中、m2及びm3は、各々独立して、0~8の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。m4及びm5は、各々独立して0~9の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0037】
式(1)中、nは、1~4の整数であり、1~2の整数であることが好ましい。
【0038】
式(1)中、p2~p5は、各々独立して、0~2の整数であり、0又は1の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0039】
2n価の基としては、n=1である場合、炭素数1~30の2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=2である場合、炭素数1~30の4価の炭化水素基(例えば、アルカンテトライル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=3である場合、炭素数2~30の6価の炭化水素基(例えば、アルカンヘキサイル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=4である場合、炭素数3~30の8価の炭化水素基(例えば、アルカンオクタイル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられる。ここで、上記環式炭化水素基は、有橋環式炭化水素基、芳香族基を有してもよい。
【0040】
また、上記の2n価の基(例えば、2n価の炭化水素基)は、二重結合を有していてもよく、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0041】
式(1)中、R2~R5について、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、無置換のメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等であってもよいし、或いは、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基等の置換基を有するメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等が挙げられる。
【0042】
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基としては、例えば、無置換のフェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基等であってもよいし、或いは、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基等の置換基を有するフェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、無置換のプロペニル基、ブテニル基等であってもよいし、或いは、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基等の置換基を有するプロペニル基、ブテニル基が挙げられる。
【0044】
置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基としては、例えば、無置換のプロピニル基、ブチニル基等であってもよいし、或いは、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基等の置換基を有するプロピニル基、ブチニル基が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基としては、例えば、無置換のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基、ナフタレンオキシ基ビフェニル基等であってもよいし、或いは、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基等の置換基を有するメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、フェノキシ基、ナフタレンオキシ基等が挙げられる。
【0046】
ここで、「解離性基」とは、触媒存在下、又は無触媒下で解離する基をいう。酸解離性基とは、酸の存在下で開裂して、アルカリ可溶性基等に変化を生じる特性基をいう。アルカリ可溶性基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基を有する基、カルボキシル基を有する基、スルホン酸基を有する基、ヘキサフルオロイソプロパノール基を有する基等が挙げられ、中でも、導入試薬の入手容易性の観点から、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。酸解離性基は、高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、酸の存在下で連鎖的に開裂反応を起こす性質を有することが好ましい。酸解離性基としては、特に限定されないが、例えば、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン樹脂、(メタ)アクリル酸樹脂等において提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。
【0047】
酸解離性基の好ましい例としては、酸により解離する性質を有する、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群より選ばれる基が挙げられる。
【0048】
本実施形態における「架橋性基」とは、触媒存在下又は無触媒下で架橋する基をいう。架橋性基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基、アリル基を有する基、(メタ)アクリロイル基を有する基、エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基、水酸基を有する基、ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基、グリシジル基を有する基、含ビニルフェニルメチル基を有する基、各種アルキニル基を有する基を有する基、炭素-炭素二重結合を有する基、炭素-炭素三重結合を有する基、及びこれらの基を含む基等が挙げられる。前記これらの基を含む基としては、上述の基のアルコキシ基-ORx(Rxは、アリル基を有する基、(メタ)アクリロイル基を有する基、エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基、水酸基を有する基、ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基、グリシジル基を有する基、含ビニルフェニルメチル基を有する基、各種アルキニル基を有する基を有する基、炭素-炭素二重結合を有する基、炭素-炭素三重結合を有する基、及びこれらの基を含む基である。)が好適に挙げられる。
【0049】
アリル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-1)で表される基が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
(式(X-1)において、nX1は、1~5の整数である。)
【0052】
(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-2)で表される基が挙げられる。
【0053】
【化8】
【0054】
(式(X-2)において、nX2は、1~5の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。)
【0055】
エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-3)で表される基が挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリロイル基とは、エポキシ(メタ)アクリレートと水酸基が反応して生成する基をいう。
【0056】
【化9】
【0057】
(式(X-3)において、nx3は、0~5の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。)
【0058】
ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-4)で表される基が挙げられる。
【0059】
【化10】
【0060】
(一般式(X-4)において、nx4は、0~5の整数であり、sは、0~3の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。)
【0061】
水酸基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-5)で表される基が挙げられる。
【0062】
【化11】
【0063】
(一般式(X-5)において、nx5は、1~5の整数である。)
【0064】
グリシジル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-6)で表される基が挙げられる。
【0065】
【化12】
【0066】
(式(X-6)において、nx6は、1~5の整数である。)
【0067】
含ビニルフェニルメチル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-7)で表される基が挙げられる。
【0068】
【化13】
【0069】
(式(X-7)において、nx7は、1~5の整数である。)
【0070】
各種アルキニル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-8)で表される基が挙げられる。
【0071】
【化14】
【0072】
(式(X-8)において、nx8は、1~5の整数である。)
【0073】
前記炭素-炭素二重結合含有基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、置換又は非置換のビニルフェニル基、下記式(X-9-1)で表される基等が挙げられる。また、前記炭素-炭素三重結合含有基としては、例えば、置換又は非置換のエチニル基、置換又は非置換のプロパルギル基、下記式(X-9-2)、(X-9-3)で表される基等が挙げられる。
【0074】
【化15】
【0075】
【化16】
【0076】
【化17】
【0077】
前記式(X-9-1)中、RX9A、RX9B及びRX9Cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。前記式(X-9-2)、(X-9-3)中、RX9D、RX9E及びRX9Fは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
【0078】
上述の中でも、紫外線硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基、エポキシ(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基、グリシジル基を有する基、スチレン基を含有する基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、エポキシ(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基がさらに好ましい。また、耐熱性の観点から、各種アルキニル基を有する基も好ましい。
【0079】
上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量ながらも、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するため、高温ベーク条件でも使用可能である。また、分子中に3級炭素又は4級炭素を有しており、結晶化が抑制され、リソグラフィー用膜形成材料として好適に用いられる。
【0080】
また、上記式(1)で表される化合物は、有機溶媒(特に安全溶媒)に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。このため、上記式(1)で表される化合物を含むリソグラフィー用膜形成材料は、優れたレジストパターン形成性を有する。上記有機溶媒としては、後述する[組成物]の項で例示する[溶媒]に記載の有機溶媒が挙げられる。
【0081】
また、上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量であり、低粘度であるため、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させつつ、膜の平坦性を高めることが容易である。その結果、上記式(1)で表される化合物を含むリソグラフィー用膜形成材料は、埋め込み特性及び平坦化特性に優れる。また、上記式(1)で表される化合物は、比較的高い炭素濃度を有する化合物であることから、高いエッチング耐性も発現できる。
【0082】
さらにまた、上記式(1)で表される化合物は、芳香環密度が高いため屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理によっても着色が抑制されることから、各種光学部品形成材料としても有用である。上記式(1)で表される化合物は、化合物の酸化分解を抑制して着色を抑え、耐熱性及び溶媒溶解性を向上させる観点から、4級炭素を有する化合物であることが好ましい。
【0083】
上記光学部品としては、例えば、フィルム状、シート状の形態であってもよく、プラスチックレンズ(例えば、プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)が挙げられる。式(1)で表される化合物は、特に高屈折率が求められている固体撮像素子の部材であるフォトダイオード上の埋め込み膜及び平坦化膜、カラーフィルター前後の平坦化膜、マイクロレンズ、マイクロレンズ上の平坦化膜及びコンフォーマル膜の形成材料として好適に用いられる。
【0084】
上記式(1)で表される化合物は、架橋反応のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、R2の少なくとも1つ及び/又はR3の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基であることが好ましい。
【0085】
上記式(1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0086】
【化18】
【0087】
上記式(1-1)中、A、R4、R5、n、p2~p5、m4及びm5並びにnは、それぞれ、式(1)中のA、R4、R5、n、p2~p5、m4及びm5並びにnと同義であり、R1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、R1bは、炭素数1~30の2n価の基であり、R6~R7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R10~R11は、水素原子であり、m6及びm7は、各々独立して0~7の整数である。炭素数1~10の1価の基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の炭素数1~10の1価の炭化水素基が挙げられ、炭素数1~30の2n価の基としては、上記の式(1)中のR1として例示した2n価の基が挙げられる。
【0088】
また、上記式(1-1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0089】
【化19】
【0090】
上記式(1-2)中、A、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、n、p2~p5、m6及びm7は、それぞれ、式(1-1)中のA、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、n、p2~p5、m6及びm7と同義であり、R8~R9は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R12~R13は、各々独立して、水素原子であり、m8及びm9は、各々独立して、0~8の整数である。
【0091】
また、上記式(1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0092】
【化20】
【0093】
上記式(1a)中、A、R2~R5及びnは、それぞれ前記式(1)中のA、R2~R5及びnと同義であり、R1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、R1bは、炭素数1~30の2n価の基であり、m2及びm3は、各々独立して、0~4の整数であり、m4及びm5は、各々独立して、0~5の整数である。炭素数1~10の1価の基としては、例えば、アルキル基、アリール基などが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の炭素数1~10の1価の炭化水素基が挙げられ、炭素数1~30の2n価の基としては、上記の式(1)中のR1として例示した2n価の基が挙げられる。
【0094】
上記式(1a)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1b)で表される化合物であることがより好ましい。
【0095】
【化21】
【0096】
上記式(1b)中、A、R4、R5、R1a、R1b、m4及びm5並びにnは、それぞれ上記式(1a)中のA、R4、R5、R1a、R1b、m4及びm5並びにnと同義であり、R6及びR7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。m6及びm7は、各々独立して、0~4の整数であり、R10及びR11は、水素原子である。
【0097】
上記式(1b)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1c)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0098】
【化22】
【0099】
上記式(1c)中、A、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、m6及びm7並びにnは、それぞれ、上記式(1b)中のA、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、m6及びm7並びにnと同義であり、R8及びR9は、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、架橋性基、解離性基、チオール基又は水酸基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。R12及びR13は、各々独立して、水素原子であり、m8及びm9は、各々独立して、0~4の整数である。
【0100】
上記式(1c)で表される化合物は、さらなる有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(BisF-1)~(BisF-3)、(BiF-1)~(BiF-7)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0101】
【化23】
【0102】
上記(BisF-1)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0103】
【化24】
【0104】
上記(BisF-2)中、A及びR10~R11は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R11と同義である。
【0105】
【化25】
【0106】
上記(BisF-3)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0107】
【化26】
【0108】
上記(BiF-1)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0109】
【化27】
【0110】
上記(BiF-2)中、A及びR10~R11は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R11と同義である。
【0111】
【化28】
【0112】
上記(BiF-3)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0113】
【化29】
【0114】
上記(BiF-4)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0115】
【化30】
【0116】
上記(BiF-5)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0117】
【化31】
【0118】
上記(BiF-6)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0119】
【化32】
【0120】
上記(BiF-7)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)中のA及びR10~R13と同義である。
【0121】
式(1)で表される化合物は、耐熱性、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式で表される群から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0122】
【化33】
【0123】
【化34】
【0124】
【化35】
【0125】
【化36】
【0126】
【化37】
【0127】
【化38】
【0128】
【化39】
【0129】
上記各式中、Aは、上記式(1)中のAと同義である。
【0130】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。但し、上記式(1)で表される化合物は、以下の式で表される化合物に限定されない。
【0131】
【化40】
【0132】
【化41】
【0133】
【化42】
【0134】
【化43】
【0135】
【化44】
【0136】
【化45】
【0137】
上記各式中、A、R2~R5、及びm2~m5は、それぞれ、上記式(1)中のA、R2~R5、及びm2~m5と同義である。
【0138】
【化46】
【0139】
【化47】
【0140】
【化48】
【0141】
【化49】
【0142】
上記各式中、A及びR2~R5は、それぞれ、上記式(1)中のA及びR2~R5と同義である。m2'及びm3'は、各々独立して0~4の整数であり、m4'及びm5'は各々独立して0~5の整数である。
【0143】
【化50】
【0144】
【化51】
【化52】
【0145】
上記式中、A、R2~R5、及びm2~m5は、それぞれ、上記式(1)中のA、R2~R5、及びm2~m5と同義である。
【0146】
【化53】
【0147】
【化54】
【0148】
【化55】
【0149】
上記各式中、A、及びR2~R5は、それぞれ、上記式(1)中のA、及びR2~R5と同義である。m2'及びm3'は、各々独立して、0~4の整数であり、m4'及びm5'は各々独立して0~5の整数である。
【0150】
【化56】
【0151】
【化57】
【0152】
【化58】
【0153】
【化59】
【0154】
【化60】
【0155】
【化61】
【0156】
【化62】
【0157】
【化63】
【0158】
【化64】
【0159】
【化65】
【0160】
【化66】
【0161】
【化67】
【0162】
上記各式中、Aは、上記式(1)中のAと同義である。
【0163】
式(1)で表される化合物の合成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、常圧下、下記式(1-x)で表される化合物と、下記式(1-y)で表される化合物と、下記式(z1)又は下記式(z2)で表される化合物とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。上記の反応は、必要に応じて、加圧下で行われてもよい。
【0164】
【化68】
【0165】
上記式(1-x)中、A、R2、R4、m2、m4、p2及びp4は、それぞれ、式(1)中のA、R2、R4、m2、m4、p2及びp4と同義であり、上記式(1-y)中、A、R3、R5、m3、m5、p3及びp5は、それぞれ、式(1)中のA、R3、R5、m3、m5、p3及びp5と同義であり、上記式(1-x)で表される化合物と上記式(1-y)で表される化合物は同一であってもよい。
【0166】
上記式(z1)中、R1及びnは、それぞれ、上記式(1)中のR1及びnと同義であり、上記式(z2)中、R1a、R1b及びnは、それぞれ、上記式(1a)中のR1a、R1b及びnと同義である。
【0167】
上記の重縮合反応の具体例としては、ジヒドロキシフェニルエーテル類、ジヒドロキシフェニルチオエーテル類、ジヒドロキシナフチルエーテル類、ジヒドロキシナフチルチオエーテル類、ジヒドロキシアントラシルエーテル類、ジヒドロキシアントラシルチオエーテル類と、対応するアルデヒド類又はケトン類とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。
【0168】
ジヒドロキシフェニルエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシフェニルエーテル、メチルジヒドロキシフェニルエーテル、メトキシジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシフェニルエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシフェニルエーテルを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0169】
ジヒドロキシフェニルチオエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシフェニルチオエーテル、メチルジヒドロキシフェニルチオエーテル、メトキシジヒドロキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシフェニルチオエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシフェニルチオエーテルを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0170】
ジヒドロキシナフチルエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシナフチルエーテル、メチルジヒドロキシナフチルエーテル、メトキシジヒドロキシナフチルエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシナフチルエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシナフチルエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0171】
ジヒドロキシナフチルチオエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシナフチルチオエーテル、メチルジヒドロキシナフチルチオエーテル、メトキシジヒドロキシナフチルチオエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシナフチルチオエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシナフチルチオエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0172】
アルデヒド類としては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ペンタベンズアルデヒド、ブチルメチルベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、フロロメチルベンズアルデヒド、シクロプロピルアルデヒド、シクロブチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、シクロデシルアルデヒド、シクロウンデシルアルデヒド、シクロプロピルベンズアルデヒド、シクロブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、シクロデシルベンズアルデヒド、シクロウンデシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0173】
ケトン類としては、特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、アセチルメチルベンゼン、アセチルジメチルベンゼン、アセチルトリメチルベンゼン、アセチルエチルベンゼン、アセチルプロピルベンゼン、アセチルブチルベンゼン、アセチルペンタベンゼン、アセチルブチルメチルベンゼン、アセチルヒドロキシベンゼン、アセチルジヒドロキシベンゼン、アセチルフロロメチルベンゼン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル等が挙げられる。これらのケトン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0174】
アルデヒド類又はケトン類としては、高い耐熱性及び高いエッチング耐性を両立するという観点から、芳香環を有するアルデヒド又は芳香族を有するケトンを用いることが好ましい。
【0175】
上記反応に用いる酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることが好ましい。酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0176】
上記反応に用いる塩基触媒については、特に限定されず、例えば、金属アルコキサイド(ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムメトキサイド、カリウムエトキサイド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキサイド等)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類炭酸水素塩、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1-メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)の有機塩基等が挙げられる。これらの塩基触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、金属アルコキサイド、金属水酸化物やアミン類が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。塩基触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0177】
上記反応の際には、反応溶媒を用いても良い。反応溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0178】
溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、上記反応における反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、10~200℃の範囲である。
【0179】
本実施形態の式(1)で表される化合物を得るためには、反応温度は高い方が好ましく、具体的には60~200℃の範囲が好ましい。なお、反応方法は、特に限定されないが、例えば、原料(反応物)及び触媒を一括で仕込む方法や、原料(反応物)を触媒存在下で逐次滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃ にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物である化合物を得ることができる。
【0180】
好ましい反応条件としては、上記式(z1)又は(z2)で表されるアルデヒド類又はケトン類1モルに対し、上記式(1-x)で表される化合物及び上記式(1-y)で表される化合物を1.0モル~過剰量使用し、更には酸触媒を0.001~1モル使用し、常圧で、50~150℃で20分~100時間程度反応させる条件が挙げられる。
【0181】
反応終了後、公知の方法により目的物を単離することができる。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離させ、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的物である上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0182】
[樹脂]
本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂である。すなわち、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物をモノマー成分として含む。本実施形態の樹脂の具体例として、式(2)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。
【0183】
【化69】
【0184】
上記式(2)中、A、R1~R5、m2~m5、n、及びp2~p5は、それぞれ、前記式(1)中のA、R1~R5、m2~m5、n、及びp2~p5と同義であり、Lは、単結合又は連結基である。
【0185】
上記連結基としては、例えば、後述する架橋反応性のある化合物由来の残基等が挙げられる。
【0186】
本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物と、架橋反応性のある化合物とを反応させることにより得られる。
【0187】
架橋反応性のある化合物としては、上記式(1)で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものであればよく、例えば、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸ハライド類、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート化合物、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられる。
【0188】
本実施形態の樹脂の具体例としては、例えば、上記式(1)で表される化合物と架橋反応性のある化合物であるアルデヒド類又はケトン類との縮合反応等により得られるノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0189】
ここで、上記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒド類としては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、ホルムアルデヒドを用いることがより好ましい。アルデヒド類の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.2~5モルが好ましく、より好ましくは0.5~2モルである。
【0190】
上記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるケトン類としては、特に限定されず、例えば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル等が挙げられる。これらのケトン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選択される1種以上を用いることがより好ましい。ケトン類の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.2~5モルが好ましく、より好ましくは0.5~2モルである。
【0191】
上記式(1)で表される化合物と、アルデヒド又はケトンとの縮合反応において、触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒又は塩基触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0192】
但し、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等の非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類又はケトン類は必要ない。
【0193】
上記式(1)で表される化合物とアルデヒド類又はケトン類との縮合反応において、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒等が例示される。なお、溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0194】
溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10~200℃の範囲である。なお、反応方法としては、上記式(1)で表される化合物、アルデヒド類及び/又はケトン類、並びに触媒を一括で仕込む方法や、上記式(1)で表される化合物、アルデヒド類及び/又はケトン類を触媒存在下で逐次的に滴下していく方法が挙げられる。
【0195】
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃ にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物(例えば、ノボラック化した樹脂)を得ることができる。
【0196】
なお、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物の合成反応時に得られるものでもある。上記式(1)で表される化合物の合成で用いたものと上記式(1)で表される化合物を重合する際に同じアルデヒド又はケトンを用いた場合に相当する。
【0197】
ここで、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで共重合可能なフェノール類としては、特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブチルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロガロール、チモール等が挙げられる。
【0198】
また、本実施形態の樹脂は、上述した他のフェノール類以外に、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。共重合モノマーとしては、特に限定されず、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナエン、ピネン、リモネン等が挙げられる。なお、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類との2元以上の(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマーとの3元以上の(例えば、3~4元系)共重合体であってもよい。
【0199】
なお、本実施形態の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、GPC測定によるポリスチレン換算で、500~30,000であることが好ましく、より好ましくは750~20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク中の揮発成分を抑制する観点から、本実施形態の樹脂は、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2~7の範囲内のものが好ましい。
【0200】
上述した式(1)で表される化合物、及び/又は式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂は、湿式プロセスの適用がより容易になる等の観点から、溶媒に対する溶解性が高いものであることが好ましい。より具体的には、これら化合物及び/又は樹脂は、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)及び/又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒とする場合、当該溶媒に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましい。ここで、PGME及び/又はPGMEAに対する溶解度は、「樹脂の質量÷(樹脂の質量+溶媒の質量)×100(質量%)」と定義される。例えば、上記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物をモノマーとして得られる樹脂10gがPGMEA90gに対して溶解すると評価されるのは、式(1)で表される化合物及び/又は該化合物をモノマーとして得られる樹脂のPGMEAに対する溶解度が「10質量%以上」となる場合であり、溶解しないと評価されるのは、当該溶解度が「10質量%未満」となる場合である。
【0201】
[組成物]
本実施形態の組成物は、式(1)で表される化合物、及び式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。
【0202】
本実施形態の組成物は、本実施形態の化合物及び/又は樹脂を含有するため、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるリソグラフィー用膜を形成するための組成物(即ち、「リソグラフィー用膜形成組成物」)として有用である。本実施形態の組成物は、耐熱性および溶媒溶解性の高い特定構造を有する化合物又は樹脂を含有するため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、フォトレジスト層と比較してプラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。さらに、本実施形態の組成物は、下層膜を形成した場合にレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成できる。さらには、芳香環密度が高いため屈折率が高く、また、低温から高温までの広範囲の熱処理による着色が抑制されることから、光学部品形成にも好適に用いられる。
なお、本明細書において、フォトレジスト層の形成に用いられるリソグラフィー用膜形成組成物を「レジスト組成物」ということがある。また、レジスト下層膜の形成に用いられるリソグラフィー用膜形成組成物を「リソグラフィー用下層膜形成組成物」ということがある。
【0203】
[リソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態におけるリソグラフィー用膜形成組成物はレジスト組成物、リソグラフィー用下層膜形成組成物、レジスト永久膜形成組成物として好適に用いることができる。
【0204】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、上記式(1)で表される化合物及び該化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群より選ばれる1種以上の成分(以下、「成分(A)」とも言う。)を含有する。
【0205】
本実施形態のレジスト組成物は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルプロピオン酸ブチル、3-メトキシ-3-メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;γ-ラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0206】
本実施形態で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも1種である。
【0207】
本実施形態において固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0208】
[他の成分]
本実施形態のレジスト組成物は、上述した成分(A)及び溶媒以外に、必要に応じて、酸発生剤、架橋剤等の他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの任意成分について説明する。
【0209】
[酸発生剤(C)]
本実施形態のレジスト組成物において、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含むことが好ましい。酸発生剤(C)は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0210】
酸発生剤(C)の使用量は、固形成分全重量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、10~25質量%が特に好ましい。酸発生剤(C)を上記範囲内で使用することにより、高感度でかつ低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる。本実施形態では、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらに微細加工が可能である。
【0211】
[酸架橋剤(G)]
本実施形態において、酸架橋剤(G)を1種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、成分(A)を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)としては、例えば成分(A)を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0212】
このような架橋性基としては、特に限定されないが、例えば(i)ヒドロキシ(C1-C6アルキル基)、C1-C6アルコキシ(C1-C6アルキル基)、アセトキシ(C1-C6アルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(C1-C6アルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、C1-C6アリルオキシ(C1-C6アルキル基)、C1-C6アラルキルオキシ(C1-C6アルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。本実施形態における酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0213】
上記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸架橋剤(G)は単独で又は2種以上を使用することができる。
【0214】
本実施形態において酸架橋剤(G)の使用量は、固形成分全重量の0.5~49質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%がさらに好ましく、2~20質量%が特に好ましい。上記酸架橋剤(G)の使用量を0.5質量%以上とすることで、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率が低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのを抑制することができる傾向にあり、一方、49質量%以下とすることで、レジストとしての耐熱性の低下を抑制できる傾向にある。
【0215】
[酸拡散制御剤(E)]
本実施形態においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)をレジスト組成物に配合してもよい。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。このような酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。
【0216】
上記酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0217】
酸拡散制御剤(E)の配合量は、固形成分全重量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%がさらに好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を防止することができる傾向にある。さらに、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することを防止できる傾向にある。また、配合量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる傾向にある。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる傾向にある。
【0218】
[その他の成分(F)]
本実施形態のレジスト組成物には、その他の成分(F)として、必要に応じて、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0219】
[溶解促進剤]
低分子量溶解促進剤は、本実施形態の成分(A)の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の成分(A)の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、必要に応じて、使用することができる。上記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0220】
溶解促進剤の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0221】
[溶解制御剤]
溶解制御剤は、本実施形態の成分(A)の現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、レジスト被膜の焼成、放射線照射、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0222】
溶解制御剤としては、特に限定されないが、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
溶解制御剤の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0223】
[増感剤]
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(C)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0224】
増感剤の配合量は使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0225】
[界面活性剤]
界面活性剤は本実施形態のレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤はアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤あるいは両性界面活性剤のいずれでもよい。好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、レジスト組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等が挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、特に限定されないが、以下商品名で、例えば、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等を挙げることができる。
【0226】
界面活性剤の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0227】
[有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体]
本実施形態のレジスト組成物には、感度劣化防止又はレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。なお、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0228】
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、単独で又は2種以上を使用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0229】
[上述した添加剤(溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等)以外のその他添加剤]
さらに、本実施形態のレジスト組成物には、必要に応じて、上記溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体以外の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4-ヒドロキシ-4’-メチルカルコン等を挙げることができる。
【0230】
本実施形態のレジスト組成物において、任意成分(F)の合計量は、固形成分全重量の0~99質量%であり、0~49質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%がさらに好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0231】
[レジスト組成物における各成分の配合割合]
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態の成分(A)の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(成分(A)、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)(「任意成分(F)」とも記す)などの任意に使用される成分を含む固形成分の総和、以下同様。)の50~99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%である。上記含有量の場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる傾向にある。なお、本実施形態の化合物及び樹脂との両方を含有する場合、上記含有量は、本実施形態の化合物及び樹脂の合計量である。
【0232】
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態の化合物及び/又は樹脂(成分(A))、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量比(成分(A)/酸発生剤(C)/酸架橋剤(G)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F))は、レジスト組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは50~99.4質量%/0.001~49質量%/0.5~49質量%/0.001~49質量%/0~49質量%であり、より好ましくは55~90質量%/1~40質量%/0.5~40質量%/0.01~10質量%/0~5質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%/3~30質量%/1~30質量%/0.01~5質量%/0~1質量%であり、特に好ましくは60~70質量%/10~25質量%/2~20質量%/0.01~3質量%/0質量%、である。成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。上記配合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に一層優れる傾向にある。なお、「固形分」とは、溶媒を除いた成分をいい、「固形分100質量%」とは、溶媒を除いた成分を100質量%とすることをいう。
【0233】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製される。
【0234】
本実施形態のレジスト組成物は、必要に応じて、本実施形態の樹脂以外の他の樹脂を含むことができる。その他の樹脂としては、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。上記樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0235】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0236】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。また、LERの低減、ディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0237】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストとして一層好適である。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0238】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又は走査型電子顕微鏡による断面観察等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0239】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストとして一層好適である。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0240】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0241】
[感放射線性組成物]
本実施形態の感放射線性組成物は、本実施形態の成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有し、前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して、好ましくは20~99質量%であり、前記溶媒以外の成分の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して、好ましくは1~80質量%である。
【0242】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、後述するジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と併用し、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線を照射することにより、現像液に易溶な化合物となるポジ型レジスト用基材として有用である。g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線により、成分(A)の性質は大きくは変化しないが、現像液に難溶なジアゾナフトキノン光活性化合物(B)が易溶な化合物に変化することで、現像工程によってレジストパターンを作り得る。
【0243】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、比較的低分子量の化合物であることから、得られたレジストパターンのラフネスは非常に小さい。
【0244】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。成分(A)のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、400℃である。成分(A)のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、半導体リソグラフィープロセスにおいて、パターン形状を維持しうる耐熱性を有し、高解像度などの性能が向上する。
【0245】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度の示差走査熱量分析により求めた結晶化発熱量は20J/g未満であるのが好ましい。また、(結晶化温度)-(ガラス転移温度)は好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは130℃以上である。結晶化発熱量が20J/g未満、又は(結晶化温度)-(ガラス転移温度)が上記範囲内であると、感放射線性組成物をスピンコートすることにより、アモルファス膜を形成しやすく、かつレジストに必要な成膜性が長期に渡り保持でき、解像性を向上することができる傾向にある。
【0246】
本実施形態において、上記結晶化発熱量、結晶化温度及びガラス転移温度は、島津製作所製DSC/TA-50WSを用いた示差走査熱量分析により求めることができる。試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(50mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。さらに急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で400℃まで昇温する。ステップ状に変化したベースラインの段差の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)、その後に現れる発熱ピークの温度を結晶化温度とする。発熱ピークとベースラインに囲まれた領域の面積から発熱量を求め、結晶化発熱量とする。
【0247】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、常圧下、100以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは150℃以下において、昇華性が低いことが好ましい。昇華性が低いとは、熱重量分析において、所定温度で10分保持した際の重量減少が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下であることを示す。昇華性が低いことにより、露光時のアウトガスによる露光装置の汚染を防止することができる。また低ラフネスで良好なパターン形状を得ることができる傾向にある。
【0248】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれ、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上溶解し、よりさらに好ましくは、PGMEA、PGME、CHNから選ばれ、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、20質量%以上溶解し、特に好ましくはPGMEAに対して、23℃で、20質量%以上溶解する。上記条件を満たしていることにより、実生産における半導体製造工程での使用が可能となる傾向にある。
【0249】
[ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)]
本実施形態の感放射線性組成物に含有させるジアゾナフトキノン光活性化合物(B)は、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含む、ジアゾナフトキノン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分(感光剤)として用いられているものであれば特に制限なく、1種又は2種以上任意に選択して用いることができる。
【0250】
このような感光剤としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これら酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する低分子化合物又は高分子化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましいものである。ここで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。水酸基を含む酸クロライドと縮合可能な化合物としては、特に限定されないが、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”-テトラヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”-ペンタヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。
【0251】
また、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドなどの酸クロライドとしては、例えば、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルフォニルクロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0252】
本実施形態の感放射線性組成物は、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製されることが好ましい。
【0253】
[溶媒]
本実施形態の感放射線性組成物に用いることにできる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、及び乳酸エチルが挙げられる。このなかでもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい、溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0254】
溶媒の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、20~99質量%であり、好ましくは50~99質量%であり、より好ましくは60~98質量%であり、特に好ましくは90~98質量%である。
【0255】
また、溶媒以外の成分(固形成分)の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、1~80質量%であり、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは2~40質量%であり、特に好ましくは2~10質量%である。
【0256】
[感放射線性組成物の特性]
本実施形態の感放射線性組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0257】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0258】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストとして一層好適である。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0259】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0260】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上が好ましく、10~10000Å/secがより好ましく、100~1000Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストとして一層好適である。また、10000Å/sec以下の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する傾向にある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果が得られ易くなる。
【0261】
[感放射線性組成物における各成分の配合割合]
本実施形態の感放射線性組成物において、成分(A)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは25~75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、成分(A)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0262】
本実施形態の感放射線性組成物において、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは25~75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0263】
[その他の成分(D)]
本実施形態の感放射線性組成物には、必要に応じて、成分(A)及びジアゾナフトキノン光活性化合物(B)以外の成分として、上述の酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その他の成分(D)を任意成分(D)ということがある。
【0264】
成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))は、感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%であり、より好ましくは5~95質量%/95~5質量%/0~49質量%であり、さらに好ましくは10~90質量%/90~10質量%/0~10質量%であり、特に好ましくは20~80質量%/80~20質量%/0~5質量%であり、最も好ましくは25~75質量%/75~25質量%/0質量%である。
【0265】
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。本実施形態の感放射線性組成物は、各成分の配合割合を上記範囲にすると、ラフネスに加え、感度、解像度等の性能に優れる傾向にある。
【0266】
本実施形態の感放射線性組成物は本実施形態以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0267】
[アモルファス膜の製造方法]
本実施形態のアモルファス膜の製造方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にアモルファス膜を形成する工程を含む。
【0268】
[感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法]
本実施形態の感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成された前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を含む。なお、詳細には以下の、レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法と同様の操作とすることができる。
【0269】
[レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法は、上述した本実施形態のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備える。本実施形態におけるレジストパターンは多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。また、本実施形態のレジストパターンの形成方法は、後述するレジスト永久膜の形成方法としても適用することができる。
【0270】
レジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に上記本実施形態のレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例表することができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0271】
次に、必要に応じて、塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があり好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。
【0272】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。上記現像液としては、使用する成分(A)に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。
【0273】
ケトン系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0274】
エステル系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
【0275】
アルコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0276】
エーテル系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0277】
アミド系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が使用できる。
【0278】
炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0279】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であることが好ましく、50質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましく、10質量%未満であることがよりさらに好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがよりさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0280】
アルカリ水溶液としては、特に限定されないが、例えば、モノ-、ジ-あるいはトリアルキルアミン類、モノ-、ジ-あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0281】
現像液としては、特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善するため好ましい。
【0282】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。
【0283】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0284】
現像方法としては、特に限定されないが、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0285】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0286】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0287】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0288】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、特に限定されないが、例えば、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノールなどを用いることができる。
【0289】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0290】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる傾向にある。
【0291】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0292】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0293】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことができる。
【0294】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。上記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等が挙げられる。
【0295】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することができる。上記有機溶剤として、特に限定されないが、例えば、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、EL(乳酸エチル)等が挙げられる。上記剥離方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0296】
本実施形態において得られる配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
[リソグラフィー用下層膜形成組成物]
【0297】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、本実施形態の化合物又は樹脂以外に、必要に応じて、有機溶媒、架橋剤、酸発生剤、その他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの任意成分について説明する。
【0298】
[溶媒]
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜形成組成物は、溶媒を含有してもよい。溶媒としては、本実施形態の化合物又は樹脂溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。ここで、本実施形態の化合物又は樹脂は、上述した通り、有機溶媒に対する溶解性に優れるため、種々の有機溶媒が好適に用いられる。
【0299】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0300】
上記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、及びアニソールからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0301】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、リソグラフィー用膜形成材料100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~5,000質量部であることがより好ましく、200~1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0302】
[架橋剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0303】
架橋剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物及びシアネート化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、エッチング耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0304】
フェノール化合物としては、公知のものが使用できる。例えば、フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性及び溶解性の点から、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。
【0305】
エポキシ化合物としては、公知のものが使用でき、1分子中にエポキシ基を2個以上有するもの中から選択される。エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’-テトラメチル-ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性と溶解性の観点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0306】
シアネート化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。シアネート化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。また、シアネート化合物は、芳香族基を有するものが好ましく、シアネート基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。このようなシアネート化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールE、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールAノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂、3官能フェノール、4官能フェノール、ナフタレン型フェノール、ビフェニル型フェノール、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンアラルキル樹脂、脂環式フェノール、リン含有フェノール等の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。これらのシアネート化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記のシアネート化合物は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。
【0307】
アミノ化合物としては、特に限定されず、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、O-トリジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール等が挙げられる。これらのアミノ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等の芳香族アミン類、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルージアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチルージアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン類、及びエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0308】
ベンゾオキサジン化合物としては、二官能性ジアミン類と単官能フェノール類から得られるP-d型ベンゾオキサジン、単官能性ジアミン類と二官能性フェノール類から得られるF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0309】
メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。これらのメラミン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0310】
グアナミン化合物としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。これらのグアナミン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0311】
グリコールウリル化合物としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。これらのグリコールウリル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0312】
ウレア化合物としては、例えば、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレア等が挙げられる。これらのウレア化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0313】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤としては、特に限定されず、例えば、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類、2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-シアナトシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-シアナトフェニル)エ-テル等のアリルシアネート類、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールアリルエーテル等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類であることが好ましい。
【0314】
本実施形態において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、リソグラフィー用膜形成材料100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは10~40質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内にあることにより、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0315】
[架橋促進剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、必要に応じて架橋反応(硬化反応)を促進させるために架橋促進剤を含有してもよい。架橋促進剤としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0316】
ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよく、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0317】
このようなラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のケトン系光重合開始剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノオエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメトルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0318】
また、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2´-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系重合開始剤も挙げられる。
【0319】
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0320】
[酸発生剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させる等の観点から、酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれも使用することができる。酸発生剤としては、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0321】
リソグラフィー用膜形成組成物中の酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、リソグラフィー用膜形成材料100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~40質量部である。酸発生剤の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応が高められる傾向にあり、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0322】
[塩基性化合物]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0323】
塩基性化合物は、酸発生剤から微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐ役割、すなわち酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものが挙げられる。
【0324】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物中の塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、リソグラフィー用膜形成材料100質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部である。塩基性化合物の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0325】
[その他の添加剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、熱や光による硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、特に限定されず、例えば、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂;ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレン等のナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレン等のビフェニル環、チオフェン、インデン等のヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられる。本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0326】
[リソグラフィー用下層膜]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物から形成される。その形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布方法、印刷法等により基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下層膜を形成することができる。
【0327】
下層膜の形成時には、レジスト上層膜とのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、30~20,000nmであることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmである。
【0328】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有レジスト層、又は炭化水素からなる単層レジストを作製することが好ましく、3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層を作製し、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0329】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0330】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果を有する中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0331】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した、反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによって中間層を形成する方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0332】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0333】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0334】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0335】
上述した方法により形成されるレジストパターンは、下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0336】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0337】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0338】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報(特許文献9)、WO2004/066377(特許文献10)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0339】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好適に用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献11)、特開2007-226204号(特許文献12)に記載されたものを用いることができる。
【0340】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0341】
本実施形態における下層膜は、基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。なお、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等、種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~50,000nmである。
【0342】
[レジストパターン形成方法]
本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。本実施形態のレジストパターン形成方法は、各種パターンの形成に用いることができ、絶縁膜パターンの形成方法であることが好ましい。
【0343】
[回路パターン形成方法]
本実施形態の回路パターン形成方法は、基板上に、本実施形態の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程とを含む。
【0344】
[レジスト永久膜]
本実施形態のレジスト永久膜は、本実施形態の組成物を含む。本実施形態の組成物を塗布してなるレジスト永久膜は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、半導体デバイス缶啓関係では、ソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、薄型ディスプレー関連では、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、スペーサーなどが挙げられる。特に、本実施形態の組成物を含むレジスト永久膜は、耐熱性や耐湿性に優れている上に昇華成分による汚染性が少ないという非常に優れた利点も有する。特に表示材料において、重要な汚染による画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼ね備えた材料となる。
【0345】
本実施形態の組成物をレジスト永久膜用途に用いる場合には、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂、界面活性剤や染料、充填剤、架橋剤、溶解促進剤などの各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより、レジスト永久膜用組成物とすることができる。
【0346】
本実施形態の組成物は前記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、本実施形態の組成物が充填剤や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散又は混合して調整することができる。
【0347】
[化合物又は樹脂の精製方法]
本実施形態の化合物又は樹脂の精製方法は、本実施形態の化合物又は樹脂を水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む。より詳細には、本実施形態の精製方法は、水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させ、その溶液を酸性水溶液と接触させ抽出処理を行うことにより、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液(A)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相を分離して精製する。本実施形態の精製方法により、本実施形態の化合物又は樹脂中の種々の金属の含有量を著しく低減させることができる。
【0348】
本実施形態において、「水と任意に混和しない有機溶媒」とは、20~90℃において水に対する溶解度が50質量%未満であることをいい、生産性の観点から、25質量%未満であることが好ましい。水と任意に混和しない有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。使用する有機溶媒の量は、本実施形態の化合物又は樹脂に対して、通常1~100重量倍程度使用される。
【0349】
使用される溶媒の具体例としては、例えば、国際公開WO2015/080240号公報に記載されているものが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、特にシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0350】
使用される酸性の水溶液としては、一般に知られる有機、無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。例えば、国際公開WO2015/080240号公報に記載されているものが挙げられる。これらの酸性の水溶液は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液が好ましく、さらに、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液が好ましく、特に蓚酸の水溶液が好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より金属を除去できると考えられる。また、ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好適に用いられる。
【0351】
本実施形態で使用する酸性の水溶液のpHは特に制限されないが、水溶液の酸性度があまり大きくなると式(1)で表される化合物又は該化合物をモノマーとして得られる樹脂に悪影響を及ぼすことがあり好ましくない。通常、pH範囲は0~5程度であり、より好ましくはpH0~3程度である。
【0352】
本実施形態で使用する酸性の水溶液の使用量は特に制限されないが、その量があまりに少ないと、金属除去のための抽出回数多くする必要があり、逆に水溶液の量があまりに多いと全体の液量が多くなり操作上の問題を生ずることがある。水溶液の使用量は、通常、有機溶媒に溶解した本実施形態の化合物又は樹脂の溶液に対して10~200質量%であり、好ましくは20~100質量%である。
【0353】
本実施形態では、例えば、上記のような酸性の水溶液と、本実施形態の化合物又は樹脂及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液(A)とを接触させることにより金属分を抽出する。
【0354】
抽出処理を行う際の温度は通常、20~90℃であり、好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。これにより、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。また本操作により、溶液の酸性度が低下し、本実施形態の化合物又は樹脂の変質を抑制することができる。
【0355】
得られる混合物は、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相と水相に分離するのでデカンテーション等により、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液を回収する。静置する時間は特に制限されないが、静置する時間があまりに短いと有機溶媒を含む溶液相と水相との分離が悪くなり好ましくない。通常、静置する時間は1分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0356】
酸性の水溶液を用いてこのような抽出処理を行った場合は、処理を行ったあとに、該水溶液から抽出し、回収した本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液(A)は、さらに水との抽出処理を行うことが好ましい。抽出操作は、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。そして得られる溶液は、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相と水相に分離するのでデカンテーション等により本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相を回収する。また、ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に制限されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0357】
こうして得られた本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液に混入する水分は減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により有機溶媒を加え、本実施形態の化合物又は樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0358】
得られた本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液から、本実施形態の化合物又は樹脂のみ得る方法は、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【実施例
【0359】
以下、本実施形態を合成例及び実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0360】
(炭素濃度及び酸素濃度)
有機元素分析により、ヤナコ分析工業(株)製品の「CHNコーダーMT-6」を用いて化合物又は樹脂の炭素濃度及び酸素濃度(質量%)を測定した。
【0361】
(NMR測定)
1H-NMR測定については、Bruker社製「Advance600II spectrometer」を用いて、次の条件にて行った。
周波数:400MHz
溶媒:d6-DMSO
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0362】
(分子量)
LC-MS分析により、Water社製品の「Acquity UPLC/MALDI-Synapt HDMS」を用いて化合物又は樹脂の分子量を測定した。
【0363】
(溶解性評価)
23℃にて、化合物又は樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に対して5質量%溶液になるよう溶解させた。その後、5℃にて30日間静置したときの溶解性を以下の基準にて評価した。
評価A:目視にて析出物なしを確認
評価C:目視にて析出物ありを確認
【0364】
(耐熱性評価)
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000TG/DTA装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温した。その際、ベースラインに減少部分が現れる温度を熱分解温度(Tg)とし、以下の基準で耐熱性を評価した。
評価A:熱分解温度が≧150℃
評価C:熱分解温度が<150℃
【0365】
(合成実施例1)BiP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器において4,4’-ビスフェノールエーテル(シグマ-アルドリッチ社製試薬)10g、硫酸0.3g、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製品)3.0g、1-メトキシ-2-プロパノール10gを加えて、内容物を90℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。反応液を冷却し、不溶物をろ別し、1-メトキシ-2-プロパノールを10g加え、その後、ヘキサンにより反応生成物を晶析させ、ろ過により回収した。回収物を酢酸エチル(関東化学株式会社製)100mLに溶解し、純水50mLを加えた後、酢酸エチルにより抽出した。次に純水を加えて中性になるまで分液後、脱水、濃縮を行って溶液を得た。得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、下記式(BiP-1)で表される目的化合物(BiP-1)を1.0g得た。
得られた化合物(BiP-1)について、上記の方法により分子量を測定した結果、568であった。また、得られた化合物(BiP-1)の炭素濃度は78.2質量%であり、酸素濃度は16.9質量%であった。
得られた化合物(BiP-1)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-1)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.18(4H,O-H)、6.60~7.62(23H,Ph-H)、6.01(1H,C-H)
【0366】
【化70】
【0367】
(合成実施例2)BiP-2の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、4,4’-チオビスフェノールを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-2)で表される目的化合物(BiP-2)を0.5g得た。
得られた化合物(BiP-2)について、上記方法により分子量を測定した結果、600であった。また、得られた化合物(BiP-2)の炭素濃度は73.4質量%であり、酸素濃度は10.7質量%であった。
得られた化合物(BiP-2)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-2)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.18(4H,O-H)、6.61~7.75(23H,Ph-H)、6.01(1H,C-H)
【0368】
【化71】
【0369】
(合成実施例3)RBiP-1の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例1で得られたBiP-1を用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(RBiP-1)で表される目的樹脂(RBiP-1)を10.0g得た。
【0370】
【化72】
【0371】
(式(RBiP-1)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0372】
(合成実施例4)RBiP-2の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例2で得られたBip-2を用いた以外は合成実施例2と同様に反応させ、下記式(RBiP-2)で表される目的樹脂(RBiP-2)を8.0g得た。
【0373】
【化73】
【0374】
(式(RBiP-2)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0375】
(合成実施例5)BiP-3の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-3)で表される目的化合物(BiP-3)を1.2gを得た。
得られた化合物(BiP-3)について、上記方法により分子量を測定した結果、665であった。また、得られた化合物(BiP-3)の炭素濃度は66.9質量%であり、酸素濃度は質量19.2%であった。
得られた化合物(BiP-3)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-3)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.32(4H,O-H)、6.71~7.95(23H,Ph-H)、6.15(1H,C-H)
【0376】
【化74】
【0377】
(合成実施例6)RBiP-3の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例5で得られたBip-3を用いた以外は合成実施例2と同様に反応させ、下記式(RBiP-3)で表される目的樹脂(RBiP-3)を8.0g得た。
【0378】
【化75】
【0379】
(式(RBiP-3)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0380】
(合成実施例7)BiP-4の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、ベンズアルデヒドを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-4)で表される目的化合物(BiP-4)を1.6g得た。
得られた化合物(BiP-4)について、上記方法により分子量を測定した結果、492であった。また、得られた化合物(BiP-4)の炭素濃度は75.6質量%であり、酸素濃度は19.5質量%であった。
得られた化合物(BiP-4)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-4)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.18(4H,O-H)、6.61~7.46(19H,Ph-H)、6.03(1H,C-H)
【化76】
【0381】
(合成実施例8)RBiP-4の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例7で得られたBip-4を用いた以外は合成実施例2と同様に反応させ、下記式(RBiP-4)で表される目的樹脂(RBiP-4)を8.0g得た。
【0382】
【化77】
【0383】
(式(RBiP-4)中、Lはベンズアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0384】
(合成実施例9)BiP-5の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2-ナフトアルデヒドを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-5)で表される目的化合物(BiP-5)を1.6g得た。
得られた化合物(BiP-5)について、上記方法により分子量を測定した結果、542であった。また、得られた化合物(BiP-5)の炭素濃度は77.5質量%であり、酸素濃度は17.7質量%であった。
得られた化合物(BiP-5)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-5)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.18(4H,O-H)、6.45~7.69(21H,Ph-H)、6.08(1H,C-H)
【化78】
【0385】
(合成実施例10)RBiP-5の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例9で得られたBip-5を用いた以外は合成実施例2と同様に反応させ、下記式(RBiP-5)で表される目的樹脂(RBiP-5)を11.0g得た。
【0386】
【化79】
【0387】
(式(RBiP-5)中、Lは2-ナフトアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0388】
(合成実施例11)BiP-6の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2,2’-ジメチルプロパナールを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-6)で表される目的化合物(BiP-6)を0.5g得た。
得られた化合物(BiP-6)について、上記方法により分子量を測定した結果、472であった。また、得られた化合物(BiP-6)の炭素濃度は73.7質量%であり、酸素濃度は20.3質量%であった。
得られた化合物(BiP-6)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-6)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.04(4H,O-H)、6.45~7.69(21H,Ph-H)、5.98(1H,C-H)、1.73~1.88(9H,-C(CH3))
【0389】
【化80】
【0390】
(合成実施例12)RBiP-6の合成
4,4’-ビスフェノールエーテルに代えて、合成実施例11で得られたBip-6を用いた以外は合成実施例2と同様に反応させ、下記式(RBiP-6)で表される目的樹脂(RBiP-6)を5.5g得た。
【0391】
【化81】
【0392】
(式(RBiP-6)中、Lは2,2’-ジメチルプロパナール由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0393】
(合成例1)
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備え、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒドの分子量は、Mn:562、であった。
【0394】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17であった。また、得られた樹脂(CR-1)の炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。なお、樹脂(CR-1)のMn、Mw及びMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、以下の測定条件にてポリスチレン換算にて求めた。
装置:Shodex GPC-101型(昭和電工株式会社製品)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1mL/min
温度:40℃
【0395】
[実施例1~14、比較例1]
上記のBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6及びCR-1につき、溶解度試験を行った。結果を表1に示す。また、表1に示す組成のリソグラフィー用下層膜形成材料(リソグラフィー用下層膜形成組成物)を各々調製した。次に、これらのリソグラフィー用下層膜形成材料をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
酸発生剤:みどり化学株式会社製品「ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート」(表中、「DTDPI」と記載。)
架橋剤:三和ケミカル株式会社製品「ニカラックMX270」(表中、「ニカラック」と記載。)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートアセテート(表中、「PGMEA」と記載。)
【0396】
得られた各下層膜について、下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0397】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製品「RIE-10NR」
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
[エッチング耐性の評価]
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、実施例1において用いる化合物(BiP-1)に代えてフェノールノボラック樹脂(群栄化学社製 PSM4357)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜を作製した。そして、このフェノールノボラック樹脂を含む下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレート(エッチング速度)を測定した。次に、各実施例及び比較例の下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。そして、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準で各実施例及び比較例のエッチング耐性を評価した。
[評価基準]
評価A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%未満
評価B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%~+5%
評価C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超
【0398】
【表1】
【0399】
[実施例15~28]
上記の各実施例1~14で調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の各溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(11)で表される化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。下記式(11)で表される化合物は、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて得た。
【0400】
【化82】
【0401】
前記式(11)中の数字は、各構成単位の比率を示している。
【0402】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0403】
得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの欠陥を観察した結果を、表2に示す。表中、「良好」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られたことを示す。
また、解像性はレジストパターン形状が良好な矩形を形成し、欠陥が見られない最小の線幅(最も微細なパターン)を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により測定した値を示す。感度については、最小の線幅を与える際の露光強度を示し、露光強度が小さいほど感度が高いことを意味する。
【0404】
[比較例2]
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例15と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。結果を表2に示す。
【0405】
【表2】
【0406】
表1から明らかなように、本実施形態の化合物又は樹脂であるBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6のいずれかを用いた実施例1~14は、溶解度及びエッチング耐性のいずれの点も良好であることが確認された。一方、CR-1(フェノール変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)を用いた比較例1では、エッチング耐性が不良であった。
【0407】
また、表2から明らかなように、本実施形態の化合物又は樹脂であるBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6のいずれかを用いた実施例15~28では、現像後のレジストパターン形状が良好であり、大きな欠陥が見られないことが確認された。更に、各実施例15~28は、下層膜を形成していない比較例2と比較して、解像性及び感度のいずれにおいても有意に優れていることが確認された。
ここで、現像後のレジストパターン形状が良好であることは、実施例15~28において用いたリソグラフィー用下層膜形成材料が、レジスト材料(フォトレジスト材料等)との密着性がよいことを示している。
【0408】
[実施例29~42]
各実施例1~14のリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚80nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、上記のArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、特開2007-226170号公報の<合成例1>に記載の珪素原子含有ポリマーを用いた。次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、55nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。その後、サムコインターナショナル社製 RIE-10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO2膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0409】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO2膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C512ガス流量:C26ガス流量:O2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0410】
[評価]
上記のようにして得られたパターン断面(すなわち、エッチング後のSiO2膜の形状)を、日立製作所株式会社製品の「電子顕微鏡(S-4800)」を用いて観察した。観察結果を表3に示す。表中、「良好」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られたことを示す。
【0411】
【表3】
【0412】
[実施例43~48]
上記の各実施例1~6で調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液と同組成の光学部品形成組成物溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、260℃で300秒間ベークすることにより、膜厚100nmの光学部品形成膜を形成した。次いで、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製 真空紫外域多入射角分光エリプソメーター(VUV-VASE)を用いて、633nmの波長における屈折率及び透明性試験を行い、以下の基準に従って屈折率及び透明性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0413】
[屈折率の評価基準]
A:屈折率が1.60以上
C:屈折率が1.60未満
【0414】
[透明性の評価基準]
A:吸光定数が0.03未満
C:吸光定数が0.03以上
【0415】
【表4】
【0416】
[実施例49~52、比較例3]
(耐熱性及びレジスト性能)
合成実施例1~合成実施例4で得られた化合物あるいは樹脂を用いて、耐熱性試験及びレジスト性能評価を行った結果を表5に示す。
【0417】
(レジスト組成物の調製)
上記で合成した各化合物あるいは樹脂を用いて、表5に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表5中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤(C)
P-1:トリフェニルベンゼンスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
酸拡散制御剤(E)
Q-1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
溶媒
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0418】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価方法)
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
表中、「良好」とは、レジストパターン形状が矩形を形成し、欠陥が見られないことを示し、「不良」とは、パターンが矩形を形成しないか、欠陥が見られたことを示す。
【0419】
【表5】
【0420】
表5から明らかなように、実施例49~実施例52で用いた化合物あるいは樹脂は、耐熱性が良好であるが、比較例3で用いた化合物は、耐熱性に劣ることが確認できた。
【0421】
また、レジストパターン評価については、実施例49~実施例52では50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得た。一方、比較例3では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0422】
このように本発明の要件を満たす樹脂は比較化合物(CR-1)に比べて、耐熱性が高く、また良好なレジストパターン形状を付与できる。前記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した樹脂以外についても同様の効果を示す。
【0423】
[実施例53~56、比較例4]
(感放射線性組成物の調製)
表6記載の成分を調合し、均一溶液としたのち、得られた均一溶液を、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターで濾過して、感放射線性組成物を調製した。調製した各々の感放射線性組成物について以下の評価を行った。
【0424】
なお、比較例4におけるレジスト基材としては、以下のものを用いた。
PHS-1:ポリヒドロキシスチレン Mw=8000(シグマ-アルドリッチ社)
光活性化合物(B)としては、以下のものを用いた。
B-1:下記化学構造式(G)のナフトキノンジアジド系感光剤(4NT-300、東洋合成工業(株))
【0425】
【化83】
【0426】
溶媒としては、以下のものを用いた。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0427】
【表6】
【0428】
(感放射線性組成物のレジスト性能の評価)
上記で得られた感放射線性組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ200nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜に対して、紫外線露光装置(ミカサ製マスクアライナMA-10)を用いて紫外線を露光した。紫外線ランプは超高圧水銀ランプ(相対強度比はg線:h線:i線:j線=100:80:90:60)を使用した。照射後に、レジスト膜を、110℃で90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄し、乾燥して、5μmのポジ型のレジストパターンを形成した。
【0429】
形成されたレジストパターンにおいて、得られたラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察した。ラインエッジラフネスはパターンの凹凸が50nm未満を良好とした。
【0430】
実施例53~実施例56における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。また、そのパターンのラフネスも小さく良好であった。
【0431】
一方、比較例4における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。しかしながら、そのパターンのラフネスは大きく不良であった。
【0432】
上記のように、実施例53~実施例56における感放射線性組成物は、比較例4における感放射線性組成物に比べて、ラフネスが小さく、かつ良好な形状のレジストパターンを形成することができることがわかった。上記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した以外の感放射線性組成物も同様の効果を示す。
【0433】
合成実施例1~合成実施例4で得られた化合物あるいは樹脂は、比較的に低分子量で低粘度であることから、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性や膜表面の平坦性が比較的に有利に高められ得る。また、熱分解温度はいずれも150℃以上(評価A)であり、高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用することができる。
【0434】
(実施例57) BiP-1の酸による精製
1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、合成実施例1で得られたBiP-1をPGMEAに溶解させた溶液(10質量%)を150g仕込み、攪拌しながら80℃まで加熱した。次いで、蓚酸水溶液(pH1.3)37.5gを加え、5分間攪拌後、30分静置した。これにより油相と水相に分離したので、水相を除去した。この操作を1回繰り返した後、得られた油相に、超純水37.5gを仕込み、5分間攪拌後、30分静置し、水相を除去した。この操作を3回繰り返した後、80℃に加熱しながらフラスコ内を200hPa以下に減圧することで、残留水分及びPGMEAを濃縮留去した。その後、ELグレードのPGMEA(関東化学社製試薬)を希釈し、10質量%に濃度調整を行うことにより、金属含有量の低減されたBiP-1のPGMEA溶液を得た。
【0435】
(比較例5) BiP-1の超純水による精製
蓚酸水溶液の代わりに、超純水を用いる以外は実施例57と同様に実施し、10質量%に濃度調整を行うことにより、BiP‐1のPGMEA溶液を得た。
【0436】
処理前のBiP-1の10質量%PGMEA溶液、実施例57及び比較例5において得られた溶液について、各種金属含有量をICP-MSによって測定した。測定結果を表7に示す。
【0437】
【表7】
【0438】
本出願は、2018年1月31日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-015520)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0439】
本発明の化合物及び樹脂は、耐熱性が高く、溶媒溶解性も高く、湿式プロセスが適用可能である。そのため、本発明の化合物又は樹脂を用いるリソグラフィー用膜形成材料及びそのリソグラフィー用膜はこれらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。したがって、本発明は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、下層膜形成用樹脂等において、広く且つ有効に利用可能である。特に、本発明は、リソグラフィー用膜の分野において、特に有効に利用可能である。