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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-15
(45)【発行日】2023-11-24
(54)【発明の名称】パターン導電体、発熱板及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/84 20060101AFI20231116BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H05B3/84
H05B3/10 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021502329
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007800
(87)【国際公開番号】W WO2020175567
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019033056
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043842(JP,A)
【文献】特開2017-183063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/84
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
前記接続導電体は、前記第1方向と非平行な第2方向に延び、
1つの前記接続導電体に含まれ前記第2方向に不連続である複数の前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素の長さの平均以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である、パターン導電体。
【請求項2】
電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
前記接続導電体は、前記第1方向と非平行な第2方向に延び、
1つの前記接続導電体に含まれ前記第2方向に不連続である複数の前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素を含む前記接続導電体の長さの1/2倍以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である、パターン導電体。
【請求項3】
電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
前記接続導電体は、前記第1方向と非平行な第2方向に延び、
1つの前記接続導電体に含まれ前記第2方向に不連続である複数の前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素を含む前記接続導電体と同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さの1/4倍以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である、パターン導電体。
【請求項4】
ある前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体は、当該接続導電体と前記第1方向に隣り合う別の前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体と一致する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項5】
前記第1方向に隣り合い且つ一致する複数の前記線状導電体と接続する2つの前記接続導電体の間隔について、最小の間隔に対する最大の間隔の比は、3.0以下である、請求項に記載のパターン導電体。
【請求項6】
前記接続要素は、前記第1方向に非平行な第2方向に隣り合う前記線状導電体を接続する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項7】
前記接続導電体は、前記第1方向に非平行な第2方向に連続して並んだ少なくとも3つの前記線状導電体を接続する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項8】
前記第1方向に非平行な第2方向において隣り合う2つの前記接続導電体は、前記第1方向において、ずれて配置されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項9】
前記線状導電体の両端を結ぶ直線の長さに対する当該線状導電体の長さの比は、1.72以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項10】
前記第1方向に非平行な第2方向に隣り合う前記線状導電体の間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記第1方向を長手方向とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のパターン導電体。
【請求項11】
第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された請求項1乃至10のいずれか一項に記載のパターン導電体と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合層と、を備える、発熱板。
【請求項12】
前記接合層は、前記パターン導電体に隣接する第1部分と、前記第1部分からずれて位置する第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記第2部分と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たす、請求項11に記載の発熱板。
【請求項13】
前記パターン導電体は、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されており、且つ前記第2部分に隣接している、請求項12に記載の発熱板。
【請求項14】
前記パターン導電体は、前記第1基板と接する面を有している、請求項11または12に記載の発熱板。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか一項に記載の発熱板を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン導電体、パターン導電体を有する発熱板、及び発熱板を有する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板等の一対の基板の間にパターン導電体が配置された発熱板が広く用いられている。この発熱板は、例えば、移動体の窓ガラスに用いられるデフロスタ(霜取り装置)等に利用されている。発熱板は、パターン導電体に通電されることによって、抵抗加熱により発熱する(例えば、JP2013-173402、JP8-72674を参照)。移動体の窓ガラスに適用された発熱板は、パターン導電体の昇温により、窓ガラスの曇りを取り除いたり、窓ガラスに付着した雪や氷を溶かしたり、または、窓ガラスに付着した水滴を蒸発させたりすることで、移動体の乗員の視界を確保することができる。
【0003】
パターン導電体は、例えば隙間を空けて線状に延びる複数の線状導電体を有している。線状導電体に断線が生じてしまうと、断線した線状導電体は通電されなくなり、したがって発熱しなくなる。パターン導電体に発熱しない線状導電体が存在すると、発熱むらが生じ得る。
【0004】
断線した線状導電体を通電させるために、2つの線状導電体の間を接続する導電性の接続要素を設けることが考えられている。このような接続要素を設けることで、線状導電体が断線してしまっても、接続要素を介することで断線した部分を避けて線状導電体を通電させることができる。
【0005】
ところで、複数の線状導電体を導電性の接続要素で接続したパターン導電体において、線状導電体に断線が生じてしまうと、発熱むらがなお生じることがある。パターン導電体に発熱むらが生じていると、パターン導電体を有する発熱板を介した視界において、ひずみ(ゆがみ)が発生することがある。本件発明者らが鋭意検討した結果、このようなひずみは、パターン導電体から発生した熱によって、発熱板の基板を接合するための接合層の一部で屈折率が低下することで発生していることが知見された。すなわち、パターン導電体に発熱むらが生じていると、この発熱むらに起因して接合層に温度のむらが生じる。接合層の温度が高くなった部分では、温度の低い部分より接合層の材料がより変質する。このため、接合層において屈折率のむらが生じる。接合層を透過する光は、接合層の屈折率に応じて屈折するため、屈折率のむらが生じた接合層を透過する光には、ひずみが発生する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、以上の知見に基づくものであり、発熱板を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することを目的とする。
【0007】
本発明の第1のパターン導電体は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
1つの前記接続導電体に含まれる前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素の長さの平均以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である。
【0008】
本発明の第2のパターン導電体は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
1つの前記接続導電体に含まれる前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素を含む前記接続導電体の長さの1/2倍以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である。
【0009】
本発明の第3のパターン導電体は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
1つの前記接続導電体に含まれる前記接続要素のうち同一の前記線状導電体に接続する2つの前記接続要素と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続要素を含む前記接続導電体と同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さの1/4倍以下であり、
ある1つの同一の前記線状導電体に接続して前記第1方向において隣り合う2つの前記接続導電体と当該線状導電体との2つの接続点の間の当該線状導電体の長さは、当該2つの接続導電体の長さの平均の2倍以上である。
【0010】
本発明の第1乃至第3のパターン導電体において、ある前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体は、当該接続導電体と前記第1方向に隣り合う別の前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体と一致してもよい。
【0011】
本発明の第4のパターン導電体は、
電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、
第1方向に延びる複数の線状導電体と、
少なくとも3つの前記線状導電体を接続する複数の接続導電体と、を備え、
前記接続導電体は、2つの前記線状導電体をそれぞれ接続する接続要素を複数含み、
ある前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体は、当該接続導電体と前記第1方向に隣り合う別の前記接続導電体が接続する複数の前記線状導電体と一致する。
【0012】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、前記第1方向に隣り合い且つ一致する複数の前記線状導電体と接続する2つの前記接続導電体の間隔について、最小の間隔に対する最大の間隔の比は、3.0以下であってもよい。
【0013】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、前記接続要素は、前記第1方向に非平行な第2方向に隣り合う前記線状導電体を接続してもよい。
【0014】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、1つの前記接続導電体に含まれる前記接続要素は、前記第1方向に非平行な第2方向に連続していてもよい。
【0015】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、前記接続導電体は、前記第1方向に非平行な第2方向に連続して並んだ少なくとも3つの前記線状導電体を接続してもよい。
【0016】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、前記第1方向に非平行な第2方向において隣り合う2つの前記接続導電体は、前記第1方向において、ずれて配置されていてもよい。
【0017】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、前記線状導電体の両端を結ぶ直線の長さに対する当該線状導電体の長さの比は、1.72以下であってもよい。
【0018】
本発明の第1乃至第4のパターン導電体において、
前記第1方向に非平行な第2方向に隣り合う前記線状導電体の間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記第1方向を長手方向としてもよい。
【0019】
本発明の発熱板は、
第1基板及び第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板の間に配置された上述したいずれかのパターン導電体と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合する接合層と、を備える。
【0020】
本発明の発熱板において、
前記接合層は、前記パターン導電体に隣接する第1部分と、前記第1部分からずれて位置する第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記第2部分と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしてもよい。
【0021】
本発明の発熱板において、前記パターン導電体は、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されており、且つ前記第2部分に隣接していてもよい。
【0022】
本発明の発熱板において、前記パターン導電体は、前記第1基板と接する面を有していてもよい。
【0023】
本発明の移動体は、上述したいずれかの発熱板を備える。
【0024】
本発明によれば、発熱板を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、発熱板を備えた移動体を概略的に示す斜視図である。特に図1では、移動体の例として、発熱板で構成されたフロントウィンドウを備えた自動車を概略的に示している。
図2図2は、発熱板をその板面の法線方向から示す図である。
図3図3は、図2のA-A線における発熱板の断面図の一例である。
図4図4は、図2のA-A線における発熱板の断面図の他の例である。
図5図5は、本実施の形態のパターン導電体を発熱板の板面の法線方向から示す平面図であって、パターン導電体の一例を示す平面図である。
図6図6は、パターン導電体の一例の一部を拡大して示す図である。
図7図7は、1つの線状導電体の一例を拡大して示す図である。
図8図8は、図5に示したパターン導電体の作用を説明するための図である。
図9図9は、図3の発熱板の作用を説明するための図である。
図10図10は、図4の発熱板の作用を説明するための図である。
図11図11は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図12図12は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図13図13は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図14図14は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図15図15は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図16図16は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図17図17は、発熱板の製造方法の一例を説明するための図である。
図18図18は、発熱板の製造方法の他の例を説明するための図である。
図19図19は、発熱板の製造方法の他の例を説明するための図である。
図20図20は、発熱板の製造方法の他の例を説明するための図である。
図21図21は、従来のパターン導電体の作用を説明するための図である。
図22図22は、従来の発熱板の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0027】
なお、本明細書において、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
【0028】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0029】
図1図22は、一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、発熱板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、発熱板をその板面の法線方向から見た図であり、図3及び図4は、図2のA-A線に沿った発熱板の断面の一例及び他の例を示す図である。
【0030】
図1に示されているように、移動体の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が発熱板10で構成されているものを例示する。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
【0031】
この発熱板10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の発熱板10のA-A線に対応する断面図を図3及び図4に示す。図3及び図4に示された例では、発熱板10は、厚さ方向dTに離間して配置された第1基板11及び第2基板12と、第1基板11及び第2基板12との間に配置された発熱用導電体30と、第1基板11と第2基板12とを接合する接合層20と、を有している。厚さ方向dTとは、発熱板10の厚さ方向であり、図示された例においては、発熱板10の板面への法線方向に一致している。図3に示す例では、発熱用導電体30は、接合層20における厚さ方向dTの中間部分に配置されている。一方、図4に示す例では、発熱用導電体30が接合層20における厚さ方向dTの端部に配置されている。なお、図1および図2に示した例では、発熱板10は湾曲しているが、その他の図では、図示の簡略化および理解の容易化のために、発熱板10、第1基板11及び第2基板12を平板状に図示している。また、図3及び図4は、後述する発熱用導電体30の線状導電体41の長手方向に直交する方向に沿った断面を示す図となっている。
【0032】
図1及び図2によく示されているように、発熱板10は、発熱用導電体30に通電するための配線部15を有している。図示された例では、バッテリー等の電源7によって、配線部15から発熱用導電体30のバスバー35を介して発熱用導電体30に通電し、発熱用導電体30のパターン導電体40を抵抗加熱により発熱させる。パターン導電体40で発生した熱は第1基板11及び第2基板12に伝わり、第1基板11及び第2基板12が温められる。これにより、第1基板11及び第2基板12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、第1基板11及び第2基板12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。尚、図示は省略するが、通常は、配線部15は電源7と発熱用導電体30のバスバー35との間に開閉器が挿入(直列に接続)される。そして、発熱板10の加熱が必要な時のみ開閉器を閉じて発熱用導電体30に通電する。
【0033】
以下、発熱板10の各構成要素について説明する。
【0034】
まず、第1基板11及び第2基板12について説明する。第1基板11及び第2基板12は、図1で示された例のように自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。例えば、第1基板11及び第2基板12の可視光透過率は90%以上であることが好ましい。ここで、第1基板11及び第2基板12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。このような第1基板11及び第2基板12の材料としては、ソーダライムガラスや青板ガラスを例示できる。なお、第1基板11及び第2基板12の一部または全体に着色するなどして、この一部分の可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
【0035】
また、第1基板11及び第2基板12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1基板11及び第2基板12を得ることができる。第1基板11及び第2基板12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
【0036】
次に、接合層20について説明する。接合層20は、第1基板11及び第2基板12の間に配置され、第1基板11と第2基板12とを接合する。このような接合層20としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層20は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。また、図3及び図4に示すように、接合層20は、第1基板11と接する第1部分21と、第2基板12と接する第2部分22と、を有している。第1部分21は、発熱用導電体30に隣接している。第2部分22は、第1部分21からずれて位置している。第1部分21及び第2部分22は、異なる性質を有しており、厚さ方向dTにおいて互いからずれて位置している。
【0037】
第1部分21は、第2部分22と比較して、含まれている単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。第1部分21及び第2部分22の単位質量あたりの可塑剤の量、ガラス転移温度、及び、軟化点は、例えば第1部分21に添加される添加剤の含有量及び第2部分22に添加される添加剤の含有量を調節することで、適宜に設定することができる。具体的な例として、第1部分21について、含まれている可塑剤の量を25wt%以下とし、ガラス転移温度を60℃以上とし、軟化点を110℃以上とすることができ、さらには、含まれている可塑剤の量を15wt%以下とし、ガラス転移温度を65℃以上とし、軟化点を140℃以上とすることができる。ここで、単位〔wt%〕は、質量パーセント濃度を表している。
【0038】
第1部分21の厚さT、すなわち第1部分21の厚さ方向dTにおける長さは、第2部分の厚さT、すなわち第2部分の厚さ方向dTにおける長さより、薄く(短く)なっていることが好ましい。具体的な例として、第1部分21の厚さTを、20μm以上100μm以下とすることができ、さらには、40μm以上80μm以下とすることができる。第2部分22の厚さTは、合わせガラスの安全性能により選ぶことができ、例えば150μm以上1600μm以下とすることができる。第2部分22の厚さTがこのような厚さであると、ガラスが割れた時の衝撃物の貫通性能とガラス破片の飛散を効果的に抑制することができる。
【0039】
なお、発熱板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよい。例えば、発熱板10の第1基板11及び第2基板12、接合層20の第1部分21及び第2部分22の少なくとも一つに、何らかの機能を付与するようにしてもよい。発熱板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
【0040】
次に、図5を参考にしながら、発熱用導電体30について説明する。図5は、発熱用導電体30を発熱板10の板面の法線方向から見た平面図であり、発熱用導電体30のパターン導電体40の配置パターンの一例を示している。
【0041】
発熱用導電体30は、一対のバスバー35と、一対のバスバー35に間に配置されたパターン導電体40と、を有している。パターン導電体40は、第1方向d1に延び且つ第1方向d1に非平行な第2方向d2に配列された複数の線状導電体41を有している。第1方向d1及び第2方向d2は、発熱板10の板面に沿った方向であり、図示された例において、厚さ方向dTと直交または略直交している。また、図示された例において、第1方向d1と第2方向d2とは、互いに直交している。一対のバスバー35は、第1方向d1に離間して配置されており、それぞれが対応する配線部15と電気的に接続している。一対のバスバー35間には、配線部15と接続された電源7の電圧が印加されるようになる。パターン導電体40の線状導電体41は、その両端において一対のバスバー35に接続している。したがって、線状導電体41は、一対のバスバー35を電気的に接続している。線状導電体41は、配線部15及びバスバー35を介して電圧を印加されると、抵抗加熱によって発熱する。そして、この熱が接合層20を介して第1基板11及び第2基板12に伝わることで、第1基板11及び第2基板12が温められる。
【0042】
パターン導電体40を適切な発熱量で発熱させるために、印加電圧に合わせてパターン導電体40のシート抵抗を調整することが好ましい。例えば、印加電圧12V程度では0.1Ω/□以上1Ω/□以下であることが好ましく、印加電圧48V程度では1Ω/□以上13Ω/□以下であることが好ましい。よって、印加電圧12-48Vの範囲では、シート抵抗0.1Ω/□以上13Ω/□以下であることが好ましい。パターン導電体40の抵抗が大きすぎると、パターン導電体40における発熱量が不足し、第1基板11及び第2基板12を適切に暖めることができない。また、パターン導電体40の抵抗が小さすぎると、パターン導電体40における発熱量が多くなりすぎて、パターン導電体40の各線状導電体41の近傍の領域とその他の領域との間で発熱むらが生じやすくなる。
【0043】
パターン導電体40は、種々のパターンで配置することができる。図5に示されているパターン導電体40の一例では、パターン導電体40は、一対のバスバー35間を連結する複数の線状導電体41がストライプ状のパターンで配置されることによって形成されている。より具体的には、複数の線状導電体41が、第1方向d1に延びながら、第1方向d1とは非平行な第2方向d2に隣り合う線状導電体41の間に隙間49が形成されている。したがって、隙間49は、第1方向d1を長手方向とし、第2方向d2に配列されている。なお、線状導電体41は、図5に示された直線形状に限らず、曲線形状や折れ線形状であってもよい。
【0044】
図5に示したパターン導電体40において、隙間49が大きすぎると、パターン導電体40において発熱むらが発生する原因となる。このため、隙間49の大きさの平均、言い換えると隙間49の配列方向である第2方向d2に沿った長さの平均、さらに言い換えると隣り合う線状導電体41の間の距離の平均は、12000μm以下となっていることが好ましく、7000μm以下となっていることがより好ましく、3000μm以下となっていることがさらに好ましい。また、隙間49が小さすぎると、透過率が悪化し、透視性が損なわれる原因となる。このため、隣り合う線状導電体41の間の距離の平均は100μm以上となっていることが好ましい。
【0045】
さらに、図5に示すように、パターン導電体40は、少なくとも3つの線状導電体41を接続する複数の接続導電体42を有している。接続導電体42を容易に配置することができるよう、接続導電体42は、第2方向d2に連続して並んだ少なくとも3つの線状導電体41を接続していることが好ましい。線状導電体41に断線が生じたとしても、接続導電体42を介することで、当該断線が生じた部分を避けながら、線状導電体41によって一対のバスバー35の間を電気的に接続することができる。なお、図5に示された例では、接続導電体42は第2方向d2に平行であるが、この例に限らず、接続導電体42は第2方向d2に対して傾斜していてもよい。さらには、接続導電体42は、図5に示された直線形状に限らず、曲線形状や折れ線形状であってもよい。
【0046】
上述したように、第2方向d2に隣り合う線状導電体41の間に形成されている隙間49は、第1方向d1を長手方向としている。したがって、ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42は、十分に離間している。具体的には、ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1は、当該2つの接続導電体42の長さL2の平均の2倍以上であり、好ましくは3倍以上であり、さらに好ましくは5倍以上である。
【0047】
図5に示すように、複数の接続導電体42は、パターン導電体40において互いに連続しないように配置されている。言い換えると、第2方向d2において隣り合う2つの接続導電体42は、第1方向d1において、ずれて配置されている。好ましくは、隣り合う2つの接続導電体42は、第1方向d1に、図6に示すある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1の3分の1以上離間している。ここで、第2方向d2において隣り合う接続導電体42とは、1つの接続導電体42の第2方向d2における一側端部42e1と他の1つの接続導電体42の第2方向d2における他側端部42e2との間の長さが、当該接続導電体42の第2方向d2における長さL2以下であって、1つの接続導電体42の第2方向d2における一側端部42e1が、他の1つの接続導電体42の第2方向d2における他側端部42e2と第2方向d2において同一の位置にある、または、他の1つの接続導電体42の第2方向d2における他側端部42e2より第2方向d2における他側に位置する、2つの接続導電体42のことである。図示された例では、1つの接続導電体42の第2方向d2における一側端部と他の1つの接続導電体42の第2方向d2における他側端部とは、隣り合う線状導電体41に接続している。このような各接続導電体42の長さL2は、例えば2.5mm以上32mm以下となっている。
【0048】
また、第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42は、第2方向d2においてずれていない。言い換えると、第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体は、完全に同一の線状導電体41に接続している。さらに言い換えると、ある接続導電体42が接続する複数の線状導電体41は、当該接続導電体42と第1方向d1に隣り合う別の接続導電体42が接続する複数の線状導電体41と一致する。
【0049】
また、第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42が第2方向d2においてずれていない場合、第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42であって、一致する複数の線状導電体41と接続する2つの接続導電体42について、2つの接続導電体42の間隔を、パターン導電体40の全体で均一に近づけることができる。具体的には、第1方向d1に隣り合い且つ一致する複数の線状導電体41と接続する2つの接続導電体42の間隔について、最小の間隔に対する最大の間隔の比は、理想的には1になることが好ましいが、実用上は3.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。線状導電体41が第1方向d1に互いに平行な直線状に延びている場合、第1方向d1に隣り合い且つ一致する複数の線状導電体41と接続する2つの接続導電体42の間隔は、同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1に等しい。
【0050】
図6には、パターン導電体40の一部を拡大して示している。図6に示すように、接続導電体42は、2つの線状導電体41をそれぞれ接続する接続要素43を複数含んでいる。接続要素43を容易に配置することができるよう、接続要素43は、第2方向d2に隣り合う線状導電体41を接続していることが好ましい。
【0051】
1つの接続導電体42に含まれる接続要素43は、図6の接続導電体42aに示すように、第2方向d2に不連続であってもよい。この場合、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、十分に短くなっている。具体的には、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43の長さL3の平均以下となっており、好ましくは1/2倍以下となっている。または、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42の長さL2の1/2倍以下となっており、好ましくは1/4倍以下となっている。あるいは、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42と同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1の1/4倍以下となっており、好ましくは1/8倍以下となっている。
【0052】
このように、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43は、図6の接続導電体42aに示すように、第2方向d2に不連続であってもよいが、図6の接続導電体42bに示すように、第2方向d2に連続していることが好ましい。言い換えると、第2方向d2において隣り合う2つの接続要素43は、第1方向d1においてずれて配置されていてもよいが、第1方向d1においてずれていないことが好ましい。さらに言い換えると、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続して第2方向d2において隣り合う2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44は、同一の点であることが好ましい。すなわち、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが0であることが好ましい。
【0053】
なお、1つの接続導電体42とは、当該接続導電体42に含まれる複数の接続要素43が第2方向d2においてほとんどずれずに配置されて、あるいはずれなく配置されて、パターン導電体40を全体的に観察した際に連続しているように観察されるものを意味する。具体的な例として、本実施の形態においては、1つの接続導電体42とは、当該1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが、L1の0.3倍以下となっているものを意味する。
【0054】
なお、図6に示された例では、接続要素43は第2方向d2に略平行であるが、この例に限らず、接続要素43は第2方向d2に対して傾斜していてもよい。さらには、接続要素43は、図6に示された直線形状に限らず、曲線形状や折れ線形状であってもよい。しかしながら、接続要素43の抵抗を小さくして接続要素43における発熱を抑制するため、接続要素43の長さは、短くなっていることが好ましい。具体的には、接続要素43の長さは、第2方向d2に隣り合う線状導電体41の間の長さ、すなわち隙間49の幅の2倍以下であることが好ましく、隙間49の幅に等しいことがより好ましい。
【0055】
図7には、一対のバスバー35を連結する1つの線状導電体41を示している。図示された例において、線状導電体41は、波線形状となっている。線状導電体41の曲がり具合(うねり)が大きくなっていると、線状導電体41が観察されやすくなるため、線状導電体41の曲がり具合(うねり)は、小さくなっていることが好ましい。具体的には、線状導電体41の両端を結ぶ直線の長さに対する当該線状導電体41の長さの比は、1.72以下であることが好ましい。なお、線状導電体41の両端とは、線状導電体41が一対のバスバー35に接続する接続点のことである。
【0056】
図3及び図4に示すように、発熱用導電体30は、接合層20内に埋め込まれた状態となっている。図3に示した一例では、発熱用導電体30は、接合層20の第1部分21と第2部分22との間に配置されている。言い換えると、発熱用導電体30は、厚さ方向dTにおける接合層20の中間部分に配置されている。発熱用導電体30は、第1部分21だけでなく第2部分22にも隣接している。一方、図4に示した他の例では、発熱用導電体30は、接合層20内に埋め込まれた状態で、厚さ方向dTにおける接合層20の第1部分21の側の端部に配置されている。すなわち、発熱用導電体30は、第1部分21と隣接しており、第1基板11と接している。さらに、図4に示した断面において、発熱用導電体30のパターン導電体40は、第1基板11と接する面40aを有している。
【0057】
このようなパターン導電体40及びバスバー35を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上を例示することができる。パターン導電体40及びバスバー35は、同一の材料を用いて形成されていてもよいし、或いは、互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
【0058】
パターン導電体40は、上述したように不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、パターン導電体40によって覆われていない領域の割合、すなわち非被覆率(開口率)は、70%以上99%以下程度と高くなっている。また、パターン導電体40の線状導電体41の線幅は、2μm以上20μm以下となっている。このため、パターン導電体40が設けられている領域は、全体として透明に把握され、パターン導電体40の存在が発熱板10の透視性を害さないようになっている。
【0059】
図3及び図4に示された例では、線状導電体41は、全体として矩形状の断面を有している。上述したように、線状導電体41の幅W、すなわち、発熱板10の板面に沿った幅Wは2μm以上20μm以下とし、高さ(厚さ)H、すなわち、発熱板10の板面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは1μm以上30μm以下とすることが好ましい。このような寸法の線状導電体41によれば、その線状導電体41が十分に細線化されているので、線状導電体41を効果的に不可視化することができる。
【0060】
また、図3及び図4に示されたように、線状導電体41は、導電層46、導電層46の表面のうち、第1基板11に対向する側の面を覆う第1暗色層47、導電層46の表面のうち、第2基板12に対向する側の面及び両側面を覆う第2暗色層48を含むようにしてもよい。とりわけ、線状導電体41は、第1暗色層47を少なくとも含んでいることが好ましい。優れた導電性を有する金属材料からなる導電層46は、比較的高い反射率を呈する。そして、線状導電体41をなす導電層46によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、乗員の視界を妨げる場合がある。また、外部から導電層46が視認されると、意匠性が低下する場合がある。そこで、第1暗色層47及び第2暗色層48が、導電層46の表面の少なくとも一部分を覆っている。第1暗色層47及び第2暗色層48は、導電層46よりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば黒色等の暗色の層である。この第1暗色層47及び第2暗色層48によって、導電層46が視認されづらくなり、乗員の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。
【0061】
ところで、上述したように、従来の発熱板において、断線が生じた線状導電体を通電させて発熱させるために、複数の線状導電体を導電性の接続要素で接続していた。この場合、線状導電体に断線が生じると、パターン導電体に発熱むらが生じることがあった。本件発明者らが検討した結果、断線した線状導電体に接続した接続要素に電流が流れることで、当該接続要素に接続した別の線状導電体に電流が多く流れていることが知見された。すなわち、図21に示すように、従来の発熱板におけるパターン導電体140において、線状導電体141cに断線C2が生じると、図21に矢印で示すように、断線が生じた線状導電体141cを避けるように、断線が生じた線状導電体141cと接続した別の線状導電体141bに電流が流れ込む。このため、図21における部分P2のように、断線が生じた線状導電体141cに接続した線状導電体141bにおいて、他の線状導電体141aより電流が多く流れる部分P2が生じる。電流が多く流れた線状導電体141bの部分P2はその他の部分に比べて発熱量が多くなるため、電流が多く流れた線状導電体141bの部分P2とその他の部分との間で、発熱むらが生じていた。
【0062】
パターン導電体140にこのような発熱むらが生じた結果、従来の発熱板110において、図22に示すように、接合層120内に温度のむらが発生する。接合層120は、温度によって屈折率が変化しやすい。したがって、接合層120内に屈折率差が生じる。この屈折率差によって、発熱板110を介した視界において、ひずみが発生していた。すなわち、屈折率が大きな部分を透過する光LAは、屈折率が小さな部分を透過する光LBより、大きく進路が変わってしまい、光の進路の違いがひずみとして観察されていた。
【0063】
一方、本実施の形態の発熱板10におけるパターン導電体40おいて、図8に示すように、線状導電体41cに断線C1が生じると、図8に矢印で示すように、接続導電体42を介して断線が生じた線状導電体41cを避けるように電流が流れる。接続導電体42が少なくとも3つの線状導電体41を接続しているため、断線が生じた線状導電体41cと接続した線状導電体41bだけでなく、断線が生じた線状導電体41cと接続した線状導電体41bにさらに接続した線状導電体41aにも分散して電流が流れる。
【0064】
とりわけ、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが十分に短くなっているため、線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間に電流が多く流れても過剰に発熱しにくい。具体的には、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43の長さL3の平均以下となっている、または、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42の長さL2の1/2倍以下となっている、あるいは、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42と同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1の1/4倍以下となっている。この場合、パターン導電体40において、線状導電体41に断線が生じても、過剰に発熱する部分は生じにくい。したがって、発熱板10を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0065】
ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1は、当該2つの接続導電体42の長さL2の平均の2倍以上となっている場合、2つの接続導電体42の間の長さが長いため、線状導電体41に断線が生じると、発熱むらが生じやすい。しかしながら、このような場合でも、上述したように1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが十分に小さくなっていると、発熱むらが生じることを効果的に抑制することができる。したがって、発熱板10を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0066】
また、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43は、第2方向d2に連続している。すなわち、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが0となっている。この場合、線状導電体41に断線が生じた場合に、より容易に複数の線状導電体41に分散して電流が流れることができる。したがって、発熱むらが生じることをより効果的に抑制することができる。したがって、発熱板10を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0067】
さらに、接続導電体42が接続する線状導電体41の数が一定以上より多くなっても、すなわち接続導電体42が長くなっても、断線が生じた線状導電体41を避けるように複数の線状導電体41に分散して流れる電流の量は、ほとんど変わらなくなる。言い換えると、接続導電体42はある程度の長さで複数の線状導電体41を接続していれば、十分に発熱むらを抑制することができる。一方、接続導電体42が長くなりすぎると、パターン導電体40を有する発熱板10を全体的に観察した際に、第2方向d2に延びる接続導電体42や線状導電体41と接続導電体42との交点が目立って観察されて発熱板10を介した視界を悪化させることがある。このため、第2方向d2において隣り合う2つの接続導電体42は、第1方向d1において、ずれて配置されていることが好ましい。隣り合う2つの接続導電体42が第1方向d1にずれていることで、発熱板10を全体的に観察した際に、第2方向d2に接続導電体42によって視界が害されることを効果的に抑制することができる。発熱むらを抑制しながら視界が害されることを効果的に抑制することができる接続導電体42の長さL2は、例えば2.5mm以上32mm以下である。
【0068】
また、ある接続導電体42が接続する複数の線状導電体41は、当該接続導電体42と第1方向d1に隣り合う別の接続導電体42が接続する複数の線状導電体41と一致する。このようなパターン導電体40では、接続導電体42を第1方向d1に集中しないように配置することができるため、発熱板10を全体的に観察した際に、第2方向d2に接続導電体42によって視界が害されることを効果的に抑制することができる。さらに、このようなパターン導電体40では、線状導電体41に断線が生じても、ある接続導電体42が接続する複数の線状導電体41の一部のみに他の接続導電体42が接続していないため、第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42の間の線状導電体41に流れる電流を均一に近づけることができる。すなわち、線状導電体41に断線が生じても、各線状導電体41での発熱にむらが生じにくくなる。発熱むらが抑制されるため、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0069】
とりわけ、ある接続導電体42が接続する複数の線状導電体41が当該接続導電体42と第1方向d1に隣り合う別の接続導電体42が接続する複数の線状導電体41と一致する場合、第1方向d1に隣り合い且つ一致する複数の線状導電体41と接続する2つの接続導電体42の間隔を、パターン導電体40の全体で均一にすることができる。具体的には、第1方向d1に隣り合い且つ一致する複数の線状導電体41と接続する2つの接続導電体42の間隔のうち、最小の間隔に対する最大の間隔の比は、3.0以下となり得る。第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42の間隔により、断線が生じた場合に電流が多く流れやすい線状導電体41bの部分P1の長さは決まる線状導電体41bの長さが小さければ、発熱量も小さくなるため、線状導電体41bと他の線状導電体41aとの発熱量の差を小さくすることができる。これにより、パターン導電体40における発熱むらを発生しにくくできる。第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42の間隔のばらつきをなくして最大値を小さくすることで、言い換えると第1方向d1に隣り合う2つの接続導電体42の間隔が均一に近くなるように接続導電体42を配置することで、少ない数の接続導電体42で、効率よく断線時の発熱むらを抑制することができる。言い換えると、複数の線状導電体41を接続する接続導電体42がパターン導電体40の全体で少なくしても、線状導電体41の断線時に発熱むらが発生しにくくできる。また、接続導電体42を少なくすることで、接続導電体42が視認されてパターン導電体40を介した視界を悪化させにくい。このため、発熱板10を全体的に観察した際に、視界が害されることを効果的に抑制することができる。
【0070】
また、本実施の形態の発熱板10では、接合層20の第1部分21は、厚さ方向dTにおいて第1部分21からずれて位置する第2部分22と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。言い換えると、第1部分21は、第2部分22より、熱による変質が生じにくくなっている。そして、その第1部分21が、発熱用導電体30に隣接している。このため、図9及び図10に示す熱による変質が生じ得る発熱用導電体30の線状導電体41の周辺領域A1を小さくすることができる。したがって、図9及び図10に実線矢印で示すように、発熱板10に入射した光は、発熱している状態の発熱板10を透過すると、屈折しない光を示す点線矢印に比べて、少ししか進路が変わらずに出射する。このようにして、ひずみの発生をより抑制することができる。
【0071】
なお、図9は、図3に示された発熱板10の作用を示しており、図10は、図4に示された発熱板10の作用を示している。
【0072】
具体的には、第1部分21は、可塑剤の量が25wt%以下、ガラス転移温度が60℃以上、及び軟化点が110℃以上のうち少なくとも1つを満たしている。このような場合、第1部分21に伝達し得る熱によって、変質が生じ得る周辺領域A1の大きさを効果的に小さくすることができる。したがって、発熱板10を介した視界において、ひずみの発生を効果的に抑制することができる。なお、ひずみ抑制の観点からは、第1部分21について、可塑剤の量が15wt%以下、ガラス転移温度が65℃以上、及び、軟化点が140℃以上のうち少なくとも1つが満たされていることがより好ましく、可塑剤の量が0wt%、ガラス転移温度が70℃以上、及び、軟化点が175℃以上のうち少なくとも1つが満たされていることが更に好ましい。
【0073】
また、図3及び図4に示すように、好ましくは、第1部分21の厚さTは、第2部分22の厚さTより薄くなっている。具体的には、第1部分21の厚さTは、20μm以上100μm以下となっており、より好ましくは80μm以下となっている。熱による変質が生じにくい第1部分21の厚さTが薄くなっていることで、接合層20全体では、熱による変質を生じさせやすくすることができる。したがって、接合層20による第1基板11及び第2基板12の接合を、容易に行うことができる。
【0074】
図3に示す例では、発熱用導電体30は、接合層20の第1部分21と第2部分22との間に配置されており、且つ第2部分22に隣接している。すなわち、発熱用導電体30は、厚さ方向dTにおける接合層20の中間部分に配置されており、第1部分21と第2部分22との両方に隣接している。このため、発熱板10は、発熱用導電体30を安定して保持することができる。また、第1部分21が第2部分22より薄くなっていると、第1部分21を介して発熱用導電体30で発生した熱を第1基板11に伝達しやすくすることができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層20に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
【0075】
一方、図4に示す例では、発熱用導電体30が第1基板11と接する面40aを有している。発熱用導電体30が第1基板11と接する面40aを有していると、発熱用導電体30で発生した熱を第1基板11に効率よく伝達することができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層20に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
【0076】
線状導電体41の長手方向に直交する断面、すなわち図3及び図4の断面において、線状導電体41は、第1基板11と接する面40aを有していることが好ましい。この場合、発熱用導電体30で発生した熱を第1基板11に効率よく伝達させることができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層20に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
【0077】
次に、発熱板10の製造方法の一例について、説明する。
【0078】
まず、図11に示すように、接合層20の一部である第1部分21を形成するようになる基材フィルム21a上に、第1暗色層47を形成するようになる暗色膜47aを設ける。基材フィルム21aは、ヒートシール性を有している。
【0079】
次に、導電層46を形成するようになる導電膜46aを暗色膜47a上に設ける。導電膜46aは、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。あるいは、導電膜46aは、導電性の金属等を含むペースト状の材料を塗布することで形成されてもよい。また、暗色膜47aを備えた導電膜46aからなる電解銅箔または圧延銅箔を貼着することで2層同時に形成してもよい。
【0080】
その後、図12に示すように、導電膜46a上に、レジストパターン50を設ける。レジストパターン50は、形成されるべき線状導電体41の配置パターンに対応した形となっている。このレジストパターン50は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。
【0081】
次に、レジストパターン50をマスクとして、導電膜46a及び暗色膜47aをエッチングする。このエッチングにより、導電膜46a及び暗色膜47aがレジストパターン50と略同一のパターンにパターニングされる。この結果、図13に示すように、パターニングされた導電膜46aから、線状導電体41の一部をなすようになる導電層46が形成される。また、パターニングされた暗色膜47aから、線状導電体41の一部をなすようになる第1暗色層47が、形成される。
【0082】
なお、エッチング方法はエッチング液を用いるウェットエッチングに限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、プラズマエッチングなどであってもよい。エッチング工程の後、図14に示すように、レジストパターン50を除去する。
【0083】
その後、図15に示すように、導電層46の第1暗色層47が設けられた面と反対側の面及び側面に第2暗色層48を形成する。第2暗色層48は、例えば導電層46をなす材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施して、導電層46をなしていた一部分から、金属酸化物や金属硫化物からなる第2暗色層48を形成することができる。また、導電層46の表面に第2暗色層48を設けるようにしてもよい。また、導電層46の表面を粗化して第2暗色層48を設けるようにしてもよい。
【0084】
なお、発熱用導電体30のバスバー35は、導電膜46aのパターニングによって線状導電体41の導電層46と一体的に形成されてもよいし、或いは、基材フィルム21a上に設けられた線状導電体41とは別途の導電体としてもよい。
【0085】
最後に、図16に示すように、基材フィルム21aに支持された発熱用導電体30を、第1基板11及び第2基板12の間に配置する。さらに、第1基板11及び第2基板12の間であって、発熱用導電体30の側に、ヒートシール性を有する接着フィルム22aを配置する。接着フィルム22aは、接合層20の第2部分22を形成するようになり、基材フィルム21aと合わせて接合層20を形成する。この状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する。以上の工程により、図3に示した発熱板10が作製される。
【0086】
なお、基材フィルム21aは、接着フィルム22aと比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。また、基材フィルム21aの厚さは、接着フィルム22aの厚さより、薄くなっている。このようにすることで、第1部分21が、第2部分22と比較して、含まれている単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしており、且つ、第1部分21の厚さTが、第2部分の厚さTより短くなっている、接合層20が製造される。
【0087】
また、図16に示された工程において、基材フィルム21aに支持された発熱用導電体30を図示された向きとは逆向きで配置することで、すなわち、図17に示すように発熱用導電体30が第1基板11の側を向き且つ基材フィルム21aが接着フィルム22a及び第2基板12の側を向くように発熱用導電体30を配置することで、図4に示した発熱板10を作製することができる。
【0088】
さらに、発熱板10の製造方法の他の例について、説明する。
【0089】
まず、図18に示すように、上述した発熱板10の製造方法の一例と同様に、基材フィルム20a上に暗色膜47aを設け、暗色膜47a上に導電膜46aを設ける。この製造方法の例において、基材フィルム20aは、接合層20の第1部分21及び第2部分22の両方を形成するようになる。その後、図19に示すように、基材フィルム20aの導電膜46aが設けられた側とは逆側から、可塑剤等の添加剤を添加する。このように可塑剤を添加することで、基材フィルム20aの導電膜46aが設けられた側の部分に含まれる単位質量あたりの可塑剤の量は、基材フィルム20aの導電膜46aが設けられた側とは逆側の部分に含まれる単位質量あたりの可塑剤の量より、少なくすることができる。基材フィルム20aのうち、導電膜46aが設けられた側の部分が接合層20の第1部分21を形成するようになり、導電膜46aが設けられた側とは逆側の部分が接合層20の第2部分22を形成するようになる。
【0090】
次に、上述した発熱板10の製造方法の一例と同様に、導電膜46a上にレジストパターン50を設けて、導電膜46a及び暗色膜47aをパターニングする。パターニングされた導電膜46aから導電層46が形成され、パターニングされた暗色膜47aから第1暗色層47が形成される。その後、導電層46の第1暗色層47が設けられた面と反対側の面及び側面に第2暗色層48を形成する。
【0091】
最後に、図20に示すように、第1基板11及び第2基板12の間に、発熱用導電体30が形成された側が第1基板11と対面するように、基材フィルム21aを配置する。この状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する。以上の工程により、図4に示した発熱板10が作製される。
【0092】
なお、上述した基材フィルム21aに可塑剤を添加する工程は、導電膜46a及び暗色膜47aをパターニングする工程の後に行われてもよい。
【0093】
以上のように、本実施の形態のパターン導電体40は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、第1方向d1に延びる複数の線状導電体41と、少なくとも3つの線状導電体41を接続する複数の接続導電体42と、を備え、接続導電体42は、2つの線状導電体41をそれぞれ接続する接続要素43を複数含み、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43の長さL3の平均以下であり、ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体の長さL1は、当該2つの接続導電体42の長さL2の平均の2倍以上である。このようなパターン導電体40によれば、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが十分に小さくなっているため、線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間に電流が多く流れても過剰に発熱しにくい。このため、線状導電体41に断線が生じても、発熱むらが生じにくい。したがって、発熱板を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0094】
または、本実施の形態のパターン導電体40は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、第1方向d1に延びる複数の線状導電体41と、少なくとも3つの線状導電体41を接続する複数の接続導電体42と、を備え、接続導電体42は、2つの線状導電体41をそれぞれ接続する接続要素43を複数含み、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42の長さL2の1/2倍以下であり、ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体の長さL1は、当該2つの接続導電体42の長さL2の平均の2倍以上である。このようなパターン導電体40によれば、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが十分に小さくなっているため、線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間に電流が多く流れても過剰に発熱しにくい。このため、線状導電体41に断線が生じても、発熱むらが生じにくい。したがって、発熱板を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0095】
あるいは、本実施の形態のパターン導電体40は、電圧を印加すると発熱するパターン導電体であって、第1方向d1に延びる複数の線状導電体41と、少なくとも3つの線状導電体41を接続する複数の接続導電体42と、を備え、接続導電体42は、2つの線状導電体41をそれぞれ接続する接続要素43を複数含み、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDは、当該2つの接続要素43を含む接続導電体42と同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さL1の1/4倍以下であり、ある1つの同一の線状導電体41に接続して第1方向d1において隣り合う2つの接続導電体42と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体の長さL1は、当該2つの接続導電体42の長さL2の平均の2倍以上である。このようなパターン導電体40によれば、1つの接続導電体42に含まれる接続要素43のうち同一の線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間の当該線状導電体41の長さDが十分に小さくなっているため、線状導電体41に接続する2つの接続要素43と当該線状導電体41との2つの接続点44の間に電流が多く流れても過剰に発熱しにくい。このため、線状導電体41に断線が生じても、発熱むらが生じにくい。したがって、発熱板を介した視界において、発熱むらに起因するひずみの発生を抑制することができる。
【0096】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0097】
前述した実施の形態において、発熱板10が曲面状に形成されている例を示したが、この例に限られず、発熱板10が、平板状に形成されていてもよい。
【0098】
発熱板10は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道車両、航空機、船舶、宇宙船等の移動体の窓或いは扉の透明部分に用いてもよい。
【0099】
さらに、発熱板10は、移動体以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓或いは扉の透明部分、建物の窓又は扉、冷蔵庫、展示箱、戸棚等の収納乃至保管設備の窓あるいは扉の透明部分等に使用することもできる。
【0100】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 自動車
5 フロントウィンドウ
7 電源
10 発熱板
11 第1基板
12 第2基板
15 配線部
20 接合層
21 第1部分
22 第2部分
30 発熱用導電体
35 バスバー
40 パターン導電体
41 線状導電体
42 接続導電体
43 接続要素
44 接続点
46 導電層
47 第1暗色層
48 第2暗色層
49 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22